説明

両軸受リールのクラッチ制御装置

【課題】ハンドルによるクラッチ戻し操作が重くならないようにする。
【解決手段】クラッチ制御機構20は、クラッチ機構19を動作させる。クラッチ制御機構は、筒状のクラッチカム40と、クラッチヨーク41と、連結部材43と、クラッチ復帰機構46と、を備えている。クラッチ復帰機構は、ハンドル軸30に設けられたラチェットホイール72と、クラッチ爪42と、トグルバネ部材47と、を有している。クラッチ爪は、基端がクラッチカムと連結部材とに挟持されクラッチカムと連結部材とに連結されている。クラッチ爪は、ハンドルの糸巻取方向の回転により、ラチェットホイールにより先端が押圧されて係合位置から非係合位置に移動してクラッチカム及び連結部材を連結位置に戻す。トグルバネ部材は、クラッチ復帰部材を係合位置と非係合位置とに振り分けて付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、特に、両軸受リールのリール本体に設けられたハンドルにより回転するスプールとハンドルとを連結及び連結解除するクラッチ機構を動作させるクラッチ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールには、ハンドルとスプールとの間にクラッチ機構が設けられている。クラッチ機構は、ハンドルとスプールとを連結及び連結解除する。ハンドルとスプールとが連結されるとハンドルの回転によりスプールが回転する。ハンドルとスプールとが連結解除されると、スプールが自由回転可能になる。クラッチ機構は、クラッチ操作部材を含むクラッチ制御機構によりクラッチオン又はクラッチオフ状態に切り換えられる。従来のクラッチ切換機構は、クラッチ操作部材と、合成樹脂製の筒状のクラッチカムと、クラッチヨークと、金属製の連結部材と、クラッチ復帰機構と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のクラッチ制御機構では、クラッチカムは、合成樹脂製の筒状部材であり、金属製の連結部材によりクラッチ操作部材と連結されている。クラッチカムは、クラッチオン位置とクラッチオフ位置とにクラッチ操作部材の操作により回動する。クラッチヨークは、クラッチカムに形成されたカム面に係合し、クラッチカムのクラッチオフ位置への回動によりクラッチ機構を構成するピニオンギアをスプール軸方向外方に移動させる。連結部材は、クラッチカムと一体回動可能であり、クラッチ操作部材が固定されている。
【0004】
クラッチ復帰機構は、ハンドル軸に一体回転可能に設けられた回転部材と、クラッチ復帰部材と、トグルバネ部材と、を有している。クラッチ復帰部材は、一端がクラッチカムに回動可能に連結されている。具体的には、クラッチ復帰部材の一端には、連結ピンが一体形成され、連結ピンがクラッチカムに形成された連結孔に係合している。クラッチ復帰部材は、回転部材に係合可能な係合位置と係合不能な非係合位置とに進退する。クラッチ操作部材の操作によりクラッチカムがクラッチオフ位置に回動すると他端が係合位置に進出する。トグルバネ部材は、クラッチ復帰部材を係合位置と非係合位置とに振り分けて付勢する。
【0005】
クラッチ復帰機構は、ハンドルが糸繰り出し方向に回転すると、回転部材が係合位置にあるクラッチ復帰部材をトグルバネ部材の死点を超えて押圧する。これにより、クラッチ復帰部材は、トグルバネ部材の付勢力により係合位置に戻る。クラッチ復帰部材が係合位置に移動すると、クラッチカムがクラッチオフ位置からクラッチオン位置に回動し、クラッチ機構がクラッチオン状態に復帰する。
【0006】
従来のクラッチ制御装置は、連結部材にクラッチカムと隙間をあけてクラッチカムに接触可能な突起部を設けている。これにより、誤操作によりクラッチ操作部材をクラッチオン位置に押圧した状態でハンドルを糸巻取方向に回転させたとき、クラッチカムに過大な力が作用するのを防止している。すなわち、クラッチカムに過大な力が作用しクラッチカムが変形すると、クラッチカムが突起部に接触しそれ以上変形しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−172203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のクラッチ制御装置では、ハンドルの糸巻取方向の回転によるクラッチオン操作時にクラッチ操作部材を切り操作したままだとクラッチカムが変形し、クラッチ復帰部材と連結部材が直接接触するようになる。これにより、ハンドルからの回転力が直接クラッチ操作具に伝達されるようになる。このため、釣り人はクラッチ操作部材に戻し方向の力が加わっていること、及び/又はハンドルの回転に通常の戻し操作力に加えてクラッチカムを変形させる力が必要になっていることに気づき、誤操作を認識することになる。
【0009】
ところが、クラッチ制御装置ではクラッチカムを変形させることを前提としているため、通常の戻し操作時にも若干クラッチカムを変形させる力が必要になっている。このため、クラッチ戻し操作が重くなる。
【0010】
本発明の課題は、ハンドルの回転によるクラッチ戻し操作が重くならないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明1に係る両軸受リールのクラッチ制御装置は、リール本体に設けられたハンドルにより回転するスプールとハンドルとを連結及び連結解除するクラッチ機構を、第1位置と第2位置とに移動可能なクラッチ操作部材の操作により動作させる装置である。クラッチ制御装置は、筒状のクラッチカムと、クラッチヨークと、連結部材と、クラッチ復帰機構と、を備えている。クラッチカムは、リール本体にスプールの中心軸回りに回動自在に装着され、クラッチ操作部材の第1位置と第2位置との移動に応じて、クラッチ機構が連結状態になる連結位置と連結解除状態になる連結解除位置とに回動する。クラッチヨークは、クラッチ機構に係合し、クラッチカムの回動によりスプールの軸方向に移動し、クラッチ機構を連結状態と連結解除状態とに切り換える。連結部材は、クラッチカムとクラッチ操作部材とを連結し、クラッチ操作部材の第1位置と第2位置との移動に応じてクラッチカムを連結位置と連結解除位置とに回動させる。クラッチ復帰機構は、回転部材と、クラッチ復帰部材と、トグルバネ部材と、を有している。回転部材は、ハンドルの回転軸に装着されている。クラッチ復帰部材は、第1端と第2端とを有し、係合位置と非係合位置とに移動する。クラッチ復帰部材は、第1端がクラッチカムと連結部材とに挟持されクラッチカムと連結部材とに連結されている。クラッチ復帰部材は、クラッチカムの連結位置から連結解除位置への回動により、非係合位置から第2端が回転部材に係合する係合位置に移動する。クラッチ復帰部材は、ハンドルの糸巻取方向の回転により、回転部材により第2端が押圧されて係合位置から非係合位置に移動してクラッチカム及び連結部材を連結位置に戻す。トグルバネ部材は、クラッチ復帰部材を係合位置と非係合位置とに振り分けて付勢する。
【0012】
このクラッチ制御装置では、クラッチ操作部材が例えば第1位置から第2位置に移動すると、連結部材を介してクラッチカムが連結位置から連結解除位置に回動し、クラッチ機構が連結解除状態になる。また、クラッチカムが連結解除位置に回動するとクラッチ復帰部材が非係合位置から係合位置に移動し、クラッチ復帰部材が回転部材に係合可能に位置に移動する。このとき、トグルバネ部材によりクラッチ復帰部材が係合位置に付勢される。
【0013】
また、クラッチ機構が連結解除状態のときハンドルが糸巻取方向に回転すると、回転部材が糸巻取方向に回転し、クラッチ復帰部材が非係合位置に向けて押圧される。そして、トグルバネ部材の死点をクラッチ復帰部材が超えると、クラッチ復帰部材が非係合位置に付勢される。このクラッチ復帰部材の非係合位置への移動により、クラッチ復帰部材に連結されたクラッチカム及び連結部材が連結解除位置から連結位置に回動する。これにより、クラッチ機構が連結解除状態から連結状態に戻る。このとき、クラッチ操作部材も第2位置から第1位置に戻る。このハンドルによるクラッチ戻し操作において、クラッチ復帰部材がクラッチカムに加えて連結部材にも連結されているため、クラッチカムを変形させることなく、クラッチ戻し操作を行える。このため、クラッチ戻し操作が重くなりにくい。
【0014】
発明2に係る両軸受リールのクラッチ制御装置は、発明1に記載の装置において、クラッチカムは、トグルバネ部材によりクラッチ復帰部材を介して連結位置及び連結解除位置に保持される。これにより、クラッチ復帰部材を付勢するトグルバネ部材によりクラッチカムが連結位置及び連結解除位置に保持され、かつ連結部材及びクラッチ操作部材も二つの位置で保持される。このため、クラッチカム、連結部材及びクラッチ操作部材を二つの位置で保持する構成が簡素になる。
【0015】
発明3に係る両軸受リールのクラッチ制御装置は、発明1又は2に記載の装置において、クラッチ復帰部材は、クラッチカムに向けて円柱状に突出してクラッチカムに連結される第1連結突起と、第1連結突起と同芯に配置され、連結部材に向けて円柱状に突出して連結部材に連結される第2連結突起と、を第1端に有する。クラッチカムは、第1連結突起が回動自在に連結される第1連結凹部を有する。連結部材は、第2連結突起が回動自在に連結される第2連結凹部を有する。この場合には、回動可能な第1連結突起及び第2連結突起によりクラッチカム及び連結部材がクラッチ復帰部材に各別に連結されているので、クラッチ復帰部材の非係合位置への移動による力がスムーズにクラッチカム及び連結部材に伝達される。このため、クラッチ復帰操作がさらに軽くなる。
【0016】
発明4に係る両軸受リールのクラッチ制御装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、クラッチ操作部材は、連結部材に固定されている。連結部材は、クラッチ操作部材の第2位置から第1位置への移動により、クラッチカムを連結解除位置から連結位置に回動させる。この場合には、ハンドルの糸巻取方向の回転だけでなく、クラッチ操作部材の第2位置から第1位置への移動によってもクラッチ機構を連結解除状態から連結状態に戻すことができるので、クラッチへ復帰動作を瞬時に行える。
【0017】
発明5に係る両軸受リールのクラッチ制御装置は、発明1から4のいずれかに記載の装置において、リール本体には、クラッチ復帰部材の第2端を案内する案内部が形成され、クラッチ復帰部材の第2端には、案内部に向けて突出する案内突起が一体で設けられている。これにより、クラッチ復帰部材の案内突起が案内部に案内されるので、クラッチ復帰部材の移動がスムーズになり、このため、クラッチ復帰操作がさらに軽くなる。
【0018】
発明6に係る両軸受リールのクラッチ制御装置は、発明5に記載の装置において、リール本体はアルミニウム合金製であり、クラッチ復帰部材はステンレス合金製であり、案内突起は、円形に突出しており、案内突起の外周面に回動自在に装着され外周面を覆う合成樹脂製の筒状のカバー部材をさらに備える。
【0019】
これにより、ステンレス合金製の案内突起とアルミニウム合金製の案内部とが直接接触しなくなり、案内突起が案内部に案内されても金属同士の接触による電解腐食を防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ハンドルによるクラッチ戻し操作において、クラッチ復帰部材がクラッチカムに加えて連結部材にも連結されているため、クラッチカムを変形させることなく、クラッチ戻し操作を行える。このため、クラッチの戻し操作が重くなりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態が採用された両軸受リールの斜視図。
【図2】その平面図。
【図3】その右側部分を示す分解斜視図。
【図4】その中央部分を示す分解斜視図。
【図5】クラッチ制御機構の構成を示す分解斜視図。
【図6】連結状態の時のクラッチ制御機構を示す側面図。
【図7】連結解除状態のときのクラッチ制御機構を示す側面図。
【図8】連結解除状態のときのクラッチ制御機構の要部を示す側面拡大図。
【図9】図8の側面一部破断図。
【図10】他の実施形態の図9に相当する図。
【図11】さらに他の実施形態の図9に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図、図2は平面図である。図に示す両軸受リールは、例えば、ロープロファイルのベイトキャスティングリールである。両軸受リールは、釣り竿に装着可能なリール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3と、リール本体1に回転自在に装着されたスプール4と、を備えている。リール本体1の後部には、クラッチ操作部材17が装着されている。
【0023】
<リール本体の構成>
リール本体1は、例えばアルミニウム合金又はマグネシウム合金等の金属製のフレーム5と、フレーム5の両側方を覆うように装着された、例えばアルミニウム合金又は合成樹脂製の第1側カバー6a及び第2側カバー6bと、フレーム5の前方に装着された、例えば、アルミニウム合金又は合成樹脂製の前カバー7と、を有している。
【0024】
フレーム5は、図4に示すように、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された第1側板8a及び第2側板8bと、第1側板8a及び第2側板8bを連結する複数の連結部8cと、を有している。
【0025】
第1側板8aは、スプール4の取り出し用の円形の開口8dが形成された概ね板状の部材である。開口8dには、例えば、アルミニウム合金製の図示しない軸受収納部が螺合して固定されている。
【0026】
第2側板8bには、後述するクラッチ制御機構20および回転伝達機構18が支持される。
【0027】
第1側カバー6aは、フレーム5に対して開閉自在であり、フレーム5に対して接離かつ揺動可能に装着されている。
【0028】
第2側カバー6bは、図3に示すように、ハンドル軸30及びスプール軸15を各別に支持するための第1ボス部6c及び第2ボス部6d等が形成された概ね碗状の部材である。
【0029】
フレーム5内には、図2、図3及び図4に示すように、第1側板8aと第2側板8b間に回転自在に配置されたスプール4(図2)と、スプール4に均一に糸を巻くためのレベルワインド機構24(図4)と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチ操作部材17(図4)と、ハンドル2とスプール4と連結及び連結解除するためのクラッチ機構19(図4及び図5)とが設けられている。またフレーム5と第2側カバー6bとの間には、ハンドル2からの回転力をスプール4及びレベルワインド機構24に伝えるための回転伝達機構18(図3及び図4)と、クラッチ操作部材17の操作に応じてクラッチ機構19を制御するためのクラッチ制御機構20(図4)と、糸繰り出し時にスプール4を制動するドラグ機構21(図3)と、スプール4の回転時の抵抗力を調整するためのキャスティングコントロール機構22(図3)とが設けられている。
【0030】
キャスティングコントロール機構22は、スプール軸15を挟むように配置された複数のブレーキライナ51bと、ブレーキライナ51bによるスプール軸15の挟持力を調節するためのキャップ52と、を有している。
【0031】
スプール4は、両側部にフランジ部4aを有しており、両フランジ部4aの間に糸巻胴部4bを有している。スプール4はその中心を貫通するスプール軸15に固定されている。図示しない軸受により支持されている。
【0032】
レベルワインド機構24は、図4に示すように、第1側板8a及び第2側板8b間に固定されたガイド筒25と、ガイド筒25内に回転自在に支持されたウォームシャフト26と、ラインガイド27と、従動ギア28と、を有している。従動ギア28は、金属製であり、ウォームシャフト26の端部に装着され、回転伝達機構18からの回転が伝達される。
【0033】
このような構成のレベルワインド機構24では、従動ギア28を金属製にしたので強度が大きくなり、ラインガイド27に大きな力が作用しても釣り糸を案内することができる
<回転伝達機構及びクラッチ機構の構成>
回転伝達機構18は、図3及び図4に示すように、ハンドル軸30と、ハンドル軸30(図3)に回転自在に装着されたマスターギア31(図3)と、マスターギア31に噛み合うピニオンギア32(図4)と、ハンドル軸30にマスターギア31と間隔を隔てて一体回転可能に装着された駆動ギア29(図3)を有している。ハンドル軸30は、第2側カバー6bの第1ボス部6c内に収納されたローラ形のワンウェイクラッチ48により糸繰り出し方向の回転が禁止されている。具体的には、ワンウェイクラッチ48の内輪48aに一体回転可能に係合する後述する押圧プレート71がハンドル軸30に一体回転可能に係合している。ワンウェイクラッチ48の内輪48aは、糸巻取方向にのみ回転可能である。これにより、ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転が禁止される。また、ハンドル軸30には、後述するクラッチ復帰機構46のラチェットホイール72(回転部材の一例)が一体回転可能に装着されている。なお、ラチェットホイール72は、図4に示したラチェット爪73と噛み合う爪式のワンウェイクラッチ74を構成している。またハンドル軸30の外周面には、スタードラグ3が螺合する第1ねじ部30aと、ハンドル2を固定するためのナット75が螺合する小径の第2ねじ部30bが形成されている。また、外周面には、一体回転可能に装着された部材(たとえば、押圧プレート71、駆動ギア29、及びラチェットホイール72)に係合する互いに平行な第1係止面30cと、ハンドル2に係合する第2係止面30dと、が形成されている。ハンドル軸30は、中間部がワンウェイクラッチ48により支持され、基端が第2側板8bに装着された軸受35により回転自在に支持されている。軸受35は、図4に示すように第2側板8bに形成された第1ボス部8e装着されている。
【0034】
マスターギア31には、はす歯ギアを有し、ドラグ機構21を介してハンドル2の回転が伝達される。
【0035】
ピニオンギア32は、はす歯ギアで構成され、スプール軸15の外周側に配置されている。ピニオンギア32は、図5に示すように、一端側外周部にマスターギア31に噛み合うように形成されたはす歯の歯部32aと、他端面に形成された係合溝32bと、歯部32aと係合溝32bとの間に形成された小径部32cとを有している。係合溝32bは、スプール軸15に装着された係合ピン15a(図4)と係合あるいは離脱が可能である。また、係合溝32b形成部分の外周面は軸受36により第2側板8bに回転自在に支持されている。軸受36は、第2側板8bの第2ボス部8fに装着されている。駆動ギア29は、従動ギア28に噛み合って、ハンドル2の回転をレベルワインド機構24に伝達する。
【0036】
ピニオンギア32の係合溝32bとスプール軸15の係合ピン15aとによりハンドル2とスプール4との間で回転力の伝達及び遮断を行うためのクラッチ機構19が構成されている。ここでは、ピニオンギア32が外方に移動して係合溝32bとスプール軸15の係合ピン15aとが離脱するとクラッチオフ状態(連結解除状態)になり、ハンドル軸30からの回転力が遮断されスプール軸15に伝達されない。このため、スプール4が自由回転状態になる。また、ピニオンギア32が内方に移動して係合ピン15aに係合溝32bが噛み合うとクラッチオン状態(連結状態)になり、ハンドル2の回転がスプール4に伝達される。
【0037】
<ドラグ機構の構成>
ドラグ機構21は、図3に示すように、マスターギア31を押圧する摩擦プレート70と、スタードラグ3の回転操作によって摩擦プレート70をマスターギア31に所定の力で押圧するための押圧プレート71とを有している。摩擦プレート70は、ハンドル軸30に回転自在に装着され、押圧プレート71は、ハンドル軸30に一体回転可能に装着されている。
【0038】
<クラッチ操作部材の構成>
クラッチ操作部材17は、図6に示す係合位置(第1位置の一例)と、図7に示す離脱位置(第2位置の一例)と、の間で移動可能にクラッチ制御機構20に連結されている。クラッチ操作部材17は、リールフレーム5の後部で第1側板8a及び第2側板8bの間に配置されている。クラッチ操作部材17は、サミングの際のサムレストとしても使用される。
【0039】
<クラッチ制御機構の構成>
クラッチ制御機構20は、図4に示すように、クラッチ操作部材17の操作によりスプール軸芯X回りに回動する合成樹脂製のクラッチカム40と、合成樹脂製のクラッチヨーク41と、金属製の連結部材43と、クラッチ復帰機構46(クラッチ復帰装置の一例)と、を有している。また、クラッチ制御機構20は、クラッチヨーク41をスプール軸方向内方に付勢するコイルバネ44を有している。
【0040】
<クラッチカムの構成>
クラッチカム40は、図5、図6、図7及び図8に示すように、第2側板8bの第2ボス部8fにスプール軸芯X回りに回動自在に装着された、概ね円筒形状の部材である。クラッチカム40は、クラッチオフ状態に対応する図7に示す連結解除位置と、クラッチオン状態に対応する図6に示す連結位置との間で回動自在である。クラッチカム40は、図5に示すように、クラッチヨーク41をスプール軸方向の外方に押圧する傾斜面で構成された1対のカム面40aを外側面(図5右側面)に有している。また、クラッチカム40は、後述するクラッチ爪42を回動自在に連結する連結孔40b(第1連結凹部の一例)を有している。連結孔40bは、カム面40aより径方向外方に突出する第1連結部40cに形成されている。クラッチカム40の外周面には、連結部材43と一体回動するための連結突起40dが一体形成された第2連結部40eが径方向外方に突出して形成されている。第2連結部40eは、第1連結部40cと周方向に間隔を隔てて配置されている。クラッチカム40の内周面には、一対の逃がし部40fが直径上に円弧状に凹んで形成されている。逃がし部40fは、第2ボス部8fの外周部に径方向外方に突出して形成された一対の装着突起8hをかわすために形成されている。クラッチカム40は、逃がし部40fが装着突起8hに当接することにより、回動範囲が規制されている。
【0041】
<クラッチヨークの構成>
クラッチヨーク41は、クラッチカム40に係合し、クラッチカム40の回動によりピニオンギア32をスプール軸方向に移動させるために設けられている。クラッチヨーク41には、カム面40aに係合する一対のカム受け部41aが内側面の点対称の位置に形成されている。このカム面40aがカム受け部41aに係合することにより、クラッチヨーク41がスプール軸方向外方に押圧される。クラッチヨーク41は、第2ボス部8fに固定されたガイド部材45によりスプール軸方向に案内される。ガイド部材45は、第2ボス部8fの装着突起8hにねじ止めされる円環状の固定部45aと、固定部45aに立設された1対のガイド軸45bと、を有している。クラッチヨーク41には、ガイド軸45bに案内される1対のガイド孔41bが形成されている。
【0042】
クラッチヨーク41は、ガイド軸45bの外周に装着されたコイルバネ44によりスプール軸方向内方(図5左方)に付勢されている。コイルバネ44は、第2側カバー6bの内側面とクラッチヨーク41の外側面との間に圧縮状態で配置されている。さらに、クラッチヨーク41の中心部には、ピニオンギア32の小径部32cを係止する半円形の係止溝41cが形成されている。この係止溝41cにより、クラッチヨーク41は、ピニオンギア32をスプール軸方向に移動させる。
【0043】
<連結部材の構成>
連結部材43は、クラッチカム40をクラッチ操作部材17の操作により回動させるために設けられている。連結部材43は、クラッチカム40と第2側板8bの外側面との間に配置された、例えばステンレス合金製の板状部材である。連結部材43は、第2ボス部8fに回転自在に装着される装着部43aと、操作部材固定部43bと、第1突出部43cと、第2連結部40eに沿って径方向に延びる第2突出部43dと、を有している。
【0044】
装着部43aは、第2ボス部8fの周囲でクラッチカム40と第2側板8bの外側面との間に配置される概ねワッシャ状の部分である。装着部43aの内周面には、逃がし部40fと同様に装着突起8hをかわすための逃がし部43gが円弧状に凹んで形成されている。
【0045】
操作部材固定部43bは、装着部43aから概ね後方に延びている。操作部材固定部43bは、装着部43aから径方向に延びた後にスプール軸芯Xと実質的に平行に配置されるように折り曲げられている。この折り曲げられた部分にクラッチ操作部材17がねじにより固定されている。操作部材固定部43bは、図4に示すように、第2側板8bの後部に円弧状に形成されたスリット8gを貫通して第1側板8aの内側面に向かって突出している。
【0046】
第1突出部43cは、図5に示すように、クラッチカム40の第1連結部40cに沿って径方向に延びている。第1突出部43cは、クラッチ爪42の基端をクラッチカム40との間で挟むように形成されている。第1突出部43cには、クラッチ爪42に連結される爪連結孔43e(第2連結凹部の一例)が形成されている。第2突出部43dは、クラッチカムの第2連結部40eに沿って径方向に延びている。第2突出部43dには、クラッチカム40の連結突起40dに連結されるカム連結孔43fが形成されている。
【0047】
<クラッチ復帰機構の構成>
クラッチ復帰機構46は、クラッチオフ状態のクラッチ機構19をハンドル2の糸巻取方向の回転に連動してクラッチオン状態に戻すものである。クラッチ復帰機構46は、ハンドル軸30に一体回転可能に装着された回転部材としてのラチェットホイール72と、クラッチカム40に連結されたクラッチ爪42(クラッチ復帰部材の一例)と、トグルバネ部材47と、を有している。
【0048】
ラチェットホイール72は、前述したように、ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転を禁止するワンウェイクラッチ74としても機能する。ラチェットホイール72は、ハンドル軸30に回転不能に装着されており、外周部には図3、図6及び図7に示すように、多数の歯部72aが回転方向に間隔を隔てて形成されている。
【0049】
クラッチ爪42は、図5及び図8に示すように、例えば、焼結ステンレス合金製の部材である。クラッチ爪42は、図8及び図9に示すように、基端(第1端の一例であり図5の上端)にクラッチカム40の連結孔40bに嵌合する第1連結突起42aと、連結部材43の爪連結孔43eに嵌合する第2連結突起42bと、を有している。第1連結突起42aは、クラッチカム40に向けて円柱状に突出している。第2連結突起42bは、連結部材43に向けし円柱状に突出し、第1連結突起42aと同芯に配置されている。したがって、図9に示すように、クラッチ爪42は、クラッチカム40と連結部材43とにより挟持され、クラッチカム40と連結部材43とに回動自在に連結されている。
【0050】
クラッチ爪42の基端には、図6及び図7に示すように、トグルバネ部材47の一端が係止されるバネ係止部42cが形成されている。トグルバネ部材47は、例えば捩じりコイルバネであり、他端が第2側板8bの外側面に係止されている。クラッチ爪42は、クラッチカム40の回動に連動して、図6に示す非係合位置と、図7に示す係合位置とに移動する。トグルバネ部材47は、クラッチ爪42を非係合位置と係合位置とに振り分けて付勢する。これにより、クラッチカム40、連結部材43及びクラッチ操作部材17が、連結位置と連結解除位置とに振り分けて付勢される。
【0051】
クラッチ爪42の先端(第2端の一例)には、糸巻取方向に回転するラチェットホイール72により押圧される受圧部42dがスプール軸方向外方に突出して形成されている。また、その先端側には、第2側板8bの外側面に凹んで形成された案内凹部8i(案内部の一例)に向けて突出する案内突起42eが一体で設けられている。案内突起42eは、案内凹部8iの壁部に接触して先端をラチェットホイール72の近傍に配置するために設けられている。この案内凹部8iに案内されかつトグルバネ部材47により振り分けて付勢されることにより、クラッチ爪42は、非係合位置と係合位置とに位置決めされる。なお、トグルバネ部材47は、クラッチ爪42を介してクラッチカム40及び連結部材43を連結位置と連結解除位置とに振り分けて付勢している。
【0052】
このような構成では、通常状態ではピニオンギア32は軸方向内方のクラッチオン位置に位置しており、係合溝32bとスプール軸15の係合ピン15aとが係合してクラッチオン状態となっている。このとき、クラッチ爪42は、非係合位置に配置される。一方、クラッチ操作部材17を操作してクラッチヨーク41によってピニオンギア32が軸方向外方に押圧移動した場合は、係合溝32bと係合ピン15aとの係合が外れ、クラッチオフ状態となる。これにより、クラッチ爪42は、非係合位置から係合位置に移動する。
【0053】
この状態でハンドル2を糸巻取方向に回転操作するとラチェットホイール72が糸巻取方向に回転する。ラチェットホイール72が糸巻取方向に回転すると、この歯部72aがクラッチ爪42の受圧部42dを非係合位置に向けて押圧する。そして、トグルバネ部材47の死点をクラッチ爪42が超えると、クラッチ爪42が非係合位置に付勢される。このクラッチ爪42の非係合位置への移動により、クラッチ爪42に連結されたクラッチカム40及び連結部材43が連結位置から連結解除位置に回動する。これにより、クラッチ機構19がクラッチオフ状態からクラッチオン状態に戻る。このとき、クラッチ操作部材17も第2位置から第1位置に戻る。このハンドル2によるクラッチ戻し操作において、クラッチ爪42がクラッチカム40に加えて連結部材43にも連結されているため、クラッチカム40を変形させることなく、クラッチ戻し操作を行える。このため、クラッチの戻し操作が重くなりにくい。
【0054】
また、クラッチカム40と連結部材43とがクラッチ爪42に連結されているため、クラッチカム40に連結部材43によるせん断力が生じにくくなり、クラッチカム40に大きなせん断力が作用しなくなる。
【0055】
<両軸受リールの動作>
通常の状態では、図9に示すように、クラッチ操作部材17は、係合位置に配置され、クラッチヨーク41はコイルバネ44によってスプール軸方向内方に押されている。これによりピニオンギア32は係合位置に移動させられている。この状態では、ピニオンギア32の係合溝32bとスプール軸15の係合ピン15aとが噛み合ってクラッチオン状態となっている。このクラッチオン状態では、ハンドル2からの回転力は、ハンドル軸30、マスターギア31及びピニオンギア32を介してスプール軸15及びスプール4に伝達される。このとき、キャスティングコントロール機構22のキャップ52の締め付け量を調整することにより、スプール4の回転時の抵抗力を調整することが可能である。
【0056】
仕掛けを降下させる場合には、クラッチ操作部材17を下方に押圧する。具体的には、先端をスプール4のフランジ部4aに接触させてサミングする指の腹で、クラッチ操作部材17を下方に押圧する。この押圧操作により、クラッチ操作部材17aはスプール軸芯X回りに下方に回動して第1位置から第2位置に移動する。
【0057】
クラッチ操作部材17と連結部材43とは連結されているので、クラッチ操作部材17を下方に回動させることによって、連結部材43はスプール軸芯Xを中心に図6において反時計回りに回動する。連結部材43とクラッチカム40とは、連結突起40dとカム連結孔43f及びクラッチ爪42を介して連結されている。このため、この連結構造により、連結部材43が反時計回りに回動すると、クラッチカム40もトグルバネ部材47の付勢力に抗してスプール軸芯Xを中心に反時計回りに連結位置から連結解除位置に回動する。
【0058】
クラッチカム40が反時計回りに回動すると、クラッチカム40のカム面40aにクラッチヨーク41のカム受け部41aが当接しているので、クラッチヨーク41はカム面40aに沿ってスプール軸方向外方(図4右方)に移動させられる。クラッチヨーク41はピニオンギア32の小径部32cに係合しているので、クラッチヨーク41が軸方向外方に移動することによってピニオンギア32も同方向に移動させられる。この状態では、ピニオンギア32の係合溝32bとスプール軸15の係合ピン15aとの噛み合いが外れ、クラッチオフ状態となる。クラッチオフの状態では、ハンドル軸30からの回転はスプール4に伝達されない。この結果、スプール4が自由回転状態となり、仕掛けの自重によりスプール4に巻き付けられた釣り糸が繰り出される。
【0059】
クラッチオフ時の様子を図7に示す。ここで、クラッチ操作部材17が下方の離脱位置に移動することによって連結部材43及びクラッチカム40が回転させられると、クラッチ爪42の先端の案内突起42eが案内凹部8iに案内されかつトグルバネ部材47の死点を超えると係合位置側に付勢されてラチェットホイール72側へ移動する。
【0060】
仕掛けの降下を開始すると、指をわずかに斜め前方に移動させて先端をスプール4のフランジ部4aに接触させてサミングを行う。
【0061】
次に、仕掛けを棚位置に配置した後に素早くクラッチオフ状態から再びクラッチオン状態にする場合には、図7に示すクラッチオフ状態において、ハンドル2によりハンドル軸30を時計回り(糸巻取方向)に回転させれば、ラチェットホイール72の歯部72aによってクラッチ爪42の受圧部42dが押される。すると、受圧部42dが押圧されて、トグルバネ部材47の死点を超えると、クラッチ爪42はトグルバネ部材47の付勢力により非係合位置に戻る。これに連動してクラッチカム40は、連結解除位置に戻ってクラッチ機構19はクラッチオン状態となる。
【0062】
このハンドル2の糸巻取方向の回転によりクラッチ機構19をクラッチオン状態に戻すとき、クラッチ爪42がクラッチカム40に加えて連結部材43にも連結されているため、クラッチカム40を変形させることなく、クラッチ戻し操作を行える。このため、クラッチの戻し操作が重くなりにくい。
【0063】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
(a)前記実施形態では、リール本体が非円形の両軸受リールに適用したクラッチ操作部材を例に説明したが、リール本体が円形の両軸受リールにも本発明のクラッチ制御機構を適用できる。
【0065】
(b)前記実施形態では、リール本体の後部だけにクラッチ操作部材17を有しているが、リール本体の上部等に別のクラッチ操作部材を有するクラッチ制御機構にも本発明を適用できる。
【0066】
(c)前記実施形態では、リール本体に設けられた案内凹部8iに案内突起42eが直製接触しているが、図10及び図11に示すように案内突起142e(又は242e)の外周面に合成樹脂製のカバー部材142f(242f)を回動自在に装着し、案内突起142e(又は242e)を覆うようにしても良い。
【0067】
図10では、有底筒状のカバー部材142fが案内突起142eに回動自在に連結されている。この場合は、カバー部材142fは、案内突起142eに対して着脱自在であり、抜け止めされていない。
【0068】
図11では、円筒状のカバー部材242fが案内突起242eに回動自在に連結されている。案内突起242erの先端部はカバー部材242fを装着後にカシメられている。このため、カバー部材242fは、案内突起242eから脱落しない。
【0069】
(d)前記実施形態では、クラッチカム40に設けられた第1連結凹部及び連結部材43に設けられた第2連結凹部が、貫通する連結孔40b及び爪連結孔43eであったが、第1連結凹部及び第2連結凹部は、貫通していない凹みでも良い。
【0070】
(e)前記実施形態では、クラッチ爪42に第1連結突起42a及び第2連結突起42bを設けたが、本発明はされに限定されない。例えば、クラッチカムとクラッチ爪と連結部材を貫通する連結軸により3つの部材を連結しても良い。また、クラッチカムと連結部材にクラッチ爪に向けて突出する連結突起を設けても良い。
【0071】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0072】
(A)両軸受リールのクラッチ制御機構20(クラッチ制御装置の一例)は、リール本体1に設けられたハンドル2により回転するスプール4とハンドル2とを連結及び連結解除するクラッチ機構19を、係合位置(第1位置の一例)と離脱位置(第2位置の一例)とに移動可能なクラッチ操作部材17の操作により動作させる装置である。クラッチ制御機構20は、筒状のクラッチカム40と、クラッチヨーク41と、連結部材43と、クラッチ復帰機構46と、を備えている。クラッチカム40は、リール本体1にスプール軸芯X回りに回動自在に装着され、クラッチ操作部材17の係合位置と離脱位置との移動に応じて、クラッチ機構19がクラッチオン状態になる連結位置とクラッチオフ状態になる連結解除位置とに回動する。クラッチヨーク41は、クラッチ機構19に係合し、クラッチカム40の回動によりスプール4の軸方向に移動し、クラッチ機構19をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換える。連結部材43は、クラッチカム40とクラッチ操作部材17とを連結し、クラッチ操作部材17の係合位置と離脱位置との移動に応じてクラッチカム40を連結位置と連結解除位置とに回動させる。クラッチ復帰機構46は、ラチェットホイール72(回転部材の一例)と、クラッチ爪42(クラッチ復帰部材の一例)と、トグルバネ部材47と、を有している。ラチェットホイール72は、ハンドル2の回転軸に装着されている。クラッチ爪42は、先端(第1端の一例)と基端(第2端の一例)とを有し、係合位置と非係合位置とに移動する。クラッチ爪42は、基端がクラッチカム40と連結部材43とに挟持されクラッチカム40と連結部材43とに連結されているクラッチ爪42は、クラッチカム40の連結位置から連結解除位置への回動により、非係合位置から先端がラチェットホイール72に係合する係合位置に移動する。クラッチ爪42は、ハンドル2の糸巻取方向の回転により、ラチェットホイール72により先端が押圧されて係合位置から非係合位置に移動してクラッチカム40及び連結部材43を連結位置に戻す。トグルバネ部材47は、クラッチ爪42を係合位置と非係合位置とに振り分けて付勢する。
【0073】
このクラッチ制御機構20では、クラッチ操作部材17が例えば係合位置から離脱位置に移動すると、連結部材43を介してクラッチカム40が連結位置から連結解除位置に回動し、クラッチ機構19がクラッチオフ状態になる。また、クラッチカム40が連結解除位置に回動するとクラッチ爪42が非係合位置から係合位置に移動し、クラッチ爪42がラチェットホイール72に係合可能に位置に移動する。このとき、トグルバネ部材によりクラッチ爪42が係合位置に付勢される。
【0074】
また、クラッチ機構19が連結解除状態のときハンドル2が糸巻取方向に回転すると、ラチェットホイール72が糸巻取方向に回転し、ククラッチ爪42が非係合位置に向けて押圧される。そして、トグルバネ部材47の死点をクラッチ爪42が超えると、クラッチ爪42が非係合位置に付勢される。このクラッチ爪42の非係合位置への移動により、クラッチ爪42に連結されたクラッチカム40及び連結部材43が連結解除位置から連結位置に回動する。これにより、クラッチ機構19が連結解除状態から連結状態に戻る。このとき、クラッチ操作部材17も離脱位置から係合位置に戻る。このハンドル2によるクラッチ戻し操作において、クラッチ爪42がクラッチカム40に加えて連結部材43にも連結されているため、クラッチカム40を変形させることなく、クラッチ戻し操作を行える。このため、クラッチ戻し操作が重くなりにくい。
【0075】
(B)両軸受リールのクラッチ制御機構20において、クラッチカム40は、トグルバネ部材47によりクラッチ爪42を介して連結位置及び連結解除位置に保持される。これにより、クラッチ爪42を付勢するトグルバネ部材47によりクラッチカム40が連結位置及び連結解除位置に保持され、かつ連結部材43及びクラッチ操作部材17も二つの位置で保持される。このため、クラッチカム40、連結部材43及びクラッチ操作部材17を二つの位置で保持する構成が簡素になる。
【0076】
(C)両軸受リールのクラッチ制御機構20において、クラッチ爪42は、クラッチカム40に向けて円柱状に突出してクラッチカム40に連結される第1連結突起42aと、第1連結突起42aと同芯に配置され、連結部材43に向けて円柱状に突出して連結部材43に連結される第2連結突起42bと、を先端に有する。クラッチカムは、第1連結突起42aが回動自在に連結される連結孔40b(第1連結凹部の一例)を有する。連結部材43は、第2連結突起42bが回動自在に連結される爪連結孔43e(第2連結凹部の一例)を有する。この場合には、回動可能な第1連結突起42a及び第2連結突起42bによりクラッチカム40及び連結部材43がクラッチ爪42に各別に連結されているので、クラッチ爪42の非係合位置への移動による力がスムーズにクラッチカム40及び連結部材43に伝達される。このため、クラッチ復帰操作がさらに軽くなる。
【0077】
(D)両軸受リールのクラッチ制御機構20において、クラッチ操作部材17は、連結部材43に固定されている。連結部材43は、クラッチ操作部材17の離脱位置から係合位置への移動により、クラッチカム40を連結解除位置から連結位置に回動させる。この場合には、ハンドル2の糸巻取方向の回転だけでなく、クラッチ操作部材17の離脱位置から係合位置への移動によってもクラッチ機構19をクラッチオフ状態からクラッチオン状態に戻すことができるので、クラッチ復帰動作を瞬時に行える。
【0078】
(E)両軸受リールのクラッチ制御機構20において、リール本体1には、クラッチ爪42の先端を案内する案内凹部8i(案内部の一例)が形成され、クラッチ爪42の先端には、案内凹部8iに向けて突出する案内突起42eが一体で設けられている。これにより、クラッチ爪42の案内突起42eが案内凹部8iに案内されるので、クラッチ爪42の移動がスムーズになり、このため、クラッチ復帰操作がさらに軽くなる。
【0079】
(F)クラッチ制御機構20において、リール本体1はアルミニウム合金製であり、クラッチ爪142(又は242)はステンレス合金製であり、案内突起142e(又は242e)は、円形に突出しており、案内突起142e(又は242e)外周面に回動自在に装着され外周面を覆う合成樹脂製の筒状のカバー部材142e(又は242f)をさらに備える。
【0080】
これにより、ステンレス合金製の案内突起142e(又は242e)とアルミニウム合金製の案内凹部8iとが直接接触しなくなり、案内突起142e(又は242e)が案内凹部8iに案内されても金属同士の接触による電解腐食を防止できる。
【符号の説明】
【0081】
1 リール本体
2 ハンドル
4 スプール
15 スプール軸
17 クラッチ操作部材
19 クラッチ機構
20 クラッチ制御機構
30 ハンドル軸
40 クラッチカム
40b 連結孔
40c 第1連結部
41 クラッチヨーク
42 クラッチ爪
42a 第1連結突起
42b 第2連結突起
43 連結部材
43e 爪連結孔
46 クラッチ復帰機構
72 ラチェットホイール
142 クラッチ爪
142e 案内突起
142f カバー部材
242 クラッチ爪
242e 案内突起
242f カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両軸受リールのリール本体に設けられたハンドルにより回転するスプールと前記ハンドルとを連結及び連結解除するクラッチ機構を、第1位置と第2位置に移動可能なクラッチ操作部材の操作により動作させる両軸受リールのクラッチ制御装置であって、
前記リール本体に前記スプールの中心軸回りに回動自在に装着され、前記クラッチ操作部材の前記第1位置と前記位置との移動に応じて、前記クラッチ機構が連結状態になる連結位置と連結解除状態になる連結解除位置とに回動する筒状のクラッチカムと、
前記クラッチ機構に係合し、前記クラッチカムの回動により前記スプールの軸方向に移動し、前記クラッチ機構を前記連結状態と前記連結解除状態とに切り換えるクラッチヨークと、
前記クラッチカムと前記クラッチ操作部材とを連結し、前記クラッチ操作部材の前記第1位置と第2位置との移動に応じて前記クラッチカムを前記連結位置と前記連結解除位置とに回動させる連結部材と、
前記ハンドルの回転軸に装着された回転部材と、第1端と第2端とを有し、係合位置と非係合位置とに移動するクラッチ復帰部材と、前記クラッチ復帰部材を前記係合位置と前記非係合位置とに振り分けて付勢するトグルバネ部材と、を有するクラッチ復帰機構と、を備え、
前記クラッチ復帰部材は、前記第1端が前記クラッチカムと前記連結部材とに挟持され前記クラッチカムと前記連結部材とに連結され、前記クラッチカムの前記連結位置から前記結解除位置への回動により、前記非係合位置から前記第2端が前記回転部材に係合する前記係合位置に移動し、前記ハンドルの糸巻取方向の回転により、前記回転部材により前記第2端が押圧されて前記係合位置から前記非係合位置に移動して前記クラッチカム及び前記連結部材を前記連結位置に戻す、両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項2】
前記クラッチカムは、前記トグルバネ部材により前記クラッチ復帰部材を介して前記連結位置及び前記連結解除位置に保持される、請求項1に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項3】
前記クラッチ復帰部材は、前記クラッチカムに向けて円柱状に突出して前記クラッチカムに連結される第1連結突起と、前記第1連結突起と同芯に配置され、前記連結部材に向けて円柱状に突出して前記連結部材に連結される第2連結突起と、を前記第1端に有し、
前記クラッチカムは、前記第1連結突起が回動自在に連結される第1連結凹部を有し、
前記連結部材は、前記第2連結突起が回動自在に連結される第2連結凹部を有する、請求項1又は2に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項4】
前記クラッチ操作部材は、前記連結部材に固定され、
前記連結部材は、前記クラッチ操作部材の前記第2位置から前記第1位置への移動により、前記クラッチカムを前記連結解除位置から連結位置に回動させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項5】
前記リール本体には、前記クラッチ復帰部材の前記第2端を案内する案内部が形成され、
前記クラッチ復帰部材の前記第2端には、前記案内部に向けて突出する案内突起が一体で設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項6】
前記リール本体はアルミニウム合金製であり、前記クラッチ復帰部材はステンレス合金製であり、
前記案内突起は、円形に突出しており、
前記案内突起の外周面に回動自在に装着され前記外周面を覆う合成樹脂製の筒状のカバー部材をさらに備える、請求項5に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−65574(P2012−65574A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212097(P2010−212097)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】