説明

両面印刷装置

【課題】封筒の他方の面を印刷する前にスイチッバク搬送路中でレジスト動作を行う。
【解決手段】封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Feを給紙方向の先頭に設定した上で封筒Fを給紙部20で給紙して、封筒Fの一方の面を印刷する前に給紙された封筒Fの後端部Feを印刷部60の前方に設置した第1のレジスト機構部42に一時的に突き当てて封筒Fの斜行を補正し、この後、一方の面を印刷部60で印刷した後に封筒Fの表裏を循環搬送路JR内で反転して、封筒Fの他方の面を印刷する前に反転済みの封筒Fの後端部Feをスイッチバック搬送路中に設けた第2のレジスト機構部90内の封筒突き当て部材91に突き当てて封筒Fの斜行を補正し、更に、封筒Fをスイッチバックさせて封筒Fのフラップ部Fd側を先頭にして封筒Fを再度第1のレジスト機構部42を経て印刷部60に向けて搬送させるように構成した両面印刷装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙や封筒の両面に画像とか文字を印刷する際に、封筒の両面(一方の面及び他方の面)を印刷する前に封筒の斜行を信頼性良く補正できるように構成した両面印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、環境問題の観点などから用紙の使用量を低減するために、用紙や封筒の両面を印刷できる両面印刷装置が多用されている。
【0003】
この種の両面印刷装置は、印刷部がインクジェット印刷方式,孔版印刷方式,レーザ印刷方式,熱転写印刷方式などに応じた構造形態で構成されているが、本出願人は用紙の両面に画像とか文字を印刷するためにインクジェット印刷方式を適用した印刷装置の搬送機構を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された印刷装置の搬送機構では、ここでの図示を省略するものの、印刷装置の搬送経路は、記録媒体を供給する給紙経路から排紙経路へ至る通常経路と、通常経路に分岐接続され、通常経路から記録媒体が受け渡され、搬送機構を正転及び逆転させることにより記録媒体を往復させて通常経路に戻すことにより記録媒体の表裏を反転させる反転経路とから構成されている。
【0005】
この際、上記した印刷装置では、記録媒体として用紙を使用しているが、この印刷装置を適用して封筒への両面印刷が要望されている。
【0006】
一方、封筒を使用する場合に、用紙や封筒の両面に印刷できる画像形成装置、画像形成装置の制御方法、シート部材の検出方法、給送装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2に開示された画像形成装置、画像形成装置の制御方法、シート部材の検出方法、給送装置では、ここでの図示を省略するものの、装置本体内に、用紙を搬送しながら画像を形成するための画像形成部及び用紙を搬送するための副走査搬送部等を有し、装置本体の底部に設けた給紙カセットを含む給紙部から用紙を一枚ずつ給紙して、副走査搬送部によって用紙を画像形成部に対向する位置で搬送しながら、画像形成部によって用紙に液滴を吐出して所要の画像を形成(印刷)した後、片面印刷の場合には排紙搬送部を通じて装置本体の上面に形成した排紙トレイ上に用紙を排紙し、両面印刷の場合には、排紙搬送部の途中から装置本体の底部に備えた両面ユニットに送り込み、この両面ユニット内で用紙に対してスイッチバック搬送を行って、再度、副走査搬送部に給紙して両面に画像を形成した後に排紙トレイ上に排紙するように構成されている。
【0008】
この際、用紙とは別に封筒を使用する場合に、封筒の先端部に形成したフラップ部が開いているか否かを給紙部と画像形成部との間に設置されたレジストローラ対の近傍に設けた厚さ検知センサによって給送されるシート状部材の厚さを検知して、シート状部材の厚さの変化を検出し、給送されるシート状部材が封筒であるか封筒以外であるか、封筒であるときにフラップが開いているか閉じているかを検出することで、ギャップ調整、印字モード変更、印字部前一時停止、印字開始位置変移、搬送エラー検知変更、フラップ部に対する印字規制、排紙搬送路の変更などに対して封筒及びフラップ部の状態に応じた制御を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−111508号公報
【特許文献2】特開2007−152644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記した特許文献1に開示された印刷装置を適用して封筒の両面に画像や文字を印刷するために、上記した特許文献2に開示された画像形成装置の技術的思想を採用した場合に、給紙部と画像形成部との間に設置されたレジストローラ対の近傍に設けた厚さ検知センサにより給紙した封筒に対してフラップ部が開いているか閉じているかを検出することができるものの、上記した特許文献2に開示された画像形成装置内では、封筒が画像形成部に搬送される前までに封筒の搬送方向の先頭を一時停止中のレジストローラ対に突き当てて封筒の両面側に対して封筒の斜行を補正するようにレジスト動作を行っている。
【0011】
しかしながら、封筒の一方の面を印刷するときに封筒の搬送方向の先頭はフラップ部とは反対側の後端部側となり、且つ、スイチッバックした後に封筒の他方の面を印刷するときに封筒の搬送方向の先頭はフラップ部側となるので、封筒の両面を印刷するときにフラップ部が開いていると、封筒の一方の面及び他方の面共に同一のレジストローラ対によりレジスト動作を行うことになるので、下記の理由により封筒のフラップ部へのレジスト動作に不具合が生じてしまう。
【0012】
即ち、封筒の搬送方向の先頭がフラップ部側とは反対側の後端部側の場合には紙の厚さが三枚分あるので剛性があるものの、封筒の搬送方向の先頭がフラップ部側の場合には紙の厚さが一枚分のためにフラップ部側は腰が弱く、しかも、折れ曲がっていることもあるので、フラップ部側でのレジストローラ対によるレジスト動作が不安定となる。
【0013】
従って、上記した特許文献1に開示された両面印刷装置に、上記した特許文献2に開示された画像形成装置の技術的思想をそのまま採用すると、封筒の他方の面を印刷する前に行うレジスト動作で問題が生じるおそれがある。
【0014】
そこで、封筒を使用した場合に封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定した上で封筒を給紙部で給紙し、封筒の一方の面を印刷する前に印刷部よりも搬送方向の上流側に設置した第1のレジスト機構部により封筒の斜行を補正して、封筒の一方の面を印刷部で印刷した後に封筒の表裏を反転搬送路内で反転し、更に、反転後の封筒の他方の面を印刷する前に反転搬送路と接続したスイッチバック搬送路中に設けられた第2のレジスト機構部内の封筒突き当て部材により封筒の斜行を補正できるように構成した両面印刷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、封筒の両面に画像や文字を印刷する両面印刷装置において、
前記封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記封筒の一方の面と他方の面とを選択的に印刷する印刷部と、
前記印刷部よりも搬送方向の上流側に設置され、且つ、前記封筒の一方の面を印刷する前に前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部を一時的に突き当てて前記封筒の斜行を補正すると共に、斜行補正された前記封筒の一方の面を印刷するとき及び前記封筒の他方の面を印刷するときに前記封筒を前記印刷部に搬送する第1のレジスト機構部と、
前記印刷部で前記一方の面を印刷した前記封筒に対して前記他方の面が前記印刷部と対向するように反転させて搬送する反転搬送路と、
前記反転搬送路と接続され、反転された前記封筒をスイッチバックさせて前記封筒のフラップ部側を先頭にして、前記封筒を再度前記第1のレジスト機構部を経て前記印刷部に向うように搬送するスイッチバック搬送路と、
前記スイッチバック搬送路中に封筒突き当て部材が設置され、前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てて前記封筒の斜行を補正する第2のレジスト機構部と、
印刷済みの前記封筒を排紙する排紙部と、
各部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2のレジスト機構部で斜行補正した後にスイッチバックされた前記封筒のフラップ部に対して斜行補正をさせないように前記第1のレジスト機構部を制御することを特徴とする両面印刷装置である。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の両面印刷装置において、
前記第2のレジスト機構部は、
前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てた際に前記封筒を一時的に把持する把持手段と、
前記スイッチバック搬送路中に前記封筒突き当て部材と間隔を離して対向して設置され、前記反転搬送路中で反転された前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てる方向に回転して搬送すると共に、前記封筒突き当て部材により前記封筒を斜行補正した後に逆転して前記封筒を前記第1のレジスト機構部を経て前記印刷側に向うようにスイッチバックさせるローラ対と、
前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てた後に前記ローラ対に対して前記封筒へのニップを一時的に解除するニップ解除機構と、
を具備したことを特徴とする両面印刷装置である。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の両面印刷装置において、
前記第2のレジスト機構部は、
前記封筒突き当て部材を前記スイッチバック搬送路に沿って前記封筒の長さに応じた所定の位置に移動させる移動手段を具備したことを特徴とする両面印刷装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の両面印刷装置によると、封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定した上で封筒を給紙部で給紙して、封筒の一方の面を印刷する前に給紙された封筒の後端部を第1のレジスト機構部に一時的に突き当てて封筒の斜行を補正し、この後、封筒の一方の面を印刷部で印刷した後に封筒の表裏を反転搬送路内で反転して、封筒の他方の面を印刷する前に反転済みの封筒の後端部をスイッチバック搬送路中に設けた第2のレジスト機構部内の封筒突き当て部材に突き当てて封筒の斜行を補正し、更にこの後、封筒をスイッチバックさせて封筒のフラップ部側を先頭にして封筒を再度第1のレジスト機構部を経て印刷部に向けて搬送させるときに、制御部は、第2のレジスト機構部で斜行補正した後にスイッチバックされた封筒のフラップ部に対して斜行補正をさせないように第1のレジスト機構部を制御しているので、スイッチバック搬送路中に設けた第2のレジスト機構部内の封筒突き当て部材により他方の面を印刷する前に封筒の斜行を信頼性良く補正できると共に、スイッチバックして第1のレジスト機構部を経て印刷部に再度向う封筒のフラップ部は腰が弱くても第1のレジスト機構部によるレジスト動作を行う必要がないために、封筒のフラップ部を傷めることなく封筒を印刷部に向けて確実に搬送できる。
【0019】
また、請求項2記載の両面印刷装置によると、第2のレジスト機構部は、封筒の後端部を封筒突き当て部材に突き当てた際に封筒を一時的に把持する把持手段と、スイッチバック搬送路中に封筒突き当て部材と間隔を離して対向して設置されたローラ対と、封筒の後端部を封筒突き当て部材に突き当てた後にローラ対に対して封筒へのニップを一時的に解除するニップ解除機構と、を具備しているので、封筒の後端部を封筒突き当て部材に突き当て後に、封筒を把持手段で把持しながらローラ対による封筒へのニップを一時的に解除することで、封筒の他方面を印刷する前に封筒の斜行を確実に補正できる。
【0020】
また、請求項3記載の両面印刷装置によると、第2のレジスト機構部は、封筒突き当て部材をスイッチバック搬送路に沿って封筒の長さに応じた所定の位置に移動させる移動手段を具備しているので、表裏を反転させた後の封筒の他方の面を印刷する前の斜行補正時に、あらゆる種類の長さを有する封筒に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a),(b)は本発明に係る実施例の両面印刷装置に使用される封筒を説明するための平面図,側面図である。
【図2】図1に示した封筒において、(a)は封筒の一方の面(Fa面)を印刷するときの印刷部への給紙方向を示し、(b)は封筒の他の面(Fb面)を印刷するときの印刷部への搬送方向を示した図である。
【図3】本発明に係る実施例の両面印刷装置の全体構成を示した全体構成図である。
【図4】図1に示した制御部を拡大して示した図である。
【図5】(a),(b)は図1に示したスイッチバック搬送路中に設けられた第2のレジスト機構部を拡大して示した構成図,斜視図である。
【図6】図5に示した第2のレジスト機構部によるレジスト動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明に係る両面印刷装置の一実施例について、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る両面印刷装置は、用紙や封筒の両面を印刷する際に、印刷部がインクジェット印刷方式,孔版印刷方式,レーザ印刷方式,熱転写印刷方式などに応じた構造形態で構成されているが、以下の実施例では、例えば印刷部にインクジェット印刷方式を適用して、この印刷部により封筒の両面に画像や文字を印刷する場合について説明する。
【実施例】
【0024】
図3に示した本発明に係る実施例の両面印刷装置1を説明する前に、この両面印刷装置1に使用される封筒について、図1及び図2を用いて簡略に説明する。
【0025】
図1(a),(b)に示した如く、封筒Fは、搬送方向の長さ寸法がLmmで、且つ、搬送方向と直交する幅寸法がBmmで長方形状に形成されている。
【0026】
上記した長方形状の封筒Fは、表紙Faと裏紙Fbとを重ね合わせて袋状に形成されており、且つ、封筒Fの先端部Fc側に手紙などを封入した後に封緘するためのフラップ部Fdが形成されていると共に、フラップ部Fd側とは反対の後端部Fe側を糊代Ffにより裏紙Fbに糊付けしている。
【0027】
従って、封筒Fの先端部Fc側に形成したフラップ部Fd側の厚みは紙1枚分となり腰が弱く折れ易いが、フラップ部Fd側とは反対の後端部Fe側の厚みは紙3枚分となるので剛性が強くなっている。
【0028】
そして、図2(a)に示した如く、例えば、封筒Fの表紙Fa側を上にして複数枚の封筒Fを後述する給紙台上に積載した後に封筒Fを1枚ずつ給紙して一方の面(Fa面)を印刷する時には、剛性が強い後端部Feを給紙方向の先頭に設定して印刷部へ搬送している。
【0029】
一方、図2(b)に示した如く、封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷した後に、封筒Fの表裏を反転してスイチッチバックさせて他方の面(Fb面)を印刷する時には、腰が弱いフラップ部Fdを印刷部へ搬送する搬送方向の先頭に設定している。
【0030】
尚、封筒Fの一方の面を表紙Fb側とし、且つ、他方の面を表紙Fa側とした時でも、給紙時の搬送方向の先頭を封筒Fの後端部Fe側に設定している。
【0031】
ここで、本発明に係る実施例の両面印刷装置1の全体構成について、図3を用いて説明する。
【0032】
上記した実施例の両面印刷装置1は、この装置全体を操作する操作パネル部10と、給紙台21上に複数枚積載された封筒Fを給紙ローラ23により1枚ずつ給紙する給紙部20と、下記する印刷部60よりも搬送方向の上流側に設置され、且つ、封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷する前に給紙部20で給紙された封筒Fの後端部Feを一時的に突き当てて封筒Fの斜行を補正すると共に、斜行補正された封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷するとき及び封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷するときに封筒Fを印刷部60に搬送する第1のレジスト機構部42と、第1のレジスト機構部42よりも下流に設置されてこの第1のレジスト機構部42を介して搬送された封筒Fを下記する印刷部60及びこの印刷部60よりも下流に向けて搬送するベルトプラテン部50と、第1のレジスト機構部42よりも下流に設置され、インクIKを吐出するインクジェットヘッド61を少なくとも一以上有して第1のレジスト機構部42を介して搬送された封筒Fの一方の面(Fa面)と他方の面(Fb面)とに画像や文字を選択的に印刷する印刷部60と、印刷部60で一方の面(Fa面)を印刷した封筒Fに対して他方の面(Fb面)が印刷部60と対向するように反転させるためにループ状に循環して設置された反転搬送路(以下、循環搬送路と記す)JRと、循環搬送路JRの下流から一方に分岐接続されて封筒Fを排紙するための排紙搬送路HRと、印刷部60で印刷された印刷済みの封筒Fを排紙する排紙部80と、循環搬送路JRの下流から他方に分岐接続されて循環搬送路JR中で表裏を反転された封筒Fをスイッチバクックさせて封筒Fのフラップ部Fd側を搬送方向の先頭に向けるためのスイッチバック搬送路SRと、スイッチバック搬送路SRに沿って封筒Fの長さに応じて所定の位置まで移動可能に設置され且つ反転済みの封筒Fの後端部Feをスイッチバック搬送路SR中に設けた封筒突き当て部材91に突き当ててレジスト動作を行う第2のレジスト機構部90と、各部を制御する制御部100と、各部に電源を供給する電源部110とを備えることで、インクジェット印刷方式を適用して構成されている。
【0033】
この際、循環搬送路JR中の定速区間に沿って封筒Fを定速で搬送するために一定の搬送速度で回転駆動される複数のローラ対R1と、定速区間よりも下流の可変速区間に沿って封筒Fの長さに応じて一定の搬送速度よりも高速に回転駆動される複数のローラ対R2とが設置されていると共に、排紙搬送路HR及びスイッチバック搬送路SRに沿って封筒Fの長さに応じて一定の搬送速度よりも高速に回転駆動される複数のローラ対R3,R4がそれぞれ設置されている。
【0034】
ここで、実施例の両面印刷装置1の各部について順を追って具体的に説明すると、この両面印刷装置1の外観を形成する筐体2は箱状に形成されている。
【0035】
まず、上記した操作パネル部10は、筐体2の上面2aに設置されており、ここでの詳細な図示を省略するが、片面印刷又は両面印刷を選択する片面/両面印刷キー,封筒印刷キー,用紙印刷キー,スタートキー,ストップキー,数字を入力するテンキー,印刷枚数を設定する印刷枚数設定キー,ジャムの発生や各種の故障の発生などを警告するアラーム表示部,液晶パネルなどが設けられている。
【0036】
次に、上記した給紙部20は、複数枚の封筒Fを積載した給紙台21がエンコーダ付きモータ22により筐体2の左側面下方部位に垂直に設けた給紙台ガイド側板2b1の外側に沿って上下動可能に配設されている。
【0037】
この際、給紙台21は、ここでの詳細な図示を省略するものの、封筒Fの他に普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙(図示せず)も積載可能になっており、且つ、封筒Fや用紙の有無を検出する用紙有無検出センサや、封筒Fや用紙の長さを検出する用紙長さ検出部とか、封筒Fや用紙の幅方向を規制する一対のサイドフェンスなどが設けられているが、給紙台21上には封筒F又は用紙を混載せずに1種類だけ積載可能であり、この実施例1では封筒Fを複数枚積載している。
【0038】
そして、給紙台21上に封筒Fを積載する際に、例えば、封筒Fの表紙Fa側を上にし、且つ、剛性が強い後端部Feを給紙方向の先頭に設定した上で、封筒Fを後述する印刷部60に向けて給紙していると共に、ユーザは、給紙台21上に積載した封筒F又は用紙に応じて操作パネル部10に設けた封筒印刷キーや用紙印刷キーを選択的に操作するようになっている。
【0039】
尚、封筒Fのうちで腰の弱いフラップ部Fdを給紙方向の先頭にして給紙台21上に積載したときにはユーザが目視で確認できるので、封筒Fの後端部Fe側が先頭になるように積載方向を変更すれば良いが、目視ではなく自動的に検出するには先に説明した特許文献2の技術的思想を採用して、給紙部20の捌きローラ24及び摩擦板25の下流に厚さ検出センサを設置すれば、給紙時に封筒Fのフラップ部Fdを検出できるので、このフラップ部Fdを検出したときに操作パネル部10に対して異常を警告できる。
【0040】
また、給紙台21の上方には給紙ローラ23が回転可能に設けられており、この給紙ローラ23は給紙台21が筐体2の給紙台ガイド側板2b1に沿って上動することによって最上層の封筒Fに当接して、最上層の封筒Fを1枚ずつ給紙している。
【0041】
また、給紙ローラ23により給紙された最上層の封筒Fは、給紙ローラ23よりも搬送方向の下流に設けた捌きローラ24と摩擦板25との間で挟持搬送されながら1枚ずつ分離されて重送が防止され、この後、最上層の封筒Fが給紙搬送路KRよりも下流にループ状に設けた循環搬送路JR側に搬送される。
【0042】
この際、給紙部20内に設けた給紙ローラ23と捌きローラ24は、不図示のギア列を介してエンコーダ付きモータ26によって一定の搬送速度でそれぞれ反時計方向に回転駆動されており、この一定の搬送速度により封筒Fが所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0043】
また、循環搬送路JRの上流側で印刷部60の前方には、第1のレジスト機構部42が設置されており、この第1のレジスト機構部42は、給紙部20で給紙された封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷する前に封筒Fの斜行を補正する機能と、斜行補正された封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷するとき及び封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷するときに封筒Fを印刷部60に搬送する機能とを有している。
【0044】
上記した第1のレジスト機構部42は、エンコーダ付きモータ43によって回転駆動される駆動ローラとこの駆動ローラに従動する従動ローラとを対に構成したレジストローラ対42を用いており、このレジストローラ対42は一時停止可能且つ所定の時間回転可能になっている。
【0045】
尚、この実施例では、第1のレジスト機構部42としてレジストローラ対42を用いているが、上記した各機能を有していればいかなる構造でも良く、ここでの図示を省略するが、例えば、回転駆動されるレジストローラと、このレジストローラが当接する搬送用ガイド板とによる構成でも可能である。
【0046】
この実施例では、給紙部20により給紙された封筒Fの後端部Feが一時回転を停止中の第1のレジスト機構部(以下、レジストローラ対と呼称する)42に一時的に突き当たったときに、レジストローラ対42よりも上流側に設置したレジストセンサ41で給紙中の封筒Fの後端部Feを検出して、給紙ローラ23及び捌きローラ24を更に一定時間に亘って回転させると、一時停止中のレジストローラ対42の上流側に二点鎖線で示したような封筒Fの後端部Feによる撓みTが所定量生じ、この撓みTにより封筒Fの後端位置がレジストローラ対42に対して揃うので、封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷する前にレジストローラ対42により封筒Fの斜行を補正するためのレジスト動作を行っている。
【0047】
尚、封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷するときのレジストローラ対42の動作については後で詳述する。
【0048】
また、レジストローラ対42を挟んで上流側にレジストセンサ41が設置され、且つ、下流側に第1トップエッジセンサ44が設置され、両センサ41,44は光透過型のフォトセンサを用いて封筒Fの通過状態を検出していると共に、第1トップエッジセンサ44は印刷部60内に設けたインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能をも兼ね備えている。
【0049】
そして、封筒Fの後端部Feに発生した撓みTの量が所定量に至った後に、エンコーダ付きモータ43によりレジストローラ対42を搬送速度に応じて回転駆動させて、封筒Fを下記するベルトプラテン部50及び印刷部60に向けて搬送している。
【0050】
また、循環搬送路JR中で第1トップエッジセンサ44よりも搬送方向の下流には、光反射型の第2トップエッジセンサ45と、ベルトプラテン部50と、このベルトプラテン部50と対向した印刷部60とが設置されている。
【0051】
上記した第2トップエッジセンサ45は、ベルトプラテン部50の上方で且つ印刷部60よりも上流側に設けられているために光反射型のフォトセンサが用いられており、この第2トップエッジセンサ45は上流側に設けた第1トップエッジセンサ44と協働してインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能を備えている。
【0052】
この際、給紙された封筒Fの後端部Feが第1,第2トップエッジセンサ44,45をそれぞれ通過したときに、後述するベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54からのエンコーダパルス数を制御部100内に設けた第1,第2カウンタ100d,100e(図4)により計数を開始して、ここで計数したエンコーダパルス数が各色のインクジェットヘッド61ごとに予め設定した各パルス数に至ったときに各色のインクIKの吐出を開始するようになっているが、第1トップエッジセンサ44よりも下流に設置した第2トップエッジセンサ45が主としてインク吐出制御を行い、一方、第1トップエッジセンサ44は第2トップエッジセンサ45によるインク吐出制御が不能となったときの予備として準備されている。
【0053】
この理由は、第2トップエッジセンサ45がベルトプラテン部50内のエンドレスベルトプラテン52の上方に設置され且つインクジェットヘッド61に近い位置に設置されており、且つ、印刷時に封筒Fはエンドレスベルトプラテン52上にエアー吸引されて一定速度で搬送されているために、第2トップエッジセンサ45で封筒Fの後端部Feを検出したときの方が精度の良いインク吐出タイミングが得られるために、この第2トップエッジセンサ45を主として用いている。
【0054】
しかしながら、第2トップエッジセンサ45は、エンドレスベルトプラテン52の上方に設置されているために光反射型のフォトセンサを用いなければならないので、エンドレスベルトプラテン52と封筒F(又は用紙)との反射率が近い場合、例えば黒色のエンドレスベルトプラテン52上に黒色の封筒F(又は用紙)を搭載したときに封筒F(又は用紙)を検出できない場合があり、この場合には光透過型のフォトセンサを用いた第1トップエッジセンサ44で封筒F(又は用紙)を確実に検出できるために第1トップエッジセンサ44に切替えている。
【0055】
また、上記したベルトプラテン部50は、箱体51内に複数のエアー吸引孔(図示せず)を有して帯状に形成されたエンドレスベルトプラテン52が従動プーリ53とエンコーダ付きモータ54により一定の搬送速度で回転駆動される駆動プーリ55との間に中間プーリ56を介してエンドレスに掛け渡されており、且つ、従動プーリ53及び駆動プーリ55に紙押えローラ57,58が添接して、エンドレスベルトプラテン52上に搬送された少なくとも1枚以上の封筒Fをエンドレスベルトプラテン52の内側に設置したエアー吸引部59でエアー吸引しながら印刷部60及び後述する排紙部80に向けて搬送している。
【0056】
この際、ベルトプラテン部50は、エンドレスベルトプラテン52と後述するインクジェットヘッド61との間の間隔(ギャップ)を封筒Fや用紙(図示せず)に応じて調整できるように、不図示の上下動手段により箱体51ごと上下動可能に設けられており、ユーザが操作パネル部10に設けた封筒印刷キーを操作したときにギャップが例えば3mmに設定され、一方、用紙印刷キーを操作したときにギャップが例えば1.5mmに設定されている。
【0057】
また、印刷部60は、ベルトプラテン部50の上方でこのベルトプラテン部50と僅かに間隔を離して対向して設置されており、筐体2内の略中央部位に位置している。
【0058】
この印刷部60では、複数色のインクIKと対応して複数のインクジェットヘッド61が封筒Fの搬送方向の上流側から下流側に向かってC(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の順に固定設置されていると共に、各インクジェットヘッド61間に封筒Fをエンドレスベルトプラテン52上に押し付ける紙押えローラ62が設けられている。
【0059】
尚、この実施例1では、4色(CKMY)のインクIKに対応して4個のインクジェットヘッド61を設置した例で説明するが、例えば文字だけを印刷する場合には1色(K)だけで良いので、インクジェットヘッド61は少なくとも一以上設置すれば良いものである。
【0060】
ここで、各色用のインクジェットヘッド61は、詳細な図示を省略するが、ライン型に構成されており、複数のノズルを紙面と垂直な主走査方向に沿って配列させたヘッドブロックが、主走査方向に沿った一のライン上に沿って複数個配置され、且つ、主走査方向と直交する副走査方向に計2ラインに分けて配置されていると共に、隣り合うラインでは各ヘッドブロックが一部重なりあうように互い違いに千鳥状に配置されている。
【0061】
そして、封筒Fをエアー吸引によりエンドレスベルトプラテン52上に固定した状態でエンドレスベルトプラテン52の回転より封筒Fを副走査方向(矢印方向)に搬送しながら4個のインクジェットヘッド61により印刷データD(図4)に基いてカラー画像を印刷している。
【0062】
また、循環搬送路JRには、ベルトプラテン部50及び印刷部60の下流直後に光反射型の第1分岐センサ71と第1フリッパ72とが設けられており、第1分岐センサ71で印刷済みの封筒Fの後端部Feを検出したときに、第1フリッパ72を上方に向けて回動させることにより印刷済みの封筒Fをループ状に搬送するように分岐させているが、印刷済みの封筒Fを直ちに排紙したい場合には第1フリッパ72を水平に回動させてベルトプラテン部50に対して直線的に接続させた分岐路BRを介してローラ対R0により封筒Fを筐体2の右側面2c側に着脱可能に設けた排紙部80の第1排紙トレイ81に排紙することが可能になっているが、通常は印刷済みの封筒Fを後述する排紙搬送路HR中に設けた第2排紙トレイ82に排紙している。
【0063】
また、循環搬送路JRには、第1分岐センサ71及び第1フリッパ72よりも下流側で曲線状に湾曲した後の直線部分に光反射型の第2分岐センサ73が設けられ、且つ、第2分岐センサ73よりも下流に第2フリッパ74を介して排紙搬送路HRとスイッチバック搬送路SRとが一方と他方とに分岐接続されている。
【0064】
そして、印刷部60で一方の面(Fa面)を印刷された印刷済みの封筒Fは、循環搬送路JRの曲線部位を通過する際に表裏が反転されて他方の面(Fb面)が後述するスイッチバックした後に印刷部60と対向するようになると共に、封筒Fを第2分岐センサ73で検出したときに、第2フリッパ74を上方に向けて回動させることにより印刷済みの封筒Fを排紙搬送路HRに導き、且つ、排紙搬送路HRに沿って設けたローラ対R3により搬送された印刷済みの封筒Fに対して光反射型の排紙センサ75で排紙を検出した後に、筐体2の左側面上方部位2dの近傍に傾斜させて設けた排紙部80の第2排紙トレイ82に排紙している。
【0065】
一方、封筒Fの他方の面(Fb面)に印刷を行う場合には、第2フリッパ74を下方に向けて回動させることにより片面印刷済みの封筒Fをスイッチバック搬送路SRに沿って設けた複数のローラ対R4によりスイッチバック搬送路SRに導き、且つ、複数のローラ対R4により搬送された片面印刷済みの封筒Fに対して光反射型のスイッチバックセンサ76でスイッチバックを検出している。
【0066】
この後、スイッチバック搬送路SRに導かれた片面印刷済みの封筒Fは、第2排紙トレイ82の裏面に傾斜させて設けた用紙ガイド板83と、筐体2の左側面上方部位に傾斜させて設けた用紙ガイド側板2b2との間に搬送されて、封筒Fの搬送方向の先頭となる後端部Feがスイッチバック搬送路SR中に設けた第2のレジスト機構部90内の封筒突き当て部材91に突き当てられてレジスト動作が行われるようになっているので、封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷する前に封筒Fの斜行が補正されるが、これについては後で詳述する。
【0067】
そして、第2のレジスト機構部90で反転済みの封筒Fへの斜行が補正された後に、封筒Fをスイッチバックさせると、片面印刷済みの封筒Fの先頭位置が逆転されて、封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdが他方の面(Fb面)を印刷するときの搬送方向の先頭となり、この後、第3フリッパ77で搬送方向を切り替えて光反射型の再給紙センサ78を通過した後に再度、循環搬送路JR中に設置したレジストセンサ41及びレジストローラ対42に向うものの、封筒Fの他方の面(Fb面)に印刷を行う場合にレジストローラ対42によるレジスト動作を行うことなく、封筒Fのフラップ部Fdを再給紙センサで検出したときにレジストローラ対42を回転させて封筒Fを印刷部60に向けて搬送して、封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷部60で印刷することにより、封筒Fの両面印刷が可能になっている。
【0068】
更に、循環搬送路JR中で複数のローラ対R1よって封筒Fが搬送される区間は封筒Fが一定の搬送速度で搬送される定速区間になっているが、循環搬送路JR中で第2分岐センサ73よりも手前のローラ対R2から下流では排紙搬送路HR及びスイッチバック搬送路SRを含めて封筒Fの長さに応じて一定の搬送速度よりも速い速度に可変する可変速区間になっており、この可変速区間を設けることで封筒Fを表紙面印刷,裏紙面印刷,表紙面印刷,裏紙面印刷,……の順で印刷するときに、隣り合う封筒Fの間隔が略等しく且つタイミング良く印刷することができるようになっている。
【0069】
また、上記した制御部100は、図4に拡大して示したように、各部を制御するCPU100aと、両面印刷装置1の動作プログラムなど予め固定された情報を格納するROM100bと、両面印刷装置1の動作時に変更可能な情報などを一時的に格納するRAM100cと、給紙部20で給紙した封筒Fが第1,第2トップエッジセンサ44,45を通過したときにインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御するためにベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54からのエンコーダパルスを計数する第1,第2カウンタ100d,100eと、を有している。
【0070】
また、制御部100は、パソコンPCなどで作成した印刷データDがインターフェース101を介して入力されると共に、操作パネル部10と、給紙台21や給紙ローラ23とか捌きローラ24を含めた給紙部20と、レジストローラ対42と、ベルトプラテン部50と、インクジェット印刷方式を適用した印刷部60と、搬送路中に設けた複数のローラ対R0〜R4及び第1〜第3フリッパ72,74,77と、搬送路中に設けた各種の光センサ41,44,45,71,73,76,78と、スイッチバック搬送路SR中に設けた第2のレジスト機構部90と、を制御している。
【0071】
ここで、封筒Fを反転させた後にレジスト動作を実行する第2のレジスト機構部90について、図5及び図6を用いて詳述する。
【0072】
上記した第2のレジスト機構部90は、この実施例の要部となるものであり、封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷するときに、スイッチバックされた封筒Fの搬送方向の先頭が腰の弱いフラップFd側となるので、このフラップFd側で循環搬送路JR中に設けたレジストローラ対42によりレジスト動作を行うと不安定になるために、封筒Fをスイッチバックさせる前に一方の面(Fa面)が印刷済みで反転された封筒Fの後端部Feをスイッチバック搬送路SR中に設置された封筒突き当て部材91に突き当てることで、封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷する前に封筒Fの斜行補正を行うものである。
【0073】
具体的に図5(a),(b)を用いて説明すると、第2のレジスト機構部90では、封筒突き当て部材91が板金材を用いて逆コ字状に曲げ形成され、且つ、封筒Fの後端部Feが突き当てられる平坦面91aが封筒Fの幅方向に対応して幅広く平坦に形成されている。
【0074】
また、封筒突き当て部材91の平坦面91aには、封筒Fを一時的に把持するための把持手段となる上下一対の板バネ92,93がスイッチバック搬送路SRを挟んで上下に間隔を離して互いに対向して逆ヘ字状とヘ字状とに曲げ形成されて平坦面91aに一体的に取り付けられている。
【0075】
この際、上下一対の板バネ92,93のうちで上側の板バネ92のみ図5(b)に拡大して示すと、この板バネ92は封筒Fの幅方向の左右に把持片92a,92bが逆ヘ字状に曲げ形成されており、下側の板バネ93は上側の板バネ92に対して上下対称に形成されているので、上下一対の板バネ92,93により封筒Fの幅方向の左右を一時的に把持できる。
【0076】
また、第2排紙トレイ82の裏面側には、エンコーダモータ94により回転駆動される駆動プーリ95と従動プーリ96との間に幅広いエンドレスベルト97が掛け渡されてこのエンドレスベルト97が回転可能に取り付けられており、且つ、エンドレスベルト97に封筒突き当て部材91に曲げ形成した上方の曲げ片91bが連結されているので、封筒突き当て部材91は封筒Fの長さに応じてスイッチバック搬送路SRに沿いながら矢印方向に往復移動可能になっている。これにより、表裏を反転させた後の封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷する前の斜行補正時に、あらゆる種類の長さを有する封筒Fに対応できる。
【0077】
尚、不図示の用紙を印刷する際には、封筒突き当て部材91がスイッチバック搬送路SR中で用紙に対して邪魔にならない初期位置に退避している。
【0078】
更に、スイッチバック搬送路SRに設けた複数のローラ対R4のうちで封筒突き当て部材91と間隔を離して対向したローラ対R4は、駆動ローラに従動する従動ローラが押圧機構兼用ニップ解除機構98を介して封筒Fに対して接離自在に設けられている。
【0079】
上記した押圧機構兼用ニップ解除機構(以下、押圧機構と記す)98は、後述するように、封筒Fの後端部Feを封筒突き当て部材91に突き当てた後に、封筒Fを上下一対の板バネ92,93で把持しながらスイッチバック搬送路SR中で封筒突き当て部材91と間隔を離して対向して設置したローラ対R4に対して封筒Fへのニップを一時的に解除する機能を備えている。
【0080】
次に、上記のように構成した第2のレジスト機構部90の動作について、図6(a)〜(d)を用いて説明する。
【0081】
まず、図6(a)に示した如く、第2のレジスト機構部90内に設けた封筒突き当て部材91は、初期時にスイッチバック搬送路SR中で封筒Fや用紙の搬送に邪魔にならない初期位置に退避しているが、操作パネル部10に設けた封筒印刷キー(図示せず)が押されたときに、エンコーダ付きモータ94を介して駆動プーリ95と従動プーリ96との間に掛け渡したエンドレスベルト97を回転させて、このエンドレスベルト97に連結させた封筒突き当て部材91をスイッチバック搬送路SRに沿って封筒Fの長さに応じた所定の位置まで移動させる。即ち、封筒の長さLに対して、封筒突き当て部材91の平坦面91aと、スイッチバック搬送路SR中で封筒突き当て部材91と間隔を離して対向したローラ対R4のニップ点との間の距離Kが、封筒の長さLより少し短い距離(K<L)となる所定の位置まで封筒突き当て部材91を移動して停止させる。
【0082】
この際、封筒Fの長さLは、給紙台21に設けた用紙長さ検出部(図示せず)からの長さ情報を利用する方法と、封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷する前に封筒Fの後端部Feから先端部Fcが第1トップエッジセンサ44を通過するまでの期間を不図示のタイマで計測した時間と搬送速度の積から求める方法のいずれでも良い。そして、封筒Fの長さLや上記した距離Kを制御部100のRAM100c内に予め格納しておき、必要に応じてRAM100c内から取り出せば良い。
【0083】
この後、一方の面(Fa面)を印刷した後に表裏を反転させた封筒Fを、他方の面(Fb)を上にし、且つ、封筒Fの後端部Feを搬送方向の先頭にして封筒突き当て部材91と間隔を離して対向して設置したローラ対R4により封筒突き当て部材91に向けて搬送させており、このときに、上記したローラ対R4のうちで従動ローラは押圧機構98により封筒Fを介して駆動ローラに押圧している。
【0084】
次の、図6(b)に示した如く、上記したローラ対R4を更に回転させて、封筒Fを封筒突き当て部材91の平坦面91aに取り付けた上下一対の板バネ92,93間に進入させた後に、封筒Fの後端部Feを封筒Fを封筒突き当て部材91の平坦面91aに突き当てると封筒Fの後端部Feに撓みTが発生すると共に、封筒Fは上下一対の板バネ92,93による弱い付勢力により一時的に把持される。
【0085】
次の、図6(c)に示した如く、封筒Fを上下一対の板バネ92,93で把持しながら押圧機構(ニップ解除機構)98より上記したローラ対R4のうちで従動ローラを一時的に封筒Fから離間させて、ローラ対R4による封筒Fへのニップを一時的に解除させると、封筒Fの搬送が停止されて上下一対の板バネ92,93の弱い付勢力に抗して封筒Fの後端部Feに発生した撓みT{図6(b)}がなくなり、封筒Fの後端部Feは封筒突き当て部材91の平坦面91aに沿って揃うので、封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷する前に封筒突き当て部材91により封筒Fの斜行を確実に補正できる。
【0086】
次の、図6(d)に示した如く、封筒Fを反転した後のレジスト動作が終了した後に、
ローラ対R4を上記とは逆方向に逆転させ、且つ、押圧機構98よりローラ対R4のうちで従動ローラを封筒Fを介して駆動ローラに再度押圧することで、封筒Fはスイッチバックして封筒Fのフラップ部Fd側を先頭して循環搬送路JR中に設けたレジストローラ対42に向うが、前述したようにレジストローラ対42では腰の弱いフラップ部Fdに対してレジスト動作を行う必要がないので、封筒Fを確実に印刷部60に搬送でき、印刷部60で封筒Fの他方の面(Fb面)に印刷することができる。
【0087】
上述したように、本発明に係る両面印刷装置1によれば、封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Feを給紙方向の先頭に設定した上で封筒Fを給紙部20で給紙して、封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷する前に封筒Fの後端部Feを第1のレジスト機構部(レジストローラ対)42に突き当てて封筒Fの斜行を補正し、この後、封筒Fの一方の面(Fa面)を印刷部60で印刷した後に封筒Fの表裏を反転搬送路(循環搬送路)JR内で反転して、封筒Fの他方の面(Fb面)を印刷する前に反転済みの封筒Fの後端部Feをスイッチバック搬送路SR中に設けた第2のレジスト機構部90内の封筒突き当て部材91に突き当てて封筒Fの斜行を補正し、更にこの後、封筒Fをスイッチバックさせて封筒Fのフラップ部Fd側を先頭にして封筒Fを再度第1のレジスト機構部(レジストローラ対)42を経て印刷部60に向けて搬送させるときに、制御部100は、第2のレジスト機構部90で斜行補正した後にスイッチバックされた封筒Fのフラップ部Feに対して斜行補正をさせないように第1のレジスト機構部(レジストローラ対)42を制御しているので、スイッチバック搬送路SR中に設けた第2のレジスト機構部90内の封筒突き当て部材91により他方の面(Fb面)を印刷する前に封筒Fの斜行を信頼性良く補正できると共に、スイッチバックして第1のレジスト機構部(レジストローラ対)42を経て印刷部60に再度向う封筒Fのフラップ部Fdは腰が弱くても第1のレジスト機構部(レジストローラ対)42によるレジスト動作を行う必要がないために、封筒Fのフラップ部Fdを傷めることなく封筒Fを印刷部60に向けて確実に搬送できる。
【符号の説明】
【0088】
1…両面印刷装置、
2…筐体、2b1…給紙台ガイド側板、
10…操作パネル部
20…給紙部、21…給紙台、23…給紙ローラ、24…捌きローラ、25…摩擦板、
26…エンコーダモータ、41…レジストセンサ、
42…第1のレジスト機構部(レジストローラ対)、
43…エンコーダモータ、44…第1トップエッジセンサ、
45…第2トップエッジセンサ、
50…ベルトプラテン部、51…エンドレスベルトプラテン、
60…印刷部、61…インクジェットヘッド、
71…第1分岐センサ、73…第2分岐センサ、75…排紙センサ、
76…スイッチバックセンサ、78…再給紙センサ、
80…排紙部、81…第1排紙トレイ、82…第2排紙トレイ、
90…第2のレジスト機構部、91…封筒突き当て部材、
92,93…把持手段(上下一対の板バネ)、
94…エンコーダモータ、95…駆動プーリ、96…従動プーリ、
97…エンドレスベルト、98…押圧機構兼用ニップ解除機構(押圧機構)、
100…制御部、100a…CPU、100b…ROM、100c…RAM、
100d…第1カウンタ、100…第2カウンタ、110…電源部、
KR…給紙搬送路、JR…反転搬送路(循環搬送路)、BR…分岐路、
HR…排紙搬送路、SR…スイッチバック搬送路、
D…印刷データ、F…封筒、Fa…表紙、Fb…裏紙、Fc…先端部、
Fd…フラップ部、Fe…後端部、Ff…糊代、IK…インク、
R0〜R4…ローラ対、T…封筒Fの先端部撓み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封筒の両面に画像や文字を印刷する両面印刷装置において、
前記封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記封筒の一方の面と他方の面とを選択的に印刷する印刷部と、
前記印刷部よりも搬送方向の上流側に設置され、且つ、前記封筒の一方の面を印刷する前に前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部を一時的に突き当てて前記封筒の斜行を補正すると共に、斜行補正された前記封筒の一方の面を印刷するとき及び前記封筒の他方の面を印刷するときに前記封筒を前記印刷部に搬送する第1のレジスト機構部と、
前記印刷部で前記一方の面を印刷した前記封筒に対して前記他方の面が前記印刷部と対向するように反転させて搬送する反転搬送路と、
前記反転搬送路と接続され、反転された前記封筒をスイッチバックさせて前記封筒のフラップ部側を先頭にして、前記封筒を再度前記第1のレジスト機構部を経て前記印刷部に向うように搬送するスイッチバック搬送路と、
前記スイッチバック搬送路中に封筒突き当て部材が設置され、前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てて前記封筒の斜行を補正する第2のレジスト機構部と、
印刷済みの前記封筒を排紙する排紙部と、
各部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2のレジスト機構部で斜行補正した後にスイッチバックされた前記封筒のフラップ部に対して斜行補正をさせないように前記第1のレジスト機構部を制御することを特徴とする両面印刷装置。
【請求項2】
前記第2のレジスト機構部は、
前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てた際に前記封筒を一時的に把持する把持手段と、
前記スイッチバック搬送路中に前記封筒突き当て部材と間隔を離して対向して設置され、前記反転搬送路中で反転された前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てる方向に回転して搬送すると共に、前記封筒突き当て部材により前記封筒を斜行補正した後に逆転して前記封筒を前記第1のレジスト機構部を経て前記印刷側に向うようにスイッチバックさせるローラ対と、
前記封筒の後端部を前記封筒突き当て部材に突き当てた後に前記ローラ対に対して前記封筒へのニップを一時的に解除するニップ解除機構と、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の両面印刷装置。
【請求項3】
前記第2のレジスト機構部は、
前記封筒突き当て部材を前記スイッチバック搬送路に沿って前記封筒の長さに応じた所定の位置に移動させる移動手段を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の両面印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162340(P2012−162340A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22424(P2011−22424)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】