説明

中型縦列繰り返しDNAマーカーを特定し分析するための材料と方法

【課題】DNAの中型縦列繰り返し配列の特定および解析のための方法を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも2回縦並びに繰り返される5、6または7塩基対の配列から成る少なくとも1つの繰り返し単位を含むDNAの一領域である少なくとも1つの標的中型縦列繰り返し配列を有するDNAサンプルを提供し;さらに
(b)観察される平均スリップ増幅人工生成物が2.4%未満である、サンプルDNA中の前記標的中型縦列繰り返し配列を検出する工程を含む、
スリップ増幅人工生成物の発生が少ない標的中型縦列繰り返しDNA配列を検出する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にゲノム系における遺伝的マーカーの特定および分析を目的とする。より具体的には本発明は、中型(intermediate)(5から7塩基)配列繰り返し数の変化による長さの多形性現象を有するDNA、特にゲノムDNA中の遺伝子座の特定を目的とする。本発明はまた、そのような多形性遺伝子座の検出を目的とする。さらに本発明は、そのような遺伝子座のゲノムDNA増幅生成物の主としてサイズの違いを基にそれらを個々に特定し識別する方法を目的とする。この場合、中型縦列繰り返し配列の数はそれぞれ個々に異なっている。
【背景技術】
【0002】
DNAの型分けは、小児の出生を特定するために、さらに馬、犬、および他の受賞動物の血統を確認するために用いられる。DNA型分けはまた一般に、犯罪現場で発見された血液、唾液、精液および他の組織の出所を特定するために利用される。今日使用されるDNA型分け方法は、1つの集団内で少なくとも2つの異なる形態で出現することが判明しているDNAの1つまたは2つ以上の領域の長さおよび/または配列の違いを検出および分析できるようにデザインされている。DNA型分けはまた、骨髄移植の成否および特定の癌性疾患の存在を決定するために臨床セッティングで用いられる。そのような長さおよび/または配列の変化は“多形性現象”と称される。そのような変化が生じるDNAの任意の領域(すなわち“遺伝子座”)は“多形性遺伝子座”と称される。ほとんどのDNA型分け技術は、少なくとも1つのそのような多形性遺伝子座を含む少なくとも1つの“マーカー”を利用する。個々のマーカーの各々は、最終的に1集団内のただ1つの個体に由来するゲノムDNAのただ1つの対立形質を含んでいる。本発明の材料および方法は、全て、主として長さの変化を特徴とするDNAの特定の種類の多形性の検出に使用するためにデザインされている。
【0003】
長さまたは配列に関して十分に多形性である遺伝的マーカーは、出所確認用途(例えば実父確認検査および法廷での分析のために採集された組織サンプルの特定)で使用するために長い間探し求められてきた。そのようなマーカーの発見および開発、並びにそのようなマーカーを分析する方法はここ数年の間にいくつかの進展段階を経てきた。最近、遺伝的マーカーとして多形性を有する短い縦列繰り返し(STR)の発見および開発によって、連鎖マップの作製、病的遺伝子の特定および性状決定、並びにDNA型分けの簡素化および精密さにおける進展が促進された。本明細書で用いられるように“短い縦列繰り返し”または“TR”という用語は、任意の生物のゲノム内で完璧にまたはほぼ完璧に縦並びに繰り返される2から7ヌクレオチドの長さの全ての配列を指す。例えば、米国特許第5364759号の4段目、58行目以下でヒトのゲノムDNAで用いられる“短い縦列繰り返し”の定義を参照されたい。
【0004】
最初に特定されたDNA変種マーカーは単純な塩基置換(すなわち単純な配列多形性)で、これらは非常に頻繁にサザンハイブリダイゼーションアッセイで検出された。そのようなマーカーの特定について述べている参考文献の例として以下を参照されたい(それらアッセイは放射性プローブを用いて制限エンドヌクレアーゼ消化DNAを分析するために用いることができるようにデザインされている):E.M. Southern, J. Mol. Biol. 98(3):503-507(1975); Schumm et al., American Journal of Human Genetics 42:143-159(1988); A. Wyman & R. White, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:6754-6758(1980))。
【0005】
その次の世代のマーカーはサイズの変種、すなわち長さの多形性で、特に“縦列繰り返し数の可変性”(VNTR)を示すマーカー(Y. Nakamura et al., Science 235:1616-1622(1987); 米国特許第4963663号(White et al.(1990);米国特許第5411859号(4963663号の継続特許、White et al.(1995))、および“ミニサテライト”マーカー(Jeffreys et al., Nature 314:67-73(1985a); Jeffreys et al., Nature 316:76-79(1985b);米国特許第5175082号(Jeffreys))であった。VNTRおよびミニサテライトマーカーはともに、縦並びの態様で繰り返されるほとんど同一の配列の領域を含んでいる。コアの繰り返し配列は長さが10から70塩基で、短いコア繰り返し配列(“ミニサテライト”繰り返しと称される)および長い繰り返し(VNTRと称される)をもつ。人間の集団で個々の個体は異なる数のこれらの繰り返しを含む。これらのマーカーは、塩基置換多形性よりもより強く多形性で、時には1つの遺伝子座で40またはそれ以上の対立形質を提示する。しかしながら、だらだらと時間のかかる制限酵素消化の過程およびそれに続くサザンハイブリダイゼーション分析が、そのようなマーカーのほとんどの検出および分析に要求される。
【0006】
次の進展では、VNTR遺伝子座の分析(K. Kasai et al., Journal Fornsic Science 35(5):1196-1200(1990))に関してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(米国特許第4683202号(K.B. Mullis))が加わった。増幅可能なVNTR遺伝子座が発見された。これはサザントランスファーの必要がなく検出することができた。増幅生成物をアガロースまたはポリアクリルアミドゲルで分離し、増幅時の放射能の取り込みによって、または臭化銀またはエチジウムによる後染色によって検出する。しかしながら、PCRは相対的に小さなDNAセグメントを信頼できる状態で増幅させるために用いることができる。すなわち、長さが3000塩基以下のDNAセグメントが信頼できる状態で増幅可能である(M. Ponce & L. Micol, NAR 20(3):623(1992); R. Decorte et al., DNA Cell Biol. 9(6):461-469(1990))。結果として、極めてわずかの増幅可能なVNTRしか得られず、連鎖マップ作製にはそれらは実用的な種類ではない。
【0007】
多形性ジヌクレオチド繰り返し(Litt & Luty, Am. J. Hum. Genet. 3(4):599-605(1989); D. Tautz, NAR 17:64636471(1989); Weber & May, Am. J. Hum. Genet. 44:388-396(1989);ドイツ国特許第DE3834636C2号(D. Tautz);米国特許第5582979号(L. Weber出願))および多形性の短い縦列繰り返し(STR)(A. Edwards et al., Am. J. Hum. Genet. 49:746-756(1991); H.A. Hammond et al., Am. J. Hum. Genet. 55:175-189(1994); C.J. Fregeau & R.M. Fourney, BioTechniques 15(1):100-119(1993); J.W. Schumm et al., "The Fourth International Symposium on Human Identification 1993", pp.177-187;および米国特許第5364759号(Caskey et al.); ドイツ国特許第DE3834636C2号(D. Tautz))をもつ多形性マーカーの最近の進歩により、従来の方法の欠点の多くが克服された。ジヌクレオチドまたはSTR繰り返し(定義では2−7bp繰り返しを含む)を含む2つのタイプのマーカーは、一般に“ミクロサテライト”マーカーと称される。最も入手しやすいマーカーであるとしばしば考えられるこのミクロサテライト遺伝子座では、それらの対立形質は長さが変化するということで区別できるという点で増幅可能なVNTRと同様である。
しかしながらVNTRと異なり、これらの遺伝子座は、2、3、4、または稀に5塩基の長さの完全または不完全な繰り返し配列を含んでいる。それらは、ただ1つの遺伝子座でほんの数個の対立形質から40以上の対立形質を出現させる。
増幅プロトコルは小さな生成物(一般に長さが60から400塩基対)を製造するためにデザインすることが可能で、各遺伝子座の対立形質はしばしば50bp未満の範囲内で含まれる。これは、いくつかの系を同じゲル上で同時に電気泳動で分析することを可能にする(ただし、個々の系から得られる全ての潜在的増幅生成物が同じゲル内で他の系の対立形質の領域と重ならないようにPCRプライマーを注意深くデザインする)。
【0008】
ミクロサテライト遺伝子座の使用では大きな3つの欠点が存在する。第一は、スリップ増幅(stutter)人工生成物の存在、すなわち各対立形質を表した大きなフラグメントの他に1つまたは2つ以上の小さなフラグメントがしばしば増幅後に見出される。この欠陥は、トリまたはテトラヌクレオチド繰り返しマーカーよりもジヌクレオチド繰り返し遺伝子座ではるかに明瞭に提示される(Edwards et al., Am. J. Hum. Genet. 49:746-756(1991); Edwards et al., Genomics 12:241-253(1992); Weber & May, Am. J. Hum. Genet. 44:388-396(1989))。これらの人工生成物の存在(おそらくは繰り返しのスリップ現象(repeat slippage)(Levinson & Gutman, Mol. Biol. Evol. 4(3):203-221(1987); Schlotterer & Tautz, NAR 20:211-215(1992))と称されるDNAポリメラーゼ関連現象の結果と思われる)は、この遺伝子座の対立形質の内容の解釈を複雑にする。全ての解釈が複雑になる一方で、各対立形質を表している大きなフラグメントと小さなフラグメントの存在は、特に法定訴訟での分析の場合にこれらマーカーの有用性を制限する(法廷訴訟分析では、2つ以上のDNAサンプルが存在するか否かをしばしば決定しなければならない)。本明細書の実験で述べるマーカーの多くは、既知のマーカーに較べて極めてわずかしか短い人工生成物を生じない新規な種類のマーカーである。
【0009】
現今のSTRおよびミクロサテライトマーカー系の第二の欠点は、単一ゲル内で多数の遺伝子座を分離することの困難さと関係がある。これは、DNAフラグメントの分離に当業者がもっとも一般的に用いるゲルの上部領域が異なるサイズのフラグメントで間隙的に圧縮されるためである。大きな繰り返し単位を基にする本実験で述べるマーカーの開発はこのゲル内の有用範囲を広げ、より多くの遺伝子座の同時分析を可能にする。
【0010】
第三の欠点は、本明細書で開示する発明以前には、ヒトゲノムDNAの遺伝子座の各々で5から7塩基繰り返しの数の相違を基にする長さの多形性をもつほんのわずかのDNA遺伝子座しか文献に記載されていないということである。例えば以下の文献を参照されたい:Edwards et al., Nucleic Acids Res. 19:4791(1991); Chen et al., Genomics 15(3):621-5(1993); Harada et al., Am. J. Hum. Genet. 55:175-189(1994); Comings et al., Genomics 29(2):390-6(1995); Utah Marker Development Group, Am. J. Genet. 57:619-628(1995)。1995年に、GenBankデータベースを用いて、霊長類ゲノム内の5量体および6量体の縦列繰り返しの相対的豊富さおよび変動性を決定する実験が報告された(Jurka & Pethiyagoda, J. Mol. Evol. 40:120-126(1995))。しかしながら、変動性は間接的に概算されただけで、個々の遺伝子座における多形性レベルは示されなかった(上掲書)。我々は、5から7塩基繰り返し配列の高度に多形性である繰り返しを含有するDNA遺伝子座を特定し分析する材料および方法を開発した。
本発明の材料および方法は、極めて多様な供給源の一本鎖および二本鎖DNAを含む種々のDNAタイプの個々の多形性遺伝子座を特定し分析するために使用できるようにデザインされている。本発明は現存の技術を顕著に改善し、遺伝子連鎖分析、犯罪審判、実父確定検査並びに他の訴訟および医学的用途のためのDNAプロフィール調査の性能および精密さを高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、中型縦列繰り返し配列をもつ遺伝子座の特定および分析のための材料と方法を提供することである。ここで“中型縦列繰り返し配列”とは、5、6または7塩基の配列から成る少なくとも1つの繰り返し単位を含み、当該単位が少なくとも2回繰り返されているDNAの領域である。
【0012】
本発明の別の目的は、中型縦列繰り返しを含むDNAの1つまたは2つ以上の遺伝子座を分析または検出するために用いる場合、わずかしか人工生成物を生じない、中型縦列繰り返しDNAマーカーを特定する材料および方法を提供することである。本発明の材料および方法は、好ましくは、その各々が多形性を有する中型縦列繰り返し配列を含むゲノムDNAの遺伝子座の特定および分析に用いられる。本発明の材料には、ヒトゲノムDNAのそのような遺伝子座に対するオリゴヌクレオチドプライマーおよびDNAマーカーが含まれる。本発明の方法を用いて検出される中型縦列繰り返し遺伝子座は、同様な方法を用いて検出される多くの既知の遺伝子座(短いSTR(すなわち2、3または4塩基DNA配列の縦列繰り返し)を含む)の場合よりも少ない人工生成物を生じる。
【0013】
本発明の具体的な目的は、中型縦列繰り返し領域における核酸の主に繰り返し単位数の相違による主に長さの変化を基にした、多形性を有する個々の遺伝子座の分析のための方法および材料を提供することである。本発明の固有の目的はまた、中型縦列繰り返し多形性(5ヌクレオチド縦列繰り返し多形性を含む)を含有する多形性ゲノムDNA遺伝子座の検出および分析のための方法、キットおよびプライマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施態様の1つは、以下の工程を含む、ゲノムDNAから中型縦列繰り返し配列を含むDNAフラグメントを単離する方法から成る:(a)少なくとも1つのフラグメントは中型縦列繰り返し配列を含む、複数のDNAフラグメントを提供し;(b)中型縦列繰り返し配列の一部分と相補性を有するヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを結合させた支持手段(例えば固定支持手段)を提供し;さらに(c)前述の複数のDNAフラグメントとこの支持手段とを、中型繰り返し配列を含むDNAフラグメントおよび少なくとも1つの他のDNAフラグメントが支持手段とハイブリダイズする条件下で混合する。
【0015】
本発明のまた別の実施態様は、以下の工程を含む、スリップ増幅人工生成物を生じる傾向が低い多形性中型縦列繰り返し配列を検出する方法である;(a)少なくとも1つの標的中型縦列繰り返し配列を有するDNAサンプルを提供し;さらに(b)DNAサンプル中の標的中型縦列繰り返し配列を検出する。この実施態様では1.1%未満の平均スリップ増幅人工生成物が認められた。
【0016】
本発明のまた別の実施態様は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを用い、DNAサンプル中の問題の中型縦列繰り返し配列(以下では“標的中型縦列繰り返し配列”)を増幅させ、DNAサンプル中の標的中型縦列繰り返し配列を検出する方法を提供する。ここで、オリゴヌクレオチドプライマーは、中型縦列繰り返し配列を含むDNAマーカーの領域と相補的でさらにこれと接する配列(以下では“中型縦列繰り返し配列鋳型”)を含み、ここでこのDNAマーカーは配列番号:1から43から成る配列群から選ばれる配列を有する。
【0017】
また別の実施態様では、本発明は、少なくとも1つの標的中型縦列繰り返し配列をDNAサンプル中型縦列繰り返し配列で検出するキットを提供する。このキットは、少なくとも1つの標的中型縦列繰り返し配列を増幅させる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む容器を含み、このオリゴヌクレオチドプライマーは、中型縦列繰り返し配列鋳型を含む二本鎖DNAマーカーの領域の一部と相補的でこれと接するヌクレオチド配列を含み、このDNAマーカーは配列番号:1から43から成る群から選ばれる配列を有する。
さらに別の実施態様では、本発明は、中型縦列繰り返し配列鋳型に接するマーカー領域の二本鎖DNAマーカーの一方の鎖と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。ここで、DNAマーカーは配列番号:1から6、および配列番号:28から33から成る群から選ばれる配列を有する。
【0018】
本発明の種々の実施態様の各々は、人間および他の動物の特定、法廷訴訟分析、実父確認、骨髄移植のモニタリング、遺伝子連鎖マップ作製および遺伝的疾患および癌の検出の分野で固有の用途を有する。異なる個体の少量の組織間で正確に識別する必要性は、法定訴訟での適用で特に緊急を要する。法廷訴訟では、多くの有罪判決(無罪判決)がDNA型分け分析(STR遺伝子座の分析を含む)で左右される。
本発明の更なる目的、特色および利点は、以下の本発明の最良の実施態様および説明図から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、フィルターハイブリダイゼーションによる中型縦列繰り返しを濃縮する方法の工程模式図である。
【図2】図2は、5ヌクレオチド繰り返しS159の電気泳動図である。
【図3】図3は、4ヌクレオチド繰り返しvWAの電気泳動図である。
【図4】図4は、5ヌクレオチド繰り返しG210の電気泳動図である。
【図5】図5は、4ヌクレオチド繰り返しD5S818の電気泳動図である。
【図6】図6は、5ヌクレオチド繰り返しS159のスリップ増幅百分率のスキャタープロットである。
【図7】図7は、5ヌクレオチド繰り返しG210のスリップ増幅百分率のスキャタープロットである。
【図8】図8は、4ヌクレオチド繰り返しD5S818のスリップ増幅百分率のスキャタープロットである。
【図9】図9は、4ヌクレオチド繰り返しvWAのスリップ増幅百分率のスキャタープロットである。
【図10】図10は、ゲル電気泳動分離後の、5ヌクレオチド繰り返しS159の蛍光標識増幅フラグメントの蛍光画像スキャンの結果をレーザープリントした画像である。
【図11】図11は、ゲル電気泳動分離後の、5ヌクレオチド繰り返しG210の蛍光標識増幅フラグメントの蛍光画像スキャンの結果をレーザープリントした画像である。 図の縮尺は必ずしも正確ではなく、さらに、明瞭さと簡潔さの観点から本発明のある種の特色は縮尺が誇張されるか、または模式的に示されている。
【図12】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図13】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図14】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図15】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図16】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図17】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図18】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図19】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図20】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図21】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図22】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図23】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図24】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図25】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図26】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図27】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図28】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図29】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図30】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図31】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図32】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図33】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図34】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図35】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図36】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図37】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図38】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図39】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図40】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図41】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図42】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図43】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図44】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図45】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【図46】DNAマーカー又はそのプライマーの配列
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示した発明で種々の置換および改変が本発明の範囲を逸脱することなく実施できることは当業者には明白であろう。
A.定義
本明細書で用いられるように、“中型縦列繰り返し”または“ITR”は、少なくとも2回縦並びに繰り返される5から7塩基の配列を含むDNA配列の一領域を指す。ITRという用語はまた、5から7塩基を含む2つ以上の配列が縦並びに、または介在する塩基を伴って繰り返されるが、ただしこれら配列の少なくとも1つが少なくとも2回縦並びに繰り返されることを条件とするDNAの一領域を包含する。ITR内で少なくとも1回繰り返される各配列を本明細書では“繰り返し単位”と称する。
“ITR多形性”とは、主として各染色体の同じ領域内の繰り返し単位の数が異なるために、個体集団内においてある染色体と別の染色体で長さが異なるゲノムDNA中のITRを指す。
【0021】
本発明にしたがって特定および分析される中型縦列繰り返し配列は2つの一般的なカテゴリー(完全および不完全)に分類される。本明細書で用いられる“完全な”ITRとは、少なくとも2回縦並びに繰り返される5から7塩基のただ1つの繰り返し単位を含む二本鎖DNAの一領域を指す(例えば(AAAAT)12)。本明細書で用いられるように、“不完全な”ITRとは、完全な繰り返し単位の少なくとも2つの縦列繰り返しおよび不完全な繰り返し単位の少なくとも1つの繰り返しを含むDNAの一領域を指し、この場合、不完全な繰り返し単位は、完全な繰り返し単位の配列における1、2または3塩基の挿入、欠失または置換から生じるDNA配列から成る(例えば(AAAAT)12(AAAAAT)5 AAT(AAATT)4)。不完全なITR配列はいずれも少なくとも1つの完全なITR配列を含む。特に、ITR配列はいずれも完全であるか不完全であるかにかかわず、少なくとも2回縦並びに出現する、下記式(I)で表される少なくとも1つの繰り返し単位配列を含む:
(AwGxTyCz)n (I)
式中、A、G、TおよびCは任意の順序のヌクレオチドを表し、w、x、yおよびzは当該配列の各ヌクレオチドの数を示し、その範囲は0から7であるがw+x+y+zの合計は5から7の間で、nは当該配列が縦並びに繰り返される数を表し、少なくとも2である。
【0022】
“5ヌクレオチド縦列繰り返し”とは、上記に定義した“中型縦列繰り返し”多形性のサブクラスを指す。また別に特定しないかぎり、“5ヌクレオチド縦列繰り返し”は、繰り返し配列が5塩基の配列である完全なITR、および少なくとも1つの繰り返し単位が5塩基の繰り返しである不完全ITRを包含する。
“DNAマーカー”とは、ITR配列、例えばゲノムDNAの一領域を増幅することによって製造したITR配列を含むDNAフラグメントを指す。個々のマーカーはそれぞれ、究極的に集団内のただ1つの個体に由来するゲノムDNAのただ1つの対立形質を含む。
“遺伝子座”という用語はDNAの特定の領域を指す。ゲノムDNAの一領域を指すために用いられる場合は、“遺伝子座”は染色体の特定の場所を指す。同じゲノムの遺伝子座は、集団内のいずれの個体についても相同染色体の各対上で同一の部位に出現する。そのような染色体の各々の同じ遺伝子座に存在するDNA配列、または同じそのような染色体から発生するDNAの同じ遺伝子座は、“対立形質”と称される。
【0023】
本明細書で用いられる“多形性”という用語は、同じ種の個々の生物集団のゲノムDNAで見出される少なくとも2つの染色体で観察される遺伝子座の対立形質における変動を指す。“多形性”という用語は、他の担体(例えばDNAベクターまたは別の生物体の染色体DNA)中にクローン化された染色体フラグメントの同じ遺伝子座から得られたDNA配列の変動を含む。
本明細書で用いられるように、“ITR隣接配列”とは、ITRを含むDNA配列の鎖上でITRと隣合うヌクレオチド配列をいう。その完全な配列の一部分としてITR隣接配列を含む配列はそれ自体隣接配列である。
【0024】
本明細書で用いられる“オリゴヌクレオチドプライマー”という用語は、3つより多いデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドで構成される分子と定義される。各プライマー配列は鋳型の配列を正確に反映する必要はないが、当該配列が鋳型との相補性をより正確に反映すればするほど、鋳型との結合性は良好である。その正確な長さおよび配列は、当該オリゴヌクレオチドプライマーの最終的な機能および用途に関係する多くの因子(温度、プライマーの配列、および方法の有効性を含む)に左右されるであろう。本発明の各オリゴヌクレオチドプライマーは、ITR配列に隣接するDNAマーカーの配列と相補的な核酸配列を含む。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、核酸の1つの鎖と相補的なプライマー伸長生成物の合成を誘発する条件下に置いた場合、合成の開始点として機能することができる。当該条件には、ヌクレオチドおよび誘発剤の存在、例えば適切な温度およびpH下でのDNAポリメラーゼの存在が含まれる。好ましい実施態様では、当該プライマーは、誘発剤の存在下で特定の配列から伸長生成物の合成を開始させるために十分な長さをもつ一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドプライマーの感受性および特異性は、プライマーの長さおよび与えられた鋳型DNAサンプル内の配列の固有性によって決定される。本発明では、オリゴヌクレオチドプライマーは通常はおよそ15塩基より大きく、好ましくは長さが約20から40塩基である。
【0025】
“オリゴヌクレオチドプライマー対”という用語はプライマー対を指し、各々は同じITRに隣接する二本鎖DNAの向き合う鎖と相補的なデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を含む。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーの各対は、好ましくはただ1つのITRを検出するために選別される。各プライマー配列は鋳型の正確な配列を反映する必要はないが、当該配列が鋳型との相補性を正確に反映すればするほど、鋳型との結合は良好である。
【0026】
“伸長生成物”とは、オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端から合成され、さらに当該オリゴヌクレオチドが結合している鎖と相補的であるヌクレオチド配列を指す。
本明細書で用いられる“オリゴヌクレオチドプローブ”という用語は、標的配列の一部分(例えばDNAサンプルの中型縦列繰り返し配列)と相補的な配列を含むDNAまたはRNAの一本鎖分子を指し、ここで相補性を有する当該部分は、プローブが標的配列とハイブリダイズするために十分な長さを有する。
【0027】
本明細書で用いられるように、“スリップ増幅人工生成物”という用語は、標的DNAの1つまたは2つ以上の分子を検出する場合に観察される固有のタイプの人工生成物を指す。この場合、標的DNAは同じ繰り返し単位配列(本発明にしたがって検出および分析される標的中型縦列繰り返し配列を含む)の縦列繰り返しを含む。長さによるサンプル中の全DNAの分離後に任意のそのような標的DNAを含むサンプルが検出される場合、標的DNA分子の各々はメジャーシグナルを(例えばゲルのメジャーバンド)を生じるが、マイナーシグナルも各メジャーシグナルの直ぐ近くに検出できる。一般に、このマイナーシグナルは、1つまたは2つ以上の繰り返し単位が標的DNA配列に付加または欠失したために標的DNAと長さが異なるDNAフラグメントが検出されたために生じる。スリップ増幅人工生成物は、DNAの複製中に(in vivoおよびin vitroの両方で)スリップした鎖の対合形成の誤りによるものとされた(例えば以下の文献を参照されたい:Levinson & Gutman(1987), Mol. Biol. Evol. 4(3):203-221; Schlotterer & Tauz(1992), Nucleic Acids Research 20(2):211-215)。そのような人工生成物は、そのような任意の繰り返し配列を含むDNAがin vitroでポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅方法を用いて増幅される場合に特に明瞭である。なぜならば、サンプル中に存在するか、またはポリマー生成中に生産される一切のマイナーフラグメントがメジャーフラグメントともに増幅されるからである。
【0028】
本明細書で用いられる“スリップ増幅人工生成物百分率”という用語は、ただ1つの供給源(例えばただ1つの細菌コロニーまたはゲノムDNAのただ1つの染色体)から得られたDNAサンプルで観察されるメジャー(すなわち標的)シグナルの大きさに対するマイナー(すなわち人工生成物)シグナルの大きさの比較を指す。スリップ増幅人工生成物百分率は増幅されていないDNAで決定することができるが、好ましくは少なくとも1つの標的中型縦列繰り返し配列の増幅後に決定される。“スリップ増幅人工生成物平均百分率”という用語は、1つの集団内で少なくとも20の対立形質を含む代表的サンプルで検出されたスリップ増幅人工生成物百分率の測定値から得られたスリップ増幅人工生成物百分率の平均を指す。
【0029】
本明細書で用いられるように“ゲノムDNA”という用語は、基本的にゲノムDNAに由来する一切のDNAを指す。この用語には、例えば異種生物のクローン化DNA、完全ゲノムDNAおよび部分的ゲノムDNA(例えばただ1つの単離染色体のDNA)が含まれる。
本発明によって検出または単離されるDNAは一本鎖でも二本鎖でもよい。例えば、本発明での使用に適した一本鎖DNAは、細菌ファージ、細菌、またはゲノムDNAのフラグメントから得ることができる。本発明での使用に適した二本鎖DNAは、中型縦列繰り返し配列をもつDNAを含む多数の種々の供給源のいずれからも得ることができる。これらDNA供給源には、ファージライブラリー、コスミドライブラリーおよび細菌ゲノムまたはプラスミドDNA、並びにいずれかの真核細胞生物から単離されたDNA(ヒトゲノムDNAを含む)が含まれる。DNAは好ましくはヒトゲノムDNAから得られる。多数のヒトゲノムDNA供給源のいずれも用いることができるが、これらには医療用または法廷訴訟用サンプル、例えば血液、精液、膣スワブ、組織、毛髪、唾液、尿および体液混合物が含まれる。そのようなサンプルは、新しいものでも古いものでも乾燥したものでも、および/または部分的に分解したものでもよい。サンプルは犯罪現場の証拠物件から採集できる。
【0030】
B.ITRを含む多形性DNAマーカーを単離する方法:
本発明の実施態様の1つは、ハイブリダイゼーション選別を用いてITRを含むDNAフラグメントを単離する方法である。本方法は以下の工程を含む:(a)少なくとも1つのDNAフラグメントがITRを含む、複数のDNAフラグメントを提供し;(b)中型縦列繰り返し配列の一部分と相補的なヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを結合させた支持体手段を提供し;(c)当該複数のDNAフラグメントと当該支持体手段とを、ITR配列を含有するDNAフラグメントのいずれかを含むDNAフラグメントが支持体手段とハイブリダイズする条件下で混合する。
【0031】
本方法の工程(a)で提供される複数のDNAフラグメントはITRを含む任意のDNAサンプルをフラグメント化して得ることができるが、好ましくはゲノムDNAをフラグメント化して得られる。例えば以下の文献を参照されたい:Current Protocols in Human Genetics(1994), Chapter 2: Development of Genetic Markers, Construction of Small-Insert Libraries from Genomic DNA, p.2.2.1およびそれ以降(これは参照により本明細書に含まれる))。工程(a)で使用する複数のDNAフラグメントを調製する最も好ましい方法は以下を含む工程にしたがう:サンプルDNAをフラグメント化し、それによって、少なくとも1つのDNAフラグメントがITRを含むDNAフラグメント集団を作製し;当該DNAフラグメント集団に各DNAフラグメントの少なくとも一方の末端にプライミング配列を含むリンカーを連結し;さらに、プライミング配列と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いて各リンカー連結フラグメントを増幅させる。異なるリンカーを各フラグメントの各々の末端に連結することができる。しかしながら、リンカーのプライミング配列と相補的な配列を有するただ1つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅させることができるように、好ましくはただ1つのリンカーを各末端に連結する。リンカー連結は、好ましくはT4DNAリガーゼのようなリガーゼ酵素の存在化で実施する。
【0032】
本方法の工程(a)で供給される複数のDNAフラグメントを製造するために、多数の異なる手段のいずれも用いることができる。これらには、超音波処理または少なくとも1つの制限酵素によるフラグメント化が含まれるが、二本鎖DNAは制限酵素でのみフラグメント化できる。二本鎖DNAサンプルをフラグメント化するために制限酵素を用いる場合は、好ましい制限酵素は一本鎖の突出部を残す4塩基対認識配列をもち、さらに問題のITR領域内でDNAサンプルを切断しない酵素である。二本鎖DNAサンプルのフラグメント化で使用する好ましい制限酵素には、MboI、AciI、BfaI、DpnII、HhaI、HinP1I、HpaII、MseI、MspI、NlaIII、Sau3AI、TaqI、Csp6IおよびTaiIが含まれる。
【0033】
上記のように製造されたリンカー連結DNAフラグメントは、続いて増幅反応を用いて増幅される。これらの増幅反応は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4683202号(K.B. Mullis))、核酸配列依存増幅(NASBA)(Kievits et al.(1991) J. Virol. Methods 35(3):273-286)、連結仲介増幅(Volloch et al.(1994) Nucleic Acids Res. 22(13):2507-2511)、鎖置換増幅(Walker et al.(1992) PNAC 89(1):392-396)、配列非依存性単一プライマー増幅(SISPA)(Reyes(1991) Mol. Cell Probes 5(6):473-481)またはリガーゼ連鎖反応(米国特許第5686272号(Marshall et al))である。
【0034】
本方法の工程(b)で提供される支持体手段は、少なくとも1つの標的オリゴヌクレオチドを結合させた固定支持体を含む。固定支持体は、好ましくはオリゴヌクレオチドを直接または間接的にカップリングさせることができる物質を含む。オリゴヌクレオチドを直接カップリングさせることができる適切な物質には、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、シリカ、およびラテックスが含まれる。
本方法の好ましい本実施態様で使用する適切な固定支持体の例には、ナイロン膜、シリカ粒子を埋め込んだフィルター、ガラスビーズ、シリカ磁性粒子、またはシリカ含有樹脂が含まれる。オリゴヌクレオチドに結合させた第一のカップリング剤および固定支持体表面に結合させた第二のカップリング剤によってオリゴヌクレオチドに間接的にカップリングさせることができる適切な物質には、アビジンとストレプトアビジン、または抗原とそれに対する抗体が含まれる。
【0035】
固定支持体に結合させる少なくとも1つの標的オリゴヌクレオチドには、DNAフラグメントの中型縦列繰り返し配列の一部分と相補的なヌクレオチド配列が含まれる。本明細書で用いる“部分”という用語は、前述の配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが、当該配列と接触するときにそれとハイブリダイズすることができるように十分な長さを有するDNAフラグメントのITR領域内のヌクレオチド配列を指す。この“部分”は、好ましくは長さが少なくとも20塩基、より好ましくは少なくとも40塩基の配列である。より好ましくは、標的オリゴヌクレオチドは、式(AwGxTyCz)nによって示される式を有する。式中、A、G、TおよびCはヌクレオチドを表し、これらはどのような並び方でもよく;w、x、yおよびzは配列内の各ヌクレオチド数を表し、その範囲は0から7で、w+x+y+zの合計は5から7の間で;nは配列が縦並びに繰り返される回数で、少なくとも約4回、より好ましくは少なくとも約8回、最も好ましくは少なくとも15回である。
【0036】
本方法の工程(c)では、複数のDNAフラグメントは、ITR含有DNAフラグメントが支持体手段とハイブリダイズする条件下で当該支持体手段と混合される。当該複数のフラグメントが複数の二本鎖DNAフラグメントである場合は、当該DNAは支持体手段とのハイブリダイゼーションの前に変性させる。ハイブリダイゼーションの前に二本鎖DNAフラグメントを変性させる適切な手段には、二本鎖DNAを変性させるために十分に高い温度にDNAを暴露するか、または変性溶液にDNAを暴露することが含まれる。DNAは好ましくは、変性剤(例えば塩基(例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム))を含む変性溶液を用いて変性させる。DNAフラグメントを変性させるために塩基が用いられる場合は、得られる混合物のpHは、好ましくはpH約4.8から当該混合物のpHの緩衝液を添加することによってほぼ中性pHに調節される。
【0037】
いったんDNAフラグメントが支持体手段にハイブリダイズしたら、好ましくはこの支持体手段を洗浄して、DNAフラグメントを除去し、さらに支持体手段が含まれる一切の溶液中に存在する一切の他の物質、またはハイブリダイズしなかった支持体手段の表面に存在する一切の他の物質を除去する。使用されるいずれの洗浄溶液も、好ましくは支持体手段とハイブリダイズしたDNAフラグメントを遊離させることなくそのような物質を除去するように構成される。
【0038】
支持体手段とハイブリダイズしたDNAフラグメントは、支持体手段とDNAフラグメントとの結合の性質にしたがって熱または適切な遊離溶液を用いて、支持体手段から遊離させることができる。例えば、水または低塩類水溶液(例えばTE緩衝液(例えば10mMトリス−HCl(pH7.5)、1mMのEDTA))を用いて、シリカ材料で構成された支持体手段とハイブリダイズしたDNAフラグメントを遊離させることができる。支持体手段から一度遊離させたら、得られた遊離DNAフラグメントの混合物に存在する他のDNAフラグメントからITR配列を含むDNAをさらに単離するためにDNAフラグメントを処理することができる。さらなる処理工程は、上記の本方法にしたがって再ハイブリダイゼーションおよびスクリーニング、またはDNAベクターへのクローニングおよびこれらクローンによる形質転換体のスクリーニングを含むことができる。
【0039】
図1は、ITRを含むDNAフラグメントを単離する方法の好ましい実施態様を示す。この態様では、DNAフラグメント集団を調製し、支持体手段とハイブリダイズさせ、さらに増幅、クローニングおよびITR含有形質転換体をスクリーニングする。図1に示す工程の各々はローマ数字で表示されている。工程Iは二本鎖DNA分子(1)を示し、これは制限酵素(2)で消化され、サイズの異なるDNAフラグメント集団(図には示されていない)を生じ、そのうちの少なくとも1つは標的ITRを含む。工程IおよびIIの間の矢印はリンカー(3)を示し、これはDNAフラグメント集団に添加され、異なる2種類のDNAフラグメント(標的ITR配列を含むフラグメント(6)と標的配列を含まないフラグメント(4))の各々の末端にリンカー(3)をもつリンカー連結フラグメント(8)集団を生じる。各リンカー(3)のプライミング配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー(7)を工程IIIのDNAフラグメント(8)集団に添加し、PCR反応により増幅し、それによって増幅DNAフラグメント(9)の集団を製造する。工程増幅DNAフラグメント(9)の集団を容器(15)にハイブリダイゼーション溶液(12)およびフィルター(10)とともに入れる。このフィルター(10)には、標的ITR配列の一部分と相補的な配列を有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドが結合されている。ハイブリダイゼーション溶液は、ITR配列を含むDNAフラグメントのフィルターへのハイブリダイゼーションを促進する。工程Vでは、フィルター(10)を容器(15)から取り出し、それにハイブリダイズしたDNAフラグメントを当該フィルターから遊離させる。得られた遊離フラグメントの濃縮集団を、工程IIIの増幅反応で用いたものと同じオリゴヌクレオチドプライマー(7)を用いて工程VIで再度増幅させる。最後に、工程VIIで濃縮増幅DNAフラグメント集団の各々のフラグメントをプラスミドベクターでクローニングする。標的ITR配列(6)を含むフラグメントをクローニングしたベクターおよびITR配列を含まないフラグメント(4)をクローニングしたベクターが工程VIIに示されている。
【0040】
C.スリップ増幅が低い多形性ITRを検出する方法:
標的ITR配列を有するDNAサンプルの標的ITR配列を本方法のこの具体的な実施態様で検出するとき、最小のスリップ増幅人工生成物が観察される。観察された平均スリップ増幅人工生成物は好ましくは1.1%未満、より好ましくは0.9%未満である。標的ITR配列は完全なITRでも、不完全なITR配列でもよい。検出されるDNAサンプルは好ましくはゲノムDNAである。
平均スリップ増幅人工生成物は好ましくはDNAサンプルのITR配列の増幅後に検出される。
【0041】
D.プライマー、プローブおよびマーカー
本発明はまた、配列番号:1−43として下記の配列表で特定したDNAマーカー、プライマー(各プライマーは、これら43配列の1つによって特定されたDNAマーカーの1つのITR領域に隣接する配列と相補的な配列を有する)、およびプローブ(43マーカーの1つのITR領域内に含まれる配列と相補的な配列を有する)を含む。下記の実施例で説明する実験で特定された特に好ましいプライマーは表1に列挙する。
下記の実施例は説明のために提供され、本発明を全く制限しようとするものではない。実施例では、全ての百分率は、固体については重量により、液体については容積による。全ての温度は特に記載がなければ摂氏である。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【実施例】
【0048】
実施例1:完全ゲノムPCRライブラリーの構築
本実施例および下記の実施例2で用いる個々の増幅およびハイブリダイゼーション選別は、文献に記載された選別方法の改変様式である(J. Armor et al.(1994) Hum. Mol. Genet. 3(4):599-605))。
ヒトゲノムDNAは、15人から得た全血プールから標準的フェノール:クロロホルム抽出法("Current Protocols in Human Genetics"(1994), J. Gilber, ed., Appendix)を用いて精製した。
DNA1μg当たり5単位のMboI制限酵素を用いて、約100μgのゲノムDNAを16時間37℃で切断し、続いてフェノール:クロロホルム抽出、エタノール沈澱で精製し、さらに100μlのTE緩衝液(10mMトリス−HCl、1mMのEDTA(pH8.0))に最終濃度約1μg/mlでDNAを再懸濁した。
サイズが250−600bpの範囲のDNAフラグメントを1%SeaKemGTG(FMC Bio Products, Rockland, Maine)調製用アガロースゲル(15x20cm)上で100Vで1.25時間ゲル電気泳動を実施して単離し、電気溶出(リファレンス)によって回収した。A260での吸収を測定してDNAを定量し、滅菌したナノピュア純度の水で500ng/μlに希釈して−20℃で保存した。
【0049】
リンカーは、等モル量のオリゴA(5’−GCG GTA CCC GGG AAG CTT GG−3’)および5’燐酸化オリゴB(5’−GAT CCC AAG CTT CCC GGG TAC CGC−3’)を最終濃度1000ピコモル/μlでアニールして調製した。サイズ選別した挿入DNA(平均サイズ425bpを3.5ピコモル)1μgを13μg(875ピコモル)のリンカー(リンカー:挿入物モル比は250:1)と1−3単位のT4DNAリガーゼを16時間15℃で用いて連結した。過剰なリンカーおよびリンカー二量体はゲル電気泳動(1%SeaKem GTGアガロース、1.5時間、100V)で主要フラグメントから分離した。リンカー連結DNAフラグメントを電気溶出によってゲルから回収し、50μlの滅菌水に再懸濁した。
【0050】
連結リンカーをもつDNA(50ng)を、10μlの10XSTR緩衝液(500mMのKCl、100mMトリス−HCl(pH9.0)、15mMのMgCl2、1%トリトンX−100および2mMの各dNTP)、1μlのTaqポリメラーゼ(5単位/μl)、および1μMのオリゴAプライマー(10ピコモル/μlのストックの10μl)を含む100μlの反応容積でPCRを用いて増幅した。この反応でプライマーとして用いた“オリゴA”は、上記のようにMboIリンカーを集めるために用いた“オリゴA”と同じである。循環条件は95℃1分、67℃1分、70℃2分で30サイクルであった。dNTP、プライマーおよびプライマー二量体はセントリコン100による微小ろ過で除去した(2mlの滅菌水をサンプルに添加し、セントリコン−100に加え、2000RPMで20分遠心し、セントリコンフィルターを逆にしてさらに2分2000RPMで遠心してDNAを回収し、100μlの滅菌蒸留水に再懸濁した)。
得られたPCRライブラリーの5μlの部分標本を1%アガロースゲルで検査し(100ボルトで1時間)、サイズ範囲が250から600bpであることを確認した。
【0051】
実施例2:ハイブリダイゼーション選別による5ヌクレオチド繰り返しの濃縮 実施例1にしたがって製造した完全ゲノムPCRライブラリーから得た種々の異なる繰り返しを含むDNAフラグメントを、固形支持体に結合させた種々のオリゴヌクレオチド混合物を用いてハイブリダイゼーションによって濃縮した。(AAAAX)nの5ヌクレオチド繰り返しを含むフラグメントをハイブリダイゼーション選別によって濃縮した。この工程は、先ずハイブリダイゼーション選別で使用するオリゴヌクレオチドを構築することによって達成された。このオリゴヌクレオチド構築物は、長さが1000bpの中に(AAAAC)n、(AAAAG)nおよび(AAAAT)nが縦並びに並べられたものから成る。これらのオリゴヌクレオチドを膜に固定し、完全ゲノムPCRライブラリーとハイブリダイズさせて(AAAAX)nの繰り返しを含むフラグメントを選別した。
【0052】
オリゴヌクレオチドアレイは以下のように構築した:(a)5’−燐酸化30量体オリゴヌクレオチドである〔AAAAC〕6、〔AAAAG〕6、および〔AAAAT〕6並びにそれらの相補物、〔GTTTT〕6、〔CTTTT〕6および〔ATTTT〕6を合成し、ナノピュアの純度の水に1000ピコモル/μlの濃度で懸濁し、(b)相補配列をもつ等モル濃度(各々10μlまたは10ナノモルもしくは198μgを用いた)のオリゴヌクレオチドを混合し、65℃で15分加熱し、さらに数時間4℃に置いて互いにアニールさせ、(c)続いてDNA1μgにつき1ワイス単位のT4DNAリガーゼを15℃で一晩用いてアニールしたオリゴヌクレオチドを互いに連結し、(d)200bp以上の連鎖体を1%SeaKemGTGアガロースでサイズ選別し、(e)連結DNAをプライマー非含有PCRに付して縦列アレイを延長し、(f)見かけのサイズが1000bpを越えるフラグメントを1%アガロースゲルから回収し、微小ろ過によって精製した。A260での吸収を求め、ナノピュア純度の滅菌水で1μg/μlのストックを作製した。
【0053】
合計1μgのオリゴヌクレオチド、(AAAAC)200、(AAAAG)200または(AAAAT)200で4mmx4mm片のナイロン製ハイボンドNfp膜(Amersham Life Sciences, Inc)フィルターにスポットを作製し、2回予備ハイブリダイゼーション緩衝液で30分攪拌しながら洗浄して弱く結合したオリゴを除去して風乾し、DNAを結合させるために1200μジュールでUV架橋連結を施し、続いて−20℃で保存した。
【0054】
上記のようにナイロンフィルターに結合させたオリゴヌクレオチドを有する支持媒体との完全ゲノムPCRライブラリーのハイブリダイゼーション選別は、以下のように実施した:(a)1mlの予備ハイブリダイゼーション緩衝液〔1%BSA(Sigma B-4287)、1mMのEDTA(pH8.0)、7%(w/v)のSDS、0.5MのMa2HPO4〕で、前述のフィルターを(AAAAC)nおよび(AAAAG)nの配列を有するオリゴヌクレオチドを含むフィルターについては40℃で、さらに(AAAAT)nの配列を含むフィルターについては37℃で予備ハイブリダイズした。20分後に緩衝液を除去し、100μlの新しい予備ハイブリダイゼーション緩衝液を添加し、(b)完全ゲノムPCRライブラリーDNA(20μg)をアルカリ(KOH、最終濃度150mM)で変性させ、さらに0.25容の1Mトリス−HCl(pH4.8)を加えて中性にし、フィルターを含む緩衝液に加えた。得られた反応混合物を予備ハイブリダイゼーション温度(37℃または40℃)で一晩保温し、(c)(AAAAC)200および(AAAAG)200フィルターを2回1mlの洗浄緩衝液#1(40mMのNa2HPO4(pH7.2)、0.1%SDS)で40℃で洗浄し、さらに1回室温で15分攪拌しながら洗浄した。(AAAAT)200のフィルターは1mlの洗浄緩衝液#1で1回37℃で洗浄し、さらに1回室温で洗浄し、(d)各フィルターに結合したDNAを95℃で5分、100μlのナノピュア純度の水の中で加熱して遊離させた。再アニーリングを95℃で防止しながらサンプルを取り出した。フィルターは、0.4MのNaOHで45℃30分保温し、続いて0.1xSSC、0.1%SDS、0.2Mトリス(pH7.5)に移し、さらに15分保温することによって清浄にし再使用した。膜にブロットを付け乾燥させ、栓をした試験管に入れて−20℃で保存した。
【0055】
実施例3:5ヌクレオチド繰り返しが濃縮されたDNAフラグメントライブラリーのクローニング
実施例2のようにして5ヌクレオチド繰り返しが濃縮されたDNAフラグメント集団をPCRによって再度増幅した。続いて再増幅フラグメントを下記に述べるようにプラスミドベクターpGEM−3Zf(+)でクローニングした。この工程は、選別挿入物をpGEMベクターに連結し、続いて環状プラスミドでJM109大腸菌ホストを形質転換することによって実施された。
【0056】
挿入物とベクターとの連結は以下のように実施した:(a)ハイブリダイゼーションで選別した5μlのDNAを100μlの反応容積で以下を用いて再増幅した:1XSTR緩衝液(50mMのKCl、10mMトリス−HCl(pH9.0)、1.5mMのMgCl2、0.1%トリトンX−100および各dNTPを0.2mM)、1μlのTaqポリメラーゼ(5単位/μl)、および1μMのオリゴAプライマー(100ピコモル/μlのストックを1μl)。循環条件は95℃1分、67℃1分、70℃2分で30サイクル。(b)11μlのプロメガ制限酵素10X緩衝液Cおよび2μl(8単位/μl)のMboIを100μlのPCR反応に添加し、得られた反応混合物を37℃で一晩保温し、65℃で20分混合物を保温して制限酵素を熱不活化することによって、再増幅したDNAを消化した。(c)pGEM−3Zf(+)ベクター(約20μgまたは10.6ピコモル)を、BamHI(5単位/μg)で16時間37℃で消化し、続いて適切な量のウシ腸アルカリホスフェート(Calf Intestinal Alkaline Phosphate, CIAP)10X緩衝液(Promega)および1 μlのCIAP(単位/μl)を加え、さらに37℃で1時間保温してフラグメント挿入のために準備した。
この反応を0.5MのEDTAを0.02Mの最終濃度で添加して停止し、続いてフェノール抽出しエタノールで沈澱させTE緩衝液に1μg/μlで再懸濁させた。(d)最後に1μlまたは200ngの脱燐酸pGEM3Zf(+)(工程c参照)および1μlのT4DNAリガーゼ(1から3単位/μl)とともに、MboIで切断したDNA1μl(工程b参照)を2時間室温で保温して、20μlの挿入物−ベクター連結を実施した。
最後に、テクニカルブリテン#095に記載されたプロメガ形質転換プロトコルを用いて、10μlの挿入物−ベクター連結反応物で100μlのJM109コンピテント細胞を形質転換した。
【0057】
実施例4:(AAAAX)n5ヌクレオチド繰り返しを含む小挿入物ゲノムライブラリークローンのコロニーハイブリダイゼーションによる選別
ライトスミスII試薬およびプロトコル(プロメガテクニカルブリテン#TM227を参照)を用いてコロニーハイブリダイゼーションスクリーニングによって、(AAAAX)n5ヌクレオチド繰り返しを含むクローンを選別し、アルカリホスファターゼ共役プローブとのハイブリダイゼーションにより可視化した。
【0058】
細菌のコロニーを含む平板上にマグナグラフ(MagnaGraph)ナイロン膜(Micron Separations, Inc. Westboro, MA)を静置し、3分間放置して膜にコロニーDNAを移し、続いて乾燥濾紙にブロッティングした。次に、以下を含む一連のトレーに膜を移した:10%SDSで3分、続いて変性溶液(5mlのNaOH+30mlのNaCl+65mlの蒸留水から成る)で5分、続いて中和溶液(30mlの5MNaCl+25mlトリス−HCl(pH7.4)+45mlの蒸留水から成る)で5分、最後に2XSSCで5分。続いて膜を室温で30分乾燥させ、その後スタータリンカー(Statalinker(登録商標)、Stratagene, La Jolla, CA)を用いて1200μジュールでUV架橋する。
【0059】
(AAAAX)n繰り返しをもつクローンを含むコロニーの検出は、AP共役プローブおよび化学発光を用いて実施した。AP共役プローブとハイブリダイズさせたフィルターでX線フィルムを感光させることによって、所望のクローンを含むコロニーが表示された。第二のハイブリダイゼーションは最初の結果を確認するために実施した。
【0060】
この検出工程はプロメガ(Promega)のライトスミスIIキットを用いた(この工程の詳細な説明はプロメガブリテン#TM227を参照のこと)。簡単に記せば、使用した検出方法は以下の工程から成る:(a)フィルターをクォンタムイールド(Quantum Yield(登録商標))封鎖溶液(プロメガカタログ番号F1021)で45分56℃で激しく攪拌しながら保温し、(b)封鎖溶液を捨て、APプローブを含む膜の単位cm2当たり0.05mlのクォンタムイールド(登録商標)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション溶液(プロメガカタログ番号F1231)を加え、激しく震盪しながら56℃で45分保温し、(c)ハイブリダイゼーション溶液/プローブをフィルターから除き、フィルターを2回150−200mlの予め加温した洗浄溶液#1(2XSSC、0.1%SDS)で56℃で10分洗浄し、(e)全てのフィルターを一緒にし、洗浄溶液#2(1XSSC)で1回室温で10分洗浄し、(f)ブロットを200mlの100mMジエタノールアミン、1mMのMgCl2中で5分間平衡化させ、(f)十分な0.25mMのCDP−スター基質(Tropix, Bedford, MA)を加えてフィルターを飽和させ、続いて少なくとも5分室温で保温し、(g)この基質飽和フィルターをハイブリダイゼーションホルダー内のポリスチレンプラスチックシートプロテクター上に置き、ホルダーを閉じ、(h)フィルムカセットにフィルターを含むハイブリダイゼーションホルダーを置き、その中のフィルターでX線フィルムを感光させ、(i)少なくとも1時間、フィルムを感光させた後フィルムを現像する。
【0061】
実施例5:DNAの配列決定および解析
細胞溶解物を用いる配列決定用鋳型を調製する単純化した方法を開発し、少なくとも1つの(AAAAX)n配列をもつ挿入物を多分に含むであろうと実施例4で同定された多数のクローンの配列を決定した。この方法は以下の工程から成る:陽性クローンをコロニーハイブリダイゼーションアッセイから200μlのLB/Amp(100μg/ml)を含む滅菌96穴(ウェル)マイクロプレート(Falcon Cat.#3072)に移し、一晩37℃で250rpmで保温する。次にこの一晩培養を分割し、以下の3つの異なる工程で用いた:細胞溶解物の作製、最初の観察を確認するための第二のハイブリダイゼーション用レプリカフィルター作製、またはクローンの長期保存用グリセロールストックの作製。
【0062】
細胞溶解物は2μlの一晩培養を取り、これを96穴反応プレート(Perkin Elmaer cat.#N801-0560)に入れた100μlのナノピュア純度の滅菌水に加え、9600サーモサイクラーで4分100℃で加熱して作製した。これを冷却し氷結させ、使用まで−20℃で保存した。
96ピンのレプリケーターを火炎滅菌し、このレプリケーターを一晩培養を含む96穴プレートに浸漬し、LB/Amp(100μg/ml)プレート上の137mmの丸いナイロン膜(MagnaGraph, MSI)に押しつけ、この膜を一晩37℃で保温して、第二のハイブリダイゼーションアッセイ用複製フィルターを作製した。
残りの一晩培養は、46μlの80%グリセロールを各ウェルに加えてグリセロールストックにし、250rpmに設定した振盪培養機に数分間プレートを置いて混合し、続いて−70℃で保存した。
【0063】
2つのコロニーハイブリダイゼーションアッセイで陽性であった全てのクローンを選別し、細胞溶解物プレートから得た対応するクローンをPCR増幅に用いた。PCR反応生成物をキアゲンキアクイック(Qiagen QIAquick)96PCR精製プレート(カタログ番号#28180)で精製し、配列決定のために鋳型を用いた。2μlの細胞溶解物を50μlのPCR反応物で用いた。当該反応物は、2μMのM13−47前進方向プライマー(プロメガカタログ番号#Q560A)、2μMのM13逆方向プライマー(プロメガカタログ番号#Q542A)、1XSTR緩衝液、および2.5単位のAmpliTaq(Perkin Elmer)を含んでいた。以下の循環プロフィールをPE480サーモサイクラーで使用した:96℃/2分で1サイクル、94℃/1分、56℃/1分、70℃/1.5分で10サイクル;90℃/1分、56℃/1分、70℃/1.5分で20サイクル;4℃で保持。PCR反応生成物は、キアゲンキアクイック96PCR精製プレート(カタログ番号#28180)を用い製造元のプロトコルにしたがいクリーンアップし、70μlのトリス−HCl10mM(pH8.5)に最終濃度約35ng/μlで回収し、−20℃で保存した。
【0064】
DNA配列決定は、ABIダイターミネーターシークェンシングケミストリー(ABI Dye Terminator Sequencing Chemistry)およびABI377シークェンサーを用いて実施した。配列決定用鋳型はABIダイターミネーターキットおよび製造元のプロトコル(プロトコルP/N402078)を用いて調製した。2μlまたは約30から90ngの精製PCR生成物(上記)を配列決定反応の鋳型DNAとして用いた。配列決定反応物は、8μlのダイターミネーターミックス、2μlの鋳型DNA(35ng/μl)、4μlのM13−21前進方向プライマー(0.8μM)および6μlのナノピュア純度の滅菌水から成っていた。
ジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム9600でのサイクルシークェンシングの循環プロフィールは以下のとおりであった:96℃/10秒、50℃/5秒、60℃/4分で25サイクル;4℃で保持。伸長生成物は50μlの95%エタノールおよび2μlの酢酸ナトリウム(3M)(pH4.6)を各試験管に添加し、ボルテックスミキサーを用いて混合し、氷上に10分静置し、続いて最大速度で30分遠心して精製した。ペレットを150μlの70%エタノールで洗浄し、真空遠心で約3分乾燥させ、乾燥状態で使用まで−20℃で保存した。乾燥ペレットは6−9μlのローディング緩衝液に再懸濁し、続いて2分95℃で変性させ、ゲルに添加するまで氷上で保存した。
【0065】
5%のロングレンジャー(Long Ranger)ゲル(FMC BioProducts, Rockland, ME)を製造元のプロトコルにしたがって調製し、2時間重合させた。ゲルを45分1000ボルトで予備泳動した。ローディング緩衝液中の1.5μlの鋳型をゲルに添加し、2Xまたは4Xの条件下でそれぞれ3.5時間または7時間泳動した。
【0066】
ABI377シークェンサーから得られたDNA配列データを整理して一切のpGEMベクター配列を除去し、続いてジネティクスコンピュータグループ=ウィスコンシンパッケージソフト(バージョン9.0)(Madison, WI)を用いて作製した、評価された全てのクローンの配列情報を含むローカルデータベースに入れた。次に、5量体繰り返しの存在、長さおよび配列パターンについてクローンを調べた。続いて5または6以上の繰り返しを含むものをBLAST配列比較プログラム(Altschul et al., 1990)で比較し、複製されたクローンおよびGenBankデータベース(National Center for Biotechnology Information in Besthesda, Maryland, USA)に既に存在するものを特定した。いったん固有のクローンが特定されたら、OLIGOプライマーアナリシスソフト(バージョン5.0)(National Biosciences, Inc., Plymouth, MN)を用いてPCRのためのプライマーをデザインした。
【0067】
実施例6:多形性レベルについてクローンをスクリーニングし染色体上の位置を決定する
多形性についての最初のスクリーニングは、2つのプールしたDNAサンプルで実施した。このサンプルは一方は任意の15人のヒトゲノムDNAを含み、他方はNIGMSヒューマンジネティックミュータントセルレポジトリから得られた54人のCEPH(CEPH Collection DNA Pool, Cat.#NA13421, Coriell Cell Repositories, Camden, NJ)を含む。蛍光で標識したPCRプライマーをゲノムDNAの標的遺伝子座のPCR増幅のために用い、PCR生成物をポリアクリルアミドゲルで分離し、蛍光スキャナーで可視化した。4つの対立形質および50%のヘテロ接合性をもつ遺伝子座を16人のCEPHのDNA(102−1、102−2、884−1、884−2、1331−1、1331−2、1332−1、1332−2、1347−1、1347−2、1362−1、1362−2、1413−1、1413−2、1416−1、1416−2)とともに調べ、予備的なヘテロ接合性値を求めた。続いて同じ遺伝子座のデータさらに分析し、対立形質の数、対立形質の頻度およびヘテロ接合性値を求めた(表2参照)。
【0068】
5量体繰り返し配列を含むことが分かったクローン(4以上の対立形質および50%以上のヘテロ接合性の選別基準を満たす)をマッピングし、正確な染色体上の位置を決定した(表2参照)。マッピングには3つの異なる方法を用いた:(1)染色体上の起源を特定するために、ただ1つのヒト染色体を表す26の体細胞ハイブリッド(Coriell Cell Repositories, Camden, NJ)のNIGMSパネルを用いる体細胞ハイブリッドマッピング;(2)93RHクローン(Schuler et al., 1996)のGeneBridge4RHパネルを用いる放射ハイブリッドマッピング;および標準的減数分裂連鎖マッピングおよびCEPH血族リファレンスパネル由来の8家族(K102、K884、K1347、1362、1331、1332、1413、1416)のCRI−MAPマルチポイント連鎖プログラム(Lander & Green, 1987)によるマッピング。
【0069】
16人のCEPHで70%を越えるヘテロ接合性をもつクローンを、主要な四人種(アフリカ系アメリカ人、白人、アジア人およびスペイン語系アメリカ人を含む)に由来する100人を越える個体を含むより大きな集団で遺伝型および対立形質頻度について調べた。図10および11は、ある集団内の24の異なる個体に由来するゲノムDNAサンプルの2つの異なる多形性ITR遺伝子座から増幅させた対立形質の泳動は大きく変動することを示している(DNAサンプルS02からS25)。この分析で用いたプライマー対の配列については上記の表1を参照されたい。ゲル像は、蛍光標識プライマーを用いて各5ヌクレオチド繰り返し遺伝子座を増幅し、続いてポリアクリルアミドゲルで分離し、FMBIOII蛍光スキャナー(Hitachi Software Engineering America, Ltd., San Francisco, CA)で走査して可視化することによって作製した。各アッセイ遺伝子座について周知の対立形質を含む対立形質ラダーは、電気泳動ゲルの各々の端のレーン(レーンS01およびレーンS26)に含まれている。各遺伝子座を増幅するために用いたプライマー対は、上記の実施例で示したように、クローンS159またはクローンG210から単離されたDNAマーカーの配列の少なくとも一部分と相補的な配列を有する。このプライマー対の配列は、上記の表1でクローンS159およびG210について列挙したプライマー対から選ばれた。
【0070】
多形性スクリーンのためのPCR条件は以下のとおりであった:プールしたDNA鋳型については約200ng、個々のCEPHのDNAについては25ng、1XSTR緩衝液、1単位TaqDNAポリメラーゼおよび1μMの対応するプライマー対を含む25μlの反応物。表2に挙げたクローンの各々を増幅するために用いた各プライマー対の配列は表1に提供されている。各プライマーは表1に挙げた配列番号を割り当てられていることに留意されたい。パーキンエルマージーンアンプPCRシステム9600サーマルサイクラー(Perkin Elmer, Foster City, CA)のための循環条件は以下のとおりであった:96℃1分;続いて94℃30秒、60℃への下降68秒、30秒維持、70℃への上昇50秒、45秒維持の10サイクル;続いて90℃30秒、60℃への下降60秒、30秒維持、70℃への上昇50秒、45秒維持、60℃30分の20サイクル。PCRサンプルは、2.5μlの各サンプルと2.5μlの2Xブロモフェノールブルーローディング溶液とを混合し、95℃で2分加熱して変性させ、氷冷して調製し、続いて各サンプルの3μlを4%ポリアクリルアミドゲルで40Wで50分泳動した。PCR生成物は、FMBIO蛍光スキャナー(Hitachi)で走査して可視化し、添付のソフト(FMBIOアナリシスバージョン6.0)(Hitachi Software Engineering, San Francisco, CA)で分析した。
【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
実施例7:GenBank検索による短い縦列繰り返しの特定
縦並びに繰り返される配列を特定するまた別の方法は、中型縦列繰り返しの有無について米国立遺伝子工学情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))のGenBankを検索することによって実施した。いくつかの方法を用いたが、これらには以下が含まれる:CD−ROMによるGenBank登録をDNASTAR(Madison, WI)のレーザージーンソフトパッケージを用いてバッチ検索する;ジネティクスコンピューターグループ=ウィスコンシンパッケージソフト(バージョン9.0)(Madison, WI)を用いてGenBankをバッチ検索する。
存在する可能性がある5量体の繰り返しを作製する場合、4文字のアルファベット(A、C、GおよびT)から組み立てることができる5文字の言葉には45=1024文字があり、6および7塩基の繰り返しでは6文字および7文字の言葉で46=4096および47=16384の言葉が存在する。しかしながら、固有の繰り返しモチーフの数は、2つの相補的な鎖の同等物のために(例えばAAAATはATTTTと同等である)、さらに環状置換の同等物のために(例えばAATAA...はATAAA...と同等である)顕著に減少する。5塩基繰り返しの場合には、このことは、単ヌクレオチド繰り返し(A5/T5およびC5/G5)を除外したとき5量体繰り返しでは102個の固有種が存在することを意味する。
【0075】
少なくとも3つの連続コピーをもつ5,6および7塩基の繰り返しの固有の組み合わせを全て用いてGenBankのヒトゲノムデータベースを検索した。3つまたは4つ以上の繰り返しコピー(または時に塩基置換をもつコピー)を含む全ての繰り返し領域を特定した。現今の配列データを用いて、繰り返し領域に隣接するプライマーをデザインし、標的遺伝子座をPCR増幅し、実施例6で述べたように多形性の内容を評価した。
【0076】
続いて、GenBankデータベースから得られた情報を用いて組み立てたプライマーを用いて特定した配列を含有する各クローンを、実施例7で述べたように繰り返し配列の内容についてスクリーニングした。ITR配列(すなわちITRマーカー)を含むことが判明した各クローンの配列を配列番号:28から43の1つに割り当てた。そのような各マーカーのITR領域に隣接する配列を含むプライマーの配列については表1を参照されたい。そのようなITRマーカーの各々の配列の特徴を分析した結果の要約については表2を参照されたい。
【0077】
実施例8:PCR人工生成物に対する中型縦列繰り返し遺伝子座の評価(すなわちスリップ増幅百分率)
本明細書に記載したマーカーの多くは新規な種類のマーカーであり、これらでは“スリップ増幅(Stutter)”として知られているPCR人工生成物の発生が少ない(発明の詳細な説明の定義の項を参照されたい)。このような人工生成物の発生はPCR増幅時に、おそらくは反復スリップと称されるDNAポリメラーゼ関連現象の結果として生じる(Levinson & Gutman(1987), Mol. Biol. Evol. 4(3):203-221; Schlotterer & Tautz(1992), NAR 20:211-215)。反復スリップの最終的な結果は、本物の対立形質とは異なる数の繰り返し単位を含むPCR生成物の発生である。PCR時に相当量の増幅スリップが発生すると、増幅生成物はメジャーバンドおよびマイナーバンドとして可視化されるであろう。ここで、メジャーバンドは本物の対立形質に対応し、マイナーバンドは、いくらかの繰り返し配列を含む変型生成物に対応する。
【0078】
異なる遺伝子座に存在するスリップ増幅の量を定量するために、6つのITR遺伝子座(C221、G023、G025、G210、S159および本特許には記載されていない別のITR、S117)および17の5ヌクレオチド縦列繰り返し遺伝子座(F13A01、THO1、TPOX、F13B、FESFPS、D7S820、CSF1PO、D13S317、D8S1179、D16S539、LPL、FGA、D5S818、D3S1358、D18S51、vWAおよびD21S11)をABI377シークェンサーで泳動し、ジェンスキャン(GenScan)ソフト(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて解析した。相対蛍光単位(FRU)で測定したピークの高さを全てのメジャーピーク、および各遺伝子座で精査した25から40人のサンプルで観察されたマイナーピークについて求めた。マイナーピーク(一般に5ヌクレオチドでは本物の対立形質よりも5bp小さく、4ヌクレオチド繰り返しでは4bp小さい)で観察されたRFUのメジャーな本物の対立形質のピークに対する百分率を計算した(表3参照)。
【0079】
ITR遺伝子座S159(図2)およびG210(図3)並びに4ヌクレオチド繰り返し遺伝子座vWA(図4)およびD5S818(図5)のABI377電気泳動図の結果は、ITR遺伝子座ではスリップ増幅が極めて少ないかまたは存在せず、4ヌクレオチド繰り返し遺伝子座については明瞭にスリップ増幅が観察されることを示している。特に、vWA4ヌクレオチド繰り返し遺伝子座の電気泳動図の矢印14および15(図3に複写)、さらにD5S818の4ヌクレオチド繰り返し遺伝子座の電気泳動図の矢印16および17(図5に複写)によって表示されているスリップ増幅人工生成物を参照されたい。これらの明瞭な人工生成物のピークを、図2に示すクローンS159(すなわち配列番号:34によって特定される配列をもつマーカー)から単離されたDNAマーカー、および図4のクローンG210から単離されたDNAマーカー(すなわち配列番号:19によって特定された配列を有するマーカー)の5ヌクレオチド繰り返しの電気泳動図の極めてわずかな人工生成物とを比較されたい。図2−5に複写した個々の電気泳動図は遺伝子座の各々について観察されたスリップ増幅の最も高い発生を示している。
スリップ増幅量のある程度の変動性は全ての遺伝子座で観察された。一般に、最も高い繰り返し数を含む対立形質(塩基対によりそのサイズが表示されている)は最も大きなスリップ増幅量を示す傾向があった。検査した25から40人の各々の百分率スリップ増幅値をスキャタープロットとして示した(図6、7、8および9)。
【0080】
要約すれば、本物の対立形質バンドに対する“スリップ増幅”バンドの百分率は、4ヌクレオチド縦列繰り返し遺伝子座と比較して、調べたITR遺伝子座のほとんどで顕著に低かった。現在知られているこのタイプのマーカーで最良のものである4ヌクレオチド遺伝子座でもこれは真実である。例えば、米連邦捜査局(FBI)は国家の総合DNAインデックスシステム(CODIS)のための全てのDNAサンプル分析で使用するものとして、そのような13個の4ヌクレオチドマーカー(高いスリップ増幅百分率を有すると下記の表3に報告した、記載のようにアッセイした4ヌクレオチドのいくつかを含む)を選択している(I. Macivee (1998) Profiles in DNA 1(3):2)。
【0081】
【表10】

【0082】
【表11】

【符号の説明】
【0083】
1 二本鎖DNA分子
2 制限酵素
3 リンカー
4 標的配列を含まないフラグメント
6 標的ITR配列を含むフラグメント
7 オリゴヌクレオチドプライマー
8 リンカー連結フラグメント
9 増幅DNAフラグメント
10 フィルター
12 ハイブリダイゼーション溶液
15 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むスリップ増幅人工生成物の発生が少ない標的中型縦列繰り返しDNA配列を検出する方法:
(a)少なくとも2回縦並びに繰り返される5、6または7塩基対の配列から成る少なくとも1つの繰り返し単位を含むDNAの一領域である少なくとも1つの標的中型縦列繰り返し配列を有するDNAサンプルを提供し;さらに
(b)観察される平均スリップ増幅人工生成物が2.4%未満である、サンプルDNA中の前記標的中型縦列繰り返し配列を検出する。
【請求項2】
前記標的中型縦列繰り返し配列が完全な中型縦列繰り返し配列である請求項1の方法。
【請求項3】
前記標的中型縦列繰り返し配列が不完全な中型縦列繰り返し配列である請求項1の方法。
【請求項4】
前記工程(a)で提供されるDNAサンプルがヒトゲノムDNAである請求項1の方法。
【請求項5】
前記工程(a)で提供されるDNAサンプルの標的中型縦列繰り返し配列が工程(b)の前に増幅される請求項1の方法。
【請求項6】
鋳型中型縦列繰り返し配列を含む二本鎖DNAマーカーの一領域に隣接し前記DNAマーカーと相補的な配列を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて前記標的中型縦列繰り返し配列を増幅させる請求項5の方法であって、前記鋳型中型縦列繰り返し配列が、少なくとも2回縦並びに繰り返される繰り返し単位配列を含むDNAマーカーの一領域であり、前記DNAマーカーが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43から成る群から選ばれる配列を有することを条件とする請求項5の方法。
【請求項7】
前記標的中型縦列繰り返し配列の増幅に用いられるオリゴヌクレオチドプライマーが、それに共有結合によって付加された蛍光標識を有する請求項6の方法。
【請求項8】
前記スリップ増殖人工生成物が、検出される標的中型縦列繰り返し配列をDNAサイズマーカーで既知の長さをもつフラグメントと比較することによって工程(b)で観察される請求項1の方法。
【請求項9】
観察される平均スリップ増幅が1.1%未満である請求項8の方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、少なくとも2回縦並びに繰り返される5、6または7塩基対の配列から成る少なくとも1つの繰り返し単位を含むDNAサンプルの一領域である標的中型縦列繰り返し配列の少なくとも1つをDNAサンプルで検出する方法:
(a)鋳型中型縦列繰り返し配列を含む二本鎖DNAマーカーの一領域に隣接し前記DNAマーカーと相補的な核酸配列を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを提供し、ここで前記DNAマーカーは配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43から成る群から選ばれる配列を有し;
(b)前記標的中型縦列繰り返し配列を含むDNAサンプルを提供し;
(c)少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、前記DNAサンプルの標的中型繰り返し配列を増幅し;さらに、
(d)前記増幅標的中型縦列繰り返し配列における多形性を検出する。
【請求項11】
前記工程(b)で提供されるDNAサンプルがヒトゲノムDNAサンプルである請求項10の方法。
【請求項12】
前記標的中型縦列繰り返し配列が完全な中型縦列繰り返しである請求項10の方法。
【請求項13】
前記標的中型縦列繰り返し配列が不完全な中型縦列繰り返しである請求項10の方法。
【請求項14】
前記工程(a)で提供されるオリゴヌクレオチドプライマーが以下から成る配列群の1つから選択される配列を含む請求項10の方法:
前記DNAマーカー配列が配列番号:1である場合は、配列番号:44および配列番号:45;
前記DNAマーカー配列が配列番号:2である場合は、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58;
前記DNAマーカー配列が配列番号:3である場合は、配列番号:59および配列番号:60;
前記DNAマーカー配列が配列番号:4である場合は、配列番号:61および配列番号:62;
前記DNAマーカー配列が配列番号:5である場合は、配列番号:63および配列番号:64;
前記DNAマーカー配列が配列番号:6である場合は、配列番号:65および配列番号:66;
前記DNAマーカー配列が配列番号:7である場合は、配列番号:67および配列番号:68;
前記DNAマーカー配列が配列番号:8である場合は、配列番号:69および配列番号:70;
前記DNAマーカー配列が配列番号:9である場合は、配列番号:71および配列番号:72;
前記DNAマーカー配列が配列番号:10である場合は、配列番号:73および配列番号:74;
前記DNAマーカー配列が配列番号:11である場合は、配列番号:75および配列番号:76;
前記DNAマーカー配列が配列番号:12である場合は、配列番号:77および配列番号:78;
前記DNAマーカー配列が配列番号:13である場合は、配列番号:79および配列番号:80;
前記DNAマーカー配列が配列番号:14である場合は、配列番号:81および配列番号:82;
前記DNAマーカー配列が配列番号:15である場合は、配列番号:83および配列番号:84;
前記DNAマーカー配列が配列番号:16である場合は、配列番号:85および配列番号:86;
前記DNAマーカー配列が配列番号:17である場合は、配列番号:87および配列番号:88;
前記DNAマーカー配列が配列番号:18である場合は、配列番号:89および配列番号:90;
前記DNAマーカー配列が配列番号:19である場合は、配列番号:91、配列番号:92、配列番号:93および配列番号:94;
前記DNAマーカー配列が配列番号:20である場合は、配列番号:95および配列番号:96;
前記DNAマーカー配列が配列番号:21である場合は、配列番号:97および配列番号:98;
前記DNAマーカー配列が配列番号:22である場合は、配列番号:99および配列番号:100;
前記DNAマーカー配列が配列番号:23である場合は、配列番号:101および配列番号:102;
前記DNAマーカー配列が配列番号:24である場合は、配列番号:103および配列番号:104;
前記DNAマーカー配列が配列番号:25である場合は、配列番号:105および配列番号:106;
前記DNAマーカー配列が配列番号:26である場合は、配列番号:107、配列番号:108、配列番号:109、配列番号:110および配列番号:111;
前記DNAマーカー配列が配列番号:27である場合は、配列番号:112、配列番号:113、配列番号:114および配列番号:115;
前記DNAマーカー配列が配列番号:28である場合は、配列番号:116および配列番号:117;
前記DNAマーカー配列が配列番号:29である場合は、配列番号:118および配列番号:119;
前記DNAマーカー配列が配列番号:30である場合は、配列番号:120および配列番号:121;
前記DNAマーカー配列が配列番号:31である場合は、配列番号:122および配列番号:123;
前記DNAマーカー配列が配列番号:32である場合は、配列番号:124および配列番号:125;
前記DNAマーカー配列が配列番号:33である場合は、配列番号:126および配列番号:127;
前記DNAマーカー配列が配列番号:34である場合は、配列番号:128および配列番号:129;
前記DNAマーカー配列が配列番号:35である場合は、配列番号:130および配列番号:131;
前記DNAマーカー配列が配列番号:36である場合は、配列番号:132および配列番号:133;
前記DNAマーカー配列が配列番号:37である場合は、配列番号:134および配列番号:135;
前記DNAマーカー配列が配列番号:38である場合は、配列番号:136および配列番号:137;
前記DNAマーカー配列が配列番号:39である場合は、配列番号:138および配列番号:139;
前記DNAマーカー配列が配列番号:40である場合は、配列番号:140および配列番号:141;
前記DNAマーカー配列が配列番号:41である場合は、配列番号:142および配列番号:143;
前記DNAマーカー配列が配列番号:42である場合は、配列番号:144および配列番号:145;
前記DNAマーカー配列が配列番号:43である場合は、配列番号:146および配列番号:147。
【請求項15】
標的中型縦列繰り返し配列が、少なくとも2回縦並びに繰り返される5、6または7塩基対の配列から成る少なくとも1つの繰り返し単位を含むDNAサンプルの一領域である、DNAサンプル中の標的中型縦列繰り返し配列の少なくとも1つをDNAサンプルで検出するキットであって:
少なくとも1つの標的中型縦列繰り返し配列を増幅させる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを有する容器であって、前記オリゴヌクレオチドプライマーが、少なくとも2回縦並びに繰り返される繰り返し単位を含む鋳型中型縦列繰り返し配列を含む二本鎖DNAマーカーの一領域に隣接し前記DNAマーカーと相補的な核酸配列を含み、さらに前記DNAマーカーが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40、配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43から成る群から選ばれる配列を有する前記検出用キット。
【請求項16】
さらにDNAマーカーを含む請求項15のキット。
【請求項17】
少なくとも2回縦並びに繰り返される5、6または7塩基対の配列から成る少なくとも1つの繰り返し単位を含む二本鎖DNAマーカーの一領域である鋳型中型縦列繰り返し配列と隣接する二本鎖DNAマーカーの一方の鎖と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記二本鎖DNAマーカー配列が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26および配列番号:27から成る群から選ばれる前記オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチドプライマーが以下から成る群から選ばれる配列を含む請求項17のオリゴヌクレオチドプライマー:
前記DNAマーカー配列が配列番号:1である場合は、配列番号:44および配列番号:45;
前記DNAマーカー配列が配列番号:2である場合は、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:49、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57および配列番号:58;
前記DNAマーカー配列が配列番号:3である場合は、配列番号:59および配列番号:60;
前記DNAマーカー配列が配列番号:4である場合は、配列番号:61および配列番号:62;
前記DNAマーカー配列が配列番号:5である場合は、配列番号:63および配列番号:64;
前記DNAマーカー配列が配列番号:6である場合は、配列番号:65および配列番号:66;
前記DNAマーカー配列が配列番号:7である場合は、配列番号:67および配列番号:68;
前記DNAマーカー配列が配列番号:8である場合は、配列番号:69および配列番号:70;
前記DNAマーカー配列が配列番号:9である場合は、配列番号:71および配列番号:72;
前記DNAマーカー配列が配列番号:10である場合は、配列番号:73および配列番号:74;
前記DNAマーカー配列が配列番号:11である場合は、配列番号:75および配列番号:76;
前記DNAマーカー配列が配列番号:12である場合は、配列番号:77および配列番号:78;
前記DNAマーカー配列が配列番号:13である場合は、配列番号:79および配列番号:80;
前記DNAマーカー配列が配列番号:14である場合は、配列番号:81および配列番号:82;
前記DNAマーカー配列が配列番号:15である場合は、配列番号:83および配列番号:84;
前記DNAマーカー配列が配列番号:16である場合は、配列番号:85および配列番号:86;
前記DNAマーカー配列が配列番号:17である場合は、配列番号:87および配列番号:88;
前記DNAマーカー配列が配列番号:18である場合は、配列番号:89および配列番号:90;
前記DNAマーカー配列が配列番号:19である場合は、配列番号:91、配列番号:92、配列番号:93および配列番号:94;
前記DNAマーカー配列が配列番号:20である場合は、配列番号:95および配列番号:96;
前記DNAマーカー配列が配列番号:21である場合は、配列番号:97および配列番号:98;
前記DNAマーカー配列が配列番号:22である場合は、配列番号:99および配列番号:100;
前記DNAマーカー配列が配列番号:23である場合は、配列番号:101および配列番号:102;
前記DNAマーカー配列が配列番号:24である場合は、配列番号:103および配列番号:104;
前記DNAマーカー配列が配列番号:25である場合は、配列番号:105および配列番号:106;
前記DNAマーカー配列が配列番号:26である場合は、配列番号:107、配列番号:108、配列番号:109、配列番号:110および配列番号:111;および
前記DNAマーカー配列が配列番号:27である場合は、配列番号:112、配列番号:113、配列番号:114および配列番号:115。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2009−254388(P2009−254388A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185861(P2009−185861)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【分割の表示】特願2000−530608(P2000−530608)の分割
【原出願日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】