説明

両面発光パネル式照明器具

【課題】一台でかつ簡単な構成の照明器具によりくつろぎ感と適切な手元照度を両立させることができる両面発光パネル式照明器具を提供する。
【解決手段】透明基板2と、透明基板2の上に設けられた第一の透明電極3と、第一の透明電極3の上に設けられた発光層4と、発光層4の上に設けられた第二の透明電極5と、で構成される両面発光パネル式照明器具1であって、透明基板2に、透明基板2の略中央に面する部分10に孔部8を有する第一の反射材6を備え、第二の透明電極5に、第二の透明電極5の略周縁に面する部分11が切り欠かれた第二の反射材7を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板と、透明基板の上に設けられた第一の透明電極と、透明電極の上に設けられた発光層と、発光層の上に設けられた第二の透明電極と、で構成される両面発光パネル式照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、くつろぎ感と適切な手元照度を両立させる、快適な照明環境に対する需要が増加してきており、特にくつろぎ感を実現する照明手法として、間接照明と称される手法とこれに用いる照明器具の普及が進んでいる。
【0003】
間接照明とは、光源から直接到達する光の量を10%以下にし、光を反射拡散面などに当て、反射光線だけを利用する照明方式をいい、これに用いる照明器具としては、照明器具の取付け面から直接に照射面(通常は取付け面と相反する方向)に向かって光を照射するのではなく、取付け面に対向する方向に光を照射し、この取付け面にて反射拡散された光を照射面に向かって照射するように構成されるものが多い。
【0004】
なお、間接照明に対するものとして、直接照明があるが、これは光源から直接に照射面に向かって光を照射し、主として適切な手元照度を確保するために使用されるものである。
【0005】
そのため、くつろぎ感と適切な手元照度を両立させるためには、間接照明と直接照明とを同時に行う必要があるが、照明器具としては、取付け面に対向する方向に光を照射する間接照明器具と取付け面と相反する方向に光を照射する直接照明器具とを備えなければならず、コスト的に不利なものとなっていた。
【0006】
これを解決する技術として、両面発光パネル式照明器具を開発することで、取付け面と対向する方向及び取付面と相反する方向に同時に光を照射することができると思われ、例えば、特開2005−267916号公報(特許文献1)に記載されている技術が参考となると思われる。
【0007】
これは、両面発光型有機EL素子からなるパネルの片面に反射放熱構造体のカバーを取外し自在に備えたもので、両面発光と片面発光の切替と放熱構造の両立を実現するものである。
【特許文献1】特開2005−267916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、両面発光又は片面発光のいずれかを選択することしかできず、くつろぎ感と適切な手元照度を両立させることは直ちにできない可能性がある。
【0009】
また、両面発光とした場合には、両面側に均一に光が照射されることとなり、取付け面と対向する方向に照射される光の量を相対的に小さくしてくつろぎ感を得、取付け面と相反する方向に照射される光の量を相対的に大きくして適切な手元照度を得ることが困難となる可能性がある。
【0010】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、一台でかつ簡単な構成の照明器具によりくつろぎ感と適切な手元照度を両立させることができる両面発光パネル式照明器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、透明基板と、透明基板の上に設けられた第一の透明電極と、透明電極の上に設けられた発光層と、発光層の上に設けられた第二の透明電極と、で構成される両面発光パネル式照明器具であって、透明基板に、透明基板の略中央に面する部分に孔部を有する第一の反射材を備え、第二の透明電極に、第二の透明電極の略周縁に面する部分が切り欠かれた第二の反射材を備えてなることを特徴とする両面発光パネル式照明器具である。
【0012】
また請求項2に記載された発明は、第一の反射材は、第二の反射面に対向する部分に孔部を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の両面発光パネル式照明器具である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、第二の透明基板側を取り付け側とすることで、透明基板側からは取付け面に相反する方向に向かって略中央から、第二の透明基板側からは取付け面に対向する方向に向かって略周縁から、それぞれ光を照射することとなり、単純な両面発光パネルの構成のままで、直接照明と間接照明を両立する照明器具を提供することができる。
【0014】
また、透明基板における第一の反射材の占有面積、及び第二の透明電極における第二の反射材の占有面積を、それぞれ調節することで、間接照明としてのくつろぎ感と直接照明として適切な手元照度とを両立することができる。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、第一の反射材と第二の反射材とで、重複箇所がないことから、両面発光パネルから出力される光は、反射材の重複に基づく多重反射によるロスがなく、効率よく発光させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明の一実施形態として、本願の請求項1及び2に対応した両面発光パネル式両面発光パネル式照明器具1について図1及び図2により説明する。
【0017】
本実施形態の両面発光パネル式照明器具1は、図1に示す如く、透明基板2と、透明基板2の上に設けられた第一の透明電極3と、第一の透明電極3の上に設けられた発光層4と、発光層4の上に設けられた第二の透明電極5と、で構成される両面発光パネル式照明器具1であって、透明基板2に、透明基板2の略中央に面する部分10に孔部8を有する第一の反射材6を備え、第二の透明電極5に、第二の透明電極5の略周縁に面する部分11が切り欠かれた第二の反射材7を備えてなる。
【0018】
また、第一の反射材6は、第二の反射面7に対向する部分に孔部8を有する。
【0019】
以下、本実施形態による両面発光パネル式照明器具1を、より具体的詳細に説明する。
【0020】
両面発光パネル式照明器具1は、上面が閉鎖され下面が開放された略直方体である筺体9の内部に、光源となる両面発光パネルを構成する、透明基板2と、透明基板2の上に設けられた第一の透明電極3と、第一の透明電極3の上に設けられた発光層4と、発光層4の上に設けられた第二の透明電極5と、を備え、さらに透明基板2に面する第一の反射材6及び第二の透明電極5に面する第二の反射材7を備えて構成され、図示しない給電手段からの電力供給を受けて両面発光パネルが光を照射するようになしたものである。
【0021】
透明基板2は、汎用の透明ガラスであり、本実施形態では30cm×30cm×2mmの矩形のものを採用している。
【0022】
第一の透明電極3は、導電性を有する透明部材であり、ITOやZnOなどの透明電極を使用することができる。本実施形態では、ITOを真空蒸着法により透明基板2の上に形成するようにしている。スピンコート法やその他定法に従ってもよい。
【0023】
発光層4は、低分子系あるいは高分子系の有機蛍光材料で形成されるもので、通常は複数の材料が積層されてなり、これが第一の透明電極3と第二の透明電極5とで上下に挟まれた部分が発光領域となる。
【0024】
また、発光層4は、第一の透明電極3と第二の透明電極5との短絡を防止する絶縁層の機能も果たすものであり、そのため第一の透明電極3に対する給電箇所(図1における第一の透明電極3の左端部)以外の部分を絶縁被覆するように形成される。本実施形態では、発光層4を真空蒸着法により透明基板2の上に形成し、その一部は第一の透明基板3に対する絶縁被覆を完全なものとするために透明基板2に接するものとなっている。形成方法は、スピンコート法やその他定法に従ってもよい。
【0025】
第二の透明電極5は、第一の透明電極3と同様に、ITOを真空蒸着法により発光層4の上に形成し、その一部は第二の透明電極5に対する給電箇所(図1における第二の透明電極5の右端部)の取付けを容易なものとするため透明基板2に接するものとなっている。形成方法は、第一の透明電極3と同様である。
【0026】
また、第二の透明電極5の発光層4に面していない面に、第二の反射材7が備えられている(詳細は後述する)。
【0027】
なお、第一の透明電極3の給電箇所と第二の透明電極5の給電箇所を除き、第一の透明電極3、発光層4、第二の透明電極5及び第二の反射材7を被覆するように封止層12が設けられる。封止層12は、シリコーン樹脂、ガラス系材料等の汎用のものが、照明器具の使用箇所等に応じて適宜選択される。
【0028】
第一の透明電極3の給電箇所と第二の透明電極5の給電箇所には、クロムメッキ処理、真空蒸着、印刷処理等によって接続用導体が形成され、これが図示しない給電回路からの電力供給を受け、発光層4を発光させることとなる。
【0029】
第一の反射材6は、外寸が透明基板2と同大同形状のアルミ板であって、その中央部が22cm×22cmの矩形にくりぬかれてなる平面視でロの字形状のものである。これは透明基板2における第一の反射材3が形成されていない面に、シアノアクリレート系樹脂等の光透過性に優れた接着性樹脂を介して取り付けられる。
【0030】
第二の反射材7は、外寸が22cm×22cmの矩形のアルミであって、第二の透明電極5の発光層4に面していない面に、第二の反射材7の重心と第一の反射材6の重心が同一軸上になるように、真空蒸着法により形成される。
【0031】
かかる両面発光パネル式照明器具1は、図示しない給電部品と電気的に接続される取付け栓刃にて、取付け面に設けられたコンセントに差し込まれて固定される。
【0032】
続いて、本実施形態による両面発光パネル式照明器具1の動作、より具体的詳細に説明する。
【0033】
まず、図示しない給電手段から、第一の透明電極3及び第二の透明電極5に直流電力が供給され、これにより発光層4に電流が流れ、発光を開始する。
【0034】
かかる光は、発光層4の表裏両面(図2における上下両方向)に照射される。
【0035】
ここで、発光層4から取付け面に対向する方向に向かって照射される光のうち、第二の反射材7に向かう光は、これによって反射されて透明基板2の方向へ照射されることとなる。すなわち,発光層4の略中央からの照射される光はすべて透明基板2の方向、すなわち取付け面に相反する方向へ照射されることとなる
また、発光層4から取付け面に相反する方向に向かって照射される光のうち、第一の反射材6に向かう光は、これによって反射されて取付け面の方向へ照射されることとなる。すなわち,発光層4の略縁部からの照射される光はすべて取付け面の方向、すなわち取付け面に対向する方向へ照射されることとなる。
【0036】
従って、本実施形態によれば、第二の透明基板3側を取付け面に対向させることで、透明基板2側からは取付け面に相反する方向に向かって略中央から、第二の透明基板5側からは取付け面に対向する方向に向かって略周縁から、それぞれ光を照射することとなり、単純な両面発光パネルの構成のままで、直接照明と間接照明を両立する照明器具を提供することができる。
【0037】
また、透明基板2における第一の反射材6の占有面積、及び第二の透明電極5における第二の反射材7の占有面積を、それぞれ調節することで、間接照明としてのくつろぎ感と直接照明として適切な手元照度とを両立することができる。
【0038】
さらに、第一の反射材6と第二の反射材7とで、重複箇所がないことから、両面発光パネルから出力される光は、第一の反射材6と第二の反射材7との重複に基づく多重反射によるロスがなく、効率よく発光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本願発明の一実施形態における両面発光パネル式照明器具の分解斜視図
【図2】図1におけるA−A’断面図
【符号の説明】
【0040】
1 発光パネル式照明器具
2 透明基板
3 第一の透明電極
4 発光層
5 第二の透明電極
6 第一の反射材
7 第二の反射材
8 孔部
10 透明基板2の略中央に面する部分
11 第二の透明電極5の略周縁に面する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、透明基板の上に設けられた第一の透明電極と、透明電極の上に設けられた発光層と、発光層の上に設けられた第二の透明電極と、で構成される両面発光パネル式照明器具であって、透明基板に、透明基板の略中央に面する部分に孔部を有する第一の反射材を備え、第二の透明電極に、第二の透明電極の略周縁に面する部分が切り欠かれた第二の反射材を備えてなることを特徴とする両面発光パネル式照明器具。
【請求項2】
第一の反射材は、第二の反射面に対向する部分に孔部を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の両面発光パネル式照明器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−317494(P2007−317494A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145525(P2006−145525)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】