説明

両親媒性ブロックコポリマー

この発明は、非共有結合性架橋を形成することのできる両親媒性マルチブロックコポリマーに関するものである。この非水溶性コポリマーは、親水性中央ブロックと疎水性末端ブロックを有し、高い水伝達又は透過性を有している。このコポリマーは、液体の吸収及び/又は伝達を必要とする応用に用いることができ、好適な液体は、水又は親水性の液体例えばグリセリン、グリコール及びアルコールである。この両親媒性マルチブロックコポリマーの一つの特定な用途は、ヒドロゲル材料としての用途である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非共有結合性の架橋を形成することのできる両親媒性のマルチブロックコポリマーに関するものである。この非水溶性コポリマーは、親水性の中央ブロックと疎水性の末端ブロックを有し、高い水伝達及び/又は透過性を有している。このコポリマーは、液体の吸収及び伝達を必要とする応用において利用されうる(好適な液体は、水又は親水性の液体例えばグリセリン、グリコール及びアルコールである)。この両親媒性マルチブロックコポリマーの一つの特定の用途は、ヒドロゲル材料としての利用である。
【背景技術】
【0002】
両親媒性ブロックコポリマーは、周知である。両親媒性ポリマーの大部分は、水に溶解するジブロックコポリマーである。これらのジブロックポリマーは、水溶液の増粘のため及び粘弾性ゲル(例えば、米国特許第6,506,837号;6,437,040号及び米国特許出願2003/0162896に記載されたもの)の形成のために利用される。
商品名プルロニックとして市販されている公知の両親媒性のトリブロックコポリマーも又、文献に十分に記載されている。これらのトリブロックコポリマーは、親水性の末端ブロックと疎水性の中央ブロックを含むことができ、又はその逆である。この親水性ブロックセグメントは、ポリエチレンオキシド(PEO)ホモポリマーに限られる。これらの親水性末端ブロックを含むトリブロックは、水に溶解性である。疎水性の末端ブロックを含むトリブロックコポリマーは、水に不溶性となろう。
【0003】
両親媒性ジブロックポリマーは、米国特許第6,111,025号に記載されているような安定な遊離基化学薬品を用いて生成することができる。これらのポリマーは、ジブロック構造に限られており、更に、TEMPOベースのニトロキシド誘導体の、対応するブロックコポリマーの合成のための利用を示している。このクラスの遊離基制御剤[例えば、Macromolecules 1996, 29, 5245-5254頁に記載された (2',2',6',6'−テトラメチル−1'−ピペリジルオキシ−)メチルベンゼン]は、スチレン及びスチレン誘導体の重合を制御するだけであって、アクリル系誘導体の制御された重合には適していない。米国特許第6,767,968号は、疎水性及び親水性モノマーユニットの両方を含むランダムブロックを有するコポリマーを生成するためのリビングタイプ又はセミリビングタイプのラジカル重合の利用を記載している。これらのブロックポリマーは水及びアルコールに可溶性である。
【0004】
Arkema社の米国特許出願2006/052545は、水を吸収すること及び湿潤条件下で接着性を与えることのできる、制御されたラジカル重合により形成されるジブロックコポリマー接着剤を記載している。このポリマーは、水溶性でありえた。
【0005】
油ベースの組成物における添加剤及び増粘剤としての使用のための両親媒性ブロックポリマーは、WO05/056739に記載されている。
【0006】
ヒドロゲルは、典型的には、水性液体を吸収することのできるポリマー材料である。ヒドロゲルは、一般に、水に不溶性であり続けるように化学的に架橋された親水性ポリマー材料である。ヒドロゲルは、しばしば、傷の治療に、衛生用品に、濾過補助に、可撓性クッション材料として、制御放出剤として、及び水ベースの液体の吸着に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】

【特許文献1】米国特許第6506837号明細書
【特許文献2】米国特許第6437040号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2003/0162896号明細書
【特許文献4】米国特許第6111025号明細書
【特許文献5】米国特許第6767968号明細書
【特許文献6】米国特許出願第2006/052545号明細書
【特許文献7】国際公開第05/056739号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Macromolecules 1996, 29, 5245-5254頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
優れた水吸収性及び透過性を有して、共有結合性の架橋によらないで形成された両親媒性ポリマー材料に対する要求がある。共有結合性架橋の不在は、共有結合的に架橋された系にはない処理(溶液流延法、スピンコーティング、吹付け塗り、溶融加工、溶融混合などによる)の容易さを提供する。これらの物質の一つの利用は、ヒドロゲルとしてであろう。更に、この複合体の水の吸収/透過性並びに物理的及び機械的性質(例えば、膜などの応用のための丈夫な熱可塑性材料から感圧接着剤などの応用のための粘着性ゴムに及ぶ)を制御することができることへの要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚いたことに、親水性の中央ブロックと疎水性の外側ブロックの一般的構造を有するマルチブロックコポリマーのあるクラスが、注文通りの特性を有する両親媒性コポリマーを生成するための制御されたラジカル重合法によって作られるということが見出された。その上、その両親媒性トリブロックコポリマーの、物理的特性、機械的特性及び水の吸収/伝達特性は、各ブロックセグメントの各々のモノマーのレベル及び種類を調整することにより並びにそれらのブロックの大きさ及び比を調整することによって注文通りにすることができる。最適化することのできる性質の幾つかは、吸収されて伝達される水又は他の液体のレベル、ゲル強度、及び他の物理的及び機械的特性(例えば、材料は、もろい熱可塑性材料から粘性ゴムにまで及ぶ)を包含する。
【0011】
この発明は、親水性の中央ブロック;及び疎水性の末端ブロックを有する両親媒性マルチブロックコポリマー(このマルチブロックコポリマーは、水不溶性である)に関するものである。
【0012】
この発明は又、この両親媒性マルチブロックコポリマーの、他のポリマーとのブレンド、及び有用な製品、コーティング及びフィルムの生成におけるその利用にも関係する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明は、親水性コポリマーの中央ブロック及び疎水性の外側ブロックの一般的構造を有するマルチブロックコポリマーに関係する。これらの疎水性の末端ブロックは、物理的架橋を形成して水不溶性ポリマー複合体を形成する。
【0014】
「マルチブロック」コポリマーとは、ここで用いる場合、3以上のブロックを有する任意の制御された構造のポリマーを意味する。このコポリマー構造のすべての末端ブロックは、疎水性ブロックとなろう。ジブロックコポリマーは、特に除かれる。本発明のマルチブロックコポリマーの例には、トリブロックポリマー、ABABAブロックポリマー(式中、Aは疎水性ブロックであり、Bは親水性ブロックである)、ABCBAブロックコポリマー(式中、Aは疎水性ブロック、星状ブロックコポリマー、櫛状ポリマー、グラジエントポリマー、及び他の塊状構造を有するポリマー(これらは、当業者に公知となろう)であり;そしてCは、ホモポリマーであってもランダムコポリマーであってもよく、親水性であっても疎水性であってもよく、そしてA及びBとは組成が異なるブロックを表す)が含まれるが、これらに限られない。好適具体例において、このマルチブロックコポリマーは、ABA型のトリブロックコポリマーである。「コポリマー」とは、ここで用いる場合、少なくとも2つの異なる種類のブロックが存在し、各ブロックは一種より多くのモノマーユニットを含有しうることを意味する。
【0015】
「両親媒性」とは、ここで用いる場合、トリブロックコポリマーの中央ブロックは水溶性であり、水分散性であり、又は一般に水を吸収し且つ/又は伝達することができるが、末端ブロックは水不溶性であることを意味する。「分散性」とは、25℃で水と合わせたときにコポリマーが(更なる乳化剤などの物質を加えることなく)安定な均一な懸濁液を形成することを意味する。
【0016】
「水不溶性コポリマー」とは、ここで用いる場合、ポリマーブロックセグメントが水に不溶性又は非分散性であることを意味する。この両親媒性コポリマーは、25℃で、水に100mg/mL未満溶解し、一層好ましくは、50mg/mL未満、最も好ましくは、20mg/mL未満溶解する。「水不溶性コポリマー」セグメントは、ここで用いる場合、他の極性溶媒例えばC1-3アルコール中でも、一般に可溶性又は分散性でない。他方、両親媒性のジブロックコポリマーは、水に可溶性であり又は分散性である(本発明のものではない)。
【0017】
このトリブロックコポリマーの中央ブロックは、水に対する親和性を有しており又は親水性ポリマーと考えられる。「親水性」又は「親水性ポリマー」とは、ここで用いる場合、ポリマーブロックセグメントが水溶性、水分散性又は一般に、水を吸収し且つ/若しくは伝達することができることを意味する。親水性中央ブロックは、親水性のホモポリマー、一以上の親水性モノマーを含むランダムコポリマー、又は、一以上の親水性モノマー及び一以上の疎水性モノマーを含むランダムコポリマーであってよい。親水性中央ブロックポリマーの形成において有用なエチレン性不飽和モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、及びメタクリル酸及びアクリル酸の塩、エステル、無水物及びアミド;ジカルボン酸無水物;カルボキシエチルアクリレート;スチレンの親水性誘導体;アクリルアミドが含まれるが、これらに限られない。特に有用なモノマーには、無水マレイン酸、マレイン酸、置換された無水マレイン酸、無水マレイン酸のモノエステル、無水イタコン酸、イタコン酸、置換された無水イタコン酸、イタコン酸のモノエステル、フマル酸、無水フマル酸、フマル酸、置換された無水フマル酸、フマル酸のモノエステル、クロトン酸及びその誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、n−イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2−メチル2−プロパンスルホネート、ビニルピロリドン、2−カルボキシエチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートが含まれるが、これらに限られない。これらの酸モノマーの塩及びアミンの四級化バージョンも又、この発明において予想される。この発明の好適な親水性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸及びメタクリル酸の塩、メトキシエチルアクリレート、ジメチルアクリルアミド、2−カルボキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、及びイタコン酸が含まれる。
【0018】
中央ブロックの数平均分子量は、2〜160kg/モルの、好ましくは10〜120kg/モルの範囲内に、最も好ましくは、15〜100kg/モルの範囲内にある。
【0019】
マルチブロックコポリマーの末端ブロックは、同じであって、疎水性のホモポリマー、ランダムコポリマー(一以上の疎水性モノマーを含む)、又は一以上の疎水性モノマーを一以上の親水性モノマーと共に含むランダムコポリマーである。「疎水性」及び「疎水性ポリマー」とは、ここで用いる場合、ポリマーブロックセグメントが水に不溶性又は非分散性であることを意味する。これらの疎水性末端ポリマーブロックの形成に有用なエチレン性の不飽和モノマーの例には、スチレン、スチレンの疎水性誘導体、共役ジエン、C3-30の直鎖又は分枝鎖アルキル、及びアリール(メタ)アクリレート、オレフィン、フッ素含有モノマー、及びケイ素含有モノマーが含まれるが、これらに限られない。これらの疎水性モノマーの特定の例には、スチレン;アルファメチルスチレン、ラウリルメタクリレート(又は他の長鎖アルキルアクリレート又はメタクリレート、例えばC6−C30アルキルエステル2−エチルヘキシルアクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、及びオクチルメタクリレート、デシルアクリレート及びデシルメタクリレートなど)、一般的化学構造CF3(CF2)nCH2OCOC(R)=CH2の1,1−ジヒドロパーフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート(式中、Rは水素又はメチルであり、nは典型的には2〜20である)、ヘキサフルオロブチルアクリレート、トリイソプロピルシリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート及びt−ブチルメタクリレートが含まれる。好適なモノマーには、スチレン、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、一般的化学構造CF3(CF2)nCH2OCOC(R)=CH2の1,1−ジヒドロパーフルオロアルキルアクリレート及びメタクリレート(式中、Rは水素又はメチルであり、nは典型的には6〜18である)、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートが含まれる。
【0020】
各末端ブロックの数平均分子量は、0.5〜80kg/モルの、好ましくは、3〜60kg/モルの範囲にある。
【0021】
この発明で有用な両親媒性のトリブロックコポリマーの例には、PS−P(AA/BA)−PS、PS−P(AA/MEA)−PS、PS−P(MAA/BA)−PS、PS−P(BA/CEA)−PS、PS−PDMA−PS、PS−P(DMA/AA)−PS、P(tBA)−P(AA/MEA)−P(tBA)、PLMA−P(AA/MEA)−PLMA、PBHA−P(AA/MEA)−PBHA、PMMA−P(AA/BA)−PMMAなどが含まれるが、これらに限られない(式中、PSはポリスチレンであり、AAはアクリル酸であり、MAAはメタクリル酸であり、BAはブチルアクリレートであり、MEAはメトキシエチルアクリレートであり、tBAはt−ブチルアクリレートであり、PLMAはポリラウリルメタクリレートであり、PBHAはポリベヘニルアクリレートであり、CEAはカルボキシエチルアクリレートであり、そしてDMAはジメチルアクリルアミドである)。
【0022】
本発明のトリブロックコポリマーは、制御されたラジカル重合過程によって形成される。これらの過程は、一般に、典型的な遊離基開始剤を、重合過程を制御する化合物と結合させて、特定の組成の、制御された分子量及び狭い分子量範囲を有するポリマーを生成する。これらの使用する遊離基開始剤は、当分野で公知のものであってよく、それには、過酸化物、ヒドロ過酸化物及びアゾ化合物(熱により分解して遊離基を与える)が含まれるが、これらに限られない。一つの好適具体例において、この開始剤は又、制御剤をも包含することができる。
【0023】
本発明のブロックコポリマーは、好ましくは、制御されたラジカル重合(CRP)により形成されるものである。それらは、統計的分布又はモノマー間の反応速度の差異に関係して、ある種のモノマーの幾つかのブロックを含むことができるランダムコポリマーとは異なる。これらのランダム重合においては、本質的に、ポリマーの構造、分子量又は多分散性にわたって制御がなく、個々のポリマー鎖の相対的組成は、均一でない。
【0024】
コポリマーセグメントをCRP技術例えばニトロキシド媒介の重合を用いて合成する場合には、それは、しばしば、グラジエントコポリマー又はプロファイルドコポリマーと呼ばれる。この型のコポリマーは、伝統的な遊離基過程から得られるコポリマーと異なっている。このコポリマーの性質は、モノマーの組成、用いた制御剤、及び重合条件に依存する。例えば、伝統的なラジカル重合法によりモノマー混合物を重合させた場合には、ランダムコポリマーが生成される(モノマー混合物の組成が鎖の成長期間(約1秒)にわたって静的なままでいるので)。その上、反応中の遊離基の絶え間ない生成のために、これらの鎖の組成は、均一にならない。制御されたラジカル重合中には、これらの鎖は、重合工程中活性のままでおり(即ち、このモノマー混合物は、鎖の成長期間にわたって静的でない)、それ故、これらの鎖の組成は、均一であり、反応時間に関して対応するモノマー混合物に依存する。好適具体例において、この発明の親水性コポリマーセグメントは、プロファイルドコポリマーである。
【0025】
今や、プロファイルドコポリマーの有利な性質をブロックコポリマーの望ましい性質と結合させることが、有利な最終用途特性を有する物質へと、モノマー組成を適応させ、順番に連続させる(sequencing)ことによって導くということが発見された。プロファイルドブロック構造又はグラジエントブロック構造の利用は、最終的なポリマーの特性を応用での必要に基づいて整調(tuned)することを可能にする。例えば、伝統的なコポリマーにおいて達成された特性は、典型的には、取り込まれた合成モノマーにより与えられた特性の平均であるが、ブロックコポリマーは、それぞれの親ポリマーブロックセグメントに固有の特性を含む複合材料へと導く。プロファイルドセグメントを組み込むことにより、各ブロックセグメントの整調を可能にし、ときには、ポリマー合成過程を更に簡単にすることができる。一つの例は、セグメントのガラス転移温度(Tg)の、例えば低Tgモノマーの高Tgポリマーセグメント中への取り込みによる適応であり、これは、セグメントTgの全体的低下を与える。他の例は、セグメントの親水性を、疎水性コモノマーの取り込みによって低下させることである。
【0026】
この発明の一具体例において、トリブロックコポリマーは、熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーは、一般に、Aブロックが高Tgセグメント又は堅いブロックを含み、ブロックBが低Tgセグメント又は軟ブロックよりなるABA型トリブロックコポリマーよりなる。このAブロックのTgは、通常、0〜300℃に、好ましくは、25〜200℃に及び、一層好ましくは、30〜150℃に及ぶ。BブロックのTgは、典型的には、−200〜130℃、好ましくは−100〜70℃であり、最も好ましくは、−80〜30℃である。主な必要条件は、Aブロックが堅いセグメントを含み、Bブロックが軟らかいセグメントを含むことである。ABAトリブロック熱可塑性エラストマーは、両親媒性ポリマーの一つの特に有用なクラスである。プロファイルドコポリマーのアプローチは、結果として生じた弾性、Tg、粘着性、溶解度などを単にコモノマーの量及び組成を変えるだけで適応させる能力を与える。
【0027】
制御されたラジカル重合技術の例は、当業者には自明であり、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加断片化鎖移動重合(RAFT)、ニトロキシド媒介による重合(NMP)、ホウ素媒介による重合、及び触媒による鎖移動重合(CCT)を包含するが、これらに限られない。これらの型の重合の記載と比較は、ACS Symposium Series 768 表題「Controlled/Living Radical Polymerization: Progress in ATRP, NMP and RAFT」(Krzystof Matyjaszewski編), American Chemical Society, ワシントンD.C., 2000に記載されている。
【0028】
原則として、任意のリビング重合技術又は制御された重合技術(選択したモノマーと適合性のもの)を、ブロックコポリマーを作成するために利用することができる。制御されたラジカル重合の一つの好適な方法は、ニトロキシド媒介のCRPである。ニトロキシド媒介のCRPは、トリブロックコポリマーにおいて一層様々なモノマーの利用を可能にするので、好適である(アクリル系誘導体特に酸官能性のアクリル系誘導体の利用を含む)。
【0029】
ニトロキシド媒介の重合は、バルクで、溶媒中で、及び水性重合媒質中で起こりえて、他のラジカル重合に類似した反応時間と温度で現存する装置中で利用することができる。ニトロキシド媒介のCRPの一つの利点は、ニトロキシドが一般に無害であって、反応混合物中に残存してよいことである(他のCRP技術は、しばしば、制御化合物の最終的ポリマーからの除去を必要とする)。その上、試薬の厳重な精製は必要でない。
【0030】
この制御の機構は、図式的に下記のように表すことができる:
【化1】

(ここに、Mは、重合可能なモノマーを表し、Pは、成長中のポリマー鎖を表している)。
【0031】
この制御の鍵は、定数Kdeact、kact及びkpと関係している(T. Fukuda及びA. Goto, Macromolecules 1999, 32, 618-623頁)。もし比kdeact/kactが余りにも高いならば、重合はブロックされ、比kp/kdeactが余りに高いか比kdeact/kactが余りにも低い場合には、重合は制御されない。
【0032】
β置換されたアルコキシアミンは、幾つかの種類のモノマーの重合を開始して効率的に制御することを可能にするが、TEMPOベースのアルコキシアミン[例えば、Macromolecules 1996, 29, 5245-5254頁で言及された(2',2',6',6'−テトラメチル−1'−ピペリジルオキシ−)メチルベンゼン]はスチレン及びスチレン誘導体の重合のみを制御するということが見出された(P. Tordo等、Polym. Prep. 1997, 38, 729-730頁;及びC.J. Hawker等、Polym. mater. Sci. Eng., 1999, 80, 90-91頁)。TEMPO及びTEMPOベースのアルコキシアミンは、アクリル系誘導体の制御された重合に適さない。
【0033】
ニトロキシド媒介によるCRP過程は、US6,255,448、US2002/0040117及びWO00/71501(参考として、本明細書中に援用する)に記載されている。上記の特許は、様々な方法によるニトロキシド媒介による重合を記載している。これらの方法の各々は、本発明に記載されたポリマーを合成するために利用することができる。
【0034】
一つの方法では、ラジカル重合又は共重合が、考慮中のモノマーに対して、当業者に公知の通常の条件下で行われ、違いは、β置換された安定な遊離基を混合物に加えることである。重合目的のモノマーによっては、当業者には公知の技術であるが、伝統的な遊離基開始剤を重合混合物に導入することが必要な場合もある。
【0035】
他の方法は、考慮中のモノマーの、式(I)のβ置換されたニトロキシドから得られるアルコキシアミンを用いる重合を記載している(式中、Aは、一価又は多価の構造を表し、RLは、15より大きいモル重量を表し、一価の基であり、そしてn≧1)。
【化2】

【0036】
他の方法は、多官能性モノマー例えばアクリレートモノマー及びアルコキシアミン(但し、これらに限られない)の制御された温度での反応に基づく、式(I)の多価アルコキシアミンの形成を記載している。これらの式(I)の多官能性アルコキシアミン(n≧2)を、次いで、直鎖状、星状、及び/又は分枝鎖ポリマー及びコポリマー材料を、目的のモノマーから合成するために利用することができる。
【0037】
他の方法は、多様なポリマーの製法を記載しており、そこでは、少なくとも一種の考慮中のモノマーを、式(I)の配列を含む幾つかのアルコキシアミンの存在下で、ラジカル重合にかける(式中、nは、ゼロでない整数であり、これらのアルコキシアミンは、種々の値のnを表す)。
上記のようなアルコキシアミン及びニトロキシル(これらのニトロキシルは又、公知の方法によって、対応するアルコキシアミンと別々に製造することもできる)は、当分野で周知である。それらの合成は、例えば、米国特許第6,255,448号及びWO00/40526に記載されている。
【0038】
一つの有用な安定遊離基は、N−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2,−ジメチルプロピル)]ニトロキシド(DEPN)であり、これは、下記の構造を有している:
【化3】

このDEPN遊離基は、イソ酪酸基又はそのエステル若しくはアミドに結合することができる。有用な開始剤は、iBA−DEPN開始剤であり、これは、下記の構造を有している(ここに、SG1は、DEPN基である)。
【化4】

iBA−DEPN開始剤は、加熱すると、2つの遊離基に分離し、その一方は、重合を開始し、もう一方のSG1ニトロキシド遊離基は、可逆的に重合を終了させる。このSG1ニトロキシド遊離基は、メタクリレートから約25℃より高温で分離し、アクリレートから約90℃より高温で分離する。
【0039】
他の有用な開始剤は、CH3CH(SG1)CO2Hのエステル及びアミドを包含する。もしエステル又はアミドを用いるならば、それらは、好ましくは、低級アルキルアルコール又はアミンにそれぞれ由来する(例えば、メチルエステル、CH3CH(SG1)CO2CH3)。多官能性エステル例えば1,6−ヘキサンジオールのジエステル[CH3CH(SG1)CO2]2[(CH2)6]も又、利用することができる。二官能性開始剤を用いて、対称性のA−B−Aブロックコポリマーを製造することができる。一層高い可能性を有する開始剤、例えばペンタエリトリトールのテトラエステル[CH3CH(SG1)CO2CH2]4C]を用いて、I(BA)n型の星状コポリマーを製造することができる(式中、Iは、開始剤であり、nは、開始剤の官能価である)。
【0040】
典型的には、単一官能性アルコキシアミンを用いて、ABブロックコポリマーを製造する。二官能性アルコキシアミンを用いて、トリブロックABAコポリマーを生成することができる。しかしながら、トリブロックコポリマーは又、単一官能性アルコキシアミンから、ABジブロックコポリマーを追加のAセグメントにより延長することにより作成することもできる(即ち、Aセグメントの、その後のBセグメントの、その後の他のAセグメントの3つの順次的反応)。トリブロックコポリマーを単一官能性アルコキシアミンから作成する他の方法は、先ず単一官能性アルコキシアミンをジアクリレート(例えば、ブタンジオールジアクリレート)と反応させて二官能性アルコキシアミンを造ることである。これらの反応は、更なる開始剤源(例えば、有機過酸化物)の添加を必要としない(幾つかの場合には、残存モノマーを「追い払う(chase)」ために反応過程において過酸化物を用いうるが)。もしニトロキシドで終端している鎖の末端の「リビング」活性を保存することが好ましいのであれば、当業者には公知の「チェーシング(chasing)」工程をニトロキシドの分離温度より低い温度で行なう。
【0041】
この共重合は、当業者に周知の条件下で、考慮中のモノマー及び所望の生成物を考慮に入れて行なうことができる。それ故、この重合又は共重合は、例えば、バルクで、溶液中で、乳濁液中で又は懸濁液中で、0℃から250℃に及ぶ、好ましくは25℃から150℃に及ぶ温度で行なうことができる。
【0042】
「順序付けた(sequenced)」ブロックコポリマーは、1)単一モノマー又はモノマー混合物を、アルコキシアミンの存在下で、25℃から250℃に及ぶ好ましくは25℃から150℃に及ぶ温度で重合させ;2)温度を下げ、適宜残存モノマーを留去し;3)新たなモノマー混合物を反応混合物に導入し;そして4)温度を高めて新たなモノマー又はモノマー混合物を重合させることによって生成することができる。この方法は、更なるブロックを形成するために反復することができる。この方法により作成されたポリマーは、ニトロキシド末端基を有するであろう。それらは、ポリマー鎖の末端に残ってもよいし、更なる処理工程によって除去してもよい。
【0043】
この合成方法の任意の時点で、更なる開始起源(例えば、有機化酸化物)を利用して、制御されたブロック構造及びホモポリマーを含む複合材料を造ることができる。存在するモノマーによって、非ブロック構造は、ホモポリマー又はランダムコポリマーであってよい。その上、これらのホモポリマー又はランダムコポリマーは、またもや存在するモノマーによって、主として、疎水性又は親水性でありうる。
【0044】
この発明の両親媒性トリブロックコポリマーは、一般に、20〜400kg/モルの範囲内の分子量(Mw)を有する。
【0045】
中央ブロックのTgは、典型的には、外側ブロックのそれより一層低くなり、又は親ブロックコポリマーの中央ブロックが一層高いTgを有するならば、水吸収に際して、見かけのTgは、末端ブロックより低くなろう。一般に、これらの末端ブロックは、高いTgを有し、最も好ましくは、体温より高く、一層好ましくは50℃より高い。長鎖アルキル(メタ)アクリレートの場合には、Tgは、RTより低いが、その融解温度は、25℃より高い。
【0046】
この発明のブロックコポリマーの存在は、当業者に公知の方法により測定される。当業者に対する例の方法には、第一のモノマーセットから形成されたリビングポリマーの鎖を伸ばすための第二のモノマーの付加の際の分子量の測定された増加、ロングレンジオーダーを含む微小相(microphase)分離の観察(X線回折により測定)、顕微鏡観察及び/又は複屈折の測定が含まれるが、これらに限られない。ブロックコポリマーの存在を測定する他の方法には、機械的特性の測定、熱的分析、レオロジー測定又は溶出クロマトグラフィー技術が含まれる。
【0047】
この発明の両親媒性ブロックコポリマーは、疎水性相互作用又は物理的架橋(ポリマーの水溶解度を制限する)を含む。このトリブロックコポリマーの不溶性は、当分野で見出されている共有結合による架橋とは対照的に、物理的相互作用によるものである。特定の理論に拘束はされないが、十分に高い分子量及びブロックセグメント不相容性のブロックコポリマーは、顕微鏡的スケールで相分離して、周期的に配列されたドメイン(優勢な一のポリマーセグメント又は他のものを含む)を形成するということが知られている。熱力学的平衡に達した試料において、典型的に10〜100nmのドメインサイズは、特徴的に、ラセミ形状、円筒形、球形、及びポリマーの構造及び組成に依存する多くの他の複雑な形状をとる。これらのドメインのサイズ及び形状は、試料が非平衡状態に閉じ込められているならば変化しうる。この発明に記載されたポリマーの両親媒性に基いて、疎水性セグメントがドメインを形成し、これが水中での溶解を妨げる物理的架橋として役立つということが推定される。この両親媒性マルチブロックコポリマーは、「水不溶性」であり、この疎水性ブロックが可溶性でない他の溶媒においても不溶性である。
【0048】
本発明の重要な特徴は、両親媒性コポリマーの組成及び構造が容易に調整できて、広範な物理的及び機械的特性例えば水吸収、ゲル強度、水透過性、接着性などを生成することができることである。
【0049】
この両親媒性マルチブロックコポリマー(特に、疎水性ブロック)の組成は、種々の溶媒におけるポリマーの溶解性/不溶性を達成するように調節することができるが、各ケースにおいて、ポリマーは、水に不溶性のままである。
【0050】
水吸着(又は他の極性溶媒の吸着)のレベルを、親水性ブロックの組成及び重量画分を(全ブロックコポリマーと比較して)調節することにより制御することができる。吸収のレベルを制御して、1重量パーセントから2000重量パーセント(マルチブロックコポリマーの重量に対して)より大きくすることができる。最終生成物の適用によって、ポリマーの重量の5、50、500、5,000倍の及び10,000倍の水又は他の極性溶媒の吸着レベルさえ得ることができる。例えば、親水性ブロックの重量画分を増大させることは、その水吸収を増大させる。疎水性モノマーを親水性モノマーと共重合させる場合には、両親媒性セグメント中の親水性モノマーの重量パーセントを増大させることは、水吸収を増大させるであろう(即ち、90%親水性/10%疎水性のセグメントの水吸収>50%親水性/5%疎水性のセグメントの水吸収>10%親水性/90%疎水性のセグメントの水吸収、但し、疎水性及び親水性成分は、一定のままで、組み込むwt%のみを変える)。このブロックコポリマーの組成は又、イオン性の基を加えることにより調整することができて、pHに基く吸着のレベルを変えることができ、それ故、pHが増大するにつれて水吸着は増大するであろう。同様に、この組成を調節して、種々のpHを有する液体の吸着の最適レベルを与えることができる。種々の温度における水吸着のレベルも又、ポリマー組成によって制御することができる(即ち、N−イソプロピルアクリルアミドを親水性ブロックとして用いるならば、水吸収は、温度が増大するにつれて減少するであろう)。
【0051】
熱可塑性エラストマーの場合には、低いTgのセグメントの量を調整することにより、丈夫な熱可塑性材料(膜などの用途)から粘着性ゴム(感圧性接着剤などの用途)まで及ぶ材料を得ることができる。
【0052】
両親媒性マルチブロックの特性(及び組成を調節することにより広範な特性を調整する能力)の故に、これらの材料の多くの可能な用途がある。
【0053】
典型的な用途には、次のものが含まれるが、これらに限られない。当業者は、この発明のこれらの例及び教示を利用して、これらの両親媒性トリブロックコポリマーの多くの他の用途を想像することができよう。
【0054】
ヘルスケア、パーソナルケア及び化粧品:タンポン、おむつ、生理用ナプキンなどの製品における、血液及び尿等の排出液を吸収するための媒体;人工肛門ケア;制御された放出用媒体(薬物、抗菌剤、芳香剤など);包帯;コンタクトレンズ;人工組織;リウマチ用膏剤;超音波ゲル;グリセリン、グリコール、シリコン、水又はアルコールベース系での化粧に有用な物質のための化粧用ゲル化剤、化粧品用増粘剤;遮光剤;高吸収性物質;としての用途。
消費材:中底;合成繊維;織物 (グローブ、スポーツウェア、織物の湿度調節、靴の中敷き);
土壌用途:土の湿度の制御又は肥料の放出のための農業用媒体;融雪氷水及び結露水分の保持のためのフィルム又は土壌添加剤としての土の湿度の制御手段;混合添加剤;真菌及び昆虫侵入に対する森林保護。
【0055】
工業用製品:水感受性製品のためのパッケージング材料;新鮮な肉、魚及び鶏肉における水/血液を吸着するための食品パッケージング;油/水及び水/油エマルジョンのための増粘剤;両親媒性ポリマーブレンドのための相溶化剤、化学工程での適用材料(有機反応用触媒、大きい機能性分子(酵素)の固定化)、表面改変剤;潤滑性コーティング;自己洗浄性コーティング(建築用コーティング);接着剤;膜及び膜コーティング(共有結合性の架橋がないので);除去可能なコーティング;現在アクリルアミドベースの系を使用しているが、現行システムより遥かに毒性の低い材料が提供できるゲル電気泳動;緩衝装置;畜熱用媒体;濾過補助剤、ポリマーラミネート中の親水性成分;分散剤;液化器;ビルディング工事材料、振動阻止用媒体;(水の多い土地でも可能な)トンネル掘り補助材;ケーブル外装;水処理;排水処理;水除去(氷除去剤、再利用可能な砂袋);クリーニング;構造物及び森林の防火材;熱可塑性ポリマーの共押出し材(多層フィルムの親水化;吸水可能な、フィルム及び熱可塑性樹脂成形品(例えば、果物及び野菜を、汚損やしおれが起きないように、湿度を調節することにより新鮮に保つためのフィルム)。
【実施例】
【0056】
実施例:
制御された構造の両親媒性ブロックコポリマーを、下記の一般的プロトコールを利用して合成した。開始剤濃度に対するモノマー([M]/[I])を操作することにより、分子量の目標を定めた。それ故、目標分子量は、[M]/[I]比を設定してから、目標分子量に達するのに必要な所望の転化率まで重合を行なうことによって達成することができた。モノマー転化率を、便利に、ガスクロマトグラフィー(GC)分析又は真空中での未反応モノマーのフラッシュ脱揮発成分によりモニターした。ポリマー試料をそのまま、又は溶液にて流した。用いた典型的溶剤には、ジオキサン、n−メチルピロリドン、ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、t−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、トルエン、エチルベンゼン、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、エタノール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン及びメチルエチルケトンが含まれる。重合を周囲温度で又は100psi以下の窒素圧下で行なった。重合を、十分な混合能力が好ましかったが、剪断能力を有する標準的重合容器内及び同能力を有しない同容器内の両方で行なった。
【0057】
一般的手順として、特定の両親媒性トリブロックコポリマー組成物を、所望の最終的ブロック組成物によって、様々な伝統的モノマー添加及びポリマー分離プロトコール(当業者には明らか)によって、下記に一般的に記したように製造した。
【0058】
例えば、純粋なブロックコポリマーは、純粋な第一のブロックを沈澱技術により又は第一のブロックの合成の完了時に残存モノマーを蒸発させることにより分離し、その後、第一のものと異なる第二のモノマー組成物を加えることにより製造される。次に、この第二のモノマー組成物を重合させて純粋なブロックコポリマーを作成する。
【0059】
プロファイルドコポリマーを、2以上のモノマーの混合物を重合させることによって合成した。この混合物は、例えば、第二のモノマーを最初の重合媒質に加えた後に、残存している第一のモノマーを蒸発させることにより生じさせることができ、又はマルチモノマー混合物を、第一のブロックとして重合させることができ、又はマルチモノマー混合物を、単離した純粋な第一のブロックに加えることができた。
【0060】
ブロックコポリマー/ホモポリマーブレンドを、周知のチェーシング技術を採用することによって調製した。例えば、第一のブロックを、モノマー又はモノマー混合物を所望の転化率(100%未満)まで重合させることによって合成する。次いで、この反応混合物を、ニトロキシドが安定である温度まで冷却し、その時点で第二の開始起源例えば有機化酸化物を加えて残存する第一ブロック用モノマーの重合を行なう。このチェーシング工程の完了後に、第二のブロック用のモノマーを加えることができ、温度を上げてニトロキシド末端基の活性化を可能にすることができ、これは、続いて、ブロックコポリマーの形成へと導く。この複合材料は、次いで、チェースしたホモポリマー(第一のブロックと似ている)及びブロックコポリマーの両方からなるであろう。このチェーシング工程は、第二のブロックで再び行なうことができ又は第一のブロックでのチェースの代わりに用いることができる。
【0061】
上記のこの発明のコポリマーの合成を、3つの重合方法(a、b及びc)及び以下に列記した対応する特定のポリマーの実施例を参照することにより更に説明する。この発明の他のコポリマーは、当業者には明らかとなるように、類似の方法で製造することができる。
【0062】
実施例1:
次の実施例の各々において、二官能性アルコキシアミン開始剤から出発して、ポリマーを合成した。この特許実施例の殆どで用いた二官能性アルコキシアミン開始剤の製造を、今から記載する。47.0グラム(0.237モル)の1,4−ブタンジオールジアクリレートを、355.9グラムの無水エタノールと混合して、窒素で10分間泡立てた。この混合物を、次いで、190.25グラム(0.499モル)のiBA−DEPN開始剤に加えた。その結果生成した溶液を、攪拌しながら還流させ(78〜80℃)、反応を完了させるための温度に4時間保った。NMRは、反応が95%を超える新規なジアルコキシアミンであることを示している。それ故、このエタノール中の溶液は、約38%活性である。
次の実施例に記載したこれらの重合実施例の各々のデータを表1に要約した。
【0063】
【表1】



【0064】
中央ブロックの種類は、第一のブロック又は中央ブロックの合成に用いたモノマーを記載してある。末端ブロックの種類は、第二のブロック又は末端ブロックの合成で用いた主たるモノマーを記載してあり、下記の合成実施例で記載したように、末端ブロックは、第一のブロックの合成から持ち越された幾らかのレベルのモノマーを含んでも含まなくてもよい。モノマーの略号は:MEA=メトキシエチルアクリレート、AA=アクリル酸、t−BA=t−ブチルアクリレート、LMA=ラウリルメタクリレート、BA=ブチルアクリレート、EA=エチルアクリレート、MAA=メタクリル酸、MA=メチルアクリレート、IA=イタコン酸、DMA=N,N−ジメチルアクリルアミド、及びMMA=メチルメタクリレート。第一のブロックのMn値は、出発時の[M]/[I]比及びモノマー転化データ(GC分析により測定)に基いて計算したものであり、第二のブロックのMn値は、NMR分析を第一のブロックのMn値と結合させて利用して計算した。略号NMは、測定してないことを示している。
【0065】
合成方法A:
合成方法Aは、第一のブロックの合成後に残っている残存モノマーを末端ブロックの合成の前に除去する(真空下で取り除く)ABAブロックコポリマーを製造する方法である。この合成方法の詳細な実施例を、以下に記載する。
【0066】
実施例2:
下記は、表1の実施例番号2の製法である。8.78g(3.47mモル)の、実施例1からのジアルコキシアミンを計って、1Lのジャーに、427.61g(3.29モル)のMEA及び22.57g(0.31モル)のAAと共に入れた。この混合物を、窒素で10分間泡立ててから、1Lのジャケット付きの、底にサンプリング用のバルブ、窒素の入口、真空化用出口及び機械的混合手段を備えたステンレス鋼製反応器に加えた。この反応器を密封して、116℃の反応温度にした。この重合を、115〜117℃で2.5時間維持した。その時点で、62%のMEA及び68%のAAがポリマーに転化された(ガスクロマトグラフィー(GC)により測定)。温度を80℃まで低下させて、圧力を徐々に1.0mバールまで下げて残存モノマーを除去した。このストリッピング工程の後に、150.2gのトルエンをこのポリマーに加えて、溶液を生成した(それは、52%のポリマー、47.2%のトルエン、及び0.8%の残存アクリルモノマーであった)。最終的なトリブロックコポリマーを作成するために、32.54gの上記の溶液を、16.23gのスチレンと、100mLの、ジャケット付きの、機械的攪拌機と窒素ブランケットを有するガラス製反応器中で混合した。この重合を115℃で2.5時間行ない、スチレンの転化率は約25wt%であった。この混合物をテフロン(登録商標)シート中に集めて、残存モノマーと溶媒を真空オーブン中で2時間にわたって120℃で完全真空下で除去した。その結果生成したトリブロックコポリマーは、19.2wt%のポリスチレン、3.9wt%のポリアクリル酸及び76.9wt%のポリブチルアクリレートを含んでいた。
【0067】
実施例3〜15:
これらのマルチブロックコポリマーの実施例の各々は、表1に要約してある。各組成物の調製を、二官能性アルコキシアミン例えば実施例1に記載したもの及び方法Aに記載した一般的合成プロトコールを利用して実施した。各実施例について、その重合は、上記の実施例2に記載したプロトコールに従った。第一のブロックは、目標の転化率及び用いたモノマーの種類によって、溶媒中で又はそのまま、110〜120℃の温度で重合された。典型的な転化率は、60〜80%に及び、これは、通常、2〜8時間を要した。各事例において、目標の転化率が達成された後に、過剰のモノマーを真空下で80℃より低い温度で除去した。次いで、所望の第一のブロックを溶媒に再溶解させて、第二のブロック用モノマーと混合した。第二のブロックは、110〜120℃で、約50%の転化率まで重合された。その後、これらのブロックコポリマーを真空下で乾燥することにより分離した。
【0068】
実施例16:
下記は、表1の実施例番号16の製法である。11.70g(4.63mモル)の、実施例1からのジアルコキシアミンを、480.22g(3.75モル)のBA、120.04g(1.40モル)のメタクリル酸(MAA)及び100mLのジオキサンと混合した。この混合物を、窒素で15分間泡立ててから、実施例2に記載の1Lの反応器に加えた。この重合を、105〜115℃で5時間にわたって、BAの63%転化及びMAAの94%転化が達成されるまで行なった。このポリマー溶液を真空オーブン中で2時間にわたって、60〜80℃でストリッピング処理して、過剰のBAを除去した。165グラムのこのポリマーを、247gのジオキサンに溶解させて、40%の第一のブロック用の溶液を作成した。この40%の溶液372.9gに、81.47gのスチレン及び100mLの追加のジオキサンを加えた。この重合を、上記の1Lの反応器内で、116℃で5時間にわたって、スチレンの44%の転化が起きるまで行なった。最終的ポリマーを、真空オーブン中で、120℃で3時間にわたって、完全に真空になるまでストリッピング処理した。その結果生成したトリブロックコポリマーは、23.1wt%のポリメタクリル酸、18.1wt%のポリスチレン及び58.8wt%のポリブチルアクリレートを含んでいた。
【0069】
実施例17〜19:
実施例16と一緒に、実施例17〜19は、ABAトリブロックコポリマーの合成を示しており、これらは、酸性モノマーと非酸性コモノマーの間の、第一のブロックの合成中に酸を含有するモノマーを優先的に消去する反応に対する反応性比の差を利用している。酸を優先的に消去する反応とは、末端ブロックに組み込まれるために残っている酸が殆ど又は全くないことをいう。ポリマー末端ブロックにおける低い酸レベルは、一層高い末端ブロック酸含有量を有するポリマーと比べて遥かに改善されたゲル強度を有するポリマーを生じる。前述の実施例において、主要な非酸性コモノマーは、アクリル系誘導体である。メタクリル系モノマーは、本来的にアクリル系モノマーより早く反応し、それ故、アクリル酸よりもメタクリル酸が、第二ブロックの合成に進む前に酸の大部分が消費されることを確実にするために選択されるということが知られている。
【0070】
合成方法B:
合成方法Bは、第一のブロックの合成後に残っている残存モノマーが、プロファイルドブロックコポリマーを作成するための末端ブロック合成のための混合物中に残っているABAブロックコポリマー製造の一例である。この合成方法の詳細な実施例を以下に記載する。
【0071】
実施例20:
下記は、表1の実施例番号20の製法である。78.77g(1.09モル)のAA、440.18g(3.38モル)のMEA及び10.31g(4.08mモル)の、実施例1からの二官能性アルコキシアミン、並びに160.4gのn−ブタノールを計って、1Lのジャーに入れた。この混合物を、窒素で15分間ガス抜きした。この混合物を、実施例2からの1Lの反応器に加えて、110〜117℃で5.5時間にわたって、AAの93%の転化率及びMEAの89%の転化率が達成されるまで重合を行なった。この混合物625.7gに、147.5gのトルエン及び290.7gのスチレンを加えた。この混合物を、2Lの、ジャケット付きの、窒素用入口、還流冷却器、熱電対及び機械的混合器を有する反応器に加えた。第二のブロックの重合を、112〜117℃で、3時間にわたって、30%のスチレンの転化率が達成されるまで行なった。最終的ポリマーを、真空下で、130℃で3時間乾燥させることにより分離した。その結果生成したトリブロックコポリマーは、10wt%のポリアクリル酸、22wt%のポリスチレン及び68wt%のポリメトキシエチルアクリレートを含んでいた。
【0072】
実施例21〜28:
これらのマルチブロックコポリマーの実施例の各々を、表1に要約した。各組成物の調製を、実施例1に記載したような二官能性アルコキシアミン、及び方法Bに記載した一般的合成プロトコールを利用して実施した。各実施例について、重合は、上記の実施例20に記載したプロトコールに従った。第一のブロックを、溶媒中で、目標の転化率及び用いたモノマーの種類によって、110〜120℃の温度で重合した。典型的な転化率は、80〜95%に及び、これは、典型的には2〜8時間を要した。各事例において、目標のモノマー転化率が達成された後に、第二のブロック用のモノマーを適宜追加の溶媒と共に加えた。第二のブロックを、110〜120℃で、凡そ50%の転化率まで重合した。最終的ブロックコポリマー組成物を、真空下で乾燥することにより分離した。
【0073】
合成方法C:
合成方法Cは、第一のブロックの合成後に残っている残存モノマーが、通常チェーシングと呼ばれる更なるポリマー反応工程(当業者には明白)により除去されるABAブロックコポリマー製造の一例である。この方法は、ブロックコポリマー/ホモポリマーブレンドを生じる。例えば、第一のブロックは、モノマー又はモノマー混合物を所望の転化率(100%未満)まで重合することにより合成される。次いで、この反応混合物を、ニトロキシドが安定な温度まで冷却し、その時点で第二の開始源例えば有機過酸化物を加えて、第一のブロック用のモノマーの重合を行なう。このチェーシング工程が完了した後に、第二のブロック用のモノマーを加えて、温度を上昇させて、ニトロキシド末端基の活性化を与えることができ、これは続いてブロックコポリマーの形成へと導く。この合成方法の詳細な実施例を以下に記載する。
【0074】
実施例29:
下記は、表1の実施例番号29の製法である。380.60g(2.97モル)のBA、42.33g(0.59モル)のAA、95.85g(1.04モル)のトルエン、及び5.40g(2.14mモル)の二官能性開始剤を計って、1Lのジャーに入れた。この混合物を、窒素で10分間ガス抜きしてから、実施例2からの1Lのステンレス鋼製の反応器に加えた。第一のブロックの重合を、115〜120℃で5時間にわたって、BAの転化率が84%に達するまで行なった。この反応生成物を、更なる170gのトルエンで希釈して分離した。この混合物405gを、次いで、実施例2からの1Lのステンレス鋼製の反応器に加えて、60℃に加熱した。次に、3.15gのLuperox610M50の溶液(90.85gのトルエン中)をこの容器に加えた。反応温度が上昇して、ピーク発熱量が、反応媒質と容器ジャケットの間で6度の差を生じた。この混合物を65〜75℃に1時間にわたって維持して、過酸化物の大部分が分解してしまうことを確実にした。次に、108.8gのスチレンを第二のブロック用モノマーとして加えて、容器温度を115〜120℃に高めて、ニトロキシド末端キャップされたポリマー鎖を活性化した。第二のブロックの反応を、3時間にわたって、スチレンの35%転化率まで進めた。次いで、このポリマーを、すべての揮発性物質を真空下で130℃で3時間にわたって除去することにより分離した。その結果生成したトリブロックコポリマーは、10wt%のポリアクリル酸、15wt%のポリスチレン及び75wt%のポリブチルアクリレートを含んでいた。
【0075】
実施例30〜56:
これらのマルチブロックコポリマーの実施例の各々を、表1に要約した。各組成物の調製を、実施例1に記載したような二官能性アルコキシアミン、及び方法Cに記載の一般的合成プロトコールを利用して実施した。各実施例について、重合は、上記の実施例29に記載のプロトコールに従った。第一のブロックを、溶媒中で、目標の転化率及び用いたモノマーの種類によって、110〜125℃の温度で重合した。典型的な転化率は、80〜95%に及び、これには、一般に、2〜8時間を要した。各事例において、目標の転化率が達成された後に、その反応物を60℃未満に冷却して、遊離基阻害剤の溶液を加える。この反応工程を実施するのに好適な温度は、遊離基阻害剤の10分半減期温度であるが、各事例において、その反応混合物は、常に、ニトロキシド活性化温度より低温に維持された(典型的には、80℃未満)。この工程を、残っているモノマー及び開始剤を涸渇させるのに十分な時間にわたって行なう。この工程が完了した後に、第二のブロック用モノマーをこの溶液に加えて、容器温度を110〜120℃まで上昇させて、ニトロキシド鎖末端の再活性化を与えて、その後の第二のモノマーの重合が起きるのを可能にした。この第二のブロック用モノマーは、典型的には、50%未満の転化率まで進行して、その結果生成したブロックコポリマーは、揮発性物質を真空下で除去することにより分離された。
【0076】
実施例57:
下記は、表1の実施例番号57の製法である。この実施例は、上記の方法Cを、前記の実施例よりも僅かに低い第一のブロックの転化率(60%)で利用して行なった。360g(3.60モル)のDMA、87.0g(0.95モル)のトルエン、及び8.22g(3.25mモル)の、実施例1からの二官能性開始剤を計って、1Lのジャーに入れ、窒素で10分間ガス抜きして、実施例2に記載の1Lのステンレス鋼製の反応器に加えた。次いで、この溶液を、63%の転化率まで、2.5時間重合させた。381gの追加のトルエンを加えて、ポリマー中間体を分離した。最終的トリブロックコポリマーを作成するために、71.4g(20gのポリマー)の上記の溶液を、26gのスチレンと、100mLの、ジャケット付きの、機械的攪拌機及び窒素ブランケットを有するガラス製反応器中で混合した。第二のブロックの合成を、4時間にわたって、スチレン及びDMAの転化率が、それぞれ40%及び22%になるまで行なった。これは、19%のポリDMA及び81%のポリスチレンを含むポリマー末端ブロックを生じた。このポリマーを、次いで、すべての揮発性物質を真空下で130℃で3時間にわたって除去することによって分離した。その結果生成したトリブロックコポリマーは、68wt%のポリDMA及び32wt%のポリスチレンを含んでいた。
【0077】
実施例58:
PMMA/AA−PBA/AA−PMMA/AA 下記は、表1の実施例番号58の製法である。この実施例は、上記の方法Bを利用して行なった。31.409g(0.44モル)のAA、550.054g(4.22モル)のBA、33.929g(13.4mモル)の二官能性開始剤溶液を計って、1Lのジャーに入れて、窒素で15分間ガス抜きをした。この混合物を、115〜120℃で4時間にわたって、BAの転化率が77%に達するまで重合した。この混合物を、トルエンで希釈し、その結果生じた溶液は、48%のポリBA、13%のBA、2%のエタノール及び37%のトルエンを含んでいた。この混合物463.4gに、96.8gのトルエン、95.5gのMMA、及び17.0gのAAを加えた。この溶液を、窒素で15分間ガス抜きしてから、105〜110℃で1時間、その後、110〜115℃で2時間にわたって、MMAの転化率が87%に達するまで重合させた。その結果生成したトリブロックコポリマーは、70.1wt%のポリBA、22.7wt%のポリMMA及び7.2wt%のポリAAを含んでいた。揮発性物質を、真空下で110℃で20時間にわたって除去した。
【0078】
実施例58は、両親媒性モノマーを親水性ブロックと疎水性ブロックの両方に組み込んだABAトリブロックコポリマーの合成を示している。この材料は、最終的ゲル強度を調整する一例である(このポリマーは、末端ブロック中に殆ど又は全く酸を有しないトリブロックと比較して、水中で僅かに弱いゲルを形成するので)。一層親水性のモノマーが末端ブロックに組み込まれるほど、対応するゲルは一層弱い。その上、酸が、上記の実施例58のように、末端ブロックに組み込まれた親水性モノマーである場合には、非共有結合性架橋が、水の存在下で、中和によって破壊されうる(当業者には、自明)。
【0079】
実施例59:
表1の幾つかのポリマーを、水溶性について試験した。表1の8、55及び58を、溶融加圧して、重量測定した(乾燥重量)。次いで、これらの試料を、水中に入れて、室温で96時間より長時間にわたって浸漬した。次に、これらの試料を、水溶液から取り出して重量を測定して、水の吸収を測定した。次に、これらの試料を真空下で一定重量まで乾燥させて、すべての吸収された水が除去されたことを確実にした。これらの結果を、下記の表2に与えた。
【0080】
【表2】

【0081】
表2から明らかなように、ポリマー重量の損失の欠如は、これらの試料が水不溶性のままでいることを示しており、ヒドロゲルの振る舞いは、明らかに、この水吸収データによって示されている。
【0082】
実施例60:
実施例60は、ここに記載のトリブロックコポリマー組成物の溶融加工性及び熱可塑性エラストマーの振る舞いを示す。試料8、55及び58を、すべて、Carverホットプレート上で溶融処理した。圧縮機を140℃に設定して、これらのポリマーを最小圧力で流した。薄いフィルムが容易に作られた。これらのフィルムは、透明であった(これは、これらのブロックコポリマーが十分に規定され、その後、ナノ構造の形状に相分離したということの良い指示である)。これらの薄いフィルムは、丈夫であり、熱可塑性エラストマーとして極めて可撓性の振る舞いであった。これらのフィルムは、容易に、それらの長さの数倍に引き伸ばされ、変形力を除いた後でその材料が元の形状を回復するので、弾力性のある振る舞いが認められた。更に、これらのポリマーの溶融加工性を示すために、表1の試料2、3、4、8、13、16、29、55、56及び57を、上記と同様の方法を利用して薄いフィルムに圧縮した。
【0083】
実施例61:
吸収/膨潤を示すために、試料4の薄いフィルムを、2%リン酸三ナトリウムを緩衝剤として含む水(pH約6〜7)の中に入れた。このポリマーは、このpHで膨潤を開始し、水酸化ナトリウムにより更にpH9まで中和した際に、膨潤は増大した。約20時間の浸漬の後に、この試料は、元の寸法の1cm×2cm×1mmから2cm×4.2cm×2mmにまで膨潤した(8倍大きい体積になった)。
更なる水吸収試験の結果を、下記の表3に示した。
【0084】
【表3】

【0085】
実施例61a〜61i:
ポリマーの小さいストリップを重量測定して4つのドラム瓶に入れた。次に、ポリマー重量の10倍のリン酸三ナトリウム溶液(10wt%水溶液)を加えた。最後に、試料を完全に覆うために約2倍量の水を加えた。これらの試料を、少なくとも24時間にわたって浸漬し、その後、それらを再度重量測定した。上記のように、少なくとも24時間にわたって浸漬した後に、少量の水酸化ナトリウムを試料61d及び61hに加えて、更にpHを増大させた。溶液のpHは、表3に列記してあり、実施例61c対61d、61h対61iの比較から明らかなように、水の吸収は、pHの増大によって増大させることができる。
【0086】
実施例62:
試料59と共に、酸官能価を含む両親媒性ポリマーにおいては水の吸収を引き起こすのに塩基の添加を必要としないことを示すために、表1の幾つかの試料のフィルムを直接水中に置いて、一晩浸漬した。これらの試料及び測定された対応する吸収値は、次の通りである;試料2は、9.7wt%の水吸収を有し、試料8は、8.0wt%の水吸収を有し、そして試料56は、17.2wt%の水吸収を有した。酸を含まない試料57は、122wt%の水吸収を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記よりなる両親媒性マルチブロックコポリマーであって、
a)親水性中央ブロック;及び
b)疎水性末端ブロック
該マルチブロックコポリマーが水不溶性であるコポリマー。
【請求項2】
制御されたラジカル重合法により作成された、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項3】
前記の制御されたラジカル重合法が、ニトロキシドにより媒介される重合法である、請求項2に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項4】
前記のコポリマーが、ポリマー重量に対して1〜10,000重量パーセントの水又は他の極性溶媒を吸収することができる、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項5】
前記の親水性ブロックコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、並びにアクリル酸及びメタクリル酸の塩、エステル、無水物及びアミド;無水ジカルボン酸;カルボキシエチルアクリレート;スチレンの親水性誘導体;及びアクリルアミドから選択する一以上のモノマーユニットを含む、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項6】
前記の疎水性ブロックが、各々、0.5〜80kg/モルの分子量を有し、前記の親水性ブロックが、2〜160kg/モルの分子量を有する、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項7】
前記の疎水性ブロックが、各々、3〜60kg/モルの分子量を有し、前記の親水性ブロックが、15〜100kg/モルの分子量を有する、請求項6に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項8】
前記のコポリマーが、ABAトリブロックコポリマーであって、Aが疎水性ブロックポリマーを表し、Bが親水性ブロックポリマーを表す、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項9】
前記の親水性中央ブロックが、2以上の異なるモノマーユニットから形成されたランダムコポリマーである、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項10】
前記の疎水性末端ブロックが、2以上の異なるモノマーユニットから形成されたランダムコポリマーを含む、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項11】
前記のマルチブロックコポリマーが、非共有結合によって架橋されたヒドロゲルの形状である、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項12】
前記の親水性中央ブロックが、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの混合物との、C1-8のアクリレートのランダムコポリマーである、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項13】
前記のコポリマーが熱可塑性エラストマーであって、疎水性末端ブロックが0〜300℃のTgを有して、親水性中央ブロックが−200〜130℃のTgを有し、疎水性末端ブロックが、親水性中央ブロックより高いTgを有する、請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項14】
疎水性末端ブロックが30〜150℃のTgを有し、疎水性中央ブロックが−80〜50℃のTgを有する、請求項13に記載の両親媒性マルチブロックコポリマー。
【請求項15】
請求項1に記載の両親媒性マルチブロックコポリマーを、疎水性ホモポリマー、疎水性コポリマー、親水性ホモポリマー、及び/又は親水性コポリマーよりなる群から選択する一種以上のポリマーと共に含むポリマーブレンド。
【請求項16】
少なくとも一種の親水性ホモポリマー、親水性コポリマー、疎水性ホモポリマー、又は疎水性コポリマーが、少なくとも一種の両親媒性コポリマーブロックセグメントと、同じであるか殆ど同じである、請求項15に記載のポリマーブレンド。
【請求項17】
物品、コーティング又はフィルムを構成する、請求項1に記載の両親媒性トリブロックコポリマー。
【請求項18】
不溶性トリブロックコポリマーの機械的及び/又は物理的性質を適応させる方法であって、トリブロックコポリマーを制御されたラジカル重合法により形成して、各ブロックの組成を、特定の機械的及び/又は物理的性質を得るように調節することを含む当該方法。
【請求項19】
前記の適応させる機械的及び/又は物理的性質が、水透過性及び/又は水吸収性である、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2009−538385(P2009−538385A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512292(P2009−512292)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/069604
【国際公開番号】WO2007/140225
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】