説明

不織布の製造装置

【課題】随伴気流の乱れの影響を受けることなく、高品質の不織布を製造することができる不織布の製造装置を提供する。
【解決手段】繊維Fを紡出するための紡糸部12と、紡出された繊維Fに随伴気流Aを供給するための送気部13とよりなるメルトブロー部11の下流側に、自身の軸線を中心に回転することにより、外周面に供給された繊維Fを不織布Cとするためのローラ14を設ける。ローラ14の下流側には、不織布Cの案内路19を構成するとともに、随伴気流Aを不織布Cから分離するための一対の案内板17,18を対向して設ける。随伴気流Aの分離側における案内板17,18の上流側の端部17a,18aを、ローラ14の中心を通る水平面の下流においてローラ14の中心側に指向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不織布を連続的に製造するための不織布の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の不織布の製造装置としては、例えば図2に示すような構成が知られている。この従来構成においては、メルトブロー部31に、繊維Fを紡出するための紡糸部32と、紡出された繊維Fに随伴気流Aを供給するための送気部33とが設けられている。メルトブロー部31の下流側には、ベルトコンベア34が設けられている。そして、溶融された樹脂が押出機35で紡糸部32に供給されるとともに、送風機36から送気部33に熱風が供給される。このため、紡糸部32から繊維Fが紡出され、その繊維Fが送気部33からの随伴気流Aとともにベルトコンベア34上に供給されて、シート状の不織布Cが製造される。
【0003】
また、従来の不織布の製造装置としては、例えば特許文献1に開示されるような構成も提案されている。この特許文献1の従来構成においては、先端に至るに従って断面積が縮小するチャンバが装備され、そのチャンバの大面積開口側に紡糸部及び送気部が設けられている。チャンバの小面積開口側には、一対のローラよりなる導入部を介して、スクリーンベルトよりなる捕集面が設けられている。そして、紡糸部から紡出される繊維が送気部から供給される随伴気流により、チャンバの小面積開口側に送られて、その小面積開口部から送り出される。その後、繊維が導入部のローラ間を通して捕集面上に供給されることにより、シート状の不織布Cが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−257362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記の従来構成においては、次のような問題があった。
図2に記載の従来構成では、紡糸部32から紡出される繊維Fが送気部33から供給される随伴気流Aとともに、平面状のベルトコンベア34の上面に直接吹き付けられる。このため、随伴気流Aがベルトコンベア34の上面において不規則な乱れを生じて、その乱気流により繊維Fがベルトコンベア34上で舞い上がり、繊維の材質が劣化するだけではなく、厚さや繊維密度の均一な高品質の不織布Cを製造することが難しいものであった。
【0006】
この問題を防止するために、ベルトコンベア34としてメッシュ状のものを用いるとともに、ベルトコンベア34の下側からエアを吸引して、不織布をベルトコンベア34上に吸着させるようにすることも考慮される。しかし、このような構成においては、不織布が扁平になるだけではなく、不織布にメッシュ痕が形成されて、品質の低下を招くことになる。
【0007】
これに対して、特許文献1に記載の従来構成では、チャンバの小面積開口部から、随伴気流とともに送り出される繊維が導入部の一対のローラ間を通して捕集面上に供給されるようになっている。このため、導入部上で随伴気流に乱れが生じた場合でも、その乱気流に大きく影響されることなく、導入部の下側の捕集面上に繊維を供給して不織布を製造することができるとしている。しかしながら、この特許文献1に記載の従来構成では、先端に至るに従って断面積が縮小するチャンバ及び一対のローラよりなる導入部を設ける必要があるため、装置全体の構造が複雑になる。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、随伴気流の乱れの影響を受けることなく、高品質の不織布を製造することができる不織布の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、繊維を紡出するための紡糸部と、紡出された繊維に随伴気流を供給するための送気部とよりなるメルトブロー部の下流側に、自身の軸線を中心に回転することにより、前記紡糸部から外周面に供給された繊維を不織布とするとともに、その不織布を送り出すためのローラを設け、そのローラの不織布送り方向の下流側には前記不織布の案内路を構成する一対の案内板を設け、前記随伴気流を一方の案内板により分離するようにした不織布の製造装置であって、前記随伴気流の分離側における案内板の上流側の端部を、前記ローラの中心を通る水平面の下流側においてローラの中心側を指向させたことを特徴としている。ここで、案内板の上流側の端部がローラの中心側を指向するということは、その端部の延長線とローラの外周面との交点におけるローラ外周面の接線よりも端部の延長方向がローラ中心側を指向する状態を指す。
【0010】
従って、この発明の不織布の製造装置においては、メルトブロー部の紡糸部から紡出される繊維が、送気部から供給される随伴気流とともにローラ上に吹き付けられて、ローラの外周面に不織布が形成される。このとき、随伴気流がローラの外周面に沿って下方に流れるため、ローラ上において随伴気流に乱れが生じるおそれはほとんどない。よって、乱気流により繊維が舞い上げられることなく、不織布を形成することができる。そして、ローラ上の不織布がローラの回転により一対の案内板間の案内路内に送り込まれ、その案内路においてローラ上から剥離される。この場合、随伴気流が案内板により不織布から分離されて案内路内には侵入し難いため、随伴気流にほとんど影響されることなく、ローラ上から不織布を剥離することができる。
【0011】
また、随伴気流の分離側における案内板の上流側の端部が、ローラの中心を通る水平面の下流側において、ローラの外周面に対して接線方向に指向した状態で対向配置されることなく、ローラの中心側に指向した状態で対向配置されている。
【0012】
このため、案内板の端部がローラの外周面に対して接線方向に指向した状態で対向配置されている場合とは異なり、随伴気流が案内板の端部とローラの外周面との間の隙間から案内路内に流れ込むことを効果的に抑制することができる。よって、随伴気流やその乱気流の悪影響を受けることなく、厚さや繊維密度の均一な高品質の不織布を製造することができる。
【0013】
前記の構成において、前記紡糸部がローラの上方に位置するとともに、ローラの軸線が水平面内に位置し、前記案内板の端部は鉛直方向または鉛直方向よりも内側方向を指向することが好ましい。
【0014】
前記の構成において、前記一対の案内板を非対称形状にして、前記送気部からの随伴気流がローラの外周面を経て一方の案内板側に偏るようにすることが好ましい。
前記の構成において、前記案内板の下流側に不織布を収集するための収集部を設け、その収集部を前記随伴気流が少ない案内板側に設けるとよい。
【0015】
前記の構成において、随伴気流の分離側とは反対側の案内板の端部をローラの外周面に接触させるとよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、装置の構造が簡単であるとともに、随伴気流の乱れの影響を受けることなく、高品質の不織布を製造することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の不織布の製造装置を示す構成図。
【図2】従来の不織布の製造装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明を具体化した不織布の製造装置の一実施形態を、図1に従って説明する。
図1に示すように、この実施形態の不織布の製造装置においては、メルトブロー部11が装備されている。そのメルトブロー部11には、繊維Fを紡出するための紡糸部12が設けられるとともに、紡出された繊維Fに随伴気流Aを供給するための送気部13が設けられている。メルトブロー部11の下流側には、ローラ14が自身の水平軸線を中心に回転可能に配置され、紡糸部12の先端とローラ14の外周面との間には間隔が形成されている。そして、溶融された合成樹脂が押出機15で紡糸部12に供給されるとともに、送風機16から送気部13に熱風が供給される。このため、紡糸部12から繊維Fが紡出され、その繊維Fが送気部13からの随伴気流Aとともにローラ14上に吹き付けられて、そのローラ14の回転に伴ってローラ14の外周面上においてシート状の不織布Cが製造される。
【0019】
図1に示すように、前記ローラ14の下流側には、一対の下方へ向かって拡開される湾曲形状の案内板17,18が所定間隔をおいて対向配置されている。両案内板17,18間には、不織布Cの案内路19が形成されている。そして、ローラ14の外周面に沿って下方に流れる随伴気流Aが、この案内板17,18によりローラ14の外周面上の不織布Cから分離されるとともに、案内板17,18の外側面に沿って下方に導かれるようになっている。
【0020】
図1に示すように、前記両案内板17,18における随伴気流Aの上流側、つまり随伴気流Aを分離する側の端部17a,18aは、ほぼ鉛直方向へ平行に延びるように形成されている。端部17a,18aとローラ14の外周面との間には隙間が形成されている。そして、この案内板17,18の端部17a,18aが、ローラ14の中心を通る水平面の下流側における端部17a,18aの延長線上において、ローラ14の外周面に対する接線方向を指向することなく、ローラ14の中心側に指向した状態で対向配置されている。
【0021】
また、前記両案内板17,18は同じ曲率に形成されているが、両案内板17,18のうちの一方の案内板17の下端には、水平方向に延びる延長部17bが形成されている。このため、両案内板17,18が非対称形状となるように構成されている。この非対称形状によって、随伴気流Aがローラ14の外周上部から、流動抵抗が小さい形状の案内板18側へ偏流となって優先的に流れるようになっている。また、両案内板17,18間の案内路19内においてローラ14の外周面から剥離された不織布Cが、案内板17の延長部17bに沿って側方に導かれて、その案内板17側に位置する収集部としての巻取り軸20に巻き取られる。
【0022】
次に、前記のように構成された不織布の製造装置の作用を説明する。
さて、この不織布の製造装置の運転時には、溶融された樹脂が紡糸部12に供給されるとともに、送風機16から送気部13に熱風が供給される。すると、紡糸部12から繊維Fが紡出されるとともに、その繊維Fが送気部13からの随伴気流Aにより、回転中のローラ14の外周上面に吹き付けられる。このため、ローラ14の外周面にシート状の不織布Cが連続的に製造される。
【0023】
この場合、ローラ14の外周上面が円筒状になっているため、随伴気流Aがローラ14の外周上部で滞ることなく、ローラ14の外周面に沿って下方にスムーズに流れる。また、ローラ14の下流側に配置された一対の案内板17,18が非対称形状となっているため、随伴気流Aはローラ14の外周上部において彷徨うことなく、流動抵抗が小さい形状の案内板18側へ優先的に流れる。よって、ローラ14の外周上部において随伴気流Aに乱れが生じることはなく、そのため、その乱気流により繊維Fが舞い上げられることを防止できるため、不織布Cの形成に支障を来すおそれはない。これに対し、案内板17,18が対称形状の場合は、随伴気流がローラ14上において振動するようにして流れるため、その流れの方向が定まらず、不織布形成に悪影響がある。
【0024】
そして、前記ローラ14の回転に伴って、そのローラ14の外周面の不織布Cが随伴気流Aとともに、案内板18の端部18aと対応する位置まで移動されると、その案内板18により随伴気流Aが不織布Cから分離されて、不織布Cのみが案内路19内に送り込まれる。このとき、案内板17,18の端部17a,18aが、ローラ14の中心を通る水平面の下流側において、ローラ14の中心側に指向した状態で対向配置されている。このため、随伴気流Aが案内板17,18の端部17a,18aとローラ14の外周面との間の隙間から案内路19内に流れ込むおそれはほとんどない。よって、随伴気流Aが不織布Cから適切に分離される。これに対し、案内板17,18の端部17a,18aがローラ14の外周面に対して接線方向に指向した状態で対向配置されている場合は、随伴気流が案内板17,18の端部17a,18aと、ローラ14の外周面との間の隙間から案内路19内に侵入して、不織布Cに対して悪影響を与える。
【0025】
その後、前記案内路19内において、不織布Cがローラ14の外周面から剥離され、案内板17の延長部17bに沿って下流側に導かれるとともに、巻取り軸20に巻き取られる。この場合、案内路19の外側において案内板17,18により、前もって不織布Cから随伴気流Aが分離されているため、案内路19内でローラ14上から不織布Cが剥離される際に、随伴気流Aの悪影響を受けるおそれはない。よって、繊維が劣化することを防止できるとともに、厚さや繊維密度の均一な高品質の不織布Cが製造される。
【0026】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この不織布の製造装置においては、メルトブロー部11の紡糸部12から紡出される繊維Fが、送気部13から供給される随伴気流Aによりローラ14上に吹き付けられて、ローラ14の外周面に不織布Cが形成される。このため、不織布Cの形成時には、随伴気流Aがローラ14上で滞ることなく、ローラ14の外周面に沿って下方にスムーズに流れる。よって、ローラ14上において繊維Fが舞い上げられるおそれはなく、不織布Cを連続的に形成することができる。
【0027】
また、ローラ14上の不織布Cがローラ14の回転により一対の案内板17,18間の案内路19内に送り込まれ、その案内路19においてローラ14上から剥離される。この場合、随伴気流Aが案内板17,18により不織布Cから分離されるようになっているため、案内路19内において随伴気流Aにほとんど影響されることなく、ローラ14上から不織布Cを剥離することができる。従って、随伴気流Aやその乱気流の悪影響を受けることなく、厚さや繊維密度の均一な高品質の不織布Cを製造することができる。
【0028】
さらに、ローラ14の下流側に一対の案内板17,18を配設することにより、ローラ14上の不織布Cから随伴気流Aを分離させて、不織布Cに対する随伴気流Aの悪影響を抑制することができるため、装置の構成を簡略化することができる。
【0029】
(2) この不織布の製造装置においては、随伴気流Aの分離側における案内板17,18の上流側の端部17a,18aが、ローラ14の中心を通る水平面の下流側において、ローラ14の外周面に対して接線方向を指向した状態で対向配置されることなく、ローラ14の中心側を指向した状態で対向配置されている。このため、案内板17,18の端部17a,18aがローラ14の外周面に対して接線方向に指向した状態で対向配置されている場合とは異なり、随伴気流Aが案内板17,18の端部17a,18aとローラ14の外周面との間の隙間から案内路19内に流れ込むことを効果的に抑制することができる。よって、随伴気流Aの悪影響を適切に防止することができて、高品質の不織布Cを製造することができる。
【0030】
(3) この不織布の製造装置においては、前記一対の案内板17,18が非対称形状となるように構成されている。このため、随伴気流Aを流動抵抗が小さい形状の案内板18側へ優先的に流すことができる。このため、ローラ14上において随伴気流Aに乱れが生じるおそれを効果的に抑制することができて、不織布Cの品質を一層向上させることができる。
【0031】
(4) この不織布の製造装置においては、ローラ14の軸線が水平に位置し、案内板17,18の端部17a,18aがローラ14の中心を通る水平面の下において鉛直方向を指向しているため、不織布Cと随伴気流Aとの分離が適切に実行される。
【0032】
(5) この不織布の製造装置においては、不織布Cの巻取り軸20を随伴気流Aが少ない案内板17側に設けているため、不織布Cの巻取りに対する随伴気流Aからの悪影響を避けることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0033】
・ ローラ14上において随伴気流Aの偏流を形成するための案内板17,18の非対称形状を得るために、一方の案内板17,18のローラ14に対する位置関係を他方の案内板17,18とは異ならせたり、両案内板17,18長さや曲率等の形状を変えたりすること。
【0034】
・ 不織布Cがローラ14から分離される側と反対側の案内板18の端部18aをローラ14に接触させること。この場合、ローラ14に傷がつかないように、端部18aをローラ14の表面より柔らかい材質で形成する。このようにすれば、端部18aによりローラ14の表面に付着した残留繊維を除去できる。
【0035】
・ 案内板17,18の端部17a,18aが上方に向かって先窄まりとなるようにハの字形に形成すること。このようにすれば、不織布Cからの随伴気流Aの分離をさらに適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
11…メルトブロー部、12…紡糸部、13…送気部、14…ローラ、17,18…案内板、17a,18a…端部、19…案内路、F…繊維、A…随伴気流、C…不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を紡出するための紡糸部と、紡出された繊維に随伴気流を供給するための送気部とよりなるメルトブロー部の下流側に、自身の軸線を中心に回転することにより、前記紡糸部から外周面に供給された繊維を不織布とするとともに、その不織布を送り出すためのローラを設け、そのローラの不織布送り方向の下流側には前記不織布の案内路を構成する一対の案内板を設け、前記随伴気流を一方の案内板により分離するようにした不織布の製造装置であって、
前記随伴気流の分離側における案内板の上流側の端部を、前記ローラの中心を通る水平面の下流側においてローラの中心側を指向させたことを特徴とする不織布の製造装置。
【請求項2】
前記紡糸部がローラの上方に位置するとともに、ローラの軸線が水平面内に位置し、前記案内板の端部は鉛直方向または鉛直方向よりも内側方向を指向したことを特徴とする請求項1に記載の不織布の製造装置。
【請求項3】
前記一対の案内板を非対称形状にして、前記送気部からの随伴気流がローラの外周面を経て一方の案内板側に偏るようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の不織布の製造装置。
【請求項4】
前記案内板の下流側に不織布を収集するための収集部を設け、その収集部を前記随伴気流が少ない案内板側に設けたことを特徴とする請求項3に記載の不織布の製造装置。
【請求項5】
随伴気流の分離側とは反対側の案内板の端部をローラの外周面に接触させたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の不織布の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−102425(P2012−102425A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250859(P2010−250859)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】