説明

不良ノズル検出装置、不良ノズル検出方法およびコンピュータプログラム

【課題】種々のインクについて不良ノズルを精度良く検出可能な技術を提供する。
【解決手段】不良ノズル検出装置は、複数のノズルを備える印刷ヘッドによって表面に検査パターンが印刷された透明な検査用印刷媒体の前記検査パターンを読み取る読取部と、検査パターンを表面側から照明する光源と、検査用印刷媒体の裏面側に配置され、検査パターンの読み取り時において背景として読み取られる背景部と、検査パターンの読み取り結果に基づいて、複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出部と、を備える。背景部は、光源から入射した光を正反射方向に反射する光量が、他の方向に反射する光量よりも多くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置の不良ノズルを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷装置では、印刷ヘッドが備えるインク吐出用のノズルに不具合が生じた場合に、印刷媒体上に筋状の印刷不良が発生することがある。例えば、特許文献1には、透明フィルムに印刷した検査パターンを、印刷面の裏側から撮像素子で読み取ることにより不良ノズルを検出する技術が開示されている。しかし、この技術では、透明フィルムの背景として撮像される色に白色を採用しているため、例えば、白色のインクや透明のインクなどを吐出するノズルの不良を、十分な精度で検出できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―069027号公報
【特許文献2】特開2006―069028号公報
【特許文献3】特開2010―058361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、種々のインクについて不良ノズルを精度良く検出可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]不良ノズル検出装置であって、複数のノズルを備える印刷ヘッドによって表面に検査パターンが印刷された透明な検査用印刷媒体の前記検査パターンを読み取る読取部と、前記検査パターンを前記表面側から照明する光源と、前記検査用印刷媒体の裏面側に配置され、前記読取部による前記検査パターンの読み取り時において背景として読み取られる背景部と、前記読取部による前記検査パターンの読み取り結果に基づいて、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出部と、を備え、前記背景部は、前記光源から入射した光を正反射方向に反射する光量が、他の方向に反射する光量よりも多くなるように構成されている、不良ノズル検出装置。
【0007】
このような構成では、読取部による検査パターンの読み取り時にその背景となる背景部が、光源から入射した光を正反射方向に反射する光量が他の方向に反射する光量よりも多くなるように構成されているので、背景部によって正反射される光と、検査パターンによって反射(拡散反射)される光とのコントラストの違いに応じてインクの有無を検出することができる。そのため、種々のインクについて不良ノズルを精度良く検出することが可能になる。
【0008】
[適用例2]適用例1に記載の不良ノズル検出装置であって、前記検査パターンの少なくとも一部が、白インクまたは透明インクによって印刷されている、不良ノズル検出装置。
【0009】
このような構成によれば、白インクや透明インクなどの特殊なインクを吐出するノズルの不良を精度良く検出することができる。
【0010】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の不良ノズル検出装置であって、前記読取部は、前記背景部によって正反射された前記光源の正反射光が入射されないように配置されている、不良ノズル検出装置。
【0011】
このような構成であれば、読取部には、インクによって反射(拡散反射)された光が入射し、背景部によって正反射された光が入射しにくくなる。つまり、インクが存在する部分よりも背景部が暗く検出されることになる。そのため、インクが存在する部分と存在しない部分とのコントラスト比を高めることが可能になり、不良ノズルの検出精度を高めることが可能になる。
【0012】
[適用例4]適用例1または適用例2に記載の不良ノズル検出装置であって、前記読取部は、前記背景部によって正反射された前記光源の正反射光が入射されるように配置されている、不良ノズル検出装置。
【0013】
このような構成であれば、読取部には、背景部によって正反射された光が入射し、インクによって反射(拡散反射)された光が入射しにくくなる。つまり、インクが存在する部分よりも背景部が明るく検出されることになる。そのため、インクが存在する部分と存在しない部分とのコントラスト比を高めることが可能になり、不良ノズルの検出精度を高めることが可能になる。
【0014】
[適用例5]適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置であって、更に、前記検査用印刷媒体を搬送する搬送部を備え、前記読取部は、前記搬送部によって搬送されている前記検査用印刷媒体上の前記検査パターンを読み取る、不良ノズル検出装置。
【0015】
このような構成であれば、検査パターンが搬送されながら読み取られるので、読取部による検査パターンの読取結果は、搬送速度に応じた一定の範囲の平均値となる。そのため、検査パターンから読取部に入射する光の強度がその範囲において平均化されるので、精度良く吐出不良を検出することができる。また、検査用印刷媒体を搬送しながら検査パターンを読み取るので、検査速度を向上させることが可能になる。
【0016】
[適用例6]適用例1から適用例5までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置であって、前記背景部は、前記読取部によって読み取る前記検査パターンの色に応じて背景が切り換え可能に構成されている、不良ノズル検出装置。
【0017】
このような構成であれば、読み取りを行う検査パターンの色に応じて、背景を切り換えることができるので、検査パターンを読み取りやすい色や特性に背景を適宜変更することができる。よって、不良ノズルの検出精度をより高めることが可能になる。
【0018】
本発明は、上述した不良ノズル検出装置としての構成のほか、不良ノズル検出方法や、コンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例としての印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】印刷ヘッドの構成を例示する説明図である。
【図3】背景色切替機構を図1の横方向から示す説明図である。
【図4】印刷装置が行う不良ノズルの検査の流れについて示したフローチャートである。
【図5】検査パターンを例示する説明図である。
【図6】インクの種類に応じて発生する読取結果の違いについて示す説明図である。
【図7】背景色によって発生する透明インクおよびホワイトインクのドットパターンの読取結果の違いについて示す説明図である。
【図8】インクの種類と背景色との関係を示す説明図である。
【図9】検査パターンの読取結果による不良判定について示す説明図である。
【図10】背景色切替機構の変形例を示す説明図である。
【図11】背景色切替機構の他の変形例を示す説明図である。
【図12】第2実施例における印刷装置の要部を示す説明図である。
【図13】本実施例において透明インクの検査パターンを読み取った例を示す説明図である。
【図14】第3実施例における印刷装置の要部を示す説明図である。
【図15】読取センサーの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施例:
A1.印刷装置の構成:
図1は、本発明の第1実施例としての印刷装置の概略構成を示す説明図である。本実施例の印刷装置10は、インクジェット式のラインプリンターとして構成されている。印刷装置10は、制御ユニット20と、印刷ヘッド50と、インクカートリッジ51〜56と、搬送機構60と、読取機構70と、背景色切替機構80と、を備える。印刷装置10は、本願の不良ノズル検出装置に相当するものである。
【0021】
搬送機構60は、搬送ローラー62と搬送モーター64とプラテン66とを備えている。搬送モーター64は、搬送ローラー62を回転させることで、印刷ヘッド50と平板状のプラテン66との間を通過する印刷媒体Pを、搬送ローラー62の軸方向と垂直方向(以下、搬送方向と呼ぶ)に搬送する。
【0022】
インクカートリッジ51〜56は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)、および、透明(CL)のインクを備えている。なお、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクをまとめて、通常インクとも呼び、ホワイト(W)、透明(CL)のインクをまとめて特殊インクとも呼ぶ。
【0023】
印刷ヘッド50は、ラインヘッドタイプの印刷ヘッドであり、印刷媒体Pと対向する面(下面)に、それぞれのインク色毎に概ね一列に配されたインク吐出用のノズルの列が、印刷媒体Pの搬送方向に沿って配列されている。個々のノズルはピエゾ素子を備え、ピエゾ素子に加える電圧を調整することでピエゾ素子の振動を制御してインク滴を吐出する。従って、搬送機構60により搬送方向に搬送される印刷媒体P上には、印刷ヘッド50に備えられた各ノズルから吐出されたインクによるドットが形成される。これにより、通常の印刷時には、印刷媒体Pとしての用紙等に、印刷対象として入力された画像データに対応する画像が印刷される。また、後述する不良ノズルの検査時には、印刷媒体Pとしての検査用透明フィルムに、既定の検査パターンが印刷される。
【0024】
図2は、印刷ヘッドの構成を例示する説明図である。図2(A)に示すように、印刷ヘッド50は複数のヘッド58を有し、複数のヘッド58は搬送方向に垂直な方向(以下、ライン方向とも呼ぶ)に千鳥状に並んで配置されている。各ヘッド58の下面には、図2(B)に示すように、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)、透明(CL)の各インクをそれぞれ吐出するノズルの列(以下、ノズル列と呼ぶ)LK,LC,LY,LW,LCLが搬送方向に沿って配置されている。各ノズル列は複数のノズル581を備え、各ノズル581はライン方向に一定の間隔S、例えば、「720dpi」で並んでいる。また、各ヘッド58は、ライン方向に並ぶ2つのヘッドのうち、左側のヘッドの右端のノズルと、右側のヘッドの左端のノズルとのライン方向の間隔が各ノズルの一定の間隔Sと同じになるように配置されている。すなわち、印刷ヘッド50の下面では、複数のノズルがライン方向に印刷媒体Pの長さにわたって一定の間隔S(720dpi)で並んでいる。なお、本実施例では、各ノズルは、各色のインク毎に1列に配置されているとしたが、それぞれの色毎のノズルが2列以上に千鳥状に並べられて形成されているとしてもよい。また、印刷ヘッド50は、複数のヘッド58が千鳥状に並んで配置されているとしたが、ライン方向に印刷媒体Pの長さに渡って、色毎の複数のノズルがそれぞれ一列に並んで配置されている一つのヘッドで形成されているとしてもよい。
【0025】
図1の読取機構70は、読取センサー72と光源74とを備えている。光源74は、読取センサー72の読取位置に照射光を発する白色光源、例えば、蛍光灯、キセノンランプ、LED等である。本実施例では、光源74としてLEDを用いる。読取センサー72は、読取位置における反射光を受光するセンサーである。本実施例では、読取センサー72として、RGB各色の光をそれぞれ受光できるカラーの撮像素子(イメージセンサー)、例えば、カラーのCCD(Chargeーcoupled device)を用いる。
【0026】
背景色切替機構80は、読取機構70に対向して配置されており、不良ノズルの検査時において、読取センサー72の読取位置に搬送されてくる印刷媒体Pとしての検査用透明フィルムの背景色を、検査用透明フィルムに印刷されている検査パターンのインクの種類に応じて切り替える。
【0027】
図3は、背景色切替機構80を図1の横方向から示す説明図である。図1および図3に示すように、背景色切替機構80は、背景板81とリニアアクチュエーター82とを備えており、読取機構70に対向するように配置されている。背景板81は、白領域81wと黒領域81kとが搬送方向に沿って配されている。リニアアクチュエーター82は、スライドベース82SBに載置された背景板81の位置を搬送方向に沿って移動させる。これにより、不良ノズルの検査時において、読取センサー72の読取位置に搬送されてくる印刷媒体Pとしての検査用透明フィルムの背景色を、背景板81の白領域81wによる白あるいは黒領域81kによる黒のいずれかに切り替えることができる。なお、検査パターンおよび背景色の切り替えの詳細については後で説明する。
【0028】
検査パターンとして各インクによるドットが順次形成された印刷媒体Pとしての検査用透明フィルムが、搬送機構60による搬送によって、光源74が発する照射光の光路上を通過すると、光源74が読取センサー72の読取位置に対応する検査用透明フィルムの部分に照射光を照射し、検査用透明フィルムおよび背景板81を介して返ってくる反射光を読取センサー72が受光する。これにより、読取センサー72は、検査用透明フィルムに印刷された検査パターンを読み取る。
【0029】
なお、読取センサー72は、光源74との相対的な位置関係として、読取位置における印刷媒体Pや背景板81からの反射光を十分に受光できるように配置されている。読取センサー72はCCDラインセンサーで構成され、ライン方向の解像度はノズルの間隔S(720dpi)と同じである。ただし、CCDラインセンサーの解像度は、印刷ヘッド50のライン方向の解像度以上(好ましくは2倍の解像度以上)であれば可能な範囲でいくらでもよい。
【0030】
図1の制御ユニット20は、図示しないCPUとRAMとROMとによって構成されており、上述した印刷ヘッド50や搬送機構60、背景色切替機構80の動作を制御する。CPUはROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開して実行することで、画像処理部21、印刷制御部22、読取制御部23、不良検出部24として動作する。また、制御ユニット20には、印刷に関する種々の操作を行うための操作パネル30や、UI(ユーザインタフェース)を表示するための液晶ディスプレイ40等種々のインタフェースや周辺機器が接続されている。
【0031】
画像処理部21は、インタフェース(不図示)を介してコンピュータ等から入力された印刷対象の画像データ(入力画像データとも呼ぶ)や、予めROMに記憶されている検査パターンデータを印刷データに変換する画像処理を行う。また、画像処理部21は、読取制御部23を介して読取機構70から出力される信号から画像データ(以下、読取画像データとも呼ぶ)を生成する。
【0032】
印刷制御部22は、画像処理後の印刷データに基づいて、各ノズルからのインクの吐出を制御する制御信号を印刷ヘッド50に出力する。その他、印刷制御部22は、搬送機構60の動作を制御する。
【0033】
読取制御部23は、不良ノズルの検査時において、読取機構70および背景色切替機構80の動作を制御して、印刷媒体Pとしての検査用透明フィルムに印刷された検査パターンの読み取りを実行し、画像処理部21の動作を制御して、読取画像データの生成を実行する。
【0034】
不良検出部24は、読取機構70によって読み取った結果である読取画像データと、検査パターンデータとに基づいて、不良ノズルの発生の有無の判定および不良ノズルの特定を行う。
【0035】
以上説明したように、印刷装置10は、インタフェースを介して、印刷用の画像データおよび印刷枚数や印刷サイズ等の印刷に関する情報が入力されると、入力された画像データに基づく印刷処理を開始する。また、印刷装置10は、インタフェースを介して、あるいは、操作パネル30を介して、不良ノズルの検査の開始指示が入力されると、検査パターンデータに基づく印刷処理、検査用透明フィルムに印刷された検査パターンの読み取り、および、不良判定を実行する。本実施例は、この不良ノズルの検査に特徴を有しており、以下では不良ノズルの検査について説明する。
【0036】
A2.不良ノズル検査:
不良ノズルの検査は、印刷ヘッド50が備える各ノズル581からのインクの吐出状態の異常(以下、ノズル不良とも呼ぶ)を検出する処理である。ノズル不良としては、例えば、ノズル内で固化したインクによってノズルが詰まり、インクが規定量出ない状態、または全く出ない状態、逆に規定量より多く出る状態等が挙げられる。その他、ノズルが何らかの原因で変形し、規定の吐出方向にインクを吐出していない状態が挙げられる。このような、インクの吐出状態に異常を生じたノズルを不良ノズルと呼ぶ。
【0037】
本実施例の不良ノズルの検査では、以下で説明するように、印刷媒体Pとして無色の検査用透明フィルムを用いて検査パターンデータに基づく印刷を行うとともに、印刷された検査パターンを読み取り、得られた読取画像データおよび検査パターンデータに基づいて、ノズル不良が生じていないかを検出する。
【0038】
図4は、印刷装置10が行う不良ノズルの検査の流れについて示したフローチャートである。上述したように、不良ノズルの検査の指示が入力されると、印刷媒体Pとしてセットされた検査用透明フィルムに、検査パターンの印刷を実行する(ステップS10)。
【0039】
図5は、検査パターンを例示する説明図である。図5には、ブラックのノズル列LKによって形成される検査パターンを示している。本実施例の印刷ヘッド50では図2に示すように、ヘッド58が千鳥状に配されているが、以下では説明を容易にするため、図5に示すように、ライン方向にノズルを一列に並べて示している。また、ノズルの数を16本に減らし、ライン方向の右側のノズルから順に#1〜#16の番号を付している。
【0040】
印刷ヘッド50の下を搬送される印刷媒体Pに対して、奇数番号のノズル列からインクを吐出させ、その後、偶数番号のノズルからインクを吐出させることによって、一つのノズル列に対応する検査パターンを形成する。この検査パターンは搬送方向に沿うドット列で構成される。本例では、一つのドット列は100個のドットから構成される。また、ライン方向に並ぶ一つおきのノズルでドット列を形成させるため、ライン方向にノズル間隔Sの2倍の間隔(本例では360dpi)で並んだドット列群(破線で囲まれた領域)が、搬送方向に2つ並んで形成される。1つのドット列群を「検査パターン」とも呼ぶ。また、本例では、ライン方向に並ぶ一つおきのノズルで検査パターンを形成し、一つのノズル列に対して2つの検査パターンが形成される。これらの2つの検査パターンを特に区別する場合には、例えば、「奇数ノズル検査パターン」「偶数ノズル検査パターン」のように呼ぶ。なお、他のインクの検査パターンも、図5に示したブラックの検査パターンと同様である。
【0041】
上記のように検査パターンが印刷されると、読取センサー72が、搬送機構60によって搬送されている印刷媒体Pに印刷された検査パターンを読み取る(ステップS20)。このとき、読取センサー72は、所定のスキャンレートによって検査パターンの読み取りを行う。スキャンレートとは、印刷媒体Pの搬送方向に垂直な1ライン分を読み取るのに必要な時間のことをいい、例えば、7msとすることができる。この「1ライン」は、図5に示した印刷解像度における1ドット幅のことではなく、読取センサー72によって読取可能な幅のことをいう。例えば、印刷媒体Pの搬送速度が254mm/秒で、スキャンレートが7msであれば、読取センサー72によって画像を読み取っている間に、印刷媒体Pは、1.78mm搬送される。そのため、1ラインとは、この1.78mmに相当する幅をいう。例えば、搬送方向の印刷解像度が1440dpiであれば、1.78mmの幅は、およそ図5に示した1つの検査パターンに対応する100ドット幅分に相当する。よって、読取センサー72によって読み取られる読取値(階調値)は、実際には、この100ドット幅分の階調値の平均値となる。
【0042】
ステップS20において検査パターンの読み取りが行われる際には、背景色切替機構80によって、検査パターンの読み取り位置に応じたインクの種類に応じて背景色が切り替えられる。背景色については、以下で説明するように設定される。
【0043】
図6は、インクの種類に応じて発生する読取結果の違いについて示す説明図である。図6では、図の上段に示すように、白色(ホワイト)の印刷媒体に8つのノズルで8ドットのパターンをインクの種類ごとに印刷したものを、読取センサーで読み取った結果を示している。なお、黒、ホワイト、透明の各インクの場合には、読取センサーを構成するレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色光を検知する部分によって検出された階調値の平均値を検出値としている。また、シアン、マゼンタ、イエローの各インクの場合には、それぞれの補色であるレッド、グリーン、ブルーの色光を検知する部分によって検出された階調値を検出値としている。
【0044】
図からわかるように、黒、シアン、マゼンタ、イエローの各インク(通常インク)の場合には、それぞれ、白色の印刷媒体に印刷されたドットパターンの位置で、検出対象となる光が吸収されて反射光が減少するので、その変化を検出することができる。一方、ホワイトインクの場合には、背景の白とほぼ同じであるため、インクの界面での反射光の増加の影響で、背景の白による反射光に比べて、検出される階調値が若干増加する傾向にあるが、図に示すようにほとんど差が無く、ドットの有無を検出結果から判別することが難しい。同様に、透明インクの場合にも、図に示すように、ドットの有無により検出される階調値の差がほとんど無く、ドットの有無を検出結果から判別することが難しい。
【0045】
図7は、背景色によって発生する透明インクおよびホワイトインクのドットパターンの読取結果の違いについて示す説明図である。図7(A)は、上段に示した、黒(K)、ブルー(B)、グレー(Gr)、ホワイト(W)の4種類の色の印刷媒体に、8つのノズルで8ドットのパターンを透明(CL)のインクで印刷した結果を、読取センサーで読み取った結果を示している。また、図7(B)は、同様に、上段に示した、黒(K)、白(W)の2種類の色の印刷媒体に、8つのノズルで8ドットのパターンをホワイト(W)のインクで印刷した結果を、読取センサーで読み取った結果を示している。
【0046】
透明インクの場合、図7(A)からわかるように、透明インクのドットの位置での反射光に対して、ドットの無い位置、すなわち、背景色における反射光を低減して、ドットの有無で検出する反射光の強度の差を大きくすれば、透明インクのドットの有る位置と無い位置での検出する階調値の差を大きくすることができ、透明インクのドットの有無を検出しやすくなる。なお、反射光を低減する効果が最も大きいのは、図からもわかるように、黒(K)である。なぜならば、黒は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の全ての光を吸収するからである。
【0047】
ホワイトインクの場合も、透明インクの場合と同様であり、図7(B)に示すように、ホワイトインクのドットの位置での反射光に対して、ドットの無い位置、すなわち、背景色における反射光を低減して、ドットの有無で検出する反射光の強度の差を大きくすれば、ホワイトインクのドットの有る位置と無い位置での検出する階調値の差を大きくすることができ、ホワイトインクのドットの有無を検出しやすくなすることができる。なお、反射光を低減する効果が最も大きいのは、同様に、黒(K)である。
【0048】
以上の点を考慮すると、検査パターンを読み取る場合の背景色は、以下のように設定すればよいことがわかる。
【0049】
図8は、インクの種類と背景色との関係を示す説明図である。図に示すように、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の場合には、背景色をホワイト(W)とする。そして、透明(CL)およびホワイト(W)の場合には、背景色を黒(K)とする。
【0050】
なお、検査パターンは、予め、設定されており、印刷の位置も既知であるので、この情報に基づいて、読取位置に搬送されてくる印刷媒体Pの位置に応じて背景色を切り替えれば、検査パターンのインクの種類に応じて背景色を切り替えることができる。
【0051】
上述したステップS20において検査パターンの読み取りが行われると(図4参照)、次に、その読取結果を基にノズル不良が生じているか否か、および、発生している不良ノズルの特定を実行する(ステップS30)。
【0052】
図9は、検査パターンの読取結果による不良判定について示す説明図である。図9(A)は、通常インクについて、図9(B)は、ホワイト(W)インクについて、図9(C)は、透明(CL)インクについて示している。
【0053】
シアン(C)インクの場合には、読取センサー72のうちの補色であるレッド(R)光のセンサー部分で検出される光が、印刷されたドット列のある部分とない部分で大きく変化する。具体的には、図9(A)に示すように、ドット列の無い部分では、背景色の白の部分では、R光の多くが反射され、階調値Rwが検出される。一方、ドット列の有る部分では、R光の多くが吸収され、階調値Rk(<Rw)が検出される。従って、ノズル不良の生じていないノズルに対応する位置では、階調値Rkが検出され、ノズル不良の生じているノズルに対応する位置では、不良の度合いに応じて、階調値Rkよりも大きな階調値が検出される。図の例は、ノズルが詰まっていてドット列が全く印刷されない場合を示しており、この場合には、背景色と同じ階調値Rwが検出される。従って、不良判定の閾値をあらかじめ設定しておき、この閾値よりも小さい階調値が、ノズルに対応する位置で検出されるか否か調べることにより、シアン(C)のノズルにノズル不良が生じているか否かおよび不良ノズルを特定することができる。具体的には、閾値よりも小さい階調値が検出されていれば、ノズル不良は生じておらず、閾値以上の階調値が検出されていれば、ノズル不良が生じていると判断できる。
【0054】
なお、その他の通常インク、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各インクも同様である。ただし、マゼンタ(M)の場合にはG光のセンサー部分で検出される光により判断され、イエロー(Y)の場合にはB光のセンサー部分で検出される光により判断される。黒(K)の場合には、R光,G光,B(光)のセンサー部分で検出される光の平均値により判断される。また、平均値ではなく、R,G,Bそれぞれの階調値をあらかじめ定められた重み付けで加算した値を用いるようにしてもよい。
【0055】
ホワイト(W)インクの場合には、読取センサー72のうちのR光、G光、B光の各センサー部分で検出される光が、印刷されたドット列のある部分とない部分で大きく変化する。具体的には、図9(B)に示すように、ドット列の無い部分、すなわち、背景色の黒の部分では、R光、G光、B光の多くが吸収され、各色光の平均値として階調値Lkが検出される。一方、ドット列の有る部分では、R光、G光、B光の多くが反射され、階調値Lw(>Lk)が検出される。従って、ノズル不良の生じていないノズルに対応する位置では、階調値Lwが検出され、ノズル不良の生じているノズルに対応する位置では、不良の度合いに応じて、階調値Lwよりも小さな階調値が検出される。図の例では、ノズルが詰まっていてドット列が全く印刷されない場合を示しており、この場合には、背景色と同じ階調値Lkが検出される。従って、不良判定の閾値をあらかじめ設定しておき、この閾値よりも大きい階調値が、ノズルに対応する位置で検出されるか否か調べることにより、ホワイト(W)のノズルにノズル不良が生じているか否かおよび不良ノズルを特定することができる。具体的には、閾値よりも大きい階調値が検出されていれば、ノズル不良は生じておらず、閾値以下の階調値が検出されていれば、ノズル不良が生じていると判断できる。
【0056】
透明(CL)インクの場合にも、ホワイトインクの場合と同様に、読取センサー72のうちのR光、G光、B光の各センサー部分で検出される光が、印刷されたドット列のある部分とない部分で大きく変化する。具体的には、図9(C)に示すように、ドット列の無い部分、すなわち、背景色の黒の部分では、R光、G光、B光の多くが吸収され、各色光の平均値として階調値Lkが検出される。一方、ドット列の有る部分では、R光、G光、B光のうち一部が、インク界面で反射されて、階調値Lcl(>Lk)が検出される。従って、ノズル不良の生じていないノズルに対応する位置では、階調値Lclが検出され、ノズル不良の生じているノズルに対応する位置では、不良の度合いに応じて、階調値Lclよりも小さな階調値が検出される。図の例では、ノズルが詰まっていてドット列が全く印刷されない場合を示しており、この場合には、背景色と同じ階調値Lkが検出される。従って、不良判定の閾値をあらかじめ設定しておき、この閾値よりも大きい階調値が、ノズルに対応する位置で検出されるか否か調べることにより、透明(CL)のノズルにノズル不良が生じているか否かおよび不良ノズルを特定することができる。具体的には、閾値よりも大きい階調値が検出されていれば、ノズル不良は生じておらず、閾値以下の階調値が検出されていれば、ノズル不良が生じていると判断できる。
【0057】
A3.効果:
本実施例では、不良ノズルを検査する際に、無色の透明フィルムを印刷媒体として用い、これに検査パターンを印刷し、印刷した検査パターンを読取センサーで読み取る際に、読み取る検査パターンのインクの種類が、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の通常インクの場合には、背景色を白とし、ホワイト(W)、透明(CL)の特殊インクの場合には、背景色を黒として、検査パターンの読み取りを実行している。よって、種々のインクについて精度良く不良ノズルの検出を行うことが可能になる。また、本実施例では、検査パターンが印刷された検査用透明フィルムを搬送しながら不良ノズルの検査を行うので、読取センサー72による検査パターンの読取結果は、搬送速度に応じた一定の範囲の平均値となる。そのため、検査パターンから読取センサー72に入射する光の強度がその範囲において平均化されるので、インク表面における局所的な反射方向の変化等に左右されることなく精度良く吐出不良を検出することができる。また、検査用印刷媒体を搬送しながら検査パターンを読み取るので、検査速度を向上させることが可能になる。
【0058】
A4.背景色切替機構の変形例:
図10は、背景色切替機構の変形例を示す説明図である。この背景色切替機構80bは、2つの回転ローラー82bに架設されたベルト状のフィルム81bを、図示しない駆動モーターにより矢印の方向に駆動させることにより、読取センサー72の読取位置の背景色を白領域81wbによる白または黒領域81kによる黒に切り替える構造である。
【0059】
図11は、背景色切替機構の他の変形例を示す説明図である。この背景色切替機構80cは、液晶パネルにより構成されている。液晶パネルの画面の色を白または黒とすることにより、背景色を白または黒に切り替える構造である。
【0060】
以上説明したように、上記実施例の背景色切替機構80に限定されるものではなく、図10および図11に示した変形例のように、種々の構造により実現してもよい。すなわち、背景色切替機構は、読取位置で読み取られる検査パターンのインクの種類に応じて、読取位置の背景色を白または黒に切り替えることが可能な構造であればよい。
【0061】
B.第2実施例:
上述した第1実施例では、通常インクについて不良ノズルを検出する場合には、背景色をホワイトとして検査パターンの読み取りを行い、ホワイト(W)および透明(CL)の特殊インクについて不良ノズルを検出する場合には、背景色を黒として検査パターンの読み取りを行った。これに対して、第2実施例では、通常インクについて不良ノズルを検出する場合には、第1実施例と同様に、背景色をホワイトとして検査パターンの読み取りを行い、ホワイト(W)および透明(CL)の特殊インクについて不良ノズルを検出する場合には、背景を鏡面として、検査パターンの読み取りを行う。
【0062】
図12は、第2実施例における印刷装置の要部を示す説明図である。第2実施例における印刷装置10bは、概ね第1実施例と同様の構成であるが、背景色切替機構80の背景板81には、黒領域81kに替えて鏡面状の鏡面領域81mが形成されている。
【0063】
鏡面領域81mは、例えば、ガラスの片面にアルミニウムや銀などの金属を蒸着することで形成することができる。また、その他にも、プラスチックやポリエステルフィルムの表面に金属を蒸着することで形成することができる。なお、鏡面領域81mは、このような素材に限らず、鏡面領域81mから正反射方向に反射される光の光量が、他の方向に反射される光量よりも多くなるように形成されていればよい。特に、鏡面領域81mから正反射方向に反射される光の光量が、鏡面領域81mの法線方向に反射される光量の2倍以上であることが好ましい。また、例えば、光沢紙のような光沢面をもつ素材でも鏡面領域81mとして採用可能である。
【0064】
本実施例では、鏡面領域81mによって正反射された光源74からの光が、検査パターンの読み取り時に読取センサー72に入射されにくいように、読取センサー72が配置されている。換言すれば、検査パターンによって拡散反射された光源74からの光が、検査パターンの読み取り時に読取センサー72に入射されやすいように、読取センサー72が配置されている。図12に示した例では、検査パターンを構成するドットに略対向する位置に読取センサー72が配置されている。なお、正反射光が読取センサー72に入射されることを抑制するため、読取センサー72によって検査パターンを読み取る際の鏡面領域81mに対する光源光の入射角度αは、45°以上であることが好ましい。
【0065】
本実施例においても、第1実施例と同様に、図4に示した不良ノズルの検査を行う。本実施例においてこの不良ノズルの検査を行うと、特殊インク(ホワイトインクおよび透明インク)によって形成されたドットに対して光源74から光が照射された場合には、ドットの表面で拡散反射した光や、ドットの裏面から入射してドットの表面等で屈折した光が読取センサー72に入射することになり、その部分が明るく検出されることになる。これに対して、ドットの形成されていない部分では、鏡面領域81mによって正反射された光が、読取センサー72を避けるよう進行するため、その部分は、読取センサー72によって暗く検出されることになる。そのため、図4のステップS30における不良判定では、階調値が低く検出された位置に対応するノズルにノズル不良が生じていると特定することができる。
【0066】
図13は、本実施例において透明インクの検査パターンを読み取った例を示す説明図である。図13(B)には、背景を鏡面としてスキャンした検査パターンの参考イメージを示しており、図13(A)には、図13(B)に示した検査パターンを読取センサー72で読み取った結果の階調値を示している。これらの図に示すように、透明インクによってドットが形成されている部分については、R,G,Bのそれぞれの成分について大きな階調値が検出され、ドットが形成されていない部分では、R,G,Bのそれぞれについて小さな階調値が検出された。つまり、透明インクのドットが形成されている部分は明るく検出され、ドットが形成されていない部分は暗く検出された。よって、R,G,Bの階調値についてそれぞれ閾値をあらかじめ設定しておき、これらの閾値よりも小さい階調値がノズルに対応する位置で検出されるか否かを調べることにより、第1実施例と同様に、透明インク(CL)用のノズルにノズル不良が生じているか否かの判定および不良ノズルの特定を行うことができる。なお、図13には、透明インクについて検査パターンを読み取った例を示したが、ホワイトインクについても同様の読み取り結果を得ることが可能である。
【0067】
なお、本実施例では、特殊インクに限らず、通常インクについても背景を鏡面としてノズル不良を検出することが可能である。ドットが形成されていない部分が最も暗く検出され、何らかのドットが形成されていれば、その部分は明るく検出されるためである。つまり、本実施例のように背景を鏡面にすれば、種々のインクについて不良ノズルを精度良く検出することが可能である。ただし、ブラックインクについては、ドットが形成されていない部分と同様に暗く検出されてしまう場合があるため、この限りではない。
【0068】
C.第3実施例:
上述した第2実施例では、鏡面領域81mからの正反射光が入射され難い位置に読取センサー72を配置した。これに対して、第3実施例では、鏡面領域81mからの正反射光が入射されるように読取センサー72を配置する。
【0069】
図14は、第3実施例における印刷装置の要部を示す説明図である。上記のように、本実施例の印刷装置10cでは、鏡面領域81mによって正反射された光源74からの光が、検査パターンの読み取り時に読取センサー72に入射されやすいように、読取センサー72が配置されている。換言すれば、検査パターンによって拡散反射された光源74からの光が、検査パターンの読み取り時に読取センサー72に入射されにくいように読取センサー72が配置されている。なお、拡散反射光が読取センサー72に入射されにくいようにするため、読取センサー72によって検査パターンを読み取る際の鏡面領域81mに対する光源光の入射角度αは、45°以上であることが好ましい。
【0070】
本実施例においても、第1実施例と同様に図4に示した不良ノズルの検査を行う。本実施例においてこの不良ノズルの検査を行うと、特殊インクによって形成されたドットに対して光源74から光が照射された場合には、ドットの表面で拡散反射した光や、ドットの裏面から入射してドットの表面等で屈折した光が読取センサー72から外れ、その部分が暗く検出されることになる。これに対して、ドットの形成されていない部分では、鏡面領域81mによって正反射された光が、読取センサー72にそのまま入射するため、その部分は、読取センサー72によって明るく検出されることになる。そのため、図4のステップS30における不良判定では、階調値が高く検出された位置に対応するノズルにノズル不良が生じていると特定することができる。
【0071】
本実施例では、特殊インクに限らず、ブラックインクを含む通常インクについてもノズル不良を検出することが可能である。ドットが形成されていない部分が最も明るく検出され、何らかのドットが形成されていれば、その部分は暗く検出されるためである。つまり、本実施例によれば、ブラックインクを含む種々のインクについて不良ノズルを精度良く検出することが可能である。
【0072】
D.変形例:
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、以下のような変形が可能である。
【0073】
D1.変形例1:
上記実施例では、通常インクとして、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)を用いたが、それに限らず、可視光領域の波長成分の光を吸収するインクであれば、通常インクとして用いることができる。通常インクとしては、例えば、色の再現領域を広げるために用いる、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、オレンジ(Or)などの特色インクや、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)、グレー(LK)、淡グレー(LLK)などの淡インクなどを用いることができる。また、特殊インクとしては、例えば、光沢性のあるメタリックインクを採用することも可能である。その他、例えば、顔料インクや紫外線硬化型のインクを、通常インクや特殊インクとして採用することが可能である。
【0074】
D2.変形例2:
上記実施例では、通常インクの背景色を白、特殊インクであるホワイト(W)および透明(CL)の背景色を黒に切り替える場合を例に説明した。しかしながら、通常インクの背景色を白に限定する必要は無く、インクの種類に応じて、背景色を切り替えるようにしてもよい。例えば、シアン(C)はレッド(R)、マゼンタ(M)はグリーン(G)、イエロー(Y)はブルー(B)のそれぞれ補色を背景色として切り替えるようにしてもよい。このようにしても同様の効果を得ることができる。また、必ずしも、補色である必要はなく、色相環において、少なくとも、対象となるインクの色に対して補色側に位置し、補色の色の光を反射する色(少なくとも補色を含む色)を背景色として切り替えるようにすればよい。ただし、対象となるインクの色の補色を基準として±60度、より好ましくは±30度以下の範囲の色が好ましい。また、対象となるインクの色の補色が最も好ましい。このようにしたほうが、ドットにおける反射光と背景色における反射光の光の強度の差を大きくすることができるからである。
【0075】
すなわち、本発明は、読み取られる検査パターンのインクの種類に応じて、読取位置の背景色を切り替えさせて、読取位置における検査パターンの読み取りを行うようにすればよい。
【0076】
D3.変形例3:
上記実施例では、無色の検査用透明フィルムを例に説明したが、背景色とドットの反射光の強度差が検出できる程度であれば、無色でなくてもよい。
【0077】
D4.変形例4:
上記実施例では、ラインヘッドを例に説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、複数種類のインクをそれぞれ吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドであれば、どのような印刷ヘッドを用いた印刷装置にも適用可能である。
【0078】
D5.変形例5:
上記実施例における読取センサー72は、種々の構成を採用することが可能である。図15は、読取センサー72の構成例を示す説明図である。図15に示した読取センサー72は、下面に光源74が設けられた箱状の筐体72aを備え、この筐体72a内に複数の反射板72bとイメージセンサー72cとを備えている。筐体72a内では、複数の反射板72bによって、光が何度も反射され、最終的に、集光レンズ72dを通じてイメージセンサー72cに光が入射する。このような構成によれば、読取センサー72の大きさを小さく抑えることができるため、印刷装置10への実装を容易にすることが可能になる。また、被写体(検査パターン)からイメージセンサーまでの光学的な距離を長くすることができるので、被写界深度を深くすることが可能になり、ピンボケが発生することを抑制することができる。よって、不良ノズルの検出精度を高めることが可能になる。
【0079】
D6.変形例6:
上記実施例では、背景色切替機構80によって、インクの種類に応じて背景色を切り換えこととした。これに対して、背景を鏡面領域81mのみに固定し、すべてのインクについてこの鏡面領域81mを用いてノズル不良を検出することとしてもよい。
【0080】
D7.変形例7:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10,10b,10c…印刷装置
20…制御ユニット
21…画像処理部
22…印刷制御部
23…読取制御部
24…不良検出部
30…操作パネル
40…液晶ディスプレイ
50…印刷ヘッド
51…インクカートリッジ
58…ヘッド
60…搬送機構
62…搬送ローラー
64…搬送モーター
66…プラテン
70…読取機構
72…読取センサー
74…光源
80,80b,80c…背景色切替機構
81…背景板
81b…フィルム
81k,81kb…黒領域
81m…鏡面領域
81w,81wb…白領域
82…リニアアクチュエーター
82b…回転ローラー
82SB…スライドベース
581…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不良ノズル検出装置であって、
複数のノズルを備える印刷ヘッドによって表面に検査パターンが印刷された透明な検査用印刷媒体の前記検査パターンを読み取る読取部と、
前記検査パターンを前記表面側から照明する光源と、
前記検査用印刷媒体の裏面側に配置され、前記読取部による前記検査パターンの読み取り時において背景として読み取られる背景部と、
前記読取部による前記検査パターンの読み取り結果に基づいて、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出部と、を備え、
前記背景部は、前記光源から入射した光を正反射方向に反射する光量が、他の方向に反射する光量よりも多くなるように構成されている、
不良ノズル検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記検査パターンの少なくとも一部が、白インクまたは透明インクによって印刷されている、不良ノズル検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記読取部は、前記背景部によって正反射された前記光源の正反射光が入射されないように配置されている、不良ノズル検出装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記読取部は、前記背景部によって正反射された前記光源の正反射光が入射されるように配置されている、不良ノズル検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置であって、
更に、前記検査用印刷媒体を搬送する搬送部を備え、
前記読取部は、前記搬送部によって搬送されている前記検査用印刷媒体上の前記検査パターンを読み取る、不良ノズル検出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記背景部は、前記読取部によって読み取る前記検査パターンの色に応じて背景が切り換え可能に構成されている、不良ノズル検出装置。
【請求項7】
不良ノズル検出方法であって、
複数のノズルを備える印刷ヘッドによって表面に検査パターンが印刷された透明な検査用印刷媒体の前記検査パターンを、前記表面側に配置された光源によって照明しつつ前記検査用印刷媒体の裏面側に配置された背景部を背景としながら読取部によって読み取る読取工程と、
前記検査パターンの読み取り結果に基づいて、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出工程と、を備え、
前記背景部は、前記光源から入射した光を正反射方向に反射する光量が、他の方向に反射する光量よりも多くなるように構成されている
不良ノズル検出方法。
【請求項8】
不良ノズルを検出するためのコンピュータプログラムであって、
複数のノズルを備える印刷ヘッドによって表面に検査パターンが印刷された透明な検査用印刷媒体の前記検査パターンを、前記表面側に配置された光源によって照明しつつ前記検査用印刷媒体の裏面側に配置された背景部を背景としながら読取部によって読み取る読取機能と、
前記検査パターンの読み取り結果に基づいて、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出機能と、を備え、
前記背景部は、前記光源から入射した光を正反射方向に反射する光量が、他の方向に反射する光量よりも多くなるように構成されている
コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−232499(P2012−232499A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102752(P2011−102752)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】