説明

不飽和ポリエステル樹脂を用いた被覆材、ゲルコート材及び成形品

【課題】 サンシャイン・ウエザオメーターによる耐候性試験2000時間後の光沢保持及び耐黄変性とが改善された硬化物の得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物からなる被覆材、ゲルコート材及び繊維強化プラスチック成形品を提供する。
【解決手段】 特定の不飽和ポリエステル(A)と重合性不飽和単量体(B)とを含有して成る不飽和ポリエステル樹脂組成物であり、その硬化物の「降温時収縮応力」が、17MPa以下で、かつ「降温時収縮応力/弾性限度」が、1以下である不飽和ポリエステル樹脂組成物用いてなる被覆材、ゲルコート材及び繊維強化プラスチック成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢保持率と耐黄変性とに優れた硬化物の得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物用いた被覆材、ゲルコート材及びそれを表面に用いる繊維強化プラスチック(FRP)成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂は、硬化温度条件が幅広い上に硬化速度が速いという優れた化学的、物理的、機械的、電気的特性を有するため、各種FRP成形品や、塗料、ゲルコート材などに使用されている。しかし、従来の不飽和ポリエステル樹脂は、耐候性に劣るため、屋外に長期間暴露されると光沢が著しく低下するだけでなく、黄変を起こす欠点を有している。この欠点の改善のために、特開平7−157645号公報では脂環式飽和酸と脂肪族不飽和酸とからなる酸成分と脂肪族アルコール、脂環式アルコールから選ばれるアルコール成分から誘導される不飽和ポリエステル樹脂組成物を提案し、さらに特開平9−263692号公報は、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロテレフタル酸と不飽和二塩基酸とからなる酸成分と多価アルコール成分とから誘導されるゲルコート用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提案している。しかし、これらの不飽和ポリエステル樹脂組成物は、耐黄変性は改良されているものの、光沢保持率は改良されていない。
【0003】
また、欧州特許第0400884号公報は、2−メチル−1,3−プロパンジオールをアルコール成分に用いたゲルコート用不飽和ポリエステル樹脂組成物を提案している。また、米国特許第6268464号公報には、少なくとも2種類のジオール30〜70モル%と2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール0.5〜8モル%と芳香族カルボン酸とその他の2種類のカルボン酸とから得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物が提案されている。これらの発明も、また、改良されているのは黄変性だけで、光沢保持率の不十分なものであった。
これらの先行技術においては、原料組成面の改良により、耐黄変性は改善されているが光沢保持率は不十分であり、そのためチョーキングを起こし、光沢の低下が比較的短時間で発生するという問題を有している。このため、耐候性の要因である耐黄変性と光沢保持率との両方を満足させるものはなかった。
【0004】
また、最近、環境問題からスチレンモノマーの大気中への放出の規制が厳しくなりつつあるため、低スチレン揮散、低スチレン含有の樹脂が必要とされている。低スチレン揮散や低スチレン含有の不飽和ポリエステル樹脂にするためにはDCPD系の低分子量の不飽和ポリエステルを用いてスチレン含有量を減らす方法、パラフィンワックスを添加する方法等が知られている。これらの方法ではスチレンモノマーの揮散量や含有量は減らすことはできるが、耐候性を満足させることはできない。
【特許文献1】特開平7−157645号公報
【特許文献2】特開平9−263692号公報
【特許文献3】欧州特許第0400884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐候性試験における光沢保持率と耐黄変性とが共に改善された不飽和ポリエステル樹脂組成物、並びにそれを用いた被覆材及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、不飽和ポリエステル樹脂組成物について鋭意研究した結果、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物における70℃から20℃に温度降下した時の「降温時収縮応力」が17MPa以下、かつ「降温時収縮応力/弾性限度」が1以下となるように、不飽和ポリエステル樹脂組成物を調整すれば光沢保持率60%以上、色差20以下の光沢保持率と耐黄変性ともに優れ、更に重合性不飽和単量体含有量の少ない不飽和ポリエステル樹脂組成物の得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、不飽和ポリエステル(A)と重合性不飽和単量体(B)とを含有して成る不飽和ポリエステル樹脂組成物であり、前記不飽和ポリエステル(A)が、二塩基酸成分と多価アルコール成分とから誘導されるものであり、(1)二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸と脂肪族不飽和二塩基酸とから成り、(2)多価アルコール成分が(a)対称性グリコールと、(b)側鎖を有しないグリコール(b1)と主鎖の炭素数が奇数で、側鎖として短鎖アルキル基を1つ、あるいは異なる2個の短鎖アルキル基を有する非対称性グリコール(b2)から選ばれる少なくとも一種のグリコールとからなるものであり
(イ)前記二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%と脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%から成り、前記多価アルコール成分が前記対称性グリコール(a)60〜80モル%と側鎖を有しないグリコール(b1)20〜40モル%とから成るもの、(ロ)前記不飽和ポリエステル(A)が、二塩基酸成分と多価アルコール成分とから誘導されるものであり、前記二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%と脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%から成り、前記多価アルコール成分が対称性グリコール(a)40〜80モル%と側鎖を有する非対称性グリコール(b2)20〜60モル%とから成るもの、或いは(ハ)前記二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%と脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%から成り、前記多価アルコール成分が前記対称性グリコール(a)60〜80モル%と側鎖を有しないグリコール(b1)10〜35モル%と側鎖を有する非対称性グリコール(b2)5〜10モル%から成るものであり、その硬化物の「降温時収縮応力」が、17MPa以下で、かつ「降温時収縮応力/弾性限度」が、1以下である不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いてなる被覆材、ゲルコート材、及び繊維強化プラスチック成形品を提供する。
発明の効果
本発明は、「降温時収縮応力」を17MPa以下とし、かつ「降温時収縮応力/弾性限度」を1以下とする特定の不飽和ポリエステル樹脂組成物で、光沢保持率および耐黄変性とが優れた該硬化物を得られる。しかも被覆材や成形品としたとき広範囲な用途に有効な機械的強度を有し、温度変化の回数、つまり熱くなり冷たくなることによって発生する応力変化が繰り返されることによって発生する亀裂を防ぐという特性も付与することができる。同時に重合性不飽和単量体の含有量を特定量にすることによって、該単量体の含有量、揮散性を低く抑えることができる。
本発明は、その硬化物の光沢保持率と耐黄変性とに優れるため、ゲルコート材等の被覆材、FRP成形品の表面層に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の詳細な説明をする前に、本発明で使用する技術用語の定義について、以下に説明する。
【0009】
[降温時収縮応力]
本発明において用いられる「降温時収縮応力」なる技術用語は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物が70℃から20℃に温度降下したとき発生する「収縮応力」であり、次に述べる測定方法で測定されるものである。
【0010】
<測定方法>
(1)本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に55%メチルエチルケトンパーオキサイド(硬化剤)1.0%、6%ナフテン酸コバルト(硬化促進剤)0.1%を添加し、攪拌し、25℃のJISK−6901の常温ゲル化時間(A法)に準拠して測定したときのゲルタイムが30分になるようにt−ブチルカテコールなどで調整する。この樹脂組成物の脱泡したものを、ガラス板上に硬化フィルムの厚みが0.3mmとなるように塗布し、上面を150μmのポリエチレレンテレフタレートフィルムで覆い、室温で24時間放置して硬化フィルムを作成する。
(2)得られた硬化フィルムから、70mm×10mm×0.3mmのサイズに裁断して試験片を作成する。この試験片のガラス転移温度(Tg)を転移温度測定装置(セイコーインスツルメント社製「DMS600」)により測定する。
【0011】
(3)次に、この試験片を引張試験装置((株)オリエンテック社製「テンシロンRTM−100PL」)に取り付け固定する。試験片取り付け部のある恒温室の温度を該試験片のTgより10℃高い温度に設定し、試験片を設定温度に10分間維持する。
(4)該試験片は伸びを生じるので、この伸びの分だけ試料長を増して該試験片を再度固定する。次いで、温度降下速度:5℃/分で該試験片ある恒温室の温度を下げながら面積当たり(例えば1mm)に換算する。恒温室が70℃のときの応力と20℃のときの応力の差を「降温時収縮応力」とする。
【0012】
[弾性限度]
本発明において用いられる「弾性限度」なる技術用語は、以下の測定方法で測定される弾性限度を意味する。
「測定方法」
(1)前記「降温時収縮応力」の測定の(1)と全く同じ方法で得られる硬化フィルムを、更に、60℃恒温室で30分放置し硬化させる。
(2)得られた硬化フィルムから試験片サイズ:70mm×10mm×0.3mmに裁断して試験片を作成する。
(3)この試験片を引張試験装置((株)オリエンテック社製「テンシロンRTM−100PL」)に取り付け、常温(25℃)で試験片を試験速度5mm/minで測定する。応力−ひずみ曲線の初期において一次式に従う領域での最大の応力を求め、それを「弾性限度」とする。
前記「降温時収縮応力」の値をこの「弾性限度」の値で割ることで、「降温時収縮応力/弾性限度」の値とした。
【0013】
[光沢保持率]
本発明において用いられる「光沢保持率」なる技術用語は、以下の測定方法で測定される耐候性試験2000時間の光沢保持率を意味する。
「測定方法」
(1)不飽和ポリエステル樹脂組成物に55%メチルエチルケトンパーオキサイド1.0%、6%ナフテン酸コバルト0.1%を添加して攪拌、脱泡し、離型剤を塗布し、厚みを3mmに調整するスペーサーを有しシーリーングしたガラス板に該樹脂組成物を注ぎ、その後常温で24時間放置後、120℃×120分間更に硬化させ、厚み約3mmの注型板を得る。
【0014】
(2)このようにして得た注型板から75mm×70mmの試験片を切り出し、耐候性試験片とした。この試験片を用いて、ISO基準に基づいたサンシャイン・ウエザオメーター(ISO 4892−4:1994 オープンフレームカーボンアークランプに準拠した試験法)を用いて促進耐候試験を2000時間行った。
(3)上記2000時間後の試験片は、その表面(試験面)をJIS Z 8741−1997(ISO 2813:1994)に基づく方法で、鏡面光沢度を入射角60度で測定した値に基づいて、光沢保持率を以下の(式)により求めた。
光沢保持率=(耐候試験後の鏡面光沢度/耐候試験前の鏡面光沢度)×100
【0015】
[色差]
本発明において用いられる「色差」なる技術用語は、JIS Z 8730−1995で規定されている表示法を用いるもので「ΔEab」で表わされるもので、以下の測定方法で測定される耐候性試験2000時間の黄変度を表わすものである。
「測定方法」
(1)前記の耐候促進試験における光沢保持率の測定で使用した厚み3mmの同一試験片を用いて測定した。即ち、試験片表面の物体色をJIS Z 8722に規定されている方法で測定し、L表色系による「色差」を次(式2)により計算する。
ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2(式2)
【0016】
(2)尚、「ΔEab:L表色系による色差。
ΔL,Δa,Δb:JIS Z 8279に規定するL表色系における二つの物色体のCIE1976明度Lの差及び色座標a,bの差。
ΔEabを略して「ΔE」と表示し、これを「色差」値とする。
(3)試験片が、透明色なので測定面の反対側に光を透過しない白色板をつけて測定する。このような測定では、色差は膜厚に大きく依存するため厚さが3mm以外の試験片を比較する場合、LAMBERTの法則により膜厚補正行うことが必要である。ΔE値は高いほど黄変など変色が激しいことを示している。
【0017】
本発明で使用する不飽和ポリエステル(A)は、二塩基酸成分と多価アルコール成分とから誘導される。(1)好ましい二塩基酸成分として脂環式飽和二塩基酸と脂肪族不飽和二塩基酸とが組み合わされて使用され、(2)好ましい多価アルコール成分として(a)対称性グリコールと、(b)側鎖を有しないグリコールと側鎖を有する非対称性グリコールから選ばれる少なくとも一種のグリコールとが組み合わされて使用される。
【0018】
本発明で使用する脂環式飽和二塩基酸の好ましい例としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸などが挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明で使用する脂肪族不飽和二塩基酸の好ましい例としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸などのα,β−不飽和二塩基酸やジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和二塩基酸が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を併用してもよい。これらの中でもマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸が特に好ましい。
【0020】
上記の二塩基酸成分に加えて本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族飽和二塩基酸、芳香族飽和二塩基酸及びその他の二塩基酸を、酸成分全量の20モル%以下併用してもよい。脂肪族飽和二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。
【0021】
芳香族飽和二塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメット酸、ピロメリット酸等などが挙げられる。これらの化合物は単独でも2種以上を併用してもよい。本発明では、芳香族一塩基酸、芳香族飽和二塩基酸やその無水物などの芳香族系酸成分は、併用しないことが好ましいが、本発明が目的とする耐候性の色差を満足させる範囲で併用してもよい。芳香族系酸成分を併用する場合は、アジピン酸のような脂肪族飽和二塩基酸を併用することにより樹脂粘度を下げることが好ましい。
【0022】
本発明で使用される多価アルコール成分(2)は、好ましくは、脂肪族グリコールあるいは脂環式グリコールから選択される(a)対称性グリコールと、(b)側鎖を有しないグリコールと側鎖を有する非対称性グリコールとから選ばれる少なくとも一種のグリコールとの組み合わせからなるものである。
【0023】
本発明で使用される対称性グリコール(a)としては、例えば、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。好ましくは、ネオペンチルグリコールである。
【0024】
さらに、側鎖を有しないグリコール(b)としては、好ましくは直鎖部の炭素原子数2以上で両末端に水酸基を有するものである。より好ましくは3〜10の両末端に水酸基を有する直鎖状グリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
【0025】
また、側鎖を有する非対称性グリコール(b)としては、好ましくは主鎖の炭素数が奇数で、側鎖として短鎖アルキル基を1つ、あるいは異なる2個の短鎖アルキル基を有するグリコールであって、樹脂粘度を低い粘度にするグリコールで、例えば、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ヘプタンジオール等が挙げられる。
【0026】
上記多価アルコール成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲でその他の多価アルコール成分も併用可能である。併用可能な多価アルコール成分(2)としては、例えば、水素化ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドもしくはブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物、エチレングリコ−ルカ−ボネ−ト等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール等の四価アルコールなどが挙げられる。これらの多価アルコール成分は、多価アルコール全量の10モル%以下が好ましい。耐黄変性に優れた樹脂組成物を得るためには黄変の原因となる芳香族系グリコール化合物、即ち光反応により発色団を形成する芳香族系グリコールやエーテル結合のように光により劣化反応が進行し易いエーテル基含有グリコールは使用しない方が好ましい。
【0027】
本発明で使用する側鎖を有する非対称性グリコール(b)として1,3−プロパンジオールや2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等のように炭素数が奇数のグリコールを用いた場合、樹脂粘度を低くでき、重合性不飽和単量体の含有量を低減でき、且つ得られる組成物の粘度を低くできるという利点がある。
【0028】
尚、不飽和ポリエステル(A)の末端カルボキシル基封鎖のために、例えば、ベンジルアルコールや2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ステアリルアルコール等の一価アルコールも使用可能である。
【0029】
本発明で使用される不飽和ポリエステル(A)は、好ましい例として挙げた上記の二塩基酸成分(1)と上記の多価アルコール成分(2)とを公知の方法で縮合反応させて得られるものである。二塩基酸成分(1)と多価アルコール成分(2)とのモル比は、好ましくは(1)/(2)=0.9〜1.3である。
【0030】
本発明で使用される好ましい不飽和ポリエステル(A)の配合例としては、以下の配合例が挙げられる。
【0031】
配合例1:
二塩基酸成分(1):脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%、脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%、
多価アルコール成分(2):前記対称性グリコール(a)60〜80モル%と側鎖を有しないグリコール(b)20〜40モル%とから成る。
【0032】
配合例2:
二塩基酸成分(1):脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%、
脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%、
多価アルコール成分(2):前記対称性グリコール(a)40〜80モル%と側鎖を有する非対称性グリコール(b)20〜60モル%とから成る。
【0033】
配合例3:
二塩基酸成分(1):脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%、脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%、
多価アルコール成分(2):前記対称性グリコール(a)60〜80モル%と側鎖を有しないグリコール(b)10〜35モル%と側鎖を有する非対称性グリコール(b)5〜10モル%から成る。
【0034】
本発明で使用される不飽和ポリエステル(A)は、分子末端のカルボキシル基をメタクリル酸グリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物と反応させた不飽和ポリエステルアクリレートを含むものである。さらに、分子末端の水酸基をイソシアネート基と不飽和基とを有する不飽和化合物とを反応させて得られるウレタン結合含有不飽和ポリエステルアクリレート、または分子末端の水酸基と不飽和一塩基酸またはその酸無水物とを反応させて得られる不飽和ポリエステルアクリレートも含まれるものである。
【0035】
本発明で使用される重合性不飽和単量体(B)としては、好ましくはスチレン系単量体及び/またはアクリル系単量体であり、必要により他の分子内に1個以上の重合性二重結合を有する不飽和単量体を併用することができる。このスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、クロロスチレン、ジクロロスチレン等をあげることができる。これらの化合物は単独又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、アクリル系単量体及び(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸等のメタクリル酸及びそのエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、アクリル酸等のアクリル酸及びそのエステル類、(メタ)アクリルアミド、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、β-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、2,2-ビス〔4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、シペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル変性エポキシオリゴマー、エポキシ変性アクリルウレタンオリゴマー、(メタ)アクリレートオリゴマー等も挙げることができる。これらの化合物は単独又は2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記重合性不飽和単量体(B)に加えて用いられる他の重合性不飽和単量体としては、例えば フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸ジプロピル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸ジプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノオクチル、フマル酸ジオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸ジプロピル等のα,β−不飽和多塩基酸アルキルエステル、ジアリルフタレートなどが挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明で使用される重合性不飽和単量体(B)の配合量としては、本発明の効果を達成する量であれば差し支えなく、通常は60重量%以下であるが、特に、スチレン系単量体を用いてその揮散性を低くし、且つ耐黄変性を向上させる場合には、不飽和ポリエステル(A)/重合性不飽和単量体(B)としてのスチレン系単量体の重量割合に於いて、不飽和ポリエステル(A)60〜95重量%、スチレン系単量体(B)5〜40重量%が好ましい。より好ましくは、不飽和ポリエステル(A)70〜85重量%とスチレン系単量体(B)30〜15重量%とからなる量である。この範囲であれば、樹脂硬化物の光沢保持率に良い影響を与える。好ましくはスチレン系単量体とアクリル系単量体とを併用する。この場合の重量割合としては、好ましくは不飽和ポリエステル(A)とスチレン系単量体とアクリル系単量体と混合物(B)=40〜95:60〜5(重量%)である。スチレン系単量体とアクリル系単量体との混合割合は、好ましくは0〜50:50〜100(重量%)である。
【0040】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度は、不飽和ポリエステル(A)と重合性不飽和単量体(B)との配合により、4.5〜0.2Pa・sとなるように調整されたものが好ましい。
【0041】
本発明で使用される不飽和ポリエステル(A)の数平均分子量(Mn)は、1200〜5000の範囲にあるものが好ましい。数平均分子量が1200未満の場合は、樹脂硬化物の機械的強度が低く、5000を越える場合、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高くなるために好ましくない。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物から得られる樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)は、5℃〜130℃となるものが好ましい。
【0042】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、さらに、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を添加することができる。そうした紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、紫外線安定剤としては、例えば、ヒンダートアミン系が挙げられる。これらの形は問わず、重合可能な反応性やエステル化反応可能な反応性を有していても良く適宜選択され使用される。
【0043】
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、硬化剤として各種の有機過酸化物を配合してもよい。有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、ビス−4−t−ブチルシクロヘキサンジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート等が挙げられ、これらの化合物は単独又は2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、重合禁止剤、硬化促進剤、染料、顔料、可塑剤、パラフィン系等のワックスを必要に応じて添加できる。こうした重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、ピロカテコール、2,6−t−ブチルパラクレゾール等が挙げられ、また、硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト等の金属セッケン類、ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、ジメチルアニリン、N−エチル−メタトルイジン、トリエタノールアミン等のアミン類等が挙げられる。さらに、シリカ粉、アスベスト粉等の公知の揺変剤、充填材、安定剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤、光沢保持率の性能を損なわない範囲でポリメタクリル酸樹脂(PMMA)などの熱可塑性ポリマーや市販品のマクロモノマー(AA−6、AA−10東亞合成化(株))を配合することができる。
【0045】
本発明の組成物に使用される顔料としては、好ましくは着色に使用されるもので、例えばチタンホワイト、ベンガラ、縮合アゾレッド、チタニウムイエロー、コバルトブルー、キナクリドンレッド、カーボンブラック、鉄黒、ウルトラマリングリーン、ブルー、ペリノン、紺青、イソインドリノン、クロームグリーン、シアニンブルー、グリーン等が挙げられる。紫外線安定性に優れ、ポリエステル樹脂の硬化を妨げない物が選択され、色調に応じて配合される。これらの着色用顔料は、ポリエステル樹脂に直接混合分散させるか、飽和、不飽和ポリエステルソリッドと予め混練したカラートナーとして添加することもできる。かかる顔料の添加量は、不飽和ポリエステルと重合性不飽和単量体とを溶解したもの100重量部に対し、顔料0.1〜50重量部が好ましい。
【0046】
また本発明の組成物に使用される充填材としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカパウダー、コロイダルシリカ、アスベスト粉、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉、アルミナ粉、硅石粉、ガラスビーズ、砕砂等が挙げられる。これら充填材を本発明の組成物に配合してパテ、シーリング材や被覆材として使用することができる。また布、クラフト紙等への含浸補強する材料としても有効である。
【0047】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、繊維補強材も添加することかでき、かかる補強材としては例えばガラス繊維(チョップドストランドマット、ガラスロービングクロス等)、炭素繊維、有機繊維(ビニロン、ポリエステル、フェノール等)、金属繊維等が挙げられ、組成物中に好ましくは10〜70重量%併用し繊維強化プラスチック(FRP)とすることができる。
【0048】
従来の不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物は、上記耐候性試験の光沢保持率60%以上で色差(ΔE)が20以下のものが得られない。これに対し、本願発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、後述の実施例に示すように、硬化物の「降温時収縮応力」を17MPa以下、好ましくは15MPa以下とすること、並びに「降温時収縮応力/弾性限度」を1以下、好ましくは0.05〜0.85とすることにより、光沢保持率と耐黄変性とに優れた樹脂硬化物を得ることができる。本発明の樹脂組成物により得られる硬化物は、光劣化反応を遅延し、昼夜、季節変動で生じる温度差により生じる応力の繰り返しに耐えられる物性を有するため、サンシャイン・ウエザォメーターの耐候性試験2000時間後の光沢保持率が60%以上、好ましくは70%以上、色差(ΔE)が20以下、好ましくは16以下となるものである。
【0049】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物の用途は、特に好ましくは、被覆材、即ち、ライニング材、塗料若しくはゲルコート材として有用であり、また、繊維補強材及び/または充填材を添加混合した場合には、SMC,BMCなどの成形材料としても使用できる。尚、本発明では、繊維強化プラスチック成形品の表面に本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるゲルコート材で表面層を形成した繊維強化プラスチック成形品により、耐候性、耐黄変性、表面光沢率に優れた成形品をもたらすことができる。本発明の繊維強化プラスチック成形品とは、例えば、浴槽、ユニットバス、洗面台、台所用品、ボート、漁船、タンク、パネル、車両部材、ハウジング材、イス、机、自動車部材などが挙げられる。
【0050】
本発明の被覆材は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に硬化剤、硬化促進剤を添加してなるもので、必要により充填材、顔料、ワックス、紫外線吸収剤、紫外線安定剤を含有するものである。また、本発明のゲルコート材は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に硬化剤、硬化促進剤を添加してなるもので、必要により顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤を含有するものである。
【0051】
本発明のFRP成形品は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物から成るゲルコート材により、型表面にゲルコート層を形成し、その上にSMC,BMC等の成形材料によりバック層を公知の成形方法により形成したものである。
【0052】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物の他の用途は、シーリング材、パテ、注型品、レジンコンクリートとして用いられる。そうした場合、必要によりさらに、難燃剤等の添加剤を入れても良い。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また文章中「部」とあるのは、重量部を示すものである。
【0054】
(実施例1) 不飽和ポリエステル組成物の製造
温度計、攪拌器、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2Lの4つ口フラスコにネオペンチルグリコール366部、エチレングリコール88部、2−ブチル−2-エチル−1,3−プロパンジオール88部、ヘキサヒドロ無水フタル酸462部、フマル酸232部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら205℃まで昇温し、14時間反応後、スチレンモノマー468部、ハイドロキノン0.12部を加え、不揮発分70%、酸価12の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が1.6MPa、降温時収縮応力/弾性限度が0.14であった。下記耐候性試験により光沢保持率が75%、色差が8.9であった。
【0055】
(実施例2) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様の2L4つ口フラスコにネオペンチルグリコール457部、1,3-プロパンジオール51部、2−ブチル−2-エチル−1,3−プロパンジオール70部、ヘキサヒドロ無水フタル酸462部、フマル酸232部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、12時間反応後、スチレンモノマー483部、ハイドロキノン0.13部を加え、不揮発分70%、酸価9の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。この不飽和ポリエステル樹脂100部にチヌビン400(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製紫外線吸収剤)0.5部、チヌビン123(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製紫外線吸収剤)0.4部、LA−82(旭電化工業(株)製紫外線吸収剤)0.1部を加え不飽和ポリエステル樹脂組成物とした。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が7.3MPa、降温時収縮応力/弾性限度が0.31であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率が95%、色差が3.1であった。
【0056】
(実施例3) 不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造
実施例1同様の2Lの4つ口フラスコにネオペンチルグリコール417部、1,3-プロパンジオール152部、ヘキサヒドロ無水フタル酸308部、フマル酸464部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、14時間反応後、スチレンモノマー579部、メチルメタクリレート193部、ハイドロキノン0.12部を加え、不揮発分60%、酸価5、粘度0.6Pa・sの不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。この不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物は、降温時収縮応力が7.9MPa、降温時収縮応力/弾性限度が0.71であった。下記耐候性試験の結果、光沢保持率が79%、色差が13であった。
【0057】
(実施例4) 不飽和ポリエステル組成物の製造
温度計、攪拌器、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2Lの4つ口フラスコにネオペンチルグリコール335.3部、1,2−プロピレングリコール73.5部、2,2-ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール90部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸433.4部、フマル酸209部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら205℃まで昇温し、14時間反応後、スチレンモノマー422部、ハイドロキノン0.12部を加え、不揮発分70%、酸価12の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物は、重合性不飽和単量体として、更に、ネオペンチルグリコールジメタクリレートを758.1部を加え、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が12.4MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が0.67であった。下記耐候性試験の結果、光沢保持率が89%、色差が11.4であった。
【0058】
(実施例5) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様にして2Lフラスコにネオペンチルグリコール229部、2-メチル-1,3-プロパンジオール297部、ヘキサヒドロ無水フタル酸308部、フマル酸348部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、12時間反応後、スチレンモノマー445部、ハイドロキノン0.12部を加え、不揮発分70%、酸価12の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。この不飽和ポリエステル樹脂100部にチヌビン400(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製紫外線吸収剤)0.5部、チヌビン123(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製紫外線吸収剤)0.4部、LA−82(旭電化工業(株)製紫外線吸収剤)0.1部を加え不飽和ポリエステル樹脂組成物とした。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が10.1MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が0.45であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率が85%、色差が13.7であった。
【0059】
(実施例6) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様の2Lの4つ口フラスコにネオペンチルグリコール458部、2-メチル-1,3-プロパンジオール99部、ヘキサヒドロ無水フタル酸308部、無水マレイン酸294部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、14時間反応後、スチレンモノマー486部、ハイドロキノン0.11部を加え、不揮発分68%、酸価14の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が7.4MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が0.31であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率が78%、色差が11.4であった。
【0060】
(実施例7) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様の2Lの4つ口フラスコにネオペンチルグリコール458部、1,3−プロパンジオール84部、ヘキサヒドロ無水フタル酸462部、フマル酸232部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、14時間反応後、スチレンモノマー522部、ハイドロキノン0.12部を加え、不揮発分68%、酸価11の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が9.1MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が0.55であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率が73%、色差が14.2であった。
【0061】
(実施例8) 不飽和ポリエステル組成物の製造
温度計、攪拌器、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2Lの4つ口フラスコにネオペンチルグリコール458部、2-メチル-1,3-プロパンジオール99部、ヘキサヒドロ無水フタル酸308部、フマル酸348部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、14時間反応後、スチレンモノマー503部、ハイドロキノン0.11部を加え、不揮発分68%、酸価12の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が11.7MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が0.55であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率が67%、色差が14.5であった。
【0062】
(実施例9) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様にして2Lフラスコにネオペンチルグリコール278部、2-メチル−1,3−プロパンジオール90部、イソフタル酸111部、アジピン酸44部、ヘキサヒドロ無水フタル酸103部、フマル酸197部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、12時間反応後、スチレンモノマー279部、ハイドロキノン0.05部を加え、不揮発分70%、酸価12の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が6MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が0.25であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率が66%、色差が13.7であった。
【0063】
(比較例1) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様にしてネオペンチルグリコール416部、1,2-プロピレングリコール152部、イソフタル酸332部、フマル酸464部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、14時間反応後、スチレンモノマー939部、ハイドロキノン0.12部を加え、不揮発分55%、酸価5の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が29.6MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が1.31であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率(1500時間)が60%、色差が20.4であった。
【0064】
(比較例2) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様にしてネオペンチルグリコール208部、1,2-プロピレングリコール76部、ヘキサヒドロフタル酸無水物154部、無水マレイン酸196部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、14時間反応後、スチレンモノマー410部、ハイドロキノン0.06部を加え、不揮発分60%、酸価5の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、降温時収縮応力が20.6MPa、降温時収縮応力/弾性限度の比が0.72であった。また、下記耐候性試験の結果、光沢保持率(1500時間)が40%、色差が15であった。
【0065】
(比較例3) 不飽和ポリエステル組成物の製造
実施例1と同様にして2−メチル−1,3−プロパンジオール406部、無水フタル酸444部、無水マレイン酸147部を仕込み、210℃まで昇温し、エステル化反応を行い、14時間反応後、スチレンモノマー610.9部、ハイドロキノン0.06部を加え、不揮発分60%、酸価7の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。かかる組成物の硬化物は、下記耐候性試験の結果、光沢保持率(1500時間試験)が29%であったので、降温時収縮応力は測定しなかった。
【0066】
(試験例)
上記不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて下記の試験を行った。その結果を表1、2にまとめる。
【0067】
〜降温時収縮応力〜
70℃〜20℃の降温時収縮応力は上記実施例、比較例の樹脂組成物を使用して前記した測定方法で測定を行った。
【0068】
〜サンシャイン・ウエザォメーターによる耐候性試験〜
1)試験板の作製
実施例、比較例で得られた不飽和ポリエステル樹脂組成物に55%メチルエチルケトンパーオキサイド1.0%、6%ナフテン酸コバルト0.1%を添加して攪拌、脱泡して使用する樹脂組成物とした。ガラス板に離型剤(フリコートFRP、F−REKOTE社)を塗布し、厚みを調整するスペーサーを設けシーリーングしたガラス板上に該樹脂組成物を注ぎ、その後常温で24時間放置後、120℃で120分、更に硬化させ、厚み約3mmの注型試験板を得た。
【0069】
2)耐候性試験
方法1)で得た試験板から75mm×70mmの試験片を切り出し、耐候試験片を作製した。耐候試験法としては、サンシャイン・ウエザオメ-タ-(スガ試験機(株)製WEL-SUN-HCH-B型)を用いて促進耐候性試験を行った。
試験条件:
温度63±3℃ サイクル 120分中18分降雨 時間 2000hr
なお、試験片は250時間毎にチェックして光沢低下が著しいものに関しては試験を中止した。
【0070】
3)耐候性の評価
試験後の試験片の光沢と色差を測定した。測定機器は、光沢計は「(株)村上色彩技術研究所製 GM26D型」を使用した。測定角は、60度で行った。なお、 光沢保持率は「(試験後の鏡面光沢度/試験前の鏡面光沢度)×100」により求めた。
色差は、日本電色工業(株)Z1001DPを用いて投光パイプ、試料台30φで測定し ΔE値を「色差の値」として用いた。値は大きいほど 黄変が激しいことを示している。
【0071】
〜弾性限度の測定〜
弾性限度は上記実施例、比較例の樹脂組成物を前記の測定方法で測定を行った。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
(繊維強化プラスチック成形品の製造)
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を表面層とするFRP成形品の耐候性を確認するため、以下に示す方法でゲルコート積層板を作製した。
まずガラス板に離型剤(商品名ボンリース、KOSHIN CHEMICAL社製)を塗布した後、実施例及び比較例の各樹脂組成物100部に55%メチルエチルケトンパーオキサイド1.0%、0.6%ナフテン酸コバルト5部を添加して攪拌し、ガラス板上にスプレー塗布し、その後常温で1時間放置後、60℃で30分更に硬化させた。次に、ガラスチョップストランドマット(重さ:450g/m2、(M))、ガラスロービングクロス(570g/m2、(R))及び積層用樹脂(大日本インキ化学工業(株)製不飽和ポリエステル樹脂、商品名ポリライトFH−286、)を用いて、(M)+(R)+(M)のガラス繊維強化材を積層し、L型コーナー部で重なり合うように一度に成形した。なお、この時積層用樹脂には、0.6%ナフテン酸コバルト2部、55%メチルエチルケトンパーオキサイド1.0部を用いた。そして、常温で18時間放置した後、ガラス板よりFRP成形品を剥離し試験板とした。この試験板から50mm×70mmの試験片を切り出し、耐候性試験片を作製した。耐候性試験法としては、上記と同様にサンシャイン・ウエザオメーター(スガ試験機(株)製WEL−SUN−HCH−B型)を用いた。
【0075】
試験条件:
温度:63±3℃、サイクル:120分中18分間降雨時間で2000hr
なお、試験時間250hr毎に目視で確認し、光沢が著しく低下した場合は試験を中止した。試験結果を表3に示す。
(耐候性評価)
評価については、表面の白化の程度を目視により観察した。
評価 : ◎:白化無し
○:ほとんど白化無し
×:白化
【0076】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル(A)と重合性不飽和単量体(B)とを含有して成る不飽和ポリエステル樹脂組成物であり、前記不飽和ポリエステル(A)が、二塩基酸成分と多価アルコール成分とから誘導されるものであり、(1)二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸と脂肪族不飽和二塩基酸とから成り、(2)多価アルコール成分が(a)対称性グリコールと、(b)側鎖を有しないグリコール(b1)と主鎖の炭素数が奇数で、側鎖として短鎖アルキル基を1つ、あるいは異なる2個の短鎖アルキル基を有する非対称性グリコール(b2)から選ばれる少なくとも一種のグリコールとからなるものであり
(イ)前記二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%と脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%から成り、前記多価アルコール成分が前記対称性グリコール(a)60〜80モル%と側鎖を有しないグリコール(b1)20〜40モル%とから成るもの、
(ロ)前記不飽和ポリエステル(A)が、二塩基酸成分と多価アルコール成分とから誘導されるものであり、前記二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%と脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%から成り、前記多価アルコール成分が対称性グリコール(a)40〜80モル%と側鎖を有する非対称性グリコール(b2)20〜60モル%とから成るもの、或いは
(ハ)前記二塩基酸成分が脂環式飽和二塩基酸30〜65モル%と脂肪族不飽和二塩基酸35〜70モル%から成り、前記多価アルコール成分が前記対称性グリコール(a)60〜80モル%と側鎖を有しないグリコール(b1)10〜35モル%と側鎖を有する非対称性グリコール(b2)5〜10モル%から成るものであり、
その硬化物の「降温時収縮応力」が、17MPa以下で、かつ「降温時収縮応力/弾性限度」が、1以下である不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いてなる被覆材。
【請求項2】
前記不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物の光沢保持率が、60%以上である不飽和ポリエステル樹脂組成物であることを特徴とする請求項1記載の被覆材
【請求項3】
前記不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物の光沢保持率が60%以上であり、その色差が20以下である不飽和ポリエステル樹脂組成物であることを特徴とする請求項1記載の被覆材
【請求項4】
前記脂環式飽和二塩基酸がヘキサヒドロ無水フタル酸、それらの無水物及びそれらのエステル誘導体、から成る群から選ばれる少なくとも1種から成り、前記対称性グリコール(a)がネオペンチルグリコールであり、前記側鎖を有しないグリコール(b1)がエチレングリコールと1,3−プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種であり、前記側鎖を有する非対称性グリコール(b2)が2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールから成る群から選ばれる少なくとも1種から成る不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1記載の被覆材
【請求項5】
ゲルコート材であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の被覆材。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載の被覆材の硬化物からなる表面層を有することを特徴とする繊維強化プラスチック成形品。

【公開番号】特開2007−107010(P2007−107010A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321702(P2006−321702)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【分割の表示】特願2001−267240(P2001−267240)の分割
【原出願日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】