説明

不活性ガス消火装置を備えたゴミ収集車

【課題】 ゴミ収集車のゴミ収納室内で発生した火災をゴミ収納室内に設けた不活性ガス消火装置にて、効率的かつ確実に消火することを課題とする。
【解決手段】 不活性ガスをゴミ収納室の天井部分に複数設けた噴射ノズルすることにより、ゴミが詰まった状態のゴミ収納室でも、ガス状の不活性ガスにより、火災を包み込むことができ、消火することができる。又、液化ガスを使用すれが、気化潜熱の作用により火災の熱を奪い、更に消火の効果を上げることができ、効率的かつ確実に消火することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に搭載されたゴミ収納室内で発生した火災を消火するための設備を備えたゴミ収集車。
【背景技術】
【0002】
従来のゴミ収集車のゴミ収納室で発生した火災を消火する設備としては、手動起動装置のレバーを握るだけでゴミ収納室に消火剤が放出され装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、消火装置として車輌に搭載されたエンジンを駆動源として、駆動するポンプより消火液をゴミ収納室に噴射する装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらのゴミ収集車の消火装置等は、消火剤又は消火液をゴミ収納室に配管したノズルから噴霧することにより、ゴミ収納室の火災を消火する装置である。
【特許文献1】 特開2003−250925
【特許文献2】 特開2003−95404
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴミ収集車の操業中に、そのゴミ収納室内で火災が発生することは、近年度々起こっている、にもかかわらず、消火装置を取り付けたゴミ収集車は少なく、一旦火災が発生するとゴミ収集車を停めて、ゴミ収納室のゴミを取り出して、消火するしかなく、消火作業が大掛りになるだけではなく、危険を伴う作業であった。最近、消火設備を備えたゴミ収集車もあるが、これらのゴミ収集車の消火装置等は、薬剤を噴霧しても、ゴミが圧縮された状態で詰まれているため、なかなかゴミ収納室の隅々まで薬剤が行き届くことが難しく、時には、消火できないこともあった。最近の消火設備を備えたゴミ収集車には、下記のようなものがある。
【0005】
手動起動装置のレバーを握るだけでゴミ収納室に配管されたノズルより消火剤を散布するゴミ収集車用消火設備では、ゴミ収納室に大量のゴミが詰まった状態になると、消火剤がノズルより散布されても、積載されたゴミが邪魔をして、ノズル付近だけに消火剤が散布され、ゴミ収納室の隅々まで消火剤が届かず、火災を消すことができないことがあった。
【0006】
ポンプにより、消火液をゴミ収納室に配管された噴射ノズルより噴霧するゴミ収集車では、前記と同様に、ゴミ収納室に大量のゴミが詰まった状態になると、消火液がノズルより散布されても、ゴミが邪魔をして、ノズル付近だけに消火液の溜りができ、ゴミ収納室の隅々まで消火液が届かず、火災を消すことができないことがあった。
【0007】
ゴミ収納室内のうちに火災を消火できないとゴミ収納室だけでなく、運転台を含めた車輌全体を焼いてしまう場合があった。
【0008】
ゴミ収納室内のうちに火災を消火できたとしても、ゴミ収納室が消火剤や消火液で汚れて後始末が大変であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
消火剤を不活性ガス、特に液化ガスの不活性ガスとし、配管をゴミ収納室の天井部分に設置した複数の噴射ノズルまで行うことにより、ゴミが圧縮された状態で詰まれているゴミ収納室でもガス状の不活性ガスが隅々まで行き渡り、火災を不活性ガスが包み込むことができる。また、不活性ガスが液化ガスの場合には、気化潜熱による冷却効果もあり、更に消火能力を上げることができる。
【0010】
噴射ノズルは、通常状態ではノズル蓋によって閉鎖状態となっており、噴射ノズルにゴミが入らない構造となっている。しかし、一旦、噴射ノズルに不活性ガスが流れて圧力がかかるとノズル蓋が開き、噴射ノズルが開放状態となり、火災時には確実に不活性ガスを噴霧することができる。
【0011】
又、消火器に紙封板又は圧力計を付け、消火器の使用の有無が直ちに判るようにする。
【発明の効果】
【0012】
不活性ガスを使用することにより、ガス状の不活性ガスがゴミで圧縮された状態で詰まれているゴミ収納室でも隅々まで行き渡ることができ、ゴミ収納室の空気を追い出し、不活性ガスの火災の包み込みにより火災を消火することができる。
【0013】
特に、液化された不活性ガスを使用することにより、噴射ノズルから噴射した瞬間に気化して大量の気体になるとともに、周囲から気化熱を奪い取ることで、更に消火効果を挙げることができる。
【0014】
噴射ノズルが通常時は、蓋がされているため、噴射ノズル内のゴミが入り込むことがなく。火災時には不活性ガスの圧力により蓋が開き確実にガスを噴霧できる。
【0015】
このように、ゴミ収納室のゴミを確実に消火することで、車体全体を焼くこともなく。消火後は、ゴミ収納室を清掃することで再使用することができ、経済的にも有用な不活性ガス消火器を備えたゴミ収集車である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の不活性ガス消火器を備えたゴミ収集車の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は不活性ガス消火器を備えたゴミ収集車の全体の概略図である。1はゴミ収集車、2はゴミ収集車の荷台に搭載されたゴミ収納室、3は車体に設置された不活性ガス消火器、4は不活性ガス消火器3からゴミ収納室2内の噴射ノズル6までの配管、5は消火装置のスイッチ、6はゴミ収納室の上部に配置された噴射ノズルである。
【0018】
ゴミ収集車の操業中に、そのゴミ収納室内で火災が発生に気が付いたとき、直ちに消火装置のスイッチ5を入れると、不活性ガス消火器3より不活性ガスが配管4に流れて、ゴミ収納室の上部に配置された噴射ノズル6より一気に放出される。
【0019】
このように消火装置のスイッチ5を入れるだけで、噴射ノズル6から不活性ガスがゴミ収納室2に放出され、ゴミ収納室2の火災をすばやく消火できる。
【0020】
必要とする不活性ガス消火器3の大小は、ゴミ収納室の大きさにより決まる。しかし、消火器が小さいものしかない場合は、必要に応じて複数の消火器を用いることができる。
【0021】
不活性ガス消火器の位置は、図に示す位置に限らず、必要に応じて適宜配置できることは勿論である。
【0022】
配管4は、図1ではゴミ収納室2に固定されたものを示してあるが、ゴミ収納室2が可動するのリフト式等においては、配管の長さに余裕をもたせたフレキシブルな配管とする。
【0023】
消火装置のスイッチ5は、ゴミ収集車1の運転席近くに設けても良いし、又、車外に設けても良い。運転中に、ゴミ収納室の火災に気が付いた時は、運転席近くに設けたスイッチを使用し、ゴミ収集の際中に、ゴミ収納室の火災に気が付いた時は、車外に設けたスイッチを使用すれば良く、特に、消火装置のスイッチの場所を特定するものではない。
【0024】
噴射ノズル6は、ゴミ収納室2内の天井部分に複数配置し、ゴミ収納室2のあらゆる場所で発生した火災に対しても対処できるように配置する。又、噴射ノズル6は、液化ガスを瞬時に気化できるものである。
【0025】
図2は噴射ノズル6の概略図である。6aはノズル蓋、6bはOリング、6c噴射孔、6d噴射筒である。
【実施例】
【0026】
下記のゴミ収集車において、火災を発生させ、炭酸ガス消火器を用いた消火の実施例を示す。

【0027】
ゴミ収集車1のゴミ収納室2にて火災を発生させ、直ちに消火装置のスイッチ5を入ると、炭酸ガス消火器3(サイホン管付き)に詰められた液化炭酸ガスが配管4を流れ、噴射ノズル6で気化した炭酸ガスにより、直ちに火災は消えた。
【0028】
このように火災が鎮火したように見えても、ゴミ収納室内は、ゴミの蒸し焼き状態となっており、温度が下がるまでは、ゴミ収納室を開けることができなかった。しかし、炭酸ガスがゴミ収納室内に充満しているので、ゴミ収納室を開けなければ、再出火することはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、運転席と荷物室等に別れている車輌等において、荷物室の火災を消火するのに広く活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実態の形態1を示す不活性ガス消火器を備えたゴミ収集車全体の概略図である。
【図2】噴射ノズルの概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ・・・ ゴミ収集車
2 ・・・ ゴミ収納室
3 ・・・ 不活性ガス消火器
4 ・・・ 配管
5 ・・・ 消火装置のスイッチ
6 ・・・ 噴射ノズル
6a・・・ ノズル蓋
6b・・・ Oリング
6c・・・ 噴射孔
6d・・・ 噴射筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴミ収集車に設置した消火器が、不活性ガス消火器で、この消火器より、ゴミ収納室に不活性ガスを噴霧するための配管と噴射ノズルとを備えた不活性ガス消火器を備えたことを特徴とするゴミ収集車。
【請求項2】
消火器の使用の有無が直ちに判別できるように消火器に紙封板又は圧力計を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のゴミ収集車。
【請求項3】
消火器の不活性ガスの種類が炭酸ガス、窒素ガス、ハロンガスなどからなることを特徴とする請求項1に記載のゴミ収集車。
【請求項4】
請求項4の不活性ガスの種類が、液体の状態で噴射ノズルまで達することのできる炭酸ガス、ハロンガスなどの液化ガスからなる不活性ガス。
【請求項5】
噴射ノズルが通常状態では、ゴミが入らないように密閉状態になっているが、不活性ガスが流れることによる圧力によって開放状態となる噴射ノズルを備えたことを特徴とするゴミ収集車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−21134(P2007−21134A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232573(P2005−232573)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591107034)液化炭酸株式会社 (17)
【Fターム(参考)】