不飽和ニトリルの蒸留方法及び蒸留装置、並びに不飽和ニトリルの製造方法
【課題】アクリロニトリル等の不飽和ニトリルを工業的に製造する際に、不飽和ニトリル及びその副生成物の回収・精製工程における回収塔の安定な運転を実現し得る、不飽和ニトリルの蒸留方法を提供すること。
【解決手段】
不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、
第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法。
【解決手段】
不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、
第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ニトリルの蒸留方法及び蒸留装置、並びに不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリルは、多種の不飽和ニトリルの中でも、入手できる有機化学中間体の最も重要なものの一つであり、広範な生成物、プラスチック、合成ゴム、合成繊維、土壌調整剤等の製造における主要な中間体として用いられている。多くの用途において、アクリロニトリルは高純度でなければならず、このため、商業的に流通するアクリロニトリルには、厳密な製品規格がある。
【0003】
プロピレン及び/又はプロパンとアンモニアと酸素とからアクリロニトリルを製造する工業的生産方法では、反応の流出物が、アクリロニトリルに加えてかなりの量のシアン化水素及びアセトニトリルを副生物として含有し、更にスクシノニトリル及びその他のニトリル類などの不純物を含有している。流出物と該流出物に含まれている副生物及び不純物との正確な組成は、アンモ酸化の反応条件及び触媒次第でかなりのばらつきを生じる。別の不飽和ニトリル製造方法の流出物も、同様に種々の副生物及び不純物を含有している。
【0004】
アンモニア及び酸素を用いるプロピレンの接触アンモ酸化によるアクリロニトリルの製造においては、副生成物の1つとして、粗製アセトニトリルが生成される。粗製アセトニトリルは、アセトニトリルの他にシアン化水素、アクリロニトリル、アセトアルデヒド、アセトン、メタノール、アクロレイン、オキサゾール、シス−及びトランス−クロトノニトリル、メタクリロニトリル並びにアリルアルコールを含み得る。粗製アセトニトリルの成分の相対的な割合は、種々の条件に依存して広範囲に変化し得る。かつて、粗製アセトニトリルは焼却によって処分された。しかし、近年では、アセトニトリルは回収され、精製、販売されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不飽和ニトリルの製造は長年に亘り工業的に実施されているが、実質的な利益を伴う改良の余地がある。これらの改良の一つは、製品規格の逸脱の減少である。不飽和ニトリルの工業的生産において、不飽和ニトリル及びその副生成物の回収・精製工程で、工程内の回収塔(蒸留塔)を安定に運転することは、製品の品質基準、つまりは不純物の含有量を低減するうえで重要であり、改善策が望まれている。
例えば、プロピレン及び/又はプロパン、アンモニア及び分子状酸素を反応させてアクリロニトリルを製造するプロセスにおいて、生成したアクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸から、アセトニトリルを分離し、アクリロニトリル及び青酸を回収するための回収塔がある。この回収塔の塔頂からアクリロニトリル及び青酸を回収するが、このときアセトニトリルを同伴させないように運転することが、製品アクリロニトリルの規格外品をつくらないために重要である。また同時に、回収塔の塔底から余剰水を抜き出し廃水処理設備で処理するが、この塔底液中にアクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸を混入させないように運転することが廃水処理費用を低減するために重要である。
上記事情に鑑み、本発明は、アクリロニトリル等の不飽和ニトリルを工業的に製造する際に、不飽和ニトリル及びその副生成物の回収・精製工程における回収塔の安定な運転を実現し得る、不飽和ニトリルの蒸留方法及び蒸留装置を提供することを目的とする。
さらには、アクリロニトリル等の不飽和ニトリルを工業的に製造する際に、不飽和ニトリル及びその副生成物の回収・精製工程において、回収塔を安定に運転することにより、高純度の不飽和ニトリルを長期間に亘って得ることのできる、不飽和ニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
通常、回収塔の中段部は塔頂及び塔底と比較し温度の変動が激しく、安定運転への影響が大きい。中段部の温度が管理温度より高い場合、塔頂よりアセトニトリルが溜出し易くなり、中段部の温度が管理温度より低い場合、塔底よりアクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸が出易くなる。この変動の激しい部分の温度を検出して、回収塔のリボイラーに供給する熱源流量を制御することで、中段部の温度変動を小さくすることができると考えられる。しかしながら、回収塔のリボイラーに供給する熱源流量は多量であるので、この流量を制御すると回収塔の各部分の温度が変動し、中段部の温度を一定にすることは難しい。
従来、図16に示すように、回収塔の中段部の温度制御は、再沸騰器2の熱源流量調整弁19で実施してきた。流量調整弁19の制御は、回収塔中段部の温度計15の測定値見合いで行うか、流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御してきた。しかし、このような制御をもってしても、中段部の温度を一定に保つのは難しい。
また、従来、図17に示すように、回収塔の中段部の温度制御は、補助沸騰器3の熱源流量調整弁19で実施してきた。補助沸騰器3は再沸騰器2から流出した塔底流の一部を再加熱し、ライン13を通じて再沸騰器2に戻す。流量調整弁19の制御は、回収塔中段部の温度計15の測定値見合いで行うか、流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御してきた。しかし、このような制御をもってしても、中段部の温度を一定に保つのは難しい。
本発明者は、回収塔の温度制御方法を鋭意検討した結果、回収塔に第一及び第二の加熱経路を接続し、前記第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%に制御することにより、回収塔の中段部の温度変動を小さくできることを見いだし本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、
第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法。
[2]
前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から水蒸気を前記回収塔に供給する、上記[1]記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
[3]
前記水蒸気を前記回収塔の下部に供給する、上記[2]記載の蒸留方法。
[4]
前記第二の加熱経路に水蒸気を熱媒とする再沸騰器が設けられており、前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から前記再沸騰器によって加熱した塔底流及び/又は塔内流を前記回収塔に供給する、上記[1]記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
[5]
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気とを供給する工程を含む方法。
[6]
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気を熱媒とする再沸騰器により加熱した塔底流及び/又は塔内流とを供給する工程を含む方法。
[7]
回収塔と、前記回収塔に接続された第一及び第二の加熱経路とを有する蒸留装置であって、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量が、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%である蒸留装置。
[8]
前記第二の加熱経路が蒸気生成装置であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記蒸気生成装置によって前記塔底流に由来しない水蒸気が生成される、上記[7]記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
[9]
前記水蒸気は前記回収塔の下部に供給される、上記[8]記載の蒸留装置。
[10]
前記第二の加熱経路が水蒸気を熱媒とする再沸騰器であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記再沸騰器によって塔底流及び/又は塔内流が加熱される、上記[7]記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
[11]
前記第二の再沸騰器によって塔底流及び/又は回収塔の下部の塔内流を再加熱して前記回収塔に供給する、上記[10]記載の蒸留装置。
[12]
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、再沸騰器及び蒸気生成装置が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記蒸気生成装置で生成した水蒸気が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
[13]
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、第一及び第二の再沸騰器が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記第一の再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記第二の再沸騰器は水蒸気を熱媒としており、前記第二の再沸騰器で再加熱された塔底流及び/又は塔内流が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蒸留方法により、不飽和ニトリルの工業的製造プロセスにおいて、回収塔の塔内温度変動を抑制した安定運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の蒸留装置の一例を示す概略図である。
【図2】本実施形態の蒸留装置の別の例を示す概略図である。
【図3】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図4】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図5】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図6】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図7】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図8】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図9】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図10】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図11】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図12】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図13】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図14】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図15】アンモニア及び酸素を用いるプロピレンの接触アンモ酸化によるアクリロニトリル製造プロセスの概略図である。
【図16】従来の蒸留装置の一例を示す概略図である。
【図17】従来の蒸留装置の別の例を示す概略図である。
【図18】実施例1における水蒸気を供給した回収塔の59段温度の経時変化を示す図である。
【図19】比較例1における水蒸気を供給していない回収塔の59段温度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
本実施形態における不飽和ニトリルの蒸留方法は、不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法である。
また、本実施形態における不飽和ニトリルの製造装置は、回収塔と、前記回収塔に接続された第一及び第二の加熱経路とを有する製造装置であって、前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量が、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%である蒸留装置である。
【0012】
図1は、本実施形態の蒸留装置の一例を示す概略図であり、アクリロニトリルを製造するプロセスにおいて、生成したアクリロニトリル、アセトニトリル、青酸及び水から、アセトニトリルを分離回収するための蒸留装置の一例を示す。回収塔1は第一及び第二の加熱経路が接続され、両加熱経路から熱量を供給されるようになっている。回収塔1には導入ライン4が接続されており、反応器(図示せず)で生成したガスを水に吸収させた水性混合物が導入ライン4を通じて回収塔1に入る。導入ライン4が回収塔1に接続される位置は、導入液の組成と回収塔内の組成が最も近くなるように設定するのが一般的である。
ライン4より回収塔1に供給される水性混合物中のアクリロニトリルの典型的な濃度は5〜15wt%、好ましくは5〜10wt%である。供給される水性混合物流量は、アクリロニトリルの生産量に依存するが、工業的に効率的にアクリロニトリルを生産する観点で、アクリロニトリル生産量1Tに対して2.5〜30Tとすることが好ましい。
【0013】
蒸留装置には再沸騰器2が設けられており、塔底流は塔底ライン6を通じて再沸騰器2に入り、ライン8を通じて塔底部に戻される(第一の加熱経路)。回収塔1の底部1段に接続されたライン10を通して塔内流が抜き出され、温度を下げた後、回収塔1の塔頂部にソルベント水として導入される。塔内液の温度降下により生じた熱は、プロセス内の熱交換器11の熱源として使用するのが好ましい。回収塔1では抽出蒸留によりアセトニトリルが抽出分離され、塔頂からライン5を通してアクリロニトリル、青酸及び水が抜き出され、塔サイドからライン9を通してアセトニトリルが抜き出される。
ライン9の好ましい位置は、回収塔1に供給される溶液に含まれる各成分と、その比率を想定し、各成分の沸点等を基に最適化することでおよそ決定することができる。このような計算を行うための計算機プログラムはよく知られており、回収塔の設計に使われている。一般にアセトニトリルの塔内濃度が最大となる段数の前後5段の範囲内にライン9を接続するのが好ましい。
【0014】
回収塔1の内部構造物は特に限定されず、原則として通例の内部構造物を収容することができる。内部構造物の例として、トレイ、パッキング及び/又はラシヒリング、ポールリング等の不規則充填物、メラパック等の規則充填物が挙げられる。一般に棚段塔の場合、塔頂、塔底及び塔サイドからの排出流体の組成の管理、つまり回収塔全体での分離効率の観点で、トレイ総数は40〜150枚とするのが好ましい。
回収塔1の塔底における温度は90〜130℃が好ましく、塔頂温度は50〜80℃が好ましい。回収塔1における運転時の熱負荷は、排出流体の組成に大きく影響する中段部の温度で管理するのが好ましい。本明細書中、「中段部」とは、ライン4からライン9の間を示す。また、「温度制御部」は中段部中の一段に設定される。一般に、中段部中で塔内温度が80〜105℃になる位置に温度計を設定して温度制御部とし、温度管理をするのが好ましい。
【0015】
再沸騰器2は、ライン6から流出した回収塔底流を回収塔1に供給する前に、回収塔底流を再加熱する。ライン14を通じて再沸騰器2に熱媒が供給されるが、熱媒は再沸騰器2の加熱を目的として調製された水蒸気でもよいが、プロセス内のいずれかの工程で発生する高温の蒸気(水を主成分とし、その他、反応生成物であるアセトニトリル、青酸等を微量含む)でもよい。例えば、廃水濃縮設備(図示せず)から発生する蒸気を用いることができる。もちろん、それらを併用することも可能である。適切な温度調整の観点で、好ましい熱媒の形態は蒸気であり、101〜638kPaの加圧下で100〜160℃に維持されている蒸気を連続的に循環させることにより塔底部の温度を維持することができる。
再沸騰器2で回収塔底流の一部が加熱されて、回収塔1に戻されると共に、残部の塔底流は廃水として、再沸騰器2の底部よりライン12を通して抜き出される。
【0016】
回収塔の1の下部には、流量調整弁19を通じて水蒸気が供給される(第二の加熱経路)。温度調整の観点で、好ましい水蒸気の形態は飽和蒸気である。第一の加熱経路により蒸気再加熱した塔底流に加えて、第二の加熱経路により水蒸気も供給することで、回収塔1の塔内温度変動を有効に抑制することができる。
本明細書中、回収塔1の「下部」とは、ライン9より下を意味し、回収塔底部を包含し、塔内部に加え、再沸騰器出口ライン8も含まれる。特に、水蒸気を再沸騰器出口ラインも含む回収塔1の回収塔底部に供給する態様は、回収塔1全体の熱負荷を低くできる点で好ましい。
水蒸気によって回収塔に供給する熱量(第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量)は、塔底流によって回収塔に供給する熱量(第一の加熱経路によって回収塔に供給する熱量)と前記水蒸気によって回収塔に供給する熱量との和に対して1〜20%とする。水蒸気によって回収塔に供給する熱量を上記範囲に制御することで、回収塔内部の温度変動を抑制することができる。上記水蒸気によって回収塔に供給する熱量が20%を超えると、再沸騰器を用いた塔底流のみによって回収塔に熱量を供給する場合と同様に、回収塔内部の温度変動が生じることが鋭意検討の結果わかった。
【0017】
ここで、本実施形態において、第一及び第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量は、以下のとおりに測定できる。
上記再沸騰器より供給される熱量は、熱媒もしくは塔底流の再沸騰器前後での温度及び圧力より算出されるエンタルピー変化量より見積もれる。上記水蒸気により供給される熱量は、供給する水蒸気の温度及び圧力より算出されるエンタルピー量より見積もれる。
【0018】
塔内物質の中では水が最も多く、水蒸気を熱源として塔内に供給することで塔内組成の変動を最小にできる。塔内での不純物低減の観点から、水蒸気は、回収塔に接続された蒸気生成装置にて塔底流に由来しない水から生成されるのが好ましい。
【0019】
中段部の温度制御は水蒸気の流量調整弁19で実施することができる。流量調整弁19の制御は、回収塔中段部の温度計15の測定値見合いで行われ、好ましくは流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御を行う。
【0020】
図2は、本実施形態の蒸留装置の別の例を示す概略図である。図2に示す装置は、回収塔が上側回収塔1aと下側回収塔1bに分離されている以外、図1に示す例とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。上側回収塔1aと下側回収塔1bとは、一体として蒸留を行うように運転される。回収塔内で降下する成分と上昇する成分は、上側回収塔1aと下側回収塔1bとの間を行き来できるように接続されている。上側回収塔1aと下側回収塔1bとは機能的に分離しているものであれば、上下が物理的に分離したものでも連続したものでもよい。導入液の組成の観点から、ライン4は、上側1aに接続されており、流入した水性混合物は下側回収塔1bと行き来しながら分離される。装置建設時の経済性の観点から、ライン9は上側回収塔1aと下側回収塔1bの間から分岐し、アセトニトリルを含む留分を流出するのが好ましい。
【0021】
図3は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図3に示す装置は、補助沸騰器3が再沸騰器2に接続されていること以外、図1に示す例とほぼ同じであるので、相違点のみ説明する。補助沸騰器3は再沸騰器2から流出した塔底流の一部を再加熱し、ライン13を通じて再沸騰器2に戻す。熱媒はライン14を通じて補助沸騰器3に供給されている。補助沸騰器3に熱量を十分に供給しておけば、補助沸騰器3によって再加熱された塔底流が供給される再沸騰器2も加熱される。補助沸騰器3は、再沸騰器2から流出する廃水を濃縮する機能を兼ね備えている。廃水濃縮時の発生蒸気を再沸騰器2の熱媒として用いることでプロセス内の熱を有効利用することができる。
補助沸騰器3には熱媒としてライン14を通して水蒸気が供給される。伝熱面の汚れの観点から、水蒸気は、補助沸騰器3に接続された蒸気生成装置で塔底流に由来しない水から生成されるのが好ましい。
【0022】
図5は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図5に示す装置は、水蒸気がライン8に供給されていること以外、図3に示す装置とほぼ同じであるので、相違点のみ次に説明する。図5に示す装置においては、水蒸気の供給位置をライン8にすることで、既存の再沸騰器を改造して水蒸気を供給する場合に、回収塔内部のノズル出しが不要のため、改造工事が簡単となる。
【0023】
図7は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図7に示す装置は、水蒸気が回収塔1の中で温度制御部とライン9の間に供給されていること以外、図3に示す装置とほぼ同じであるので、相違点のみ次に説明する。図7に示す装置においては、排出流体の組成管理上重要な温度制御部の近傍に水蒸気を供給することで、温度制御部の温度変動幅を底部に水蒸気を供給する場合より更に低減できる。
【0024】
図4、図6、図8は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図4、図6、図8に示す装置は、図2同様に回収塔が上側回収塔1aと下側回収塔1bに分離していること以外、それぞれ図3、図5、図7に示す装置とほぼ同じである。
【0025】
図9は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図9に示す装置は、第二の加熱経路に第二の再沸騰器20が設けられていること以外、図1に示す例とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。塔底流の一部は第一の再沸騰器2に流入するが、残部の更に一部は第二の再沸騰器20に流入する。第一及び第二の再沸騰器に配分する塔底流量の比については、温度調整の観点で、第二の再沸騰器に配分する塔底流量は第一の再沸騰器に配分する塔底流量の50%以下とするのが好ましい。回収塔の1の下部に設置された再沸騰器20に、流量調整弁19を通じて水蒸気が熱媒として供給される。温度調整の観点で、好ましい水蒸気の形態は飽和蒸気である。塔底の再沸騰器2で蒸気再加熱した塔底流に加えて、水蒸気を熱媒とした再沸騰器20にて塔内流を再加熱して供給することで、回収塔1の塔内温度変動をより有効に抑制することができる。流量指示調整計17を介して第二の再沸騰器20に水蒸気が供給される。流量指示調整計17は温度指示調整計16に接続されており、塔内温度に応じて水蒸気の流量が調整される。
水蒸気を熱媒とした再沸騰器を使用することは、水蒸気を直接回収塔に供給する場合より装置建設時及び運転時の経済性の観点から不利であるが、供給熱量が調整し易い点で好ましい。
特に、回収塔1の回収塔底部に水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置し、既存の塔底再沸騰器とともに塔底流を再加熱する態様は、回収塔1全体の熱負荷を低くできる点で好ましい。
第二の再沸騰器よって回収塔に供給する熱量は、塔底流によって回収塔に供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって回収塔に供給する熱量との和に対して1〜20%とする。水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって回収塔に供給する熱量を上記範囲に制御することで、回収塔内部の温度変動を抑制することができる。上記第二の再沸騰器によって回収塔に供給する熱量が20%を超えると、第一の再沸騰器を用いた塔底流のみによって回収塔に熱量を供給する場合と同様に、回収塔内部の温度変動が生じることが鋭意検討の結果わかった。
【0026】
中段部の温度制御は水蒸気の流量調整弁19で実施することができる。流量調整弁19の制御は、回収塔1中段部の温度計15の測定値見合いで行われ、好ましくは流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御を行う。
【0027】
図10及び図11は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図10に示す装置は、第二の加熱経路に第二の再沸騰器20が設けられていること以外、図2に示す例とほぼ同じである。図11は、第二の加熱経路に第二の再沸騰器20が設けられていること以外、図3に示す例とほぼ同じである。
【0028】
図13に示す装置は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図13に示す装置は、水蒸気を熱媒とする再沸騰器が回収塔1の中で温度制御部とライン9の間に設置されていること以外、図10に示す装置とほぼ同じであるので、相違点のみ次に説明する。図13に示す装置においては、排出流体の組成管理上重要な温度制御部の近傍の塔内流を、水蒸気を熱媒とする再沸騰器で再加熱して供給することで、温度制御部の温度変動幅を底部に水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置する場合より更に低減できる。
【0029】
図12、図14は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図12、図14に示す装置は、図2同様に回収塔が上側回収塔1aと下側回収塔1bに分離していること以外、それぞれ図11、図13に示す装置とほぼ同じである。
【0030】
本実施形態における不飽和ニトリルの製造方法は、
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程(工程A)、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させて不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程(工程B)、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程(工程C)、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気とを供給する工程を含む方法である。
【0031】
ここで、不飽和ニトリルの製造方法は、例えば、図15に示す製造装置を用いて行うことできる。
図15は、アンモニア及び酸素を用いるプロピレンの接触アンモ酸化によるアクリロニトリル製造プロセスの概略図を示す。図15に示すように、プロピレン、アンモニア及び分子状酸素(通常は空気を用いる)は予め触媒が収容された反応器に導入され、これらが触媒と接触することによりアクリルニトリルを含むガスが生成する(工程A)。生成したガスは反応器の塔頂から流出して、急冷塔に流入し、急冷塔内で水性液体(代表的には水)と接触する工程で冷却され、高沸点有機化合物等の一部の成分は冷却水に溶出するが、アクリロニトリルを含む主生成物はガス状のまま塔頂から流出し、吸収塔に導入される。吸収塔には塔頂から吸収水が供給され、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル、青酸及び水は吸収水に吸収される(工程B)。ガスに含まれる成分のうち吸収されないプロピレン及び/又はプロパン、酸素、窒素、生成した炭酸ガス及び一酸化炭素は、吸収塔の塔頂から流出する。吸収塔の塔底からは、アクリロニトリルを含む水性混合物(アクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸を含む水溶液)が流出し、回収塔に供給され、蒸留が行われる(工程C)。
上記方法においては、プロパンの代わりに又はプロパンと共に、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種以上を用いてアンモ酸化反応を行うことができる。
また、上記蒸留工程(工程C)は、上述した方法と同様に、第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔を用いて行うことができる。
【実施例】
【0032】
本実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。また、本実施形態は特定数のトレイを有する塔に限定されず、トレイを有する塔にも限定されない。さらに、代替的に充填塔を使用してもよい。
実施例及び比較例において、熱量は以下のとおりに測定した。
ここで、本実施形態において、再沸騰器より供給される熱量は、熱媒もしくは塔底流の再沸騰器前後での温度及び圧力より算出されるエンタルピー変化量より見積もった。また塔内に直接供給される水蒸気により供給される熱量は、供給する水蒸気の温度及び圧力より算出されるエンタルピー量より見積もった。
【0033】
[実施例1]
図6に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル7.1wt%、アセトニトリル0.4wt%、青酸0.4wt%及び水92.1wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量363T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.2wt%及び水87.5wt%を含む液を流量4T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離され製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量133T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液はアセトニトリル29wt.ppb、青酸0.2wt%及び水96.3wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量17T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を1.7T/hrを基準に塔底部の再沸騰器の出口ラインに供給した。前記水蒸気1.7T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して1.3%であった。
塔頂管理温度を73℃、塔底管理温度を116℃、59段管理温度を99℃で運転した。塔内の温度管理は、59段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で2年間運転したが、製品管理上重要な59段温度において変動幅が最大5℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。図18に回収塔の59段温度の経時変化を示す。
【0034】
[実施例2]
図8に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量165T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル16.5wt%及び水80.5wt%を含む液を流量1.7T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量69T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.01wt%及び水98.6wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量22T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を2.7T/hrを基準に塔46段に直接供給した。前記水蒸気2.7T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して15.0%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1.5年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0035】
[実施例3]
図1に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.4wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.6wt%及び水92.7wt%を含む液を、回収塔の82段に、流量394T/hrで供給した。ただし、この回収塔は段数110段のシーブトレイを有する回収塔であった。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段41段よりアセトニトリル18.7wt%及び水79.6wt%を含む液を流量3.3T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量155T/hrで塔の110段に供給した。
塔底液はアセトニトリル6ppm、青酸0.01wt%及び水99.9wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量41T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を1.1T/hrを基準に塔42段に直接供給した。前記水蒸気1.1T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して2.7%であった。
塔頂管理温度を70℃、塔底管理温度を116℃、55段管理温度を99℃で運転した。塔内の温度管理は、55段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で2年間運転したが、製品管理上重要な55段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0036】
[実施例4]
図8に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
ターシャリーブチルアルコール、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、メタクリロニトリル6.9wt%、アセトニトリル2.1wt%、青酸1.1wt%及び水88.8wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量82T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりメタクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品メタクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル2.7wt%及び水95.4wt%を含む液を流量64.7T/hrで抜き出し、プロセス内で熱交換後、前工程の吸収塔の吸収水として使用した。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し44℃まで冷却した後、この液を流量66T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.09wt%及び水99.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量14T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を0.9T/hrを基準に塔46段に直接供給した。前記水蒸気0.9T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して8.2%であった。
塔頂管理温度を76℃、塔底管理温度を113℃、75段管理温度を88℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0037】
[実施例5]
図10に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量128T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.5wt%及び水80.5wt%を含む液を流量1.3T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量64T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.09wt%及び水98.6wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量18T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に3.3T/hrを基準に熱媒として供給して塔底流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して19.0%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1.5年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0038】
[実施例6]
図11に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.7wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.6wt%を含む液を、回収塔の上部82段に、流量160T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.5wt%及び水80.5wt%を含む液を流量1.5T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量65T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.07wt%及び水98.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量18T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に0.8T/hrを基準に熱媒として供給して塔底流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して4.1%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大2℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0039】
[実施例7]
図14に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部82段に、流量105T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.6wt%及び水80.6wt%を含む液を流量1.4T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量51T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.07wt%及び水98.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量18T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に3.0T/hrを基準に熱媒として供給して45段塔内流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して16.9%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大2℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0040】
[実施例8]
図14に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部82段に、流量118T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.6wt%及び水80.6wt%を含む液を流量1.3T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量56T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.09wt%及び水98.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量11T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に0.8T/hrを基準に熱媒として供給して45段塔内流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して4.9%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大2℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0041】
[比較例1]
図6に示す回収塔において塔底部の再沸騰器の出口ラインに水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例1と同様の反応生成液を同一流量で、実施例1と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例1と同様にし、温度、圧力も実施例1と同様にして運転した。塔頂管理温度を73℃、塔底管理温度を116℃、59段管理温度を99℃、45段管理温度を109℃で運転した。この運転条件で2年間運転したが、59段温度において変動幅が最大10℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。図19に回収塔の59段温度の経時変化を示す。
【0042】
[比較例2]
図8に示す回収塔において温度制御部近傍の46段に水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例2と同様の反応生成液を同一流量で、実施例2と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例2と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1.5年間運転したが、75段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0043】
[比較例3]
図1に示す回収塔において温度制御部近傍の42段に水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例3と同様の反応生成液を同一流量で、実施例3と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例3と同様にし、温度、圧力も実施例3と同様にして運転した。塔頂管理温度を70℃、塔底管理温度を116℃、55段管理温度を99℃で運転した。この運転条件で2年間運転したが、55段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0044】
[比較例4]
図8に示す回収塔において温度制御部近傍の46段に水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例4と同様の反応生成液を同一流量で、実施例4と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例4と同様にして運転した。塔頂管理温度を76℃、塔底管理温度を113℃、75段管理温度を88℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、65段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0045】
[比較例5]
図10に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例5と同様の反応生成液を同一流量で、実施例5と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例5と同様にし、温度、圧力も実施例5と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1.5年間運転したが、75段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0046】
[比較例6]
図11に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例6と同様の反応生成液を同一流量で、実施例6と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例6と同様にし、温度、圧力も実施例6と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1年間運転したが、75段温度において変動幅が最大6℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0047】
[比較例7]
図14に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例7と同様の反応生成液を同一流量で、実施例7と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例7と同様にし、温度、圧力も実施例7と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1年間運転したが、75段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0048】
[比較例8]
図6に示す回収塔において塔底部の再沸騰器の出口ラインへの水蒸気供給量を32.9T/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の反応生成液を同一流量で、実施例1と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例1と同様にし、温度、圧力も実施例1と同様にして運転した。前記水蒸気32.9T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して20.3%であった。塔頂管理温度を73℃、塔底管理温度を116℃、59段管理温度を99℃、45段管理温度を109℃で運転した。この運転条件で2週間運転したが、59段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0049】
[比較例9]
図8に示す回収塔において塔46段への水蒸気供給量を4.1T/hrに変更したこと以外は、実施例2と同様の反応生成液を同一流量で、実施例2と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例2と同様にして運転した。前記水蒸気4.1T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して21.1%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、75段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0050】
[比較例10]
図1に示す回収塔において塔42段への水蒸気供給量を12.0T/hrに変更したこと以外は、実施例3と同様の反応生成液を同一流量で、実施例3と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例3と同様にし、温度、圧力も実施例3と同様にして運転した。前記水蒸気12.0T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して23.2%であった。塔頂管理温度を70℃、塔底管理温度を116℃、55段管理温度を99℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、55段温度において変動幅が最大10℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0051】
[比較例11]
図8に示す回収塔において塔46段への水蒸気供給量を3.0T/hrに変更したこと以外は、実施例4と同様の反応生成液を同一流量で、実施例4と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例4と同様にして運転した。前記水蒸気3.0T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して22.9%であった。塔頂管理温度を76℃、塔底管理温度を113℃、75段管理温度を88℃で運転した。この運転条件で2週間間運転したが、65段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0052】
[比較例12]
図10に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器への水蒸気供給量を4.0T/hrに変更したこと以外は、実施例5と同様の反応生成液を同一流量で、実施例5と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例5と同様にし、温度、圧力も実施例5と同様にして運転した。前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量は、“塔底流に由来する”再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量との和に対して22.1%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、75段温度において変動幅が最大9℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0053】
[比較例13]
図11に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器への水蒸気供給量を4.8T/hrに変更したこと以外は、実施例6と同様の反応生成液を同一流量で、実施例6と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例6と同様にし、温度、圧力も実施例6と同様にして運転した。前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量は、“塔底流に由来する”再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量との和に対して20.4%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で2ヶ月間運転したが、75段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0054】
[比較例14]
図14に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器への水蒸気供給量を4.0T/hrに変更したこと以外は、実施例7と同様の反応生成液を同一流量で、実施例7と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例7と同様にし、温度、圧力も実施例7と同様にして運転した。前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量は、“塔底流に由来する”再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量との和に対して21.3%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で2週間運転したが、75段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の蒸留方法及び蒸留装置は、不飽和ニトリルの工業的製造プロセスに有用に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1:回収塔
2,3:再沸騰器
11:プロセス内の熱交換器
15:回収塔内温度計
16:温度指示調整計
17:流量指示調整計
18:電気配線
19:流量調整弁
20:第二の再沸騰器
4〜10,12,13,14:ライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ニトリルの蒸留方法及び蒸留装置、並びに不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリルは、多種の不飽和ニトリルの中でも、入手できる有機化学中間体の最も重要なものの一つであり、広範な生成物、プラスチック、合成ゴム、合成繊維、土壌調整剤等の製造における主要な中間体として用いられている。多くの用途において、アクリロニトリルは高純度でなければならず、このため、商業的に流通するアクリロニトリルには、厳密な製品規格がある。
【0003】
プロピレン及び/又はプロパンとアンモニアと酸素とからアクリロニトリルを製造する工業的生産方法では、反応の流出物が、アクリロニトリルに加えてかなりの量のシアン化水素及びアセトニトリルを副生物として含有し、更にスクシノニトリル及びその他のニトリル類などの不純物を含有している。流出物と該流出物に含まれている副生物及び不純物との正確な組成は、アンモ酸化の反応条件及び触媒次第でかなりのばらつきを生じる。別の不飽和ニトリル製造方法の流出物も、同様に種々の副生物及び不純物を含有している。
【0004】
アンモニア及び酸素を用いるプロピレンの接触アンモ酸化によるアクリロニトリルの製造においては、副生成物の1つとして、粗製アセトニトリルが生成される。粗製アセトニトリルは、アセトニトリルの他にシアン化水素、アクリロニトリル、アセトアルデヒド、アセトン、メタノール、アクロレイン、オキサゾール、シス−及びトランス−クロトノニトリル、メタクリロニトリル並びにアリルアルコールを含み得る。粗製アセトニトリルの成分の相対的な割合は、種々の条件に依存して広範囲に変化し得る。かつて、粗製アセトニトリルは焼却によって処分された。しかし、近年では、アセトニトリルは回収され、精製、販売されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不飽和ニトリルの製造は長年に亘り工業的に実施されているが、実質的な利益を伴う改良の余地がある。これらの改良の一つは、製品規格の逸脱の減少である。不飽和ニトリルの工業的生産において、不飽和ニトリル及びその副生成物の回収・精製工程で、工程内の回収塔(蒸留塔)を安定に運転することは、製品の品質基準、つまりは不純物の含有量を低減するうえで重要であり、改善策が望まれている。
例えば、プロピレン及び/又はプロパン、アンモニア及び分子状酸素を反応させてアクリロニトリルを製造するプロセスにおいて、生成したアクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸から、アセトニトリルを分離し、アクリロニトリル及び青酸を回収するための回収塔がある。この回収塔の塔頂からアクリロニトリル及び青酸を回収するが、このときアセトニトリルを同伴させないように運転することが、製品アクリロニトリルの規格外品をつくらないために重要である。また同時に、回収塔の塔底から余剰水を抜き出し廃水処理設備で処理するが、この塔底液中にアクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸を混入させないように運転することが廃水処理費用を低減するために重要である。
上記事情に鑑み、本発明は、アクリロニトリル等の不飽和ニトリルを工業的に製造する際に、不飽和ニトリル及びその副生成物の回収・精製工程における回収塔の安定な運転を実現し得る、不飽和ニトリルの蒸留方法及び蒸留装置を提供することを目的とする。
さらには、アクリロニトリル等の不飽和ニトリルを工業的に製造する際に、不飽和ニトリル及びその副生成物の回収・精製工程において、回収塔を安定に運転することにより、高純度の不飽和ニトリルを長期間に亘って得ることのできる、不飽和ニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
通常、回収塔の中段部は塔頂及び塔底と比較し温度の変動が激しく、安定運転への影響が大きい。中段部の温度が管理温度より高い場合、塔頂よりアセトニトリルが溜出し易くなり、中段部の温度が管理温度より低い場合、塔底よりアクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸が出易くなる。この変動の激しい部分の温度を検出して、回収塔のリボイラーに供給する熱源流量を制御することで、中段部の温度変動を小さくすることができると考えられる。しかしながら、回収塔のリボイラーに供給する熱源流量は多量であるので、この流量を制御すると回収塔の各部分の温度が変動し、中段部の温度を一定にすることは難しい。
従来、図16に示すように、回収塔の中段部の温度制御は、再沸騰器2の熱源流量調整弁19で実施してきた。流量調整弁19の制御は、回収塔中段部の温度計15の測定値見合いで行うか、流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御してきた。しかし、このような制御をもってしても、中段部の温度を一定に保つのは難しい。
また、従来、図17に示すように、回収塔の中段部の温度制御は、補助沸騰器3の熱源流量調整弁19で実施してきた。補助沸騰器3は再沸騰器2から流出した塔底流の一部を再加熱し、ライン13を通じて再沸騰器2に戻す。流量調整弁19の制御は、回収塔中段部の温度計15の測定値見合いで行うか、流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御してきた。しかし、このような制御をもってしても、中段部の温度を一定に保つのは難しい。
本発明者は、回収塔の温度制御方法を鋭意検討した結果、回収塔に第一及び第二の加熱経路を接続し、前記第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%に制御することにより、回収塔の中段部の温度変動を小さくできることを見いだし本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、
第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法。
[2]
前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から水蒸気を前記回収塔に供給する、上記[1]記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
[3]
前記水蒸気を前記回収塔の下部に供給する、上記[2]記載の蒸留方法。
[4]
前記第二の加熱経路に水蒸気を熱媒とする再沸騰器が設けられており、前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から前記再沸騰器によって加熱した塔底流及び/又は塔内流を前記回収塔に供給する、上記[1]記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
[5]
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気とを供給する工程を含む方法。
[6]
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気を熱媒とする再沸騰器により加熱した塔底流及び/又は塔内流とを供給する工程を含む方法。
[7]
回収塔と、前記回収塔に接続された第一及び第二の加熱経路とを有する蒸留装置であって、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量が、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%である蒸留装置。
[8]
前記第二の加熱経路が蒸気生成装置であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記蒸気生成装置によって前記塔底流に由来しない水蒸気が生成される、上記[7]記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
[9]
前記水蒸気は前記回収塔の下部に供給される、上記[8]記載の蒸留装置。
[10]
前記第二の加熱経路が水蒸気を熱媒とする再沸騰器であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記再沸騰器によって塔底流及び/又は塔内流が加熱される、上記[7]記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
[11]
前記第二の再沸騰器によって塔底流及び/又は回収塔の下部の塔内流を再加熱して前記回収塔に供給する、上記[10]記載の蒸留装置。
[12]
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、再沸騰器及び蒸気生成装置が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記蒸気生成装置で生成した水蒸気が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
[13]
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、第一及び第二の再沸騰器が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記第一の再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記第二の再沸騰器は水蒸気を熱媒としており、前記第二の再沸騰器で再加熱された塔底流及び/又は塔内流が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蒸留方法により、不飽和ニトリルの工業的製造プロセスにおいて、回収塔の塔内温度変動を抑制した安定運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の蒸留装置の一例を示す概略図である。
【図2】本実施形態の蒸留装置の別の例を示す概略図である。
【図3】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図4】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図5】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図6】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図7】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図8】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図9】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図10】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図11】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図12】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図13】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図14】本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。
【図15】アンモニア及び酸素を用いるプロピレンの接触アンモ酸化によるアクリロニトリル製造プロセスの概略図である。
【図16】従来の蒸留装置の一例を示す概略図である。
【図17】従来の蒸留装置の別の例を示す概略図である。
【図18】実施例1における水蒸気を供給した回収塔の59段温度の経時変化を示す図である。
【図19】比較例1における水蒸気を供給していない回収塔の59段温度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
本実施形態における不飽和ニトリルの蒸留方法は、不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法である。
また、本実施形態における不飽和ニトリルの製造装置は、回収塔と、前記回収塔に接続された第一及び第二の加熱経路とを有する製造装置であって、前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量が、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%である蒸留装置である。
【0012】
図1は、本実施形態の蒸留装置の一例を示す概略図であり、アクリロニトリルを製造するプロセスにおいて、生成したアクリロニトリル、アセトニトリル、青酸及び水から、アセトニトリルを分離回収するための蒸留装置の一例を示す。回収塔1は第一及び第二の加熱経路が接続され、両加熱経路から熱量を供給されるようになっている。回収塔1には導入ライン4が接続されており、反応器(図示せず)で生成したガスを水に吸収させた水性混合物が導入ライン4を通じて回収塔1に入る。導入ライン4が回収塔1に接続される位置は、導入液の組成と回収塔内の組成が最も近くなるように設定するのが一般的である。
ライン4より回収塔1に供給される水性混合物中のアクリロニトリルの典型的な濃度は5〜15wt%、好ましくは5〜10wt%である。供給される水性混合物流量は、アクリロニトリルの生産量に依存するが、工業的に効率的にアクリロニトリルを生産する観点で、アクリロニトリル生産量1Tに対して2.5〜30Tとすることが好ましい。
【0013】
蒸留装置には再沸騰器2が設けられており、塔底流は塔底ライン6を通じて再沸騰器2に入り、ライン8を通じて塔底部に戻される(第一の加熱経路)。回収塔1の底部1段に接続されたライン10を通して塔内流が抜き出され、温度を下げた後、回収塔1の塔頂部にソルベント水として導入される。塔内液の温度降下により生じた熱は、プロセス内の熱交換器11の熱源として使用するのが好ましい。回収塔1では抽出蒸留によりアセトニトリルが抽出分離され、塔頂からライン5を通してアクリロニトリル、青酸及び水が抜き出され、塔サイドからライン9を通してアセトニトリルが抜き出される。
ライン9の好ましい位置は、回収塔1に供給される溶液に含まれる各成分と、その比率を想定し、各成分の沸点等を基に最適化することでおよそ決定することができる。このような計算を行うための計算機プログラムはよく知られており、回収塔の設計に使われている。一般にアセトニトリルの塔内濃度が最大となる段数の前後5段の範囲内にライン9を接続するのが好ましい。
【0014】
回収塔1の内部構造物は特に限定されず、原則として通例の内部構造物を収容することができる。内部構造物の例として、トレイ、パッキング及び/又はラシヒリング、ポールリング等の不規則充填物、メラパック等の規則充填物が挙げられる。一般に棚段塔の場合、塔頂、塔底及び塔サイドからの排出流体の組成の管理、つまり回収塔全体での分離効率の観点で、トレイ総数は40〜150枚とするのが好ましい。
回収塔1の塔底における温度は90〜130℃が好ましく、塔頂温度は50〜80℃が好ましい。回収塔1における運転時の熱負荷は、排出流体の組成に大きく影響する中段部の温度で管理するのが好ましい。本明細書中、「中段部」とは、ライン4からライン9の間を示す。また、「温度制御部」は中段部中の一段に設定される。一般に、中段部中で塔内温度が80〜105℃になる位置に温度計を設定して温度制御部とし、温度管理をするのが好ましい。
【0015】
再沸騰器2は、ライン6から流出した回収塔底流を回収塔1に供給する前に、回収塔底流を再加熱する。ライン14を通じて再沸騰器2に熱媒が供給されるが、熱媒は再沸騰器2の加熱を目的として調製された水蒸気でもよいが、プロセス内のいずれかの工程で発生する高温の蒸気(水を主成分とし、その他、反応生成物であるアセトニトリル、青酸等を微量含む)でもよい。例えば、廃水濃縮設備(図示せず)から発生する蒸気を用いることができる。もちろん、それらを併用することも可能である。適切な温度調整の観点で、好ましい熱媒の形態は蒸気であり、101〜638kPaの加圧下で100〜160℃に維持されている蒸気を連続的に循環させることにより塔底部の温度を維持することができる。
再沸騰器2で回収塔底流の一部が加熱されて、回収塔1に戻されると共に、残部の塔底流は廃水として、再沸騰器2の底部よりライン12を通して抜き出される。
【0016】
回収塔の1の下部には、流量調整弁19を通じて水蒸気が供給される(第二の加熱経路)。温度調整の観点で、好ましい水蒸気の形態は飽和蒸気である。第一の加熱経路により蒸気再加熱した塔底流に加えて、第二の加熱経路により水蒸気も供給することで、回収塔1の塔内温度変動を有効に抑制することができる。
本明細書中、回収塔1の「下部」とは、ライン9より下を意味し、回収塔底部を包含し、塔内部に加え、再沸騰器出口ライン8も含まれる。特に、水蒸気を再沸騰器出口ラインも含む回収塔1の回収塔底部に供給する態様は、回収塔1全体の熱負荷を低くできる点で好ましい。
水蒸気によって回収塔に供給する熱量(第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量)は、塔底流によって回収塔に供給する熱量(第一の加熱経路によって回収塔に供給する熱量)と前記水蒸気によって回収塔に供給する熱量との和に対して1〜20%とする。水蒸気によって回収塔に供給する熱量を上記範囲に制御することで、回収塔内部の温度変動を抑制することができる。上記水蒸気によって回収塔に供給する熱量が20%を超えると、再沸騰器を用いた塔底流のみによって回収塔に熱量を供給する場合と同様に、回収塔内部の温度変動が生じることが鋭意検討の結果わかった。
【0017】
ここで、本実施形態において、第一及び第二の加熱経路によって回収塔に供給する熱量は、以下のとおりに測定できる。
上記再沸騰器より供給される熱量は、熱媒もしくは塔底流の再沸騰器前後での温度及び圧力より算出されるエンタルピー変化量より見積もれる。上記水蒸気により供給される熱量は、供給する水蒸気の温度及び圧力より算出されるエンタルピー量より見積もれる。
【0018】
塔内物質の中では水が最も多く、水蒸気を熱源として塔内に供給することで塔内組成の変動を最小にできる。塔内での不純物低減の観点から、水蒸気は、回収塔に接続された蒸気生成装置にて塔底流に由来しない水から生成されるのが好ましい。
【0019】
中段部の温度制御は水蒸気の流量調整弁19で実施することができる。流量調整弁19の制御は、回収塔中段部の温度計15の測定値見合いで行われ、好ましくは流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御を行う。
【0020】
図2は、本実施形態の蒸留装置の別の例を示す概略図である。図2に示す装置は、回収塔が上側回収塔1aと下側回収塔1bに分離されている以外、図1に示す例とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。上側回収塔1aと下側回収塔1bとは、一体として蒸留を行うように運転される。回収塔内で降下する成分と上昇する成分は、上側回収塔1aと下側回収塔1bとの間を行き来できるように接続されている。上側回収塔1aと下側回収塔1bとは機能的に分離しているものであれば、上下が物理的に分離したものでも連続したものでもよい。導入液の組成の観点から、ライン4は、上側1aに接続されており、流入した水性混合物は下側回収塔1bと行き来しながら分離される。装置建設時の経済性の観点から、ライン9は上側回収塔1aと下側回収塔1bの間から分岐し、アセトニトリルを含む留分を流出するのが好ましい。
【0021】
図3は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図3に示す装置は、補助沸騰器3が再沸騰器2に接続されていること以外、図1に示す例とほぼ同じであるので、相違点のみ説明する。補助沸騰器3は再沸騰器2から流出した塔底流の一部を再加熱し、ライン13を通じて再沸騰器2に戻す。熱媒はライン14を通じて補助沸騰器3に供給されている。補助沸騰器3に熱量を十分に供給しておけば、補助沸騰器3によって再加熱された塔底流が供給される再沸騰器2も加熱される。補助沸騰器3は、再沸騰器2から流出する廃水を濃縮する機能を兼ね備えている。廃水濃縮時の発生蒸気を再沸騰器2の熱媒として用いることでプロセス内の熱を有効利用することができる。
補助沸騰器3には熱媒としてライン14を通して水蒸気が供給される。伝熱面の汚れの観点から、水蒸気は、補助沸騰器3に接続された蒸気生成装置で塔底流に由来しない水から生成されるのが好ましい。
【0022】
図5は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図5に示す装置は、水蒸気がライン8に供給されていること以外、図3に示す装置とほぼ同じであるので、相違点のみ次に説明する。図5に示す装置においては、水蒸気の供給位置をライン8にすることで、既存の再沸騰器を改造して水蒸気を供給する場合に、回収塔内部のノズル出しが不要のため、改造工事が簡単となる。
【0023】
図7は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図7に示す装置は、水蒸気が回収塔1の中で温度制御部とライン9の間に供給されていること以外、図3に示す装置とほぼ同じであるので、相違点のみ次に説明する。図7に示す装置においては、排出流体の組成管理上重要な温度制御部の近傍に水蒸気を供給することで、温度制御部の温度変動幅を底部に水蒸気を供給する場合より更に低減できる。
【0024】
図4、図6、図8は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図4、図6、図8に示す装置は、図2同様に回収塔が上側回収塔1aと下側回収塔1bに分離していること以外、それぞれ図3、図5、図7に示す装置とほぼ同じである。
【0025】
図9は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図9に示す装置は、第二の加熱経路に第二の再沸騰器20が設けられていること以外、図1に示す例とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。塔底流の一部は第一の再沸騰器2に流入するが、残部の更に一部は第二の再沸騰器20に流入する。第一及び第二の再沸騰器に配分する塔底流量の比については、温度調整の観点で、第二の再沸騰器に配分する塔底流量は第一の再沸騰器に配分する塔底流量の50%以下とするのが好ましい。回収塔の1の下部に設置された再沸騰器20に、流量調整弁19を通じて水蒸気が熱媒として供給される。温度調整の観点で、好ましい水蒸気の形態は飽和蒸気である。塔底の再沸騰器2で蒸気再加熱した塔底流に加えて、水蒸気を熱媒とした再沸騰器20にて塔内流を再加熱して供給することで、回収塔1の塔内温度変動をより有効に抑制することができる。流量指示調整計17を介して第二の再沸騰器20に水蒸気が供給される。流量指示調整計17は温度指示調整計16に接続されており、塔内温度に応じて水蒸気の流量が調整される。
水蒸気を熱媒とした再沸騰器を使用することは、水蒸気を直接回収塔に供給する場合より装置建設時及び運転時の経済性の観点から不利であるが、供給熱量が調整し易い点で好ましい。
特に、回収塔1の回収塔底部に水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置し、既存の塔底再沸騰器とともに塔底流を再加熱する態様は、回収塔1全体の熱負荷を低くできる点で好ましい。
第二の再沸騰器よって回収塔に供給する熱量は、塔底流によって回収塔に供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって回収塔に供給する熱量との和に対して1〜20%とする。水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって回収塔に供給する熱量を上記範囲に制御することで、回収塔内部の温度変動を抑制することができる。上記第二の再沸騰器によって回収塔に供給する熱量が20%を超えると、第一の再沸騰器を用いた塔底流のみによって回収塔に熱量を供給する場合と同様に、回収塔内部の温度変動が生じることが鋭意検討の結果わかった。
【0026】
中段部の温度制御は水蒸気の流量調整弁19で実施することができる。流量調整弁19の制御は、回収塔1中段部の温度計15の測定値見合いで行われ、好ましくは流量調整弁に流量指示調整計17、温度計15に温度指示調整計16を設置し、両間を電気配線18で繋ぎ電子制御を行う。
【0027】
図10及び図11は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図10に示す装置は、第二の加熱経路に第二の再沸騰器20が設けられていること以外、図2に示す例とほぼ同じである。図11は、第二の加熱経路に第二の再沸騰器20が設けられていること以外、図3に示す例とほぼ同じである。
【0028】
図13に示す装置は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図13に示す装置は、水蒸気を熱媒とする再沸騰器が回収塔1の中で温度制御部とライン9の間に設置されていること以外、図10に示す装置とほぼ同じであるので、相違点のみ次に説明する。図13に示す装置においては、排出流体の組成管理上重要な温度制御部の近傍の塔内流を、水蒸気を熱媒とする再沸騰器で再加熱して供給することで、温度制御部の温度変動幅を底部に水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置する場合より更に低減できる。
【0029】
図12、図14は、本実施形態の蒸留装置のさらに別の例を示す概略図である。図12、図14に示す装置は、図2同様に回収塔が上側回収塔1aと下側回収塔1bに分離していること以外、それぞれ図11、図13に示す装置とほぼ同じである。
【0030】
本実施形態における不飽和ニトリルの製造方法は、
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程(工程A)、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させて不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程(工程B)、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程(工程C)、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気とを供給する工程を含む方法である。
【0031】
ここで、不飽和ニトリルの製造方法は、例えば、図15に示す製造装置を用いて行うことできる。
図15は、アンモニア及び酸素を用いるプロピレンの接触アンモ酸化によるアクリロニトリル製造プロセスの概略図を示す。図15に示すように、プロピレン、アンモニア及び分子状酸素(通常は空気を用いる)は予め触媒が収容された反応器に導入され、これらが触媒と接触することによりアクリルニトリルを含むガスが生成する(工程A)。生成したガスは反応器の塔頂から流出して、急冷塔に流入し、急冷塔内で水性液体(代表的には水)と接触する工程で冷却され、高沸点有機化合物等の一部の成分は冷却水に溶出するが、アクリロニトリルを含む主生成物はガス状のまま塔頂から流出し、吸収塔に導入される。吸収塔には塔頂から吸収水が供給され、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル、青酸及び水は吸収水に吸収される(工程B)。ガスに含まれる成分のうち吸収されないプロピレン及び/又はプロパン、酸素、窒素、生成した炭酸ガス及び一酸化炭素は、吸収塔の塔頂から流出する。吸収塔の塔底からは、アクリロニトリルを含む水性混合物(アクリロニトリル、アセトニトリル及び青酸を含む水溶液)が流出し、回収塔に供給され、蒸留が行われる(工程C)。
上記方法においては、プロパンの代わりに又はプロパンと共に、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種以上を用いてアンモ酸化反応を行うことができる。
また、上記蒸留工程(工程C)は、上述した方法と同様に、第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔を用いて行うことができる。
【実施例】
【0032】
本実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。また、本実施形態は特定数のトレイを有する塔に限定されず、トレイを有する塔にも限定されない。さらに、代替的に充填塔を使用してもよい。
実施例及び比較例において、熱量は以下のとおりに測定した。
ここで、本実施形態において、再沸騰器より供給される熱量は、熱媒もしくは塔底流の再沸騰器前後での温度及び圧力より算出されるエンタルピー変化量より見積もった。また塔内に直接供給される水蒸気により供給される熱量は、供給する水蒸気の温度及び圧力より算出されるエンタルピー量より見積もった。
【0033】
[実施例1]
図6に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル7.1wt%、アセトニトリル0.4wt%、青酸0.4wt%及び水92.1wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量363T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.2wt%及び水87.5wt%を含む液を流量4T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離され製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量133T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液はアセトニトリル29wt.ppb、青酸0.2wt%及び水96.3wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量17T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を1.7T/hrを基準に塔底部の再沸騰器の出口ラインに供給した。前記水蒸気1.7T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して1.3%であった。
塔頂管理温度を73℃、塔底管理温度を116℃、59段管理温度を99℃で運転した。塔内の温度管理は、59段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で2年間運転したが、製品管理上重要な59段温度において変動幅が最大5℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。図18に回収塔の59段温度の経時変化を示す。
【0034】
[実施例2]
図8に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量165T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル16.5wt%及び水80.5wt%を含む液を流量1.7T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量69T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.01wt%及び水98.6wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量22T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を2.7T/hrを基準に塔46段に直接供給した。前記水蒸気2.7T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して15.0%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1.5年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0035】
[実施例3]
図1に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.4wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.6wt%及び水92.7wt%を含む液を、回収塔の82段に、流量394T/hrで供給した。ただし、この回収塔は段数110段のシーブトレイを有する回収塔であった。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段41段よりアセトニトリル18.7wt%及び水79.6wt%を含む液を流量3.3T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量155T/hrで塔の110段に供給した。
塔底液はアセトニトリル6ppm、青酸0.01wt%及び水99.9wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量41T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を1.1T/hrを基準に塔42段に直接供給した。前記水蒸気1.1T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して2.7%であった。
塔頂管理温度を70℃、塔底管理温度を116℃、55段管理温度を99℃で運転した。塔内の温度管理は、55段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で2年間運転したが、製品管理上重要な55段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0036】
[実施例4]
図8に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
ターシャリーブチルアルコール、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、メタクリロニトリル6.9wt%、アセトニトリル2.1wt%、青酸1.1wt%及び水88.8wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量82T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりメタクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品メタクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル2.7wt%及び水95.4wt%を含む液を流量64.7T/hrで抜き出し、プロセス内で熱交換後、前工程の吸収塔の吸収水として使用した。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し44℃まで冷却した後、この液を流量66T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.09wt%及び水99.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量14T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を0.9T/hrを基準に塔46段に直接供給した。前記水蒸気0.9T/hrによって供給する熱量は、前記塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して8.2%であった。
塔頂管理温度を76℃、塔底管理温度を113℃、75段管理温度を88℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0037】
[実施例5]
図10に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部37段に、流量128T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.5wt%及び水80.5wt%を含む液を流量1.3T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量64T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.09wt%及び水98.6wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量18T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に3.3T/hrを基準に熱媒として供給して塔底流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して19.0%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1.5年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大3℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0038】
[実施例6]
図11に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.7wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.6wt%を含む液を、回収塔の上部82段に、流量160T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.5wt%及び水80.5wt%を含む液を流量1.5T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量65T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.07wt%及び水98.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量18T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に0.8T/hrを基準に熱媒として供給して塔底流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して4.1%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大2℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0039】
[実施例7]
図14に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部82段に、流量105T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.6wt%及び水80.6wt%を含む液を流量1.4T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量51T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.07wt%及び水98.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量18T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に3.0T/hrを基準に熱媒として供給して45段塔内流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して16.9%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大2℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0040】
[実施例8]
図14に示す蒸留装置を用いて蒸留を行った。
プロピレン、アンモニア及び空気を反応させて得られた反応生成物からアセトニトリルを分離するため、アクリロニトリル6.6wt%、アセトニトリル0.2wt%、青酸0.1wt%及び水91.5wt%を含む液を、回収塔の上部82段に、流量118T/hrで供給した。ただし、この回収塔はデュアルトレイ、シーブトレイを有する上部69段と下部45段の2塔に分かれており、上部側の塔の塔底と下部側の塔の塔頂は配管で繋がっていた。
塔頂よりアクリロニトリル、青酸、水の混合ガスを抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アクリロニトリル及び製品青酸とした。塔の中段45段(2塔の間の配管)よりアセトニトリル12.6wt%及び水80.6wt%を含む液を流量1.3T/hrで抜き出し、その後の精製工程で蒸留分離し、製品アセトニトリルとした。下段1段より抜き出した塔内液はプロセス内で熱交換し47℃まで冷却した後、この液を流量56T/hrで塔の114段に供給した。
塔底液は青酸0.09wt%及び水98.5wt%を含んでおり、この液を塔底より抜き出し、一部は再沸騰器(第一の再沸騰器)を通して加熱して塔底に戻し、残りを流量11T/hrで抜き出した。
再加熱した塔底流とは別に、塔底流に由来しない475kPaの水蒸気を別の再沸騰器(第二の再沸騰器)に0.8T/hrを基準に熱媒として供給して45段塔内流を加熱した。前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量は、前記第一の再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする第二の再沸騰器によって供給する熱量との和に対して4.9%であった。
塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。塔内の温度管理は、75段見合いで、再沸騰器の条件は一定のまま、塔底への水蒸気供給量にのみ実施した。この運転条件で1年間運転したが、製品管理上重要な75段温度において変動幅が最大2℃となり、回収塔の温度管理が原因による製品規格からの逸脱がなく、安定に運転できた。
【0041】
[比較例1]
図6に示す回収塔において塔底部の再沸騰器の出口ラインに水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例1と同様の反応生成液を同一流量で、実施例1と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例1と同様にし、温度、圧力も実施例1と同様にして運転した。塔頂管理温度を73℃、塔底管理温度を116℃、59段管理温度を99℃、45段管理温度を109℃で運転した。この運転条件で2年間運転したが、59段温度において変動幅が最大10℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。図19に回収塔の59段温度の経時変化を示す。
【0042】
[比較例2]
図8に示す回収塔において温度制御部近傍の46段に水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例2と同様の反応生成液を同一流量で、実施例2と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例2と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1.5年間運転したが、75段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0043】
[比較例3]
図1に示す回収塔において温度制御部近傍の42段に水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例3と同様の反応生成液を同一流量で、実施例3と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例3と同様にし、温度、圧力も実施例3と同様にして運転した。塔頂管理温度を70℃、塔底管理温度を116℃、55段管理温度を99℃で運転した。この運転条件で2年間運転したが、55段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0044】
[比較例4]
図8に示す回収塔において温度制御部近傍の46段に水蒸気を供給せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例4と同様の反応生成液を同一流量で、実施例4と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例4と同様にして運転した。塔頂管理温度を76℃、塔底管理温度を113℃、75段管理温度を88℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、65段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0045】
[比較例5]
図10に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例5と同様の反応生成液を同一流量で、実施例5と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例5と同様にし、温度、圧力も実施例5と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1.5年間運転したが、75段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0046】
[比較例6]
図11に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例6と同様の反応生成液を同一流量で、実施例6と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例6と同様にし、温度、圧力も実施例6と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1年間運転したが、75段温度において変動幅が最大6℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0047】
[比較例7]
図14に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器を設置せず、つまり第二の加熱経路を使わないで全熱量を塔底の再沸騰器を通して供給及び調整したこと以外は、実施例7と同様の反応生成液を同一流量で、実施例7と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例7と同様にし、温度、圧力も実施例7と同様にして運転した。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1年間運転したが、75段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0048】
[比較例8]
図6に示す回収塔において塔底部の再沸騰器の出口ラインへの水蒸気供給量を32.9T/hrに変更したこと以外は、実施例1と同様の反応生成液を同一流量で、実施例1と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例1と同様にし、温度、圧力も実施例1と同様にして運転した。前記水蒸気32.9T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して20.3%であった。塔頂管理温度を73℃、塔底管理温度を116℃、59段管理温度を99℃、45段管理温度を109℃で運転した。この運転条件で2週間運転したが、59段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0049】
[比較例9]
図8に示す回収塔において塔46段への水蒸気供給量を4.1T/hrに変更したこと以外は、実施例2と同様の反応生成液を同一流量で、実施例2と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例2と同様にして運転した。前記水蒸気4.1T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して21.1%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、75段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0050】
[比較例10]
図1に示す回収塔において塔42段への水蒸気供給量を12.0T/hrに変更したこと以外は、実施例3と同様の反応生成液を同一流量で、実施例3と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例3と同様にし、温度、圧力も実施例3と同様にして運転した。前記水蒸気12.0T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して23.2%であった。塔頂管理温度を70℃、塔底管理温度を116℃、55段管理温度を99℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、55段温度において変動幅が最大10℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0051】
[比較例11]
図8に示す回収塔において塔46段への水蒸気供給量を3.0T/hrに変更したこと以外は、実施例4と同様の反応生成液を同一流量で、実施例4と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例2と同様にし、温度、圧力も実施例4と同様にして運転した。前記水蒸気3.0T/hrによって供給する熱量は、再加熱した塔底流によって供給する熱量と前記水蒸気によって供給する熱量との和に対して22.9%であった。塔頂管理温度を76℃、塔底管理温度を113℃、75段管理温度を88℃で運転した。この運転条件で2週間間運転したが、65段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0052】
[比較例12]
図10に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器への水蒸気供給量を4.0T/hrに変更したこと以外は、実施例5と同様の反応生成液を同一流量で、実施例5と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例5と同様にし、温度、圧力も実施例5と同様にして運転した。前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量は、“塔底流に由来する”再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量との和に対して22.1%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で1ヶ月間運転したが、75段温度において変動幅が最大9℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0053】
[比較例13]
図11に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器への水蒸気供給量を4.8T/hrに変更したこと以外は、実施例6と同様の反応生成液を同一流量で、実施例6と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例6と同様にし、温度、圧力も実施例6と同様にして運転した。前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量は、“塔底流に由来する”再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量との和に対して20.4%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で2ヶ月間運転したが、75段温度において変動幅が最大7℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【0054】
[比較例14]
図14に示す回収塔において水蒸気を熱媒とする再沸騰器への水蒸気供給量を4.0T/hrに変更したこと以外は、実施例7と同様の反応生成液を同一流量で、実施例7と同様の回収塔に供給した。その他の流量も実施例7と同様にし、温度、圧力も実施例7と同様にして運転した。前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量は、“塔底流に由来する”再沸騰器によって供給する熱量と前記水蒸気を熱媒とする再沸騰器によって供給する熱量との和に対して21.3%であった。塔頂管理温度を71℃、塔底管理温度を117℃、75段管理温度を85℃で運転した。この運転条件で2週間運転したが、75段温度において変動幅が最大8℃となり、規格外の製品が一時的に発生した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の蒸留方法及び蒸留装置は、不飽和ニトリルの工業的製造プロセスに有用に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1:回収塔
2,3:再沸騰器
11:プロセス内の熱交換器
15:回収塔内温度計
16:温度指示調整計
17:流量指示調整計
18:電気配線
19:流量調整弁
20:第二の再沸騰器
4〜10,12,13,14:ライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、
第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法。
【請求項2】
前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から水蒸気を前記回収塔に供給する、請求項1記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
【請求項3】
前記水蒸気を前記回収塔の下部に供給する、請求項2記載の蒸留方法。
【請求項4】
前記第二の加熱経路に水蒸気を熱媒とする再沸騰器が設けられており、前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から前記再沸騰器によって加熱した塔底流及び/又は塔内流を前記回収塔に供給する、請求項1記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
【請求項5】
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気とを供給する工程を含む方法。
【請求項6】
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気を熱媒とする再沸騰器により加熱した塔底流及び/又は塔内流とを供給する工程を含む方法。
【請求項7】
回収塔と、前記回収塔に接続された第一及び第二の加熱経路とを有する蒸留装置であって、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量が、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%である蒸留装置。
【請求項8】
前記第二の加熱経路が蒸気生成装置であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記蒸気生成装置によって前記塔底流に由来しない水蒸気が生成される、請求項7記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
【請求項9】
前記水蒸気は前記回収塔の下部に供給される、請求項8記載の蒸留装置。
【請求項10】
前記第二の加熱経路が水蒸気を熱媒とする再沸騰器であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記再沸騰器によって塔底流及び/又は塔内流が加熱される、請求項7記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
【請求項11】
前記第二の再沸騰器によって塔底流及び/又は回収塔の下部の塔内流を再加熱して前記回収塔に供給する、請求項10記載の蒸留装置。
【請求項12】
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、再沸騰器及び蒸気生成装置が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記蒸気生成装置で生成した水蒸気が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
【請求項13】
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、第一及び第二の再沸騰器が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記第一の再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記第二の再沸騰器は水蒸気を熱媒としており、前記第二の再沸騰器で再加熱された塔底流及び/又は塔内流が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
【請求項1】
不飽和ニトリルを蒸留する方法であって、
第一及び第二の加熱経路が接続された回収塔により不飽和ニトリルを蒸留する工程を含み、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量を、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%とする不飽和ニトリルの蒸留方法。
【請求項2】
前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から水蒸気を前記回収塔に供給する、請求項1記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
【請求項3】
前記水蒸気を前記回収塔の下部に供給する、請求項2記載の蒸留方法。
【請求項4】
前記第二の加熱経路に水蒸気を熱媒とする再沸騰器が設けられており、前記第一の加熱経路から再加熱した塔底流を前記回収塔に供給し、前記第二の加熱経路から前記再沸騰器によって加熱した塔底流及び/又は塔内流を前記回収塔に供給する、請求項1記載の不飽和ニトリルの蒸留方法。
【請求項5】
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気とを供給する工程を含む方法。
【請求項6】
触媒の存在下で、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種をアンモ酸化することにより不飽和ニトリルを含むガスを生成させる工程、
前記ガスを急冷塔内で水性液体と接触させた後、吸収塔内で水を含む液体と接触させて吸収させることにより不飽和ニトリルを含む水性混合物を得る工程、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物を蒸留する工程、
を含む不飽和ニトリルの製造方法であって、
前記水性混合物から前記不飽和ニトリルを蒸留するための回収塔に、再加熱した塔底流と、水蒸気を熱媒とする再沸騰器により加熱した塔底流及び/又は塔内流とを供給する工程を含む方法。
【請求項7】
回収塔と、前記回収塔に接続された第一及び第二の加熱経路とを有する蒸留装置であって、
前記第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量が、前記第一及び第二の加熱経路によって前記回収塔に供給する熱量の和に対して1〜20%である蒸留装置。
【請求項8】
前記第二の加熱経路が蒸気生成装置であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記蒸気生成装置によって前記塔底流に由来しない水蒸気が生成される、請求項7記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
【請求項9】
前記水蒸気は前記回収塔の下部に供給される、請求項8記載の蒸留装置。
【請求項10】
前記第二の加熱経路が水蒸気を熱媒とする再沸騰器であり、前記第一の加熱経路により塔底流が加熱され、前記再沸騰器によって塔底流及び/又は塔内流が加熱される、請求項7記載の不飽和ニトリルの蒸留装置。
【請求項11】
前記第二の再沸騰器によって塔底流及び/又は回収塔の下部の塔内流を再加熱して前記回収塔に供給する、請求項10記載の蒸留装置。
【請求項12】
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、再沸騰器及び蒸気生成装置が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記蒸気生成装置で生成した水蒸気が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
【請求項13】
反応器と、前記反応器に接続された急冷塔と、前記急冷塔に接続された吸収塔と、前記吸収塔に接続された回収塔とを有し、
前記回収塔には、第一及び第二の再沸騰器が接続されており、
前記反応器内で、触媒の存在下、プロパン、プロピレン、イソブタン及びイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種のアンモ酸化により不飽和ニトリルを含むガスが生成され、
前記ガスは前記急冷塔内で水性液体と接触された後、前記吸収塔内で水を含む液体と接触されて不飽和ニトリルを含む水性混合物が得られ、
得られた不飽和ニトリルを含む水性混合物が回収塔内で蒸留される不飽和ニトリルの製造装置であって、
前記回収塔から流出した塔底流は前記第一の再沸騰器によって加熱されて前記回収塔に戻され、前記第二の再沸騰器は水蒸気を熱媒としており、前記第二の再沸騰器で再加熱された塔底流及び/又は塔内流が前記回収塔に供給される不飽和ニトリルの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−167066(P2012−167066A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29979(P2011−29979)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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