説明

不正防止部材、及びパチンコ遊技機

【課題】遊技場に設置されたパチンコ遊技機の前枠とガラスパネルとの接触面からピアノ線、セル板等を差し込んで行われる不正行為を有効に阻止する。
【解決手段】前枠30の背面に透明パネル50の前面外周部を添設して固定した際に、該透明パネルの外周縁と前枠背面との間に不正器具を挿入可能な接触面37aが形成される場合に、接触面と連通する隙間37b内に着脱自在に装着されて不正器具の遊技盤面への挿入を阻止する不正防止部材60であって、隙間内に嵌合される嵌合突起部61と、嵌合突起部に設けられ嵌合突起部が隙間内に嵌合された時に隙間内に設けられた第1の被係止部36a’に係止される係止突起63と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外枠の一側端に設けた軸支部によって内枠と前枠の各一側端を夫々開閉自在に軸支したパチンコ遊技機において、前枠と前枠に固定された透明板との隙間から遊技盤面にピアノ線等を差し込むことにより実行される不正行為を有効に防止できる不正防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機は、遊技場の島設備に組み付けられる外枠と、遊技盤を支持すると共に外枠により一側端縁を回動可能に軸支された内枠と、遊技盤の前面を覆う透明パネル(ガラスパネル)を支持すると共に内枠の一側端縁に設けた軸支部により一側端縁を回動可能に軸支された前枠(ガラス枠)と、を備えている。
従来から、外枠に装着された状態にある内枠に対して前枠を閉止した際に、開閉軸が設けられた内枠の一側端縁と前枠の一側端縁との間に形成される隙間から、ピアノ線、セル板等の不正器具を遊技領域内に差し込んで遊技球や盤面部品に干渉させて遊技者に有利に遊技を進行させる不正行為が行われている。
【0003】
このような不正行為を阻止するために特許文献1には、内レールとガラス面との間に跨って軟質材から成る不正防止片を配置することにより、不正器具の挿入を防止する技術が開示されている。
しかし、この従来技術にあっては、内レールが配置されている領域に限って不正器具の挿入を防止できるに過ぎず、図柄表示装置の大型化に伴って盤面領域が拡大した昨今のパチンコ遊技機においては、内レールが配置されていない領域からの不正器具の挿入が可能となっており、不正行為を防止するには不十分であった。
また、特許文献2には、遊技盤を保持した内枠の左側端縁に断面コ字状のリブを設けると共に、遊技盤を覆うガラスパネルを保持した前枠の左側端縁にはI字状のリブを設け、内枠に対して前枠を閉止したときにコ字状リブの凹所内にI字状リブが嵌合して両枠間の隙間を埋めるようにした不正行為防止構造が提案されている。
しかし、内枠と前枠の隙間内にコ字状リブの固定面が位置しているため、バール、ドライバー等の不正行為実行工具を隙間から差し込んでリブを内枠から離脱させて不正器具を差し込む隙間を新たに形成することが可能であり、不正行為を防止するには十分でなかった。
【0004】
ところで従来から、前枠と、前枠の背面に添設固定されたガラスパネルとの接触面から不正器具を圧入して遊技盤面上の入賞口を不正に開放する行為が行われている。このような不正行為が行われる前枠とガラスパネルとの接触面のうち開閉軸とは反対側に位置している部分については、上記従来の不正防止技術によっては対応することが不可能であった。
即ち、前枠とガラスパネルとの接触面のうち、開閉軸側の端辺と、上下両辺においては、階段状、或いはクランク状に複雑に屈曲させた長い接触長とすることによって不正器具の挿入を阻止することが可能であるが、開閉軸とは反対側の他端縁は、ガラスパネル端縁と前枠端縁との間に施錠のためのロック機構を配置する必要から幅が狭くなっているため、前枠とガラスパネルとの接触面幅が狭く、不正器具の挿入が容易であった。
【0005】
これを図13の前枠の一部背面斜視図と、図14の前枠の横断面図と、図15の前枠の要部横断面図に基づいて説明すると、矩形環状の前枠100の背面にはガラスパネル110がその外周側前面を添設させた状態で固定レバー120によって数カ所を着脱自在に固定されている。前枠100はその一側端縁101を図示しない外枠の一側端縁に設けた軸支部により回動自在に軸支されている。
ガラスパネル110の外周側前面を前枠の背面に組付け固定することにより、前枠の開口部がガラスパネルにより閉止される。前枠の背面側には環状に板金製枠材140が固定されると共に、この板金製枠材140の前部には厚肉の樹脂部材141が環状に固定されている。ガラスパネル110は、前枠の開口部周縁に沿って環状に配置された樹脂部材141の内周面に形成される段差状のガラスパネル支持面によって外周縁を支持されることにより位置決めされ、固定レバー120を締結することにより前枠に固定される。
【0006】
ガラスパネル110は、二枚のガラス板111を所定のギャップGを間に挟んで対向配置させた状態で各ガラス板の外周縁を樹脂製の環状枠材112により保持一体化した構成を備えており、ガラスパネル110の外周及び前面を前枠100の背面(樹脂部材141の内周段差面)に添設した状態で、前枠に設けた固定レバー120により固定される。図14から明らかなようにガラスパネル110の一側端縁は前枠の一側端縁(開閉軸側)101に向けて深く入り込む一方で、ガラスパネルの他側端縁は前枠の他側端縁102の手前で終端している。これは前枠の一側端縁には障害物がないためにガラスパネルの一側端縁を前枠の一側端縁に向けて延長させたとしても不具合が少ない一方で、前枠の他側端縁102には施錠のためのロック機構105を配置する必要があるため、ガラスパネルの他側端縁とロック機構との干渉を回避するためにはガラスパネルの他側端縁をロック機構の手前で終端させる必要があるからである。このように、前枠の開閉軸側の一側端縁では、前枠背面とガラスパネルとの接触面積を広く確保できるため、当該接触面130を図14中に示すように階段状(クランク状)に構成して不正器具の挿入を阻止するように構成することが可能となる。また、この開閉軸側の部位には、スペース上の余裕があるために特許文献1、2に開示された不正防止構造を採用することが可能であるが、他側端縁102側には特許文献2の防止構造を採用するスペース上の余裕がない。
【0007】
他方、ガラスパネルを支持するスペースが極限されている前枠の他側端縁側102では、図15に示すようにガラスパネルの他側端縁と前枠背面(樹脂部材141)との接触面131は接触長が短いL字状面となっているに過ぎず、不正器具の挿入が容易な構造となっている。即ち、前枠がガラスパネルの他側端縁を支持する部位には、板金製枠材140によって支持された樹脂部材141が固定されており、接触長が極めて短いL字面状の接触面131によりガラスパネル端縁を支持しているに過ぎないため、図15中に矢印Dで示した挿入方向から弾性部材141を変形させつつ針金、薄板等の不正器具を圧入することが容易であり、遊技盤面上の入賞口を開放させて不正に出玉を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−164248号公報
【特許文献2】特開2008−289778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように従来のパチンコ遊技機にあっては、前枠とガラスパネルとの接触面、特に前枠の開閉軸とは反対側の接触面からピアノ線、セル板等を差し込んで不正行為を行うことが可能であった。また、施錠用のロック機構等を設けるスペースを確保する必要から環状の前枠(樹脂部材)とガラスパネル端縁との接触面の長さが短くなっている部分では、不正防止のための加工を施す余地がないため、ガラスパネルと前枠との接触面が接触長が短いL字状面をなしており、不正器具の挿入が容易な構造となっていた。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、遊技場に設置されたパチンコ遊技機の前枠とガラスパネルとの接触面からピアノ線、セル板等を差し込んで行われる不正行為を有効に阻止することができる不正防止部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る不正防止部材は、一側部に軸支部を有した外枠と、遊技盤を支持し且つ該軸支部により一側部を回動可能に軸支された内枠と、前記遊技盤の前面を覆う透明板を着脱自在に支持し且つ前記軸支部により一側部を回動可能に軸支された前枠と、を備えたパチンコ遊技機に装備され、前記前枠の背面に前記透明パネルの前面外周部を添設して固定した際に、該透明パネルの外周縁と前記前枠背面との間に不正器具を挿入可能な接触面が形成される場合に、該接触面と連通する隙間内に着脱自在に装着されて前記不正器具の遊技盤面への挿入を阻止する不正防止部材であって、前記隙間内に嵌合される嵌合突起部と、該嵌合突起部に設けられ該嵌合突起部が前記隙間内に嵌合された時に前記隙間内に設けられた第1の被係止部に係止される係止突起と、を備えたことを特徴とする。
遊技盤前面を覆う透明パネルは、遊技盤を支持する内枠の一側端縁に対して開閉自在に配置された前枠の背面に取り付けられている。不正行為者は、前枠背面と透明パネルとの接触面に不正器具を差し込んで遊技盤面上の入賞口などに対して不正行為を行う。本発明では、前枠と透明パネルとの接触面の背面側に形成される隙間を利用して不正防止部材を装着し、表側から不正器具を挿入した場合に不正防止部材によってそれ以上の侵入を阻止できるようにした。不正防止部材は、係止突起を隙間内に設けた第1の被係止部に係止されることにより、表面側から押された場合にも脱落することがない。
【0011】
請求項2の発明に係る不正防止部材は、前記嵌合突起部と一体化され該嵌合突起部が前記隙間内に嵌合された時に前記隙間外に位置するベース部と、前記ベース部に設けられて前記前枠の一部と係止される第2の被係止部と、を備えたことを特徴とする。
嵌合突起部を隙間内に嵌合することにより、隙間はベース部との協働により閉塞され、表面側から挿入されてくる不正器具が遊技盤面側に侵入することを阻止することができる。不正防止部材の一部を第2の被係止部に係止することにより、不正防止部材を前枠に対して安定して固定することができる。
請求項3の発明に係る不正防止部材は、前記前枠の背面には、固定された前記透明パネルの外周縁に沿って配置された板金製枠材と、該板金製枠材に沿って配置された樹脂部材と、から成る透明パネル支持枠が形成されており、前記隙間は前記透明パネル支持枠と前記透明パネルとの間に形成され、前記第1の被係止部及び前記第2の被係止部は、前記板金製枠材に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明に係る不正防止部材は、前記隙間に固定された前記不正防止部材を該隙間から離脱させた場合には、前記係止突起が破損して離脱の形成が残されることを特徴とする。
不正に不正防止部材を除去しようとしても、係止突起が破損することにより、不正行為の形跡を残すことが可能となり、迅速な対応を行うことが可能となる。
請求項5の発明に係る不正防止部材は、前記前枠に前記不正防止部材を固定した状態で、前記前枠を内枠に閉じた時に、前記内枠により支持された前記遊技盤の一部、或いは盤面部品が前記不正防止部材の背面と圧接するように構成したことを特徴とする。
不正防止部材を前枠と内枠との間で抑えることにより、固定力を高めることができる。
請求項6の発明に係るパチンコ遊技機は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の不正防止部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、不正器具を挿入可能な前枠とガラスパネルとの接触面からピアノ線、セル板等の不正器具を挿入する行為を防止するために、前枠とガラスパネル端縁との間に形成される隙間に不正防止部材を後付けによって組付け可能としたので、効果的に不正行為を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る不正防止部材を装着したパチンコ遊技機を開放した状態を示す外観斜視図である。
【図2】図1のパチンコ遊技機を一部破線で示す正面図である。
【図3】図1のパチンコ遊技機の前枠の背面図である。
【図4】前枠に対してガラスパネルと不正防止部材を組付ける手順を示す分解斜視図である。
【図5】前枠に不正防止部材を取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。
【図6】図5において不正防止部材を取り付ける手順を示す説明図である。
【図7】(a)及び(b)は不正防止部材を取り付ける前の不正行為実施可能箇所を示す図、及び不正防止部材を取り付けた後の不正行為実施可能箇所を示す図である。
【図8】(a)及び(b)は不正防止部材の一例の構成を示す斜視図である。
【図9】不正防止部材の各部と不正行為実行可能箇所との係合関係を示す模式図である。
【図10】図1のA−A断面図である。
【図11】(a)及び(b)は図1のB−B断面図である。
【図12】前枠に組み付けられた不正防止部材と内枠、或いは遊技盤の一部との対応関係を示す説明図である。
【図13】パチンコ遊技機の前枠の要部背面図である。
【図14】図13の前枠の横断面図である。
【図15】図14の前枠の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る不正防止部材を装着したパチンコ遊技機を開放した状態を示す外観斜視図であり、図2は図1のパチンコ遊技機を一部破線で示す正面図であり、図3は図1のパチンコ遊技機の前枠の背面図であり、図4は前枠に対してガラスパネルと不正防止部材を組付ける手順を示す分解斜視図であり、図5は前枠に不正防止部材を取り付けた状態を示す要部拡大斜視図であり、図6は図5において不正防止部材を取り付ける手順を示す説明図であり、図7(a)及び(b)は不正防止部材を取り付ける前の不正行為実施可能箇所を示す図、及び不正防止部材を取り付けた後の不正行為実施可能箇所を示す図であり、図8(a)及び(b)は不正防止部材の一例の構成を示す斜視図であり、図9は不正防止部材の各部と不正行為実行可能箇所との係合関係を示す模式図であり、図10は図1のA−A断面図であり、図11(a)及び(b)は図1のB−B断面図であり、図12は前枠に組み付けられた不正防止部材と内枠、或いは遊技盤の一部との対応関係を示す説明図である。
【0016】
パチンコ遊技機1の骨格構造は、各図に示すように矩形枠形状の外枠2の一側端(左側端)2aの上下端部から夫々前方へ突設した板状の軸支部3によって、遊技盤25を支持する内枠(遊技盤取付け枠)20の一側端(左側端)20aの上下端部から夫々前方へ突設した被軸支部21と、ガラスパネル50を支持する前枠(ガラス枠)30の一側端部(左側端部)30aの上下端部から夫々前方へ突設した被軸支部31とを同時に軸支することによって、外枠2に対して内枠20、及び前枠30を夫々開閉自在に支持した構成となっている。
このように本発明の不正防止部材60を適用するパチンコ遊技機1は、一側部に軸支部3を有した外枠2と、遊技盤25を支持し且つ軸支部3により一側部を回動可能に軸支された内枠20と、遊技盤の前面を覆うガラスパネル(透明パネル)50を着脱自在に支持し且つ軸支部3により一側端部30aを回動可能に軸支された前枠30と、を備えている。
【0017】
前枠30の下部には前方へ膨出した膨出部32、発射レバー33等が設けられており、膨出部32には遊技球を貯留する受け皿部32aなどが配置され、発射レバー33はこの受け皿部4内の遊技球を発射する手段である。
不正防止部材60は、樹脂、ゴム等の射出成型により製造可能な材料から成り、前枠30の背面にガラスパネル50の前面外周部を添設して固定した際に、ガラスパネル50の外周縁と前枠背面(樹脂部材37)との間に針金、薄板等の不正器具を挿入可能な接触面37aが形成される場合に、接触面と連通する隙間37b内に背面側から装着されて、接触面37a、及び隙間37bを通過して不正器具が遊技盤面へ挿入されることを阻止する手段である。
矩形環状の前枠30の背面にはガラスパネル50がその外周側前面を添設させた状態で固定レバー35によって数カ所を着脱自在に固定されている。
ガラスパネル50の外周部を前枠の背面に組付け固定することにより、前枠の開口部30Aがガラスパネルにより閉止される。前枠の背面側には環状に板金製枠材36が固定されると共に、この板金製枠材36の前部には厚肉の樹脂部材37が環状に固定されている(図10、図11参照)。
【0018】
つまり、前枠30の背面には、そこに固定されるガラスパネル(透明パネル)50の外周縁に沿って配置された板金製枠材36と、板金製枠材に沿って配置された樹脂部材37と、から成るガラスパネル支持枠(透明パネル支持枠)Pが形成されている。隙間37bは、ガラスパネル支持枠Pとガラスパネル50との間に形成されており、後述する第1の被係止部36a’及び第2の被係止部36a”は、板金製枠材に設けられている。
ガラスパネル50は、前枠の開口部周縁に沿って環状に配置された樹脂部材37の内周面に形成される段差状のガラスパネル支持面37aによって外周縁及び前面を支持されることにより位置決めされ、固定レバー35を締結することにより前枠に固定される。
ガラスパネル50は、二枚のガラス板51を所定のギャップGを間に挟んで対向配置させた状態で各ガラス板の外周縁を樹脂製の環状枠材52、パッキン53により保持一体化した構成を備えており、ガラスパネル50の外周に沿った前面を前枠30の背面(樹脂部材37の内周段差面37a)に添設した状態で、前枠に設けた固定レバー35により固定される。
【0019】
図10から明らかなようにガラスパネル50の一側端縁は前枠の一側端縁(開閉軸側)30aに向けて深く入り込む一方で、ガラスパネルの他側端縁は前枠の他側端縁30bの手前で終端している。これは前枠の一側端縁には障害物がないためにガラスパネルの一側端縁を前枠の一側端縁に向けて延長させることが可能である一方で、前枠の他側端縁30bには施錠のためのロック機構40を配置するスペースを確保する必要があるため、ガラスパネルの他側端縁とロック機構との干渉を回避するためにはガラスパネル他側端縁をロック機構40の手前で終端させる必要があるからである。
前枠の開閉軸側の一側端縁では、前枠背面とガラスパネルとの接触面の厚さ方向長さ(前後方向長さ)を十分に長く確保できるため、当該接触面を図10中に示すように階段状(クランク状)に構成して不正器具の挿入を阻止することが可能となる。また、この開閉軸側の部位には、スペース上の余裕があるために突起、その他の不正防止構造を採用することが可能であるが、他側端縁30b側には突起等の不正防止構造を採用するスペース上の余裕がない。
【0020】
また、ガラスパネルを支持するスペースが極限されている前枠の他側端縁側30bでは、図11に示すようにガラスパネルの他側端縁と前枠背面(樹脂部材37)との接触面37aは厚さ方向接触長が短いL字状面となっているに過ぎず、不正器具の挿入が容易である。即ち、前枠がガラスパネルの他側端縁を支持する部位には、板金製枠材36によって支持された樹脂部材37が固定されており、接触長が極めて短いL字面状の接触面37aによりガラスパネル端縁を支持しているに過ぎないため、図11(a)中に矢印Dで示した挿入方向から樹脂部材37を変形させつつ針金、薄板等の不正器具70を圧入することが容易であり、遊技盤面上の入賞口を開放させて不正に出玉を得ることが可能となる。
これに対して本発明では、前枠背面とガラスパネル50の一端縁との間に形成される隙間37b、換言すれば板金製枠材36と樹脂部材37との接触面37aと連通した背面側の隙間37bに樹脂、或いはゴムから成る不正防止部材60を装着して固定し、矢印D方向から接触面37a内に圧入されてきた不正器具70によって除去され得ないように構成したため、不正器具による不正行為を有効に防止することができる。
【0021】
不正防止部材60は、前枠背面(樹脂部材内周面)とガラスパネル外周縁との間に形成される隙間37b内に嵌合される嵌合突起部61と、嵌合突起部61の基端部に一体化されて嵌合突起部を隙間に嵌合させた時に背面側に露出するベース部62と、嵌合突起部61から突設されて隙間37b内の被係止部37cに係止する係止突起63と、を備えている。更に、ベース部62の先端部から略U字状に折り返した係止片64が延びている(図8)。
嵌合突起部61を隙間37b内に嵌合したときに、嵌合突起部61とベース部62との協働によって隙間37bを塞ぎ、不正器具が遊技盤面側へ侵入することを阻止するように構成されている。
板金製枠材36は、隙間37bの外側位置に延在する被係止片36aを備えており、被係止片36aの底部(隙間37b寄り端部)には第1の被係止部36a’が設けられると共に、被係止片36aの先端部には第2の被係止部36a”が設けられている(図11)。
【0022】
不正防止部材60の嵌合突起部61を隙間37b内に嵌合させた時に、第1の被係止部36a’に係止突起63が係合して不正防止部材が隙間から抜け落ちることを防止する。また、不正防止部材の係止片64が第2の被係止部36a”に係合することにより板金製枠材36との係合力を高め、不正防止部材を安定して前枠に固定することができる(図9)。
不正防止部材60の嵌合突起部61を隙間37b内に嵌合する際には、係止突起63を含む嵌合突起部61が隙間37b内に嵌合される一方で、係止突起63が第1の被係止部36a’と係合した後では、不正防止部材60は隙間から取出し困難となる。仮に、不正にロック機構を解除して前枠を開放し、不正防止部材60を取り外そうとした場合には、係止突起63が破損するようにその強度、構造を工夫しておけば、不正防止部材を不正に取り外した形跡を残すことなり、不正行為を発見することが可能となる。
【0023】
或いは、前枠が閉止状態にあるときに、不正器具を接触面37aから圧入して不正防止部材60を押圧して隙間37bから脱落させたり、不正防止部材の一部を破損させた上で、不正器具を遊技盤面上の入賞口に到達させる不正行為も考えられるが、この場合も不正防止部材を離脱させた時点で係止突起63が破損するように構成すれば不正行為の形跡を残すことが可能となる。
なお、図12に示すように前枠30に不正防止部材60をセットした状態で前枠30を内枠20に閉止した際に、不正防止部材60のベース部62が、内枠20にセットされた遊技盤25の一部、或いは盤面部品、本例では遊技盤の外周に設けた突部26(返しゴムの支持部)の前面と圧接するように構成することにより、前枠30の閉止時に不正防止部材を前枠と突部26との間で挟圧保持することができる。このため、不正器具を接触面37aから圧入して不正防止部材を除去しようとしてもそのような試みは完遂不能となる。
【0024】
以上のように、パチンコ遊技機のガラスパネルと前枠との接触面から不正器具を挿入可能な場合に、この接触面の背面側に設けられる隙間内に不正防止部材を予め装着して隙間からの侵入経路を閉塞しておくことにより、不正器具の圧入を効果的に阻止することができる。特に、不正器具は前枠側に設けた被係止部に係止されるため、不正器具により不正防止部材を除去しようとしてもこれを除去することができない。また、不正防止部材が不正器具による表面側からの圧力により隙間から離脱させられる場合には係止突起が破損するように構成することにより、不正行為が行われた形跡を残すことができ、遊技場側は、迅速な対策を実施することができる。また、前枠の内側に位置する内側に装備した遊技盤、或いは盤面部品により不正防止部材を押さえ込むことにより不正防止部材の離脱、破損がより困難となる。
また、この不正防止部材は、低コストな樹脂成形品であり、しかも既設のパチンコ遊技機の前枠に対して簡単に装着することにより、防犯効果を発揮できる点が利点である。
また、不正防止部材を装着可能な箇所は、上記実施形態において説明した開閉軸と対向した端縁のみならず、不正器具を圧入可能な部位であればどこでよい。
本発明の不正防止部材は、パチンコ遊技機の前枠(ガラス枠)のみならず、ガラス枠を有した遊技機一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…パチンコ遊技機、2…外枠、3…軸支部、4…皿部、20…内枠、21…被軸支部、25…遊技盤、26…突部、30…前枠、30A…開口部、30a…一側端部、30b…他側端縁、31…被軸支部、32…膨出部、32a…皿部、33…発射レバー、35…固定レバー、36…板金製枠材、36a…被係止部、36a’…第1の被係止片、36a”…第2の被係止部、37…樹脂部材、37a…接触面、37b…隙間、37c…被係止部、40…ロック機構、50…ガラスパネル、50…透明パネル、51…ガラスパネル、52…環状枠材、53…パッキン、60…不正防止部材、61…嵌合突起部、62…ベース部、63…係止突起、64…係止片、70…不正器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側部に軸支部を有した外枠と、遊技盤を支持し且つ該軸支部により一側部を回動可能に軸支された内枠と、前記遊技盤の前面を覆う透明板を着脱自在に支持し且つ前記軸支部により一側部を回動可能に軸支された前枠と、を備えたパチンコ遊技機に装備され、
前記前枠の背面に前記透明パネルの前面外周部を添設して固定した際に、該透明パネルの外周縁と前記前枠背面との間に不正器具を挿入可能な接触面が形成される場合に、該接触面と連通する隙間内に着脱自在に装着されて前記不正器具の遊技盤面への挿入を阻止する不正防止部材であって、
前記隙間内に嵌合される嵌合突起部と、該嵌合突起部に設けられ該嵌合突起部が前記隙間内に嵌合された時に前記隙間内に設けられた第1の被係止部に係止される係止突起と、を備えたことを特徴とする不正防止部材。
【請求項2】
前記嵌合突起部と一体化され該嵌合突起部が前記隙間内に嵌合された時に前記隙間外に位置するベース部と、前記ベース部に設けられて前記前枠の一部と係止される第2の被係止部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の不正防止部材。
【請求項3】
前記前枠の背面には、固定された前記透明パネルの外周縁に沿って配置された板金製枠材と、該板金製枠材に沿って配置された樹脂部材と、から成る透明パネル支持枠が形成されており、
前記隙間は前記透明パネル支持枠と前記透明パネルとの間に形成され、
前記第1の被係止部及び前記第2の被係止部は、前記板金製枠材に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の不正防止部材。
【請求項4】
前記隙間に固定された前記不正防止部材を該隙間から離脱させた場合には、前記係止突起が破損して離脱の形成が残されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の不正防止部材。
【請求項5】
前記前枠に前記不正防止部材を固定した状態で、前記前枠を内枠に閉じた時に、前記内枠により支持された前記遊技盤の一部、或いは盤面部品が前記不正防止部材の背面と圧接するように構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の不正防止部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の不正防止部材を備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−92398(P2011−92398A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248858(P2009−248858)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】