説明

不純物拡散成分の拡散方法、および太陽電池の製造方法

【課題】拡散炉内に一度に載置できる半導体基板数の減少と製造工程数の増大とを防ぎながら、異常拡散の発生を抑える。
【解決手段】不純物拡散成分の拡散方法は、半導体基板1の一方の表面上にN型の不純物拡散成分を含むN型拡散剤層2を形成し、半導体基板1の他方の表面上にP型の不純物拡散成分を含むP型拡散剤層4を形成し、複数の半導体基板1を、同じ導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層同士が対向するようにして拡散炉内に配列し、拡散炉内で半導体基板1を加熱して、半導体基板1の一方の表面にN型の不純物拡散成分を拡散させるとともに、半導体基板1の他方の表面にP型の不純物拡散成分を拡散させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物拡散成分の拡散方法、および太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の表面にN型の不純物拡散成分が拡散され、他方の表面にP型の不純物拡散成分が拡散された半導体基板が知られている。
【0003】
このような半導体基板は、例えば次のようにして形成していた。すなわち、半導体基板の一方の表面上に第1導電型の不純物拡散成分を含む第1拡散剤層を形成し、半導体基板の他方の表面上に第2導電型の不純物拡散成分を含む第2拡散剤層を形成する。そして、各拡散剤層が形成された複数枚の半導体基板を、一方の表面および他方の表面の向きを揃えて拡散炉内に配置する。すなわち、互いに隣接する2つの半導体基板のうち、一方の半導体基板の第1拡散剤層と、他方の半導体基板の第2拡散剤層とが向かい合うようにして、複数の半導体基板を拡散炉内に配置する。そして、拡散炉内で半導体基板に熱処理を施して、各拡散剤層に含まれる不純物拡散成分を半導体基板内に熱拡散させる。
【0004】
拡散炉での熱処理時、不純物拡散成分の一部は、拡散炉内のガス雰囲気中に放出(アウトディフュージョン)される。そのため、互いに隣接する半導体基板の一方の第1拡散剤層と、他方の第2拡散剤層とを向かい合わせて複数の半導体基板を拡散炉内に配列する従来の方法では、一方の半導体基板の第1拡散剤層からガス雰囲気中に放出された不純部拡散成分が、他方の半導体基板の第2拡散剤層に付着してしまうおそれがあった。また、他方の半導体基板の第2拡散剤層からガス雰囲気中に放出された不純部拡散成分が、一方の半導体基板の第1拡散剤層に付着してしまうおそれがあった。この場合、拡散させようとする不純物拡散成分の導電型と異なる導電型の不純物拡散成分が半導体基板の表面に拡散する異常拡散が発生してしまう場合があった。
【0005】
この異常拡散を防ぐ方法としては、例えば、拡散炉内に配列する半導体素子間の距離を拡げて、一方の半導体基板の拡散剤層から放出された不純物拡散成分が隣接する半導体基板に到達することを防ぐ方法が考えられる。
【0006】
また、他の方法として、特許文献1には、第1拡散剤層を形成して第1導電型の不純物拡散成分を熱拡散させた後に、第2拡散剤層を形成して第2導電型の不純物拡散成分を熱拡散させる方法が開示されている。具体的には、シリコンウエハの一方の表面に拡散剤(リン拡散源塗布剤)を塗布し、熱処理して拡散層を形成する。その後、各シリコンウエハの他方の表面に焼成により形成されたシリサイドガラス(リンケイ酸ガラス)をHF液で除去してから、拡散剤(ホウ素またはガリウム拡散源塗布剤)を塗布し、熱処理して別の拡散層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭54−94870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した半導体素子間の距離を拡げる方法では、拡散炉内に一度に載置できる半導体基板の枚数が減ってしまい、半導体基板の生産効率が低下してしまうという問題があった。また、一方の不純物拡散成分を熱拡散させた後に、他方の不純物拡散成分を熱拡散させる方法では、熱拡散工程を2回実施する必要があるため、半導体基板の製造工程数が増大してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、発明者によるこうした認識に基づいてなされたものであり、その目的は、拡散炉内に一度に載置できる半導体基板数の減少と製造工程数の増大とを防ぎながら、異常拡散の発生を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、不純物拡散成分の拡散方法である。この不純物拡散成分の拡散方法は、半導体基板の一方の表面上に第1導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層を形成し、半導体基板の他方の表面上に第2導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層を形成し、複数の半導体基板を、同じ導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層同士が対向するようにして拡散炉内に配列し、拡散炉内で半導体基板を加熱して、半導体基板の一方の表面に第1導電型の不純物拡散成分を拡散させるとともに、半導体基板の他方の表面に第2導電型の不純物拡散成分を拡散させることを含むことを特徴とする。
【0011】
この態様によれば、拡散炉内に一度に載置できる半導体基板数の減少と製造工程数の増大とを防ぎながら、異常拡散の発生を抑えることができる。
【0012】
本発明の他の態様は、太陽電池の製造方法である。この太陽電池の製造方法は、上記態様の不純物拡散成分の拡散方法を用いて半導体基板に不純物拡散成分を拡散させて、半導体基板の一方の表面に第1導電型の不純物拡散層を形成するとともに半導体基板の他方の表面に第2導電型の不純物拡散層を形成し、半導体基板の一方の表面側に第1電極を設け、当該第1電極を第1導電型の不純物拡散層と電気的に接続し、半導体基板の他方の表面側に第2電極を設け、当該第2電極を第2導電型の不純物拡散層と電気的に接続することを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、拡散炉内に一度に載置できる半導体基板数の減少と製造工程数の増大とを防ぎながら、異常拡散の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(A)〜図1(F)は、実施形態に係る不純物拡散成分の拡散方法と、太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図2】拡散炉内における半導体基板の配列状態を説明するための模式図である。
【図3】図3(A)は、実施例1における半導体基板の配列状態を説明するための模式図であり、図3(B)は、比較例1における半導体基板の配列状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(実施形態)
図1(A)〜図1(F)、および図2を参照して実施形態に係る不純物拡散成分の拡散方法と、太陽電池の製造方法について説明する。図1(A)〜図1(F)は、実施形態に係る不純物拡散成分の拡散方法と、太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。図2は、拡散炉内における半導体基板の配列状態を説明するための模式図である。
【0017】
<N型不純物拡散剤の調整>
N型不純物拡散剤は、N型(第1導電型)の不純物拡散成分と、ケイ素化合物と、有機溶剤とを含む。N型の不純物拡散成分は、一般にドーパントとして太陽電池の製造に用いられる化合物である。N型の不純物拡散成分は、V族元素の化合物を含む。N型の不純物拡散成分を用いることで、P型の半導体基板内にN型の不純物拡散層を形成することができ、N型の半導体基板内にN型(高濃度N型)の不純物拡散層を形成することができる。この不純物拡散成分に含まれるV族元素の化合物としては、例えば、Pなどを挙げることができる。ケイ素化合物は、例えば、テトラエトキシシラン加水分解生成物等の従来公知のケイ素化合物を用いることができる。有機溶剤としては、エタノール、酢酸エチル等の従来公知の有機溶剤を用いることができる。N型不純物拡散剤は、N型の不純物拡散成分、ケイ素化合物、および有機溶剤が均一に混合され、メンブレンフィルター等で濾過されて調整される。
【0018】
<P型不純物拡散剤の調整>
P型不純物拡散剤は、P型(第2導電型)の不純物拡散成分と、ケイ素化合物と、有機溶剤とを含む。P型の不純物拡散成分は、一般にドーパントとして太陽電池の製造に用いられる化合物である。P型の不純物拡散成分は、III族元素の化合物を含む。P型の不純物拡散成分を用いることで、P型の半導体基板内にP型(高濃度P型)の不純物拡散層を形成することができ、N型の半導体基板内にP型の不純物拡散層を形成することができる。この不純物拡散成分に含まれるIII族元素の化合物としては、例えば、B、Al等を挙げることができる。ケイ素化合物は、例えば、テトラエトキシシラン加水分解生成物等の従来公知のケイ素化合物を用いることができる。有機溶剤としては、エタノール、ジプロピレングリコール等の従来公知の有機溶剤を用いることができる。P型不純物拡散剤は、P型の不純物拡散成分、ケイ素化合物、および有機溶剤が均一に混合され、メンブレンフィルター等で濾過されて調整される。
【0019】
<拡散剤層の形成>
図1(A)に示すように、半導体基板1として、例えば、P型シリコンウエハを用意する。そして、半導体基板1の一方の表面上に、N型の不純物拡散成分を含むN型拡散剤層2を形成する。N型拡散剤層2の形成は、例えば次のようにして実施される。まず、スピンコート法を用いて半導体基板1の一方の表面に、上述のN型不純物拡散剤を塗布する。そして、塗布されたN型不純物拡散剤を乾燥させる。続いて、キュア処理を施してN型不純物拡散剤を固化する。これにより、N型拡散剤層2が形成される。
【0020】
次に、図1(B)に示すように、半導体基板1の他方の表面上に、P型の不純物拡散成分を含むP型拡散剤層4を形成する。P型拡散剤層4の形成は、例えば次のようにして実施される。まず、N型拡散剤層2の場合と同様に、スピンコート法を用いて半導体基板1の他方の表面、ここでは半導体基板1の一方の表面と対向する側の表面に、上述のP型不純物拡散剤を塗布する。そして、塗布されたP型不純物拡散剤を乾燥させる。これにより、P型拡散剤層4が形成される。
【0021】
<不純物拡散成分の拡散>
次に、図1(C)に示すように、N型拡散剤層2およびP型拡散剤層4が形成された半導体基板1を、拡散炉200に投入する。拡散炉200は、例えば従来公知の縦型拡散炉であり、ベース部201と、外筒202と、載置台204と、支持部材206と、ガス供給路208と、ガス排出路210と、ヒータ212とを備える。
【0022】
外筒202は、軸方向が鉛直方向になるようにベース部201に組み付けられており、ベース部201と外筒202とで炉室203が形成されている。載置台204は、平面視円形であり、室203の中央に配置されている。支持部材206は、柱状部材であり、載置台204の外縁部に周方向に間隔をあけて複数立設されている。一部の支持部材206間の間隔は、半導体基板1が載置台204に対して平行な状態で通過可能に設定されている。各支持部材206の側面には軸方向に間隔をあけて複数の溝が設けられている。半導体基板1の外縁部が支持部材206の溝に係合することで半導体基板1が支持部材206によって支持される。これにより、複数の半導体基板1が互いに間隔をあけて鉛直方向に並ぶように配列される。ガス供給路208は、炉室203に雰囲気ガスを供給するための管路であり、一端が雰囲気ガスタンク(図示せず)に、他端が外筒202の開口202aに連結されている。ガス排出路210は、炉室203内のガスを排出するための管路であり、一端が外筒202の開口202bに連結されている。ヒータ212は、外筒202の外周に設けられ、炉室203内を加熱可能に構成されている。
【0023】
図2に示すように、複数の半導体基板1は、同じ導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層同士が対向するようにして拡散炉200内に配列される。すなわち、複数の半導体基板1は、互いに隣接する2つの半導体基板1のうち、一方の半導体基板1のN型拡散剤層2を形成した表面が、他方の半導体基板1のN型拡散剤層2を形成した表面側を向くように配置される。これにより、隣接する半導体基板1に形成されたN型拡散剤層2同士が向かい合う。また、複数の半導体基板1は、互いに隣接する2つの半導体基板1のうち、一方の半導体基板1のP型拡散剤層4を形成した表面が、他方の半導体基板1のP型拡散剤層4を形成した表面側を向くように配置される。これにより隣接する半導体基板1に形成されたP型拡散剤層4同士が向かい合う。また、複数の半導体基板1は、互いに平行になるようにして拡散炉200内に配列される。
【0024】
このように複数の半導体基板1を配列した場合には、熱拡散時に各拡散剤層から炉室203のガス雰囲気中に放出された不純物拡散成分は、隣接する半導体基板1の同一導電型の拡散剤層に付着することになる。そのため、拡散させようとする不純物拡散成分の導電型と異なる導電型の不純物拡散成分が半導体基板の表面に拡散してしまうこと、すなわち異常拡散の発生を防ぐことができる。また、これにより、隣接する半導体基板1間の距離をより近づけることが可能となり、一度に熱拡散処理を施すことができる半導体基板1の枚数を増やすことができる。さらに、隣接する半導体基板1間の距離を近づけることで、各拡散剤層からガス雰囲気中に放出された不純物拡散成分を隣接する半導体基板1の拡散剤層に付着させるか、あるいは放出元の拡散剤層に再付着させることができる。そのため、ガス雰囲気中への放出による不純物拡散成分の損失を軽減することができ、半導体基板1への不純物拡散成分の拡散をより高精度に実施することができる。
【0025】
複数の半導体基板1は、隣接する半導体基板1同士の間隔が、0.1〜10mmとなるように拡散炉200内に配列することが好ましい。半導体基板1間の距離が0.1mm未満の場合は、半導体基板1への伝熱が不均一となり、不純物拡散成分を均一に拡散させることが困難になる可能性がある。一方、半導体基板1間の距離が10mmを超えた場合は、ガス雰囲気中への放出による不純物拡散成分の損失を軽減する効果が得られにくくなる可能性があり、また、拡散炉200に一度に載置可能な半導体基板1の枚数が減少してしまう。隣接する半導体基板1同士の間隔は、例えば、半導体基板1表面の任意の1点から隣接する半導体基板1の対向する表面までの最短距離とすることができる。あるいは、隣接する半導体基板1同士の間隔は、支持部材206に設けられた隣接する溝間の距離としてもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る不純物拡散成分の拡散方法では、拡散炉200内に配列された複数の半導体基板1のうち最外側の半導体基板1の外側にダミー基板20を配列している。ダミー基板20は、半導体基板1と略同一の大きさを有する板状部材である。ダミー基板20は、拡散炉200の熱拡散温度に耐えられるだけの耐熱性を有する材料で形成される。ダミー基板20は、自身と隣接する半導体基板1との間の距離が、隣接する半導体基板1同士の距離と等しくなるように配置されて、支持部材206に支持されている。ダミー基板20を設けることで、最外層に配置された半導体基板1の外側表面における熱拡散条件を、他の半導体基板1の各表面における熱拡散条件と等しくすることができる。そのため、拡散炉200内で一度に熱拡散処理を施した複数の半導体基板1について、その性能を拡散炉200内の載置場所によらず一定にすることができる。したがって、半導体基板1の製造歩留まりを高めることができる。
【0027】
図2に示すように複数の半導体基板1を炉室203内に配列した状態で、ガス供給路208から炉室203内に雰囲気ガスとして、例えば、窒素(N)ガスを供給する。そして、Nガス雰囲気下で半導体基板1を加熱して、半導体基板1の一方の表面にN型の不純物拡散成分を拡散させるとともに、半導体基板1の他方の表面にP型の不純物拡散成分を拡散させる。すなわち、N型拡散剤層2内の不純物拡散成分とP型拡散剤層4内の不純物拡散成分とを同時に熱拡散させる。その後、熱拡散によって半導体基板1表面に形成された酸化膜と、N型拡散剤層2およびP型拡散剤層4とをフッ酸で除去する。以上の工程により、図1(D)に示すように、N型の不純物拡散成分が拡散して形成されたN型不純物拡散層6と、P型の不純物拡散成分が拡散して形成されたP型不純物拡散層8とを備える半導体基板1が得られる。
【0028】
熱拡散温度は、820〜1200℃であることが好ましい。熱拡散温度が820℃未満であった場合、十分に熱拡散させることができない可能性がある。一方、熱拡散温度が1200℃を上回った場合は、所望の拡散領域を超えて不純物拡散成分が半導体基板1内に拡散してしまう可能性がある。また、半導体基板1が熱によってダメージを受けるおそれがある。また、熱拡散によって半導体基板1の表面に形成される酸化膜の厚さが増大し、この酸化膜の除去に長時間を要することになる。
【0029】
<太陽電池の形成>
次に、図1(E)に示すように、周知の化学気相成長法(CVD法)、例えばプラズマCVD法を用いて、半導体基板1のN型不純物拡散層6が形成された側の表面に、シリコン窒化膜(SiN膜)からなるパッシベーション層10を形成する。このパッシベーション層10は、反射防止膜としても機能する。なお、周知のウェットエッチング法を用いて、半導体基板1のN型不純物拡散層6が形成された側の表面に、微細な凹凸構造を有するテクスチャ部(図示せず)を形成してもよい。このテクスチャ部は、半導体基板1表面の光の反射を防止することができ、拡散剤層の形成前に形成される。
【0030】
次に、図1(F)に示すように、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法によりパッシベーション層10を選択的に除去して、N型不純物拡散層6の所定領域が露出するようにコンタクトホール10aを形成する。そして、例えば電解めっき法および無電解めっき法やAgペーストを用いたスクリーン印刷により、コンタクトホール10aに銀(Ag)等の金属を充填して、N型不純物拡散層6と電気的に接続された表面電極12(第1電極)を形成する。表面電極12は、太陽電池の効率を高めるためにくし形パターンに形成される。また、例えばアルミニウム(Al)ペーストを半導体基板1のP型不純物拡散層8が形成された側の表面にスクリーン印刷することにより、P型不純物拡散層8と電気的に接続された裏面電極14(第2電極)を形成する。以上の工程により、本実施形態に係る太陽電池100を製造することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る不純物拡散成分の拡散方法では、複数の半導体基板1を、同じ導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層が形成された表面同士が対向するようにして拡散炉200内に配列して、半導体基板1の一方の表面へのN型不純物拡散成分の熱拡散と、半導体基板1の他方の表面へのP型不純物拡散成分の熱拡散とを同時に実施している。これにより、拡散炉200内に配列する半導体基板1同士の間隔を広げることなく、またN型の不純物拡散成分の熱拡散とP型の不純物拡散成分の熱拡散とを別々に実施することなく、異常拡散の発生を抑えることができる。したがって、拡散炉200内に一度に載置できる半導体基板数の減少と製造工程数の増大とを防ぎながら、異常拡散の発生を抑えることができる。また、半導体基板の製造工程数の増大を防ぐことができるため、半導体基板の製造コストも抑えることができる。
【0032】
また、これにより、隣接する半導体基板1間の距離をより近づけることができるため、一度に熱拡散処理を施すことができる半導体基板数を増やすことができる。したがって、N型不純物拡散層6およびP型不純物拡散層8が形成された半導体基板1の生産効率を向上させることができる。さらに、これにより、各拡散剤層からガス雰囲気中に放出された不純物拡散成分を隣接する半導体基板1の拡散剤層に付着させるか、あるいは放出元の拡散剤層に再付着させることができる。その結果、ガス雰囲気中への放出による不純物拡散成分の損失を軽減することができ、半導体基板1への不純物拡散成分の拡散をより高精度に実施することができる。
【0033】
本実施形態に係る太陽電池100は、本実施形態に係る不純物拡散成分の拡散方法で不純物拡散成分を熱拡散させた半導体基板を用いて製造しているため、製造歩留まりを高めることができ、製造コストを低減することができる。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。上述の実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0035】
上述の実施形態では、P型シリコンウエハに不純物拡散層を形成したが、N型シリコンウエハに不純物拡散層を形成してもよい。また、上述の実施形態では、拡散炉200は縦型拡散炉であったが、従来公知の横型拡散炉であってもよい。この場合、ダミー基板20は、両サイドの半導体基板1の外側に配置される。また、上述の実施形態では、スピンコート法を用いて半導体基板1の表面に不純物拡散剤を塗布することで拡散剤層を形成したが、インクジェット印刷法、スプレー印刷法、ロールコート印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法などの他の方法を用いて拡散剤層を形成してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。図3(A)は、実施例1における半導体基板の配列状態を説明するための模式図であり、図3(B)は、比較例1における半導体基板の配列状態を説明するための模式図である。
【0037】
(実施例1)
<N型不純物拡散剤の調整>
ケイ素化合物としてSiO換算で5.9質量%のテトラエトキシシラン加水分解生成物(分子量(Mw)約2000)と、N型の不純物拡散成分として1.2質量%のPと、有機溶剤として73.5質量%のエタノール、および19.4質量%の酢酸エチルと、を均一に混合し、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過してN型不純物拡散剤を調整した。
【0038】
<P型不純物拡散剤の調整>
ケイ素化合物としてSiO換算で7.0質量%のテトラエトキシシラン加水分解生成物(分子量(Mw)約2000)と、P型の不純物拡散成分として2.4質量%のBと、有機溶剤として68.0質量%のエタノール、および22.6質量%のジプロピレングリコールと、を均一に混合し、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過してP型不純物拡散剤を調整した。
【0039】
<拡散剤層の形成>
半導体基板1として6インチのP型シリコンウエハを複数枚用意し、各半導体基板1の一方の表面に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて上述のN型不純物拡散剤を塗布した。そして、半導体基板1をホットプレートに載置して、塗布されたN型不純物拡散剤を150℃で3分間乾燥させた。続いて、500℃の空気雰囲気下で、30分間キュア処理を施してN型不純物拡散剤を固化させて、N型拡散剤層2を形成した。次に、半導体基板1の他方の表面に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて上述のP型不純物拡散剤を塗布し、ホットプレート上にて150℃で3分間乾燥させて、P型拡散剤層4を形成した。
【0040】
<不純物拡散成分の拡散>
図3(A)に示すように、N型拡散剤層2およびP型拡散剤層4が形成された複数の半導体基板1q,1r,1s,1t,1uを、N型拡散剤層2同士およびP型拡散剤層4同士が向かい合うようにして拡散炉200内に配列した。具体的には、半導体基板1qおよび半導体基板1rのN型拡散剤層2同士、半導体基板1rおよび半導体基板1sのP型拡散剤層4同士、半導体基板1sおよび半導体基板1tのN型拡散剤層2同士、半導体基板1tおよび半導体基板1uのP型拡散剤層4同士がそれぞれ向かい合うように配列した。隣接する半導体基板1同士の間隔は、4.76mmとした。そして、Nガス雰囲気下において950℃で30分間、半導体基板1を加熱して、N型拡散剤層2内の不純物拡散成分とP型拡散剤層4内の不純物拡散成分とを同時に熱拡散させた。その後、熱拡散によって半導体基板1の表面に形成された酸化膜と、N型拡散剤層2およびP型拡散剤層4とをフッ酸で除去した。
【0041】
(比較例1)
実施例1と同様にして、半導体基板1の一方の表面にN型不純物拡散剤を塗布してN型拡散剤層2を形成し、半導体基板1の他方の表面にP型不純物拡散剤を塗布してP型拡散剤層4を形成した。そして、図3(B)に示すように、N型拡散剤層2およびP型拡散剤層4が形成された複数の半導体基板1q,1r,1s,1t,1uを、N型拡散剤層2とP型拡散剤層4とが向かい合うようにして拡散炉200内に配列した。具体的には、半導体基板1qのN型拡散剤層2と半導体基板1rのP型拡散剤層4、半導体基板1rのN型拡散剤層2と半導体基板1sのP型拡散剤層4、半導体基板1sのN型拡散剤層2と半導体基板1tのP型拡散剤層4、半導体基板1tのN型拡散剤層2と半導体基板1uのP型拡散剤層4がそれぞれ向かい合うように配列した。隣接する半導体基板1同士の間隔は、実施例1と同様に4.76mmとした。そして、実施例1と同様にして、N型拡散剤層2内の不純物拡散成分とP型拡散剤層4内の不純物拡散成分とを同時に熱拡散させ、酸化膜と、N型拡散剤層2およびP型拡散剤層4とをフッ酸で除去した。
【0042】
(抵抗値測定)
実施例1および比較例1について、半導体基板1r,1s,1tに形成されたN型拡散剤層2およびP型拡散剤層4のシート抵抗値を、シート抵抗測定器(VR−70:国際電気株式会社製)を用いて四探針法により測定した。シート抵抗値の測定結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
(P/N判定)
実施例1および比較例1について、半導体基板1r,1s,1tに形成されたN型拡散剤層2およびP型拡散剤層4の導電型を、P/N判定機(PN/12α:ナプソン株式会社製)を用いて判定した。P/N判定の判定結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表1および表2において、1r−2、1s−2、1t−2は、それぞれ半導体基板1rのN型拡散剤層2、半導体基板1sのN型拡散剤層2、半導体基板1tのN型拡散剤層2に相当し、1r−4、1s−4、1t−4は、それぞれ半導体基板1rのP型拡散剤層4、半導体基板1sのP型拡散剤層4、半導体基板1tのP型拡散剤層4に相当する。
【0047】
表1に示すように、実施例1では、N型拡散剤層2のシート抵抗値の最大値(半導体基板1t)と最小値(半導体基板1r)の差は0.7Ω/sqであった。これに対し、比較例1では、最大値(半導体基板1s)と最小値(半導体基板1r)の差は77.8Ω/sqであった。また、実施例1では、P型拡散剤層4のシート抵抗値の最大値(半導体基板1s)と最小値(半導体基板1r)の差は16.1Ω/sqであった。これに対し、比較例1では、最大値(半導体基板1s)と最小値(半導体基板1t)の差は287.4Ω/sqであった。したがって、実施例1は、比較例1に比べて優れた抵抗値安定性を示した。
【0048】
表2に示すように、実施例1では、各半導体基板1r,1s,1tのN型拡散剤層2の導電型はN型であり、P型拡散剤層4の導電型はP型であった。これに対し、比較例1では、各半導体基板1r,1s,1tのN型拡散剤層2の導電型はN型であったが、P型拡散剤層4の導電型は、半導体基板1tのみがP型であり、半導体基板1r,1sはN型であった。すなわち、比較例1では、一部に導電型の反転が見られた。したがって、実施例1は、比較例1に比べて優れた導電型安定性を示した。比較例1の半導体基板1r,1sのP型拡散剤層4に導電型の反転が起こった原因は、半導体基板1q,1rのN型拡散剤層2からのN型不純物拡散成分のアウトディフュージョンにあると考えられる。
【符号の説明】
【0049】
1,1q,1s,1r,1t,1u 半導体基板、 2 N型拡散剤層、 4 P型拡散剤層、 6 N型不純物拡散層、 8 P型不純物拡散層、 12 表面電極、 14 裏面電極、 20 ダミー基板、 100 太陽電池、 200 拡散炉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一方の表面上に第1導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層を形成し、
前記半導体基板の他方の表面上に第2導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層を形成し、
複数の前記半導体基板を、同じ導電型の不純物拡散成分を含む拡散剤層同士が対向するようにして拡散炉内に配列し、
拡散炉内で前記半導体基板を加熱して、前記半導体基板の前記一方の表面に第1導電型の不純物拡散成分を拡散させるとともに、前記半導体基板の前記他方の表面に第2導電型の不純物拡散成分を拡散させる
ことを含むことを特徴とする不純物拡散成分の拡散方法。
【請求項2】
複数の前記半導体基板を、隣接する半導体基板同士の間隔が0.1〜10mmとなるように拡散炉内に配列する請求項1に記載の不純物拡散成分の拡散方法。
【請求項3】
前記半導体基板を、820〜1200℃で加熱して不純物拡散成分を拡散させる請求項1または2に記載の不純物拡散成分の拡散方法。
【請求項4】
拡散炉内に配列された複数の前記半導体基板のうち最外側の半導体基板の外側にダミー基板を配列する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の不純物拡散成分の拡散方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の不純物拡散成分の拡散方法を用いて半導体基板に不純物拡散成分を拡散させて、前記半導体基板の一方の表面に第1導電型の不純物拡散層を形成するとともに前記半導体基板の他方の表面に第2導電型の不純物拡散層を形成し、
前記半導体基板の一方の表面側に第1電極を設け、当該第1電極を前記第1導電型の不純物拡散層と電気的に接続し、
前記半導体基板の他方の表面側に第2電極を設け、当該第2電極を前記第2導電型の不純物拡散層と電気的に接続する
ことを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−171600(P2011−171600A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35277(P2010−35277)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】