説明

不燃性化粧板

【課題】芯材シートの吸水率を減じることにより、吸湿による化粧板の反りの発生を防止することができる不燃性化粧板を提供すること。
【解決手段】無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布を含む芯材層2を有し、表面及び裏面に熱硬化性樹脂を含浸させた紙材からなる表面化粧層1及び裏面化粧層3をそれぞれ積層した不燃性化粧板において、無機質充填材に、結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%以上の割合で添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性化粧板に関し、特に、台所、風呂場、駅舎、体育館等の壁材等の建築用内外装材として好適に使用することができる不燃性(難燃性のものを含み、本明細書において、「不燃性」という。)の化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の建築用内外装材として使用する化粧板として、水酸化アルミニウム等の無機質充填材を主たる材料とし、これに熱硬化性樹脂を添加してなる基板の表面に、印刷を施した熱硬化性樹脂を含浸させた化粧紙を積層、一体化したものが実用化されている。
【0003】
ところで、上記化粧板は、基板に、水酸化アルミニウム等の含水無機質充填材を主たる材料とし、これに熱硬化性樹脂を添加したものを用いるようにしているため、化粧板自体の強度が小さく、特に、不燃化のために基板の無機質充填材の含有率を高くすると、この傾向が一層顕著に現れるとともに、化粧紙と基板間の接着力が低下し、剥離を起こし易いという問題があった。
【0004】
そこで、本件出願人は、この問題点に対処するために、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布からなる不織布層と、含水無機質充填材及び熱硬化性樹脂からなる混合樹脂層とを積層してなる芯材シートを複数枚積層してなる芯材層の表面に、メラミン樹脂を含浸させた化粧紙からなる表面化粧層を積層した化粧板を提案している(特許文献1参照)。
【0005】
この技術により、上記問題点は解消されるに至ったが、反面、この化粧板では、芯材シートに水酸化アルミニウム等の含水無機質充填材を多量に含有させることから、吸水率が高く、吸湿による反りが生じるという問題を内在している。
【特許文献1】特開2000−135758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の化粧板が有する問題点に鑑み、芯材層の吸水率を減じることにより、吸湿による化粧板の反りの発生を防止することができる不燃性化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の不燃性化粧板は、無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布を含む芯材層を有し、表面及び裏面に熱硬化性樹脂を含浸させた紙材からなる表面化粧層及び裏面化粧層をそれぞれ積層した不燃性化粧板において、前記無機質充填材に、結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%以上の割合で添加したことを特徴とする。
【0008】
この場合において、非含水無機物からなる充填材として、炭酸カルシウム及び/又はタルクを用いることができる。
【0009】
また、芯材層に、無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布からなる芯材シートを複数枚積層させたものを用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不燃性化粧板によれば、無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布を含む芯材層を有し、表面及び裏面に熱硬化性樹脂を含浸させた紙材からなる表面化粧層及び裏面化粧層をそれぞれ積層した不燃性化粧板において、前記無機質充填材に、結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%以上の割合で添加することから、芯材層の吸水率を低減して、反りなどの発生を未然に防止するとともに、水酸化アルミニウム等の高価な含水無機質充填材を減じることにより、コストを低減し安価な化粧板を提供することができ、また、不燃性や強度、耐熱性等については従来と同等の性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の不燃性化粧板の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に示す不燃性化粧板は、無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布からなる芯材シート21を複数枚積層してなる芯材層2を有し、表面及び裏面に熱硬化性樹脂を含浸させた紙材からなる表面化粧層1及び裏面化粧層3をそれぞれ積層して構成されている。
【0013】
そして、この不燃性化粧板は、熱硬化性樹脂として、例えば、メラミン樹脂やフェノール樹脂等を使用するようにしている。
【0014】
また、芯材シート21に含有させる無機質充填材として、結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%以上の割合で添加するようにしている。
結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材は、好ましくは、全無機質充填材の55〜95質量%、さらに好ましくは、60〜90質量%の割合で添加することにより、芯材シートの吸水率を一層効果的に低減することができ、また、50質量%以上添加することにより、高価な含水無機質充填材を減じて、不燃性化粧板のコストを効果的に低減することができる。
【0015】
この結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、無水珪酸等を用いることができ、特に、炭酸カルシウムとタルクを好適に用いることができ、これにより、充填材として良好に機能させることができる。また、炭酸カルシウムは、粒径が均一なものが得易く、白色度も良好であるので、特に好ましく用いられる。この炭酸カルシウムの粒径は1〜50μmのものが望ましい。
また、無機質充填材には、必要に応じて、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%未満、好ましくは、全無機質充填材の5〜45質量%、さらに好ましくは、10〜40質量%の割合で添加することができる。
【0016】
なお、ガラス不織布に含浸させる熱硬化性樹脂と、ガラス不織布に含浸させる無機質充填材との割合は、8〜20/80〜92質量%とする。
【0017】
図2に示す不燃性化粧板は、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布からなる補強シート22と、その上下に無機質充填材と熱硬化性樹脂とを含む複数の芯材シート21とを積層してなる芯材層2を有し、表面及び裏面に熱硬化性樹脂を含浸させた紙材からなる表面化粧層1及び裏面化粧層3とをそれぞれ積層して構成されている。そして、芯材シート21に含有される無機質充填材として、結晶水を有しない非含水無機物が全無機質充填材の50質量%以上となるように用いられている。その他の構成は、図1に示す実施形態と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1に示す本発明の不燃性化粧板により具体的な実施例を示す。
(1)表面化粧層
表面化粧層1は、厚さ0.1mm、質量250g/mのメラミン樹脂含浸化粧紙からなり、このメラミン樹脂含浸化粧紙には、質量150g/mのメラミン樹脂と、質量100g/mの化粧紙が使用されている。
(2)芯材層
芯材層2は、ガラス繊維不織布に、水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムを混入したメラミン樹脂を含浸した芯材シート21を4枚積層したものからなる。
芯材シート21は、質量120g/mのメラミン樹脂含浸ガラス不織布と、該メラミン樹脂含浸ガラス不織布に積層される、水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムとメラミン樹脂とを混合した無機含有樹脂層とによって構成されている。
この場合、無機含有樹脂層の組成は、表1に示すように、水酸化アルミニウムが20質量%、炭酸カルシウムが70質量%、メラミン樹脂が10質量%である。
(3)裏面化粧層
裏面化粧層3は、厚さ0.1mm、質量250g/mのメラミン樹脂含浸紙層クラフト紙からなり、このメラミン樹脂含浸紙層クラフト紙には、質量100g/mのクラフト紙と、質量150g/mのメラミン樹脂が使用されている。
【0019】
以下同様に、炭酸カルシウム、タルク又は水酸化アルミニウムの比率を変えて、実施例2〜4の不燃性化粧板を製作した。
これら実施例1〜4の不燃性化粧板の組成と評価を、比較例の不燃性化粧板とともに表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1からわかるように、無機質充填材中に占める炭酸カルシウム若しくはタルクの割合が50質量%以上の実施例1〜4は吸水率が1.1〜1.3であり、各比較例の1.7〜1.9と比べて0.4〜0.8も小さく、水分を吸湿し難い化粧板であることがわかる。特に、炭酸カルシウムと水酸化アルミニウムとの割合を反対にした実施例1と比較例1とを比較しても、実施例1が0.6も小さな吸水率を示し、炭酸カルシウムを用いた化粧板が明らかに吸湿し難いことが明らかである。
また、応力においても、各実施例が各比較例に比べて10〜15%向上していることがわかり、密着性及び耐アルカリ性では略同等の性能を有していることがわかる。
そして、不燃性においては、各実施例が若干数値が悪くて不燃性は劣ってはいるものの、不燃性化粧板としての合格ラインである8MJ/m以下であり、不燃性を有する化粧板であることがわかる。
さらに、水酸化アルミニウムを用いずに炭酸カルシウムのみからなる実施例2は、シート製造時に肌が荒れるために良好な外観の化粧板を得ることが困難となる恐れがあるので、好ましくは、水酸化アルミニウムを50質量%以下の割合で含有させてシート肌を良好にすることが望ましいことがわかる。
【0022】
このように、本実施例の不燃性化粧板は、無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布からなる芯材シート21を複数枚積層してなる芯材層2の表面及び裏面に、熱硬化性樹脂を含浸させた紙材からなる表面化粧層1及び裏面化粧層3を積層した不燃性化粧板において、無機質充填材に、結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%以上の割合で添加するようにしたことから、芯材シート21の吸水率を低減して、反りなどの発生を未然に防止するとともに、水酸化アルミニウム等の高価な含水無機質充填材を減じることにより、コストを低減し安価な化粧板を提供することができ、また、不燃性や強度、耐熱性等については従来と同等の性能を維持することができる。
【0023】
以上、本発明の不燃性化粧板について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、芯材層を構成する芯材シートに、ガラス繊維不織布に、結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%以上の割合で添加するようにした無機質充填材を混入した熱硬化性樹脂を含浸した芯材シートの表面に、同様の組成の無機質充填材を混入した熱硬化性樹脂(さらに、必要に応じて他の添加剤を混合することができる。)を塗布して2層又は3層構成とした芯材シートを用いる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上、本発明の不燃性化粧板は、芯材層の吸水率を減じることにより、吸湿による化粧板の反りの発生を防止するという特性を有していることから、一般の不燃性化粧板の用途に好適に用いることができるほか、例えば、湿度の高い浴室等の不燃性化粧板の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の不燃性化粧板の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の不燃性化粧板の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 表面化粧層
2 芯材層
21 芯材シート
3 裏面化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布を含む芯材層を有し、表面及び裏面に熱硬化性樹脂を含浸させた紙材からなる表面化粧層及び裏面化粧層をそれぞれ積層した不燃性化粧板において、前記無機質充填材に、結晶水を有しない非含水無機物からなる充填材を、全無機質充填材の50質量%以上の割合で添加したことを特徴とする不燃性化粧板。
【請求項2】
非含水無機物からなる充填材として、炭酸カルシウム及び/又はタルクを用いたことを特徴とする請求項1記載の不燃性化粧板。
【請求項3】
芯材層が、無機質充填材を含有し、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス不織布からなる芯材シートを複数枚積層してなることを特徴とする請求項1又は2記載の不燃性化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−9494(P2006−9494A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191050(P2004−191050)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】