説明

不飽和カルボシラン含有成分を含む歯科用組成物

本発明は、a)少なくとも1個のSi−アリール結合と、少なくとも1個のケイ素原子と、少なくとも1個の不飽和部分と、零個のSi−酸素結合とを含むカルボシラン含有成分(A)と、b)開始剤(B)と、c)任意に充填剤(C)と、d)任意に、変性剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤、高分子増粘剤、界面活性剤、芳香物質、希釈剤および香料から選択された成分(D)とを含む歯科用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不飽和カルボシラン成分を含む硬化性歯科用組成物に関する。本組成物は改善された特性を有し、例えば歯科充填用材料として用いることが可能である。
【背景技術】
【0002】
市場にある歯科充填用材料は、複合材、樹脂変性ガラスイオノマーセメントおよびガラスイオノマーセメント(GIZ)に一般に分類することが可能である。複合材は、不飽和成分、特に(メタ)アクリレートの光誘導ラジカル重合を経由して通常硬化する。ガラスイオノマーセメントがセメント凝結反応によって硬化するのに対して、樹脂変性ガラスイオノマーセメント両硬化は、硬化は両方のメカニズムを用いて達成される。
【0003】
歯科用組成物の硬化が歯腔を充填するために特に有用であるグラスイオノマセメントに比べて非常に硬い材料をもたらす歯科用組成物は特に興味深い。しかし、市場にある歯科用組成物の周知された欠点は、硬化すると組成物が縮むことである。更なる欠点は、歯科用複合材料の成分の一部が加水分解に対してあまり安定でない、および/または同等の親水性であることである。従って有害な物質が硬化した組成物から長年にわたって発生し得る。
【0004】
上述した問題を解決しようとする試みが行われた。
【0005】
この点に関して、(特許文献1)には、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−1メチルエチル)ベンゼンのウレタンジ(メタ)アクリレート誘導体が記載されている。このモノマーが従来の歯科用充填材料の屈折率に適合する屈折率を有し、変色に向けた傾向がなく、材料の機械的特性を損なわずに歯科用材料中のビス−GMAに取って代わることが可能であることが述べられている。
【0006】
(特許文献2)は、シクロシロキサン系架橋性モノマー、それらのモノマー製造および重合性材料中でのそれらのモノマーの使用、特にゾルゲル縮合性シクロシロキサン(メタ)アクリレートからのポリシロキサンならびに樹脂組成物に関連している。
【0007】
(特許文献3)は、歯科用組成物のために有用な硬化性シロキサン化合物に基づく重合性材料に関連している。用いられるシロキサン化合物が低粘度を示し、高い充填剤取込みを可能にし、低い重合収縮を有する組成物につながることが記載されている。
【0008】
(特許文献4)において、多環式セグメントまたは芳香族セグメントを有するプレポリマー(メタ)アクリレートは、歯科用材料の調製のために有用であると記載されている。シロキサンモノマーが高い分子量(例えば600g/モルを上回る)を有し、高い(メタ)アクリレート官能性および低い粘度を有すると言われている。
【0009】
(特許文献5)は、ジ(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビスフェノールジメタクリレート、重合性モノマー、重合開始剤および/または増感剤、安定剤および充填剤の混合物を含む低収縮重合性歯科用材料に関連している。重合中の体積の収縮は2体積パーセント未満であることが言及されている。
【0010】
(特許文献6)には、(メタ)アクリレート部分を含む基を含むことが可能である特定の式のシランが記載されている。このシランがそれ自体でまたは塗料組成物、バルク材料、接着剤および射出成形用の組成物のための添加剤として用いることが可能であることが記載されている。
【0011】
しかし、上述した解決策は完全には満足でない。
【0012】
従って、代替品が必要とされている。改善された特性を有する代替材料が特に必要とされている。
【0013】
従って、本発明の目的は上述した問題の1つ以上を軽減することである。
【0014】
本発明の目的は、歯科分野で有用である美的特性を有する組成物を提供することでもある。
【0015】
本発明のもう1つの目的は親油性組成物を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、改善された特性を有する組成物、特に、低い収縮値を有する組成物を提供することを可能にする組成物を提供することである。
【0017】
以下のテキストで記載された組成物を提供することにより上述した目的の1つ以上を達成することが可能であることが見出された。
【0018】
驚くべきことに、(メタ)アクリレートなどの重合性基を含み、カルボシロキサン構造を含まない芳香族カルボシラン含有成分を使用すると、改善された特性を有する硬化性歯科用組成物を提供することを可能にすることが見出された。
【0019】
【特許文献1】米国特許第6,653,375B2号明細書
【特許文献2】米国特許第6,624,236B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,566,413B1号明細書
【特許文献4】国際公開第01/92271A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/095862A1号パンフレット
【特許文献6】EP第0451709A2号明細書
【特許文献7】米国特許第2003/0166816号明細書
【特許文献8】国際公開第00/38619号パンフレット
【特許文献9】米国特許第6,566,413号明細書
【特許文献10】米国特許第3,927,116号明細書
【特許文献11】米国特許第3,971,754号明細書
【特許文献12】EP第0238025A1号明細書
【特許文献13】米国特許第5,322,440A1号明細書
【特許文献14】米国特許第4,391,590号明細書
【特許文献15】米国特許第5,165,890号明細書
【非特許文献1】マルシニエク(Marciniec,B)著、「ヒドロシリル化に関する包括的ハンドブック(Comprehensive Handbook on Hydrosilylation)」、ペルガモンプレス(Pergamon Press)発行、オックスフォード(Oxford)、1992。
【非特許文献2】ベック(Beck,H.N.)、チャフィー(Chaffee,R.G.)著、J.Chem.Eng.Data 1963、8(3)、453〜454。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明は、
a)少なくとも1個のSi−アリール結合と、
少なくとも1個のケイ素原子と、
少なくとも1個の不飽和部分と、
零個のSi−酸素結合と、
を含むカルボシラン含有成分(A)と、
b)開始剤(B)と、
c)任意に充填剤(C)と、
d)任意に、変性剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤、高分子増粘剤、界面活性剤、芳香物質、希釈剤および香料から選択された成分(D)と、
を含む歯科用組成物に関する。
【0021】
本発明は以下で記載された組成物を製造する方法にも関連する。
【0022】
更に、本発明は以下で記載された組成物を使用する方法に関連する。
【0023】
カルボシラン含有成分(A)は、他の反応性化合物および/または非反応性化合物も必要ならば含んでよい歯科用材料中の反応性化合物として単独で、または他の(メタ)アクリレート官能性成分との混合物中で用いることが可能である。
【0024】
カルボシラン含有成分(A)は、提供された歯科用組成物が通常は良好な不透明度を有し、従って非常に美的であるように、同等に低い粘度と合わせて同等に高い屈折率を通常は示す。更に、本組成物は、市場にある他の歯科用組成物と比べて、硬化後に同等に低い収縮ならびに(例えば、コーヒー、お茶、赤ワインからの)水および/または水溶性染料の低い取込みを大抵示す。
【0025】
本発明の意味内の「含む(comprise)」および「含む(contain)」という用語は、機能の網羅的でないリストを導入する。同様に、「1つの」または「a」という単語は「少なくとも1つ」の意味で理解されるべきである。
【0026】
本発明による「歯科用組成物」という用語は、通常は数グラムの少量で種々の目的のために歯科分野で用いられるべき硬化性組成物である。
【0027】
本発明による「開始剤」という用語は、硬化反応、好ましくはラジカル硬化反応を開始できる物質または物質の混合物である。
【0028】
本発明による「不飽和部分」という用語は、重合性である、特にラジカル重合性である部分であって、好ましくは(メタ)アクリレート基を含む部分を意味する。
【0029】
本発明による「アリール」という用語は、芳香族部分(例えば、C6〜C14炭素原子を含む)、好ましくは、フェニル、ナフチル、アルコキシフェニル、アルコキシナフチル、ビスフェノールAエーテル、ビスフェノールFエーテルを意味する。結合されたSi−原子に加えて、アリール部分は、1または2個の置換基、好ましくはアルキル基および/またはアリールエーテル基(例えば、C1〜C8アルキル、C2〜C10アルケニル、C3〜C6シクロアルキル、C4〜C6シクロアルケニル、C6〜C10アリール)を保持することが可能である。
【0030】
カルボシラン含有成分(A)は、例えば、ヒドロシリル化反応((非特許文献1)を参照すること)を経由して合成することが可能である。
【0031】
ヒドロシリル化反応は、SiH官能性成分(i)をスキーム(I)で示された触媒の存在下でオレフィン官能性成分(ii)に添加し、新たなSi−C単結合を形成するとともにケイ素含有化合物(iii)を与える付加反応である。
【0032】
【化1】

式中、
1、R2、R3、R4=(環式)脂肪族部分または芳香族部分あるいは(環式)脂肪族芳香族部分または芳香族(環式)脂肪族部分、ここで、C原子および/またはH原子は、例えば、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることも可能であり、(メタ)アクリレート基のような官能基も含むことも可能である。
【0033】
すなわち、本発明のカルボシラン化合物(A)は、(特許文献4)(頁23〜25の調製実施例1〜5)、それに対応する(特許文献7)(頁8〜9の調製実施例1〜5)または(特許文献8)(頁26の実施例)、それに対応する(特許文献9)(欄22の調製実施例)において、例えば類似シロキサン系化合物のために記載された触媒として一般的な貴金属化合物を用いてポリSiH官能性カルボシラン成分(i)をオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分(ii)と反応させることにより一般スキーム(I)によりヒドロシリル化反応を経由して得ることが可能である。
【0034】
1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼンおよび2,4,6−トリス(ジメチルシリル)アニソールのようなポリSiH官能性カルボシラン成分(i)は、例えば(非特許文献2)によって記載されたin−situグリニャール反応を経由して合成することが可能である。
【0035】
例えば5−ビニル−2(3)−ノルボルナニル−メタクリレートのようなオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分(ii)は、例えば(特許文献10)に記載された付加反応を経由して合成することが可能であるか、または例えば(2−アリルオキシエチル)メタクリレートとして市販されている。
【0036】
本発明組成物のカルボシラン含有成分(A)は、好ましくは以下の構造要素を含む。
− Si−アリール結合:少なくとも1、2、3または4個。
− ケイ素原子:少なくとも1、2、3、4、5または6個、好ましくは2〜4個。
− 不飽和部分:少なくとも1、2、3、4、5または6個、好ましくは2〜4個。
− Si−酸素結合:零個。
− 芳香族部分:少なくとも1、2、3または4個。
− 任意に二環式部分。
− 任意にビスフェノール誘導スペーサ部分。
【0037】
カルボシラン含有成分(A)は、硬化した組成物を基準にして約1重量%ほどに低い、好ましくは約3重量%ほどに低い、より好ましくは約10重量%ほどに低いことが可能である。
【0038】
カルボシラン含有成分(A)の量は、硬化した組成物を基準にして約90重量%ほどに高い、好ましくは約65重量%ほどに高い、より好ましくは約30重量%ほどに高いことが可能である。
【0039】
開始剤(B)の量は、硬化した組成物を基準にして約0.01重量%ほどに低い、好ましくは約0.1重量%ほどに低い、より好ましくは約0.5重量%ほどに低いことが可能である。
【0040】
開始剤(B)の量は、硬化した組成物を基準にして約25重量%ほどに高い、好ましくは約10重量%ほどに高い、より好ましくは約3重量%ほどに高いことが可能である。
【0041】
充填剤(C)の量は、硬化した組成物を基準にして約3重量%ほどに低い、好ましくは約25重量%ほどに低い、より好ましくは約50重量%ほどに低いことが可能である。
【0042】
充填剤(C)の量は、硬化した組成物を基準にして約90重量%ほどに高い、好ましくは約80重量%ほどに高い、より好ましくは約75重量%ほどに高いことが可能である。
【0043】
任意の成分(D)の量は、硬化した組成物を基準にして約25重量%ほどに高い、好ましくは約15重量%ほどに高い、より好ましくは約3重量%ほどに高いことが可能である。
【0044】
本発明の歯科用組成物は、好ましくは以下の特徴の少なくとも1つを満たす。
【0045】
カルボシラン含有成分(A)の粘度は、通常、約0.1Pa*s以上、約1Pa*s以上、約2Pa*s以上であることが可能である。
【0046】
カルボシラン含有成分(A)の粘度は、通常、約80Pa*sを超えず、約20Pa*s以下または約5Pa*s以下であることが可能である。
【0047】
カルボシラン含有成分(A)の屈折率は、通常、約1.500以上、約1.510以上または約1.520以上であることが可能である。
【0048】
屈折率は、通常、約1.600を超えず、約1.580未満または約1.560未満であることが可能である。
【0049】
硬化した歯科用組成物の不透明度は、通常、約10%を上回り、約40%を上回り、または約70%を上回ることが可能である。
【0050】
不透明度は、通常、約92%を超えず、約90%未満または約88%未満であることが可能である。
【0051】
カルボシラン含有成分(A)の分子量(Mw)は、通常、約500を上回り、約800を上回り、または約1200を上回ることが可能である。
【0052】
分子量(Mw)は、通常、約10,000を超えず、約5,000未満または約2,000未満であることが可能である。
【0053】
圧縮強度は、通常、約150MPaを上回り、約200MPaを上回り、または約250MPaを上回ることが可能である。
【0054】
曲げ強度は、通常、約50MPaを上回り、約65MPaを上回り、または約80MPaを上回ることが可能である。
【0055】
特に指示がない限り、測定は以下で記載した方法により標準温度および標準圧力(「STP、すなわち23℃および1023hPa」で行った。
【0056】
カルボシラン含有成分(A)の屈折率は、「クルエス(Kruess)」AR4D装置(アッベ(Abbe)の測定原理による屈折計)で測定することが可能である。屈折率は20.0℃で測定される。屈折率は589nmの波長で測定される。
【0057】
カルボシラン含有成分(A)の粘度は、「ハーケ・ロトビスコ(Haake RotoVisco)」RV1装置(ステータP61と合わせて8000mPa*s以下の粘度に関してロータC60/1または8000mPa*sを上回る粘度に関してロータC20/1)で測定することが可能である。粘度は2つの平面と平行板(すなわち、ステータおよびロータ)との間で23℃で測定される。システムの活性化および修正後に、適切なロータを設置する。その後、ロータを下げ、ステータとロータとの間の距離を粘度測定のために(ソフトウェア「レオウィン・プロジョッブ・マネージャ・ソフトウェア・バージョン(RheoWin Pro Job Manager Softoware Version)」2.94を用いて)0.052mmに調節する。その後、ロータを上げ、測定しようとする材料をステータ上に置く(ロータ60/1で1.0mlまたはロータC20/1で0.04ml)。甚だしく遅れずに、ロータを予備調節した測定位置に下げて戻す。測定しようとする材料を23.0℃で調合する。測定のための剪断速度を少なくとも5000μNmのトルクを生じさせる値に調節する(従って、測定しようとする材料の粘度に応じて100、200、500または1000s-1の剪断速度を通常は用いる)。測定を開始し、60秒にわたり行う。粘度値(Pa*s)を測定の開始から20秒後に記録し、記録した値の平均値を粘度として与える。
【0058】
カルボシラン含有成分(A)の分子量(Mw)はGPCで決定することが可能である。適切な方法は専門家によって知られている。更に、分子量の決定は核磁気共鳴分光分析法(末端基の決定)を用いて可能である。
【0059】
硬化した歯科用組成物の不透明度は、規定高さ3.6(±0.1)mmおよび直径20(±0.1)mmの試験片によって測定することが可能である。これらは、測定しようとする材料を適切に高い環に均一に且つ泡がないように充填し、重なり面で40秒ごとに接触して、平らで透明でシリコーン油処理されたガラススライドの間に照明装置(「トリライト(Trilight)(登録商標)」、3M ESPE)によって材料に照射することによって調製される。その後、米国のハンター・ラブ・アソーシエーツ・ラボラトリー(Hunter Lab Associates Laboratory,Inc.)の色測定装置「ハンターラブ・ラブスキャン・スペクトラルカラリメータ(HunterLab LabScan Spectralcolorimeter)」(ソフトウェア、「スペックウェア・ソフトウェア・バージョン(SpecWare Software Version)」1.01)で不透明度を測定し、この装置によって不透明度を%値で与える。
【0060】
圧縮強度および曲げ強度は、ISO4049に準拠してそれぞれISO9917と同等に測定することが可能である。圧縮強度の測定のために、各材料の10個の試験片(3×3×5mm)を製造者の推奨により調製し、ユニバーサル試験機(「ズウィック(Zwick)」Z010、クロスヘッド速度4mm/分)を用いて測定をISO9917と同等に行う。圧縮強度はMPaで与えられる。曲げ強度の測定は、ユニバーサル試験機(「ズウィック(Zwick)」Z010、クロスヘッド速度2mm/分)を用いてISO4049に準拠して行う。曲げ強度はMPaで与えられる。
【0061】
本発明組成物のカルボシラン含有成分(A)は、式(A):
アリール−[Si(A)a(D−B)bn (A)
(式中、互いから独立して選択されて、
A=脂肪族部分または脂環式部分(例えば、C1〜C6、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル、好ましくはC1)あるいは芳香族部分(例えば、C6〜C14、フェニル、ナフチル、アルコキシフェニル、アルコキシナフチル、好ましくはフェニル)、
B=スペーサD上に結合された(メタ)アクリレート部分(好ましくはメタクリレート)、
D=スペーサ=以下のテキストで記載するように二環式構造要素を含むことが可能である脂肪族部分または脂環式部分(C2〜C10、好ましくはC6およびC9を有するアルカジイル)、ここで、C原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり、
Br=臭素原子、
C=炭素原子、
Cl=塩素原子、
H=水素原子、
O=酸素原子、
Si=ケイ素原子、
アリール=芳香族部分(例えば、C6〜C14、フェニル、ナフチル、アルコキシフェニル、アルコキシナフチル、ビスフェノールAエーテルまたはビスフェノールFエーテル、好ましくはフェニル)、
a+b=3、
a=0、1または2(好ましくは2)、
b=1、2または3(好ましくは1)、
n=1、2、3、4、5または6(好ましくは2〜4)である)
によって表すことが可能である。
【0062】
本発明のカルボシラン含有成分(A)は、通常、同等に低い粘度と合わせて同等に高い屈折率を有する。カルボシラン含有成分(A)は、さらに同等に高い分子量を有し得る。カルボシラン含有成分(A)は同等に高い親油性も有する場合がある。
【0063】
特定のいかなるメカニズムにも限定されること望まないで、カルボシラン含有成分(A)内の芳香族部分のゆえに、屈折率およびおそらく親油性も同等に高いことが考えられ、それは、適切な美的性を達成するとともに(例えば、コーヒー、お茶、赤ワインからの)水および/または水溶性染料の取込みによる汚れおよび/または膨潤を避けるために歯科用材料に関して多少重要であり得る。
【0064】
用いられるスペーサDの化学構造または用いられるスペーサDの種々のタイプの混合物の化学構造に応じて、カルボシラン含有成分(A)の同等に低い粘度は調節することが可能であり、それは、適切な取り扱い特性を達成するために歯科用材料に関して多少重要であり得る。
【0065】
更に、特定のいかなるメカニズムにも限定されること望まないで、カルボシラン含有成分(A)の同等に高い分子量および/またはカルボシラン化合物(A)内で用いられた(メタ)アクリレート部分の異なる反応性のゆえに、誘導された歯科用組成物の体積収縮が従来の(メタ)アクリレート複合材と比べて減少されることが考えられる。
【0066】
スペーサDは、同じ分子内で似た化学構造および/または似ていない化学構造のスペーサの異なるタイプの混合物であることが可能である。同じ分子内のスペーサDの異なるタイプの混合物の使用は、カルボシラン含有成分(A)の粘度および/または反応性および/または極性および/または屈折率ならびに剛性のような硬化した歯科用組成物の特性の注文通りの調節に関して特に興味深い。
【0067】
好ましい実施形態において、カルボシラン含有成分(A)は、カルボシラン含有成分(A)の分子構造およびカルボシラン含有成分(A)内の構造要素{アリール−[Si(A)a(D−B)bnmの数値mに応じて式(I〜IV)によって特徴付けることが可能である。
【0068】
好ましい実施形態おいて、カルボシラン含有成分(A)は、構造要素{アリール−[Si(A)a(D−B)bnmにおける分子内で唯一の芳香族部分(すなわち、m=1)および唯一のアリール−Si結合(すなわち、n=1)を含み、式(I):
B−D−E−{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (I)(指標は上で定義された通りである)
(式中、互いから独立して選択されて、
m=1、
n=1、
E=(環式)脂肪族部分(C5〜C11、好ましくはC7およびC9を有するアルカジイル)、ここで、少なくとも1個のC原子はSi原子によって置換されていてもよく、他のC原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり、
他の指標は上で定義された通りである)
によって特徴付けることが可能である。
【0069】
式(I)によるカルボシラン含有成分(A)の好ましい例を以下で示す。
式中、
【0070】
【化2】

式中、A=C1、a=2、b=1、E=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC7、アリール=フェニル。
【0071】
【化3】

式中、A=C1、a=2、b=1、E=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC7、アリール=フェニル。
【0072】
【化4】

式中、A=C1、a=2、b=1、E=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC7、アリール=フェニル。
【0073】
【化5】

式中、A=C1、a=2、b=1、E=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC7、アリール=ナフチル。
【0074】
【化6】

式中、A=C1、a=2、b=1、E=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC7、アリール=ナフチル。
【0075】
以下の化合物は、式(I)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のためにスキーム(I)により用いられ得る好ましいポリSiH官能性カルボシラン成分(i)の例である。
【0076】
【化7】


【0077】
以下の化合物は、式(I)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のために機構(I)により用いられ得る好ましいオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分(ii)の例である。
【0078】
【化8】

【0079】
更に好ましい実施形態において、カルボシラン含有成分(A)は構造要素{アリール−[Si(A)a(D−B)bnmにおける分子内の唯一の芳香族部分(すなわち、m=1)および1個を上回るアリール−Si結合(すなわち、N≧2)を含み、式(II):
{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (II)
によって特徴付けることが可能である。
式中、互いから独立して選択されて、
m=1
n=2、3、4、5または6(好ましくは2〜4)であり、
指標は上で定義された通りである。
【0080】
式(II)によるカルボシラン含有成分(A)の好ましい例を以下で示す。
式中、
【0081】
【化9】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=2、アリール=フェニル。
【0082】
【化10】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=2、アリール=フェニル。
【0083】
【化11】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=2、アリール=フェニル。
【0084】
【化12】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=3、アリール=フェニル。
【0085】
【化13】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=3、アリール=フェニル。
【0086】
【化14】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=2、アリール=フェニル。
【0087】
【化15】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=3、アリール=フェニル。
【0088】
【化16】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=4、アリール=フェニル。
【0089】
【化17】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=2、アリール=ナフチル。
【0090】
【化18】

式中、A=C1、a=2、b=1、n=2、アリール=ナフチル。
【0091】
以下の化合物は、式(II)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のためにスキーム(I)により用いられる好ましいポリSiH官能性カルボシラン成分(i)の例である。
【0092】
【化19】


【0093】
以下の化合物は、式(II)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のためにスキーム(I)により用いられる好ましいオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分(ii)の例である。
【0094】
【化20】

【0095】
更に好ましい実施形態において、カルボシラン含有成分(A)は、構造要素{アリール−[Si(A)a(D−B)bnmにおける分子内で1個を上回る(すなわち、m≧2)芳香族部分を含み、式(III):
F−{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (III)
によって特徴付けることが可能である。
式中、互いから独立して選択されて、
m=2、3または4(好ましくは2)、
n=1、2、3、4、5または6(好ましくは2)、
F=(環式)脂肪族部分(C0〜C25、好ましくはC0〜C9を有するアルカジイル)、ここで、C原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり(例えば、FはOであることが可能である)、
指標は上で定義された通りである。
【0096】
式(III)によるカルボシラン含有成分(A)の好ましい例を以下で示す。
式中、
【0097】
【化21】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=1、F=CがOによって置換されているC1、アリール=フェニル。
【0098】
【化22】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=1、F=C1、アリール=フェニル。
【0099】
【化23】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=1、2、F=C3、アリール=フェニル。
【0100】
【化24】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、F=C3、アリール=フェニル。
【0101】
【化25】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、F=C3、アリール=フェニル。
【0102】
【化26】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、F=C3、アリール=フェニル。
【0103】
【化27】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、F=CがOによって部分的に置換されているC7、アリール=フェニル。
【0104】
【化28】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、F=CがOによって部分的に置換されているC5、アリール=フェニル。
【0105】
【化29】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=3、n=2、F=CがOによって部分的に置換されているC8、アリール=フェニル。
【0106】
【化30】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=4、n=2、F=CがOによって部分的に置換されているC9、アリール=フェニル。
【0107】
以下の化合物は、式(III)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のためにスキーム(I)により用いられる好ましいポリSiH官能性カルボシラン成分(i)の例である。
【0108】
【化31】


【0109】
以下の化合物は、式(III)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のためにスキーム(I)により用いられる好ましいオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分(ii)の例である。
【0110】
【化32】

【0111】
もう1つの好ましい実施形態において、カルボシラン含有成分(A)は、構造要素{アリール−[Si(A)a(D−B)bnmにおいてのみならず分子内で1個を上回る芳香族部分を含み、式(IV):
G−{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (IV)
によって特徴付けられることが可能である。
式中、互いから独立して選択されて、
m=2、3または4(好ましくは2)
n=1、2、3、4、5または6(好ましくは2〜4)
G=(環式)脂肪族部分または芳香族部分あるいは(環式)脂肪族芳香族部分または芳香族(環式)脂肪族部分(C1〜C100、好ましくはC3〜C63を有するジイル)、ここで、C原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり、
指標は上で定義された通りである。
【0112】
式(IV)によるカルボシラン含有成分(A)の好ましい例を以下で示す。
式中、
【0113】
【化33】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=C3、アリール=フェニル。
【0114】
【化34】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=C3、アリール=フェニル。
【0115】
【化35】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがOによって部分的に置換されているC10、アリール=ナフチル。
【0116】
以下の化合物は、式(IV)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のために機構(I)により用いられる好ましいポリSiH官能性カルボシラン成分(i)の例である。
【0117】
【化36】

【0118】
更に好ましい実施形態において、式(IV)によるカルボシラン含有成分(A)は、式(IVa)(指標は上で定義された通りである)によって表すことが可能である。
【0119】
【化37】

式中、
p=0、1、2、3または4、
o=0、1、2、3、4または5、
Q=HまたはCH3
R、S=H、CH3、フェニルまたはC5〜C9アルカジイル(例えば、R+S=(CH25、CH2−CH(CH3)−CH2−CH2−CH2、CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−CH2、CH2−C(CH32−CH2−CH(CH3)−CH2)、
T、U=HまたはCH3
V、W、X、Y=H、BrまたはCl
指標は上で定義された通りである。
【0120】
式(IVa)によるカルボシラン含有成分(A)の好ましい例を以下に示す。
【0121】
【化38】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC49、アリール=フェニル。
【0122】
【化39】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC59、アリール=フェニル。
【0123】
【化40】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがBr、OおよびSiによって部分的に置換されているC57、アリール=フェニル。
【0124】
【化41】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがBr、OおよびSiによって部分的に置換されているC63、アリール=フェニル。
【0125】
もう1つの実施形態において、o=0の式(IVa)によるカルボシラン含有成分(A)は、式(IVb)(指標は上で定義された通りである)によって表すことが可能である。
【0126】
【化42】

式中、
指標は上で定義された通りである。
【0127】
式(IVb)によるカルボシラン含有成分(A)の好ましい例を以下で示す。
【0128】
【化43】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC29、アリール=フェニル。
【0129】
【化44】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがOおよびSiによって部分的に置換されているC34、アリール=フェニル。
【0130】
【化45】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがBr、OおよびSiによって部分的に置換されているC33、アリール=フェニル。
【0131】
【化46】

式中、A=C1、a=2、b=1、m=2、n=2、G=CがBr、OおよびSiによって部分的に置換されているC37、アリール=フェニル。
【0132】
以下の化合物は、式(IVa)および(IVb)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のためにスキーム(I)により用いられる好ましいポリSiH官能性カルボシラン成分(i)の例である。
【0133】
【化47】


【0134】
これらのポリSiH官能性カルボシラン成分(i)は、例えば、SiH化合物(i)の合成のためにスキーム(I)により用いられる非ケイ素含有ジオレフィン前駆体(ia)とポリSiH官能性カルボシラン成分(ib)のヒドロシリル化反応を経由して合成することが可能である。
【0135】
非ケイ素含有ジオレフィン前駆体(ia)の好ましい例は次の通りである。
【0136】
【化48】










【0137】
好ましいポリSiH官能性カルボシラン成分(ib)の例は次の通りである。
【0138】
【化49】

【0139】
以下の化合物は、式(IV)、(IVa)および(IVb)による要求事項を満たすカルボシラン含有成分(A)の合成のためにスキーム(I)により用いられる好ましいオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分(ii)の例である。
【0140】
【化50】

【0141】
有用な開始剤(B)は、組成物のカルボシラン化合物(A)の硬化を開始させることが可能である。こうした開始剤は、光硬化性またはレドックス硬化性であることが可能である。開始剤の両方のタイプは当業者に周知されている。
【0142】
光開始剤の例は、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、アシルホスフィン酸化物あるいは脂肪族および芳香族の1,2−ジケトン化合物、例えば、樟脳キノンであり、光重合は第三アミンまたは有機亜リン酸などの活性剤の添加によって促進させることが可能である。
【0143】
レドックスメカニズムを経由して重合を開始させるために適する開始剤系は、例えば、過酸化物/アミン酸誘導体系および過酸化物/バルビツル酸誘導体系である。
【0144】
こうした開始剤系を用いる時、開始剤(例えば過酸化物)と触媒成分(例えばアミン)を別々にしておくことは適切である。2つの成分は、通常、用いる直前に互いに均質に混合される。
【0145】
本発明の組成物は、石英、粉砕ガラス、シリカゲルならびに発熱性珪酸および沈降珪酸またはそれらの粒体のような充填剤(C)、好ましくは無機充填剤も含む。X線不透明充填剤も少なくとも部分的に好ましくは用いられる。これらは、例えばX線不透明ガラス、すなわち、(例えば、(特許文献11)による)例えば、ストロンチウム、バリウムまたはランタンを含有するガラスであることが可能であるか、または充填剤の一部は、(例えば、(特許文献12)による)三弗化イットリウム、ヘキサフルオロジルコン酸ストロンチウムまたは希土類金属の弗素化物などのX線不透明添加剤からなる。ポリマーマトリックスにより良く導入するために、無機充填剤を疎水化することが有益である。通例の疎水化剤は、シラン、例えば、(3−メタクロイルオキシプロピル)トリメトキシシランである。充填剤は、20μm未満、好ましくは5μm未満、特に2μm未満の平均粒径および150μm、好ましくは70μm、特に25μmの上限粒度を好ましくは有する。こうした充填剤は、組成物の約3〜約90重量%、特に約25〜約80重量%または約50〜約75重量%の量で存在することが可能である。
【0146】
石英、クリストバライト、珪酸カルシウム、珪藻土、珪酸ジルコニウム、ベントナイトなどのモンモリロナイト、ゼオライト(アルミニウム珪酸ナトリウムなどのモレキュラーシーブが挙げられる)、酸化アルミニウムまたは酸化亜鉛あるいはそれらの混合酸化物などの金属酸化物粉末、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、プラスター、ガラスおよびプラスチック粉末などの非強化用充填剤も用いてよい。
【0147】
適する充填剤は、例えば、発熱性珪酸または沈降珪酸およびシリカアルミナ混合酸化物などの強化用充填剤も含む。上述した充填剤は、例えば、オルガノシランまたはシロキサンで処理することにより、またはヒドロキシル基をアルコキシ基にエーテル化することにより疎水化することが可能である。充填剤の1つのタイプまたは少なくとも2種の充填剤の混合物も用いることが可能である。
【0148】
強化用充填剤と非強化用充填剤の組み合わせは特に好ましい。この点に関して、強化用充填剤の量は、約1〜約10重量%まで、特に約2〜約5重量%まで異なることが可能である。
【0149】
指定された全体範囲の差、すなわち約2〜約89重量%は、非強化用充填剤によって占められる。
【0150】
表面処理によって好ましくは疎水化された熱分解で調製された高度に分散した珪酸は強化用充填剤として好ましい。表面処理は、例えば、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルシクロテトラシロキサンまたはポリメチルシロキサンで行うことが可能である。
【0151】
特に好ましい非強化用充填剤は、表面処理されることが可能である石英、クリストバライト、炭酸カルシウムおよびアルミニウム珪酸ナトリウムである。表面処理は、強化用充填剤の場合に記載されたのと同じ方法で一般に行うことが可能である。
【0152】
任意に、安定剤、変性剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤または希薄剤、高分子増粘剤、界面活性剤および希釈剤のような成分(D)を単独で、または適宜混合して添加することが可能である。
【0153】
上述したカルボシラン含有成分(A)は、不飽和基、特に(メタ)アクリレート基のラジカル重合を好ましくは経由して硬化可能である歯科用組成物中のモノマーとして用いることが可能である。
【0154】
本発明の歯科用組成物は、例えば、歯科充填用材料、歯冠材料および架工義歯材料、ベニヤ材料、インレーまたはアンレーとして用いることが可能である。
【0155】
本発明の歯科用組成物は、1パート混合物または2パート混合物として提供することが可能である。これは、通常は用いられる開始剤に応じて決まる。開始剤が光硬化性である場合、歯科用組成物は1パート混合物として提供することが可能である。開始剤がレドックス硬化性である場合、歯科用組成物は2パート混合物として提供するべきである。
【0156】
従って、本発明は、ベースパート(I)および触媒パート(II)を含む要素からなるキットにも関連する。ここで、ベースパート(I)は、カルボシラン含有成分(A)および充填剤(C)を含み、触媒パート(II)は開始剤(B)を含む。ここで、成分(D)は、ベースパートまたは触媒パート中に存在するか、あるいはベースパート及び触媒パート中に存在する。
【0157】
本発明の歯科用組成物は、容器またはカートリッジ、好ましくは歯科用コンプル中に通常は包装される。こうしたコンプルの例は、(特許文献13)、(特許文献14)または(特許文献15)において記載されている。
【0158】
本発明は、
a)テキストに記載されたようにカルボシラン含有成分(A)を含む歯科用組成物を提供する工程と、
b)前記歯科用組成物を表面に被着させる工程と、
c)前記歯科用組成物を硬化させる工程と、
を含む歯科用組成物を用いる方法にも関連する。
表面は、通常、歯、歯冠、または架工義歯の表面である。
【0159】
本発明は、
a)上述したように成分(A)、(B)、任意に(C)および任意に(D)を提供する工程と、
b)工程a)の成分を混合する工程と、
を含む硬化性歯科用組成物を製造する方法にも関連する。
ここで、成分(A)はヒドロシリル化反応を経由して得ることができる。
【0160】
ヒドロシリル化反応は、上述したようにポリSi−H官能性カルボシラン成分(i)とオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分(ii)を反応させることを含む。
【実施例】
【0161】
本発明を以後実施例によって説明する。実施例は例示目的のみのためであり、本発明を限定することを意図していない。
【0162】
表1に記載された化合物を上に記載した参考文献により調製し、それらの屈折率および粘度を測定した。
【0163】
【表1】

【0164】
本発明によるカルボシラン化合物を含む歯科用組成物および最先端技術を用いた参考文献化合物を含む歯科用組成物を調製し、それらの不透明度を測定した。
【0165】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1個のSi−アリール結合と、
少なくとも1個のケイ素原子と、
少なくとも1個の不飽和部分と、
零個のSi−酸素結合と、
を含むカルボシラン含有成分(A)と、
b)開始剤(B)と、
c)任意に充填剤(C)と、
d)任意に、変性剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤、高分子増粘剤、界面活性剤、芳香物質、希釈剤および香料から選択された成分(E)と、
を含む歯科用組成物。
【請求項2】
a)成分(A)が約1.500を上回る屈折率を有する、
b)成分(A)が約0.1Pa*sを上回る粘度を有する、
c)成分(A)が約500を上回る分子量を有する、
d)硬化した組成物の不透明度が約10%を上回る、
e)硬化した組成物の圧縮強度が約150MPa以上である、
f)硬化した組成物の曲げ強度が約50MPa以上である、
の内の少なくとも1つの要求事項を満たす、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
全組成物を基準にして、
a)カルボシラン含有成分(A)が少なくとも1重量%の量で存在し、
b)開始剤(B)が少なくとも0.01重量%の量で存在し、
c)任意の充填剤(C)が少なくとも3重量%の量で存在し、
d)任意の成分(D)が25重量%未満の量で存在する、
請求項1または2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
成分(A)が、式(A):
アリール−[Si(A)a(D−B)bn (A)
(式中、互いから独立して選択されて、
A=脂肪族部分または脂環式部分(C1〜C6)あるいは芳香族部分(C6〜C14)、
B=スペーサD上に結合された(メタ)アクリレート部分、
D=二環式構造要素を含むことが可能である脂肪族部分または脂環式部分(C2〜C10を有するアルカジイル)、ここで、C原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり、
Br=臭素原子、
C=炭素原子、
Cl=塩素原子、
H=水素原子、
O=酸素原子、
Si=ケイ素原子、
アリール=芳香族部分(C6〜C14)、
a+b=3、
a=0、1または2、
b=1、2または3、
n=1、2、3、4、5または6である)
によって表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
化合物(A)が、式(I):
B−D−E−{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (I)
(式中、互いから独立して選択されて、
m=1、
n=1、
E=(環式)脂肪族部分(C5〜C11を有するアルカジイル)、ここで、少なくとも1個のC原子はSi原子によって置換されていてもよく、他のC原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり、
他の指標は請求項4で記載された通りである);
式(II):
{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (II)
(式中、互いから独立して選択されて、
m=1、
n=2、3、4、5または6であり、
他の指標は請求項4で記載された通りである);
式(III):
F−{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (III)
(式中、互いから独立して選択されて、
m=2、3または4、
n=1、2、3、4、5または6、
F=(環式)脂肪族部分(C0〜C25を有するアルカジイル)、ここで、C原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり、
他の指標は請求項4で記載された通りである);
または式(IV):
G−{アリール−[Si(A)a(D−B)bnm (IV)
(式中、互いから独立して選択されて、
m=2、3または4、
n=1、2、3、4、5または6、
G=(環式)脂肪族部分または芳香族部分あるいは(環式)脂肪族芳香族部分または芳香族(環式)脂肪族部分(C1〜C100を有するジイル)、ここで、C原子および/またはH原子は、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されていることが可能であり、
他の指標は請求項4で記載された通りである);
の1つによって表される、請求項4に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
化合物(A)が、式(IVa)および(IVb)
【化1】

(式中、互いから独立して選択されて、
p=0、1、2、3または4、
o=0、1、2、3、4または5、
Q=H、CH3
R、S=H、メチル、エチル、フェニルまたはアルカジイルC5〜C8
T、U=H、メチルまたはエチル、
V、W、X、Y=H、Br、ClまたはFであり、
他の指標は請求項4で記載された通りである)、
の1つによって表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
カルボシラン含有成分(A)が、
【化2】


(式中、MA=
【化3】

である)
から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
開始剤(B)が光硬化開始剤またはレドックス硬化開始剤あるいは両方の組み合わせを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
充填剤(C)が強化用充填剤および/または非強化用充填剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
容器またはカートリッジに充填された、請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項11】
ベースパート(I)および触媒パート(II)を含む要素からなるキットであって、該ベースパート(I)がカルボシラン含有成分(A)を含み、該触媒パート(II)が開始剤(B)を含み、成分(C)および(D)が該ベースパートまたは該触媒パート中に存在するか、あるいは該ベースパート及び該触媒パート中に存在し、成分(A)、(B)、(C)および(D)は上の請求項1〜9で記載されている通りであるキット。
【請求項12】
a)上の請求項1〜9に記載の化合物(A)、(B)、任意に(C)および任意に(D)を提供する工程と、
b)工程a)の化合物を混合する工程と、
を含む歯科用組成物を製造する方法であって、成分(A)が、ヒドロシリル化反応を経由して得られる方法。
【請求項13】
前記ヒドロシリル化反応がポリSi−H官能性カルボシラン成分をオレフィン置換(メタ)アクリレート部分含有成分と反応させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
歯科充填用材料、歯冠材料および架工義歯材料、ベニヤ材料、インレーまたはアンレーとして請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科用組成物を用いる方法。
【請求項15】
a)カルボシラン化合物(A)および開始剤(B)を含む歯科用組成物を提供する工程と、
b)該歯科用組成物を表面に被着させる工程と、
c)該歯科用組成物を硬化させる工程と、
を含む方法における歯科用材料を調製するための請求項1〜7のいずれか1項に記載のカルボシラン含有成分(A)の使用。

【公表番号】特表2008−505939(P2008−505939A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520668(P2007−520668)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007746
【国際公開番号】WO2006/005363
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504169278)スリーエム イーエスピーイー アーゲー (43)
【Fターム(参考)】