説明

不透明化粒子およびその粒子から形成される組成物

【課題】不透明化コーティング、塗料およびプラスチックが高い隠蔽効率を有すること。
【解決手段】0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む不透明化粒子であって、この顔料粒子は少なくとも部分的にポリマーシェルに封入されており、このポリマーシェルは35nm〜200nmの計算厚さを有しており、このポリマーシェルは少なくとも第1のポリマー相と第2のポリマー相とを含み、第1のポリマーは実質的に顔料粒子の表面と接触しており、少なくとも25mmの計算シェル厚さを提供し、そして第1のポリマーは第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、不透明化粒子。この不透明化粒子を含む、例えば、コーティングもしくはプラスチックのような組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不透明化粒子(opacifying particles)および不透明化粒子を含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む不透明化粒子であって、この顔料粒子は少なくとも部分的にポリマーシェルに封入されており、このポリマーシェルは35nm〜200nmの計算厚さを有しており、このポリマーシェルは少なくとも第1のポリマー相と第2のポリマー相とを含み、第1のポリマー相は実質的に顔料粒子の表面と接触しており、少なくとも25mmの計算シェル厚さを提供し、そして第1のポリマーは第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、不透明化粒子に関し;並びにこの不透明化粒子を含む組成物に関する。また、本発明は、0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む組成物であって、この顔料粒子が少なくとも部分的に第1のポリマーのシェルに封入されており、この第1のポリマーのシェルは25nm〜200nmの計算厚さを有し、封入顔料粒子は第1のポリマーの重量を基準にして10重量%〜600重量%の第2のポリマーと接触しており、第1のポリマーは第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不透明化顔料および不透明化顔料を含む粒子は塗料およびプラスチックのような組成物に白さ、および不透明さまたは「隠蔽」をもたらす。このような顔料は、コーティングが適用される下地または基体表面を隠蔽するように覆うように、および下地または基体表面上に不透明コーティングを提供するように設計されるほとんどのコーティングに存在する。これらの顔料は全体的にもしくは部分的に不透明であるように設計されるほとんどのプラスチック中にも存在する。塗料およびプラスチックにおいては、その塗料が白色であるかまたは着色されているかにかかわらず不透明化顔料が存在する。下地面が対比色であるとしても、最小の厚みのコーティングもしくは塗料またはプラスチックを利用しつつ、コーティングまたは塗料が下地面を完全に隠すのを可能にするように、不透明化コーティング、塗料およびプラスチックが高い隠蔽効率を有することが多くの場合望まれる。
【0003】
不透明化コーティングおよびプラスチック製造者は、使用される不透明化顔料の量を最小限にしつつ隠蔽のレベルを最大にすることによって、望まれる不透明度を有する不透明化コーティング、塗料およびプラスチックを長きにわたって求めていた。具体的な理論に拘束されるものではないが、隠蔽効率は部分的にはコーティングまたはプラスチックにおける不透明化顔料の屈折率とコーティングまたはプラスチックのポリマー成分の屈折率との差の関数である。コーティングまたはプラスチックの不透明化顔料粒子とポリマー成分との屈折率の差がより大きくなる場合に、より高い光散乱効率が起こり、この屈折率の差における小さな増加が不透明度に対する有意な効果を有しうる。コーティングまたはプラスチックの不透明度は、低屈折率のポリマーを選択することにより最適化されることができるが、しかし、高屈折率のポリマーを選択することによりコーティングまたはプラスチックの他の特性が最適化されなければならない。ポリアクリラート(1.48)はポリスチレン(1.60)よりも低い屈折率を有するので、例えば、顔料としてTiOおよびバインダーとしてアクリル系ポリマーを用いて製造されるコーティングは、バインダーとしてスチレン系ポリマーを使用する同様のコーティングよりも高い不透明度を有する。しかし、スチレン系ポリマーをベースにしたコーティングはアクリル系ポリマーをベースにした同様のコーティングよりも良好な光沢、耐水性、または耐汚れ性を有することができる。本発明者は、より高い屈折率のポリマーをポリマー材料の過半量で使用するコーティングもしくはプラスチックにおいて、特定の厚さを有し、より低い屈折率のポリマーのシェルで封入された顔料粒子を利用することにより、高屈折率ポリマーの望ましい特性および高い光散乱効率の双方を有するコーティングまたはプラスチックが製造されうることを見いだした。
【0004】
国際公開第2006/037161号は、ポリマーシェルに封入された不透明化顔料TiO2を開示する。封入するポリマーシェルは2つの相を有し、アクリル系ポリマー相が顔料表面および外側アクリル系/スチレンコポリマー相と接触している。封入ポリマーがコーティング中の唯一のバインダーであるこのような封入された顔料粒子から製造されたコーティングも開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/037161号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、低屈折率アクリル系相(20nm)は薄すぎ、かつ低屈折率のアクリル系相(1.48)と高屈折率のアクリル系/スチレンポリマー相(1.50)との間の屈折率の差は小さすぎて、有意な隠蔽アドバンテージを提供することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態に従って、0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む不透明化粒子であって、前記顔料粒子は少なくとも部分的にポリマーシェルに封入されており、前記ポリマーシェルは35nm〜200nmの計算厚さを有しており、前記ポリマーシェルは少なくとも第1のポリマー相と第2のポリマー相とを含み、前記第1のポリマー相は実質的に前記顔料粒子の表面と接触しており、少なくとも25mmの計算シェル厚さを提供し、前記第1のポリマーは前記第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、不透明化粒子が提供される。
本発明の第2の形態に従って、0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む組成物であって、前記顔料粒子は少なくとも部分的に第1のポリマーのシェルに封入されており、前記第1のポリマーのシェルは25nm〜200nmの計算厚さを有しており、前記封入顔料粒子は前記第1のポリマーの重量を基準にして10重量%〜600重量%の第2のポリマーと接触しており、前記第1のポリマーは前記第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、組成物が提供される。
本発明の第3の形態に従って、0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む組成物であって、前記顔料粒子は少なくとも部分的にポリマーシェルに封入されており、前記ポリマーシェルは35nm〜200nmの計算厚さを有しており、前記ポリマーシェルは少なくとも第1のポリマー相と第2のポリマー相とを含み、前記第1のポリマー相は実質的に前記顔料粒子の表面と接触しており、少なくとも25mmの計算シェル厚さを提供し、前記第1のポリマーは前記第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明はポリマーに封入された不透明化顔料である不透明化粒子に関する。不透明化顔料粒子は0.15〜1ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する。本明細書においては、「不透明化」とは、可視光である必要はない特定の波長の光をあてたときにその粒子が不透明さを生じさせることを意味する。例えば、これに含まれる特定のナノ粒子は、可視範囲よりも低い波長の光に当てると不透明さを生じさせる。顔料粒子の形状は重要ではない。顔料粒子に好適な形状には、球形、例えば、規則的な球、偏球、長球、および不規則球;立方体形状、例えば、正立方体、および菱形;板様形状、例えば、平板、凹板、および凸板;並びに不規則形状が挙げられる。球形を有する顔料粒子は150nm〜1ミクロンの範囲、好ましくは200nm〜500nmの範囲、より好ましくは200nm〜350nmの範囲の平均直径を有する。非球形を有する顔料粒子は、好ましくは150nm〜1ミクロン、より好ましくは200nm〜500nm、最も好ましくは200nm〜350nmの、その最大寸法として定義される平均直径を有する。顔料粒子の平均直径は典型的には顔料粒子供給者によってもたらされる。
【0009】
顔料粒子は少なくとも1.8、好ましくは少なくとも1.9、より好ましくは少なくとも2.0の屈折率[n(20℃)]を有するとしても特徴付けられる。様々な材料についての屈折率はCRCハンドブックオブケミストリーアンドフィジクス(CRC Handbook of Chemistry and Physics)第80版、編集者D.R.ライド(Lide)、CRCプレス、フロリダ州、ボカ ラトン、1999、4−139〜4−146ページ。
【0010】
好適な不透明化顔料粒子には、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化鉛、硫化亜鉛、リトポン、並びにアナターゼおよびルチルのような形態の二酸化チタンが挙げられる。好ましくは、顔料粒子は二酸化チタンおよび酸化鉛から選択される。より好ましくは、顔料粒子はルチル二酸化チタンおよびアナターゼ二酸化チタンから選択される。最も好ましくは、顔料粒子はルチル二酸化チタンである。ルチルおよびアナターゼ二酸化チタンのようなある材料の2つの異なる形態を含む組成物は2つの異なる顔料を有するとみなされる。
【0011】
顔料粒子は均一な組成または2以上の相を有する不均一な組成を有することができる。ある不均一顔料粒子は、顔料粒子の一方の種類がコアを形成し、粒子のもう一方の種類がシェルを形成している、内側コアおよび周囲シェル構造を有する。このコアおよびシェル不均一顔料粒子には、完全にもしくは不完全にコアを封入するシェルを有するコア/シェル粒子;1つより多いコアを有するコア/シェル粒子;ダイポーラ(dipolar)粒子;および一方の相の複数ドメインを他方の相の表面上に有する粒子が挙げられる。二酸化チタンのような顔料粒子はシリカ、アルミナ、酸化亜鉛およびジルコニアの1種以上の少なくとも1種のコーティングを有することができる。例えば、ある実施形態においては、本発明のコーティングに使用するのに好適な二酸化チタン粒子はシリカのコーティングおよびアルミナのコーティングを有することができる。
【0012】
本発明のポリマーに封入されている不透明化顔料粒子は、これに限定されないが、国際公開第2006/037161号、米国特許第7,579,081号、および米国仮出願第61/216,584号に記載される方法をはじめとするあらゆる好適な手段によって製造されうる。好ましくは、本発明のポリマーに封入されている不透明化顔料粒子は、米国仮出願第61/216,584号に記載されるような水性媒体中に分散された顔料粒子の存在下で1以上のポリマー段が乳化重合される方法を介して製造される。
【0013】
本発明のポリマーに封入されている不透明化顔料には、35nm〜200nmの計算厚さを有するポリマーシェルに少なくとも部分的に封入されている顔料粒子が挙げられ、このポリマーシェルは少なくとも第1のポリマー相と第2のポリマー相とを含み、第1のポリマー相は実質的に顔料粒子の表面と接触しており、少なくとも25mmの計算シェル厚さを提供する。第1のポリマー相は実質的に第1のポリマーを含み、第2のポリマー相は実質的に第2のポリマーを含む。本発明の別の形態においては、ポリマーに封入されている不透明化顔料は、顔料粒子を少なくとも部分的に封入している25nm〜200nmの厚さを有する第1のポリマーシェルを含む。本明細書において、「少なくとも部分的に封入」とは、第1のポリマーが顔料粒子の表面の少なくとも一部分と接触していることを意味する。顔料粒子の封入の程度は電子顕微鏡を用いて決定されうる。本明細書において、「X%封入」とは顔料粒子の表面積のX%が第1のポリマーと接触していることを意味し、この粒子の表面積の好ましくは50%より多く、より好ましくは75%より多く、最も好ましくは100%が第1のポリマーと接触している。本明細書において「実質的に前記顔料粒子の表面と接触している」とは、第1のポリマーが顔料粒子の表面の少なくとも一部分と接触していることを意味する。顔料粒子との接触の程度は電子顕微鏡を用いて決定されうる。本明細書において、「X%封入」とは、顔料粒子の表面積のX%が第1のポリマーと接触していることを意味し、この粒子の表面積の好ましくは50%より多く、より好ましくは75%より多く、最も好ましくは100%が第1のポリマーと接触している。ポリマーシェルの計算厚さまたは第1のポリマーシェルの計算厚さは、顔料粒子上のポリマー、例えば、第1のポリマーの重量パーセント、並びに顔料粒子の平均直径から、下記式に従って計算されるものである:
(Vpp+Vfp)/Vpp=((Dpp+2ST)/Dpp)^3
Vpp=100/DENSpp
Vfp=100WPfp/DENSfp
式中、STは第1のポリマーの厚さであり、Dppは顔料粒子の平均直径であり、DENSppは顔料粒子の密度であり、DENSfpは第1のポリマーの密度であり、およびWPfpは顔料粒子上の第1のポリマーの10進数での重量パーセント、すなわち、100gの顔料粒子ごとに50gの第1のポリマーが存在している場合には、WPfp=0.50である。第1のポリマーの厚さは25nmから200nmまでであることができ;TiO2については、例えば、第1のポリマーシェルの好ましい厚さは典型的には40nm〜150nm、より好ましくは60nm〜100nmである。ポリマーシェルが1より多い相を有し、これら相のいくつかが異なる屈折率を有する場合には、より低い屈折率の相(単数または複数)が顔料表面に最も近く存在しているべきである。この場合には、より低い屈折率の相(単数または複数)は少なくとも25nm、好ましくは30nmより大きい、最も好ましくは40nmより大きい厚みを有することができ、第1のポリマー相と第2のポリマー相との屈折率の差は少なくとも0.03、好ましくは少なくとも0.035、より好ましくは少なくとも0.04、最も好ましくは0.045であることができる。
【0014】
本発明のある形態においては、例えば、コーティングまたはプラスチックのような組成物は、ポリマーシェル内に少なくとも部分的に存在するか、または第1のポリマーによって少なくとも部分的に封入されている不透明化粒子の外側に存在する第2のポリマーを含む。この第2のポリマーは第1のポリマーの重量を基準にして0重量%〜600重量%、あるいは10重量%〜600重量%、好ましくは10重量%〜200重量%、より好ましくは15重量%〜150重量%、最も好ましくは25重量%〜125重量%存在することができる。第2のポリマーの屈折率は、第1のポリマーの屈折率よりも、または第1のポリマーが1より多い相を有する場合には顔料粒子の表面と接触している第1のポリマーの相の屈折率よりも、少なくとも0.03、好ましくは少なくとも0.035、より好ましくは少なくとも0.04、最も好ましくは少なくとも0.045高いことが可能である。第2のポリマーがポリマーのブレンド、および/または複数相ポリマー粒子からなる場合には、第2のポリマーの重量はその第2のポリマーの合計重量とみなされ、第2のポリマーの屈折率は第2のポリマーの混合物の屈折率とみなされる。
【0015】
ポリマー封入顔料粒子は水性分散物として提供されることができ、あるいはそれらは粉体またはペレットの形態で固体として提供されうる。ポリマー封入顔料粒子は、例えば、蒸発乾燥、噴霧乾燥、ろ過、遠心分離、または凝集をはじめとする何らかの好適な技術によって乳化重合の水性媒体から取り出されうる。ポリマー封入顔料粒子が固体として提供される場合には、第1のポリマーのTg、または第1のポリマーが複数の相を含む場合には第1のポリマーの最外相のTgは、ポリマー封入顔料粒子が貯蔵される、輸送される、および場合によっては最終適用の前に処理されるであろう温度より高い。
【0016】
第1のポリマーに封入されており、さらに第2のポリマーにまたは第2のポリマーの存在下で封入されている不透明化顔料を含む本発明の組成物は典型的にはコーティングまたはプラスチックである。場合によっては、コーティングまたはプラスチックはエキステンダー粒子および第2の顔料粒子の1種以上も含む。
【0017】
本発明のコーティングもしくはプラスチックのバインダーはポリマー封入顔料粒子を含む連続媒体である。このバインダーは顔料粒子を封入している第1のポリマーのみからなることができるか、またはこのバインダーは封入を行う第1のポリマーと1種以上の第2のポリマーとの混合物であることができる。第1のポリマーと第2のポリマーとの双方は独立して、選択的に、ホモポリマー、コポリマー、相互侵入網目(interpenetrating network)ポリマー、および2種以上のポリマーもしくはコポリマーのブレンドである。顔料粒子を封入している第1のポリマーの屈折率よりも少なくとも0.03高い屈折率を第2のポリマーが有しなければならないことを考えれば、好適な第2のポリマーには、アクリル系(コ)ポリマー、酢酸ビニルポリマー、ビニル/アクリル系コポリマー、スチレン/アクリル系コポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエポキシド、ポリ塩化ビニル、エチレン/酢酸ビニルポリマー、スチレン/ブタジエンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
バインダーを形成する第1のポリマーおよび第2のポリマーは典型的には、フォックス(Fox)式[Bulletin of the American Physical Society 1、3ページ123(1956)]によって計算して、−60℃〜150℃の範囲のガラス転移温度を有する。コーティングまたはプラスチック組成物は場合によっては造膜助剤または可塑剤を含み、コーティングが適用されもしくは硬化される、またはプラスチック部品が形成される温度以下の有効造膜温度をポリマーに付与する。任意成分の造膜助剤の量は典型的にはポリマー固形分の重量を基準にして0〜40重量%の範囲である。
【0019】
本発明のコーティングまたはプラスチックは場合によってはエキステンダー粒子を含む。エキステンダー粒子は光を有意に散乱しない。本明細書においては、エキステンダー粒子は1.8未満かつ典型的には1.3以上の屈折率を有する。好適なエキステンダー粒子には、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、クレイ、焼成クレイ、長石、霞石、閃長岩、珪灰石、珪藻土、アルミナシリケート、膜非形成性ポリマー粒子、酸化アルミニウム、シリカ、およびタルクが挙げられる。エキステンダーの他の例には、当該技術分野において固体ビーズ顔料としても知られている固体ビーズエキステンダー、例えば、ポリスチレンおよびポリ塩化ビニルビーズが挙げられる。
【0020】
本発明のコーティングまたはプラスチックは場合によっては第2の顔料粒子を含む。第2の顔料粒子はポリマーマトリックスの屈折率よりも低い屈折率を有する。第2の顔料粒子には、空気ボイドを含むポリマー粒子のような空気ボイドを含む顔料粒子が挙げられる。空気ボイドは1に等しいまたは1に近い屈折率を有するとして特徴付けられる。1以上の空隙を含むポリマー粒子およびベシクル化ポリマー粒子のような微小球状顔料を含む第2の顔料粒子が米国特許第4,427,835号、米国特許第4,920,160号、米国特許第4,594,363号、米国特許第4,469,825号、米国特許第4,468,498号、米国特許第4,880,842号、米国特許第4,985,064号、米国特許第5,157,084号、米国特許第5,041,464号、米国特許第5,036,109号、米国特許第5,409,776号、および米国特許第5,510,422号に開示されている。
【0021】
本発明のコーティングまたはプラスチックは典型的には、コーティングまたはプラスチックの全体積を基準にして、1体積%〜50体積%、好ましくは3体積%〜30体積%、より好ましくは4体積%〜25体積%、さらにより好ましくは8体積%〜20体積%、最も好ましくは10体積%〜16体積%のポリマー封入顔料粒子の形態の顔料粒子を含む。
【0022】
本発明のコーティング組成物は場合によっては、湿潤剤、脱泡剤、レオロジー調整剤、架橋剤、染料、真珠光沢剤(pearlescent)、接着促進剤、分散剤、レベリング剤、蛍光増白剤、紫外線安定化剤、防腐剤、殺生物剤および酸化防止剤のような、コーティングに一般的に認められる他の材料を含むこともできる。
【0023】
本明細書においては、「コーティング」の例には、インク、紙コーティング;建築用コーティング、例えば、家外装および内装用塗料、木材コーティング、および金属コーティング;皮用コーティング;織物および不織物用コーティングおよび飽和剤;接着剤;粉体コーティング;およびトラフィックペイント、例えば、道路、舗道および滑走路に使用されるトラフィックペイントが挙げられる。液体コーティングは水ベースまたは溶媒ベースであることができる。コーティングが粉体コーティングである場合には、第1のポリマーのTg、またはポリマーシェルが複数の相を含む場合にはポリマーシェルの最外相のTg、並びに第2のポリマーのTgが、このコーティングが貯蔵され、輸送され、および場合によっては最終適用の前に処理されるであろう温度より高いことが好ましい。コーティングが溶媒ベースのコーティングである場合には、ポリマー封入顔料粒子の第1のポリマーはこのコーティングに利用される溶媒または溶媒の混合物に実質的に可溶性ではないことが好ましい。
以下の実施例は本発明の形態を示す。
【実施例】
【0024】
略語:
BA=アクリル酸ブチル
MMA=メタクリル酸メチル
ALMA=メタクリル酸アリル
STY=スチレン
MAA=グラシアル(Glacial)メタクリル酸
g=グラム
mm=ミリメートル
cm=センチメートル
mil=0.001インチ
【0025】
コーティングの隠蔽性(不透明度)の測定
1.5milのバードバー(Bird bar)(BYK−Gardner;コロンビア、MD)を用いて、2つの黒色剥離チャート(Leneta#RC−BC)上に2つの薄膜がドローダウンされた。25milギャップのバーを用いて黒色ビニルスクラブチャート(Lenta#P121010N)上に厚い膜がドローダウンされた。この膜は周囲温度および相対湿度で一晩乾燥させられた。カミソリの刃を用いて2つの8.3cm×10.2cmの矩形領域が各薄膜に彫り込まれた。反射率計マイクロライト(Microlight;BYK−Gardner;コロンビア、MD)によってこの乾燥膜のY−反射率が測定された;この薄膜について、4つの彫り込まれた矩形領域のそれぞれについて平均Y−反射率が決定され、彫り込まれた矩形領域は次いで、このチャートから剥ぎ取られ、0.0001gまで秤量された。次いで、それぞれの彫り込まれた矩形領域について式:
S/mil=X−1*(Y/(1−Y))ln((1−Y)/(1−Y/Y))
(式中、Xはmil単位での乾燥膜の厚さであり、Yは厚い膜のY−反射率であり、Yは薄い膜の彫り込まれた矩形領域の平均Y−反射率であり、
X=1000W/(ρ8.310.22.54)
式中、Wは彫り込まれた矩形領域の重量(g単位)であり、ρは膜の乾燥密度(g/cm単位)である)
によって、クベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)散乱係数S/milが計算された。コーティングについての平均S/milは4つの彫り込まれた矩形領域について測定されたS/mil値の平均である。平均S/milは±1.5%まで正確(1標準偏差)であるとみなされる。
【0026】
実施例1−5および比較例A
コーティング組成物の製造および評価
コーティングは表1.1に示されるポリマーを使用して製造された。このコーティングは全てTi−Pure商標R−706を用いて5PVC、すなわち、乾燥コーティングの全体積を基準にして、ポリマー封入顔料粒子の形態の顔料粒子5体積%であった。
二酸化チタンを少なくとも部分的に封入しているポリマーシェルの相1は59.2BA/39.3MMA/1MAA/0.5ALMA(屈折率=1.48)であった。
相1に対して実質的に外側のポリマーシェルの相2は60BA/39Sty/1MAA(屈折率=1.53)であった。
第2のポリマーは48BA/50Sty/2MAA(RI=1.54)であった。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明のコーティング組成物である実施例2〜5は、封入するポリマーが存在していない比較例Aよりも実質的に大きな隠蔽性を示し、その一方で実施例1は比較例Aに等しい実験誤差の範囲内である。
【0029】
実施例6−10および比較例B
コーティング組成物の製造および評価
コーティングは表6.1に示されるポリマーを使用して製造された。このコーティングは全てTi−Pure商標R−706を用いて16PVC、すなわち、乾燥コーティングの全体積を基準にして、ポリマー封入顔料粒子の形態の顔料粒子16体積%であった。
二酸化チタンを少なくとも部分的に封入しているポリマーシェルの相1は59.2BA/39.3MMA/1MAA/0.5ALMA(屈折率=1.48)であった。
相1に対して実質的に外側のポリマーシェルの相2は60BA/39Sty/1MAA(屈折率=1.53)であった。
第2のポリマーは48BA/50Sty/2MAA(RI=1.54)であった。
【0030】
【表2】

【0031】
本発明のコーティング組成物である実施例6〜10は、少なくとも部分的にTiO2を封入する低屈折率の相が存在していない比較例Bよりも有意に大きな隠蔽性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む不透明化粒子であって、
前記顔料粒子は少なくとも部分的にポリマーシェルに封入されており、前記ポリマーシェルは35nm〜200nmの計算厚さを有しており、前記ポリマーシェルは少なくとも第1のポリマー相と第2のポリマー相とを含み、前記第1のポリマーは実質的に前記顔料粒子の表面と接触しており、少なくとも25mmの計算シェル厚さを提供し、前記第1のポリマーは前記第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、不透明化粒子。
【請求項2】
0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む組成物であって、
前記顔料粒子は少なくとも部分的に第1のポリマーのシェルに封入されており、前記第1のポリマーのシェルは25nm〜200nmの計算厚さを有しており、前記封入顔料粒子は前記第1のポリマーの重量を基準にして10重量%〜600重量%の第2のポリマーと接触しており、前記第1のポリマーは前記第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、組成物。
【請求項3】
前記顔料粒子が前記封入顔料粒子の形態で、乾燥コーティングの全体積を基準にして4体積%〜25体積%の量で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
0.15ミクロン〜1.0ミクロンの平均粒子直径および少なくとも1.8の屈折率を有する顔料粒子を含む組成物であって、
前記顔料粒子は少なくとも部分的にポリマーシェルに封入されており、前記ポリマーシェルは35nm〜200nmの計算厚さを有しており、前記ポリマーシェルは少なくとも第1のポリマー相と第2のポリマー相とを含み、前記第1のポリマーは実質的に前記顔料粒子の表面と接触しており、少なくとも25mmの計算シェル厚さを提供し、前記第1のポリマーは前記第2のポリマーの屈折率より少なくとも0.03単位低い屈折率を有する、組成物。
【請求項5】
前記顔料粒子が前記封入顔料粒子の形態で、乾燥コーティングの全体積を基準にして4体積%〜25体積%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−225836(P2011−225836A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−66858(P2011−66858)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】