説明

不純物除去装置及び不純物除去方法

【課題】 不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易な充填・排出を可能にする。
【解決手段】 原料ガスを充填層Aから充填層B、充填層C、充填層Dに流通させ、供給手段24及び排出手段34と、原料ガスの流れ状況とを統合して制御して不純物除去剤を供給・排出し、最下流の充填層の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流側の充填層の不純物除去剤の交換をくり返し、充填した不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露点を上回る温度にガス温度を維持して運転する乾式法により不純物除去剤を用いて原料ガスから不純物を除去する不純物除去装置及び不純物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や廃棄物の減量化が求められており、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスを発電機器(燃料電池やガスエンジン)の燃料ガスとすることが考えられている。燃料電池やガスエンジン等の発電機器の燃料ガスとしては、不純物が含まれていると性能を発揮することができないので、あらかじめ燃料ガスの不純物を発電機器の許容濃度以下まで低減しておく必要がある。バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスには環境に与える不純物が含まれているため、水銀やハロゲン化物等の不純物を除去する必要がある。
【0003】
水銀を除去する不純物除去剤(吸収剤)としては、例えば、触媒作用あるいは化学反応性を有する成分を担持させ水銀との化学反応により生成した塩を吸着することで水銀を除去する添着活性炭を用いることが知られている。また、不純物除去剤として、銅を主体とした銅系吸収剤を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。ゴミ焼却設備等の分野では、ハロゲン化物を不純物除去剤(吸収剤)に固定する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
水銀を除去する吸収剤やハロゲン化物を除去する吸収剤は、固定床反応容器に充填されて運用されることが考えられる。固定床反応容器は、吸収剤を充填した状態でガスを流通させるだけの簡素な構造であるので、反応器として優れた利点を有している。
【0005】
固定床反応容器では、入口側から出口側に原料ガスが流通する過程で不純物が除去されるので、入口側の吸収剤に比べて出口側の吸収剤が未使用になる傾向にあるのが現状であった。このため、未使用部分が多くあるにも拘らず交換を余儀なくされることがあり、吸収剤の無駄をなくす余地が残されているのが実情である。また、固定床反応容器は簡素な構造であるが、吸収剤を交換する場合には、容器の蓋を外して使用済みの吸収剤を排出し、新品の吸収剤を投入する作業が必要となり、吸収剤の交換には多くの労力が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−161255号公報
【特許文献2】特開2002−130628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる不純物除去装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる不純物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の不純物除去装置は、原料ガスの流れ方向に沿って独立した複数の充填部を備えた固定床反応容器と、不純物を除去する不純物除去剤を前記充填部に個別に供給する供給手段と、不純物を除去した後の不純物除去剤を前記充填部から個別に排出する排出手段と、前記供給手段及び前記排出手段の動作を統合して制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、複数の充填部に対して不純物除去剤を統合して供給・排出することで、不純物除去剤の無駄をなくし、交換を容易にすることができる。このため、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の不純物除去装置は、請求項1に記載の不純物除去装置において、前記制御手段は、最下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流側の充填部の不純物除去剤の交換を行うように前記供給手段及び前記排出手段の動作を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、固定床反応容器の最下流の充填部に不純物除去剤が必ず存在しているので、原料ガスの流通を連続させることができる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の不純物除去装置は、請求項2に記載の不純物除去装置において、前記充填部を流通した後の前記原料ガスの状況を検出することで前記充填部に充填された不純物除去剤の状況を把握する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段が、前記充填部に充填された不純物除去剤が不純物を吸収した後の前記原料ガスの状況であると検出した際に、前記供給手段及び前記排出手段の動作を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、検出手段により、充填部に充填された不純物除去剤が不純物を除去した後の原料ガスの状況であることが検出された際に、即ち、不純物除去剤が破過状態であると検出された際に、供給手段及び排出手段の動作を制御して破過状態になった不純物除去剤を交換する。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の不純物除去装置は、請求項2もしくは請求項3に記載の不純物除去装置において、最上流の充填部と最下流の充填部の間に備えられ前記原料ガスが流入する切換え流入路と、前記切換え流入路からの前記原料ガスの流れを上流側もしくは下流側のいずれかの充填部の方向に切換える切換え手段とを備え、前記制御手段は、前記切換え手段を制御することにより前記切換え流入路からの前記原料ガスの流れ方向を変更して前記固定床反応容器における前記原料ガスの流通方向を逆転させることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、切換え手段を制御することにより流入経路からの原料ガスの流れ方向を変更し、固定床反応容器における原料ガスの流通方向を逆転させることで、出口側に破過状態の不純物除去剤が存在する前の状態で原料ガスを連続して流通させて不純物除去剤を使い切ることができる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の不純物除去装置は、請求項4に記載の不純物除去装置において、前記固定床反応容器には4層以上の前記充填部が備えられ、前記検出手段は、上流側及び下流側に複数の前記充填部が配される位置に備えられ、前記制御手段は、前記検出手段が、前記充填部に充填された不純物除去剤が不純物を除去した後の前記原料ガスの状況であると検出した際に、前記切換え手段を制御することにより前記原料ガスの流通方向を逆転させることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、検出手段により、複数の充填部の間で不純物除去剤が破過状態であると検出された際に、切換え手段を制御して原料ガスの流通方向を逆転させる。
【0019】
上記目的を達成するための請求項6に係る本発明の不純物除去方法は、不純物除去剤が独立して充填された複数の充填部に原料ガスを流通させ、最下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流側の充填部の不純物除去剤の交換をくり返し、充填した前記不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにしたことを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る本発明では、最下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流側の充填部の不純物除去剤の交換をくり返して、充填した不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにしたので、不純物除去剤を使い切ることができる。
【0021】
そして、請求項7に係る本発明の不純物除去方法は、請求項6に記載の不純物除去方法において、複数の前記充填部の間から前記原料ガスを流入して前記原料ガスの流れ方向を変更し、変更後の最下流の充填部の出口側の不純物除去剤を最後に使用することを特徴とする。
【0022】
請求項7に係る本発明では、原料ガスの流れ方向を変更することで、最下流の出口側の不純物除去剤を最後に使用することができ、最下流の出口の不純物除去剤が汚れていない状態を維持することができる。
【0023】
また、請求項8に係る本発明の不純物除去方法は、請求項7に記載の不純物除去方法において、前記原料ガスを4層以上の充填部に流通させ、前記原料ガスの流れ方向を変更する際に前記原料ガスを流入する複数の充填部の間の箇所で、不純物除去剤が不純物を除去した後の前記原料ガスの状況であることを検出し、検出状況に基づいて前記原料ガスの流通方向を逆転させることを特徴とする。
【0024】
請求項8に係る本発明では、複数の充填部の一箇所で不純物除去剤が不純物を除去した後の原料ガスの状況であることを検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の不純物除去装置及び不純物除去方法は、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例に係る不純物除去装置を備えた乾式ガス精製設備の概略系統図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る不純物除去装置の概略構成図である。
【図3】不純物除去装置の断面図である。
【図4】固定床反応容器のガス流路の概念図である。
【図5】固定床反応容器の運用シーケンスの説明図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る不純物除去装置の概略構成図である。
【図7】固定床反応容器のガス流路の概念図である。
【図8】固定床反応容器の運用シーケンスの説明図である。
【図9】固定床反応容器の運用シーケンスの説明図である。
【図10】固定床反応容器の運用シーケンスの説明図である。
【図11】本発明の第3実施例に係る不純物除去装置の概略構成図である。
【図12】固定床反応容器のガス流路の概念図である。
【図13】固定床反応容器の運用シーケンスの説明図である。
【図14】固定床反応容器の運用シーケンスの説明図である。
【図15】本発明の実施例の不純物除去装置を備えた乾式ガス精製設備の全体を表す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の不純物除去装置は、バイオマス、廃棄物からなる固形燃料をガス化して得られた原料ガス、即ち、不純物として多種の不純物が入っている原料ガスを精製して燃料電池やガスエンジンの燃料ガスとするガス精製設備の不純物除去装置として適用され、水銀との化学反応により生成した塩を吸着することで水銀を吸収する添着活性炭や、銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤、ハロゲン化物を吸収するハロゲン化物吸収剤、硫黄化合物を吸収する脱硫剤が不純物除去剤として充填されるものである。
【0028】
そして、不純物除去装置の出口側では、水銀を5μg/mN以下の低濃度に除去すると共に、塩化水素、フッ化水素等のハロゲン化物を1ppm以下の低濃度に除去し、更に、硫黄化合物を1ppm以下の低濃度に除去して不特定の不純物が高い清浄度で除去された燃料ガスを精製し、例えば、溶融炭酸塩型燃料電池、ガスエンジン、ガスタービン等の燃料ガスとして用いるものである。
【0029】
図1から図5に基づいて乾式ガス精製設備の全体、及び、第1実施例に係る不純物除去装置を説明する。
【0030】
図1には本発明の第1実施例に係る不純物除去装置を備えた乾式ガス精製設備の全体を表す概略系統、図2には第1実施例に係る不純物除去装置の全体を表す概略構成、図3(a)には原料ガスが流出入する部位の固定床反応容器の流路の断面(図2中A‐A断面)、図3(b)には充填層が備えられた部位の固定床反応容器の流路の断面(図2中B‐B断面)、図4(a)には固定床反応容器の流路を説明する概念、図4(b)には原料ガスを反転させる際のバルブの開閉状況、図5には固定床反応容器における充填層の不純物除去剤の充填状況及びガス流れの状況を説明する運用シーケンスを示してある。
【0031】
最初に図1によって、本発明の第1実施形態例に係る不純物除去装置を適用した乾式ガス精製システムの概略系統を説明する。
【0032】
図1に示すように、バイオマスガス化炉1で得られた原料ガスは、まず、バグフィルター2に送られる。バグフィルター2の上流にはハロゲン化物除去剤の供給装置を備えており、ハロゲン化物除去剤をバグフィルター2にあらかじめ吹き付けておく(プレコート)か、あるいは原料ガスに吹き込んで原料ガスと共にバグフィルター2に搬送される。
【0033】
こうすることで、原料ガス中のハロゲン化物の一部はハロゲン化物除去剤に吸収されて固定化されるので、バグフィルター2で、ダスト等の固体状不純物が濾過されて除去される際に同時にハロゲン化物の一部も除去される。
【0034】
バグフィルター2を通過した原料ガスは不純物除去装置としての重金属類除去装置3に送られ、重金属類除去装置3では金属水銀蒸気(Hg)をはじめ、活性炭等により塩基性ガス(アンモニア)、重金属類(砒素、セレン等)、有機塩素化合物(ダイオキシン)が吸着除去される(運転温度120℃〜160℃)。
【0035】
重金属類除去装置3で重金属類が除去された原料ガスは熱交換器8で昇温された後、不純物除去装置としてのハロゲン化物除去装置4に送られ、そこで原料ガスに残存している塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物が1ppm以下の低濃度に除去される(運転温度250℃〜450℃)。
【0036】
ハロゲン化物が1ppm以下の低濃度に除去された原料ガスは不純物除去装置としての脱硫装置5に送られ、硫黄化合物が吸収されて除去される(運転温度250℃〜450℃)。硫黄化合物が脱硫除去された原料ガスは燃料ガスとして発電装置6(例えば、溶融炭酸塩型燃料電池、ガスエンジン、ガスタービン等)に送られる。
【0037】
以上の乾式ガス精製システムの概略系統の機能を要約して説明する。
【0038】
図に示した乾式ガス精製システムでは、バグフィルター2によりダスト等の固体状不純物が濾過されて除去される。金属水銀蒸気(Hg)をはじめ重金属類、有機塩素化合物が重金属類除去装置3の不純物除去剤(吸収剤)に吸収されて除去され、水銀が5μg/mN以下の低濃度に除去される。そして、ハロゲン化物除去装置4の不純物除去剤としてのハロゲン化物除去剤に塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物が吸収されてハロゲン化物が1ppm以下の低濃度に除去される。また、硫黄化合物が脱硫装置5の不純物除去剤としての脱硫剤に吸収されて硫黄化合物が1ppm以下の低濃度に除去される。
【0039】
これにより、バイオマスをガス化した原料ガス、即ち、不純物として多種の不純物が入っている原料ガスを発電装置6の燃料ガスとして精製することができる。
【0040】
重金属類除去装置3は、原料ガスの流れ方向(図中左右方向)に沿って独立した2つの充填部としての充填層A及び充填層Bを備えた固定床反応容器11を有している。固定床反応容器11の充填層A及び充填層Bには、例えば、銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤15(不純物除去剤)がペレット状にされて充填されている。固定床反応容器11の充填層A及び充填層Bには、例えば、触媒作用あるいは化学反応性を有する成分を担持させ水銀との化学反応により生成した塩を吸着することで水銀を除去する添着活性炭(不純物除去剤)が充填されてもよい。
【0041】
また、ハロゲン化物除去装置4は、原料ガスの流れ方向(図中左右方向)に沿って独立した2つの充填部としての充填層A及び充填層Bを備えた固定床反応容器12を有している。固定床反応容器12の充填層A及び充填層Bには、例えば、アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤16(不純物除去剤)がペレット状にされて充填されている。
【0042】
また、脱硫装置5は、原料ガスの流れ方向(図中左右方向)に沿って独立した2つの充填部としての充填層A及び充填層Bを備えた固定床反応容器13を有している。固定床反応容器13の充填層A及び充填層Bには、例えば、酸化亜鉛脱硫剤の脱硫剤17(不純物除去剤)が充填されている。
【0043】
詳細は後述するが、重金属類除去装置3、ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5には、不純物除去剤を充填層A及び充填層Bに個別に供給する供給手段と、不純物を除去した後の不純物除去剤を充填層A及び充填層Bから個別に排出する排出手段とが備えられている。供給手段及び排出手段の動作、即ち、不純物除去剤の充填・排出は、不純物除去剤の使用状況に応じて統合して制御されるようになっている。
【0044】
また、不純物除去剤の充填・排出の状況に応じ、原料ガスの流れ方向を、左側から右側(充填層Aから充填層B:順方向流れ)、右側から左側(充填層Bから充填層A:逆方向流れ)、充填層Aと充填層Bの間から充填層A側(一部逆方向)もしくは充填層B側(一部順方向)に流れるように調整するようになっている。
【0045】
これにより、充填層A、充填層Bに充填した不純物除去剤を完全に使用済みの状態(完全破過状態)になるまで使用することができる。しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスを精製することができる。
【0046】
図2、図3に基づいて重金属類除去装置3、ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5の構成を説明する。
【0047】
重金属類除去装置3、ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5における固定床反応容器11、12、13及び不純物除去剤の供給手段、排出手段は基本的に同一であるので、代表して銅系吸収剤15(もしくは添着活性炭)が充填層A及び充填層Bに対して充填・排出される重金属類除去装置3(固定床反応容器13)について説明する。ハロゲン化物除去装置4の固定床反応容器12に適用した場合、充填・排出される不純物除去剤はハロゲン化物吸収剤16であり、脱硫装置5の固定床反応容器13に適用した場合、充填・排出される不純物除去剤は脱硫剤17となる。
【0048】
図2に示すように、固定床反応容器11は、両端に出入り口通路21、22を備え、出入り口通路21、22に連続して断面積が大きくされた本体部23を備えている。
【0049】
図3(a)に示すように、出入り口通路21(出入り口通路22)の内部は原料ガスの流れに直交する面内が碁盤目状態になる多数の流路に仕切られ、原料ガスが多数の通路に分かれて流れるようになっている。図3(b)に示すように、本体部23の内部は出入り口通路21(出入り口通路22)の内部と同数の流路に仕切られ、本体部23の流路は出入り口通路21(出入り口通路22)流路と連続している。
【0050】
このため、出入り口通路21(出入り口通路22)から流入した原料ガスは、分布が生じない状態で本体部23に均一に流入するようになっている。
【0051】
図2に示すように、本体部23の碁盤目状態の流路を横切るように充填層A及び充填層Bが備えられ、充填層A及び充填層Bは流路の流れ方向に所定の間を空けて設けられている。充填層A及び充填層Bには、複数の流路から原料ガスが流入し複数の流路に対して精製ガスが流出するようになっている。原料ガスの流通方向の厚さが薄くなるような形状の充填層A及び充填層Bを備えたので、圧力損失を充分に少なくすることができる。
【0052】
原料ガスの流通方向に対して、固定床反応容器11の充填層A及び充填層Bの上部には供給手段24が設けられ、充填層A及び充填層Bには供給手段24から銅系吸収剤15(不純物除去剤)が個別に充填される。供給手段24には、供給コンベア装置25により銅系吸収剤15が運ばれて貯留される供給サイロ26が備えられ、供給サイロ26と充填層A及び充填層Bの間は、供給通路27A、27Bで連結されている。供給通路27A、27Bには供給ホッパ28A、28Bが設けられ、供給ホッパ28A、28Bの入口部には入口供給弁29がそれぞれ設けられ、供給ホッパ28A、28Bの出口部には出口供給弁30がそれぞれ設けられている。
【0053】
供給ホッパ28Aと入口供給弁29及び出口供給弁30との間にはNガス流通系が接続され、入口供給弁29及び出口供給弁30の制御及びNガスの供給制御により供給ホッパ28Aの内部が加圧・加温される。同様に、供給ホッパ28Bと入口供給弁29及び出口供給弁30との間にはNガス流通系が接続され、入口供給弁29及び出口供給弁30の制御及びNガスの供給制御により供給ホッパ28Bの内部が加圧・加温される。また、Nガス流通系によりNガスがパージガスとして送られる。
【0054】
入口供給弁29を開き出口供給弁30を閉じた状態で、供給サイロ26から銅系吸収剤15が供給通路27A、27Bを通して供給ホッパ28A、28Bに送られる。入口供給弁29を閉じてNガス流通系からNガスを供給することにより、供給ホッパ28A、28Bの銅系吸収剤15が所定の圧力に加圧・加温される。この状態で出口供給弁30を開くことで、加圧・加温された状態の銅系吸収剤15が供給通路27A、27Bを通して充填層A及び充填層Bに個別に充填される(制御手段)。
【0055】
原料ガスの流通方向に対して、固定床反応容器11の充填層A及び充填層Bの下部には排出手段34が設けられ、充填層A及び充填層Bからは、排出手段34により銅系吸収剤15(不純物除去剤)が個別に排出される。即ち、充填層A及び充填層Bには排出通路35A、35Bが接続され、排出通路35A、35Bは排出コンベア装置36につながっている。排出通路35A、35Bには排出ホッパ37A、37Bが設けられ、排出ホッパ37A、37Bの入口部には入口排出弁38がそれぞれ設けられ、排出ホッパ37A、37Bの出口部には出口排出弁39がそれぞれ設けられている。
【0056】
排出ホッパ37Aと入口排出弁38及び出口排出弁39との間にはNガス流通系が接続され、入口排出弁38及び出口排出弁39の制御及びNガスの給排制御により加圧状態の排出ホッパ37Aに排出された銅系吸収剤15が常圧状態にされる。同様に、排出ホッパ37Bと入口排出弁38及び出口排出弁39との間にはNガス流通系が接続され、入口排出弁38及び出口排出弁39の制御及びNガス流通系の排気制御により加圧状態の排出ホッパ37Bに排出された銅系吸収剤15が常圧状態にされる。また、Nガス流通系によりNガスがパージガスとして送られる。
【0057】
出口排出弁39を閉じ入口排出弁38を開いた状態で、使用済みの銅系吸収剤15が加圧されたまま充填層A及び充填層Bから排出通路35A、35Bを通して排出ホッパ37A、37Bに排出される。入口排出弁38を閉じてNガス流通系により排出ホッパ37A、37Bの内圧を解放することで、原料ガスがNガスでパージされ、使用済みの銅系吸収剤15が安全に排出できる状態にされ、排出ホッパ37A、37Bの使用済みの銅系吸収剤15が常圧状態になる。この状態で、出口排出弁39を開くことで、常圧状態の使用済みの銅系吸収剤15が排出通路35A、35Bを通して排出コンベア装置36に個別に排出される(制御手段)。
【0058】
原料ガスの流通方向に対して、固定床反応容器11の上部に供給手段24が設けられ、固定床反応容器11の下部に排出手段34が設けられているので、不純物除去剤を排出・充填するための機器のために固定床反応容器11の全体の設置面積を広くする必要がない。
【0059】
図4(a)に基づいて固定床反応容器11の原料ガスの流路を説明する。
【0060】
原料ガスが送られる通路41が第1通路42及び第2通路43に分岐され、第1通路42及び第2通路43の最下流部は、精製ガスを後流側に送る通路40に接続されている。第1通路42は出入り口通路21に接続され、第2通路43は出入り口通路22に接続されている。また、通路41から充填層Aと充填層Bの間に原料ガスを送る反転通路44が設けられている。
【0061】
第1通路42には出入り口通路21との接続部を挟んで第1開閉弁45及び第2開閉弁46が設けられ、第2通路43には出入り口通路22との接続部を挟んで第3開閉弁47及び第4開閉弁48が設けられている。また、反転通路44には第5開閉弁49が設けられている。
【0062】
第1開閉弁45、第2開閉弁46、第3開閉弁47、第4開閉弁48及び第5開閉弁49の開閉状況を制御することにより、原料ガスの流れを、充填層Aから充填層Bに流れる状態、充填層Bだけを流れる状態、充填層Aだけを流れる状態、充填層Bから充填層Aに流れる状態に、連続して切換えることができる(制御手段)。
【0063】
図4(b)に基づいて原料ガスの流れを切換える際の開閉弁の開閉状況を説明する。
【0064】
原料ガスの流れを充填層Aから充填層Bに流れる状態にする場合、第1開閉弁45及び第4開閉弁48を開状態にし、第2開閉弁46、第3開閉弁47及び第5開閉弁49を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、第1通路42、出入り口通路21、充填層A、充填層B、出入り口通路22、第2通路43、通路40を流通して後流側に送られる。
【0065】
原料ガスの流れを充填層Bだけに流れる状態にする場合、第4開閉弁48及び第5開閉弁49を開状態にし、第1開閉弁45、第2開閉弁46、第3開閉弁47を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、反転通路44、充填層B、出入り口通路22、第2通路43、通路40を流通して後流側に送られる。
【0066】
原料ガスの流れを充填層Aだけに流れる状態にする場合、第2開閉弁46及び第5開閉弁49を開状態にし、第1開閉弁45、第3開閉弁47、第4開閉弁48を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、反転通路44、充填層A、出入り口通路21、第1通路42、通路40を流通して後流側に送られる。
【0067】
原料ガスの流れを充填層Bから充填層Aに流れる状態にする場合、第2開閉弁46及び第3開閉弁47を開状態にし、第1開閉弁45、第4開閉弁48、第5開閉弁49を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、第2通路43、出入り口通路22、充填層B、充填層A、出入り口通路21、第1通路42、通路40を流通して後流側に送られる。
【0068】
上述した重金属類除去装置3では、供給手段24、排出手段34の動作、及び、開閉弁の開閉制御を統合して制御することで(制御手段)、原料ガスの流れを、充填層Aから充填層Bに流れる状態(順方向流れ)、充填層Bだけに流れる状態(一部順方向流れ)、充填層Aだけに流れる状態(一部逆方向流れ)、充填層Bから充填層Aに流れる状態(逆方向流れ)に連続して切替えると共に、新品の銅系吸収剤15(不純物除去剤)の充填、使用済み状態(破過状態)の銅系吸収剤15(不純物除去剤)の排出を組み合わせて実施することができる。
【0069】
これにより、充填層A、充填層Bに充填した銅系吸収剤15(不純物除去剤)を完全に使用済みの状態(完全破過状態)になるまで使用することができ、しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスから水銀を除去することができる。ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5に適用した場合も、同様に、原料ガスの流れを途絶えさせることなく、ハロゲン化物吸収剤16、脱硫剤17を完全破過状態になるまで使用することができる。
【0070】
尚、不純物除去剤の充填・排出を行う場合、流路の開閉弁の開閉制御に加え、入口供給弁29、出口供給弁30、入口排出弁38、出口排出弁39、Nガス流通系を制御することで、重金属類除去装置3の流路内及び新品の銅系吸収剤15を充填する際の固定床反応容器11の充填層A内、充填層B内がNガスでパージされる。
【0071】
図5に基づいて充填層が2層の固定床反応容器11における原料ガスの流れ状況を具体的に説明する。図5には固定床反応容器における充填層の不純物除去剤の充填状況及びガス流れの状況を説明する運用シーケンスを示してある。
【0072】
原料ガスの流れ順方向
【0073】
(1)初期の段階で充填層A及び充填層Bに不純物除去剤が新品の状態で充填され、原料ガスが順方向に流される。
(2)原料ガスが浄化され、充填層Aの左側の不純物除去剤が吸収済みとなる。
(3)充填層Aの不純物除去剤の破過が検出される。破過の検出は流通するガスの成分を分析することにより行われる。
(4)充填層Aの下流側から充填層Bに原料ガスが流され、充填層Bで原料ガスが浄化される(切換え手段)。
(5)充填層Aの不純物除去剤が排出される。
(6)充填層Aに新品の不純物除去剤が充填される。
【0074】
原料ガスの流れ逆方向
【0075】
(7)原料ガスの流れが反転され、原料ガスが逆方向に流される(切換え手段)。
(8)充填層Bの不純物除去剤の破過が検出される。
(9)充填層Bの下流側から充填層Aに原料ガスが流され、充填層Aの右側の不純物除去剤が浄化される(切換え手段)。
(10)充填層Bの不純物除去剤が排出される。
(11)充填層Aに新品の不純物除去剤が充填される。
(12)原料ガスの流れが順方向に反転される。
【0076】
(12)から(3)に戻り、以後(3)から(12)の手順がくり返されて原料ガスの浄化が継続される。
【0077】
上述した処理により、下流の充填部に一部新品の不純物除去剤が必ず存在するように不純物除去剤が統合して供給・排出され、充填層A、充填層Bに充填した不純物除去剤を完全に使用済みの状態(破過状態)になるまで使用することができ、しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスから不純物を除去することができる。このため、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる。
【0078】
つまり、下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流の充填部の不純物除去剤の交換をくり返し、充填した不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにしたので、原料ガスの流路を切換えるための開閉弁の操作を最小限に抑制し、開閉弁の寿命を低下させることなく、不純物除去剤を使い切ることができる。また、原料ガスの流れ方向を変更し、下流の充填部の出口側の不純物除去剤を最後に使用することで、下流の出口の不純物除去剤が汚れていない状態を維持することができる。
【0079】
図1に示した重金属類除去装置3、ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5(不純物除去装置)の第2実施例(3層の充填層)の構成を図6から図10に基づいて説明する。
【0080】
図6には第2実施例に係る不純物除去装置の全体を表す概略構成、図7(a)には固定床反応容器の流路を説明する概念、図7(b)には原料ガスを反転させる際のバルブの開閉状況、図8から図10には固定床反応容器における充填層の不純物除去剤の充填状況及びガス流れの状況を説明する運用シーケンスを示してある。
【0081】
尚、第1実施例と同一部材(同一の機能を果たす部材)には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略してある。
【0082】
重金属類除去装置3、ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5における固定床反応容器51、52、53には3層の充填層A、充填層B及び充填層Cが備えられている。固定床反応容器51、52、53及び不純物除去剤の供給手段、排出手段は基本的に同一であるので、代表して銅系吸収剤15(もしくは添着活性炭)が充填層A、充填層B及び充填層Cに対して充填・排出される重金属類除去装置3(固定床反応容器51)について説明する。ハロゲン化物除去装置4の固定床反応容器52に適用した場合、充填・排出される不純物除去剤はハロゲン化物吸収剤16であり、脱硫装置5の固定床反応容器53に適用した場合、充填・排出される不純物除去剤は脱硫剤17となる。
【0083】
図6に示すように、固定床反応容器51の本体部23の碁盤目状態の流路を横切るように充填層A、充填層B及び充填層Cが備えられ、充填層A、充填層B及び充填層Cは流路の流れ方向に所定の間を空けて設けられている。充填層A、充填層B及び充填層Cには、複数の流路から原料ガスが流入し、複数の流路に対して精製ガスが流出するようになっている。原料ガスの流通方向の厚さが薄くなるような形状の充填層A、充填層B及び充填層Cを備えたので、圧力損失を充分に少なくすることができる。
【0084】
固定床反応容器51の充填層A、充填層B及び充填層Cには供給手段24から銅系吸収剤15(不純物除去剤)が個別に充填される。供給手段24には、供給コンベア装置25により銅系吸収剤15が運ばれて貯留される供給サイロ26が備えられている。
【0085】
供給サイロ26と充填層Cの間は、供給通路27Cで連結されている。供給通路27Cには供給ホッパ28Cが設けられ、供給ホッパ28Cの入口部には入口供給弁29が設けられ、供給ホッパ28Cの出口部には出口供給弁30が設けられている。
【0086】
供給通路27Cの供給ホッパ28Cと入口供給弁29及び出口供給弁30との間にはNガス流通系が接続され、入口供給弁29及び出口供給弁30の制御及びNガスの供給制御により供給ホッパ28Cの内部が加圧・加温される。また、Nガス流通系によりNガスがパージガスとして送られる。
【0087】
入口供給弁29を開き出口供給弁30を閉じた状態で、供給サイロ26から銅系吸収剤15が供給通路27Cを通して供給ホッパ28Cに送られる。入口供給弁29を閉じてNガス流通系からNガスを供給することにより、供給ホッパ28Cの銅系吸収剤15が所定の圧力に加圧・加温される。この状態で出口供給弁30を開くことで、加圧・加温された状態の銅系吸収剤15が供給通路27Cを通して充填層Cに独立して充填される(制御手段)。
【0088】
固定床反応容器51の充填層A、充填層B及び充填層Cからは、排出手段34により銅系吸収剤15(不純物除去剤)が個別に排出される。即ち、充填層A及び充填層Bと共に、充填層Cには排出通路35Cが接続され、排出通路35Cは排出コンベア装置36つながっている。排出通路35Cには排出ホッパ37Cが設けられ、排出ホッパ37Cの入口部には入口排出弁38が設けられ、排出ホッパ37Cの出口部には出口排出弁39が設けられている。
【0089】
排出ホッパ37Cと入口排出弁38及び出口排出弁39との間にはNガス流通系が接続され、入口排出弁38及び出口排出弁39の制御及びNガスの給排制御により加圧状態の排出ホッパ37Cに排出された銅系吸収剤15が常圧状態にされる。また、Nガス流通系によりNガスがパージガスとして送られる。
【0090】
出口排出弁39を閉じ入口排出弁38を開いた状態で、使用済みの銅系吸収剤15が加圧されたまま充填層Cから排出通路35Cを通して排出ホッパ37Cに排出される。入口排出弁38を閉じてNガス流通系により排出ホッパ37Cの内圧を解放することで、排出ホッパ37Cの使用済みの銅系吸収剤15が常圧状態になる。この状態で、出口排出弁39を開くことで、常圧状態の使用済みの銅系吸収剤15が排出通路35Cを通して排出コンベア装置36に独立して排出される(制御手段)。
【0091】
図7(a)に基づいて固定床反応容器51の原料ガスの流路を説明する。
【0092】
原料ガスが送られる通路41が第1通路42及び第2通路43に分岐され、第1通路42及び第2通路43の最下流部は、精製ガスを後流側に送る通路40に接続されている。第1通路42は出入り口通路21に接続され、第2通路43は出入り口通路22に接続されている。
【0093】
第1通路42には出入り口通路21との接続部を挟んで第1開閉弁45及び第2開閉弁46が設けられ、第2通路43には出入り口通路22との接続部を挟んで第3開閉弁47及び第4開閉弁48が設けられている。
【0094】
第1開閉弁45、第2開閉弁46、第3開閉弁47、第4開閉弁48の開閉状況を制御することにより、原料ガスの流れを、充填層Aから充填層B、充填層Cに流れる状態、充填層Cから充填層B、充填層Aに流れる状態に、連続して切換えることができる(制御手段)。
【0095】
図7(b)に基づいて原料ガスの流れを切換える際の開閉弁の開閉状況を説明する。
【0096】
原料ガスの流れを充填層Aから充填層B、充填層Cに流れる状態にする場合、第1開閉弁45及び第4開閉弁48を開状態にし、第2開閉弁46、第3開閉弁47を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、第1通路42、出入り口通路21、充填層A、充填層B、充填層C、出入り口通路22、第2通路43、通路40を流通して後流側に送られる。
【0097】
原料ガスの流れを充填層Cから充填層B、充填層Aに流れる状態にする場合、第2開閉弁46及び第3開閉弁47を開状態にし、第1開閉弁45、第4開閉弁48を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、第2通路43、出入り口通路22、充填層C、充填層B、充填層A、出入り口通路21、第1通路42、通路40を流通して後流側に送られる。
【0098】
上述した3層の充填層を有する重金属類除去装置3では、供給手段24、排出手段34の動作、及び、開閉弁の開閉制御を統合して制御することで(制御手段)、原料ガスの流れを、充填層Aから充填層B、充填層Cに流れる状態(順方向流れ)、充填層Cから充填層B、充填層Aに流れる状態(逆方向流れ)に連続して切替えると共に、新品の銅系吸収剤15(不純物除去剤)の充填、使用済み状態(破過状態)の銅系吸収剤15(不純物除去剤)の排出を組み合わせて実施することができる。
【0099】
これにより、充填層A、充填層B、充填層Cに充填した銅系吸収剤15(不純物除去剤)を完全に使用済みの状態(破過状態)になるまで使用することができ、しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスから水銀を除去することができる。ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5に適用した場合も、同様に、原料ガスの流れを途絶えさせることなく、ハロゲン化物吸収剤16、脱硫剤17を完全破過状態になるまで使用することができる。
【0100】
尚、不純物除去剤の充填・排出を行う場合、流路の開閉弁の開閉制御に加え、入口供給弁29、出口供給弁30、入口排出弁38、出口排出弁39、Nガス流通系を制御することで、重金属類除去装置3の流路内及び新品の銅系吸収剤15を充填する際の固定床反応容器51の充填層A内、充填層B内、充填層C内がNガスでパージされる。
【0101】
図8から図10に基づいて充填層が3層の固定床反応容器51における原料ガスの流れ状況を具体的に説明する。図8から図10には充填層A、充填層B、充填層Cに対する原料ガスの流れ状況を示してある。
【0102】
図8:原料ガスの流れ順方向
【0103】
(1)初期の段階で充填層A、充填層B及び充填層Cに不純物除去剤が新品の状態で充填され、原料ガスが順方向に流される。
(2)原料ガスが浄化され、充填層Aの左側の不純物除去剤が吸収済みとなる。
(3)充填層Aの不純物除去剤の破過が検出される。破過の検出は流通するガスの成分を分析することにより行われる。
(4)充填層Aの不純物除去剤が排出される。
(5)原料ガスが充填層Bで浄化され、充填層Bの左側の不純物除去剤が吸収済みとなる。
(6)充填層Bの不純物除去剤の破過が検出され、原料ガスが充填層Cで浄化される。
(7)充填層Aに不純物除去剤が充填され、原料ガスが充填層Aで浄化される。
(8)充填層Bの不純物除去剤が排出される。
(9)充填層Bに不純物除去剤が充填される。
(10)充填層Aの不純物除去剤の破過が検出され、原料ガスが充填層Bで浄化される。
(11)充填層Aの不純物除去剤が排出される。
(12)充填層Bの不純物除去剤の破過が検出され、原料ガスが充填層Cで浄化される。
【0104】
(12)から(7)に戻り、以後(7)から(12)の手順がくり返され、充填層A、充填層Bの不純物除去剤の排出、充填が交互にくり返されて原料ガスの浄化が継続される。充填層Cでは、充填層A及び充填層Bでの不純物除去剤の排出、充填の際のバックアップで原料ガスが浄化される。充填層Cに不純物が蓄積すると、以下の処理となる。
【0105】
図9:原料ガスの流れ逆方向
【0106】
(13)バックアップ層である充填層Cに不純物が蓄積する。
(14)原料ガスが反転されて逆方向に流され、原料ガスが充填層Cで浄化される。充填層Aに不純物除去剤が充填される。
(15)充填層Bの不純物除去剤が排出される。
(16)充填層Bに不純物除去剤が充填される。
(17)充填層Cの不純物除去剤の破過が検出され、原料ガスが充填層Bで浄化される。
(18)充填層Cの不純物除去剤が排出される。
(19)充填層Bの不純物除去剤の破過が検出され、原料ガスが充填層Aで浄化される。
【0107】
図10:原料ガスの流れ逆方向、原料ガスの流れ順方向
【0108】
(20)充填層Cに不純物除去剤が充填される。原料ガスが充填層Cで浄化される。
(21)充填層Bの不純物除去剤が排出される。
(22)充填層Bに不純物除去剤が充填される。
(23)充填層Cの不純物除去剤の破過が検出され、原料ガスが充填層Bで浄化される。
(24)充填層Cの不純物除去剤が排出される。
(25)充填層Bの不純物除去剤の破過が検出され、原料ガスが充填層Aで浄化される。
【0109】
(25)から(20)に戻り、以後(20)から(25)の手順がくり返され、充填層C、充填層Bの不純物除去剤の排出、充填が交互にくり返されて原料ガスの浄化が継続される。充填層Aでは、充填層C、充填層Bでの不純物除去剤の排出、充填の際のバックアップで原料ガスが浄化される。充填層Aに不純物が蓄積すると、以下の処理となる。
【0110】
(26)バックアップ層である充填層Aに不純物が蓄積する。
(27)原料ガスが反転されて順方向に流され、原料ガスが充填層Aで浄化される。充填層Cに不純物除去剤が充填される。
(28)充填層Bの不純物除去剤が排出される。
(29)充填層Bに不純物除去剤が充填される。
【0111】
充填層Bに不純物除去剤が充填されると、図8の(10)の処理に移行し、再び、充填層A、充填層Bで交互に不純物除去がくり返されると共に、充填層Cでバックアップでの浄化が行われ、原料ガスの浄化が継続される。つまり、(29)から(10)に移行し、全体の処理が繰り返されることになる。
【0112】
上述した運用をくり返すことにより、上流側の2層での不純物除去をくり返すと共に、最下流の層(3層目)で不純物除去のバックアップを行い、原料ガスの浄化を連続して行うことができる。バックアップとなる最下流の層の不純物が蓄積した際に、原料ガスの流れを反転させる。
【0113】
従って、最下流の充填部に一部新品の不純物除去剤が必ず存在するように不純物除去剤が統合して供給・排出され、充填層A、充填層B、充填層Cに充填した不純物除去剤を完全に使用済みの状態(破過状態)になるまで使用することができ、しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスから不純物を除去することができる。このため、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる。
【0114】
つまり、下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流の充填部の不純物除去剤の交換をくり返し、充填した不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにしたので、原料ガスの流路を切換えるための開閉弁の操作を最小限に抑制し、開閉弁の寿命を低下させることなく、不純物除去剤を使い切ることができる。また、原料ガスの流れ方向を変更し、下流の充填部の出口側の不純物除去剤を最後に使用することで、下流の出口の不純物除去剤が汚れていない状態を維持することができる。
【0115】
上述した2層、3層の充填層を備えた実施例では、原料ガスの流れを反転させる例を挙げて説明したが、最下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流側の充填部の不純物除去剤の交換をくり返し、充填した不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにすれば、一方側の流れだけの運用を実施することも可能である。この場合でも、最下流の出口の不純物除去剤が汚れていない状態を維持することができる。
【0116】
図1に示した重金属類除去装置3、ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5(不純物除去装置)の第3実施例(4層の充填層)の構成を図11から図14に基づいて説明する。
【0117】
図11には第3実施例に係る不純物除去装置の全体を表す概略構成、図12(a)には固定床反応容器の流路を説明する概念、図12(b)には原料ガスを反転させる際のバルブの開閉状況、図13、図14には固定床反応容器における充填層の不純物除去剤の充填状況及びガス流れの状況を説明する運用シーケンスを示してある。
【0118】
尚、第1実施例、第2実施例と同一部材(同一の機能を果たす部材)には同一符号を付して詳細な説明は適宜省略してある。
【0119】
重金属類除去装置3、ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5における固定床反応容器61、62、63には4層の充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dが備えられている。固定床反応容器61、62、63及び不純物除去剤の供給手段、排出手段は基本的に同一であるので、代表して銅系吸収剤15(もしくは添着活性炭)が充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dに対して充填・排出される重金属類除去装置3(固定床反応容器61)について説明する。ハロゲン化物除去装置4の固定床反応容器62に適用した場合、充填・排出される不純物除去剤はハロゲン化物吸収剤16であり、脱硫装置5の固定床反応容器63に適用した場合、充填・排出される不純物除去剤は脱硫剤17となる。
【0120】
図11に示すように、固定床反応容器61の本体部23の碁盤目状態の流路を横切るように充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dが備えられ、充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dは流路の流れ方向に所定の間を空けて設けられている。充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dには、複数の流路から原料ガスが流入し、複数の流路に対して精製ガスが流出するようになっている。原料ガスの流通方向の厚さが薄くなるような形状の充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dを備えたので、圧力損失を充分に少なくすることができ、また、不純物除去剤の量を必要量確保することができる。
【0121】
固定床反応容器61の充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dには供給手段24から銅系吸収剤15(不純物除去剤)が個別に充填される。供給手段24には、供給コンベア装置25により銅系吸収剤15が運ばれて貯留される供給サイロ26が備えられている。
【0122】
供給サイロ26と充填層Dの間は、供給通路27Dで連結されている。供給通路27Dには供給ホッパ28Dが設けられ、供給ホッパ28Dの入口部には入口供給弁29が設けられ、供給ホッパ28Dの出口部には出口供給弁30が設けられている。
【0123】
供給通路27Dの供給ホッパ28Dと入口供給弁29及び出口供給弁30との間にはNガス流通系が接続され、入口供給弁29及び出口供給弁30の制御及びNガスの供給制御により供給ホッパ28Dの内部が加圧・加温される。また、Nガス流通系によりNガスがパージガスとして送られる。
【0124】
入口供給弁29を開き出口供給弁30を閉じた状態で、供給サイロ26から銅系吸収剤15が供給通路27Dを通して供給ホッパ28Dに送られる。入口供給弁29を閉じてNガス流通系からNガスを供給することにより、供給ホッパ28Dの銅系吸収剤15が所定の圧力に加圧・加温される。この状態で出口供給弁30を開くことで、加圧・加温された状態の銅系吸収剤15が供給通路27Dを通して充填層Dに独立して充填される(制御手段)。
【0125】
固定床反応容器61の充填層A、充填層B、充填層C及び充填層Dからは、排出手段34により銅系吸収剤15(不純物除去剤)が個別に排出される。即ち、充填層A、充填層B及び充填層Cと共に、充填層Dには排出通路35Dが接続され、排出通路35Dは排出コンベア装置36つながっている。排出通路35Dには排出ホッパ37Dが設けられ、排出ホッパ37Dの入口部には入口排出弁38が設けられ、排出ホッパ37Dの出口部には出口排出弁39が設けられている。
【0126】
排出ホッパ37Dと入口排出弁38及び出口排出弁39との間にはNガス流通系が接続され、入口排出弁38及び出口排出弁39の制御及びNガスの給排制御により加圧状態の排出ホッパ37Dに排出された銅系吸収剤15が常圧状態にされる。また、Nガス流通系によりNガスがパージガスとして送られる。
【0127】
出口排出弁39を閉じ入口排出弁38を開いた状態で、使用済みの銅系吸収剤15が加圧されたまま充填層Dから排出通路35Dを通して排出ホッパ37Dに排出される。入口排出弁38を閉じてNガス流通系により排出ホッパ37Dの内圧を解放することで、排出ホッパ37Dの使用済みの銅系吸収剤15が常圧状態になる。この状態で、出口排出弁39を開くことで、常圧状態の使用済みの銅系吸収剤15が排出通路35Dを通して排出コンベア装置36に独立して排出される(制御手段)。
【0128】
図12(a)に基づいて固定床反応容器61の原料ガスの流路を説明する。
【0129】
第1実施例と同様に、原料ガスが送られる通路41が第1通路42及び第2通路43に分岐され、第1通路42及び第2通路43の最下流部は、精製ガスを後流側に送る通路40に接続されている。第1通路42は出入り口通路21に接続され、第2通路43は出入り口通路22に接続されている。また、通路41から充填層Bと充填層Cの間に原料ガスを送る反転通路44が設けられている。
【0130】
第1開閉弁45、第2開閉弁46、第3開閉弁47、第4開閉弁48及び第5開閉弁49の開閉状況を制御することにより、原料ガスの流れを、充填層Aから充填層B、充填層C、充填層Dに流れる状態、充填層Cから充填層Dに流れる状態、充填層Bから充填層Aに流れる状態、充填層Dから充填層C、充填層B、充填層Aに流れる状態に、連続して切換えることができる(制御手段)。
【0131】
そして、充填層Bと充填層Cの間には、流通するガスの成分を分析することで原料ガスの破過を検出する破過検出手段71が設けられている。
【0132】
図12(b)に基づいて原料ガスの流れを切換える際の開閉弁の開閉状況を説明する。
【0133】
原料ガスの流れを充填層Aから充填層B、充填層C、充填層Dに流れる状態にする場合、第1開閉弁45及び第4開閉弁48を開状態にし、第2開閉弁46、第3開閉弁47及び第5開閉弁49を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、第1通路42、出入り口通路21、充填層A、充填層B、充填層C、充填層D、出入り口通路22、第2通路43、通路40を流通して後流側に送られる。
【0134】
原料ガスの流れを充填層Cから充填層Dに流れる状態にする場合、第4開閉弁48及び第5開閉弁49を開状態にし、第1開閉弁45、第2開閉弁46及び第3開閉弁47を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、反転流路44、充填層C、充填層D、出入り口通路22、第2通路43、通路40を流通して後流側に送られる。
【0135】
原料ガスの流れを充填層Bから充填層Aに流れる状態にする場合、第2開閉弁46及び第5開閉弁49を開状態にし、第1開閉弁45、第3開閉弁47及び第4開閉弁48を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、反転流路44、充填層B、充填層A、出入り口通路21、第1通路42、通路40を流通して後流側に送られる。
【0136】
原料ガスの流れを充填層Dから充填層C、充填層B、充填層Aに流れる状態にする場合、第2開閉弁46及び第3開閉弁47を開状態にし、第1開閉弁45、第4開閉弁48及び第5開閉弁49を閉状態にする。これにより、原料ガスは、通路41、第2通路43、出入り口通路22、充填層D、充填層C、充填層B、充填層A、出入り口通路21、第1通路42、通路40を流通して後流側に送られる。
【0137】
上述した4層の充填層を有する重金属類除去装置3では、供給手段24、排出手段34の動作、及び、開閉弁の開閉制御を統合して制御することで(制御手段)、原料ガスの流れを、充填層Aから充填層B、充填層C、充填層Dに流れる状態(順方向流れ)、充填層Cから充填層Dに流れる状態(一部順方向流れ)、充填層Bから充填層Aに流れる状態(一部逆方向流れ)、充填層Dから充填層C、充填層B、充填層Aに流れる状態(逆方向流れ)に連続して切替えると共に、新品の銅系吸収剤15(不純物除去剤)の充填、使用済み状態(破過状態)の銅系吸収剤15(不純物除去剤)の排出を組み合わせて実施することができる。
【0138】
これにより、充填層A、充填層B、充填層C、充填層Dに充填した銅系吸収剤15(不純物除去剤)を完全に使用済みの状態(破過状態)になるまで使用することができ、しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスから水銀を除去することができる。ハロゲン化物除去装置4及び脱硫装置5に適用した場合も、同様に、原料ガスの流れを途絶えさせることなく、ハロゲン化物吸収剤16、脱硫剤17を完全破過状態になるまで使用することができる。
【0139】
尚、不純物除去剤の充填・排出を行う場合、流路の開閉弁の開閉制御に加え、入口供給弁29、出口供給弁30、入口排出弁38、出口排出弁39、Nガス流通系を制御することで、重金属類除去装置3の流路内及び新品の銅系吸収剤15を充填する際の固定床反応容器61の充填層A内、充填層B内、充填層C内、充填層D内がNガスでパージされる。
【0140】
図13、図14に基づいて充填層が4層の固定床反応容器61における原料ガスの流れ状況を具体的に説明する。図13、図14には充填層A、充填層B、充填層C、充填層Dに対する原料ガスの流れ状況を示してある。
【0141】
図13:原料ガスの流れ順方向
【0142】
(1)初期の段階で充填層B及び充填層Cに不純物除去剤が新品の状態で充填され、原料ガスが順方向に流される。
(2)原料ガスが浄化され、充填層Bの左側の不純物除去剤が吸収済みとなる。
(3)充填層Bの不純物除去剤の破過が検出される。破過の検出は、充填層Bと充填層Cの間で破過検出手段71により検出される。充填層Cで原料ガスが浄化される。
(4)充填層Aに新品の不純物除去剤が充填され、充填層Aで原料ガスが浄化される。
(5)充填層Bの不純物除去剤が排出される。
(6)充填層Aの不純物除去剤の破過が検出される。破過の検出は、充填層Bと充填層Cの間で破過検出手段71により検出される。充填層Cで原料ガスが浄化される。
(7)充填層Bに不純物除去剤が充填され、充填層Bで原料ガスが浄化される。
(8)充填層Aの不純物除去剤が排出される。
【0143】
(8)から(3)に戻り、以後(3)から(8)の手順がくり返され、充填層A、充填層Bの不純物除去剤の排出、充填が交互にくり返されて原料ガスの浄化が継続される。充填層Cでは、充填層A、充填層Bでの不純物除去剤の排出、充填の際のバックアップで原料ガスが浄化される。充填層Cに不純物が蓄積すると、以下の処理となる。
【0144】
(9)充填層Bの不純物除去剤の破過が検出される。破過の検出は、充填層Bと充填層Cの間で破過検出手段71により検出される。
(10)充填層Bの不純物除去剤が排出され、充填層Bの下流側から充填層Cに原料ガスが流され、充填層Cで原料ガスが浄化される(切換え手段)。
(11)充填層Bに不純物除去剤が充填される。
【0145】
図13:原料ガスの流れ逆方向
【0146】
(12)原料ガスの流れが反転され、充填層D、充填層C、充填層B、充填層Aの逆方向に原料ガスが流される(切換え手段)。
(13)充填層Cの不純物除去剤の破過が検出される。破過の検出は、充填層Bと充填層Cの間で破過検出手段71により検出される。
(14)充填層Dに不純物除去剤が充填され、充填層Dで原料ガスが浄化される。
(15)充填層Cの不純物除去剤が排出される。
【0147】
充填層Bの不純物除去剤が排出され、充填層Bの下流側から充填層Cに原料ガスが流された際に(10)、充填層A及び充填層Bの内部がNガスでパージされる。
【0148】
図14:原料ガスの流れ逆方向
【0149】
(16)充填層Dの不純物除去剤の破過が検出され、充填層Bで原料ガスが浄化される。破過の検出は、充填層Bと充填層Cの間で破過検出手段71により検出される。
(17)充填層Cに不純物除去剤が充填され、充填層Cで原料ガスが浄化される。
(18)充填層Dの不純物除去剤が排出される。
(19)充填層Cの不純物除去剤の破過が検出され、充填層Bで原料ガスが浄化される。破過の検出は、充填層Bと充填層Cの間で破過検出手段71により検出される。
(20)充填層Dに不純物除去剤が充填され、充填層Dで原料ガスが浄化される。
(21)充填層Cの不純物除去剤が排出される。
【0150】
(21)から(16)に戻り、以後(16)から(21)の手順がくり返され、充填層C、充填層Dの不純物除去剤の排出、充填が交互にくり返されて原料ガスの浄化が継続される。充填層Bでは、充填層C、充填層Dでの不純物除去剤の排出、充填の際のバックアップで原料ガスが浄化される。充填層Bに不純物が蓄積すると、以下の処理となる。
【0151】
(22)充填層Dの不純物除去剤の破過が検出され、充填層Bで原料ガスが浄化される。破過の検出は、充填層Bと充填層Cの間で破過検出手段71により検出される。
(23)充填層Dの不純物除去剤が排出され、充填層Cの下流側から充填層Bに原料ガスが流され、充填層Bで原料ガスが浄化される(切換え手段)。
(24)充填層Cに不純物除去剤が充填される。
(25)原料ガスの流れが反転され、充填層A、充填層B、充填層C、充填層Dの順方向に原料ガスが流される(切換え手段)。
【0152】
原料ガスの流れが反転されると、(25)から図13の(2)の処理に移行し、全体の処理が繰り返される。
【0153】
充填層Dの不純物除去剤が排出され、充填層Cの下流側から充填層Bに原料ガスが流された際に(23)、充填層C及び充填層Dの内部がNガスでパージされる。
【0154】
上述した運用をくり返すことにより、充填層A、充填層Bでの不純物除去をくり返すと共に、充填層Cで不純物除去のバックアップを行い、原料ガスの浄化を連続して行うことができる。そして、充填層Cに不純物が蓄積されると、充填層C、充填層Dでの不純物除去をくり返すと共に、充填層Bで不純物除去のバックアップを行い、原料ガスの浄化を連続して行うことができる。
【0155】
これにより、バックアップとなる充填層Cもしくは充填層Bを長く使用しながら充填層A、充填層Bもしくは充填層C、充填層Dでの不純物除去をくり返すことができる。また、原料ガスを順方向に流す際には充填層A、充填層Bの不純物除去剤を完全に使い切ることができ、原料ガスを逆方向に流す際には充填層C、充填層Dの不純物除去剤を完全に使い切ることができる。
【0156】
従って、最下流の充填部に一部新品の不純物除去剤が必ず存在するように不純物除去剤が統合して供給・排出され、充填層A、充填層B、充填層C、充填層Dに充填した不純物除去剤を完全に使用済みの状態(破過状態)になるまで使用することができ、しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスから不純物を除去することができる。このため、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる。
【0157】
つまり、下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流の充填部の不純物除去剤の交換をくり返し、充填した不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにしたので、原料ガスの流路を切換えるための開閉弁の操作を最小限に抑制し、開閉弁の寿命を低下させることなく、不純物除去剤を使い切ることができる。また、原料ガスの流れ方向を変更し、下流の充填部の出口側の不純物除去剤を最後に使用することで、下流の出口の不純物除去剤が汚れていない状態を維持することができる。
【0158】
そして、充填層Bと充填層Cの間に設けた一つの破過検出手段71(一箇所の検出手段)により充填層の不純物除去剤の破過を検出し、不純物除去剤の交換時期を認識するようにしたので、高価な検出手段の数を抑制して機器のコストを抑制することができると共に、不純物除去剤の排出・供給のための制御を簡素化することができる。
【0159】
上述した不純物除去装置及び不純物除去方法によると、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる。このため、原料ガスを精製して燃料電池やガスエンジンの燃料ガスとするガス精製設備の不純物除去装置として適用することで、不純物除去剤の無駄をなくすと共に、不純物除去剤の充填・排出を容易に実施して、原料ガスを燃料ガスに精製することができる。
【0160】
上述した実施例では、バイオマスや廃棄物等の固形燃料をガス化して得られた原料ガスを精製するガス精製設備に本発明の不純物除去装置を適用した例を挙げて説明したが、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasfication Combined Cycle)における石炭ガス化ガスを精製する乾式ガス精製設備に本発明の不純物除去装置を適用することができる。
【0161】
図15に基づいて石炭ガス化複合発電(IGCC)の乾式ガス精製設備に本発明の不純物除去装置を適用した状況を説明する。図15には本発明の実施例(第1実施例)の不純物除去装置を備えた乾式ガス精製設備の全体を表す概略系統を示してある。
【0162】
図に示すように、乾式ガス精製設備80には、石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスgが所定温度に調整されて導入されるハロゲン化物除去装置81が備えられ、ハロゲン化物除去装置81は、原料ガスの流れ方向(図中左右方向)に沿って独立した2つの充填部としての充填層A及び充填層Bを備えた固定床反応容器82を有している。固定床反応容器82の充填層A及び充填層Bには、例えば、アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤83(不純物除去剤)がペレット状にされて充填されている。
【0163】
尚、独立した3つの充填層(第2実施例)、独立した4つの充填層(第3実施例)を備えた固定床反応容器82を適用することが可能である。
【0164】
ハロゲン化物吸収剤83を流通してハロゲン化物が除去された石炭ガス化ガスgは脱硫装置84に送られる。脱硫装置84は、例えば、3塔の反応塔85、86、87が並列に配され、反応塔85、86、87には、亜鉛フェライト脱硫剤がハニカム形状化された触媒を集合させた触媒ブロック88がそれぞれ複数(図示例では4個)充填されている。3塔の反応塔85、86、87への石炭ガス化ガスgの導入は、図示しない切換え手段によりいずれかに切換えられて実施される。
【0165】
脱硫処理では、石炭ガス化ガスgが亜鉛フェライト脱硫剤(触媒ブロック88)に接触することにより、硫化硫黄(HS)や硫化カルボニル(COS)等が除去される。
【0166】
脱硫装置84で硫黄成分が除去された石炭ガス化ガスgはアンモニア分解装置90に送られる。アンモニア分解装置90は、反応容器91、92が並列に配置されている。反応容器91、92にはNi/Al触媒のペレットが充填され、ペレット状に成形された触媒93は、反応容器91、92の筒内部の周囲に、石炭ガス化ガスgの導入方向に沿って(上下方向)充填されている。
【0167】
アンモニア分解装置90では、石炭ガス化ガスgが触媒93を流通してアンモニア成分が窒素に分解される。
【0168】
アンモニア成分が窒素に分解された石炭ガス化ガスgは熱交換装置94に送られ、降温されて水銀除去装置96に送られる。水銀除去装置96は、除去容器95に銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤97が充填され、石炭ガス化ガスgが導入されて水銀が吸収される。
【0169】
水銀除去装置96で水銀が除去された石炭ガス化ガスgはバグフィルター98に送られる。バグフィルター98で不純物が物理的に濾過された燃料ガスfは、アンモニアが分解された石炭ガス化ガスgの顕熱により、熱交換装置94で昇温され、高温の燃料ガスfとされる。高温の燃料ガスfはタービン設備99の燃焼器に供給される。
【0170】
上述した石炭ガス化複合発電の乾式ガス精製設備80では、ハロゲン化物除去装置81の充填層A及び充填層Bに充填されたハロゲン化物吸収剤83が、最下流の充填部に一部新品の不純物除去剤が必ず存在するように統合して供給・排出され、充填層A及び充填層B(3つの充填層、4つの充填層)に充填したハロゲン化物吸収剤83を完全に使用済みの状態(破過状態)になるまで使用することができ、しかも、原料ガスの流れを途絶えさせることなく連続的に原料ガスから不純物を除去することができる。
【0171】
乾式ガス精製設備80は、加圧状態で多量の石炭ガス化ガスgを処理する設備であるため、吸収容量いっぱいまでハロゲン化物を吸収してから使い捨てとなるハロゲン化物吸収剤83を頻繁に交換する必要がある。本発明の不純物除去装置を適用することにより、設備を頻繁に停止してハロゲン化物吸収剤83を交換する必要がなく、また、処理ガス量が膨大であっても無駄なくハロゲン化物吸収剤83を使い切ることが可能になる。
【0172】
このため、石炭ガス化複合発電(IGCC)の乾式ガス精製設備80のハロゲン化物除去装置81に本発明の不純物除去装置を適用することで、不純物除去剤を無駄なく使用して短時間で容易に充填・排出することができる、といった利点を有効に活用することが可能になる。
【0173】
因みに、石炭ガス化複合発電(IGCC)の乾式ガス精製設備80における亜鉛フェライト脱硫剤(触媒ブロック88)及び銅系吸収剤97は再生が可能であり、アンモニア分解用の触媒93は長寿命な触媒であるため、石炭ガス化複合発電(IGCC)の乾式ガス精製設備80のハロゲン化物除去装置81に本発明の不純物除去装置を適用することは吸収容量いっぱいまでハロゲン化物を吸収してから使い捨てとなるハロゲン化物吸収剤83の運用に極めて有効である。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、露点を上回る温度にガス温度を維持して運転する乾式法により不純物除去剤を用いて原料ガスから不純物を除去する不純物除去装置及び不純物除去方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0175】
1 バイオマスガス化炉
2 バグフィルター
3 重金属類除去装置
4、81 ハロゲン化物除去装置
5、84 脱硫装置
8 熱交換器
11、12、13、51、52、53、61、62、63、82 固定床反応容器
15、97 銅系吸収剤
16、83 ハロゲン化物吸収剤
17 脱硫剤
21、22 出入り口通路
23 本体部
24 供給手段
25 供給コンベア装置
26 供給サイロ
27 供給通路
28 供給ホッパ
29 入口供給弁
30 出口供給弁
34 排出手段
35 排出通路
36 排出コンベア装置
37 排出ホッパ
38 入口排出弁
39 出口排出弁
40、41 通路
42 第1通路
43 第2通路
44 反転通路
45 第1開閉弁
46 第2開閉弁
47 第3開閉弁
48 第4開閉弁
49 第5開閉弁
71 破過検出手段
80 乾式ガス精製設備
85、86、87 反応塔
88 触媒ブロック
90 アンモニア分解装置
91、92 反応容器
93 触媒
94 熱交換器
95 除去容器
96 水銀除去装置
98 バグフィルター
99 タービン設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスの流れ方向に沿って独立した複数の充填部を備えた固定床反応容器と、
不純物を除去する不純物除去剤を前記充填部に個別に供給する供給手段と、
不純物を除去した後の不純物除去剤を前記充填部から個別に排出する排出手段と、
前記供給手段及び前記排出手段の動作を統合して制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする不純物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不純物除去装置において、
前記制御手段は、
最下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流側の充填部の不純物除去剤の交換を行うように前記供給手段及び前記排出手段の動作を制御する
ことを特徴とする不純物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の不純物除去装置において、
前記充填部を流通した後の前記原料ガスの状況を検出することで前記充填部に充填された不純物除去剤の状況を把握する検出手段を備え、
前記制御手段は、
前記検出手段が、前記充填部に充填された不純物除去剤が不純物を除去した後の前記原料ガスの状況であると検出した際に、前記供給手段及び前記排出手段の動作を制御する
ことを特徴とする不純物除去装置。
【請求項4】
請求項2もしくは請求項3に記載の不純物除去装置において、
最上流の充填部と最下流の充填部の間に備えられ前記原料ガスが流入する切換え流入路と、
前記切換え流入路からの前記原料ガスの流れを上流側もしくは下流側のいずれかの充填部の方向に切換える切換え手段とを備え、
前記制御手段は、
前記切換え手段を制御することにより前記切換え流入路からの前記原料ガスの流れ方向を変更して前記固定床反応容器における前記原料ガスの流通方向を逆転させる
ことを特徴とする不純物除去装置。
【請求項5】
請求項4に記載の不純物除去装置において、
前記固定床反応容器には4層以上の前記充填部が備えられ、
前記検出手段は、上流側及び下流側に複数の前記充填部が配される位置に備えられ、
前記制御手段は、
前記検出手段が、前記充填部に充填された不純物除去剤が不純物を除去した後の前記原料ガスの状況であると検出した際に、前記切換え手段を制御することにより前記原料ガスの流通方向を逆転させる
ことを特徴とする不純物除去装置。
【請求項6】
不純物除去剤が独立して充填された複数の充填部に原料ガスを流通させ、最下流の充填部の不純物除去剤が不純物を限界まで除去する間に、上流側の充填部の不純物除去剤の交換をくり返し、充填した前記不純物除去剤の全てが不純物を限界まで除去するようにしたことを特徴とする不純物除去方法。
【請求項7】
請求項6に記載の不純物除去方法において、
複数の前記充填部の間から前記原料ガスを流入して前記原料ガスの流れ方向を変更し、変更後の最下流の充填部の出口側の不純物除去剤を最後に使用する
ことを特徴とする不純物除去方法。
【請求項8】
請求項7に記載の不純物除去方法において、
前記原料ガスを4層以上の充填部に流通させ、前記原料ガスの流れ方向を変更する際に前記原料ガスを流入する複数の充填部の間の箇所で、不純物除去剤が不純物を除去した後の前記原料ガスの状況であることを検出し、検出状況に基づいて前記原料ガスの流通方向を逆転させる
ことを特徴とする不純物除去方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−218288(P2011−218288A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89893(P2010−89893)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】