説明

不純物含有アルゴンガスの精製方法および精製装置

【課題】不純物含有アルゴンガスを精製する際、装置構成を簡略化でき、設備費用、運転費用を低減することができる精製方法および精製装置を得る。
【解決手段】一酸化炭素、水素、酸素、窒素を不純物として含む不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素および水素を酸素と反応させて二酸化炭素と水に変換する触媒筒7と、この触媒筒7で生成したガス中の水を除去する第1吸着層と、この第1吸着層からのガス中の二酸化炭素を除去する第2吸着層と、この第2吸着層からのガス中の一酸化炭素と窒素を除去する第3吸着層とが同一筒内に設けられた吸着筒9a、9bを用い、第1ないし第3吸着層での吸着温度、再生温度を同一として、不純物含有アルゴンガスを精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一酸化炭素、水素、酸素、窒素などの少量の不純物ガスを含むアルゴンガスを精製して高純度アルゴンガスを得るための精製方法および精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルゴンガスは、不活性ガスであることから、溶接用のシールドガスや金属の熱処理の際の雰囲気ガスなどとして広く使用されている。半導体の基板材料として使用されているシリコン単結晶を製造する単結晶製造炉の雰囲気ガスには、高純度のアルゴンガスが使用されているが、貴重なアルゴンガスを有効に利用するため、この製造炉から排出されるアルゴンガスを回収し、精製して再使用することが行われている。
【0003】
このようなアルゴンガスを回収、精製する方法として、例えば、特開平7−138007号公報に開示の方法がある。このアルゴンガスの精製方法は、一酸化炭素、水素、酸素、窒素などの少量の不純物ガスを含むアルゴンガスを精製する方法において、前記不純物含有アルゴンガスをパラジウムまたは金触媒に接触させて含有する一酸化炭素および水素と酸素とを反応させて二酸化炭素および水に変換した後、常温でゼオライトが充填された第1吸着塔に通して前記反応で生成した二酸化炭素および水を吸着除去し、ついでこのガスを−10〜−50℃に冷却した後、ゼオライトが充填された第2吸着塔に通して窒素および未反応の一酸化炭素を吸着除去するものである。
【0004】
しかしながら、この精製方法にあっては、第1吸着塔での吸着温度が常温であり、第2吸着塔での吸着温度が−10〜−50℃であるため、吸着温度が異なること、第2吸着塔に通すアルゴンガスを−10〜−50℃に冷却しなければならないことから、吸着塔を別々に設置しなければならず、第2吸着塔に送り込むアルゴンガスを−10〜−50℃に冷却する冷却装置が必要となり、さらには個々の吸着塔を再生するための再生温度条件が異なるため、それぞれ別個の再生用の加熱装置などが必要となる。このため、装置構成が複雑になり、設備費用、運転費用が嵩む問題が残されていた。
【特許文献1】特開平7−138007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明における課題は、不純物含有アルゴンガスを精製する際、装置構成を簡略化でき、設備費用、運転費用を低減することができる精製方法および精製装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、一酸化炭素、水素、酸素、窒素を不純物として含む不純物含有アルゴンガスを触媒に接触させて、これに含まれる一酸化炭素および水素を酸素と反応させて二酸化炭素と水に変換し、ついでこのガスを第1吸着層に通して水を除去し、さらに第2吸着層に通して二酸化炭素を除去し、ついで第3吸着層を通して一酸化炭素および窒素を除去し、かつ第1吸着層、第2吸着層および第3吸着層での吸着温度条件をいずれも10〜50℃の温度範囲内の同一温度とし、第1吸着層、第2吸着層および第3吸着層での再生温度条件をいずれも150〜400℃の温度範囲内の同一温度とすることを特徴とする不純物含有アルゴンガスの精製方法である。
【0007】
請求項2にかかる発明は、第1吸着層と第2吸着層をなす吸着剤が同一であることを特徴とする請求項1記載の不純物含有アルゴンガスの精製方法である。
請求項3にかかる発明は、不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、水素、酸素の量を測定し、触媒に接触させる際の一酸化炭素、水素、酸素の含有量がモル比で、一酸化炭素含有量>酸素含有量>水素含有量となるように、一酸化炭素および/または酸素を添加したのち、触媒に接触させることを特徴とする請求項1記載の不純物含有アルゴンガスの精製方法である。
【0008】
請求項4にかかる発明は、第1吸着層、第2吸着層および第3吸着層での再生時の加熱用ガスとして、系外から導入したアルゴンガス以外のガスを用い、再生時の冷却用ガスおよびパージ用ガスとして精製したアルゴンガスを用いることを特徴とする請求項1記載の不純物含有アルゴンガスの精製方法である。
【0009】
請求項5にかかる発明は、一酸化炭素、水素、酸素、窒素を不純物として含む不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素および水素を酸素と反応させて二酸化炭素と水に変換する触媒筒と、
この触媒筒で生成したガス中の水を除去する第1吸着層と、この第1吸着層からのガス中の二酸化炭素を除去する第2吸着層と、この第2吸着層からのガス中の一酸化炭素と窒素を除去する第3吸着層とを有し、
これら第1ないし第3吸着層が同一筒内に設けられたことを特徴とする不純物含有アルゴンガスの精製装置である。
【0010】
請求項6にかかる発明は、不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、水素、酸素の濃度を測定する濃度計と、この濃度計からの一酸化炭素、水素、酸素の濃度に基づいて不純物含有アルゴンガスに一酸化炭素および/または酸素を添加する一酸化炭素/酸素添加装置を備えたことを特徴とする請求項5記載の不純物含有アルゴンガスの精製装置である。
請求項7にかかる発明は、第1ないし第3吸着層を再生する際の加熱用ガスを系外から導入するための管路を設けたことを特徴とする請求項5記載の不純物含有アルゴンガスの精製装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不純物含有アルゴンガスを精製する際に、装置構成が簡略化でき、設備費用、運転費用を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の不純物含有アルゴンガスの精製装置の一例を示すもので、図1において符号1は、単結晶製造炉を示す。
この単結晶製造炉1から排出されるアルゴンガスは、アルゴンガスを主成分とし、これに一酸化炭素、水素、酸素、窒素などの不純物が少量含まれたものである。
【0013】
この不純物含有アルゴンガスは、ライン32を経てガスホルダー2に送られ、ここで一次貯留されたのち、ベンチュリースクラバー、電気集塵機などの除塵器3に導入され、固形粒子等が除かれる。除塵器3からのアルゴンガスは、圧縮器4で加圧され、ライン35を通って活性炭等が充填された油分除去器5に入り、油分が除去され、熱交換器8に送られ、後述する触媒筒7からのガスと熱交換して加熱される。
【0014】
この加熱されたアルゴンガスは、ついで加熱器6で加熱されたのち、触媒筒7に導入される。この触媒筒7には、パラジウム、白金などの貴金属が担持された触媒が充填されており、この触媒の作用により、触媒筒7に入った不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素と酸素とが反応して二酸化炭素となり、水素が酸素と反応して水となる。
この酸化反応において、アルゴンガスの温度が150℃未満では十分に進行しない。アルゴンガスの温度が400℃を越えると触媒活性が低下する。
【0015】
また、本発明では、触媒筒7に導入される不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素と、酸素と、水素との含有量がモル比で、一酸化炭素含有量>酸素含有量>水素含有量であることが重要である。これは、触媒筒7での反応目的が、水素を完全に水とするために、水素と酸素との反応量論比よりも過剰の酸素を必要とすること、同時に水素を酸化した後に余剰分として残存する酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素とし、酸素が残らないようにすること、すなわち水素、酸素とも触媒によって完全に反応させて吸着性の高い水、二酸化炭素とすることであるからである。
【0016】
このように不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、酸素および水素の含有量比とするため、ライン36にガス濃度計15を設け、ライン36を流れるアルゴンガスのこれら成分の含有量を測定し、この測定値に基づいて一酸化炭素/酸素添加装置16から一酸化炭素および/または酸素を不純物含有アルゴンガスに添加するようになっている。
【0017】
不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、酸素、水素の含有量およびその比率は、様々に変化するが、要は一酸化炭素/酸素添加装置16から適量の一酸化炭素および/または酸素を添加し、一酸化炭素含有量>酸素含有量>水素含有量の関係が満足されるようにすればよい。例えば、一酸化炭素/酸素添加装置16にマイクロプロセッサーを組み込み、ガス濃度計15からの一酸化炭素、酸素、水素の各含有量をマイクロプロセッサーに入力して演算させるようにすればよい。なお、一酸化炭素および/または酸素の添加位置は、触媒筒7よりも上流側であれば、特にこの例での位置に限定されることはない。
【0018】
触媒筒7から導出されるアルゴンガス中の不純物は、触媒筒7での反応の結果、水、二酸化炭素、窒素および反応残余の一酸化炭素となる。このアルゴンガスは、その温度が150〜400℃であるから、これを熱交換器8に送り、油分除去器5からのアルゴンガスと熱交換して10〜50℃に冷却されたのち、ライン37から吸着精製部9に送られる。
【0019】
吸着精製部9は、2基の吸着筒9a、9bを備え、これら吸着筒9a、9bを吸着工程と再生工程とに交互に繰り返して行うことにより、アルゴンガス中の水、二酸化炭素、窒素、一酸化炭素を吸着除去し、高純度のアルゴンガスを連続的に得るものである。
【0020】
図2は、各吸着筒9a、9b内の吸着剤の充填形態を示すものである。吸着筒9a、9b内部には、第1吸着層91が形成され、この第1吸着層91の上部には第2吸着層92が形成され、この第2吸着層92上に第3吸着層93が形成され、三層構造となっている。
第1吸着層91は、アルゴンガス中の水を吸着除去するもので、これを構成する吸着剤には、シリカゲル、活性アルミナ、K−A、Na−A、Ca−A、Na−Xなどの各種ゼオライトが用いられる。
【0021】
第2吸着層92は、アルゴンガス中の二酸化炭素を吸着除去するもので、これをなす吸着剤としてはCa−A、Na−Xなどのゼオライトが用いられる。
第1吸着層91と第2吸着層92をなす吸着剤として、Ca−A、Na−Xなどのゼオライトを用いれば、これらの層を1個の層とすることができる。
第3吸着層93は、アルゴンガス中の一酸化炭素、窒素を吸着除去するもので、これを構成する吸着剤には、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトなどが用いられる。
【0022】
熱交換器8で10〜50℃に冷却されたアルゴンガスは、ライン37を通り、吸着工程にある吸着筒9aに導入され、第1ないし第3吸着層91、92、93を10〜50℃の温度範囲内の同一温度で通過し、アルゴンガス中の二酸化炭素、水、一酸化炭素、窒素が吸着除去され、高純度アルゴンガスがライン43から導出され、ライン39を経てアルゴンガスガス貯槽12に送られ、貯留される。
【0023】
この際、第1吸着層91に入るアルゴンガスの温度は10〜50℃とされ、水の吸着熱によって若干発熱したアルゴンガスが第2吸着層92から第3吸着層93に流れ、第2および第3吸着層92、93での吸着温度は、10〜50℃よりも若干高い温度で行われる。
【0024】
この吸着筒9aでの吸着工程が行われている間に、他方の吸着筒9bでは再生工程が行われる。系外からの窒素などの加熱用ガスがライン38から加熱器18に送られ、ここで150〜400℃に加熱されてライン44、45を通り、吸着筒9bに送られる。この温度が、150℃未満では、第1吸着層91での再生が不十分となり、400℃を越えると、第2吸着層92をなす吸着剤が熱で破壊される恐れがある。
加熱用ガスは、吸着筒9b内の第3吸着層93から第1吸着層91に流れ、これにより第3吸着層93から第1吸着層91に向かって順次加熱され三層の吸着層が150〜400℃の温度範囲内の同一温度で加熱再生される。
【0025】
吸着筒9b内部の吸着層全体が150〜400℃となると不純物の脱着が完了する。吸着筒9bから排出される加熱用ガスと不純物は、ライン46、47を経て系外に排出される。不純物の脱着が完了したら、加熱用ガスの供給を停止し、ライン39からアルゴンガス貯槽12に回収される精製された高純度アルゴンガスの一部を冷却用ガスとして、ライン48、45から吸着筒9bに流し、吸着筒9b内の加熱用ガスの置換を行うとともに吸着層の冷却を行う。
【0026】
この操作の初期では吸着筒9bから排出されるガス中の加熱用ガスの濃度が高いので、これをライン46、47から系外に排出する。排出ガス中の加熱用ガスの濃度が低下したら、排出ガスをライン47、冷却器10、循環ブロアー11、ライン45で構成される循環ラインを経て再度吸着筒9bに送り、吸着層を冷却する。なお、吸着筒9bの再生工程の際の加熱用ガスとして、精製したアルゴンガスを使用することもできるがアルゴンガスの回収率が低下する。
【0027】
吸着筒9b内部の吸着層全体が冷却されたならば、吸着筒9bの再生工程が終了し、この吸着筒9bは次の吸着工程に移ることになり、吸着筒9aは再生工程に移行することになる。
アルゴンガス貯槽12に貯えられた高純度アルゴンガスは、フィルター13を通り、単結晶製造炉1に供給される。
【0028】
このようなアルゴンガスの精製方法によれば、触媒筒7に入る不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、水素、酸素の含有量を測定し、これら3種のガスの含有量が常に一酸化炭素含有量>酸素含有量>水素含有量となるように、一酸化炭素および/または酸素を添加しているので、触媒筒7での酸化反応により吸着剤で吸着除去が困難な水素と酸素とが、水素と酸素との反応および過剰な酸素は一酸化炭素との反応により、吸着剤により吸着除去が容易な水、二酸化炭素とに完全に変換され、吸着精製部9で水および二酸化炭素を容易に吸着除去できる。
【0029】
また、触媒筒7を出たアルゴンガス中の水、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素が第1ないし第3吸着層91、92、93においてほぼ同一の吸着条件で、かつ10〜50℃の吸着温度で吸着除去されるため、従来の方法のように、冷凍機を設けたり、吸着筒を別体としたりする必要がなく、装置構成が簡略化でき、設備費用、運転費用を低減できる。
【0030】
特に、一酸化炭素と窒素を吸着する第3吸着層93をなす吸着剤として、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを用いることで、一酸化炭素と窒素とを10〜50℃の常温の温度域で吸着できるようになり、このため第1吸着層91、第2吸着層92と同様の温度条件下で吸着操作が可能となる。
【0031】
一般に、微量な不純物ガスを吸着剤により吸着除去するには、不純物ガスに対する吸着特性がラングミュアー型吸着等温線で表される吸着剤を用いる必要がある。
吸着筒9a、9bにおいて吸着除去すべき不純物は上述のように水、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素であるが、この内水および二酸化炭素については、常温域でラングミュアー型吸着等温線で表される吸着特性を有する吸着剤、すなわち上述のシリカゲル、活性アルミナ、K−A、Na−A、Ca−A、Na−Xなどの各種ゼオライトによって吸着除去される。
【0032】
しかし、一酸化炭素、窒素については、常温域でラングミュアー型吸着等温線で表される吸着特性を有する吸着剤は従来知られておらず、このため特開平7−138007号公報にあるように、−10〜−50℃の低温として通常のゼオライトなどの吸着剤にラングミュアー型吸着等温線で表される吸着特性を発現させて、一酸化炭素、窒素を吸着除去していた。
【0033】
これに対して、本発明では、一酸化炭素、窒素を吸着する吸着剤として、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを用いることで、10〜50℃の常温域においても、一酸化炭素、窒素に対してラングミュアー型吸着等温線で表される吸着特性が得られ、この温度域で一酸化炭素、窒素が吸着除去されることになった。
このため、二酸化炭素、水を吸着除去する第1および第2吸着層91、92と一酸化炭素、窒素を吸着除去する第3吸着層93とを同一の吸着温度条件、すなわち10〜50℃の範囲での同一温度とすることが可能になったのである。
【0034】
また、第1吸着層91ないし第3吸着層93の再生時の加熱用ガスの温度を、すべての吸着層について150〜400℃の範囲で同一温度としているので、再生のための設備が簡略化され、省エネルギーとなる。
一般に、吸着剤の再生温度条件には、個々の吸着剤とこれに吸着された吸着質とに応じた最適温度があり、この最適温度で再生することが、吸着量が増大するため、通常行われている。したがって、この例においても、第1吸着層91ないし第3吸着層93について、個々に最適再生温度条件を適用して、大きな吸着量を得るようにすることが考えられる。
【0035】
例えば、第3吸着層93を構成する銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトについて、吸着質が一酸化炭素の場合の最適再生温度は200〜600℃であり、吸着質が窒素の場合の最適再生温度は、150〜350℃である。
とすれば、第1吸着層91ないし第3吸着層93をそれぞれ最適再生温度条件で再生するとなると、温度の異なる4種の再生用ガスを用意せねばならず、設備が複雑となり、設備コストも高くなり、運転操作も面倒となる。
【0036】
しかし、本発明では、吸着精製部9に送られるアルゴンガス中の水、炭酸ガス、一酸化炭素、窒素の含有量がさほど多くないため、個々の第1吸着層91ないし第3吸着層93のそれぞれに大きな吸着量を持たせる必要がない。このため、3つの吸着層91、92、93に対して150〜400℃の再生温度条件で再生すれば、十分な不純物除去機能が果たされることになる。
これにより、再生のための操作条件が単純となり、そのための設備も簡略化される。
【0037】
また、吸着筒9a、9bの再生の際の加熱用ガスとして、高価な精製後のアルゴンガスではなく、窒素などの安価なガスを用い、冷却用およびパージ用に精製したアルゴンガスを用いるようにしているので、アルゴンガスの回収率が高いものとなる。
さらに、触媒筒7から導出されたアルゴンガスの熱を不純物含有アルゴンガスの加熱に利用しているので、熱の無駄がなく、省エネルギーとなる。
【0038】
以下、具体例を示す。
図1に示した装置を用いて、不純物含有アルゴンガスを精製した。この不純物含有アルゴンガスには、窒素;400ppm、酸素;10ppm、一酸化炭素;1000ppm、二酸化炭素;200ppm、水素;50ppm、水分;飽和、ダスト;150mg/Nmが含まれていた。
【0039】
ガス流量300Nm/時間、温度30℃、圧力大気圧とした。ガスホルダー2より引き出された不純物含有アルゴンガスを、ベンチュリースクラバーの除塵器3に送り、ダストを除去し、圧縮機4により100kPaGに加圧した。この不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、酸素、水素のそれぞれの含有量が、一酸化炭素含有量>酸素含有量>水素含有量の関係を満足するように、一酸化炭素/酸素添加装置16から酸素を添加して、一酸化炭素;1000ppm、酸素;300ppm、水素;50ppmとした。
【0040】
次いで、このガスを加熱器6で200℃に加熱した後、触媒筒7に導入した。触媒筒7には、白金をアルミナに担持した触媒を充填した。触媒筒7から導出されたアルゴンガスを次いで吸着精製部9に送り込んだ。
吸着筒9a、9bには、ガスの入口部分から第1吸着層91として活性アルミナを、第2吸着層92としてNa−Xゼオライトを、第3吸着層93として銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトをこの順序で充填した。銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトには、Si/Al比;11.9、銅イオン交換率;121%のものを用いた。
吸着筒9a、9bに導入するアルゴンガスの温度を40℃とした。また、再生工程における加熱用ガスの温度は200℃とした。
【0041】
以上の精製により得られた精製アルゴンガスは、アルゴンガス;99.999%以上、酸素;0.2ppm以下、水素;0.5ppm以下、一酸化炭素;0.1ppm以下、窒素;0.1ppm以下、二酸化炭素;0.5ppm以下、露点−75℃以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のアルゴンガス精製装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明における吸着筒内の吸着層の状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
7・・・触媒筒、9・・・吸着精製部、9a、9b・・・吸着筒、15・・・濃度計、16・・・一酸化炭素/酸素添加装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素、水素、酸素、窒素を不純物として含む不純物含有アルゴンガスを触媒に接触させて、これに含まれる一酸化炭素および水素を酸素と反応させて二酸化炭素と水に変換し、ついでこのガスを第1吸着層に通して水を除去し、さらに第2吸着層に通して二酸化炭素を除去し、ついで第3吸着層を通して一酸化炭素および窒素を除去し、かつ第1吸着層、第2吸着層および第3吸着層での吸着温度条件をいずれも10〜50℃の温度範囲内の同一温度とし、第1吸着層、第2吸着層および第3吸着層での再生温度条件をいずれも150〜400℃の温度範囲内の同一温度とすることを特徴とする不純物含有アルゴンガスの精製方法。
【請求項2】
第1吸着層と第2吸着層をなす吸着剤が同一であることを特徴とする請求項1記載の不純物含有アルゴンガスの精製方法。
【請求項3】
不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、水素、酸素の量を測定し、触媒に接触させる際の一酸化炭素、水素、酸素の含有量がモル比で、一酸化炭素含有量>酸素含有量>水素含有量となるように、一酸化炭素および/または酸素を添加したのち、触媒に接触させることを特徴とする請求項1記載の不純物含有アルゴンガスの精製方法。
【請求項4】
第1吸着層、第2吸着層および第3吸着層での再生時の加熱用ガスとして、系外から導入したアルゴンガス以外のガスを用い、再生時の冷却用ガスおよびパージ用ガスとして精製したアルゴンガスを用いることを特徴とする請求項1記載の不純物含有アルゴンガスの精製方法。
【請求項5】
一酸化炭素、水素、酸素、窒素を不純物として含む不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素および水素を酸素と反応させて二酸化炭素と水に変換する触媒筒と、
この触媒筒で生成したガス中の水を除去する第1吸着層と、この第1吸着層からのガス中の二酸化炭素を除去する第2吸着層と、この第2吸着層からのガス中の一酸化炭素と窒素を除去する第3吸着層とを有し、
これら第1ないし第3吸着層が同一筒内に設けられたことを特徴とする不純物含有アルゴンガスの精製装置。
【請求項6】
不純物含有アルゴンガス中の一酸化炭素、水素、酸素の濃度を測定する濃度計と、この濃度計からの一酸化炭素、水素、酸素の濃度に基づいて不純物含有アルゴンガスに一酸化炭素および/または酸素を添加する一酸化炭素/酸素添加装置を備えたことを特徴とする請求項5記載の不純物含有アルゴンガスの精製装置。
【請求項7】
第1ないし第3吸着層を再生する際の加熱用ガスを系外から導入するための管路を設けたことを特徴とする請求項5記載の不純物含有アルゴンガスの精製装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−111506(P2006−111506A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302702(P2004−302702)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】