説明

不織布製造装置、不織布製造方法

【課題】ナノファイバーを堆積させて得られる不織布であって、厚みが均一な不織布を製造する。
【解決手段】ナノファイバー生成用の原料液200を噴射する電圧が印加される噴射孔112と、生成されたナノファイバー200が堆積される被堆積手段160とを備える不織布製造装置100であって、前記被堆積手段160上のナノファイバー200が堆積する堆積部161に分布が変動する電場を発生させる変動電場発生手段120を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質からなるナノファイバーを堆積し、不織布を製造する方法、及び、不織布の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子物質から成り、サブミクロンスケールの直径を有する糸状物質(以下、「ナノファイバー」と記す。)を製造する方法として、エレクトロスピニング(電荷誘導紡糸)法が知られている。
【0003】
このエレクトロスピニング法とは、高電圧を印加した針状のノズルから溶媒中に高分子物質を分散させた高分子溶液を空間中に流出(射出)させることにより、ナノファイバーを得る方法である。より具体的には、高電圧により帯電した高分子溶液の溶媒が蒸発するに伴い電荷密度が上昇する。そして、高分子溶液中に発生する反発方向のクーロン力が高分子溶液の表面張力より勝った時点で高分子溶液が爆発的に線状に延伸される現象(静電爆発)が生じる。この静電爆発が、空間において次々と発生することで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造される。
【0004】
また、前述の方法で製造されたナノファイバーを基板上に堆積させることで、立体的な網目を持つ3次元構造の薄膜を得ることができ、さらに厚く形成することでサブミクロンの網目を持つ高多孔性ウェブ(不織布)を製造することができる。
【0005】
このようにエレクトロスピニング法を採用して製造されたウェブは、ナノオーダーの孔からなる高多孔性であり表面積が広いため、フィルタや電池のセパレータや燃料電池の高分子電解質膜や電極等に適用され、高い効果を得ることが期待されている。
【0006】
従来、ナノファイバーを多量に生成してナノファイバーからなる実用的なウェブを製造する方法として、複数のノズルを並列に配置し、多量のナノファイバーを堆積させてウェブを製造する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より一層生産性よく高分子ウェブを製造するためには、高分子溶液を流出させるノズルを複数備え、当該ノズルの配置間隔を小さくして単位面積当たりのノズル本数を多くすることにより、堆積するナノファイバーの密度を高くすることが考えられる。
【0008】
ところが、各ノズルから流出した高分子溶液が同極の電荷に帯電し、互いに反発する方向に干渉しあった状態のままナノファイバーが生成され、基板上に堆積するため、ナノファイバーの堆積分布を一様に制御するのは困難であった。具体的には、基板のある部分(例えば中央部)は、ナノファイバーの堆積が極端に少なく、その他の部分(例えば周辺部)にナノファイバーが集中して堆積してしまう。
【0009】
このように不均一にナノファイバーが堆積すると、均一なウェブを製造することができないという問題がある。
【0010】
これを解決する構成として、ノズルの先端近傍に電荷分配板を配設することが、特許文献1に開示されているが、前記電荷分布板によりノズルから流出する高分子溶液の広がりが抑えこまれ、ナノファイバーが堆積する部分の指向性が強まるため、ノズルの配置パターンがそのままナノファイバーの堆積分布に投影され、堆積分布の均一化に十分な効果を発揮するものではないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、複数の噴射孔(ノズル)に基づきナノファイバーを生成する場合においても、堆積するナノファイバーの分布を均一化することのできる不織布の製造装置、及び、不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明にかかる不織布製造装置は、ナノファイバー生成用の原料液を噴射する電圧が印加される噴射孔と、生成されたナノファイバーが堆積される被堆積手段とを備える不織布製造装置であって、前記被堆積手段上のナノファイバーが堆積する堆積部に分布が変動する電場を発生させる変動電場発生手段を備えることを特徴とする。前記原料液は、ナノファイバーの材料である高分子物質を溶媒に溶解させた溶液である。高分子物質の比率は、使用する溶媒により異なるが、3%から20%位が好適である。
【0013】
高分子物質としては、ポリフッ化ビニリデン(FVDF)、ポリフッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の石油系ポリマーや、バイオポリマーなどの様々な高分子、それらの共重合体や混合物などが適用可能であり、溶媒はこれら高分子物質を溶解する任意の溶媒を適用できる。
【0014】
これにより、ナノファイバーが堆積する位置を電場の変化により制御することができ、所望の厚み分布、例えば、均一な厚みの不織布を製造することが可能となる。
【0015】
前記変動電場発生手段は、前記被堆積手段に対し前記噴射孔と反対側であって前記堆積部に対応する位置に配置される複数の電極と、前記電極のそれぞれに電位を付与する電源と、前記電圧を周期的に変化させる電圧変化手段とを備えるものでもよい。
【0016】
これにより、比較的容易に電場の分布を任意に制御することができる。
また、前記変動電場発生手段は、前記被堆積手段に対し前記噴射孔と反対側であって前記堆積部に対応する位置に配置される電極と、前記電極のそれぞれに電位を付与する電源と、前記噴射孔と前記電極との相対的位置関係を周期的に変化させる駆動手段とを備えるものでもよい。これにより、比較的容易に電場の分布の変化を制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い効率でナノファイバーを堆積させることができると共に、ナノファイバーの堆積分布を均一に制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明にかかる不織布製造装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明にかかる不織布製造装置を概略的に示す斜視図である。
【0019】
同図に示すように不織布製造装置100は、ナノファイバー発生手段110と、変動電場発生手段120と、被堆積手段としてのシート160とを備えている。なお、生成されているナノファイバー、または、その原料液には明確に区別できないためいずれにも200の符号を付し、製造された不織布には210を付している。
【0020】
ナノファイバー発生手段110とは、ナノファイバーを生成するための原料液を噴射(流出)する装置であり、電源150に接続されて所定の電位に維持されるものとなっている。また、原料液を貯蔵するタンク(図示せず)と接続されるパイプ111がナノファイバー発生手段110に接続されており、所定の圧力で原料液が供給されるようになっている。
【0021】
図2はナノファイバー発生手段の具体例を示す図である。
同図(a)に示すナノファイバー発生手段110は、先端に噴射孔112を備えたノズル113を複数本備え、各ノズル113には電源150が接続されている。また、各ノズル113にはパイプ111がそれぞれ接続されており、原料液を貯蔵するタンクから所定の圧力で原料液が供給されるものとなっている。
【0022】
同図(a)に示すナノファイバー発生手段110は、供給される圧力により噴射孔112から原料液200を噴射するものであり、ノズル113に接続される電源150により、噴射する原料液200が帯電するようになっている。
【0023】
同図(b)に示すナノファイバー発生手段110は、周壁に多数個の噴射孔112が設けられた円筒形のバレル114を備えている。バレル114は、回転可能であると共に、電源150により所定の電位に維持されるものである。また、回転軸上に設けられたシャフトの一方にはパイプ111が接続され、バレル114内部に原料液200が供給されるものとなっている。
【0024】
同図(b)に示すナノファイバー発生手段110は、遠心力により噴射孔112から原料液200を噴射するものであり、バレル114に接続される電源150により、噴射する原料液200が帯電するようになっている。
【0025】
シート160は、空間中で生成したナノファイバー200が堆積する対象となる部材であり、堆積したナノファイバー200と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシートである。
【0026】
当該シート160は、ロール状に巻き付けられた状態で供給され、ナノファイバー200が堆積する部分をゆっくりと移動手段170により図中矢印方向に移動するものとなっている。そして、シート160上で製造された不織布210とともに再びロール状に巻き付けられるようになっている。
【0027】
移動手段170は、シート160を所定の張力を維持しつつ一方方向に送ることができる装置であり、モータ(図示せず)などの駆動により図に示されるローラーを回転させてシート160を移動させるものである。
【0028】
変動電場発生手段120は、ナノファイバー200がシート160上に堆積する堆積部161に発生する電場の分布を変化させる装置である。
【0029】
変動電場発生手段120については、複数の態様を提示することができる。以下変動電場発生手段120の各態様を説明する。
【0030】
(変動電場発生手段<1>)
図3は、変動電場発生手段<1>を概念的に示す斜視図である。
【0031】
同図に示すように、変動電場発生手段120は、複数の電極121と、複数の電極121それぞれに電位を付与する電源150と、電極121に印加する電圧を周期的に変化させることのできる電圧変化手段151と、絶縁体130とを備えている。
【0032】
電極121は、シート160の移動方向(図中矢印)に延び、ナノファイバー200が堆積する部分すなわち堆積部161にわたって配置される金属製の部材である。本変動電場発生手段<1>の場合、電極121は、シート160の移動方向に対し垂直に6個の電極121が配置されており、電極の間には絶縁体130が設けられている。なお、電極121のそれぞれを区別して示す場合には符号にa〜fを添えて説明する。
【0033】
電源150は、最大50kv〜100kvの電位を付与することができる装置である。本変動電場発生手段<1>の場合、電極121a〜電極121fに対し、それぞれ電源150a〜電源150fが接続され、各電極121に独立して電圧が印加されるようになっている。
【0034】
電圧変化手段151は、電極121に印加する電圧を10kv〜100kv程度の電圧の幅で変化させることのできる装置である。具体的には次の装置を例示することができる。
【0035】
図4は、電圧変化手段を概念的に示す図である。
同図に示すように、電圧変化手段151は、抵抗152、153、156と、スイッチング素子155と、制御部127と、バイパスライン154と、出力ライン126を備えている。
【0036】
抵抗は、直列に接続され電圧の変化に寄与する抵抗152と、出力ライン126がアースと同電位になることを回避すると共に、短絡を回避する抵抗153と、電極121が何かと導通した際に短絡を防止するための抵抗156との3種類を備えている。
【0037】
スイッチング素子155は、半導体素子で構成されおり、光の信号に基づきドライブされるものとなっている。また、スイッチング素子155は、バイパスライン154に介在接続され、バイパスライン154を電気的に導通状態とするのか、絶縁状態とするかを選択する機能を担うものである。
【0038】
本実施の形態のように光の信号でドライブできる素子を採用することで、高電位となるスイッチング素子155を電気的に接続することなく光で制御するため、異常な放電などによるスイッチング素子155の損傷を防止することが可能となる。
【0039】
バイパスライン154は、抵抗152の正側の電極と負側の電極とを接続する導線である。バイパスライン154は、中間部に介在接続されるスイッチング素子155により導通となった場合には、抵抗152の両端の電位差をほぼ0とする機能を担うものである。
【0040】
電圧変化手段151回路構成は以下の通りである。抵抗152と、スイッチング素子155が介在接続されたバイパスライン154とが並列接続されたユニットを複数個(本実施の形態では4個)直列に接続され、さらに前記ユニットに抵抗153が直列に接続されている。さらに、抵抗153と前記ユニットとの間に出力ライン126が接続されている。出力ライン126には、抵抗156が介在接続されている。また、各スイッチング素子155は制御部127に接続され、バイパスライン154を導通させるか絶縁状態とするかは制御部127によって制御されている。
【0041】
次に、電圧変化手段151の電圧変化方法を説明する。
電圧変化手段151を電源に接続し、各バイパスライン154の導通と絶縁とを制御部127が選択すれば、出力ライン126に出力される電位を変化させることができる。
【0042】
具体的には、次に説明する。
図5は、電圧変化手段151の具体例を示す図である。
【0043】
同図に示す状態を実現している電圧変化手段151の抵抗152a〜抵抗152dと、抵抗153との抵抗値は、100MΩが採用されている。また、電圧変化手段151が接続される電源150の出力は、−50kvとしている。
【0044】
以上の電圧変化手段151の下、例えば全てのスイッチング素子155a〜スイッチング素子155dを絶縁状態とすれば(同図中左端、絶縁状態をOFFと表記)、出力ライン126に印加される電圧は、抵抗153に発生する分圧であり(1:4)、−10kvとなる。
【0045】
また、スイッチング素子155a〜スイッチング素子155dのいずれかひとつを導通状態(同図中左から2番目、導通状態をONと表記)とすれば、出力ライン126に印加される電圧は、抵抗153に発生する分圧(1:3)であり−12.5kvとなる。
【0046】
以上のようにスイッチング素子155を制御し、分圧に寄与する抵抗152の数を選択することで、出力ライン126に印加される電圧を変化させることが可能となる。そして、各スイッチング素子155を経時的に変化させ分圧に寄与する抵抗152の数を経時的に変化させれば、出力ライン126に接続される電極121の電位を経時的に変化させることが可能となる。
【0047】
図6は、電圧変化手段151の他の具体例を示す図である。
同図に示す状態を実現している電圧変化手段151の抵抗152aは250MΩを採用し、抵抗152bは84MΩを採用し、抵抗152cは41MΩを採用し、抵抗152dは25MΩを採用し、抵抗153の抵抗値を100MΩとしている。また、電圧変化手段151が接続される電源150の出力は、−50kvとしている。
【0048】
以上の電圧変化手段151の下、各スイッチング素子155を制御すれば同図に示すように、電圧を均等な幅で変化させることが可能となる。
【0049】
以上のような電圧変化手段151であれば、変化させる電圧の幅を広くすることが可能であり、容易に電圧を変化させることができる。また、ユニット数を増加させることにより、高電圧であっても滑らかに電圧を変化させることが可能となる。
【0050】
(変動電場発生手段<2>)
次に、他の変動電場発生手段120について説明する。
【0051】
図7は、他の変動電場発生手段<2>を概念的に示す側面図である。
同図に示すように、変動電場発生手段120は、複数の電極121と、複数の電極121それぞれに電位を付与する電源150と、電極121を駆動する駆動手段157と、絶縁板159とを備えている。
【0052】
電極121、電源150については変動電場発生手段<1>と同様であるため説明を省略する。
【0053】
駆動手段157は、各電極121を独立して直線的に往復動作させることのできるものであり、空圧によって直線的に出没する移動軸158を備えている。なお、駆動手段157は、リニアアクチュエータであればよく、空圧や油圧を用いるもの、ボールねじを用いるもの、リニアモータなどを用いるもの、その駆動方法は問わない。また、駆動手段157は、電極121とナノファイバー発生手段110とを結ぶ線に沿って電極121を移動させるものとなっている。
【0054】
絶縁板159は、電極121の移動時における振れを規制すると共に、電極121相互の接触や近接を阻害して異常な放電等を防止する働きを担うものである。
【0055】
以上のような変動電場発生手段120であれば、電源150から出力される電圧は一定でよい。また、各電極121の移動を制御することにより、シート160の移動方向と垂直な方向で分割されたシート160の堆積部161の領域毎にアナログ的経時的に変化する電場を形成することが可能となる。
【0056】
(変動電場発生手段<3>)
次に、その他の変動電場発生手段120について説明する。
【0057】
図8は、他の変動電場発生手段<3>を概念的に示す斜視図である。
同図に示すように、変動電場発生手段120は、電極121と、電極121に電位を付与する電源150と、電極121を駆動する駆動手段167とを備えている。
【0058】
電源150については変動電場発生手段<1>と同様であるため説明を省略する。
駆動手段167は、電極121をレールに沿って直線的に往復動作させることのできるものである。なお、駆動手段157は、前記と同様リニアアクチュエータであればよく、空圧や油圧を用いるもの、ボールねじを用いるもの、リニアモータなどを用いるもの、その駆動方法は問わない。また、駆動手段167は、シート160の幅方向、すなわち、シート160の移動方向と垂直な線に沿って電極121を移動させるものとなっている。
【0059】
以上のような変動電場発生手段120であれば、電源150から出力される電圧は一定でよい。また、電極121の移動を制御することにより、シート160の堆積部161にシート160の移動方向と垂直な方向に変化する電場を形成することが可能となる。
【0060】
次に、ナノファイバー発生手段110の全体の配置を説明する。
本実施形態の場合、ナノファイバー発生手段110は、下部に配置されるシート160に向かい、原料液が噴射されるものとなっている。また、ナノファイバー発生手段110とシート160の距離は、静電爆発が複数回発生し、所望の径のナノファイバーが得られる距離に設定されている。
【0061】
また、変動電場発生手段120が備える電極121は、ナノファイバー発生手段110と所定の電位差が発生するものとなされている。
【0062】
以上の構成の不織布製造装置100による不織布の製造方法を次に説明する。
従来の方法に従いナノファイバー発生手段110の複数の噴射孔112から原料液を噴射し、ナノファイバー200を空間中で発生させつつ、シート160上にナノファイバーを堆積させてゆく。この際、シート160の下部に配置されている変動電場発生手段120によりシート160上の堆積部161における電場の分布を経時的に変化させる。
【0063】
ここで、変動電場発生手段<1>を例にとり、電場の分布を周期的に変化させる方法を説明する。なお、直接的に電場の分布を説明することは困難であるので、変動電場発生手段120が備える各電極(121a〜121f)の電位の変動をもって、電場分布の経時的変化の説明の代わりとする。
【0064】
図9は、各電極の電位の変化を示す図である。
同図に示すように各電極(121a〜121f)の電位は、ナノファイバー発生手段110との電位差を確保できるような直流成分に交流成分を重畳したものであり、交流成分は、VmaxとVminの間の振幅でサイン波となるように電圧変化手段151により制御されている。具体的には直流成分は0v以下、振幅は−10kv以上−50kv以下が好ましい。また、サイン波の周波数は10Hz以上500Hz以下が好ましい。
【0065】
また、各電極(121a〜121f)には図中に示すように位相差を設けている。具体的には、360度を電極121の数(6)で除算した角度(60度)ずつ、電極121のならびに従い順にずれるものとなっている。
【0066】
なお、変動電場発生手段<1>の電圧変化手段151は、段階的にしか電位を変化させることができないため、同図中のカーブは目標とするカーブであり、実際には階段状に電位が増減する。
【0067】
同図に示すように位相をずらして各電極(121a〜121f)の電位を周期的に変化させることによって、図10に示すように、堆積部161には、シート160の移動方向と垂直な方向(図中の白抜き矢印方向)に波が進行するように電場の分布を周期的に変化させる事ができる。
【0068】
このように堆積部161における電場の分布を周期的に変化させれば、複数の噴射孔112から噴射され生成されるナノファイバー200が集中的に堆積する位置を分散させることができ、少なくともシート160の幅方向には均一な厚みの不織布210を製造することが可能となる。
【0069】
また、シート160は、シート160の幅方向と垂直(長さ方向)に移動しているため、長さ方向にも均一な厚みの不織布210を製造することが可能となる。
【0070】
なお、電場の分布状態は上記実施の形態に示すように、極大が一方方向に流れるように回転状に電場の分布を制御してもよく、また、極大が往復するように分布してもよい。また、電場(電位)の変化状態をサイン波として説明したが、三角波や矩形波など他の波形の採用を妨げるものではない。また、電場の分布の変化は1次元的ばかりでなく、2次元的な変化でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、微小多孔性を利用したフィルターや表面積の広さを利用した触媒の担持体などに適用できる不織布の製造装置などに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明にかかる不織布製造装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】ナノファイバー発生手段の具体例を示す図である。
【図3】変動電場発生手段を概念的に示す斜視図である。
【図4】電圧変化手段を概念的に示す図である。
【図5】電圧変化手段による出力電圧の具体例を示す図である。
【図6】他の電圧変化手段による出力電圧の具体例を示す図である。
【図7】他の変動電場発生手段を概念的に示す側面図である。
【図8】他の変動電場発生手段を概念的に示す斜視図である。
【図9】各電極の電位の変化を示す図である。
【図10】電位の変化による電場分布を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
100 不織布製造装置
110 発生手段
111 パイプ
112 噴射孔
113 ノズル
114 バレル
120 変動電場発生手段
121 電極
126 出力ライン
127 制御部
130 絶縁体
150 電源
151 電圧変化手段
152 抵抗
153 抵抗
154 バイパスライン
155 スイッチング素子
156 抵抗
157 駆動手段
158 移動軸
159 絶縁板
160 シート
161 堆積部
167 駆動手段
170 移動手段
200 ナノファイバー
200 原料液
210 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー生成用の原料液を噴射する電圧が印加される噴射孔と、生成されたナノファイバーが堆積される被堆積手段とを備える不織布製造装置であって、
前記被堆積手段上のナノファイバーが堆積する堆積部に分布が変動する電場を発生させる変動電場発生手段を備える不織布製造装置。
【請求項2】
前記変動電場発生手段は、
前記被堆積手段に対し前記噴射孔と反対側であって前記堆積部に対応する位置に配置される複数の電極と、
前記電極のそれぞれに電位を付与する電源と、
前記電圧を周期的に変化させる電圧変化手段と
を備える請求項1に記載の不織布製造装置。
【請求項3】
前記変動電場発生手段は、
前記被堆積手段に対し前記噴射孔と反対側であって前記堆積部に対応する位置に配置される電極と、
前記電極のそれぞれに電位を付与する電源と、
前記噴射孔と前記電極との相対的位置関係を周期的に変化させる駆動手段と
を備える請求項1に記載の不織布製造装置。
【請求項4】
前記変動電場発生手段はさらに、
前記電極を複数備え、
前記駆動手段は、前記噴射孔と前記電極との距離をそれぞれ周期的に変化させる
請求項3に記載の不織布製造装置。
【請求項5】
前記不織布製造装置はさらに、
前記被堆積手段を所定方向に移動させる移動手段を備え、
前記変動電場発生手段は、前記被堆積手段の移動方向と交差する方向に分割される複数の堆積部にそれぞれ変動する電場を発生させる請求項1に記載の不織布製造装置。
【請求項6】
ナノファイバーからなる不織布の製造方法であって、
電圧が印加された噴射孔からナノファイバー生成用の原料液を空間に噴射し、生成したナノファイバーを被堆積手段に堆積させるナノファイバー堆積ステップと、
前記被堆積手段上の堆積部に変動する電場を発生させる変動電場発生ステップとを含む不織布製造方法。
【請求項7】
電圧を経時的に変化させる電圧変化装置であって、
電源に直列に接続される複数の抵抗と、
前記抵抗の一方の極と他方の極とを導通可能に接続するバイパスラインと、
前記バイパスラインにおける導通と遮断とを選択するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を経時的に制御する制御手段と、
前記抵抗のいずれかの間に接続される出力ラインと
を備える電圧変化装置。
【請求項8】
前記スイッチング手段は、光信号に基づき導通と遮断とを選択する半導体素子からなる請求項7に記載の電圧変化装置。
【請求項9】
前記電圧変化装置はさらに、
バイパスラインが接続されない抵抗を備える請求項7に記載の電圧変化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−144327(P2008−144327A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335913(P2006−335913)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】