説明

不飽和結合含有水性樹脂、硬化性水性樹脂組成物及び水性塗料組成物

【課題】
常温乾燥の条件でも、造膜性及び硬化性が良好で、耐水性などの諸物性に優れた塗膜を形成するのに適する不飽和結合含有水性樹脂、不飽和結合含有水性樹脂を含む硬化性水性樹脂組成物及び硬化性水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】
不飽和結合を有するカルボン酸(a)、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)及びポリアルキレングリコール系化合物(c)を原料とする不飽和結合含有水性樹脂、該不飽和結合含有水性樹脂を含む硬化性水性樹脂組成物及び該硬化性水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化剤及び造膜助剤として有用な不飽和結合含有水性樹脂、それを含む硬化性水性樹脂組成物及び水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料の分野においては、環境問題への対応や、作業環境改善の要求から、水性化への試みがなされている。一般に仕上がり性、塗膜性能の点などにおいて水性塗料は溶剤系塗料と比較すると不十分なものであり、特に常温乾燥又は強制乾燥するタイプの水性塗料においては、乾燥段階における塗膜表面のレベリング性や塗膜中の架橋反応が加熱硬化型の場合と比較すると不十分であるために、仕上がり性や塗膜物性を溶剤系塗料に近づけることは困難である。
【0003】
ところで市場では汎用性の点から一液型塗料が望まれており、一液型で常温乾燥又は強制乾燥の条件でも仕上がり性、塗膜性能が良好な水性塗料の開発が望まれている。
【0004】
常温乾燥の条件で硬化が可能な水性の一液型塗料として酸化硬化型樹脂を含む塗料が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基及びリン酸塩基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸基を有する重合性不飽和モノマーを共重合成分とする脂肪酸変性アクリル樹脂であり、該樹脂が水性媒体中に微細に分散されていることを特徴とする水性樹脂組成物が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、脂肪酸変性重合性不飽和モノマー及び他の重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を、水性媒体中に平均粒子径が500nm以下になるように微分散させ、得られる乳化物を重合させることを特徴とする分散樹脂の平均粒子径が500nm以下である水性樹脂分散体を含む水性塗料組成物が記載されている。
【0007】
特許文献1及び2に記載の水性塗料組成物によれば、常温でも酸化硬化し、耐水性、肉もち感を有する仕上がりの硬化塗膜を形成でき、金属面に対して馴染みがよいものであるが、樹脂粒子の融着により造膜しているため、造膜性が不十分であり、それに伴い、耐水性などの性能が十分とはいえない場合がある。
【0008】
ところで、低温硬化性が可能な硬化剤として特許文献3には3鎖型親水性カルボジイミド化合物及びこれからなる水性塗料組成物が記載されている。かかる水性塗料組成物によれば、自動車補修用途など比較的低温での硬化が可能であり、耐水性などの諸物性にもすぐれた塗膜を形成できるものであるが、常温での硬化性となると、十分とはいえない場合がある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−292795号公報
【特許文献2】WO2004/074327号公報
【特許文献3】特開2003−306476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記常温乾燥の条件でも、造膜性及び硬化性が良好で、耐水性などの諸物性に優れた塗膜を形成するのに適する不飽和結合含有水性樹脂、該樹脂を含む硬化性水性樹脂組成物及び硬化性水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記した課題に対して鋭意検討した結果、不飽和結合を有するカルボン酸、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物及びポリアルキレングリコール系化合物を原料とする不飽和結合含有水性樹脂が、造膜性及び硬化性を向上させる効果があることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、
1. 不飽和結合を有するカルボン酸(a)、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)及びポリアルキレングリコール系化合物(c)を原料とする不飽和結合含有水性樹脂、
2. 不飽和結合を有するカルボン酸(a)が、その成分の一部として不飽和脂肪酸を含む1項記載の不飽和結合含有水性樹脂、
3. 不飽和結合を有するカルボン酸(a)が、その成分の一部として下記式で表されるカルボン酸を含む1項または2項に記載の不飽和結合含有水性樹脂、
【0012】
【化1】

【0013】
(上記式において、R、R、R、R、及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数が1〜10の有機基である。)
4. イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)とポリアルキレングリコール系化合物(c)とを反応させる工程、
前記工程で得られた反応生成物と不飽和結合を有するカルボン酸(a)を反応させる工程を含むことを特徴とする不飽和結合含有水性樹脂の製造方法、
5. 1項ないし3項のいずれか1項に記載の樹脂を含む硬化性水性樹脂組成物、
6. 水性バインダー樹脂をさらに含む5項に記載の硬化性水性樹脂組成物、
7. 水性バインダー樹脂が、アクリル樹脂水分散体及び/又はウレタン樹脂水分散体を含む6項に記載の硬化性水性樹脂組成物、
8. 水性バインダー樹脂が、不飽和脂肪酸に由来するものである6項または7項に記載の硬化性水性樹脂組成物、
9. 5項ないし8項のいずれか1項に記載の硬化性水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物、
10. 被塗面に、9項記載の水性塗料組成物を塗装する塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の不飽和結合含有水性樹脂は、硬化剤としても造膜助剤としても使用することができ、これを含む硬化性組成物は、常温乾燥の条件であっても、造膜性が良好で、硬化性や耐水性等の塗膜物性などに優れた塗膜を形成することが可能となる。また、該不飽和結合含有水性樹脂は、水に対して溶解又は安定に分散することができるので貯蔵安定性が良好であり、他の水性樹脂との相溶性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の不飽和結合含有水性樹脂は、不飽和結合を有するカルボン酸(a)、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)及びポリアルキレングリコール系化合物(c)を原料とする樹脂である。以下、本発明の樹脂を構成する各成分について説明する。
【0016】
不飽和結合を有するカルボン酸(a)
本発明において、不飽和結合を有するカルボン酸(a)としては、分子中に1以上の不飽和結合と1以上のカルボン酸を有する化合物であれば特に制限なく従来公知の化合物を使用でき、特に酸化硬化性の化合物であることが望ましい。そのような上記カルボン酸(a)の具体例としては例えば不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0017】
不飽和脂肪酸としては、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸等を挙げることができ、その具体例としては乾性油脂肪酸としては例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
また、上記カルボン酸(a)としては、下記式で表されるカルボン酸であってもよい。
【0019】
【化2】

【0020】
(上記式において、R、R、R、R、及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数が1〜10の有機基である。)。
【0021】
上記式に対する具体例としては、ソルビン酸、2,4−ペンタジエン酸、トリエニック酸、6−フェニル−2,4,6−ヘプタトリエン酸、レチノイン酸(ビタミンA),5フェニル−2,4−ペンタジエン酸、ムコン酸、ヘキサエンジカルボン酸等を例示することができる。
【0022】
上記式によるカルボン酸によれば、カルボキシル基のカルボニル部分と共役した共役二重結合という構成単位を有するので、(メタ)アクリレートと不飽和脂肪酸類似の性質を併せもった性質を有すると考えられ、このものを原料として製造される本発明の不飽和基含有水性樹脂の貯蔵安定性と該樹脂を用いて形成される塗膜の硬化性を両立させることができる。
【0023】
イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)
本発明においてイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)は、上記カルボン酸のカルボキシル基とカルボジイミド結合との反応によって、本発明の不飽和結合含有水性樹脂に水酸基などの親水性基を発現させることなく不飽和結合を分子側鎖に導入させるために使用されるものであり、ジイソシアネート化合物の縮合反応によって得られることができる化合物である。
【0024】
また、カルボン酸とカルボジイミド結合により得られる結合は、本発明の硬化性水性樹脂組成物により形成される塗膜の耐水性を損なうことなく、付着性を向上させる効果もある。
【0025】
ジイソシアネート化合物の縮合反応により、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)を得る場合、用いるジイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0026】
上記縮合反応は、カルボジイミド化触媒を用いて行うことができる。上記カルボジイミド化触媒としては特に限定されず、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドや、これらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等を挙げることができる。
【0027】
本発明において上記成分(b)は、「カルボジライトV−01」、「カルボジライトV−05」(商品名、以上日清紡社製)等の市販品を使用することもできる。
【0028】
ポリアルキレングリコール系化合物(c)
上記ポリアルキレングリコール系化合物(c)は、本発明の不飽和結合含有水性樹脂を水に溶解又は分散可能とさせるために使用されるものであり、分子中にポリアルキレン単位と水酸基を有する化合物であって、例えば下記式で表される化合物を使用することができる。
O−(RO)−H
(式中、R6は水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R7は炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは2〜60である)。
【0029】
そのような化合物としては、具体的には、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリブチレングリコールなどのアルコキシポリアルキレングリコール;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、特にアルコキシポリアルキレングリコールを使用すると、合成がし易く適している。
【0030】
上記成分(a)、(b)及び(c)の反応は一括で又は逐次的に行うことができ、その場合における(a)、(b)及び(c)の使用割合としては、例えば、(b)中のイソシアネート基1モルに対して(c)中の水酸基が
0.5〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルの範囲内であり、
(b)中のカルボジイミド基1モルに対して、(a)中のカルボキシル基が0.1〜1.5モル、特に0.2〜1.2モルの範囲内となるようにすることが適している。
【0031】
上記本発明の不飽和結合含有水性樹脂は、製造安定性の点から、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)とポリアルキレングリコール系化合物(c)とを反応させる工程、
前記工程で得られた反応生成物と不飽和結合を有するカルボン酸(a)を反応させる工程、
によって製造されることが望ましい。
【0032】
上記イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)とポリアルキレングリコール系化合物(c)とを反応させる工程において、反応は通常40〜180℃、好ましくは60〜130℃の温度で行われる。
【0033】
この反応を促進させるため、通常のウレタン化反応において使用されるトリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫系触媒などを必要に応じて用いてもよい。
【0034】
また、前記工程で得られた反応生成物と不飽和カルボン酸(a)を反応させる工程において、反応は通常、60〜120℃、好ましくは70〜100℃の温度で行われる。
【0035】
上記本発明の不飽和結合含有水性樹脂は、必要に応じて親水性有機溶剤にて希釈した後、定法にて水に溶解又は分散することができる。
【0036】
そのような目的で使用される親水性有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記本発明の不飽和結合含有水性樹脂は、水に対して溶解又は分散可能であるので、塗料、インク、接着剤などの分野における水性硬化性組成物に適用することができる。
【0038】
本明細書において、水に対して溶解した状態である水溶化物とは水溶化物の平均粒子径が10nm以下の場合であり、水に対して分散した状態である水分散体とは水分散体の平均粒子径が10nmを超える場合をいう。
【0039】
本明細書において、平均粒子径は「SALD−3100」(商品名、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置)にて、試料を脱イオン水にて希釈して、20℃にして測定した時の値である。
【0040】
硬化性水性樹脂組成物
本発明の硬化性水性樹脂組成物は、上記不飽和結合含有水性樹脂以外に、水性バインダー樹脂を包含することができる。かかる水性バインダー樹脂としては、水に溶解又は分散可能な水性樹脂を使用することができ、その樹脂種には特に限定はない。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0041】
本発明の硬化性水性樹脂組成物において、上記不飽和基含有水性樹脂と水性バインダー樹脂の使用割合としては、水性バインダー樹脂固形分質量100質量部に対して不飽和基含有水性樹脂が1〜40質量部、好ましくは5〜30質量部となるような割合で含まれると、硬化性水性樹脂組成物の貯蔵安定性と形成塗膜の造膜性、耐水性の点から望ましい。
【0042】
また、上記水性バインダー樹脂は、水に対する溶解性又は分散性の観点から、親水性基としてアニオン性基、例えばカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類及びアンモニア等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
上記水性バインダー樹脂が、分子中にカルボキシル基を有していると、貯蔵時には水に対する親水性基として作用でき、水性バインダー樹脂に水分散性又は水溶解性を付与することができ、一方、塗膜形成時において、上記不飽和結合含有水性樹脂にカルボジイミド基が残存している場合は、架橋官能性基として作用することができるため、耐水性などの塗膜物性向上に貢献することができる。
【0044】
また、上記水性バインダー樹脂は、不飽和脂肪酸に由来するものであれば、上記本発明の不飽和結合含有水性樹脂との相溶性が改良され、硬化性及び造膜性が格段に向上し、形成される塗膜に酸化硬化性と肉持ち感を与えることが可能となる。
【0045】
上記水性バインダー樹脂は、形成塗膜の耐候性等の観点から、その成分の一部としてアクリル樹脂水分散体及び/又はウレタン樹脂水分散体を含むことが好ましい。
【0046】
かかるアクリル樹脂水分散体としては、重合性不飽和モノマーの共重合体が水に分散してなるものが挙げられ、かかる重合性不飽和モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル樹脂水分散体を容易に製造することができる。
【0048】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤を挙げることができる。
【0049】
アニオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
両イオン性乳化剤としては、例えば、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0052】
上記乳化剤として、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
【0053】
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして通常0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内であることができる。
【0054】
本発明において、上記アクリル樹脂水分散体が不飽和脂肪酸に由来するものである場合、アクリル樹脂水分散体への不飽和脂肪酸の導入方法は、特に制限されるものではないが、製造安定性、最終的に得られる組成物中の有機溶剤量を低減させることが可能であることから、不飽和脂肪酸とエポキシ基含有重合性不飽和モノマーを反応させて得られる不飽和脂肪酸変性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を水性媒体中に平均粒子径が500nm以下、水性媒体中に平均粒子径が500nm以下、好ましくは80〜400nm、さらに好ましくは100〜300nmの範囲内程度になるように微分散させ、得られるモノマー乳化物を重合することによって得られる方法によるものであることが望ましい。
【0055】
本明細書において、水性媒体とは、水、または水を主として親水性有機溶剤などの有機溶剤を溶解してなる水−有機溶剤混合溶液などを挙げることができる。
【0056】
上記混合物の水性媒体中への微分散は、通常、高エネルギーせん断能力を有する分散機を用いて行うことができる。その際に使用しうる該分散機としては、例えば、高圧乳化装置、超音波乳化機、高圧コロイドミル、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの分散機は、通常、10〜1000MPa、好ましくは50〜300MPa程度の高圧下で操作することができる。また、該機械にて分散を行う前に、該モノマー混合物をあらかじめディスパー等で予備乳化してもよい。得られる乳化物の重合は、例えば、ミニエマルション重合法に従い、微分散後の乳化物を撹拌機を備えた反応器に全量仕込み、重合開始剤を添加し、攪拌しながら加熱することにより行うことができる。
【0057】
また、上記硬化性水性樹脂組成物は、形成塗膜の強靭性などの点からバインダー成分としてウレタン樹脂水分散体を含むことができる。かかるウレタン樹脂水分散体としては、従来公知のものを制限なく使用でき、例えば、ポリイソシアネート、ポリオール及びカルボキシル基含有ジオールを反応させてなるウレタンプレポリマーに由来するウレタン樹脂水分散体を挙げることができる。
【0058】
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0059】
上記ポリオールとしては、例えば重量平均分子量が200〜10000範囲内のものを使用でき、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等)との縮重合させたポリオール、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、1,6ヘキサンジオール等の低分子量グリコール類;等が挙げられ、単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0060】
また、ウレタン樹脂水分散体が不飽和脂肪酸に由来するものである場合、ポリオールが、その成分の一部として脂肪酸エステルを含有することによって、該ウレタン樹脂水分散体を製造することができる。
【0061】
そのような目的で使用される脂肪酸エステルは、1分子中に水酸基を2つ以上含有し、通常、エステル結合を介して脂肪酸に由来する構造単位を有するものであり、低分子量のものから高分子量のものまで特に制限なく、本発明方法で得られる水性樹脂分散体の用途等に応じて適宜選択することが可能である。
【0062】
かかる脂肪酸エステルとして、まずグリセリンモノ脂肪酸エステルが使用できる。該グリセリンモノ脂肪酸エステルには、例えばグリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレートなどが挙げられ、さらにグリセリンと炭素数10以上の脂肪酸とのエステル化反応、油脂とグリセリンとのエステル交換反応などにより得られるものが挙げられる。またグリシドールと脂肪酸との反応生成物であってもよい。
【0063】
上記カルボキシル基含有ジオールとしては、例えばジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等が挙げられる。
【0064】
上記ウレタンプレポリマーは、中和剤により中和することができる。中和剤としては、特に制限はなく、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミンなどのアミン化合物が挙げられる。
【0065】
また、上記ウレタンプレポリマーは、必要に応じて鎖延長してもよい。
【0066】
鎖延長反応に用いられる鎖延長剤としては、少なくとも2個の活性水素基を有する化合物であり、例えば、1,4ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、3−メチルー1,5ペンタン、ジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、シクロヘキサンジメタノール等のアルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミン類、モノエタノールアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン;ヒドラジン、ヒドラジン水和物等のヒドラジン系化合物;水等が使用可能である。
【0067】
また、上記硬化性水性樹脂組成物は、酸化硬化を促進させるための触媒として金属ドライヤーを含有することもできる。かかる金属ドライヤーとしては、例えば、アルミニウム、カルシウム、セリウム、コバルト、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と酸との塩が挙げられ、該酸としては、例えば、カプリン酸、カプリル酸、イソデカン酸、リノレン酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、オクテン酸、オレイン酸、パルミチン酸、樹脂酸、リシノール酸、大豆油脂肪酸、ステアリン酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
【0068】
上記金属ドライヤーの配合量としては、硬化性水性樹脂組成物中に含まれる樹脂固形分の合計を基準にして、0.001〜10質量%、特に0.02〜5質量%の範囲内であることが望ましい。
【0069】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、以上に述べた硬化性水性樹脂組成物を含んでなるものである。
【0070】
上記硬化性水性樹脂組成物を水性塗料組成物に適用した場合においては、クリヤー塗料、エナメル塗料のいずれにも適用できる。
【0071】
エナメル塗料として適用する場合には、顔料分として、従来公知の着色顔料,光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料等を配合することができる。
【0072】
上記水性塗料組成物においては、上記成分の他に顔料分散剤、界面活性剤、表面調整剤、可塑剤、沈降防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、硬化触媒、分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、pH調整剤、フラッシュラスト抑止剤、アルデヒド捕捉剤、層状粘度鉱物、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン等の添加剤を適宣選択し組み合わせて含有することができる。
【0073】
本発明は、被塗面に上記水性塗料組成物を塗装する塗装方法である。
【0074】
被塗面としては、例えば、鉄、アルミニウム等の金属面;プラスチック等の有機素材面;コンクリート面、モルタル面、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材等の無機基材面;これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系などの塗膜面を挙げることができる。
【0075】
上記水性塗料組成物の塗装は、エアスプレー、エアレススプレー、ローラー、リシンガン、万能ガン、ハケ、静電塗装などの公知の器具を用いて行うことができる。また、乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0077】
不飽和基含有樹脂水分散体の製造
実施例1
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリカルボジイミド「カルボジライトV−05」(注1)を1024.4部、片末端メトキシ変性ポリエチレングリコール「ユニオックスM−400」(注2)を800部仕込み、80℃で3時間、イソシアネート基が実質的に消失するまで反応させた。その後、アマニ油脂肪酸を980部加えてさらに80℃で4時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル701部を添加し均一になるまで攪拌した。これに脱イオン水3505部を1時間かけて添加し、固形分40.3%の半透明の不飽和基含有樹脂水分散体(A−1)を得た。該不飽和基含有樹脂水分散体(A−1)における不飽和基含有樹脂の理論カルボジイミド当量は7010である。
(注1)「カルボジライトV−05」:商品名、日清紡株式会社製、イソシアネート両末端ポリカルボジイミド、イソシアネート量8.2%、カルボジイミド当量262、
(注2)「ユニオックスM−400」:商品名、日本油脂社製、片末端メトキシ変性ポリエチレングリコール、分子量400。
【0078】
実施例2
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコにポリカルボジイミド「カルボジライトV−05」(注1)を1024.4部、片末端メトキシ変性ポリエチレングリコール「ユニオックスM400」(注2)を800部仕込み、実質的にイソシアネート基が消失するまで、80℃で3時間反応させた。その後、ソルビン酸392部を加えてさらに80℃で4時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル554部で希釈し、均一になるまで攪拌した。これに脱イオン水2770部を1時間かけて添加し、固形分40.2%の半透明の不飽和基含有樹脂水分散体(A−2)を得た。該不飽和基含有樹脂水分散体(A−2)における不飽和基含有樹脂の理論カルボジイミド当量は5540である。
【0079】
実施例3
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコにポリカルボジイミド「カルボジライトV−05」(注1)を1024.4部、片末端メトキシ変性ポリエチレングリコール「ユニオックスM−400」(注2)を800部仕込み、実質的にイソシアネート基が消失するまで80℃で3時間反応させた。その後、ソルビン酸336部を加えてさらに80℃で4時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル554部で希釈し、均一になるまで攪拌した。これに脱イオン水2770部を1時間かけて添加し、固形分40.3%の半透明の不飽和基含有樹脂水分散体(A−3)を得た。該不飽和基含有樹脂水分散体(A−3)における不飽和基含有樹脂の理論カルボジイミド当量は2400である。
【0080】
実施例4
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコにポリカルボジイミド「カルボジライトV−05」(注1)を1024.4部、片末端メトキシ変性ポリエチレングリコール「ユニオックスM−550」(注3)を1100部仕込み、実質的にイソシアネート基が消失するまで90℃で3時間反応させた。その後、アマニ油脂肪酸490部加えてさらに80℃で4時間反応させた後、脱イオン水3194部を添加し、固形分45%の半透明の不飽和基含有樹脂水分散体(A−4)を得た。該不飽和基含有樹脂水分散体(A−4)における不飽和基含有樹脂の理論カルボジイミド当量は1210である。
(注3)「ユニオックスM−550」:商品名、日本油脂社製、片末端メトキシ変性ポリエチレングリコール、分子量550。
【0081】
不飽和基を有さない樹脂水分散体の製造
比較例1
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコにポリカルボジイミド「カルボジライトV−05」(注1)を1024.4部、片末端メトキシ変性ポリエチレングリコール「ユニオックスM−400」(注2)800部仕込み、イソシアネート基が消失するまで80℃で3時間反応させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル540部で希釈し、均一になるまで攪拌した。これに脱イオン水2196.6部を1時間かけて添加し、固形分40.0%の半透明の樹脂水分散体(A−5)を得た。該樹脂水分散体(A−5)における樹脂の理論カルボジイミド当量は466である。
【0082】
不飽和脂肪酸変性アクリル樹脂水分散体の製造
製造例1
ガラスビーカーに下記成分を入れ、ディスパーで2000rpmで15分間攪拌し予備乳化液を製造した後、この予備乳化液を高圧エネルギーを加えて流体同士を衝突させる高圧乳化装置にて100MPaで高圧処理することにより平均粒子径が190nmのモノマー乳化物を得た。
モノマー乳化物組成
脂肪酸変性モノマー (注4) 30部
n−ブチルメタクリレート 25部
i−ブチルメタクリレート 27部
2−エチルヘキシルメタクリレート 17部
メタクリル酸 1部
「Newcol707SF」(注5) 10部
脱イオン水 85部
次いで上記モノマー乳化物をフラスコに移し、脱イオン水にて固形分が45%となるように希釈した。その後85℃まで昇温させ「VA−086」(注6)2部を脱イオン水10部に溶解させた開始剤水溶液をフラスコへ投入し、温度を保持しながら3時間反応させ、その後「VA−086」(注6)0.5部を脱イオン水10部へ溶解させた開始剤水溶液をフラスコに添加し、温度を保持しながら1時間反応させた後、40℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノールでpHを8.0に調節し、固形分濃度40%、平均粒径が185nmのアクリル樹脂分散体(B−1)を得た。
(注4)脂肪酸変性モノマー:攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、サフラワー油脂肪酸280部、グリシジルメタクリレート142部を仕込み、140℃で5時間反応させて得た反応生成物、
(注5) 「Newcol707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、有効成分30%、
(注6)「VA−086」:商品名、和光純薬社製、2,2´‐アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]。
【0083】
不飽和脂肪酸変性されていないアクリル樹脂水分散体の製造
製造例2
容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水28.5部、「Newcol707SF」0.1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。この中に下記組成をエマルション化してなるプレエマルションの3%分及び0.5部の過硫酸アンモニウムを10部の脱イオン水に溶解させた開始剤水溶液10.5部の25%分を添加し、添加20分後から残りのプレエマルション及び残りの過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、これをさらに2時間85℃で保持した後、40〜60℃に降温した。次いでアンモニア水でpH7に調整し、固形分55%、平均粒子径180nmのアクリル樹脂分散体(B−2)を得た。
プレエマルション組成
脱イオン水 36.8部
スチレン 15部
メチルメタクリレート 40部
n−ブチルアクリレート 25部
2−エチルヘキシルアクリレート 2部
ヒドロキシエチルアクリレート 2部
メタクリル酸 3部
「Newcol707SF」 6.6部。
【0084】
不飽和脂肪酸変性ウレタン樹脂水分散体の製造
製造例3
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに「エマルジーMU」 (注7)354部、「プラクセル205」(注8)550部、イソホロンジイソシアネート892部、N−メチルピロリドン481.5部を仕込み、80℃で4時間反応させウレタンプレポリマーを得た。50℃以下に冷却後、N−メチルピロリドンを802.5部加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。次いで脱イオン水1790部を0.5時間かけて添加しプレポリマーの水分散体を得た。この水分散体に10%エチレンジアミン水溶液601.1部を0.5時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間熟成させ、平均粒子径91nm、不揮発分35.1%の不飽和脂肪酸変性ウレタン樹脂水分散体(B−3)を得た。
(注7)「エマルジーMU」:理研ビタミン社製、蒸留モノ脂肪酸グリセライド(グリセリンモノ脂肪酸エステル含量93%以上、ヨウ素価108〜120)、
(注8)「プラクセル205」:商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトンジオール。
【0085】
実施例5〜11及び比較例2〜3
下記表1に記載の配合組成により、水性樹脂組成物を得た。各水性樹脂組成物を下記試験に供し評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0086】
【表1】

【0087】
(注9)「DICNATE1000W」:大日本インキ社製、商品名、金属ドライヤー、Co含有率3.6%、
(注10)「テキサノール」:イーストマンケミカル社製、商品名、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、
(*1)硬化性
各サンプル試料を乾燥膜厚で40μmになるようにアプリケーターでポリプロピレン板に塗装し、25℃で10日間養生させて膜を作成し、4×4cmの大きさにカットし、試験片とした。得られた試験片を、アセトン中で常温24時間浸漬した。抽出前後の塗膜質量から溶剤抽出残分を下記の通り算出した。
溶剤抽出残分(%)=(抽出した後の膜の質量/抽出前の膜の質量)×100(%)
(*2)相溶性
各サンプル試料を乾燥膜厚で40μmになるようにアプリケーターでガラス板に塗装し、25℃で10日間養生させて試験板として下記評価基準で目視評価した。
○:透明、△:ブルーイング、×:半透明。
(*3)耐水性
各サンプル試料を乾燥膜厚で40μmになるようにアプリケーターでブリキ板に塗装し、25℃で10日間養生させて試験板とし、これを上水に1週間浸漬させ、膜の白化度合いを目視評価した。
〇:変化なし、△:やや白化、×:白化が著しい。
(*4)貯蔵性
各サンプル試料を40℃で1ヶ月貯蔵した後の塗料状態を評価した。
○:変化なし、△:やや増粘、×:凝集、ブツあり。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和結合を有するカルボン酸(a)、イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)及びポリアルキレングリコール系化合物(c)を原料とする不飽和結合含有水性樹脂。
【請求項2】
不飽和結合を有するカルボン酸(a)が、その成分の一部として不飽和脂肪酸を含む請求項1記載の不飽和結合含有水性樹脂。
【請求項3】
不飽和結合を有するカルボン酸(a)が、その成分の一部として下記式で表されるカルボン酸を含む請求項1または2に記載の不飽和結合含有水性樹脂。
【化1】

(上記式において、R、R、R、R、及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数が1〜10の有機基である。)
【請求項4】
イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(b)とポリアルキレングリコール系化合物(c)とを反応させる工程、
前記工程で得られた反応生成物と不飽和結合を有するカルボン酸(a)を反応させる工程を含むことを特徴とする不飽和結合含有水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂を含む硬化性水性樹脂組成物。
【請求項6】
水性バインダー樹脂をさらに含む請求項5に記載の硬化性水性樹脂組成物。
【請求項7】
水性バインダー樹脂が、アクリル樹脂水分散体及び/又はウレタン樹脂水分散体を含む請求項6に記載の硬化性水性樹脂組成物。
【請求項8】
水性バインダー樹脂が、不飽和脂肪酸に由来するものである請求項6または7に記載の硬化性水性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれか1項に記載の硬化性水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物。
【請求項10】
被塗面に、請求項9記載の水性塗料組成物を塗装する塗装方法。

【公開番号】特開2008−7691(P2008−7691A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181161(P2006−181161)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】