説明

両軸受リール

【課題】リール本体を大型化することなく、遠心制動装置を配置できるようにする。
【解決手段】スプール12は、第1フランジ部12bに一体回転可能に設けられ、第1側カバー6と対向する端面に第1側カバー6方向に環状に突出して設けられ、外周部に遠心ブレーキ機構25の取付台54が配置され、内周部に延びる第1側カバー6のボス部6aに装着される第1軸受21aの一部が配置される第3環状部12eを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リール、特に、釣り糸の繰り出し及び巻き取りを行う両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールは、一般に、ハンドルを有するリール本体と、リール本体に回転自在に装着されたスプールとを備えている。スプールは、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、糸巻胴部の両端に設けられたフランジ部とを有している。糸巻胴部は、外周に釣り糸が巻き付けられる円筒状であり、フランジ部は、糸巻胴部の外径よりも大径である。
【0003】
また、主に、ルアーフィッシングに用いられる両軸受リールでは、キャスティング時にスプールの回転速度が糸繰り出し速度より速くなることによって生じるバックラッシュを防ぐために、制動力をスプールに作用させることが一般に行われている。この種の制動装置として、スプールの回転により生じる遠心力を利用してスプールを制動する遠心制動装置を有するものが知られている。この種の遠心制動装置は、たとえば、スプールに連動して回転する回転部材と、回転部材に放射状に設けられた複数のガイド軸と、各ガイド軸の両端部に軸方向に移動自在に装着された複数の移動部材と、リール本体に回転不能に設けられた制動部材とを備えている。制動部材は移動部材の外周側に配置され、ハンドル装着側と逆側の側板に形成されたリング部内周面の開口に回転不能に装着された筒状の部材である。このような遠心制動装置では、スプールが回転すると、ガイド軸に装着された移動部材に遠心力が作用して移動部材がスプール軸外方に向けて移動して、制動部材に接触してスプールが制動される。
【0004】
このような両軸受リールでは、リール本体を小型化するために、スプールの糸巻胴部の内部に遠心制動装置を配置したものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、スプール軸を支持する軸受とスプールの端面との間のスペースにおいてスプールの端面に形成されたリブの外周部に遠心制動装置を配置したものが知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−274782号公報
【特許文献2】実開平6−75169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の前者の両軸受リールは、スプールの糸巻胴部の内部に遠心制動装置が配置されているのでリール本体を小型化することができるが、特に、糸巻胴部の外径が小さい深溝スプールの場合には、径が小さい糸巻胴部の内部に遠心制動装置を収納するためのスペースを確保するのが非常に困難である。このため、深溝スプールの場合には、糸巻胴部の外部に遠心制動装置を配置することになるので、リール本体が大型化するおそれが生じる。
【0007】
また、前記従来の後者の両軸受リールは、軸受とスプールの端面との間のスペースにおいてスプールの端面に形成されたリブの外周部に遠心制動装置が配置されているので、リール本体の横幅が軸受とスプールの端面との間のスペース分だけ大きくなってしまい、リール本体が大型化するおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、両軸受リールにおいて、リール本体を大型化することなく、遠心制動装置を配置できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る両軸受リールは、釣り糸の繰り出し及び巻き取りを行う両軸受リールであって、リール本体と、ハンドルと、スプール軸と、スプールと、スプール制動装置と、環状部とを備えている。リール本体は、所定の間隔をあけて対向するように配置された第1側板及び第2側板と、第1側板及び第2側板をそれぞれ覆う第1側カバー及び第2側カバーとを有している。ハンドルは、第2側カバーに回転自在に装着されている。スプール軸は、両端部が第1軸受及び第2軸受によって第1側カバー及び第2側カバーに回転可能に支持されている。スプールは、第1側板と第2側板との間に配置され、糸巻胴部と、第1フランジ部及び第2フランジ部とを有している。糸巻胴部は、内周部にスプール軸が一体回転可能に装着され、外周部に釣り糸が巻き付けられる筒状の部材である。第1フランジ部及び第2フランジ部は、糸巻胴部の第1側板側の端部及び第2側板側の端部にそれぞれ径方向外方に突出して設けられている。スプール制動装置は、スプールの回転に応じてスプールの回転を制動する装置である。環状部は、第1フランジ部に一体回転可能に設けられ、第1側カバーと対向する端面に第1側カバー方向に環状に突出して設けられ、外周部にスプール制動装置が配置され、内周部に延びる第1側カバーに第1軸受の少なくとも一部が配置されている。
【0010】
この両軸受リールでは、スプールの第1フランジ部に突出して形成された環状部の外周部にスプール制動装置が配置され、環状部の内周部に延びる第1側カバーに第1軸受の少なくとも一部が配置されている。ここでは、環状部の外周部にスプール制動装置が配置され、環状部の内周部に延びる第1側カバーに第1軸受が配置されているので、従来のように第1軸受とスプールの端面との間のスペースにおいてスプールの端面に形成されたリブの外周部に遠心制動装置を配置した場合に比して、第1軸受とスプールの端面との間のスペースを小さくできる。したがって、特に、深溝スプールの場合であっても、環状部の外周部にスプール制動装置を配置し、環状部の内周部に延びる第1側カバーに第1軸受を配置することによって、リール本体の横幅を小さくすることができるので、リール本体を大型化することなく、遠心制動装置を配置できる。
【0011】
発明2に係る両軸受リールは、発明1の両軸受リールにおいて、スプール制動装置は、制動部材と、ガイド軸と、移動部材とを有している。制動部材は、第1側カバーに装着され、内周部に制動面を有する円筒状の部材である。ガイド軸は、環状部の外周部に径方向外方に突出するように配置されている。移動部材は、ガイド軸に移動自在に装着され、制動部材に接触してスプールの回転を制動する部材である。この場合、スプールが回転すると、ガイド軸に装着された移動部材に遠心力が作用して移動部材がスプール軸外方に向けて移動して、制動部材に接触することによって、スプールを容易に制動できる。
【0012】
発明3に係る両軸受リールは、発明1又は2の両軸受リールにおいて、スプール制動装置は、環状部の外周部に装着され、外周部に複数のガイド軸が取り付けられる筒状の取付台をさらに有している。この場合、ガイド軸を取り付けるために取付台を加工するだけでよいので、環状部を細かく加工する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、両軸受リールにおいて、スプールの第1フランジ部に突出して形成された環状部の外周部にスプール制動装置が配置され、環状部の内周部に延びる第1側カバーに第1軸受の少なくとも一部が配置されているので、リール本体を大型化することなく、遠心制動装置を配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの右側面図。
【図3】前記両軸受リールの平面断面図。
【図4】前記両軸受リールの右側平面拡大断面図。
【図5】前記両軸受リールの左側平面拡大断面図。
【図6】前記両軸受リールの遠心ブレーキ機構の左側面図。
【図7】他の実施形態の図4に相当する図。
【図8】他の実施形態の図4に相当する図。
【図9】他の実施形態の図4に相当する図。
【図10】他の実施形態の図5に相当する図。
【図11】他の実施形態の図5に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態が採用された両軸受リールは、図1から図3に示すように、ベイトキャスト用の丸形の両軸受リールである。このリールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを備えている。
【0016】
ハンドル2は、図1及び図2に示すように、板状のアーム部2aと、アーム部2aの両端に回転自在に装着された把手部2bとを有するダブルハンドル形のものである。アーム部2aは、図2に示すように、ハンドル軸30の先端に回転不能に装着されており、ナットによりハンドル軸30に締結されている。
【0017】
リール本体1は、図1から図3に示すように、たとえばアルミニウム合金やマグネシウム合金などの金属製の部材であり、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6及び第2側カバー7とを有している。リール本体1の内部には、糸巻き用のスプール12がスプール軸20(図3参照)を介して回転自在かつ着脱自在に装着されている。第1側カバー6は、スプール軸方向外方から見て円形であり、第2側カバー7は、2つの交差する外周円で構成された瓢箪型である。
【0018】
フレーム5内には、図3に示すように、スプール12と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチレバー17と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くための図示しないレベルワインド機構とが配置されている。また、フレーム5と第2側カバー7との間には、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構に伝えるための図示しないギア機構と、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構を制御するための図示しないクラッチ制御機構と、スプール12を制動する図示しないドラグ機構と、スプール12の回転時の抵抗力を調整するための図示しないキャスティングコントロール機構とが配置されている。また、フレーム5と第1側カバー6との間には、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための遠心ブレーキ機構25が配置されている。
【0019】
フレーム5は、図3に示すように、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板8及び第2側板9と、第1側板8及び第2側板9を一体で連結する上下の連結部10a及び連結部10bとを有している。上側の連結部10aは、第1側板8及び第2側板9の外形と同一面に配置されており、下側の連結部10bは、前後に1対設けられており、外形より内側に配置されている。下側の連結部10bには、図3に示すように、リールを釣竿に装着するための前後に長い、たとえばアルミニウム合金等の金属製の竿装着脚部4がリベット止めされている。
【0020】
第1側板8は、図3に示すように、中心部よりやや上方に形成され、スプール12を着脱するための円形の開口8aを有している。第1側板8の外側(図3左側)には、開口8aを覆うように第1側カバー6が着脱可能に装着されている。第1側カバー6は、たとえば3本のねじにより第1側板8に固定されている。
【0021】
第2側板9は、図3に示すように、第2側カバー7と接合される筒状の筒状部9aと、筒状部9aの内周部に装着固定されギア機構、クラッチ機構及びクラッチ制御機構が取り付けられる板状の板状部9bとを有している。板状部9bは、図3及び図4に示すように、スプール12の第2フランジ部12cと対向する端面に第2フランジ部12c方向(図4左側)に環状に突出して形成された第1環状部9cを有している。第1環状部9cは、第2側板9の板状部9bと一体成形された環状部分であって、内周部には後述する第3軸受21cが配置されている。
【0022】
第1側カバー6は、図3に示すように、スプール12の回転軸であるスプール軸20の左端を支持するボス部6aと、内周部に後述する遠心ブレーキ機構25の制動部材51が固定される凹部6bとを有している。ボス部6aは、凹部6bの中央部分に内側(図3右側)に筒状に突出して形成されており、ボス部6aの内周面には、スプール軸20の第1軸部20aを回転自在に支持する第1軸部20aが装着されている。凹部6bの開口部近傍の内周面には図示しない雌ねじ部が形成されており、制動部材51の外周面に形成された図示しない雄ねじ部が螺合することによって、凹部6bに制動部材51が固定されている。
【0023】
第2側カバー7は、図3に示すように、第2側板9と同一の2つの外周円が交差する偏芯した円形の側面を有している。第2側カバー7は、たとえば3本のねじにより第2側板9に固定されている。
【0024】
スプール12は、図3に示すように、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部12aと、糸巻胴部12aの両端にそれぞれ径方向外方に突出して設けられた第1フランジ部12b及び第2フランジ部12cとを有している。スプール12は、糸巻胴部12aの内周側の軸方向の実質的に中央部に一体で形成された筒状のボス部を有しており、ボス部を貫通するスプール軸20に、たとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。糸巻胴部12aの外径は、第1フランジ部12b及び第2フランジ部12cの外径のたとえば、50%未満、具体的には、30%程度になるように形成されており、糸巻胴部12aの外径が小さい深溝スプールである。
【0025】
スプール12は、図3及び図4に示すように、第2フランジ部12cに一体回転可能に設けられ、第2側板9の板状部9bと対向する端面に第2側板9の板状部9b方向(図4右側)に環状に突出して形成された第2環状部12dをさらに有している。第2環状部12dは、スプール12の第2フランジ部12cと一体成形された環状部分であって、外周部には第3軸受21cが配置されている。第1環状部9cの内径は、第2環状部12dの外径より大径になるように形成され、第3軸受21cは、第1環状部9cの内周部と第2環状部12dの外周部との間に配置されている。第3軸受21cは、リール本体1の第2側板9の端面に形成された第1環状部9cの内周部と、スプール12の第2フランジ部12cの端面に形成された第2環状部12dの外周部との間に配置されている。第3軸受21cは、ボールベアリングである。
【0026】
スプール12は、図3及び図5に示すように、第1フランジ部12bに一体回転可能に設けられ、第1側カバー6と対向する端面に第1側カバー6方向(図5左側)に環状に突出して設けられ、外周部に遠心ブレーキ機構25の取付台54が配置され、内周部に延びる第1側カバー6のボス部6aに装着される第1軸受21aの一部が配置される第3環状部12eをさらに有している。第3環状部12eは、スプール12の第1フランジ部12bと一体成形された環状部分であって、外周部にはガイド軸52を取り付けるための取付台54が配置され、内周部には間隔をあけて第1軸受21aの一部が配置されている。
【0027】
スプール軸20は、図3に示すように、第1側カバー6から、スプール12及び第2側板9を貫通して、第2側カバー7の外方に延びている。スプール軸20は、第1側カバー6に支持される第1軸部20aと、スプール12の内周部に一体回転可能に固定される第2軸部20bと、外周にピニオンギア32が装着される第3軸部20cと、第2側カバー7に支持される第4軸部20dとを有している。第1軸部20aは、前述したように第1側カバー6のボス部6aの内周面に配置された第1軸受21aにより回転自在に支持されている。第2軸部20bの右端は、第2側板9の板状部9bの貫通部部分に配置されており、クラッチ機構を構成する係合ピンが固定されている。第3軸部20cの外周に装着されたピニオンギア32は、第2側板9の板状部9bの貫通部部分に配置された第4軸受21dにより回転自在に支持されている。第4軸部20dは、第2側カバー7に装着されたボス部7aの内周面に配置された第2軸受21bにより回転自在に支持されている。第1軸部20a、第3軸部20c及び第4軸部20dの外径は、第2軸部20bの外径より小径になるように形成されている。第1軸受21a、第2軸受21b及び第4軸受21dは、ボールベアリングである。
【0028】
クラッチレバー17は、図2に示すように、第1側板8と第2側板9との間の後部でスプール12後方に配置されている。クラッチレバー17は第1側板8と第2側板9との間で上下方向にスライドする。ギア機構は、ハンドル軸30(図2参照)と、ハンドル軸30に固定された図示しないメインギアと、メインギアに噛み合う筒状のピニオンギア32(図3参照)とを有している。メインギアは、ハンドル軸30に回転自在に装着されており、ハンドル軸30と図示しないドラグ機構を介して連結されている。ピニオンギア32は、第2側板9の外方から内方に延び、中心にスプール軸20が貫通する筒状部材であり、スプール軸20に軸方向に移動自在に装着されている。
【0029】
遠心ブレーキ機構25は、図3、図5及び図6に示すように、第1側カバー6の凹部6bに装着され内周部に制動面51a(図6参照)を有する円筒状の制動部材51と、スプール12の第3環状部12eの外周部に装着される取付台54と、取付台54の外周部に径方向外方に突出するように配置されるガイド軸52と、ガイド軸52に移動自在に装着され先端部が制動部材51の制動面51aに接触してスプール12の回転を制動する移動部材53とを有している。ここでは、スプール12が回転すると、ガイド軸52に装着された移動部材53に遠心力が作用して移動部材53がスプール軸20外方に向けて移動して、制動部材51に接触することによって、スプール12を制動できる。
【0030】
取付台54は、図3、図5及び図6に示すように、スプール12の第3環状部12eの外周側に一体回転可能に固定される円板部を有しており、円板部には、周方向に間隔を隔てて、たとえば3つの突起部を有しており、3つの突起部の両側の円板部にはガイド軸52が立設されており、すなわち、6本のガイド軸52が放射状に配置されている。これらのガイド軸52に移動部材53が移動自在に案内される。
【0031】
制動部材51は、図3、図5及び図6に示すように、第1側カバー6の凹部6bの内周部に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成された金属製の筒状部材であって、内周側に移動部材53が接触する制動面51aを有している。
【0032】
ガイド軸52は、図3、図5及び図6に示すように、取付台54の外周部に径方向外方に突出するように配置される6本の軸部材であって、外周に移動部材53が移動自在に装着されている。
【0033】
移動部材53は、図3、図5及び図6に示すように、筒状の部材であり、その内周側の端部に他の部分より大径で取付台54の3つの突起部の両側に異なる高さ位置に形成された第1係止部54a、第2係止部54bに係止される被係止部53aを有している。移動部材53はスプール12が回転すると遠心力により制動部材51に接触してスプール12を制動する。このとき、被係止部53aが第2係止部54bを乗り越えてそれより内周側に配置されると、遠心力が作用しても被係止部53aが第2係止部54bに接触して制動部材51に接触できない。この移動部材53の径方向位置を切り換えることにより、遠心ブレーキ機構25の制動力を調整できる。なお、第1係止部54aは、移動部材53の抜け止めとして機能している。
【0034】
次に、実釣時のリールの操作及び動作について詳細に説明する。
【0035】
キャスティングを行うときには、クラッチレバー17を下方に押圧すると、ピニオンギア32が軸方向外方に移動し、クラッチオフ状態になる。このクラッチオフ状態では、スプール12が自由回転状態になり、キャスティングを行うと仕掛けの重さにより釣り糸がスプール12から勢いよく繰り出される。
【0036】
仕掛けが着水し、ハンドル2を糸巻き取り方向に回転させると、クラッチオン状態になる。このため、ハンドル2の回転がスプール12に伝達され、スプール12が糸巻き取り方向に回転する。ハンドル軸30が糸巻き取り方向に回転すると、その回転がギア部材を介してレベルワインド機構に伝達され、レベルワインド機構の釣り糸案内部がスプール軸方向に往復移動して釣り糸がスプール12に均一に巻き取られる。
【0037】
このような両軸受リールでは、スプール12は、第1フランジ部12bに一体回転可能に設けられ、第1側カバー6と対向する端面に第1側カバー6方向(図5左側)に環状に突出して設けられ、外周部に遠心ブレーキ機構25の取付台54が配置され、内周部に延びる第1側カバー6のボス部6aに装着される第1軸受21aの一部が配置される第3環状部12eを有している。ここでは、第3環状部12eの外周部に遠心ブレーキ機構25が配置され、第3環状部12eの内周部に延びる第1側カバー6のボス部6aに装着される第1軸受21aが配置されているので、従来のように第1軸受21aとスプール12の端面との間のスペースにおいてスプール12の端面に形成されたリブの外周部に遠心ブレーキ機構25を配置した場合に比して、第1軸受21aとスプール12の端面との間のスペースを小さくできる。したがって、深溝スプールの場合であっても、第3環状部12eの外周部に遠心ブレーキ機構25を配置し、第3環状部12eの内周部に延びる第1側カバー6のボス部6aに第1軸受21aを配置することによって、リール本体1の横幅を小さくすることができるので、リール本体1を大型化することなく、遠心ブレーキ機構25を配置できる。
【0038】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、丸形の両軸受リールを例にあげて説明したが、両軸受リールの形状はこれに限定されるものではなく、ロープロフィール型の両軸受リール等にも本発明を適用できる。また、深溝スプールを有する両軸受リールに限定されるものではなく、たとえば、浅溝スプールを有する両軸受リールにも本発明を適用できる。
【0039】
(b) 前記実施形態では、第3軸受21cは、リール本体1の第2側板9の端面に形成された第1環状部9cの内周部と、スプール12の第2フランジ部12cの端面に形成された第2環状部12dの外周部との間に配置されていたが、図7に示すように、第3軸受21cを、スプール12の第2フランジ部12cの端面に形成された第2環状部12dの内周部と、リール本体1の第2側板9の端面に形成された第1環状部9cの外周部との間に配置してもよい。
【0040】
(c) 前記実施形態では、第1環状部9cは、第2側板9の板状部9bと一体成形されていたが、図8に示すように、第1環状部9cを第2側板9の板状部9bと別体で形成してもよい。
【0041】
(d) 前記実施形態では、第2環状部12dは、第2フランジ部12cと一体成形されていたが、図9に示すように、第2環状部12dを第2フランジ部12cと別体で形成してもよい。
【0042】
(e) 前記実施形態では、第3環状部12eの内周部に延びる第1側カバーに第1軸受21aの一部が配置されていたが、図10に示すように、第3環状部12eを第1側カバー6側(図10左側)に延出し、第3環状部12eの内周部に延びる第1側カバーに第1軸受21aの全部を配置してもよい。
【0043】
(f) 前記実施形態では、遠心ブレーキ機構25のガイド軸52は、第3環状部12eと別体で設けられた取付台54に装着されていたが、図11に示すように、取付台54を設けないで、ガイド軸52を第3環状部12eに装着してもよい。
【0044】
(g) 前記実施形態では、第3軸受21cは、ボールベアリングであったが、筒状のブッシュであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 リール本体
2 ハンドル
2a アーム部
2b 把手部
3 スタードラグ
4 竿装着脚部
5 フレーム
6 第1側カバー
6a ボス部
6b 凹部
7 第2側カバー
7a ボス部
8 第1側板
8a 開口
9 第2側板
9a 筒状部
9b 板状部
9c 第1環状部
10a 連結部
10b 連結部
12 スプール
12a 糸巻胴部
12b 第1フランジ部
12c 第2フランジ部
12d 第2環状部
12e 第3環状部
17 クラッチレバー
20 スプール軸
20a 第1軸部
20b 第2軸部
20c 第3軸部
20d 第4軸部
21a 第1軸受
21b 第2軸受
21c 第3軸受
21d 第4軸受
25 遠心ブレーキ機構
30 ハンドル軸
32 ピニオンギア
51 制動部材
51a 制動面
52 ガイド軸
53 移動部材
53a 被係止部
54 取付台
54a 第1係止部
54b 第2係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸の繰り出し及び巻き取りを行う両軸受リールであって、
所定の間隔をあけて対向するように配置された第1側板及び第2側板と、前記第1側板及び前記第2側板をそれぞれ覆う第1側カバー及び第2側カバーとを有するリール本体と、
前記第2側カバーに回転自在に装着されるハンドルと、
両端部が第1軸受及び第2軸受によって前記第1側カバー及び前記第2側カバーに回転可能に支持されるスプール軸と、
前記第1側板と前記第2側板との間に配置され、内周部に前記スプール軸が一体回転可能に装着され外周部に前記釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部と、前記糸巻胴部の前記第1側板側の端部及び前記第2側板側の端部にそれぞれ径方向外方に突出して設けられた第1フランジ部及び第2フランジ部とを有するスプールと、
前記スプールの回転に応じて前記スプールの回転を制動するスプール制動装置と、
前記第1フランジ部に一体回転可能に設けられ、前記第1側カバーと対向する端面に前記第1側カバー方向に環状に突出して設けられ、外周部に前記スプール制動装置が配置され、内周部に延びる前記第1側カバーに前記第1軸受の少なくとも一部が配置される環状部と、
を備えた両軸受リール。
【請求項2】
前記スプール制動装置は、前記第1側カバーに装着され内周部に制動面を有する円筒状の制動部材と、前記環状部の外周部に径方向外方に突出するように配置されたガイド軸と、前記ガイド軸に移動自在に装着され前記制動部材に接触して前記スプールの回転を制動する移動部材とを有している、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記スプール制動装置は、前記環状部の外周部に装着され、外周部に複数の前記ガイド軸が取り付けられる筒状の取付台をさらに有している、請求項2に記載の両軸受リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−170432(P2012−170432A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38034(P2011−38034)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】