説明

両振り四点曲げ試験装置

【課題】両振り四点曲げ試験を行う際に試験片の真の疲労強度が計測できるようにする。
【解決手段】間隔Lを隔てて試験片1の一側1aと他側1bの対応位置を支持する固定支持手段2,3と、固定支持手段2,3の間隔L内において試験片1の一側1aに離間して載荷するようにした2つの第1載荷点4a,4bと、固定支持手段2,3の間隔L内において試験片1の他側1bに離間して載荷するようにした2つの第2載荷点5a,5bとを有し、第1載荷点4a,4bと第2載荷点5a,5bが異なる位置で試験片1に載荷するよう配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片に正負の曲げ応力を繰り返し作用させて材料の疲労強度を試験する両振り四点曲げ試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試験片の曲げ試験装置としては、水平方向に所定の距離だけ離れた位置に2つの支点を固定し、その各支点によって試験片の一側(下面)を支持した状態で、2つの支点の間において試験片の他側(上面)から、三点曲げの場合には1つの押圧点を、四点曲げの場合には2つの押圧点を押しつけて試験片に曲げ応力を与えるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1では、試験片を一方向のみに曲げる片振りであるため、一方向の曲げに対する材料強度データが得られるのみであるという不都合があった。即ち、機械部材等の設計においては、試験片に正負の曲げ応力を繰り返し作用させる両振りでの疲労強度データが要求される場合が多いが、片振りでの材料強度データでは材料に要求される真の性能を把握できない可能性があった。
【0004】
このため、試験片に正負の曲げ応力を繰り返し与えられるようにした両振りの四点曲げ試験装置がある(特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2の四点曲げ試験装置は、センター治具と該センター治具の両脇に位置するサイド治具とを有し、サイド治具にはローラによる下側支点と上側支点が上下で一致して備えられており、又、センター治具には左右に間隔を隔てて配置したローラによる下側載荷点と上側載荷点が上下で一致した位置に備えられている。試験片は、サイド治具の下側支点と上側支点の間、及びセンター治具の下側載荷点と上側載荷点の間に配置する。
【0006】
そして、中央のセンター治具を上下動させることにより、センター治具の下側載荷点と上側載荷点によって、試験片に正負の曲げを交互に与えて、試験片の一側と他側に圧縮応力から引っ張り応力までを繰り返して負荷できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−258454号公報
【特許文献2】特開2000−131206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した特許文献2に記載の四点曲げ試験装置においては、サイド治具に備えられる下側載荷点と上側載荷点が、上下で一致した位置に配置されているために、以下のような問題を有していた。
【0009】
即ち、試験片に正負の曲げ負荷を繰り返し与える両振り曲げ試験においては、試験片の載荷点が押圧される側とは反対側の面に疲労破壊が発生することが知られているが、特許文献2のように、下側載荷点と上側載荷点を上下で一致する位置に設けた構成では、疲労破壊が発生する部位に載荷点による押圧負荷が作用することになるため、試験片の実際の疲労強度とは異なる性能が計測されてしまう可能性を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、両振り四点曲げ試験を行う際に試験片の真の疲労強度が計測できるようにした両振り四点曲げ試験装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、間隔を隔てて試験片の一側と他側の対応位置を支持する固定支持手段と、該固定支持手段の間隔内において前記試験片の一側に離間して載荷するようにした2つの第1載荷点と、前記固定支持手段の間隔内において前記試験片の他側に離間して載荷するようにした2つの第2載荷点とを有し、
前記第1載荷点と前記第2載荷点が異なる位置で試験片に載荷するよう配置されたことを特徴とする両振り四点曲げ試験装置、に係るものである。
【0012】
上記両振り四点曲げ試験装置において、2つの第1載荷点が、2つの第2載荷点を挟む間隔を有して配置されたことは好ましい。
【0013】
又、上記両振り四点曲げ試験装置において、2つの第1載荷点と2つの第2載荷点が、押し引き手段により駆動される1つの移動ブロックに備えられたことは好ましい。
【0014】
又、上記両振り四点曲げ試験装置において、2つの第1載荷点と2つの第2載荷点の少なくとも一方が、離間間隔を調整可能に支持されたことは好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の両振り四点曲げ試験装置によれば、両振り四点曲げ試験により試験片の真の疲労強度が計測できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の両振り四点曲げ試験装置の第1の実施例の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の両振り四点曲げ試験装置の第2の実施例の概略を示す斜視図である。
【図3】本発明の両振り四点曲げ試験装置の第3の実施例の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0018】
図1は本発明の両振り四点曲げ試験装置の第1の実施例を示すもので、試験片1の一側1a(図1の下面)と他側1b(図1の上面)の上下同一位置を、所定の間隔L(支持スパン)を隔てて支持するようにした例えばロール2a,2b、3a,3bからなる固定支持手段2,3を設ける。
【0019】
一方、前記固定支持手段2,3の間隔L(支持スパン)内における前記試験片1の一側1aには、所定の離間間隔S1(載荷スパン)を有して、矢印方向A方向から試験片1に対して押圧力を載荷する例えばロールからなる2つの第1載荷点4a,4bを設ける。2つの第1載荷点4a,4bは、第1押圧手段4によって同時に同一押圧力で押圧されるようになっている。又、前記固定支持手段2,3の間隔L(支持スパン)内における前記試験片1の他側1bには、所定の離間間隔S2(載荷スパン)を有して、矢印B方向から試験片1に対して押圧力を載荷する例えばロールからなる2つの第2載荷点5a,5bを設ける。2つの第2載荷点5a,5bは、第2押圧手段5によって同時に同一押圧力で押圧されるようになっている。
【0020】
そして、前記第1載荷点4a,4bと前記第2載荷点5a,5bは、互いに異なる位置で試験片1に対する載荷を行うように、上下の位置を試験片1の長手方向へずらして配置している。
【0021】
図1に実施例では、前記第1載荷点4a,4bの離間間隔S1は、前記第2載荷点5a,5bの離間間隔S2よりも大きくなっており、2つの第1載荷点4a,4bは、2つの第2載荷点5a,5bを挟むように配置されている。
【0022】
6は前記試験片1の表面の状態を光学的或いは磁気的方法等によって非接触で観察するようにした観察装置である。試験片1の表面の状態を観察する方法としては、前記観察装置6の他に、試験片1の表面に歪み計等を設置して観察してもよく、或いは目視によって観察してもよい。
【0023】
次に、図1の実施例の作動を説明する。
【0024】
図1の両振り四点曲げ試験装置により試験片1の両振りを行って疲労強度試験を実施するには、所定の間隔L(支持スパン)で配置した固定支持手段3によって試験片1を支持する。
【0025】
続いて、2つの第1載荷点4a,4bにより試験片1を下側からA方向に押圧して試験片1を上側へ曲げる負荷を与える。続いて、2つの第2載荷点5a,5bにより試験片1を上側からB方向に押圧して試験片1を下側へ曲げる負荷を与える。前記第1載荷点4a,4b及び第2載荷点5a,5bによって試験片1に負荷する押圧力は、実機において材料が受けることが予定される押圧力に基づいて決定される。
【0026】
上記したように、第1載荷点4a,4bによる試験片1の押圧と、第2載荷点5a,5bによる試験片1の押圧による正負の押圧を繰り返すことにより、両振りによる試験片1の疲労強度試験が行われる。疲労強度試験では、前記試験片1に対する正負の押圧操作を開始してから試験片1が破断するまでの応力負荷数をカウントしており、試験片1が破断されるまでカウントされた応力負荷数によって試験片1の疲労強度が計測される。
【0027】
又、前記したように、試験片1に対する正負の押圧を繰り返して行くと、前記破断に至る前に、試験片1の表面には疲労による表面粗度の変化や亀裂が発生するようになる。このため、試験片1の表面の状態を観察装置6によって観察することによって、試験片1が破断に至るまでの試験片1の状態の変化を観察することができる。
【0028】
この時、図1の両振り四点曲げ試験装置では、第1載荷点4a,4bの離間間隔S1に対して、第2載荷点5a,5bの離間間隔S2が小さいために、第2載荷点5a,5bの押圧によって上から下へ曲げられる試験片1の曲り角は、第1載荷点4a,4bの押圧によって下から上へ曲げられる試験片1の曲り角よりも大きくなる。このため、第1載荷点4a,4bによる押圧力と第2載荷点5a,5bによる押圧力を同一とした場合には、試験片1が受ける曲げ応力は、第1載荷点4a,4bよる応力よりも第2載荷点5a,5bによる応力の方が大きくなる。
【0029】
このため、前記したように試験片1に正負の曲げを与える操作を継続すると、試験片1における第2載荷点5a,5bとは反対側の一側(下面)に亀裂等の疲労破壊が発生するようになる。即ち、図1の構成では、離間間隔S1が狭い第2載荷点5a,5bとは反対側の試験片1の一側1a(下面)における第1載荷点4a,4b間の発生範囲Xに疲労破壊が限定して発生するようになる。従って、疲労破壊の観察は、観察装置6或いは目視によって前記試験片1の下面の第1載荷点4a,4bの間、特に発生範囲Xを観察すればよく、よって、研究者による観察の手間を大幅に削減することができると共に、確実な計測ができるようになる。
【0030】
図1の両振り四点曲げ試験装置では、第1押圧手段4による第1載荷点4a,4bの押圧と第2押圧手段5による第2載荷点5a,5bの押圧を交互に行って両振りを行うために、第1押圧手段4による押し引き操作と第2押圧手段5による押し引き操作を同期して行う必要がある。
【0031】
図2は、図1における第1押圧手段4による押し引き操作と第2押圧手段5による押し引き操作を同期させる必要をなくした本発明の両振り四点曲げ試験装置の第2の実施例を示すもので、図2では、前記第1載荷点4a,4bと第2載荷点5a,5bを、1つの移動ブロック7に搭載し、該移動ブロック7を1つの押し引き手段8によってA方向及びB方向へ押し引き駆動するようにしている。図2の構成によれば、移動ブロック7を1つの押し引き手段8によって駆動するのみで、前記第1載荷点4a,4bと第2載荷点5a,5bにより試験片1を一側1aと他側1bから交互に押圧して両振りを行うことができる。
【0032】
図3は、本発明の両振り四点曲げ試験装置の第3の実施例を示すものであり、この実施例では、前記第1載荷点4a,4bと第2載荷点5a,5bの少なくとも一方が、離間間隔を調整可能にしている。図3の実施例は図2の装置に適用した場合を示したもので、第1載荷点4a,4bを別個に支持するようにした支持台9を設け、該支持台9を前記移動ブロック7に設けた案内溝10に沿って試験片1の長手方向へ移動可能としたことにより離間間隔S1を変更できるようにしている。図3では第1載荷点4a,4bを移動できるようにした場合を示したが、第2載荷点5a,5bを移動できるようにしてもよく、又、第1載荷点4a,4bと第2載荷点5a,5bの両方を移動できるようにしてもよい。
【0033】
図3に示すように、第1載荷点4a,4b及び第2載荷点5a,5bの少なくとも一方の離間間隔S1,S2を変更できるようにすると、試験片1に与える曲げ応力を変更することができる。
【0034】
尚、本発明の両振り四点曲げ試験装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、載荷点には種々の形状のものを用い得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 試験片
1a 一側
1b 他側
2,3 固定支持手段
4a,4b 第1載荷点
5a,5b 第2載荷点
7 移動ブロック
8 押し引き手段
L 間隔
S1,S2 離間間隔
S3 離間間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を隔てて試験片の一側と他側の対応位置を支持する固定支持手段と、該固定支持手段の間隔内において前記試験片の一側に離間して載荷するようにした2つの第1載荷点と、前記固定支持手段の間隔内において前記試験片の他側に離間して載荷するようにした2つの第2載荷点とを有し、
前記第1載荷点と前記第2載荷点が異なる位置で試験片に載荷するよう配置されたことを特徴とする両振り四点曲げ試験装置。
【請求項2】
2つの第1載荷点が、2つの第2載荷点を挟む間隔を有して配置されたことを特徴とする請求項1に記載の両振り四点曲げ試験装置。
【請求項3】
2つの第1載荷点と2つの第2載荷点が、押し引き手段により駆動される1つの移動ブロックに備えられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の両振り四点曲げ試験装置。
【請求項4】
2つの第1載荷点と2つの第2載荷点の少なくとも一方が、離間間隔を調整可能に支持されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の両振り四点曲げ試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate