説明

両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体、これを用いた遮光フィルムおよび農業用資材

【課題】一方から見ると強い蛍光が見られるが反対側から見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体、これを用いた遮光フィルムおよび農業用資材を提供する。
【解決手段】両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10は、透明な母材中に蛍光物質を含有させシート状に成形した透明蛍光シート11を備え、その一方の表面11aには、複数の微細な凸構造体12が形成されている。透明蛍光シート11内部で発生した蛍光の約半分は、透明蛍光シート11の他方の表面11bで全反射を起こしてしまうので、表面11b側からの蛍光取り出し効率は低い。一方の表面11a側では、内部で発生した蛍光が凸構造体12の曲面から等方的に出射されるので、表面11aでの蛍光取り出し効率は表面11bよりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体、これを用いた遮光フィルムおよび農業用資材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の透明蛍光シートは、アクリルなどの透明なプラスチック母材にフルオレセインなどの有機蛍光色素を含有させた蛍光プラスチックをシート状に成形したものである。もしくは、母材にシリカガラスを、蛍光物質に希土類錯体を用いる無機蛍光ガラスシートも存在する。
【0003】
なお、蛍光プラスチックファイバに関する従来技術として、特許文献1に記載されたものがある。また、蛍光シリカ粒子の合成法として、特許文献2に記載されたものがある。また、太陽光による植物の光合成を効率的に行うための技術として、例えば特許文献3に記載されたものがある。
【特許文献1】特開平9−269415号公報
【特許文献2】EP1036763B1号公報
【特許文献3】特開平6−046685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の蛍光シートは十分に励起光を照射してもあまりよく光って見えないという問題点がある。これは、図13に示すように、蛍光シート100の内部で発生した蛍光101の約半分がシート表面100aで全反射を起こしてしまい、蛍光シート100の縁まで伝搬してしまって外部に取り出すことができないためである。蛍光シート100の内部に光散乱体を埋め込んだりシート表面100aに光散乱構造を形成したりすれば蛍光の取り出し効率を多少高めることはできるが、代わりにシートの透明性を犠牲にすることになる。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目して為されたもので、その目的は、一方から見ると強い蛍光が見られるが反対側から見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体、これを用いた遮光フィルムおよび農業用資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体は、ガラスやプラスチックのような透明な母材中に蛍光物質を含有させシート状に成形した透明蛍光シートの一方の表面に複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体を形成することにより前記一方の表面での蛍光取り出し効率を高めたことを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体が形成された透明蛍光シートの一方の表面を見ると強い蛍光が見られるが、その他方の表面を見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ透明蛍光体が得られる。
【0008】
本発明の他の態様に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体は、透明な母材中に蛍光物質を含有させシート状に成形した透明蛍光シートと、一方の表面に複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体を形成した透明フィルムとを備え、前記透明フィルムの他方の表面が前記透明蛍光シートの一方の表面に接着され、前記透明フィルムの一方の表面での蛍光取り出し効率を高めたことを特徴とする。
【0009】
この態様によれば、複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体が形成された透明フィルムの一方の表面を見ると強い蛍光が見られるが、透明蛍光シートの他方の表面を見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ透明蛍光体が得られる。
【0010】
本発明の他の態様に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体は、透明で可撓性がある母材中に蛍光物質を含有させ薄膜状に成形した透明蛍光フィルムと、一方の表面に複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体を形成した透明フィルムとを備え、前記透明フィルムの他方の表面が前記透明蛍光フィルムの一方の表面に貼り付けられており、前記透明蛍光フィルムの他方の表面に粘着性を持たせ、前記透明フィルムの一方の表面での蛍光取り出し効率を高めたことを特徴とする。
【0011】
この態様によれば、複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体が形成された透明フィルムの一方の表面を見ると強い蛍光が見られるが、透明蛍光フィルムの他方の表面を見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ透明蛍光体が得られる。
【0012】
本発明の他の態様に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体は、前記複数の凸構造体もしくは凹構造体がそれぞれ有する表面の一部を、前記凸構造体もしくは凹構造体がそれぞれ形成された前記一方の表面に対して所定角度を持つ斜面で形成し、前記斜面が特定方位を向くように前記複数の凸構造体もしくは凹構造体を配置したことを特徴とする。
【0013】
この態様によれば、特定方位側への蛍光取り出し効率を高めることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体は、前記一方の表面に凹構造体を持つものにおいて、前記一方の表面に保護フィルムを接合させたことを特徴とする。
【0015】
この態様によれば、保護フィルムを接合することにより、凹構造体の汚れを防止し、耐磨耗特性にも優れる蛍光強度の異方性を持つ透明蛍光体が得られる。この場合、光取り出し効率の観点からすると保護シートの材質は屈折率ができるだけ低いものの方が望ましい。
【0016】
本発明の他の態様に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体は、前記一方の表面に凸構造体を持つものにおいて、周囲に穏やかな窪み構造を持つ前記凸構造体の最高位置が前記一方の表面よりも低くなるように形成し、前記一方の表面に保護フィルムを接合させたことを特徴とする。
【0017】
この態様によれば、保護フィルムを接合することにより、凸構造体の汚れを防止し、耐磨耗特性にも優れた両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体が得られる。
【0018】
本発明の第2の態様に係る遮光フィルムは、上記両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体を用い、前記透明蛍光シート又は前記透明蛍光フィルムに、前記蛍光物質の蛍光色素が吸収する色の補色に相当する波長帯域に吸収を持つ別の色素を前記蛍光物質と一緒に含有させ、前記凸構造体もしくは凹構造体を形成していない側に対しては遮光機能を示し、前記凸構造体もしくは凹構造体を形成してある側に対しては強い蛍光を放つ蛍光シート機能を示すシートの裏側を見えにくくする効果を持つことを特徴とすることを特徴とする。
【0019】
この態様によれば、凸構造体もしくは凹構造体が形成されている一方の表面が外側になるように透明蛍光体を窓ガラスなどに貼り付けることで、外から見ると強い蛍光が邪魔して内側が見えなくないと共に、内側から見ると凸構造体もしくは凹構造体の無い部分を通して外を見ることができる遮光フィルムが得られる。また、遮光フィルムとして使う場合、透明蛍光シート又は透明蛍光フィルムに、蛍光物質の蛍光色素が吸収する色の補色に相当する波長帯域に吸収を持つ別の色素を前記蛍光物質と一緒に含有させることで、黒っぽい色の遮光フィルムが得られる。
【0020】
本発明の他の態様に係る遮光フィルムは、前記凸構造体もしくは凹構造体の配列が模様を成していることを特徴とする。
【0021】
この態様によれば、複数の凸構造体もしくは凹構造体から出射される光が文字やパターンなどの装飾的な意匠を形成することができるので、遮光フィルムに意匠表示の機能を付加した蛍光意匠表示板を得ることができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る遮光フィルムは、前記凸構造体もしくは凹構造体の大きさが5〜50μmであることを特徴とする。
【0023】
この態様によれば、凸構造体もしくは凹構造体が大きいと遮光フィルムの透明性が阻害されてしまうので、その大きさは肉眼の分解能とされる100μmより小さいほうが望ましい。逆にその大きさが可視光の波長10倍程度の大きさ(5μm)より小さくなると今度は回折現象を起こしてやはり透明性を阻害する。そのため、大きさが5〜100μmの範囲内の凸構造体もしくは凹構造体を透明蛍光体の表面に並べることで、遮光フィルムの透明性を確保できる。凸構造体もしくは凹構造体の大きさは20〜50μmであることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の他の態様に係る遮光フィルムは、前記凸構造体もしくは凹構造体を形成した表面の面積に対する前記凸構造体もしくは凹構造体の面積比率が1〜20%であることを特徴とする。
【0025】
この態様によれば、遮光フィルムの透明性を確保できる。
【0026】
本発明の第3の態様に係る農業用資材は、上記両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体を用いて太陽光を植物の光合成に適したスペクトルに変換することのできることを特徴とする。
【0027】
植物が光合成を行う葉緑素は一般に緑色をしているが、これは波長が500nm以下の紫外線〜青色の光と波長が630nm〜700nmの赤い光を吸収し、その間に位置する青緑〜オレンジ色の光(500〜630nm)をうまく吸収できないためである。しかしながら、地表に照射される太陽光のスペクトルにはこの葉緑素が吸収できない波長帯の光が最も多く含まれており、太陽光はそのままでは植物の光合成にとって効率的ではない。そこで太陽光による植物の光合成を効率的に行うために500〜630nmの光を吸収して赤い蛍光を出す蛍光シートを植物の促成栽培用資材として用いようというアイデアがある(例えば、上記特許文献3参照)。この従来技術では、植物が光合成を行うことのできる波長帯に対しては蛍光シートが透明である必要があり、シート内部に光散乱体を混ぜ込むなどの蛍光取り出し効率向上手段をとることができない。
【0028】
これに対して、この態様によれば、前記凸構造体もしくは凹構造体が形成された表面が内側になるように透明蛍光体をビニールハウスに貼り付けることにより、植物が光合成を行うことのできる波長帯の太陽光の透過を著しく阻害することなく蛍光を内側に向けて効率的に取り出すことができる。
【0029】
本発明の他の態様に係る農業用資材は、植物の光合成に適したスペクトルは500〜630nmの波長帯であることを特徴とする。
【0030】
この態様によれば、植物の光合成に適した500〜630nmの波長帯の太陽光の透過を著しく阻害することなく蛍光を内側に向けて効率的に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、一方から見ると強い蛍光が見られるが反対側から見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体を実現することができる。
【0032】
また、本発明によれば、外から見ると強い蛍光が邪魔して内側が見えなくないと共に、内側から見ると凸構造体もしくは凹構造体の無い部分を通して外を見ることができる遮光フィルムを実現することができる。
【0033】
さらに、本発明によれば、植物が光合成を行うことのできる波長帯の太陽光の透過を著しく阻害することなく蛍光を内側に向けて効率的に取り出すことができる農業用資材を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態の説明において、同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10を、図1乃至図3に基づいて説明する。
【0035】
この両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体(以下、単に「透明蛍光体」という。)10は、ガラスやプラスチックのような透明な母材中に蛍光物質を含有させシート状に成形した透明蛍光シート11を備える。この透明蛍光シート11の一方の表面11aには、複数の微細な凸構造体12が形成されている。凸構造体12は、ドーム形状である。
【0036】
この透明蛍光体10では、図2に示すように、透明蛍光シート11内部で発生した蛍光13の約半分は、透明蛍光シート11の他方の表面11bで全反射を起こしてしまうので、その表面11b側からの蛍光取り出し効率は低い。一方、透明蛍光シート11の一方の表面11a側では、この表面11aに形成された複数の凸構造体12の曲面から出射されるので、一方の表面11aでの蛍光取り出し効率は他方の表面11bよりも高い。
【0037】
凸構造体12が大きいと透明蛍光シート11の透明性が阻害されてしまうので、その大きさは肉眼の分解能とされる100μmよりも小さいほうが望ましい。逆に可視光の波長と同程度の大きさまで小さくなると今度は回折現象を起こしてやはり透明性を阻害するため、その中間である20〜50μm程度が最適である。
【0038】
このような複数の凸構造体12を透明蛍光シート11の一方の表面11aに並べることで、一方の表面11aでの蛍光取り出し効率の高い透明蛍光体10が実現されるが、凸構造体12の配列密度が高すぎるとやはりシートの透明性を阻害してしまうため望ましくない。用途に応じて求められる透明性を得られる密度を設計すればよいが、一般的に凸構造体12を形成した一方の表面11aのシート面積に対する凸構造体12の面積比率で1〜20%になる程度の密度が望ましい。
【0039】
凸構造体12の形成は、図3に示すように、凸構造体12に対応する凹構造14aを持つモールド(金型)14に透明蛍光シート11を熱プレスすることで形成することができる。対応するモールド14については、ドライエッチングやスパッタリング、FIBミリングなどの精密加工手法を用いて作製する。
【0040】
以上の構成を有する第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○複数の微細な凸構造体12が形成された透明蛍光シート11の一方の表面11aを見ると強い蛍光が見られるが、その他方の表面11bを見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10を得ることができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Aを、図4に基づいて説明する。
【0042】
この透明蛍光体10Aは、上記第1実施形態において、透明蛍光シート11の一方の表面11aに、ドーム形状の凸構造体12に代えて、複数の微細な多角錐形状、例えば三角錐形状の凹構造体12Aが形成されている。
【0043】
この透明蛍光体10Aでは、図4に示すように、透明蛍光シート11の内部で発生した蛍光13は凹構造体12Aの面に垂直方向に選択的に放出される。
【0044】
透明蛍光シート11の一方の表面11aに凹構造体12Aを形成する場合には、凹構造のモールドから一度凸構造の二次モールドを作製し、この二次モールドに透明蛍光シート11を熱プレスすることで実現することができる。
以上の構成を有する第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0045】
○複数の微細な凹構造体12Aが形成された透明蛍光シート11の一方の表面11aを見ると強い蛍光が見られるが、その他方の表面11bを見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Aを得ることができる。
【0046】
(第3実施形態)
図5は本発明の第3実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Aを示している。
【0047】
この透明蛍光体10Aは、図4に示す上記第2実施形態において、複数の凹構造体12Aが形成されている透明蛍光シート11の一方の表面11aに、保護フィルム15を接合させたものである。
【0048】
この第3実施形態によれば、透明蛍光シート11の一方の表面11aに保護フィルム15を接合することにより、凹構造体12Aの汚れを防止し、耐磨耗特性にも優れた両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体が得られる。
【0049】
(第4実施形態)
図6に示す第4実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Bは、上記第1実施形態において、透明蛍光シート11の一方の表面11aに、ドーム形状の凸構造体12に代えて、複数の微細な多角錐形状、例えば三角錐形状の凸構造体12Bが形成されている。
【0050】
この透明蛍光体10Bでは、透明蛍光シート11の内部で発生した蛍光13は凸構造体12Bの面に垂直方向に選択的に放出される。
【0051】
以上の構成を有する第4実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0052】
○複数の微細な凸構造体12Bが形成された透明蛍光シート11の一方の表面11aを見ると強い蛍光が見られるが、その他方の表面11bを見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Bを得ることができる。
【0053】
(第5実施形態)
図7は本発明の第5実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Cを示している。
【0054】
この透明蛍光体10Cは、透明な母材中に蛍光物質を含有させシート状に成形した透明蛍光シート20と、一方の表面21aに複数の微細な凸構造体22を形成した透明フィルム21とを備えている。この透明フィルム21の他方の表面21bは、透明蛍光シート20の一方の表面20aに接着されている。
【0055】
透明蛍光シート20は、例えば蛍光アクリル板である。また、透明フィルム21は、透明蛍光シート20と同程度の屈折率を有する材料で形成されている。
【0056】
この透明蛍光体10Cでは、透明蛍光シート20内部で発生した蛍光の一部は、透明蛍光シート20の他方の表面20bで全反射を起こしてしまうので、その表面20b側からの蛍光取り出し効率は低い。一方、透明蛍光シート20の一方の表面20aに入射した蛍光は、この表面20aを透過して透明フィルム21内に入射し、この透明フィルム21の一方の表面21aに形成された複数の凸構造体12の曲面から等方的に出射される。このため、透明フィルム21の一方の表面21aでの蛍光取り出し効率は、透明蛍光シート20の他方の表面20bよりも高い。
【0057】
透明蛍光体10Cは次のようにして作製される。
まず、透明フィルム21の一方の表面21aに、図7に示すように、凸構造体22に対応する凹構造24aを持つモールド(金型)24に透明フィルム21を熱プレスすることで形成することができる。
【0058】
この後、透明フィルム21の裏面21bに粘着処理を施す。
この後、透明フィルム21を所望の形に切断して透明蛍光シート20の一方の表面20aに貼り付ける。
【0059】
以上の構成を有する第5実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0060】
○複数の微細な凸構造体22が形成された透明フィルム21の一方の表面21aを見ると強い蛍光が見られるが、透明蛍光シート20の他方の表面20bを見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Cを得ることができる。
【0061】
(第6実施形態)
図8は本発明の第6実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Dを示している。
【0062】
この透明蛍光体10Dは、透明で可撓性がある母材中に蛍光物質を含有させ薄膜状に成形した透明蛍光フィルム25と、一方の表面26aに複数の微細な凸構造体28を形成した透明フィルム26とを備える。この透明フィルム26の他方の表面26bが透明蛍光フィルム25の一方の表面25aに貼り付けられており、透明蛍光フィルム25の他方の表面25bに粘着性を持たせてある。
【0063】
そして、一方の表面25aに透明フィルム26の他方の表面26bが貼り付けられた透明蛍光フィルム25の他方の表面25bは、ガラス板などの透明基板27の一方の表面27aに貼り付けられる。透明蛍光フィルム25、透明フィルム26、および透明基板27は、同程度の屈折率を有する材料で形成されている。
【0064】
この透明蛍光体10Dでは、透明蛍光フィルム25内部で発生した蛍光の一部は、透明基板27に入射し、その透明基板27の他方の表面27bで全反射を起こしてしまうので、その表面27b側からの蛍光取り出し効率は低い。一方、透明蛍光フィルム25内部で発生し透明フィルム26に入射した蛍光は、透明フィルム26の一方の表面26aに形成された複数の凸構造体28から出射される。このため、透明フィルム26の一方の表面26aでの蛍光取り出し効率は、透明基板27の他方の表面27bよりも高い。
【0065】
透明蛍光体10Dは次のようにして作製される。
【0066】
まず、透明フィルム26の一方の表面26aに、図8に示すように、凸構造体28に対応する凹構造24aを持つモールド(金型)24に透明フィルム26を熱プレスすることで形成することができる。
【0067】
この後、透明フィルム26の裏面26bに粘着処理を施す。
この後、透明フィルム26を所望の形に切断して透明蛍光フィルム25の一方の表面25aに貼り付ける。
この後、透明蛍光フィルム25の他方の表面25bを透明基板27の一方の表面27aに貼り付ける。
【0068】
以上の構成を有する第6実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0069】
○複数の微細な凸構造体28が形成された透明フィルム26の一方の表面26aを見ると強い蛍光が見られるが、透明基板27の他方の表面27bを見ると蛍光を感じさせないという、従来には無かった蛍光強度の異方性を持つ透明蛍光体10Dを得ることができる。
【0070】
(第7実施形態)
図9は本発明の第7実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Eを示している。
【0071】
この透明蛍光体10Eは、図6に示す上記第4実施形態のように透明蛍光シート11の一方の表面11aに、凸構造体12Eを持つものにおいて、周囲に穏やかな窪み構造16を持つ凸構造体12Eの最高位置(頂部17)が一方の表面11aよりも低くなるように形成し、一方の表面11aに保護フィルム18を接合させたものである。
【0072】
この第7実施形態によれば、透明蛍光シート11の一方の表面11aに保護フィルム18を接合することにより、凸構造体12Eの汚れを防止し、耐磨耗特性にも優れた両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体10Eが得られる。
【0073】
(第8実施形態)
図10は本発明の第8実施形態に係る遮光フィルム29を示している。
【0074】
この遮光フィルム29は、図5に示す上記第3実施形態に係る透明蛍光体10Aを用い、透明蛍光シート11の一方の表面11a(保護フィルム15)が室外側になるように、その他方の表面11bを、店舗などの窓ガラス21の外面21aに貼り付けられる。
【0075】
また、透明蛍光シート11は、蛍光物質の蛍光色素が吸収する色の補色に相当する波長帯域に吸収を持つ別の色素を前記蛍光物質と一緒に含有させ、複数の凸構造体12Aを形成していない側に対しては遮光機能を示し、複数の凸構造体12Aを形成してある側に対しては強い蛍光を放つ蛍光シート機能を示すシートの裏側を見えにくくする効果を持つ。
【0076】
また、複数の凸構造体12Aの配列が模様を成している。
【0077】
また、各凸構造体12Aが大きいと透明蛍光シート11の透明性が阻害されてしまうので、その大きさは肉眼の分解能とされる100μmよりも小さいほうが望ましい。逆にその大きさが可視光の波長の10倍程度の大きさ(5μm)より小さくなると今度は回折現象を起こしてやはり透明性を阻害する。各凸構造体12Aは、5〜100μmの範囲内に設定される。好ましくは、その中間である20〜50μm程度が最適である。
【0078】
このような凸構造体12Aを透明蛍光シート11の一方の表面11aに並べることで、凸構造体12Aが形成されている一方の表面11a側で蛍光取り出し効率の高い蛍光シートが実現されるが、構造体の配列密度が高すぎるとやはり遮光フィルム29(透明蛍光シート11)の透明性を阻害してしまうため望ましくない。用途に応じて求められる透明性を得られる密度を設計すればよいが、一般的に凸構造体12Aを形成した一方の表面1aの面積に対する複数の凸構造体12Aの面積比率が1〜20%になる程度の密度が望ましい。
【0079】
以上の構成を有する第8実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0080】
○遮光フィルム29を外から見ると、複数の凸構造体12Aからそれぞれ出射される強い蛍光が邪魔して内側が見えなくないと共に、内側から見ると、複数の凸構造体12Aの無い部分を通して外を見ることができる遮光フィルムが得られる。
【0081】
○遮光フィルムとして使う場合、蛍光シートは、一般に吸収波長に対する補色としてピンク色や緑色に見え、そのまま遮光フィルムとして用いると視覚的な違和感を与えてしまうが、透明蛍光シート11に、蛍光物質の蛍光色素が吸収する色の補色に相当する波長帯域に吸収を持つ別の色素を前記蛍光物質と一緒に含有させることで、黒っぽい色の遮光フィルム29が得られる。
【0082】
○複数の凸構造体12Aの配列が模様を成しているので、複数の凸構造体12Aから出射される光が文字やパターンなどの装飾的な意匠を形成することができるので、遮光フィルム29に意匠表示の機能を付加した蛍光意匠表示板を得ることができる。
【0083】
○遮光フィルム29は、凸構造体12Aの大きさが5〜100μmの範囲内に設定される。好ましくは、その中間である20〜50μmの範囲内に設定される。これにより、遮光フィルム29の透明性を確保できる。
【0084】
○凸構造体12Aを形成した一方の表面1aの面積に対する複数の凸構造体12Aの面積比率が1〜20%になる程度の密度であるので、遮光フィルム29の透明性を確保できる。
【0085】
(第9実施形態)
図11は本発明の第9実施形態に係る農業用資材30を示している。
【0086】
この農業用資材30は、図6に示す上記第4実施形態に係る透明蛍光体10Bを用いて太陽光を植物の光合成に適したスペクトルに変換することのできるようにしたものである。この農業用資材30は、図11に示すように、複数の凸構造体12Bが形成された透明蛍光シート11の一方の表面11aが内側になるように、ビニールハウス40の内面に貼り付けられる。
【0087】
上述したように、植物が光合成を行う葉緑素は一般に緑色をしているが、これは波長が500nm以下の紫外線〜青色の光と波長が630nm〜700nmの赤い光を吸収し、その間に位置する青緑〜オレンジ色の光(500〜630nm)をうまく吸収できないためである。しかしながら、地表に照射される太陽光のスペクトルにはこの葉緑素が吸収できない波長帯の光が最も多く含まれており、太陽光はそのままでは植物の光合成にとって効率的ではない。
以上のように構成された第9実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0088】
○複数の凸構造体12Bが形成された透明蛍光シート11の一方の表面11aが内側になるように、農業用資材30をビニールハウス40の内面に貼り付けることにより、植物が光合成を行うことのできる波長帯の太陽光の透過を著しく阻害することなく蛍光を内側(ビニールハウス40内)に向けて効率的に取り出すことができる。
【0089】
○農業用資材30では、例えば、太陽光を植物の光合成に適したスペクトル(630〜700nmの波長帯)に変換すると共に、植物の光合成に適した630〜700nmの波長帯の太陽光の透過を著しく阻害することなく蛍光を内側に向けて効率的に取り出すことができる。
【0090】
(実施例)
(1)透明蛍光シートとしてアクリル樹脂中にフルオレセイン蛍光色素を含有させたものを用いる。この蛍光シートは主に480〜500nmの青緑色の光を吸収し、510〜530nmの緑色の蛍光を放つ。
【0091】
(2)表面構造を持たないアクリル製蛍光シートに対して、アクリルとほぼ同じ屈折率(1.49)を持つPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を材質とする表面構造体形成シールを貼り付けることで、PMMAシールを貼り付けた側の蛍光取り出し効率を選択的に高めることができる。
【0092】
(3)蛍光色素を含有させたPS(ポリスチレン)シートの表面に凹構造体を周期的に形成し、その上からPSの屈折率(1.59)よりも低い屈折率(1.49)をもつPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を素材とする平滑な保護フィルムを貼り付ける。PSシートの凹構造体から放出された蛍光は外部に取り出されるためにPMMA保護フィルムを透過しなければならないが、この場合屈折率の関係からPMMA保護フィルムに入射した蛍光がその内部で全反射による伝搬モードを取ることはない。
【0093】
(4)蛍光シートの表面に形成する凸構造体の形状としては、円錐形、円錐台形、円形ドーム型、多角錐型、多角錐台形型、円錐もしくは柱体(円柱、角柱等)の上部を斜めに切断した形状などが考えられる。特に光を取り出したい方位を向く斜面がシート面となす角度を45度に近い値とし、それ以外の方位を向く斜面がシート面となす角度を90度に近い値とすることで、選択的に強い蛍光を取り出す方位を作り出すことができる。
【0094】
(5)斜面が底面と30度をなす楔形の凸構造体を蛍光シート表面に配向させて周期配列させ、シートの垂直軸方向から30度傾いた角度に選択的に強い蛍光が取り出される蛍光シートを用意し、水平面に対して30度になる温室のガラス屋根下面に貼り付ける。このとき蛍光は鉛直下方向に最も多く取り出されるため、温室内部での蛍光利用効率を最も高くすることができる。
【0095】
(6)480〜500nmの青緑色の光を吸収して510〜530nmの緑色の蛍光特性を示すフルオレセインを含む蛍光シートを建築物のガラス窓の外側に貼り付け、さらにその外側に文字やデザインなどの意匠を凝らした形状に裁断した表面構造体形成シールを貼り付ける。建物の外側からは意匠の形状が視覚的に目立って建物内部の様子を伺うことが難しくなる。逆に建物の内側からは意匠の形状がほとんど認知できず、蛍光シートの吸収スペクトルの補色(蛍光色素としてフルオレセインを用いている場合は黄緑色)に着色された窓の外の景色が見えるだけである。この蛍光色素の補色に着色される色彩の不自然さが気になる場合は、蛍光色素が吸収しない波長帯に吸収を持つ吸光色素を混ぜ込んだ吸光板を用意し、窓の内側に取り付ければよい。このとき窓ガラス板とはわずかに距離をあけて取り付けることが望ましい。蛍光色素としてフルオレセインを用いる場合、吸収帯域がそれぞれ450nm前後、520nm前後、580nm前後、650nm前後となる4種類の吸光色素を吸光板に混ぜればよい。このとき建物の内側からは外の景色が少し暗く見えるようになるが、色彩の不自然さを感じさせなくすることができる。このとき窓ガラス全体が遮光シートのように機能することになる。
【0096】
(7)地上の植物が光合成に利用しやすい波長660nm前後の赤色蛍光特性を示す蛍光色素としては、オキサジン色素系やローダミン色素系の中から適切な分子構造を持つものを選べばよい。例えばオキサジン1やローダミン700を選ぶことができる。ただしこれらのような有機色素は一般に吸収帯域が狭いため、植物が光合成に利用しにくい500〜600nmの波長帯が蛍光色素による波長変換作用をほとんど受けないことになってしまう。太陽光スペクトルはこの波長帯の光を最も多く含んでいるため、この波長帯が利用できなければ光合成効率化の効果を大きく高めることはできない。500〜600nmの波長帯の光を吸収する別の色素を蛍光色素と一緒に混ぜ込み、吸光色素から蛍光色素へのエネルギー遷移を利用すればこの波長帯の光にも波長変換を施すことが可能となるが、効率的にエネルギー遷移を起こすためにはかなり高濃度に色素を混ぜる必要があり、その場合植物が直接利用可能な波長帯の透過性までが失われてしまう。この問題を解決するには、まず吸光色素と蛍光色素をシリカなどのナノ粒子内部に取り込ませ、この蛍光ナノ粒子をさらに蛍光シート内に混ぜ込めばよい。ナノ粒子内部に注目すると吸光色素が蛍光色素に十分近接しているため吸光色素が吸収したエネルギーが効率よく蛍光色素へ遷移し、蛍光シート全体を平均的にみて吸光色素が適正な濃度であれば吸収スペクトルの裾に当たる500nm以下の波長帯の吸収率を十分小さく抑えることができる。また蛍光粒子の粒子系を100nm以下とすることで光散乱強度を十分小さくすることができ、シート全体の透明性が失われることもない。500〜600nmの波長帯の光を吸収する色素としては、ローダミン色素系やキサンテン色素系の中から適切な分子構造を持つものを選べばよい。例えば吸光色素としてローダミン6GとローダミンBを、蛍光色素としてローダミン700を選ぶことができる。
【0097】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態で説明した凸構造体或いは凹構造体は一例であり、上記各実施形態において、凸構造体或いは凹構造体として、円錐形、多角錐形、ドーム形状など任意の形状の凸構造体或いは凹構造体を形成した透明蛍光体に本発明は適用可能である。
【0098】
・凸構造体もしくは凹構造体の形状が円錐形やドーム形状である場合、蛍光はシートの片面側に対してほぼ等方的に放射されることになるが、方位のそろった多角錐形状である場合は構造体の面に垂直方向に選択的に蛍光が放出されることになる。この現象を利用して、例えば図12に示すように、凸構造体としての三角錐50の頂点51が底面52をなす三角形の一つの角53の略直上にあるような三角錐50を、方位をそろえて配列させると、底面52に対して斜め方向になる側面54の垂直方向を中心とする方位のみに選択的に蛍光55を放出させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体を示す斜視図。
【図2】同透明蛍光体の一部を示す断面図。
【図3】同透明蛍光体の作製方法を示す模式図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体の一部を示す断面図。
【図5】本発明の第3実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体の一部を示す断面図。
【図6】本発明の第4実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体の一部を示す断面図。
【図7】本発明の第5実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体およびその作製方法を示す模式図。
【図8】本発明の第6実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体およびその作製方法を示す模式図。
【図9】本発明の第7実施形態に係る両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体の一部を示す断面図。
【図10】本発明の第8実施形態に係る遮光フィルムの取付状態を示す説明図。
【図11】本発明の第9実施形態に係る農業用資材の取付状態を示す説明図。
【図12】本発明の一つの変形例を示す説明図。
【図13】従来の蛍光シートを示す断面図。
【符号の説明】
【0100】
10,10A,10B,10C,10D,10E…透明蛍光体
11…透明蛍光シート
11a…一方の表面
11b…他方の表面
12,12B,12E,22,28…凸構造体
12A…凹構造体
13…蛍光
15,18…保護フィルム
17…頂部(最高位置)
20…透明蛍光シート
20a…一方の表面
21…透明フィルム
21a…一方の表面
21b…他方の表面
25…透明蛍光フィルム
25a…一方の表面
25b…他方の表面
26…透明フィルム
26a…一方の表面
26b…他方の表面
29…遮光フィルム
30…農業用資材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスやプラスチックのような透明な母材中に蛍光物質を含有させシート状に成形した透明蛍光シートの一方の表面に複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体を形成することにより前記一方の表面での蛍光取り出し効率を高めたことを特徴とする両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体。
【請求項2】
透明な母材中に蛍光物質を含有させシート状に成形した透明蛍光シートと、一方の表面に複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体を形成した透明フィルムとを備え、前記透明フィルムの他方の表面が前記透明蛍光シートの一方の表面に接着され、前記透明フィルムの一方の表面での蛍光取り出し効率を高めたことを特徴とする両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体。
【請求項3】
透明で可撓性がある母材中に蛍光物質を含有させ薄膜状に成形した透明蛍光フィルムと、一方の表面に複数の微細な凸構造体もしくは凹構造体を形成した透明フィルムとを備え、前記透明フィルムの他方の表面が前記透明蛍光フィルムの一方の表面に貼り付けられており、前記透明蛍光フィルムの他方の表面に粘着性を持たせ、前記透明フィルムの一方の表面での蛍光取り出し効率を高めたことを特徴とする両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体において、前記複数の凸構造体もしくは凹構造体がそれぞれ有する表面の一部を、前記凸構造体もしくは凹構造体がそれぞれ形成された前記一方の表面に対して所定角度を持つ斜面で形成し、前記斜面が特定方位を向くように前記複数の凸構造体もしくは凹構造体を配置したことを特徴とする両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体のうち前記一方の表面に凹構造体を持つものにおいて、前記一方の表面に保護フィルムを接合させたことを特徴とする両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体のうち前記一方の表面に凸構造体を持つものにおいて、周囲に穏やかな窪み構造を持つ前記凸構造体の最高位置が前記一方の表面よりも低くなるように形成し、前記一方の表面に保護フィルムを接合させたことを特徴とする両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体を用い、前記透明蛍光シート又は前記透明蛍光フィルムに、前記蛍光物質の蛍光色素が吸収する色の補色に相当する波長帯域に吸収を持つ別の色素を前記蛍光物質と一緒に含有させ、前記凸構造体もしくは凹構造体を形成していない側に対しては遮光機能を示し、前記凸構造体もしくは凹構造体を形成してある側に対しては強い蛍光を放つ蛍光シート機能を示すシートの裏側を見えにくくする効果を持つことを特徴とする遮光フィルム。
【請求項8】
前記凸構造体もしくは凹構造体の配列が模様を成していることを特徴とする請求項7に記載の遮光フィルム。
【請求項9】
前記凸構造体もしくは凹構造体の大きさが5〜50μmであることを特徴とする請求項7又は8に記載の遮光フィルム。
【請求項10】
前記凸構造体もしくは凹構造体を形成した表面の面積に対する前記凸構造体もしくは凹構造体の面積比率が1〜20%であることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一つに記載の遮光フィルム。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の両面で異なる光取り出し効率を有する透明蛍光体を用いて太陽光を植物の光合成に適したスペクトルに変換することのできることを特徴とする農業用資材。
【請求項12】
植物の光合成に適したスペクトルは500〜630nmの波長帯であることを特徴とする請求項11に記載の農業用資材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−203324(P2008−203324A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36272(P2007−36272)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】