説明

不純物を除去する不純物除去装置およびその運転方法

【課題】簡易な装置で不純物を除去し希ガスを再利用することのできる不純物除去装置を提供すること。
【解決手段】不純物除去装置は、エキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスに混合したフッ素およびフッ素化合物を除去する第1の処理装置21と、第1の処理装置で生成する酸素を除去する第2の処理装置23と、エキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスを循環させ、エキシマレーザー発振装置10に戻す循環装置25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を除去する不純物除去装置に関する。特に、エキシマレーザー発振装置で使用する希ガス中に含まれる不純物を除去することにより、希ガスを再利用できるようにする不純物除去装置および不純物除去装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造過程で使用される露光装置(フォトリソグラフィ)の光源としてエキシマレーザー装置が広く用いられている。このエキシマレーザー装置は、レーザー管に例えばアルゴンガス(Ar)とフッ素ガス、クリプトンガス(Kr)とフッ素ガス、またはキセノン(Xe)ガスとフッ素ガスを封入し、これらのガスを励起させ、励起状態となった分子のエネルギーが誘導放出されることによりレーザー光を発生させる。また、レーザー管内には、バッファガスとして希ガスが封入されている。希ガスとして好ましくは、ヘリウムガス(He)またはネオンガス(Ne)である。
【0003】
しかし、エキシマレーザー装置は、極めて反応性の高いフッ素ガスを使用しており、さらにそのフッ素は励起された状態となるので、フッ素とレーザー管の構成材料等との反応も生じ、CF、SiF,HF、NF、C等のフッ素化合物(不純物)が生成される。こうした不純物の生成によりレーザー出力が減少するため、従来から不純物を除去する方法、または、不純物の生成を抑える方法が提案されている。
【0004】
例えば、HFと、フッ化金属化合物、フッ化水素金属化合物またはこれらの化合物の混合物を接触させHFを除去する方法がある(特許文献1参照)。この方法では、レーザーガスであるFを除去することなく、HFを除去している。または、エキシマレーザー装置に2種類のガス循環ラインを並列に設け、コールドトラップを備えた流路によりSiFとHFを除去し、他方の流路にはハロゲンガストラップおよび深冷吸着塔を備えSiF,HF,CFを除去する。後者の流路では、Fも合わせて除去される。Fの除去を極力抑えるため、通常は前者の流路を用い、CFの除去が必要になった時点で後者の流路を用いる(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−275902号公報
【特許文献2】特開平6−283781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の不純物を除去する方法では装置が大型化してしまい、装置の小型化、簡易化が困難であった。
【0007】
本発明は、従来技術を用いた装置と比し小型化、簡易化した装置で希ガス中に混合する不純物を除去し、エキシマレーザー装置において希ガスを再利用できる不純物除去装置を提供することを目的とする。さらに、従来技術を用いた方法と比し簡易な方法で希ガス中に混合する不純物を除去し、エキシマレーザー装置において希ガスを再利用できる不純物除去装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る不純物除去装置は、例えば図1に示すように、エキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスに混合したフッ素(F)およびフッ素化合物を除去する第1の処理装置21と;第1の処理装置で生成する酸素を除去する第2の処理装置23と;エキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスを循環させ、エキシマレーザー発振装置10に戻す循環装置25とを備える。
【0009】
このように構成すると、希ガス中に混合する不純物として、レーザー光発生に寄与するフッ素ガスを敢えて除去することになる。しかし、フッ素およびフッ素化合物と、フッ素およびフッ素化合物除去時に生成される酸素を除去することにより、希少であり貴重な希ガスの再利用が可能となる。さらに、従来と比し簡易な装置で希ガスを精製することができる。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係る不純物除去装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る不純物除去装置1において、循環装置25は、エキシマレーザー発振装置10から第1の処理装置21へ、第1の処理装置21から第2の処理装置23へ、第2の処理装置23からエキシマレーザー発振装置10へ希ガスを循環させる。
【0011】
このように構成すると、不純物除去装置での希ガスの流路において、フッ素およびフッ素化合物が早い段階で除去されるので、第1の処理装置21以降の装置がFやHF等により腐食(酸化)されるのを防ぐことができる。また、希ガス中に混合するFを含む不純物を除去し希ガスを循環させているため、効率よく希ガスを精製できかつ希ガスのランニングコストを低減させることができる。
【0012】
また、本発明の第3の態様に係る不純物除去装置は、上記本発明の第1の態様または第2の態様に係る不純物除去装置1において、第2の処理装置23は、処理剤24を用いて酸素を除去する装置であって、使用後の処理剤24を再生させ再び使用可能にする再生装置を有する。
【0013】
このように構成すると、第2の処理装置内に充填された処理剤が消耗した場合でも、第2の処理装置を取り外すことなく処理剤を再生させ再び使用することができる。さらに、処理剤のランニングコストを低減させることができる。
【0014】
また、本発明の第4の態様に係る不純物除去装置2は、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1の態様に係る不純物除去装置1において、第1の処理装置が、希ガスに混合したフッ素およびフッ素化合物と、水分またはPFCガスとを除去する装置である。
なお、PFC(パーフルオロ化合物)とは、SF、CF、Cなどの地球温暖化係数の高いフッ素化合物をいう。
【0015】
このように構成すると、希ガス中に水分が混合している場合、水分を除去することができる。また、不純物として希ガス中に混合している、温室効果ガスであるSF、CF、C等を除去することができる。
【0016】
また、本発明の第5の態様に係る不純物除去装置は、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1の態様に係る不純物除去装置1または2において、複数台のエキシマレーザー発振装置10から排出される希ガス中に含まれるフッ素およびフッ素化合物を除去し、フッ素およびフッ素化合物除去時に生成する酸素を除去する。
【0017】
このように構成すると、1台のエキシマレーザー発振装置から排出される希ガスの流量が少なく排出時間も長くない場合、複数台のエキシマレーザー発振装置から排出される希ガスから不純物を除去できるので、除去効率のよい不純物除去装置となる。
【0018】
また、本発明の第6の態様に係る不純物除去装置の運転方法は、レーザー光を発生するエキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスを循環させ;希ガス中に混合したフッ素およびフッ素化合物を除去し;フッ素およびフッ素化合物除去時に生成した酸素を除去し;希ガスをエキシマレーザー発振装置10に戻し;戻された希ガスが再利用される。
【0019】
このように構成すると、エキシマレーザー発振装置から排出される希ガスに混合するフッ素およびフッ素化合物を除去し、フッ素およびフッ素化合物除去時に生成する酸素を除去するため、希ガスの再利用が可能な不純物除去装置の運転方法となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の不純物除去装置は、エキシマレーザー発振装置から排出される希ガスに混合する不純物として、まずフッ素およびフッ素化合物を除去し、次にフッ素およびフッ素化合物除去時に生成する酸素を除去することにより、希ガスの再利用を可能にする。その上で、装置の小型化、簡易化を図ることができる。さらに、希ガスを循環させ再利用することで、希ガスの有効利用を図ることができ、またランニングコストを低減させることができる。また、本発明の不純物除去装置において、酸素を除去する処理装置が再生装置を有する場合は、酸素を除去するための処理剤を交換することなく不純物除去装置の継続運転が可能となる。また、本発明の不純物除去装置が水分またはPFCガスを除去する処理装置を備える場合は、フッ素およびフッ素化合物と、酸素の除去において、水分またはPFCガスをさらに効率よく除去することができる。
本発明の不純物除去装置の運転方法は、希ガスに混合する不純物としてフッ素およびフッ素化合物と、酸素とを効率よく除去し、希ガスを循環させ再利用を可能とし、希ガスの有効利用を可能にするとともにランニングコストを低減させる運転方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る不純物除去装置1は、エキシマレーザー発振装置10に接続されて使用される。不純物除去装置1は、不純物を除去する第1の処理筒21と第2の処理筒23と、希ガスの流路となる配管51と、希ガスを循環させる循環装置としての循環ポンプ25を含んで構成される。
【0023】
なお、以下の実施の形態の説明では、レーザー光の発生に寄与するガス(レーザーガス)としてフッ素とアルゴン、レーザーガスを希釈するバッファガスとしてネオンを例に説明する。なお、レーザーガスとしてフッ素とクリプトン、またはフッ素とキセノン、バッファガスとしてヘリウムまたはその他の希ガスを使用しても良い。さらに、フッ素ガスの代わりに塩素ガスを使用しても良い。
【0024】
図2は、エキシマレーザー発振装置の基本構成例を例示する図である。エキシマレーザー発振装置10では、フッ素とアルゴンから構成されたレーザーガスおよびバッファガスとしてのネオンがレーザー容器11に封入される。レーザー容器11の内部には、レーザー光の発振を可能にする放電を得るための一対の主放電電極12と12が配置されている。さらに、レーザー容器11内には、一対の主放電電極12と12の間に高速のレーザーガスの流れを作り出すための循環ファン13が配置される。その他エキシマレーザー発振装置10は、レーザー光を取り出す窓14、ガス導入室15、ガス導入管16およびダスト除去フィルタ17を備える。
【0025】
図1に戻り、本発明の第1の実施の形態に係る不純物除去装置1について詳細に説明する。不純物除去装置1は、エキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスを循環ポンプ25により循環させ、再びエキシマレーザー発振装置10に戻す閉ループを形成する。エキシマレーザー発振装置10内の希ガスは、循環流入口41から不純物除去装置1へ流入し、第1の処理装置としての第1の処理筒21を通過し、第2の処理装置としての第2の処理筒23を通過した後、循環流出口42から流出し、エキシマレーザー発振装置10へ戻される。
【0026】
第1の処理筒21には、フッ素およびフッ素化合物、水分を除去する処理剤22が充填されている。このように、本発明の第1の実施の形態では、希ガス中に混合している不純物としてまずフッ素およびフッ素化合物を除去する。また、水分が含まれている場合は同時に水分も除去する。
フッ素(F)やフッ化水素(HF)は極めて反応性が高いガスであり、不純物除去装置1の閉ループにおいてより早い段階で除去することにより、第1の処理筒21以降の装置がFやHFにより腐食(酸化)されるのを防ぐことができる。また、レーザーガスとして寄与するFを敢えて除去し、フッ素化合物の除去効率を高め、さらに、水分を除去することにより、希ガスの再利用を可能にする。
【0027】
フッ素およびフッ素化合物、水分を除去する処理剤22としては、ゼオライト、ゼオライトと酸化カルシウムの組合せ、またはゼオライトと水酸化カルシウムの組合せが好ましい。ゼオライトを使用すると、フッ素およびフッ素化合物と、水分とを除去することができる。ゼオライトで水分を除去し、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムでフッ素およびフッ素化合物を除去すると、ゼオライトだけの場合よりもゼオライトの寿命を長くすることができる。
また、除去に処理剤を使用しているため、除去が容易であり除去効率もよい。さらに、装置の小型化、簡易化を図ることができる。
【0028】
第1の処理筒21は、ステンレスで製造されることが好ましい。ステンレスを用いることにより、第1の処理筒21の内部がフッ素やフッ化水素等により腐食(酸化)されるのを防ぐことができる。
また、第1の処理筒21に2種類の処理剤を充填する場合には、各々の処理剤の処理容量の低下を招くことを防ぐため、各々の処理剤が混ざり合わないように分離して充填するのが好ましい。その場合は、第1の処理筒21の内部の各々の処理剤の境界に混ざり合い防止ネット(不図示)または多孔の仕切り板(不図示)を設けても良い。
【0029】
第1の処理筒21に充填された処理剤22は、フッ素およびフッ素化合物、または水分の吸着により消耗する。したがって、一定期間経過後には処理剤22を交換する必要がある。処理剤の交換は、第1の処理筒21を取り外すことにより行われる。そのため、第1の処理筒内のフッ素およびフッ素化合物が処理筒外に流出することを防ぐために、流入口バルブ31と流出口バルブ32を設ける。
【0030】
処理剤がフッ素およびフッ素化合物を除去する際、副生成物として水分や酸素を生成する場合がある。
2F+2Ca(OH)→ 2CaF+2HO+O
2HF+Ca(OH)→ CaF+2H
SiF+2Ca(OH) → 2CaF+SiO+2H
しかし、これらの水分や酸素は、第1の処理筒21および後述の第2の処理筒23で除去される。
【0031】
第1の処理筒21を通過した希ガスは、第2の処理筒23へ送られる。第2の処理筒23には、予め還元処理を行っている金属系処理剤が充填されている。したがって、希ガスが第2の処理筒23を通過する際、第1の処理筒21で生成され希ガス中に混合している酸素が除去される。希ガスから不純物である酸素を除去することにより、希ガスの再利用が可能となる。
なお、希ガスが循環する配管51に温度調整手段(加熱、冷却等)を設けると、フッ素およびフッ素化合物と、酸素の除去が容易となる。
【0032】
金属系処理剤には、Ni系触媒やCu系触媒または複合金属酸化物が好ましい。
例えばNi系触媒を用いると、以下のように酸素を除去することができる。
+2Ni → 2NiO
【0033】
第1の処理筒21と第2の処理筒23は、別々に形成してもよくまたは処理装置として一体に形成しても良い。別々に形成すると、後述のように第2の処理筒23を充填した処理剤を再生させることのできる装置とすることができる。一体として形成すると、装置の簡略化が可能となる。
第2の処理筒23は、ステンレスで製造されることが好ましい。ステンレスを用いると、希ガス中に微小のフッ素やフッ化水素が残存して混合している場合に、装置内部が腐食(酸化)されるのを防ぐことができる。
【0034】
通常、処理剤は処理時間の経過と共に消耗するので、新しい処理剤と交換する必要がある。しかし、第2の処理筒23で用いる金属系処理剤24は、120℃以上に加熱しながら、Hのような還元ガスを導入することで還元反応により再生することができる。
【0035】
図3は、第2の処理筒23に充填する金属系処理剤を再生させるため、第2の処理筒23が再生装置を有する場合のフロー図である。
金属系処理剤を再生させるために、第2の処理筒23の流入側に還元ガス導入口バルブ62を設ける。第2の処理筒23の外面に加熱用ヒーター61を設置し、還元ガス導入口バルブ62より還元ガス(例えばH)を導入しながら、ヒーター61により第2の処理筒23を加熱し、金属系処理剤を還元し再生させる。
または、還元ガス供給ライン65に加熱器64を設け、予め所定温度に加熱された還元ガスを還元ガス導入口バルブ62を開にして導入し、金属系処理剤を所定温度まで加熱し還元して再生させてもよい。
【0036】
なお、還元ガスをエキシマレーザー発振装置10に戻すと、還元ガス自身が不純物となる。そのため、第2の処理筒23内の金属系処理剤を再生させる場合は、第2の処理筒の流入口バルブ33と流出口バルブ34を閉めた状態で、還元ガスを導入し第2の処理筒23の流出側の再生ガス流出口バルブ63より還元ガスを排出させるとよい。
【0037】
還元処理された金属系処理剤は空気等と接触すると酸化されるため、流入口バルブ33と流出口バルブ34を設け還元処理を行った後に空気等と接触するのを防ぐ。また、還元処理された金属系処理剤が充填された第2の処理筒を未使用時は、流入口バルブ33と流出口バルブ34を閉めることにより空気等との接触を防ぐことができる。
【0038】
図1に戻り説明を続ける。第1の処理筒21または第2の処理筒23に充填された処理剤22、24によりパーティクルが発生する場合があり、不純物となるこのパーティクルが後述の循環ポンプ25やエキシマレーザー発振装置10内に混入するのを防ぐ必要がある。なお、「パーティクル」とは、成形された第1および第2の処理筒用処理剤に含まれる、微細な粒子(粉化された粒子)をいう。
そのため、第2の処理筒23以降に金属フィルタ26を設けパーティクルを除去するとよい。金属フィルタ26の変わりに、セラミックや樹脂等の非金属製のフィルタを用いても良い。
【0039】
図1に示すように、金属フィルタ26を通過した希ガスは、循環装置としての循環ポンプ25を通る。循環ポンプ25により、エキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスが、不純物除去装置1を構成する配管51内を循環しエキシマレーザー発振装置10に戻される。循環ポンプ25には、ガスの吸引と圧縮の両方の機能を持ったものが好ましい。そうすると、循環終了時に不純物除去装置1の配管51内に希ガスを残留させることなく、エキシマレーザー発振装置10に希ガスを戻すことができる。
【0040】
循環ポンプ25は、第1の処理筒21の後に設置することが好ましい。そうすると、循環ポンプ25内部がフッ素やフッ化水素等により酸化され汚染物質が発生するのを抑制することができる。希ガス中に混合したフッ素およびフッ素化合物を除去した後であれば、第1の処理筒21の直後であっても第2の処理筒23の後であってもよい。
【0041】
循環ポンプ25の内部には、弁や軸受部等の金属同士の接触部があるため、金属小片としてのパーティクルが発生する場合がある。したがって、図1では、循環ポンプ25の後に金属フィルタ27を設け発生したパーティクルがエキシマレーザー発振装置10内に混入するのを防いでいる。金属フィルタ27の変わりに、セラミックや樹脂等の非金属製のフィルタを用いても良い。
【0042】
図1では、第2の処理筒23の後、および循環ポンプ25の後にパーティクルを捕集する金属フィルタ26と27を設けている。パーティクルの捕集量が増えると、圧損の上昇が起こる。そのため、圧力センサー28を設け配管51内の圧力を検知させても良い。圧力センサー28は、第2の処理筒23の後または、循環ポンプ25の後等、いずれの場所に配置しても良い。しかし、一番圧損が上昇しやすい第2の処理筒23と金属フィルタ26の間に配置するのが好ましい。
なお、図1において、エキシマレーザー発振装置10から排出される希ガスが不純物除去装置1へ流入する配管を51aとし、希ガスが不純物除去装置1から流出する配管を51bとする。両者を区別する必要がないときは、配管51と呼ぶ。
【0043】
不純物除去装置1の循環流入口41には流入バルブ35、循環流出口42には流出バルブ36を設ける。そうすると、エキシマレーザー発振装置10と不純物除去装置1とのガス流路を遮断でき、希ガス中の不純物を除去するとき以外は、不純物除去装置1からエキシマレーザー発振装置10への不純物の混入を防ぐことができる。
【0044】
さらに、循環流入口41と循環流出口42をバイパスするバイパスライン52とバイパスバルブ37を設けてもよい。バイパスライン52は、図1に示すように、流入バルブ35の下流側と流出バルブ36の上流側を接続する。そうすると、流入バルブ35と流入バルブ36を閉め、バイパスバルブ37を開けることにより、不純物除去装置1内で希ガスを循環させることができるため、循環する希ガスに混合した不純物を除去する精度を上げることができる。1サイクルでエキシマレーザー発振装置10内から排出される希ガスに混合する不純物を十分に除去できない場合に、数回希ガスを循環させることで不純物をより除去することができる。
【0045】
第1の処理筒21を交換する場合、取り外すと接続口が大気と接触するため、交換作業中に混入した大気等の不純物をパージする必要がある。そのため、循環流入口41の流入バルブ35の下流側にパージガス導入ライン43を設け、循環流出口42の流出バルブ36の上流側に真空ポンプ(不図示)による排気ライン44を設けても良い。流入バルブ35と流出バルブ36を閉め、エキシマレーザー発振装置10と不純物除去装置1とのガス流路を遮断し、パージガス導入と真空ポンプによるパージガスの取り出しを行う。このようにすると、外気等の不純物がエキシマレーザー発振装置10内に混入することなく、パージガスの導入および真空ポンプによるパージガスの取り出しを行うことができる。
また、流入バルブ35、流出バルブ36よりそれぞれエキシマレーザー発振装置10側に、パージガス導入ライン43と真空ポンプによる排気ライン44を設けても良い。エキシマレーザー発振装置10と不純物除去装置1が離れて設置された場合、エキシマレーザー発振装置10と不純物除去装置1間の配管の真空引き、パージが可能となる。
【0046】
図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る不純物除去装置2について説明する。図4は、フッ素、水分および酸素の他に、エキシマレーザー発振装置から排出される希ガスに混合するSF、CF、Cなど(以下PFCガスとする)を除去する不純物除去装置2を示すフロー図である。不純物除去装置2は、PFCガスを除去する処理剤72が充填された処理装置としての第3の処理筒71を備える。
【0047】
PFCガスは、常温で除去することはできない。よって、第3の処理筒71に充填される処理剤72は触媒を用いて、これを加熱する。処理剤72は、700℃以上に加熱される。したがって、不純物除去装置2では、第4の処理筒73では水分を除去する。希ガス中に水分が含まれない場合は、第4の処理筒73は不要となる。
【0048】
第3の処理筒71でPFCガスを除去した際、使用する処理剤によってはSOやCOが生成することがある。よって、第4の処理筒73をSOやCOを除去する処理筒としてもよい。第4の処理筒73の後には、図1に示す第2の処理筒23が配置され酸素が除去される。
図4に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る不純物除去装置2は、不純物除去装置1において第1の処理筒21を、第3の処理筒71および第4の処理筒73で置き換えた構成となっている。
【0049】
本発明の第3の実施の形態に係る不純物除去装置は、図1に示すエキシマレーザー発振装置10を複数台備える。例えば、複数台のエキシマレーザー発振装置に接続されたそれぞれの配管を1本にまとめ1台の不純物除去装置1または2に接続する。このように構成すると、不純物除去装置1または2を有効に活用することができるとともに、複数台のエキシマレーザー発振装置から排出される希ガス中に混合するフッ素およびフッ素化合物と、酸素(必要に応じて水分またはPFCガス)を効率よく除去することができる。または、複数台のエキシマレーザー発振装置のうち稼動している装置から排出される不純物を除去することも可能である。
【0050】
本発明の実施の形態に係る不純物除去装置では、エキシマレーザー発振装置でレーザーガスとして使用するフッ素を除去するため、第1乃至第3の実施の形態に係る不純物除去装置において、配管51にフッ素を新たに加える導入管を設けても良い。この導入管の位置は、希ガス中に混合する不純物を除去後、希ガスをエキシマレーザー発振装置に戻す前が好ましい。
【0051】
[実施例]
図5に、本発明の第1の実施の形態に係る不純物除去装置1で行った不純物除去性能試験の結果を示す。本試験では、不純物が混合した希ガスを10l/minの流量で導入した。なお、図中のppmは体積パーセント濃度を表している。
本性能試験で用いた希ガスは、Neガスである。また、フッ素(F)、フッ化水素(HF)および水分(HO)の除去には、水酸化カルシウムとゼオライトを用いた。また、酸素(O)の除去には、Cu系処理剤を用いた。
【0052】
以上、本発明の実施の形態に係る不純物除去装置を使用すると、エキシマレーザー発振装置から排出される希ガスの大部分を構成するバッファガスを特に再利用することができる。エキシマレーザー発振装置から排出される希ガスは、バッファガスとして使用される希ガスがその大部分を構成する。バッファガスには、ヘリウムまたはネオンがよく用いられる。しかし、他の希ガスでもよい。例えば、エキシマレーザー発振装置内のレーザー管には、通常約95〜99%のネオンガスと、約1〜5%のクリプトンガス、約0.1〜0.5%のフッ素ガスが充填されている。これらの希ガスは高価なものであるため、95〜99%を占める希ガスを再利用することで希ガスの有効利用を図ることができかつランニングコストを効果的に低減させることができる。
【0053】
また、本発明の実施の形態に係る不純物除去装置では、エキシマレーザー発振装置稼動時であっても(レーザー光発光時含)、希ガスを循環させ希ガス中の不純物を除去することができる。希ガス中に含まれるフッ素ガスは約0.1〜0.5%であり、このフッ素ガスがフッ素化合物を生成する。生成したフッ素化合物も希ガス中の不純物となるため、本発明の実施の形態に係る不純物除去装置では、常に希ガスを循環させフッ素およびフッ素化合物を除去することにより、フッ素化合物等の除去効率を高め、希ガスの再利用を可能にする。その結果、希少かつ高価な希ガスの再利用が可能になり、不純物除去装置を備えるエキシマレーザー発振装置の希ガスの有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態に係る不純物除去装置の構成を示す図である。
【図2】エキシマレーザー発振装置の基本構成例を例示する断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る不純物処理装置が有する第2の処理筒であって、処理剤を再生させる再生装置を有する第2の処理筒の断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る不純物除去装置の構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係る不純物除去装置で行った不純物除去性能試験の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0055】
1、2 不純物除去装置
10 エキシマレーザー発振装置
11 レーザー容器
12 主放電電極
13 循環ファン
14 レーザー光を取り出す窓
15 ガス導入室
16 ガス導入管
17 ダスト除去フィルタ
21 第1の処理筒
22 処理剤
23 第2の処理筒
24 処理剤
25 循環ポンプ
26、27 金属フィルタ
28 圧力センサー
31、33 流入口バルブ
32、34 流出口バルブ
35 流入バルブ
36 流出バルブ
37 バイパスバルブ
41 循環流入口
42 循環流出口
43 パージガス導入ライン
44 排気ライン
51 配管(流出管)
52 バイパスライン
61 ヒーター
62 還元ガス導入口バルブ
63 再生ガス流出口バルブ
64 加熱器
65 還元ガス供給ライン
71 第3の処理筒
72 処理剤
73 第4の処理筒
74 処理剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマレーザー発振装置から排出される希ガスに混合したフッ素およびフッ素化合物を除去する第1の処理装置と;
前記第1の処理装置で生成する酸素を除去する第2の処理装置と;
前記エキシマレーザー発振装置から排出される希ガスを循環させ、前記エキシマレーザー発振装置に戻す循環装置とを備える;
不純物除去装置。
【請求項2】
前記循環装置は、前記エキシマレーザー発振装置から前記第1の処理装置へ、前記第1の処理装置から前記第2の処理装置へ、前記第2の処理装置から前記エキシマレーザー発振装置へ前記希ガスを循環させる;
請求項1に記載の不純物除去装置。
【請求項3】
前記第2の処理装置は、処理剤を用いて前記酸素を除去する装置であって、使用後の前記処理剤を再生させ再び使用可能にする再生装置を有する;
請求項1又は請求項2に記載の不純物除去装置。
【請求項4】
前記第1の処理装置が、希ガスに混合したフッ素およびフッ素化合物と、水分またはPFCガスとを除去する装置である;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の不純物除去装置。
【請求項5】
複数台の前記エキシマレーザー発振装置から排出される希ガス中に含まれるフッ素およびフッ素化合物を除去し、前記フッ素およびフッ素化合物除去時に生成する酸素を除去する;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の不純物除去装置。
【請求項6】
レーザー光を発生するエキシマレーザー発振装置から排出される希ガスを循環させ;
前記希ガス中に混合したフッ素およびフッ素化合物を除去し;
前記フッ素およびフッ素化合物除去時に生成した酸素を除去し;
前記希ガスを前記エキシマレーザー発振装置に戻し;
前記戻された希ガスが再利用される;
不純物除去装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−92920(P2010−92920A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258628(P2008−258628)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】