説明

不斉触媒およびそれを用いた合成方法

【課題】 新規な不斉触媒およびそれを用いた合成方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、パラジウム触媒と下記一般式(I)で表されるアミド化合物とからなる不斉触媒である。
【化1】



(式中、Rは、水素、スルホニル基を示し、Rは、置換基を有していてもよいビシクロアルキル基、置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい芳香族アシル基を示す。RとRは、結合して環を形成していてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な不斉触媒およびそれを用いた合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性物質および機能性物質は、不斉炭素原子原子を持ったキラル分子であるものが多い。したがって、望みの絶対配置を持つ鏡像異性体を選択的に合成する不斉合成反応を開発することは、極めて重要である。選択性の高い不斉合成反応を触媒する触媒を開発することが要求されている。このような不斉合成を触媒する触媒が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
これらの文献記載の触媒は、アリルアミンを合成するための触媒である。別な反応を行うためには、別な触媒が必要とされる。そして、望みの絶対配置を持つ鏡像異性体を選択的に合成する触媒を得ることが必要である。
【特許文献1】特開2005−120041号公報
【特許文献2】特開2005−154350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、新規な不斉触媒およびそれを用いた合成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0006】
本発明の不斉触媒は、パラジウム触媒と下記一般式(I)で表されるアミド化合物とからなる。
【化1】


(式中、Rは、置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい芳香族アシル基を示す。)
【0007】
前記一般式(I)で表されるアミド化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であると好ましい。
【化2】

【0008】
本発明は、アリルアセテート類またはアリルカーボネートと、アミン類またはソフト求核剤とを、パラジウム触媒と下記一般式(I)で表されるアミド化合物とからなる不斉触媒の存在下で反応させる合成方法である。
【化3】


(式中、Rは、置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい芳香族アシル基を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明は、選択性の高い不斉合成反応を触媒する新規な不斉触媒およびそれを用いた合成方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
[パラジウム触媒]
本発明で使用できるパラジウム触媒としては、特に制限されず、公知のパラジウム触媒が使用できる。具体的には、[Pd(η−C)Cl]、Pd(OAc)、Pddba・CHCl、Pd(PPhなどが挙げられる。
【0012】
[アミド化合物]
本発明で、使用できるアミド化合物としては、下記一般式(I)で表されるアミド化合物である。
【化4】


(式中、Rは、置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい芳香族アシル基を示す。)
【0013】
[R
は、置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基を示す。
【0014】
置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基は、2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基、2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基のヒドロキシル基と、エステル結合を形成するものでエステルが形成されているものであってもよい。ヒドロキシル基と、エステル結合を形成するものとは、カルボン酸RCOOH(Rは、アリール基、炭素数1〜10のアルキル基、置換ベンゼン誘導体、置換へテロ芳香族誘導体である)、酸塩化物RCOCl(Rは、アリール基、炭素数1〜10のアルキル基、置換ベンゼン誘導体、置換へテロ芳香族誘導体である)を示す。具体的には、2−ヒドロキシ安息香酸、2−アセト安息香酸、2−ジフェニルフォスフィノ安息香酸、ピコリン酸などがあげられる。
【0015】
[R
は、置換基を有していてもよい芳香族アシル基を示す。具体的には、化学式(I)に示すように、アミド結合を形成できるカルボン酸RCOOH(Rは、アリール基、炭素数1〜10のアルキル基、置換ベンゼン誘導体、置換へテロ芳香族誘導体である)、酸塩化物RCOCl(Rは、アリール基、炭素数1〜10のアルキル基、置換ベンゼン誘導体、置換へテロ芳香族誘導体である)を示す。具体的には、2−ヒドロキシ安息香酸、2−アセト安息香酸、2−ジフェニルフォスフィノ安息香酸、ピコリン酸などがあげられる。
【0016】
[アミド化合物の製造]
本発明のアミド化合物は、例えば以下のようにして製造される。
【0017】
上記カルボン酸RCOOHまたは酸塩化物RCOClを、塩化メチレンなどの有機溶媒に溶解する。使用できる有機溶媒としては、塩化メチレンに限られず、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジクロロエタンなどの公知の有機溶媒が挙げられる。
【0018】
上記溶液を0℃に保ったものに、縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」という)、求核触媒としてN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、「DMAP」という)、ノルエフェドリンを加え、攪拌する。この混合液を室温でさらに2時間攪拌すると、本発明で使用できるアミド化合物が得られる。
【0019】
反応終了後、塩化メチレンなどの有機溶媒で希釈し、飽和塩化アンモニウムで洗浄する。洗浄後の液を塩化メチレンなどの有機溶媒で抽出し、下層を得る。得られた下層を、芒硝などの乾燥剤を用いて乾燥させる。得られた下層は、シリカゲル分取薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィーにより目的物を分取する。展開溶媒の種類、混合比などは、得られるアミド化合物により異なる。また、クロマトグラフの回数は、1回に限らず、複数回行ってもよい。
【0020】
上記のカルボン酸RCOOH、酸塩化物RCOCl、有機溶媒、DCC、DMAP、ノルエフェドリンの配合比を変えることで、同一の化合物を用いても、異なるアミド化合物を得ることができる。
【0021】
上記反応により得られるアミド化合物としては、例えばピコリン酸−1−フェニル−2−[(ピリジン−2−カルボニル)−アミノ]プロピルエステル、2−ジフェニルホスファニル−安息香酸−2−(2−ジフェニルホスファニル−1−ベンゾイルアミノ)−1−フェニル−プロピルエステル、酢酸−2−(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニル−エチルカルバモイル)−フェニルエステル、2−アセトキシ安息香酸−2−(2−アセトキシ−ベンゾイルアミノ)−1−フェニル−プロピルエステル、ピコリン酸(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニル−エチル)−アミド、2−[(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニル−エチルアミノ)−(2−ヒドロキシフェニル)−メトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル)ベンズアミド、2−ヒドロキシ安息香酸−2−(2−ヒドロキシ−ベンゾイルアミノ)−1−フェニル−プロピルエステルなどが挙げられる。
【0022】
[基質]
本発明の合成方法に用いられる基質として使用できるのは、アリルアセテート類またはアリルカーボネート類である。これらのアリルアセテート類またはアリルカーボネート類は、例えば、下記式で表される。これらのアリルアセテート類またはアリルカーボネート類は、下記式で示すように分子内で環が形成されていてもよい。
【化5】



式中、RとRとは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい、水素、アリール基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルキニル基、置換ベンゼン誘導体、置換へテロ芳香族誘導体を示す。具体的には、フェニル基、エチルフェニル基、t−ブチルジメチルシリル化されたエチル基、トリメチルシリル化されたアセチレン基などが挙げられる。
【化6】



式中、Rは、水素、アリール基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルキニル基、置換ベンゼン誘導体、置換へテロ芳香族誘導体、カルボキシル基を示す。nは、0〜5の整数である。
【0023】
[アミン類またはソフト求核剤]
上記基質と反応するのは、アミン類またはソフト求核剤である。使用できるアミン類としては、特に制限はないが、1−フェニルエチルアミン、アンフェタミン、などが挙げられる。
【0024】
ソフト求核剤としては、RC−CH−COで表される、ジカルボン酸またはそのエステル、RCOCHCOHR(RとRとは、結合して環を形成していてもよい)で表されるエノール、R10COCHCOR11(R10またはR11は、COCHCO結合のCHの炭素と結合して環を形成していてもよい)で表されるジケトンなどが挙げられる。式中、R、R、R、R、R10、R11は、水素、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルキニル基、置換ベンゼン誘導体、置換へテロ芳香族誘を示す。
【0025】
本発明の不斉触媒を用いると、(1,3−ジフェニルアリル)−((1R)−フェニルエチル)アミンの低極性体を効率よく得るなどの選択性の高い不斉合成反応を触媒することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0027】
[合成例1]
ピコリン酸−1−フェニル−2−[(ピリジン−2−カルボニル)−アミノ]プロピルエステル(Pyridine−2−carboxylic acid 1−phenyl−2−[(pyridine−2−carbonyl)−amino]−propyl ester)の合成
塩化メチレン(27.81ml)にピコリン酸0.89g(7.28mmol)(2.2モル当量:ノルエフェドリン)を加え、攪拌した。この溶液を氷浴上で0℃に保ちながら、DCC1.50g(7.28mmol)、ノルエフェドリン0.50g(3.31mmol)、DMAP0.089g(0.73mmol)を加えた。ノルエフェドリンの添加量は、ピコリン酸がノルエフェドリンの2.2モル当量になる量であった。この溶液を、氷浴上で、攪拌した。攪拌後、溶液を氷浴からはずし、室温で、2時間攪拌した。得られた反応生成物を含む混合液を塩化メチレンで3倍に希釈した後、飽和塩化アンモニウムで洗浄した。洗浄後の反応生成物を含む混合液を塩化メチレンで3回抽出した。抽出下層を芒硝を用いて乾燥した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(カラム450mm×φ25mm、シリカゲル60g)で分離し、合成例1のアミド化合物(以下に「サンプル1」という)を0.5mg(収量:37.8%)を得た。得られたアミド化合物は、ヘキサン・酢酸エチル混液(1:1(体積比))で、シルカゲル薄層クロマトグラムを行ったところ、Rf=0.4であり、融点は73.3℃であった。
分子量:361.39;FT−IR υmax/cm−1:3316(N−H)、1680(C=O)、1632(−NHCO);比旋光度[α](c,solv.):−15.20(CHCl);H−NMR δ(CDCl):1.16(d,3H),4.48−4.52(m,1H),6.22(br,1H),7.27(s,5H),7.34−8.54(m,9H).

【化7】

【0028】
[合成例2]
2−ジフェニルホスファニル−安息香酸−2−(2−ジフェニルホスファニル−1−ベンゾイルアミノ)−1−フェニル−プロピルエステル(2−Diphenylphosphanyl−benzoic acid 2−(2−diphenylphosphanyl−benzoylamino)−1−phenyl−propyl ester)の合成
ピコリン酸の代わりに、2−ジフェニルフォスフィノ−サリチル酸を用いた以外は、合成例1と同様にして、合成例2のアミド化合物(以下に「サンプル2」という)を0.31g(収量:64.5%)を得た。本実施例では、2−ジフェニルフォスフィノ−サリチル酸0.459g(1.45mmol)(2.2モル当量:ノルエフェドリン)を塩化メチレン(6.6ml)に溶解した。また、ノルエフェドリンは、0.1g(0.661mmol)、DCC0.300g(1.45mmol)、DMAP0.008g(0.066mmol)を用いた。得られたアミド化合物は、ヘキサン・酢酸エチル混液(2:1(体積比))で、シルカゲル薄層クロマトグラムを行ったところ、Rf=0.524であり、融点は93.5℃であった。
分子量:727;FT−IR υmax/cm−1:3700−3100(−OH)、1720,1660(−NH−CO−)、1510(−COO−);比旋光度[α](c,solv.):0.135(CHCl3);H−NMR(400MHz,CDCl,TMS内標) δ=0.89(d,J=6.585/Hz,3H),4.45(s,1H),6.06(d,J=3.170/Hz,1H),6.97−7.64(m,39H);13H−NMR:6.71,8.10,14.2,49.7,62.9,67.1,89.1,78.8,126.2,127.8,128.2,128.3,128.5,128.6(×3),128.7,128.8,128.9,129.4,130.2,130.4,131.2,133.4,133.6(×2),133.7,133.8,134.0,134.4,134.7,137.3,166.3.

【化8】


【0029】
[合成例3]
酢酸−2−(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニル−エチルカルバモイル)−フェニルエステル(Acetic acid 2−(2−hydroxy−1−methyl−2−phenyl−ethylcarbamoyl)−phenyl ester)の合成
ピコリン酸の代わりにアセチルサリチル酸を用いた以外は、合成例1と同様にして、合成例3のアミド化合物(以下に「サンプル3」という)を0.43g(収量:41.4%)を得た。本実施例では、アセチルサリチル酸0.659g(7.28mmol)(1.1モル当量:ノルエフェドリン)を塩化メチレン(150ml)に溶解した。また、ノルエフェドリンは、0.510g(3.31mmol)、DCC0.752g(7.28mmol)、DMAP0.041g(0.0331mmol)を用いた。また、精製用のシリカゲルは、100g用いた。得られたアミド化合物は、ヘキサン・酢酸エチル混液(2:1(体積比))で、シルカゲル薄層クロマトグラムを行ったところ、Rf=0.210であり、融点は66.5℃であった。
分子量:313;FT−IR υmax/cm−1:3315(OH),3064−2854(ベンゼン),1765(−CO−),1640(−NH−CO−);比旋光度[α](c,solv.):28.755(CHCl3);H−NMR(400MHz,CDCl,TMS内標) δ=1.06−1.04(d,J=6.829/Hz,3H),2.03(s,1H),2.23(s,3H),4.08−4.13(q,J=7.073/Hz,1H),4.94(d,J=2.923/Hz,1H),7.25−7.64(m,9H),7.77−7.96(m,1H);13H−NMR:14.04,20.9,51.29,75.72,123.07,126.11,126.26,126.33,127.47,127.75,128.22,128.49,129.85,131.90,140.76,147.89,165.79,169.07


【化9】

【0030】
[合成例4]
2−アセトキシ安息香酸−2−(2−アセトキシ−ベンゾイルアミノ)−1−フェニル−プロピルエステル(2−Acetoxy−benzoic acid 2−(2−acetoxy−benzoylamino)−1−phenyl−propyl ester)の合成
ピコリン酸の代わりにアセチルサリチル酸を用いた以外は、合成例1と同様にして、合成例4のアミド化合物(以下に「サンプル4」という)を0.51g(収量:31.24%)を得た。本実施例では、アセチルサリチル酸1.312g(7.28mmol)(2.2モル当量:ノルエフェドリン)を塩化メチレン(150ml)に溶解した。また、ノルエフェドリンは、0.510g(3.31mmol)、DCC1.504g(7.28mmol)、DMAP0.082g(0.662mmol)を用いた。また、精製用のシリカゲルは、100g用いた。得られたアミド化合物は、ヘキサン・酢酸エチル混液(2:1(体積比))で、シルカゲル薄層クロマトグラムを行ったところ、Rf=0.25であり、融点は44.2℃であった。
分子量:493;FT−IR υmax/cm−1:3323(OH),3065,2938(ベンゼン),1744(−CO−),1657(−NH−CO−);比旋光度[α](c,solv.):−5.10(CHCl3、1mol/l);H−NMR(400MHz,CDCl,TMS内標) δ=0.90−0.92(d,J=6.585/Hz,3H),1.13,1.15(d,J=6.829/Hz,3H),2.15(s,3H),2.21(s,3H),4.53−4.63(m,1H),5.83,5.84(d,J=3.902/Hz,1H),5.93,5.92(d,J=3.658/Hz,1H),5.83−8.24(m,13H);13H−NMR:15.21,20.86,21.02,48.89,77.22,121.88−151.21

【化10】


【0031】
[合成例5]
ピコリン酸(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニル−エチル)−アミド(Pyridine−2−carboxylic acid (2−hydroxy−1−methyl−2−phenyl−ethyl)−amide)の合成
ピコリン酸、ノルエフェドリン、DCC、DMAPの使用量を変えた以外は、合成例1と同様にして、合成例5のアミド化合物(以下に「サンプル5」という)を0.08g(収量:9.43%)を得た。本実施例では、ピコリン酸0.45g(3.64mmol)(1.1モル当量:ノルエフェドリン)を塩化メチレン(150ml)に溶解した。また、ノルエフェドリンは、0.510g(3.31mmol)、DCC0.752g(3.64mmol)、DMAP0.041g(0.331mmol)を用いた。また、精製用のシリカゲルは、100g用いた。得られたアミド化合物は、ヘキサン・酢酸エチル混液(2:1(体積比))で、シルカゲル薄層クロマトグラムを行ったところ、Rf=0.21であり、融点は71.1℃であった。
分子量:256;FT−IR υmax/cm−1:3327,3287(OH),3061−2854(ベンゼン),1650(−NH−CO−);比旋光度[α](c,solv.):−24.10(CHCl3、1mol/l);H−NMR(400MHz,CDCl,TMS内標) δ=1.13,1.15(d,J=6.829/Hz,3H),4.15−4.22(m,1H),4.99,5.00(d,J=2.927/Hz,1H),7.23−8.57(m,11H);13H−NMR:14.27,51.13,76.41,122.28,122.92,125.10,126.18,126.34,127.42,128.10,137.33,140.82,148.06,149.58,164.60

【化11】

【0032】
[合成例6]
2−[(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニル−エチルアミノ)−(2−ヒドロキシフェニル)−メトキシ安息香酸(2−[(2−Hydroxy−1−methyl−2−phenyl−ethylamino)−(2−hydroxy−phenyl)−methoxy]−benzoic acid)、
2−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル)ベンズアミド(2−Hydroxy−N−(2−hydroxy−1−methyl−2−phenyl−ethyl)−benzamide)、
2−ヒドロキシ安息香酸−2−(2−ヒドロキシ−ベンゾイルアミノ)−1−フェニル−プロピルエステル(2−Hydroxy−benzoic acid 2−(2−hydroxy−benzoylamino)−1−phenyl−propyl ester)の合成
ピコリン酸の代わりにアセチルサリチル酸を用いた以外は、合成例1と同様にして、合成例6のアミド化合物(以下に「サンプル6A」、「サンプル6B」、「サンプル6C」という)の3種類のアミド化合物を得た。それぞれの収率は、サンプル6A:0.07g(収量:5.38%)、サンプル6B:0.10g(収量:11.16%)、サンプル6C:0.19g(収量:14.68%)であった。本実施例では、アセチルサリチル酸1.50g(3.62mmol)(1.1モル当量:ノルエフェドリン)を塩化メチレン(23ml)に溶解した。また、ノルエフェドリンは、0.510g(3.31mmol)、DCC0.75g(3.63mmol)、DMAP0.040g(0.33mmol)を用いた。得られたアミド化合物は、ヘキサン・酢酸エチル混液(4:1(体積比))で、シルカゲル薄層クロマトグラムを行ったところ、サンプル6A:Rf=0.39、サンプル6B:Rf=0.25、サンプル6C:Rf=0.11であった。
サンプル6A:
分子量:393.43;FT−IR υmax/cm−1:3357(NH),2929,2855(ベンゼン),1677,1643,1609(−CO−),754,700(ベンゼン);H−NMR(400MHz,CDCl,TMS内標) δ=1.31(dd,J=21.34,6.83/Hz,3H),2.04(s,1H)、2.25(s,1H)、3.30(dd,1H),4.08−4.24(m,1H),4.81(t,1H),6.22(d,J=2.93/Hz,1H),6.83(t,J=7.19/Hz,1H),6.90−7.05(m,1H),7.23−7.60(m,10H),7.99(d,J=7.81/Hz,1H),10.52(s,1H);13H−NMR:15.2,49.0,78.3(×2),111.8,112.2,113.7,117.9,118.8,119.5,125.2,126.3(×2),128.7,128.8(×2),129.8,134.4,136.1,136.3


【化12】


サンプル6B:
分子量:271.31;FT−IR υmax/cm−1:3360(NH),1637(−CO−),1592(N−H),809(N−H),753,751(ベンゼン);H−NMR(400MHz,CDCl,TMS内標) δ=1.05(d,J=6.83/Hz,3H),4.44(t,J=6.83/Hz,1H),4.90(d,J=2.93/Hz,1H),6.75(t,J=7.56/Hz,1H),6.86(d,J=6.59/Hz,1H),6.92(d,J=8.29/Hz,1H),7.25−7.37(m,7H);13H−NMR:13.8,50.7,75.8,114.3,118.4,118.8,125.9,126.1(×2),127.7,128.3(×2),134.2,140.5,161.2,169.8

【化13】


サンプル6C:
分子量:391.41;FT−IR υmax/cm−1:3327(NH),2930,2852(ベンゼン),1692,1629(−CO−),752,700(ベンゼン);H−NMR(400MHz,CDCl,TMS内標) δ=0.87(d,J=6.83/Hz,3H),4.36(q,J=6.34/Hz,1H),4.78(dd,J=2.68,8.05/Hz,2H),6.59(dd,J=8.05,18.53/Hz,1H),6.92(m,1H),6.95(d,J=8.54/Hz,1H),7.01(d,J=8.29/Hz,1H),7.09(d,J=8.05/Hz,1H),7.19−7.55(m,7H),7.71(t,J=8.05/Hz,1H),7.82(d,J=7.56/Hz,1H),7.96(dd,J=1.46,8.05/Hz,1H);13H−NMR:13.9,51.2,76.0,111.6,117.7,117.9,119.7,123.0,124.3,126.1(×2),127.0,127.6,128.3(×2),130.2,132.2,136.9,140.6,162.1,162.2,165.5,168.4


【化14】



【0033】
(実施例)
アセタート(50mg、0.20mmol)、(R)−1−フェニルエチルアミン(36mg、0.30mmol)、π−アリルパラジウムクロリドダイマー(0.7mg、0.0002mmol)、サンプル2のアミドエステル(3.6mg、0.005mmol)、ならびに炭酸カリウム(28mg、0.20mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1mL)を、55℃で2時間攪拌した。反応混合物は、シリカゲルを用いて濾過した後、残渣をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1(体積))により生成した。この反応により、低極性体(44mg、70%)と高極性体(2.8mg、4%)とが得られ、低極性体((1,3−ジフェニルアリル)−((1R)−フェニルエチル)アミン)を94:6の高い選択性で得ることができた。
反応は以下のように進行した。
【化10】



ここで、L*は、下式である。
【化11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム触媒と下記一般式(I)で表されるアミド化合物とからなる不斉触媒。
【化1】


(式中、Rは、置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい芳香族アシル基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるアミド化合物が、下記一般式で表される化合物である請求項1に記載の不斉触媒。
【化2】

【請求項3】
アリルアセテート類またはアリルカーボネート類と、アミン類またはソフト求核剤とを、パラジウム触媒と下記一般式(I)で表されるアミド化合物とからなる不斉触媒の存在下で反応させる合成方法。
【化3】


(式中、Rは、置換基を有していてもよい2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル基を示し、Rは、置換基を有していてもよい芳香族アシル基を示す。)

【公開番号】特開2008−104984(P2008−104984A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291851(P2006−291851)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】