説明

不斉水素化によるキラルなベータアミノ酸誘導体への方法

本発明は、生物活性分子の不斉合成に有用なエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体を効率的に調製する方法に関する。この方法は、アンモニウム塩、およびキラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下でプロキラルなベータアミノアクリル酸誘導体基質のエナンチオ選択的水素化を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物活性分子の不斉合成に有用なエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体を効率的に調製をするための方法に関する。本方法は、アンモニウム塩、およびキラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下での、プロキラルなベータアミノアクリル酸誘導体基質のエナンチオ選択的な水素化を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、*記号で印された立体中心に(R)または(S)配置を有する構造式I:
【0003】
【化14】

のエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体
[式中、Zは、OR、SRまたはNRであり;
は、C1〜8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1〜2アルキルまたはヘテロアリール−C1〜2アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、水素、C1〜8アルキル、アリールもしくはアリール−C1〜2アルキルであるか;
またはRおよびRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、O、SおよびNC1〜4アルキルから選択される追加のヘテロ原子を場合によって含む4から7員の複素環式環系を形成し、該複素環式環は、5から6員の飽和もしくは芳香族炭素環式環系と、またはO、SおよびNC1〜4アルキルから選択される1から2個のヘテロ原子を含有する5から6員の飽和もしくは芳香族複素環式環系と場合によって縮合しており、該縮合環系は、非置換であるか、またはヒドロキシ、アミノ、フルオロ、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシおよびトリフルオロメチルから独立に選択される1から2個の置換基で置換されている。]
を調製する効率的な方法を提供する。
【0004】
本発明の方法は、アミノ基が保護されていない構造式II:
【0005】
【化15】

のプロキラルなエナミンを、アンモニウム塩、およびキラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で遷移金属での触媒された不斉水素化を介して効率的なエナンチオ選択的な仕方で構造式Iのキラルなベータアミノ酸誘導体を調製する方法に関する。
【0006】
ロジウム前躯体またはイリジウム前駆体と錯形成した配位子としてキラルなフェロセニルジホスフィンを使用してエナミンの炭素−炭素二重結合(C=C−N)を不斉還元する方法は、特許文献に記載されている(1996年10月8日にCiba−Geigy Corp.に付与された米国特許第5563309号、およびこの関連ファミリーの特許もしくは特許出願を参照)。ロジウムMe−DuPHOS触媒錯体を使用するN−アシル化ベータアミノ酸への関連したアプローチも公開されている(2002年9月12日公開され、Degussa AGに譲渡されたU.S.2002/0128509)。以下の刊行物にもまた、キラルなホスフィン配位子と錯形成したロジウム金属前駆体を用いたN−アシル化ベータアミノアクリル酸の不斉水素化について記載されている:(1)T.Hayashiら,Bull.Chem.Soc.Japan,53:1136−1151(1980);(2)G.Zhuら,J.Org.Chem.,64:6907−6910(1999);および(3)W.D.Lubellら,Tetrahedron:Asymmetry,2:543−554(1991)。これらの刊行物に提示されている実施例はすべて、ベータアミノアクリル酸誘導体基質中にアセトアミド誘導体として保護されたアミノ基を有する。アミン保護の必要性から一連の工程に2つの追加の化学工程、すなわち、保護および非保護の工程、が導入されており、そして保護された基質の合成もまた困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の方法は、不斉水素化反応のために基質中の第一級アミノ基を保護する必要性から回避され、優れた反応性とエナンチオ選択性を伴って進行する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、構造式Iのエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体を調製する方法に関する。本方法は、アンモニウム塩、およびキラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で、第一級アミノ基が保護されていないプロキラルなベータアミノアクリル酸誘導体の不斉水素化を利用する。本発明の方法は、パイロットプラントまたは工業的規模でベータアミノ酸誘導体の調製に適用できる。このベータアミノ酸は、広範囲のさまざまな生物活性分子を調製するために有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、*記号で印された立体中心に(R)または(S)配置を有し、エナンチオマー過剰率が他方のエナンチオマーに対して少なくとも70%である構造式I:
【0010】
【化16】

のエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体
[式中、Zは、OR、SRまたはNRであり;
は、C1〜8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1〜2アルキルまたはヘテロアリール−C1〜2アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、水素、C1〜8アルキル、アリールもしくはアリール−C1〜2アルキルであるか;またはRおよびRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、O、S、NHおよびNC1〜4アルキルから選択される追加のヘテロ原子を場合によって含む、4から7員の複素環式環系を形成し、該複素環式環は、非置換であるか、またはオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1〜4アルコキシおよびC1〜4アルキル(ここで、アルキルおよびアルコキシは、非置換であるか、または1から5個のフッ素で置換されている。)から独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;該複素環式環系は、5から6員の飽和もしくは芳香族炭素環式環系と、またはO、S、およびNC0〜4アルキルから選択される1から2個のヘテロ原子を含む5から6員の飽和もしくは芳香族複素環式環系と場合によって縮合しており、該縮合した環系は、非置換であるか、またはヒドロキシ、アミノ、フッ素、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシおよびトリフルオロメチルから選択される1から2個の置換基で置換されている。]
を調製するための効率的な方法を提供する。
【0011】
本発明の方法は、構造式II:
【0012】
【化17】

のプロキラルなエナミンを、好適な有機溶媒中で、アンモニウム塩、および構造式III:
【0013】
【化18】

のキラルなフェロセニルジホスフィン配位子
[式中、Rは、C1〜4アルキルまたはアリールであり;
およびRは、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、C5〜12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1〜4アルキルまたは非置換のフェニルである。]
と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で水素化するステップを含む。
【0014】
本発明の方法では、遷移金属前駆体とキラルなフェロセニルジホスフィン配位子との触媒錯体は、(a)遷移金属種およびキラルなフェロセニルジホスフィン配位子を反応混合物に逐次的にまたは同時的に添加することによってin situで生成されるか、または(b)単離を伴うか、もしくは単離を伴わずに予備形成され、その後反応混合物に添加されるか、のいずれかであってよいことを企図する。予備形成した触媒錯体は、式:
【0015】
【化19】

によって表される
[式中、Xは、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレートおよびヘキサフルオロホスフェートなどの非配位性アニオンを表し、Lは、オレフィンなどの中性配位子(または1,5−シクロオクタジエンもしくはノルボルナジエンなどのキレート化ジオレフィン)または溶媒分子(例えば、MeOHおよびTFE)である。]。オレフィンがアレーンである場合、錯体は式:
【0016】
【化20】

によって表される。
【0017】
Xがハロゲンを表す場合、予備形成した触媒錯体は、式:
【0018】
【化21】

によって表される。
【0019】
構造式IIIの配位子は、当該技術分野でJosiphos配位子として知られており、Solvias AG,Basel,Switzerlandから市販されている。
【0020】
本発明の方法に有用な式IIIの配位子の1つの実施形態において、**記号で印された炭素立体中心は、式IV:
【0021】
【化22】

に示されるような(R)配置を有する。
【0022】
本発明の方法に有用な式IIIの配位子の別の実施形態では、Rは、C1〜2アルキルであり、RおよびRは、C1〜4アルキルであり、そしてRは、非置換のフェニルである。この実施形態の1つのクラスでは、Rはメチルであり、RおよびRは、t−ブチルであり、Rは、非置換のフェニルである。後者の配位子は当該技術分野でt−ブチルJosiphosとして知られている。t−ブチルJosiphos配位子の市販形態は、S,RおよびR,Sエナンチオマー形態である。R,S−t−ブチルJosiphosは、下記式V:
【0023】
【化23】

の{(R)1−[(S)(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]}エチル−ジ−tert−ブチルホスフィンである。
【0024】
式IIIのフェロセニルジホスフィン配位子は、2個の不斉中心を有しており、本発明の方法では、単一のエナンチオマー、個別のジアステレオマーおよびそれらのジアステレオマーの混合物の使用を包含することを意図する。本発明では、式IIの化合物を不斉水素化するための構造式IIIの配位子のこのような異性体の形態すべての使用を包含することを意図する。水素化反応の表面的なエナンチオ選択性は、反応に使用される配位子の特定の立体異性体に依存する。式IIIのフェロセニルジホスフィン配位子のキラリティーを適切に選択することによって、*記号で印された、式Iの化合物に新たに形成された立体中心における配置を調節することができる。
【0025】
本発明の方法の基質の1つの実施形態において、Rは、ベンジルであり、ここでベンジルのフェニル基は、非置換であるか、またはフッ素、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシからなる群から選択される1から3個の置換基で置換されている。本発明の方法の別の実施形態において、Zは、ORまたはNRである。この実施形態の1つのクラスにおいて、NRは、構造式VI:
【0026】
【化24】

の複素環である。
[式中、Rは、水素、または非置換のもしくは1から5個のフッ素で置換されているC1〜4アルキルである。]。この実施形態の別のクラスにおいて、ZはORである。
【0027】
本発明の方法のための基質の別の実施形態において、Rは、6−メトキシ−ピリジン−3−イルであり、Zは、C1〜4アルコキシである。この実施形態の1つのクラスにおいて、Zは、メトキシまたはエトキシである。
【0028】
本発明の不斉水素化反応は、好適な有機溶媒中で実施される。好適な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、フェノール、2,2,2,−トリフルオロエタノール(TFE)およびそれらの混合物などの低級アルカノール;テトラヒドロフラン;メチルt−ブチルエーテル;およびそれらの混合物があげられる。
【0029】
不斉水素化反応はまた、(式IIのプロキラルなエナミンの基質に対して)約0.01から約10mol%のアンモニウム塩の存在下で実施される。1つの実施形態において、アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、臭化アンモニウムおよびヨウ化アンモニウムからなる群から選択されるハロゲン化アンモニウム塩である。この実施形態の1つのクラスにおいて、ハロゲン化アンモニウム塩は塩化アンモニウムである。別の実施形態において、アンモニウム塩は、酢酸アンモニウムおよびギ酸アンモニウムなどのカルボン酸アンモニウム塩である。別の実施形態において、アンモニウム塩のプロキラルなエナミン基質に対する比は、約0.05から約5mol%である。
【0030】
反応のための反応温度は、約10℃から約90℃の範囲である。反応に好ましい温度の範囲は、約45℃から約65℃である。
【0031】
水素化反応は、約20psig(約0.14Mpa)から約1500psig(約10Mpa)の水素圧範囲で行うことができる。好ましい水素圧範囲は約80psig(約0.55Mpa)から約200psig(約1.4Mpa)である。
【0032】
遷移金属前駆体は、[M(モノオレフィン)Cl]、[M(ジオレフィン)Cl]、[M(モノオレフィン)アセチルアセトネート]、[M(ジオレフィン)アセチルアセトネート]、[M(モノオレフィン)]X、または[M(ジオレフィン)]Xであり、ここで、Xは、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート(Tf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)およびヘキサフルオロアンチモネート(SbF)からなる群から選択される非配位性アニオンであり、Mはロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)である。Mがルテニウム(Ru)である遷移金属前駆体は、[M(アレーン)Cl、[M(ジオレフィン)Clまたは[M(ジオレフィン)(□3−2−メチル−1−プロペニル)]である。1つの実施形態において、遷移金属前駆体は、[Rh(cod)Cl]、[Rh(ノルボルナジエン)Cl]、[Rh(cod)]Xまたは[Rh(ノルボルナジエン)]Xである。この実施形態の1つのクラスにおいて、遷移金属前駆体は[Rh(cod)Cl]である。
【0033】
遷移金属前駆体の基質に対する比率は、約0.01から約10mol%である。遷移金属前駆体の基質に対する好ましい比率は、約0.05mol%から約0.4mol%である。
【0034】
不斉水素化のための式IIのベータアミノアクリル酸誘導体基質は、オレフィン二重結合を含み、別段の断りがない限り、EおよびZ双方の幾可異性体またはそれらの混合物を出発物質として含むことを意味する。構造式IIの基質中の波形線で示した結合は、Zの幾何異性体もしくはEの幾何異性体、またはそれらの混合物を意味する。
【0035】
本発明の1つの実施形態において、不斉水素化反応のためのベータアミノアクリル酸誘導体基質中の二重結合の幾何配置は、式VII:
【0036】
【化25】

に示されるようなZ配置である。
【0037】
本発明の不斉水素化反応のための式II(Z=ORまたはSR)のベータアミノアクリル酸エステルは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、およびそれらの水性混合物などの好適な有機溶媒中でアンモニア源との反応によって、構造式VIのベータ−ケトエステルから高収率で調製することができる。
【0038】
【化26】

【0039】
アンモニア「NH」源としては、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、二塩基性クエン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムおよび安息香酸アンモニウムがあげられる。1つの実施形態において、アンモニア源は酢酸アンモニウムである。ベータ−ケトエステルは、D.W.Brooksら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,18:72(1979)に記載のように調製することができる。
【0040】
ベータアミノアクリルアミドは、Org.Syn.Collect.,Vol.3,p.108に記載のようにアミド交換を介して対応するエステルから調製することができる。
【0041】
本発明の方法は、構造式IIの中間体を単離することを要せずに実施できる。
【0042】
本発明の別の実施形態は、***記号で印された立体中心に(R)配置を、対立する(S)配置を有するエナンチオマーに比べて少なくとも70%エナンチオマー過剰率で有している構造式1:
【0043】
【化27】

の化合物
[式中、
Arは、非置換のまたはフッ素、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシからなる群から独立に選択される1から5個の置換基で置換されているフェニルであり;
は水素、または非置換のもしくは1から5個のフッ素で置換されているC1〜4アルキルである。]
を調製するための方法であって、
(a)構造式2:
【0044】
【化28】

の化合物を、好適な有機溶媒中で構造式3:
【0045】
【化29】

の化合物をアンモニア源で処理することによって生成するステップと;
(b)構造式2:
【0046】
【化30】

の化合物を、好適な有機溶媒中で、アンモニウム塩、および構造式IV:
【0047】
【化31】

のキラルなフェロセニルジホスフィン
[式中、RはC1〜4アルキルまたはアリールであり;
およびRは、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、C5〜12シクロアルキル、またはアリールであり;
は、C1〜4アルキルまたは非置換のフェニルである。]
と錯形成したロジウム金属前駆体の存在下で水素化するステップと、を含む方法に関する。
【0048】
この実施形態の1つのクラスにおいて、Arは、2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルである。このクラスの1つのサブクラスにおいて、Rはトリフルオロメチルである。
【0049】
この実施形態の別のクラスにおいて、ロジウム金属前駆体は、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー{[Rh(cod)Cl]}である。
【0050】
この実施形態の別のクラスにおいて、Rは、メチルであり、RおよびRは、ともにt−ブチルであり、Rは、非置換のフェニルである。このクラスの1つのサブクラスにおいて、ロジウム金属前躯体は、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマーである。
【0051】
この実施形態のさらに別のクラスにおいて、Rは、メチルであり、RおよびRは、ともにt−ブチルであり、Rは非置換のフェニルであり、Arは、2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rはトリフルオロメチルであり、ロジウム金属前駆体はクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマーである。このクラスの1つのサブクラスにおいて、アンモニウム塩は塩化アンモニウムである。
【0052】
本方法のステップでは、構造式(2)の中間体を単離することを要せずに実施できる。1つの実施形態において、アンモニウム塩の存在下、同一反応容器中で両方の化学変換を実施できる。この実施形態の1つのクラスにおいて、アンモニウム塩は、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、二塩基性クエン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムおよび安息香酸アンモニウムからなる群から選択される。このクラスの1つのサブクラスにおいて、アンモニウム塩はギ酸アンモニウムである。
【0053】
別の実施形態において、構造式1の化合物が、90%を超えるエナンチオマー過剰率で得られる。この実施形態の1つのクラスにおいて、構造式1の化合物が、95%を超えるエナンチオマー過剰率で得られる。
【0054】
構造式1の化合物は、WO03/004498(公開日2003年1月16日)に、II型糖尿病の治療に有用なジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤として開示されている。
【0055】
本出願を通して、以下の用語は以下に示された意味を有する:
「%エナンチオマー過剰率」(略号“ee”)という用語は、多い方のエナンチオマー%から少ない方のエナンチオマー%を減じた値を意味する。したがって、70%エナンチオマー過剰率は、一方のエナンチオマーの85%と他方のエナンチオマー15%とから形成されていることに相当する。「エナンチオマー過剰率」という用語は「光学純度」という用語と同義である。
【0056】
本発明の方法では、典型的には70%eeを超える、高い光学純度を有する構造式Iの化合物が提供される。1つの実施形態において、式Iの化合物が、80%eeを超える光学純度で得られる。この実施形態の1つのクラスにおいて、式Iの化合物が90%eeを超える光学純度で得られる。このクラスの1つのサブクラスにおいて、式Iの化合物が95%eeを超える光学純度で得られる。
【0057】
「エナンチオ選択的」という用語は、一方のエナンチオマーが他方より迅速に生成され(または破壊され)、その結果生成物の混合物中に有利なエナンチオマーの優勢をもたらす反応を意味する。
【0058】
上記で特定したアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれかの配置にある指定された長さのアルキル基を含むことを意味する。このようなアルキル基の代表例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどである。このアルキル基は、非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノカルボニル、アミノ、C1〜4アルコキシおよびC1〜4アルキルチオからなる群から独立に選択される1から3個の基で置換されている。
【0059】
「シクロアルキル」という用語は、全部の炭素原子が5から12個の、すなわち、この範囲のいずれかの数の、アルカンの環状環(すなわち、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど)を意味することを意図する。
【0060】
「ハロゲン」という用語は、ハロゲン原子、すなわち、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含むと理解されたい。
【0061】
略号“cod”は、「1,5−シクロオクタジエン」を意味する。
【0062】
「アリール」という用語は、フェニルおよびナフチルを含む。「アリール」は、非置換であるか、またはフルオロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、アミノ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから独立に選択される1から5個の置換基で置換されている。
【0063】
「アレーン」という用語は、ベンゼン、ナフタレン、およびo−、m−もしくはp−イソプロピルトルエン(o−、m−もしくはp−シメン)をいう。
【0064】
「オレフィン」という用語は、芳香族環状炭化水素を含む1個以上の二重結合を含む非環状または環状の炭化水素をいう。この用語は、限定されないが、1,5−シクロオクタジエンおよびノルボルナジエン(“nbd”)を含む。
【0065】
「ヘテロアリール」という用語は、O、SおよびNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を有する5または6員の芳香族複素環を意味する。ヘテロアリールはまた、アリール、シクロアルキルおよび芳香族でない複素環などの他の種類の環と縮合したヘテロアリールも含む。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピローリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリルおよびジベンゾフラニルがあげられる。“ヘテロアリール”は、非置換であるか、またはフルオロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、アミノ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから独立に選択される1から5個の置換基で置換されている。
【0066】
上記の新規な方法を利用する代表的な実験手順を以下に詳細に述べる。以下の実施例は、説明のみを目的とするものであり、本発明の方法をこれら特定の化合物を製造するための特定の条件に限定するものではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0067】
【化32】

【0068】
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)
3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン、塩酸塩(1−4)の調製
【0069】
【化33】

【0070】
ステップA:ビスヒドラジド(1−1)の調製
ヒドラジン(20.1g、水中に35重量%、0.22mol)を310mLのアセトニトリルと混合した。31.5gのトリフルオロ酢酸エチル(0.22mol)を60分間で添加した。内部温度を14℃から25℃に上昇させた。得られた溶液を22℃から25℃で60分間エージングした。この溶液を7℃に冷却した。17.9gの50重量%NaOH水溶液(0.22mol)と25.3gの塩化クロロアセチル(0.22mol)とを16℃より低い温度で130分で同時に添加した。反応終了時、混合物を27℃から30℃で26in(約660mm)Hgから27in(約685mm)Hgの真空下で真空蒸留して、水およびエタノールを除去した。蒸留中、一定の容量(約500mL)を維持するために、720mLのアセトニトリルをゆっくり添加した。このスラリーを濾過して、塩化ナトリウムを除去した。このケーキを約100mLのアセトニトリルで洗浄した。この溶媒を除去するとビス−ヒドラジド1−1が得られた。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ4.2(s,2H)、10.7(s,1H)、および11.6(s,1H)ppm。
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ41.0、116.1(q,J=362Hz)、155.8(q,J=50Hz)、および165.4ppm。
【0071】
ステップB:5−(トリフルオロメチル)−2−(クロロメチル)−1,3,4−オキサジアゾール(1−2)の調製
ACN(82mL)中のステップAで得られたビスヒドラジド1−1(43.2g,0.21mol)を5℃に冷却した。温度を10℃より低く維持して、オキシ塩化リン(32.2g,0.21mol)を添加した。この混合物を80℃に加熱して、HPLCが1−1の2面積%未満を示すまでこの温度で24時間エージングした。別の容器において、260mLのIPAcおよび250mLの水を混合して、0℃に冷却した。反応スラリーを、内部温度を10℃より低く保ったクエンチに充填した。加えた後、この混合物を30分間激しく攪拌した。温度を室温まで上げて、水層を取り除いた。次いで、有機溶媒層を215mLの水、次いで215mLの5重量%重炭酸ナトリウム水溶液、そして最後に215mLの20重量%食塩水溶液で洗浄した。75mmHgから80mmHg、55℃で蒸留することによって揮発分を除去すると、それ以上精製することなくステップCで直接使用できる油が得られた。別に本製品を蒸留によって精製すると、1−2が得られた。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.8(s,2H)ppm。
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ32.1、115.8(q,J=337Hz)、156.2(q,J=50Hz)、および164.4ppm。
【0072】
ステップC:N−[(2Z)−ピペラジン−2−イリデン]トリフルオロアセトヒドラジド(1−3)の調製
−20℃に冷却した、メタノール(150mL)中エチレンジアミン(33.1g、0.55mol)の溶液中に、内部温度を−20℃に維持しながらステップBで得られた蒸留オキサジアゾール1−2(29.8g、0.16mol)を、添加した。添加終了後、得られたスラリーを−20℃で1時間エージングした。次いで、エタノール(225mL)を充填し、スラリーを−5℃にゆっくりと加温した。−5℃で60分間維持した後、スラリーを濾過して、−5℃のエタノール(60mL)を用いて洗浄した。アミジン1−3が白色固体として得られた。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ2.9(t,2H)、3.2(t,2H)、3.6(s,2H)、および8.3(b,1H)ppm。13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ40.8、42.0、43.3、119.3(q,J=350Hz)、154.2,および156.2(q,J=38Hz)ppm。
【0073】
ステップD:3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン、塩酸塩(1−4)の調製
110mLのメタノール中アミジン1−3(27.3g、0.13mol)の懸濁液を55℃に加温した。この温度で37%塩酸(11.2mL、0.14mol)を15分間で添加した。添加中にすべての固体が溶解し、透明な溶液となった。反応物を30分間エージングした。この溶液を20℃に冷却し、シード床が形成されるまでこの温度でエージングした(10分から1時間)。20℃で300mLのMTBEを1時間で充填した。得られたスラリーを2℃に冷却し、30分間エージングし、濾過した。固形分を50mLのエタノール:MTBE(1:3)で洗浄して、真空下45℃で乾燥した。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ3.6(t,2H)、4.4(t,2H)、4.6(s,2H)、および10.6(b,2H)ppm;13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ39.4、39.6、41.0、118.6(q,J=325Hz)、142.9(q,J=50Hz)、および148.8ppm。
【0074】
【化34】

【0075】
ステップA:4−オキソ−4[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン](2−3)の調製
2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸(2−1)(150g、0.789mol)、メルドラム酸(125g、0.868mol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(7.7g、0.063mol)を5L容の三つ口フラスコに充填した。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(525mL)を室温で一度に添加して、固形分を溶解した。40℃より低い温度に維持しながら、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(282mL,1.62mol)を室温で一度に加えた。温度を0℃から5℃の間に維持しながら、塩化ピバロイル(107mL、0.868mol)を1から2時間で滴下した。この反応混合物を5℃で1時間エージングした。トリアゾール塩酸塩1−4(180g、0.789mol)を、40℃から50℃で一度に添加した。反応溶液を70℃で数時間エージングした。次いで、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(625mL)を20℃から45℃で滴下した。このバッチをシードし、20℃から30℃で1から2時間エージングした。次いで、追加の525mLの5%炭酸水素ナトリウム水溶液を2から3時間かけて滴下した。室温で数時間エージングした後、スラリーを0℃から5℃に冷却して、1時間エージングした後、固形分を濾過した。この湿ったケーキを20%水性DMAc(300mL)、次いで、さらに2バッチの20%水性DMAc(400mL)、最後に水(400mL)で置換洗浄した。このケーキを室温で吸引乾燥した。
【0076】
ステップB:(2Z)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタ−2−エン−2−アミン(2−4)の調製
5L容の丸底フラスコに、メタノール(100mL)、ケトアミド2−3(200g)および酢酸アンモニウム(110.4g)を充填した。次いで、添加中の温度を30℃より低く保ちながら、メタノール(180mL)および28%水酸化アンモニウム水溶液(58.6mL)を添加した。追加のメタノール(100mL)をこの反応混合物に添加した。混合物を還流温度で加熱し、2時間エージングした。反応物を室温に冷却し、次いで氷浴中で約5℃に冷却した。30分後固形分を濾過し、乾燥すると、2−4が固体として得られた。融点は271.2℃であった。
【0077】
ステップC:(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)の調製
250mL容フラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー{[Rh(cod)Cl]}(46mg、0.093mmol)および(R,S)t−ブチルJosiphos(106mg、0.196mmol)、塩化アンモニウム(12.5mg、0.234mmol)、ならびにエナミンアミド(25g、61.8mmol)を窒素雰囲気下で充填した。次いで、脱気MeOH(225mL)を添加し、混合物を室温で1時間攪拌した。このスラリーを、窒素雰囲気下で水素化装置に移した。3回脱気した後、エナミンアミドを100psiの水素ガス下、50℃で18時間水素化した。HPLCで測定したアッセイ収率は97%、光学純度は94%eeであった。
【0078】
光学純度を以下の方法でさらに高めた。水素化反応物(180mLのメタノール中18g)からメタノール溶液(メタノール180mL中18g)を濃縮し、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(45mL)に交換した。この溶液にHPO水溶液(0.5M、95mL)を添加した。層を分離した後、3NのNaOH(35mL)を水層に加え、次いでMTBE(180mL+100mL)で抽出した。MTBE溶液を濃縮して、溶媒を高温トルエン(180mL、約75℃)に交換した。次いで、高温トルエン溶液を0℃にゆっくりと冷却した(5から10時間)。濾過によって結晶を単離した(98%eeから99%ee)。融点は、114.1から115.7℃であった。
H NMR(300MHz,CDCN):δ7.26(m)、7.08(m)、4.90(s)、4.89(s)、4.14(m)、3.95(m)、3.40(m)、2.68(m)、2.49(m)、1.40(bs)。
【0079】
化合物2−5は、アミド結合回転異性体として存在する。指示されない限り、炭素−13シグナルは解像度がよくないので、多い方と少ない方との回転異性体を一緒にグループ化する。
13C NMR(CDCN):δ171.8、157.4(ddd,JCF=242.4,9.2,2.5Hz)、152.2(主)、151.8(副)、149.3(ddd;JCF=246.7,14.2,12.9Hz)、147.4(ddd,JCF=241.2,12.3,3.7Hz)、144.2(q,JCF=38.8Hz)、124.6(ddd,JCF=18.5,5.9,4.0Hz)、120.4(dd,JCF=19.1,6.2Hz)、119.8(q,JCF=268.9Hz)、106.2(dd,JCF=29.5,20.9Hz)、50.1、44.8、44.3(副)、43.2(副)、42.4、41.6(副)、41.4、39.6、38.5(副)、36.9。
【実施例2】
【0080】
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)の調製
1mL容の反応器に、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー{[Rh(cod)Cl]}(0.074mg、0.15μmol)および(R,S)t−ブチルJosiphos(0.179mg、0.033μmol)、ギ酸アンモニウム(6.6mg、0.15mmol)、ならびにケトアミド2−3(6.1mg、15μmol)を窒素雰囲気下で充填した。次いで、脱気したメタノール(200μL)を添加し、混合物を窒素下の圧力容器中、55℃で5時間攪拌した。次いで、混合物を250psiの水素ガス下、55℃で20時間水素化した。HPLCによって測定したアッセイ収率は、91%であり、光学純度は95%eeであった。
【0081】
以下の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を用いて生成物への転換%を測定した。
カラム: Agilent Extend C18、150mm x 4.6mm
溶離液: 溶媒A:80/20容量% 水/メタノール 10mM TRIS pH9
溶媒B:20/80容量% 水/メタノール 10mM TRIS pH9
勾配: 0分 55%A:45%B
8分 24%A:76%B
15分 24%A:76%B
流速: 2mL/分
注入量: 5μL
UV検出: 215nm
カラム温度:23℃
保持時間: 化合物2.4:5.9分
化合物2.5:4.2分
【0082】
以下の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を用いて光学純度を測定した。
カラム: Chirapak、AD−H、250mm x 4.6mm
溶離液: 60/40/0.1/0.1 vol/vol エタノール/ヘキサン/ジエチルアミン/水
アイソクラチック処理時間:24分
流速: 0.8mL/分
注入量: 10μL
UV検出: 268nm
カラム温度:35℃
保持時間: (R)アミン2−5:7.5分
(S)アミン:14.5分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
*記号で印された立体中心に(R)または(S)配置を有し、エナンチオマー過剰率が他方のエナンチオマーに対して少なくとも70%である構造式I:の化合物を調製する方法であって、
【化1】

[式中、Zは、OR、SRまたはNRであり;
は、C1〜8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1〜2アルキルまたはヘテロアリール−C1〜2アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立に、水素、C1〜8アルキル、アリールもしくはアリール−C1〜2アルキルであるか;またはRおよびRは、これらが結合している窒素原子と一緒になって、O、S、NHおよびNC1〜4アルキルから選択される追加のヘテロ原子を場合によって含む4から7員の複素環式環系を形成し、前記複素環式環は、非置換であるか、またはオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1〜4アルコキシおよびC1〜4アルキル(ここで、アルキルおよびアルコキシは、非置換であるか、または1から5個のフッ素で置換されている。)から独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;ならびに
前記複素環式環系は、5から6員の飽和もしくは芳香族炭素環式環系と、またはO、SおよびNC0〜4アルキルから選択される1から2個のヘテロ原子を含む5から6員の飽和もしくは芳香族複素環式環系と場合によって縮合しており、前記縮合した環系は、非置換であるか、またはヒドロキシ、アミノ、フッ素、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシおよびトリフルオロメチルから選択される1個から2個の置換基で置換されている。]
構造式II:
【化2】

のプロキラルなエナミンを好適な有機溶媒中で、アンモニウム塩、および構造式III:
【化3】

のキラルなフェロセニルジホスフィン配位子
[式中、Rは、C1〜4アルキルまたはアリールであり;
およびRは、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、C5〜12シクロアルキルまたはアリールであり;ならびに
は、C1〜4アルキルまたは非置換のフェニルである。]
と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で水素化するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記フェロセニルジホスフィン配位子が、構造式IV:
【化4】

[式中、**記号で印された立体中心は(R)配置を有している。]
である、請求項1の方法。
【請求項3】
が、C1〜2アルキルであり、RおよびRが、C1〜4アルキルであり、ならびにRが、非置換のフェニルである、請求項2の方法。
【請求項4】
が、メチルであり、RおよびRがt−ブチルであり、ならびにRが非置換のフェニルである、請求項3の方法。
【請求項5】
前記アンモニウム塩が、塩化アンモニウムである、請求項1の方法。
【請求項6】
が、ベンジルであり、ベンジルのフェニル基が非置換であるか、またはフッ素、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシからなる群から選択される1から3個の置換基で置換されている、請求項1の方法。
【請求項7】
Zが、ORまたはNRである、請求項1の方法。
【請求項8】
NRが、構造式VI:
【化5】

の複素環
[式中、Rは水素、または非置換のもしくは1から5個のフッ素で置換されているC1〜4アルキルである。]
である、請求項7の方法。
【請求項9】
前記遷移金属前駆体が、[M(cod)Cl]、[M(ノルボルナジエン)Cl]、[M(cod)]Xまたは[M(ノルボルナジエン)]Xであり、ここで、Xは、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェートまたはヘキサフルオロアンチモネートであり、ならびにMは、ロジウムまたはイリジウムである、請求項1の方法。
【請求項10】
前記遷移金属前駆体が、[Rh(cod)Cl]である、請求項9の方法。
【請求項11】
***記号で印された立体中心に(R)配置を有し、エナンチオマー過剰率が他方の(S)配置を有しているエナンチオマーに対して少なくとも70%である構造式1:の化合物を調製する方法であって、
【化6】

[式中、Arは、非置換またはフッ素、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシからなる群から独立に選択される1から5個の置換基で置換されているフェニルであり;ならびに
は、水素、または非置換のもしくは1から5個のフッ素で置換されているC1〜4アルキルである。]
構造式2:
【化7】

の化合物を、好適な有機溶媒中、アンモニウム塩、および構造式IV:
【化8】

のキラルなフェロセニルジホスフィン
[式中、Rは、C1〜4アルキルまたはアリールであり;RおよびRは、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、C5〜12シクロアルキルまたはアリールであり;ならびに
は、C1〜4アルキルまたは非置換のフェニルである。]
と錯形成したロジウム金属前駆体の存在下で水素化するステップを含む、方法。
【請求項12】
構造式2:
【化9】

の化合物を、構造式3:
【化10】

の化合物を好適な有機溶媒中、アンモニア源で処理することによって生成するステップをさらに含む、請求項11の方法。
【請求項13】
Arが、2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、ならびにRが、トリフルオロメチルである、請求項11の方法。
【請求項14】
前記ロジウム金属前駆体が、[Rh(cod)Cl]である、請求項11の方法。
【請求項15】
が、メチルであり、RおよびRが、ともにt−ブチルであり、ならびにRが、非置換のフェニルである、請求項11の方法。
【請求項16】
前記ロジウム金属前駆体が、[Rh(cod)Cl]であることを特徴とする請求項15の方法。
【請求項17】
が、メチルであり、RおよびRが、ともにt−ブチルであり、Rが、非置換のフェニルであり、Arが、2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rが、トリフルオロメチルであり、ならびに前記ロジウム金属前駆体が、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマーである、請求項11の方法。
【請求項18】
前記アンモニウム塩が、塩化アンモニウムである、請求項17の方法。
【請求項19】
前記アンモニア源が、酢酸アンモニウムである、請求項12の方法。
【請求項20】
***記号で印された立体中心に(R)配置を有し、エナンチオマー過剰率が他方の(S)配置を有しているエナンチオマーに対して少なくとも70%である構造式1:の化合物を調製する方法であって、
【化11】

[式中、Arは、非置換のまたはフッ素、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシからなる群から独立に選択される1から5個の置換基で置換されているフェニルであり;ならびに
は、水素、または非置換のもしくは1から5個のフッ素で置換されているC1〜4アルキルである。]
構造式3:
【化12】

の化合物を、好適な有機溶媒中、水素雰囲気下で構造式IV:
【化13】

のキラルなフェロセニルジホスフィン
[式中、Rは、C1〜4アルキルまたはアリールであり;
およびRは、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、C5〜12シクロアルキルまたはアリールであり;ならびに
は、C1〜4アルキルまたは非置換のフェニルである。]
と錯形成したロジウム金属前駆体の存在下でアンモニウム塩にさらすステップを含む、方法。
【請求項21】
前記アンモニウム塩が、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムおよび安息香酸アンモニウムからなる群から選択される、請求項20の方法。

【公表番号】特表2008−528503(P2008−528503A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552303(P2007−552303)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/002147
【国際公開番号】WO2006/081151
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】