説明

不燃性を有する断熱水性塗料、及び光触媒の塗装方法と、その塗膜

【課題】不燃性の水系無機質塗料に断熱性中空バルーン、稀元素鉱物粒、無機質骨材、無機質焼成顔料、着色雲母等を配合して、不燃耐熱性の超遮熱、断熱性を付与した塗料とその塗装方法およびその塗膜を提供する。
【解決手段】シロキサン結合の表面にシラノール基をもった高分子粒子で、シラノール基の脱水縮合により網目構造を形成、さらに未反応のシラノール基を高分子アルキル基で置換反応して、シリカ系と化学結合される水性無機質塗料に、断熱効果を有する中空バルーンを配合してなる水性断熱不燃塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能性塗料に関するものであり、特に断熱材の中空バルーンを多量に水性無機質塗料に混入して、超断熱化した塗膜上に、水性光触媒塗料を塗布し、不燃、超断熱、防汚性を有する塗膜となる塗料と、その塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱材と称する中空バルーンは、有機質系塗料に混合されて断熱塗料として販売されているのが現状である。しかしその内容は中空バルーンの混入量が少なく又有機系樹脂のため、可燃性で燃焼時に多量のガスが発生、又断熱効果を高めるため、塗膜層を厚く塗布すると収縮による亀裂が起きることから、業界では無機質系断熱塗料の研究開発が盛んである。有機質系塗料は基材接着及び塗布方法が容易なことから、無機質系断熱塗料の開発が遅れている。無機質系塗料は主成分がシリカ系のため耐久性には優れるものの、基材接着が悪く厚膜塗布が困難で多量の中空バルーンが混入できないのが常識とされ、問題点が多く水性断熱不燃塗料の研究開発が遅れているのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者は、特殊な水性無機質塗料に、性質およびミクロンの異なる4種の中空バルーン、各種の機能を持つ稀元素鉱物粉、無機質骨材、無機焼成顔料、着色雲母および無機質添加剤を混合することにより、高い接着性、厚膜可能な無収縮性、超遮熱性、超断熱性、遠赤外線性および不燃性を見出し、本発明に至った。同時にまた実塗装作業において、有機塗料に勝る重要な要件を解決した。すなわち、本発明者は特殊な水性断熱不燃塗料の開発により、塗装作業において無用の危険物や有害物を環境に放出しない水系塗料となし、塗膜の硬化にあっては特別の加熱を必要としない常温硬化1液型塗料となし、厚膜塗装にあたり重ね塗り不要の固形分の高い遮熱、断熱性に優れた塗料をなし得た。また水性断熱不燃塗料は、高い接着性、超遮熱性、超断熱性、遠赤外線性、着色性、御影石調の多機能を有するため、1液性1工程で3〜4役をなし、その上に水性光触媒塗料を塗布することにより、基材劣化の防止と有機物の分解による防汚効果が得られ、塗装工程の省略化が図れる、優れた簡易工法をなし得た。かくして、上で述べた課題は、本発明に従って解決することができる。以下、これについて説明する。
【0004】
まず、上で述べた第1課題は、本発明にかかわる水性断熱不燃塗料によって解決することができる。
すなわち、上で述べた第1課題は本発明に従って、
1、シロキサン結合の表面にシラノール基を持った高分子粒子で、シラノール基の脱水縮合により網目構造を形成、さらに未反応のシラノール基を高分子アルキル基で置換反応してシリカ系と化学結合で形成されてなる、不燃性の水性無機質塗料。
2、該不燃性水性無機質塗料と断熱性素材の中空バルーン、平均粒径50〜70μm粒子を100容積率あたり10〜90容積率で配合、その他無機質骨材、無機質焼成顔料、稀元素鉱物粉、着色雲母を添加配合し、100容積率に対し固形分90〜95容積率からなる、水性断熱不燃塗料。
3、該水性断熱不燃塗料は100容積率あたり、好ましくは水性無機質塗料30%、断熱性中空バルーン60%、無機質焼成顔料7%、無機質骨材3%の配合からなり、御影石調配合は、無機質焼成顔料7%を着色雲母に置換すること、また遠赤外線配合は、無機質焼成顔料7%を稀元素鉱物粉に、置換することからなる、水性断熱不燃塗料である、上記1〜2のいずれか1つに記載の水性断熱不燃塗料。によって解決することができる。
【0005】
つぎに、上で述べた第2課題は本発明にかかわる塗装方法によって解決することができる。すなわち、上で述べた第2課題は本発明に従って、
4、上記1〜3のいずれか1つに記載の水性断熱不燃塗料を塗布して、常温乾燥することによって塗膜を形成することを特徴とする、塗装方法。
5、上記4で塗布した水性断熱不燃塗料乾燥後、酸化チタン含有の光触媒能を有する水性光触媒塗料を塗布することによって、塗膜を形成することを特徴とする塗装方法。によって解決することができる。
【0006】
さらに、上で述べた第3の課題は、本発明にかかわる塗膜によって解決することができる。すなわち、上で述べた第3の課題は本発明に従って、
6、上記4又は5に記載の塗装方法によって形成された塗膜。
7、水性断熱不燃塗料と、水性光触媒塗料を塗布した塗膜によって解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、これらの発明について、詳しく説明する。
本明細書において水性無機質塗料とは、塗料溶媒が水溶性溶媒を軸としたシロキサン結合によるシリカ系と化学結合することであり、基本配合範囲は重量比で、水溶性溶媒60〜70%、無機質高分子粒39〜27%、添加剤1〜3%であるが、好ましくは水溶性溶媒65%、無機質高分子粒34%、添加剤1%である。
【0008】
つぎに、本明細書において水性断熱不燃塗料とは、100容積率あたり水性無機質塗料30%、断熱中空バルーン60%、無機質焼成顔料及び着色雲母7%、無機質骨材3%であるが、超遮熱、断熱性効果を高めるための配合は、水性無機質塗料の残存固形分が5%以下、中空バルーンが60%以上でなければ効果が低く、好ましくは、中空バルーンの添加配合割合は、平均μm、13μmが10%、50μmが40%、80μmが35%、100〜150μmが15%が最も好ましく断熱効果が高い。
【0009】
本発明の不燃性でなお耐熱温度を高めるための配合は、100容積率あたり水性無機質塗料30%以下、残存固形分4%以下で、断熱材を含む無機系素材の溶解点が1,600℃以上のものを添加混入しなければ耐熱効果が得られない。
【0010】
また上記水性断熱不燃塗料を塗膜とした上に、水性光触媒塗料を塗布して防汚効果と不燃性を高めるためには、浸透性を有する水性光触媒塗料が最も好ましい。
【実施例】
【0011】
不燃性、耐熱性、接着性
配合割合による不燃性、耐熱温度、接着性試験を実施。
【実施例1】
【表1】

a)上記表1の結果から中空バルーンを複合することにより耐熱温度が高い。
b)上記表1の結果から中空バルーン混合比率が多いほど耐熱温度が高い。
c)上記表1の結果から水性無機質塗料が少なく残留固形分が少ないほど耐熱温度が高い。
d)上記表1の結果から付着強さは、水性無機質塗料が多いほど接着強度が高い。
【実施例】
【0012】
断熱性、遮熱性、収縮性
配合割合による断熱性、遮熱性、収縮性試験を実施。
【実施例2】
【表2】

a)上記表2の結果から、断熱性、遮熱性は、中空バルーンが多いほど温度差が高い。温度差の試験方法は、1mm厚の鉄板に片面塗布し、塗布面を直射日光に当て、温度を測定し、遮熱効果、断熱効果を見る。ブランクと塗布板の温度差計算式y(温度差)=0.86×(ブランク温度)−24.8
b)上記表2の結果、中空バルーンが多いほど塗布面の収縮が少ない。
【実施例】
【0013】
塗膜の試験成績所
【実施例3】
【表3】

【実施例4】
【0014】
本発明の水性断熱不燃塗料、および水性光触媒塗料を塗布し、その塗膜を実際の現場で確認するため、一般住宅の塗り替えに実施した。屋根40m、1平方1,000ccの厚吹1回塗装で、24時間常温乾燥後、水性光触媒塗料を塗布、また壁面100m、1平方500cc1回塗装で、24時間常温乾燥後、水性光触媒塗料を塗布して、3日後、1回塗装で厚吹きした屋根も全く収縮による亀裂はなく、また塗装後の遮熱,断熱効果による省エネ効果も確認できた。
【実施例5】
【0015】
本発明の水性断熱不燃塗料を厚塗り塗布して、遮熱,断熱効果による温度差の結果を追求したところ、つぎのような結果が得られた。
1、豚舎、鶏舎、牛舎の屋根に2mm厚で塗布したところ、高い超遮熱性,断熱性効果が得られた。
2、ビル、住宅の屋上水槽タンクに1回目黒色の稀元素鉱物粉混合の水性断熱不燃塗料を1mm厚塗布、2回目、白色の水性断熱不燃塗料を1mm厚で塗布したところ、1回目塗布の黒色で光の透過が無く、また稀元素鉱物の水質改善効果、2回目塗布の白色で遮熱,断熱効果で水槽内の汚れが極度に低下した。
3、寒冷地において水道関連の塩ビ管、鉄管、継ぎ手バルブ等に無色の稀元素鉱物配合の水性断熱不燃塗料を5mm厚で塗布したところ、遠赤外線、断熱効果で水が凍らなく、破裂が皆無となった。
【実施例】
【0016】
従来の遮熱,断熱塗料品との比較
【実施例6】
【表4】

【発明の効果】
【0017】
以上の説明からわかるように、本発明にかかわる水性断熱不燃塗料は、有害な有機溶剤を一切放出しない、環境にやさしい水系塗料でありながら、不燃性で耐熱温度が高く、超遮熱性、超断熱性、遠赤外線性、防音性、防露性、透湿性、通気性、防水性等多くの特徴をもつ多機能塗料であり、また弾性、強接着性、耐薬品性、耐候耐久性、耐凍害性であり、また1工程で厚吹しても収縮亀裂を起さなく、御影石調の美感的要素もそなえ、さらに厚膜水性光触媒塗料を1工程塗布することにより、基材の劣化を防ぎ、有害化学物質のNO×分解、有機系煤塵を分解する防汚性、をかねそなえた安全な多機能性、省力化塗装工法である。
【0018】
本発明にかかわる水性断熱不燃塗料は、多機能でありCO削減形の省エネ塗料であることから、構築物の外装、屋根、鉄骨住宅、簡易住宅、簡易トイレ、内装等にも利用でき、また寒熱対策としてサイロ、倉庫、工場、車両、自動車、また鶏舎、豚舎、牛舎、厩舎等の耐熱耐寒用としての利用、その他寒冷地の給排水管凍害対策、屋上水槽防汚対策、また超断熱を必要とする電気製品、アスベストの代替対策等数多くの利用が提供される。御影石調水性断熱不燃塗料は、野外のコンクリート製品、木製品等の寒熱による外気温から基材を遮断、断熱して劣化、凍害防止する、保護工法として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子シリカ系水性無機質塗料へ、断熱能を有する中空バルーンを配合してなる、水性断熱不燃塗料。
【請求項2】
高分子シリカ系水性無機質塗料は、シロキサン結合の表面にシラノール基をもった高分子粒子で、シラノール基の脱水縮合により網目構造を形成、さらに未反応のシラノール基を高分子アルキル基で置換反応して、シリカ系と化学結合で形成される、水性無機質塗料である。
【請求項3】
該水性無機質塗料にミクロン、性質の異なる中空バルーンを3種以上配合してなる、水性断熱不燃塗料である。請求項1または2に記載する水性断熱不燃塗料。
【請求項4】
該水性断熱不燃塗料に、配合される中空バルーンの配合比率は、100容積率あたり10〜90容積率を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載する、水性断熱不燃塗料。
【請求項5】
該水性断熱不燃塗料に、配合される中空バルーンの大きさは、13〜150μmの範囲で平均粒径が50〜70μm、からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載する、水性断熱不燃塗料。
【請求項6】
該水性断熱不燃塗料に、配合される無機質系素材は、中空バルーンの他、稀元素鉱物粉、焼成顔料、着色雲母、焼成着色砂、ガラスビーズ、微粒砂、からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載する、水性断熱不燃塗料。
【請求項7】
該水性断熱不燃塗料の、残存塗料固形分は、重量比率100に対して10以下からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載する、水性断熱不燃塗料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載する、水性断熱不燃塗料を塗布し、常温乾燥することによって塗膜を形成することを特徴とする、塗装方法。
【請求項9】
水性断熱不燃塗料を塗布して、常温乾燥することにより、基材との強接着下地効果、単色着色効果、御影石調効果、超遮熱効果、超断熱効果、遠赤外線効果の塗膜を形成し、ついで、その塗膜の上に水性光触媒塗料(特願2001−157988)を塗布することを特徴とする、塗装方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載する塗装方法によって形成した塗膜。

【公開番号】特開2007−46024(P2007−46024A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255700(P2005−255700)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(505332299)
【Fターム(参考)】