説明

中心位置決定方法および中心位置決定装置

【課題】撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出すること。
【解決手段】円形物の中心位置を検出する中心位置決定装置に適用される中心位置決定方法であって、円形物の画像を中心位置決定装置が取得し、取得された画像の特徴に基づいて円形物の仮の中心を中心位置決定装置が設定し、設定された仮の中心について取得された画像を極座標変換した画像を中心位置決定装置が取得し、取得された画像に基づいて円形物における外周部の軌道を中心位置決定装置が検出し、検出された外周部の軌道に基づいて円形物の仮の中心を真の中心位置へ中心位置決定装置が補正するよう中心位置決定方法および中心位置決定装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円形物の中心位置を検出する中心位置決定方法および中心位置決定装置に関し、特に、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出することができる中心位置決定方法および中心位置決定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、円形物の画像をカメラで撮像し、撮像された画像の各画素値を所定方向に加算したヒストグラム等を用いて、円形物の画像の中心位置を決定する中心位置決定手法が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、搬送される硬貨に光を照射して画像を撮像し、撮像された硬貨の画像を構成する各画素の明るさ(以下、「輝度」と記載する)に基づいて硬貨の中心位置を決定する中心位置決定手法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献1と同様の手法で硬貨の中心位置を決定し、決定された中心位置に基づいて硬貨の直径や硬貨の特徴を示す模様部分の画像の切り出しを行う硬貨真偽判定装置が開示されている。
【0005】
かかる硬貨真偽判定装置では、検出された直径から金種を判定し、切り出された模様部分と予め金種別に記憶されるテンプレートとを照合することによって硬貨の真偽判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−259320号公報
【特許文献2】特許第3718613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の中心位置決定手法では、中心位置の決定精度が低いという問題があった。具体的には、硬貨が搬送中になんらかの理由によって浮いてしまった場合、撮像された硬貨の外周部がゴミの付着等で不鮮明となったり、映らない場合等がある。
【0008】
この場合、特許文献1の中心位置決定手法では、たとえば、内部の模様部分を硬貨の外周部と誤って判定してしまう。また、特許文献1の中心位置決定手法では、硬貨の外周部付近にゴミが付着していた場合には、ゴミを含めた外周部を検出してしまう。
【0009】
このように、特許文献1の中心位置決定手法では、外周部が誤検出されることによって、本来の硬貨の中心位置とは異なる位置を中心位置と決定してしまうこととなる。このため、特許文献1の中心位置決定手法を用いる特許文献2の硬貨真偽判定装置では、金種判定および真偽判定の精度が低くなるという問題があった。
【0010】
これらのことから、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出することができる中心位置決定方法および中心位置決定装置をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0011】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出することができる中心位置決定方法および中心位置決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、円形物の中心位置を検出する中心位置決定装置に適用される中心位置決定方法であって、前記円形物の画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程によって取得された画像の特徴に基づいて前記円形物の仮の中心を設定する仮中心設定工程と、前記仮中心設定工程によって設定された前記仮の中心について前記画像取得工程によって取得された画像を極座標変換した画像を取得する極座標画像取得工程と、前記極座標画像取得工程によって取得された画像に基づいて前記円形物における外周部の軌道を検出する外周検出工程と、前記外周検出工程によって検出された前記外周部の軌道に基づいて前記円形物の前記仮の中心を真の中心位置へ補正する中心補正工程とを含んだことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記極座標画像取得工程は、少なくとも前記外周部を含むように前記仮の中心を中心とする2つの同心円を設定するとともに、設定された2つの前記同心円によって囲まれる部分画像を極座標変換し、前記外周検出工程は、前記極座標画像取得工程によって極座標変換された前記部分画像に基づいて前記外周部を検出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記外周検出工程は、検出された前記軌道を平滑化することによって該軌道を補正する外周補正工程をさらに含み、前記中心補正工程は、前記外周補正工程によって補正済みの前記軌道に基づいて前記円形物の前記仮の中心を前記真の中心位置へ補正することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記中心補正工程は、前記外周部の軌道上の位相差が180度となる2点について当該2点間の距離を前記外周部上の複数箇所について算出し、算出した前記距離に基づいて前記円形物の仮の径を求めることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記の発明において、中心が前記真の中心位置であり半径が前記仮の径である円周上の所定の点から前記仮の中心までの距離を表わす周期関数に対して前記軌道上の点を代入することによって前記真の中心位置と前記仮の中心とのずれ量を算出し、算出した前記ずれ量を用いて前記仮の中心を前記真の中心位置へ補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円形物の中心位置を検出する中心位置決定装置に適用される中心位置決定方法であって、円形物の画像を中心位置決定装置が取得し、取得された画像の特徴に基づいて円形物の仮の中心を中心位置決定装置が設定し、設定された仮の中心について取得された画像を極座標変換した画像を中心位置決定装置が取得し、取得された画像に基づいて円形物における外周部の軌道を中心位置決定装置が検出し、検出された外周部の軌道に基づいて円形物の仮の中心を真の中心位置へ中心位置決定装置が補正することとしたので、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明によれば、少なくとも外周部を含むように仮の中心を中心とする2つの同心円を設定するとともに、設定された2つの同心円によって囲まれる部分画像を中心位置決定装置が極座標変換し、極座標変換された部分画像に基づいて外周部を中心位置決定装置が検出することとしたので、外周検出処理にかかる記憶容量や処理時間を抑制することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明によれば、検出された軌道を平滑化することによって該軌道を中心位置決定装置が補正し、補正済みの軌道に基づいて円形物の仮の中心を真の中心位置へ中心位置決定装置が補正することとしたので、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明によれば、外周部の軌道上の位相差が180度となる2点について当該2点間の距離を外周部上の複数箇所について算出し、算出した距離に基づいて円形物の仮の径を中心位置決定装置が求めることとしたので、高精度に円形物の仮の中心を補正することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明によれば、中心が真の中心位置であり半径が仮の径である円周上の所定の点から仮の中心までの距離を表わす周期関数に対して軌道上の点を代入することによって真の中心位置と仮の中心とのずれ量を算出し、算出したずれ量を用いて仮の中心を真の中心位置へ中心位置決定装置が補正することとしたので、幾何学的に補正を行うことによって高精度に円形物の中心位置を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に係る中心位置決定手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る硬貨処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、仮の中心の設定を説明する図である。
【図4】図4は、部分画像の切り出しの一例を示す図である。
【図5】図5は、部分画像の極座標変換処理について説明する図である。
【図6】図6は、外周部の検出手法の一例を示す図である。
【図7】図7は、外周部の補正手法その1の一例を示す図である。
【図8】図8は、基準径の算出手法の一例を示す図である。
【図9】図9は、仮の中心の補正手法の一例を示す図である。
【図10】図10は、外周部の補正手法その2の一例を示す図である。
【図11】図11は、硬貨処理装置が実行する中心位置決定処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、硬貨処理装置が実行する外周部・中心位置補正処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、部分画像の切り出しの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0023】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る中心位置決定方法および中心位置決定装置の実施例を詳細に説明する。まず、実施例の詳細な説明に先立って、本発明に係る中心位置決定手法の概要について図1を用いて説明する。なお、以下では、円形物が硬貨である場合について説明することとする。
【0024】
図1は、本発明に係る中心位置決定手法の概要を示す図である。以下では、まず、同図の(A)を用いて従来の中心位置決定手法の概要を説明し、同図の(B)を用いて本発明に係る中心位置決定手法の概要を説明する。なお、図1の(A)および(B)は、硬貨の画像を上方から見た図であり、以下では同図右上に示すような座標軸を適宜用いて説明を行うこととする。
【0025】
まず、図1の(A)に示したように、従来の中心位置決定手法では、硬貨の画像を撮像し、撮像された硬貨の画像を構成する各画素の明るさ(以下、「輝度」と記載する)を所定方向に加算したヒストグラムを用いて、硬貨の外周部を検出する。
【0026】
具体的には、Y軸方向に各画素の輝度を加算したヒストグラム(図1の(A)下部参照)を作成し、X軸の正方向側から負方向にヒストグラムの輝度が閾値を超えた位置を、硬貨の外周部Aとする。また、X軸の負方向側から正方向に、ヒストグラムの輝度が閾値を超えた位置を、硬貨の外周部Bとする。
【0027】
そして、従来の中心位置決定手法では、外周部Aと外周部Bとの中点を硬貨の中心位置のX座標とする。Y座標については、X軸方向に各画素の輝度を加算したヒストグラムに基づいて硬貨の中心位置のY座標を求める。
【0028】
しかし、従来の中心位置決定手法は、図1の(A)に示したように硬貨の端にゴミが付着していた場合は、撮像されたゴミ部分の輝度もヒストグラムに加算されてしまい、X軸の正方向側からは実際の外周部より外側の外周部Aが検出されてしまう。したがって、従来の中心位置決定手法では、実際の中心位置とは異なる位置を中心位置としてしまう場合がある。
【0029】
また、従来の中心位置決定手法を用いた硬貨真偽判定装置では、上述した中心位置決定手法で求められた中心位置に基づいて行われる金種判定および真偽判定の結果についても、正確性を欠くこととなってしまう。
【0030】
そこで、本発明に係る中心位置決定手法では、撮像された画像を極座標で表される形式から2次元の直交座標平面上へ変換し、このように座標変換された画像からすべての外周部を検出し、検出された外周部の軌道に基づいて仮の中心を真の中心位置へ補正することとした。
【0031】
具体的には、本発明に係る中心位置決定手法は、図1の(B−1)に示したように、まず、仮の中心を算出する。ここで、仮の中心の算出手法については、従来と同様に、撮像された硬貨の画像を構成する各画素の輝度のヒストグラムに基づく手法を用いることができる。
【0032】
そして、図1の(B−1)の点線に示したように、本発明に係る中心位置決定手法は、仮の中心を中心とする2つの同心円に囲まれた部分の硬貨の画像を切り出して、切り出しされた部分画像を極座標変換する(図1の(B−2)参照)。なお、切り出される部分画像には少なくとも硬貨の外周部が含まれるように、2つの同心円の径を調整するものとする。また、図1の(B−2)には、極座標変換された画像とともに、仮の中心方向を示す矢印を示している。
【0033】
本発明に係る中心位置決定手法は、極座標で表される形式から2次元の直交座標平面上へ変換された画像から外周部を検出する。たとえば、このように座標変換された直交座標上のY軸の負方向から正方向に向かって各画素の輝度を順次検索し、所定の閾値を越えた場合に、かかる画素を外周部とする。
【0034】
このようにして検出された外周部の軌道は、仮の中心と真の中心位置とが一致する場合には、直線を描く。一方、仮の中心が真の中心位置とは異なる場合には、図1の(B−2)に示すように、外周部の軌道は三角関数のような周期関数で表わされるカーブを描く。
【0035】
そこで、本発明に係る中心位置決定手法は、かかる外周部の軌道に基づき、仮の中心と、真の中心位置とのずれを求め、仮の中心を真の中心位置へと補正することとした(図1の(B−3)参照)。
【0036】
また、本発明に係る中心位置決定手法では、図1の(B−2)に示すように、ゴミの付着などによって外周部が誤検出された場合は、外周部の軌道を平滑化することによって、外周部を補正する処理を併せて行うが、この点については後述する。なお、図1の(B−2)には、外周部の誤検知の例として、外周部にゴミが撮像された場合をあげたが、硬貨の浮きが発生した場合や、外周部に欠けがある場合にも、同様の補正処理を行う。
【0037】
このように、本発明に係る中心位置決定手法では、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出することができる。
【0038】
以下では、図1を用いて説明した中心位置決定手法を適用した硬貨処理装置についての実施例を詳細に説明する。まず、本実施例に係る硬貨処理装置10の構成について図2を用いて説明する。
【0039】
図2は、本実施例に係る硬貨処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図2では、硬貨処理装置10の特徴点を説明するために必要な構成要素のみを抜粋して示している。
【0040】
硬貨処理装置10は、撮像部11と、記憶部13と、制御部14とを備えている。また、記憶部13は、画像情報13aと、中心位置情報13bと、外周情報13cとを記憶し、制御部14は、画像取得部14aと、仮中心設定部14bと、外周部切り出し部14cと、外周検出部14dと、外周補正部14eと、中心補正部14fと、出力部14gとをさらに備えている。
【0041】
撮像部11は、硬貨に対して緑光等の可視光や赤外光等の複数種類の光を照射する光照射装置と光照射装置から照射した光が紙幣に反射した反射光を受光するCCD(Charge Coupled Device)カメラとを備えている。そして、撮像部11は、硬貨の画像を撮像し、撮像された画像データを画像取得部14aへ渡す。
【0042】
記憶部13は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスであり、画像情報13a、中心位置情報13bおよび外周情報13cを記憶する。画像情報13aは、撮像部11で撮像された硬貨の画像データである。
【0043】
中心位置情報13bは、中心補正部14fによって補正された中心の位置情報である。外周情報13cは、外周検出部14dによって検出された硬貨の外周部の軌道および硬貨の径等の外周部に関するデータである。
【0044】
制御部14は、硬貨処理装置10の全体制御を行う制御部である。画像取得部14aは、撮像部11で撮像された硬貨の画像データを取得し、記憶部13の画像情報13aへ渡す処理を行う処理部である。
【0045】
仮中心設定部14bは、画像取得部14aによって取得された硬貨の画像データに基づいて仮の中心を設定する。なお、仮の中心を設定する手法の詳細については後述することとする。
【0046】
外周部切り出し部14cは、画像情報13aから外周部を含む部分画像を切り出す処理を行う処理部である。また、外周部切り出し部14cは、切り出した部分画像を、仮中心設定部14bによって設定された仮の中心、または、中心位置情報13bに基づいて極座標変換する処理を併せて行う。なお、外周部の切り出し手法の詳細については後述することとする。
【0047】
外周検出部14dは、外周部切り出し部14cによって極座標変換された画素を所定の方向に検索し、画素の輝度が2画素連続で所定の閾値を超えた場合に外周部と判定し、外周部を検出する処理を行う処理部である。また、外周検出部14dは、検出した外周部の情報を記憶部13の外周情報13cへ渡す処理を併せて行う。なお、外周検出手法の詳細については後述することとする。
【0048】
外周補正部14eは、外周検出部14dによって検出された外周部が、ゴミ等の異物部分であった場合に、外周部の軌道を平滑化するよう補正する処理を行う処理部である。ここで、仮の中心が真の中心位置とは異なる場合、外周部の軌道は所定の周期関数で表わされる。
【0049】
したがって、硬貨処理装置10では、予め周期関数を描く曲線をテンプレートとして用意しておき、外周補正部14eは、外周部の軌道とテンプレートとを比較してゴミ等の異物部分を補正することとしてもよい。また、所定の周期関数を積分した値を外周部の値と比較してゴミ等の異物部分を補正することとしてもよい。なお、外周部の補正手法の詳細については後述することとする。
【0050】
中心補正部14fは、仮の中心から真の中心位置へ補正する処理を行う処理部である。具体的には、外周部の軌道は所定の周期関数で表わされ、さらに、軌道の最大値と最小値との周期は180°となる。したがって、中心補正部14fは、外周部の軌道に基づいて仮の中心から真の中心位置へ補正し、記憶部13の中心位置情報13bへ渡す。
【0051】
また、中心補正部14fは、補正した中心位置に基づいて外周部の切り出し指示を外周部切り出し部14cへ渡す。なお、中心位置の補正手法の詳細については後述することとする。
【0052】
出力部14gは、中心位置情報13bに基づいて画像情報13aから再度外周部の切り出しを行い、外周検出部14dによって再度外周部の検出が行われた結果を外周情報13cとして図示しない硬貨識別処理部へ渡す処理を行う処理部である。
【0053】
なお、金種識別処理部では、中心補正部14fによって補正された中心位置に基づいて検出された外周部や画像情報13a等によって硬貨の金種を識別する。また、出力部14gは、再度外周部の検出が行われた結果を硬貨の真偽を判定する図示しない真偽判定処理部へ出力することとしてもよい。
【0054】
つぎに、硬貨処理装置10が実行する仮の中心を設定手法、外周部の切り出し手法、外周部の検出手法、外周部の補正手法、および、中心位置の補正手法の詳細について、図3〜図10を用いて説明する。
【0055】
まず、硬貨処理装置10が実行する仮の中心を設定する手法の詳細について、図3を用いて説明する。図3は、仮の中心の設定を説明する図である。ここでは、硬貨処理装置10に備える搬送路上を搬送される硬貨の画像を撮像部11で撮像した場合について説明する。図3に示すように、矢印で示した搬送方向に硬貨が搬送されるとする。
【0056】
まず、図3の右下に示すように、仮中心設定部14bは、撮像された硬貨の画像を構成する各画素の輝度を搬送方向と平行な方向に加算した水平ヒストグラムを作成する。そして、仮中心設定部14bは、図3に示した水平ヒストグラムの左右両端から検索し、水平ヒストグラムの値が所定の閾値(ここでは閾値A)を越えた場合に、かかる画素を左右それぞれの外周部とする。
【0057】
このように、右方向から左にむかって検索した際に検出された外周部を右外周部、左方向から右にむかって検索した際に検出された外周部を左外周部とし、図3では、それぞれ「三角」印で示した。
【0058】
つぎに、仮中心設定部14bは、撮像された硬貨の画像を構成する各画素の輝度を搬送方向と垂直な方向に加算した垂直ヒストグラムを作成する。ここで、搬送路上には連続して硬貨が搬送されるので、硬貨の搬送方向の先端部または末端部に別の硬貨が重なって搬送される場合がある。
【0059】
このような重複部分を含む画素の輝度では正確な外周部を検出することはできない。したがって、硬貨の重複部分の値を除くため、搬送方向の先端部から末端部の最大幅よりも少ない幅で外周部を検出する必要がある。また、外周部を検出する部分の加算する画素数が、水平ヒストグラムから外周部を検出する場合よりも多いため、閾値を上げて外周部を検出することとなる。
【0060】
これにより、仮中心設定部14bは、図3に示した垂直ヒストグラムの上下両端から検索し、垂直ヒストグラムの値が閾値Aよりも大きい閾値(ここでは閾値B)を越えた場合に、かかる画素を上下それぞれの外周部とする。なお、図3では、それぞれ「丸」印で示した。
【0061】
そして、仮中心設定部14bは、右外周部と左外周部との中点を仮の中心の搬送方向に垂直な軸の座標とし、上外周部と下外周部との中点を仮の中心の搬送方向と平行な軸の座標と設定する。
【0062】
つづいて、硬貨処理装置10が実行する外周部の切り出し手法の詳細について、図4および図5を用いて説明する。図4は、部分画像の切り出しの一例を示す図であり、図5は、部分画像の極座標変換処理について説明する図である。
【0063】
まず、部分画像の切り出し処理について説明する。外周部切り出し部14cは、撮像部11で撮像された画像情報13aから仮中心設定部14bで設定された仮の中心を中心とする2つの同心円に囲まれ、かつ、外周部を含む部分画像を切り出す。
【0064】
たとえば、図4の(A)に示すように、切り出される部分画像には、金種のなかで最大の500円玉の外周部を含み、また、図4の(B)に示すように、切り出される部分画像には、金種のなかで最小の1円玉の外周部が含まれる。このように、金種によって大きさの違う硬貨のいずれの外周部を含む画像を切り出すことができるように同心円の半径を設定しておく。
【0065】
ここでは、図4の(A)の点線に示すように、外周部切り出し部14cは、仮の中心を円の中心として、半径が50画素の円と半径が120画素(50画素+70画素=120画素)の円とに囲まれる部分画像を切り出す。
【0066】
なお、半径が50画素の円と半径が120画素の円とに囲まれる部分画像を切り出すこととしたが、通貨によって硬貨の大きさの最大値と最小値とが異なるので、各通貨に合わせて同心円の半径を変化させることとしてもよい。
【0067】
つづいて、部分画像の極座標変換処理について図5を用いて説明する。図5の(A)は切り出す部分画像を、図5の(B)および(C)は、極座標変換を行った画像であり、以下では同図右に示すような座標軸を適宜用いて説明を行うこととする。
【0068】
外周部切り出し部14cは、切り出した部分画像(図5の(A)参照)を仮の中心に基づいて極座標で表される形式から2次元の直交座標平面上へ変換(以下、「極座標変換」と記載する)を行う(図5の(B)参照)。具体的には、所定の半径と偏角θで表わされる極座標から直行座標のX軸は偏角θが対応し、Y軸は半径が対応して変換されるものとする。
【0069】
ここでは、図5の(B)に示すように、Y軸の負方向が円の中心側であり、Y軸の負方向から正方向にむかって同一径上の50画素目から120画素目までの画像データが変換され、X軸方向には同一半径の円周を構成する画素が変換される。また、所定の半径の円周を構成する画素数が512画素であるとすると、偏角は0.703度(360÷512=0.703)間隔で変換されることとなる。なお、撮像部11の精度等によって、かかる画素数は変化するものとする。
【0070】
ここで、X軸方向に512画素およびY軸方向に71画素の配列に変換されたすべての画素値を使用すると、硬貨処理装置10が行う中心位置を補正する処理に時間がかかってしまう。
【0071】
したがって、外周部切り出し部14cでは、補正処理時間を短縮するために、X軸については所定間隔で画素を抽出して処理の対象とすることとした。ここでは、X軸方向について32等分した位置の円周を構成する画素値を抽出する場合について説明する。
【0072】
この場合、角度が11.25°間隔(360÷32=11.25)で半径方向の画素値を抽出することとなる。X軸の負方向の端を0度として、図5の(B)の黒い部分は、抽出対象とするn番目の角度(11.25*n°)の画素を示す。
【0073】
外周部切り出し部14cは、32等分の画素値を抽出する際、ゴミ等による画素値のぶれ(以下、「ノイズ」と記載する)を補正するために、X軸方向に配列される画素について以下の処理を行う。
【0074】
外周部切り出し部14cは、角度11.25*n°である画素とX軸正方向に隣接する2画素およびX軸負方向に隣接する2画素(図5の(B)の斜線部分参照)の合計5画素分の画素値を加算した値を抽出する画素値とする。
【0075】
このように、外周部切り出し部14cは、極座標変換を行った画素値(512画素×71画素)から、X軸方向に32画素およびY軸方向に71画素の配列で表現される画素値を抽出する(図5の(C)参照)。
【0076】
具体的には、極座標変換を行った画像データをEDGE[x][y](x=0〜511、y=0〜70)として、ノイズを補正して抽出される画像データをDATA[x][y] (x=0〜31、y=0〜70)とすると、x=0の場合は式(1)、x>0の場合は式(2)のようになる。
【0077】
【数1】

【数2】

【0078】
つぎに、硬貨処理装置10が実行する外周部の検出手法の詳細について、図6を用いて説明する。図6は、外周部の検出手法の一例を示す図である。
【0079】
外周検出部14dは、外周部切り出し部14cで切り出され、11.25°間隔で抽出された画像データであるDATA[x][y]について、x=0〜31について、以下の処理をそれぞれ行う。
【0080】
図6は、所定のxについて、画像データDATA[x][y]のy=0〜70である各画像データの輝度をグラフに示した。ここでは、横軸がyの値で、縦軸が輝度値を表す。そこで、外周検出部14dは、横軸の正方向から負方向にむかって輝度を検索し、画像データの輝度が2箇所連続で閾値を超えた場合に外周部と判定することとした。
【0081】
ここで、閾値は、所定のxについて、画像データDATA[x][y]のy=0〜70である各画像データの最大輝度を算出し、最大輝度/8を閾値とするが、その他の算出方式を使用して閾値を決定してもよい。
【0082】
たとえば、図6に示すように、外周検出部14dは、y=70からy=0方向に検索し、y=m+1では閾値を超えず、y=mおよびm−1で閾値を超えた場合、DATA[x][m−1]を外周部であると判定する。外周検出部14dは、上述した判定処理を、x=0〜31についてそれぞれ行い、32箇所分の画像データの外周部を検出する。
【0083】
なお、外周検出部14dは、画像データの輝度が2箇所連続で所定の閾値を超えた場合に外周部と判定することとしたが、1回または所定回数連続で超えた場合に、外周部と判定することとしてもよい。また、外周検出部14dは、図6で示したDATA[x][m−1]を外周部と判定することとしたが、DATA[x][m]を外周部と判定することとしてもよい。
【0084】
つぎに、硬貨処理装置10が実行する外周部の補正手法、および、中心位置の補正手法の詳細について、図7〜図10を用いて説明する。図7は、外周部の補正手法その1の一例を示す図であり、図8は、基準径の算出手法の一例を示す図であり、図9は、外周部の軌道について説明する図であり、図10は、外周部の補正手法その2の一例を示す図である。
【0085】
ここでは、仮中心設定部14bで設定された仮の中心が真の中心位置とは異なる場合について、図7〜9を用いて説明し、仮の中心が真の中心位置と一致する場合について、図10を用いて説明する。
【0086】
まず、図7の(A)に示すように、仮中心設定部14bで設定された仮の中心が真の中心位置とは異なる場合に、外周検出部14dで検出された外周部は、図7の(B)に示すような軌道となる。また、撮像部11で撮像された硬貨の画像にゴミが撮像されていた場合には、外周検出部14dでは、ゴミの部分を外周部と判定してしまうことがある。ここで図7の(B)に示した丸印は、外周検出部14dで判定した外周部を示している。
【0087】
そこで、外周補正部14eは、基準となる直径(以下、「基準径」と記載する)を求めて、基準径によって表わされる所定の周期関数に基づいて外周部の軌道を平滑化して補正することとした(図7の(C)参照)。
【0088】
そして、中心補正部14fでは、外周部の軌道は所定の周期関数で表わされることから、周期関数へ補正された外周部の軌道上の値を代入することによって中心位置を求める。硬貨処理装置10では、中心位置を求め、再度外周部切り出し部14cによって外周部を切り出し、切り出された画像データから外周検出部14dによって外周部を検出すると、図7の(D)に示すように、直線で描かれる外周部が検出され、直線で描かれる外周部に基づいて高精度に径を求めることができる。
【0089】
ここで、基準径の算出手法を、図8を用いて説明する。図8は、基準径の算出手法の一例を示す図である。まず、図8に示すように、外周補正部14eは、外周検出部14dによって検出された32箇所の外周部について、所定の外周部と角度差が180°となる外周部(以下、「対角」と記載する)とに基づいて直径(以下、「対角径」と記載する)を求める。
【0090】
そして、外周補正部14eは、求められた16本分の対角径を径長でソートし、中央の4本の径長の平均を算出して基準径長とする。ここでは、中央の4本の平均を算出することとしたが、中央の所定本数、たとえば中央の2本の平均を算出して基準径長とすることとしてもよい。
【0091】
このようにして、外周補正部14eによって算出された基準径長と16本の対角径長との差分をそれぞれ算出して、差分によって外周部の軌道を平滑化する。具体的には、外周補正部14eは、差分が所定の値以上であったならば、対角径の半径長をチェックし、長さに異状があれば前後のデータから推定して求めることによって、外周部の軌道が平滑になるよう補正する。
【0092】
さらに、外周補正部14eは、対角径の両端部分の外周部について算出される2つの半径と基準径長/2と比較することによって、2つの半径をそれぞれ補正する。また、所定の周期関数を積分した値を外周部の値と比較してゴミ等の異物部分を補正することとしてもよい。このように、外周部に含まれる異物部分を補正することによって、後述する中心位置の補正を高精度に行うことができる。
【0093】
そして、中心補正部14fは、外周補正部14eによって補正された外周部について以下の処理を行い、仮の中心を補正する。中心補正部14fは、16本分の対角径について対角径の両端部分の外周部に基づいて算出される2つの半径と基準径長/2との差分をそれぞれ算出し、差分の絶対値を加算する(以下、この値を「振幅和」と記載する)。
【0094】
ここで、中心補正部14fは、算出した振幅和の最大値が所定値より小さい場合は、中心位置の補正を必要としないと判断する。また、中心補正部14fは、算出した振幅和の最大値が所定値より大きい場合は、仮の中心を補正する。以下では、仮の中心の補正手法について、図9を用いて説明する。図9は、仮の中心の補正手法の一例を示す図である。
【0095】
図9の(A)に示すように、仮中心設定部14bによって設定された仮の中心を点A(x,y)として、中心補正部14fによって算出された振幅和の最大となる2箇所の外周部が点Bおよび点Cであったとする。ここで、仮の中心Aから外周部の点Bおよび点Cへの長さが長い方(線分AB)をrmax、短い方(線分AC)をrminとし、線分ABとX軸とのなす偏角をθmax、線分ACとX軸とのなす偏角をθminとする。
【0096】
この場合、補正後の中心を(X,Y)とした場合に、補正後の中心である(X,Y)は式(3)および式(4)のようになる。
X=x+(rmax−rmin)/2*cos(θmax)…(3)
Y=y+(rmax−rmin)/2*sin(θmin)…(4)
【0097】
このように、中心補正部14fでは、仮の中心を補正する。また、図9の(B)に示したグラフは、中心補正部14fによって算出された偏角に対応した外周部の半径を示すグラフである。なお、X軸は偏角を、Y軸は算出された半径の長さとする。
【0098】
ここで、かかるグラフを、X軸方向にθminから360°へ並行移動させた場合、図9の(C)に示すように、仮の中心点Aは点A’へと補正され、θminは0°、θmaxは180°となり、線分B’C’はX軸と平行な線分となる。このように補正された値を式(3)および式(4)に代入することによって、仮の中心を(X,Y)へと補正することとしてもよい。
【0099】
上述してきたように、外周部切り出し部14cでは、極座標変換を行った画像データのうち所定間隔で画素を抽出し、抽出された画像データによって中心位置を補正することとしたので、硬貨処理装置10では、補正処理時間を短縮することができる。
【0100】
これまでは、仮中心設定部14bで設定された仮の中心が真の中心位置とは異なる場合について説明した。つぎに、仮の中心が真の中心位置と一致する場合の、外周部の補正手法の詳細について、図10を用いて説明する。
【0101】
図10は、外周部の補正手法その2の一例を示す図である。まず、図10の(A)に示すように、仮中心設定部14bで設定された仮の中心が真の中心位置と一致した場合に、外周検出部14dで検出された外周部は、図10の(B)に示すように直線となる。
【0102】
また、硬貨の一部で浮いてしまった場合に、撮像面と密着していない部分は、撮像部11で撮像された画像には、図10の(A)に示すように、外周部の欠落が撮像されてしまう。しかし、外周補正部14eでは、欠落やゴミ等の異物のないところで径を検出すればよい。
【0103】
つぎに、上記した硬貨処理装置10が実行する処理手順について図11〜図12を用いて説明する。なお、図11では中心位置決定処理について、図12では外周部・中心位置補正処理について、それぞれ説明する。
【0104】
図11は、硬貨処理装置10が実行する中心位置決定処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、画像取得部14aは撮像部11で撮像された硬貨の画像を取得する(ステップS101)。
【0105】
仮中心設定部14bは、画像取得部14aで取得した硬貨の画像に基づいて画像を構成する各画素の輝度のヒストグラムを作成し(ステップS102)、ヒストグラムに基づいて上下左右の外周部を検出する(ステップS103)。
【0106】
そして、仮中心設定部14bは、硬貨の画像で上下の外周部および左右の外周部の中点を仮の中心として設定し(ステップS104)、外周部切り出し部14cは、仮の中心について外周部を含む画像の切り出しを行う(ステップS105)。
【0107】
その後、外周検出部14dは、切り出した画像に基づいて外周部を検出し(ステップS106)、検出された外周部の軌道によって仮の中心が真の中心位置と比較してずれているか否かを判定する(ステップS107)。
【0108】
そして、外周検出部14dによって仮の中心がずれていると判定された場合(ステップS107,Yes)、外周部・中心位置の補正処理を行う(ステップS108)。なお、外周部・中心位置の補正処理の詳細については、図12を用いて説明する。
【0109】
つづいて、外周部切り出し部14cは、外周部および中心位置の補正処理によって補正された中心位置を取得し(ステップS109)、取得した中心位置について外周部を含む画像の切り出しを行う(ステップS110)。
【0110】
そして、外周検出部14dは、切り出した画像に基づいて外周部および径含む外周情報13cを検出して(ステップS111)、検出した外周情報13cを出力部14gに渡し、硬貨処理装置10が実行する中心位置決定処理を終了する。
【0111】
一方、ステップS107で中心位置がずれていないと判定された場合(ステップS107,No)、硬貨処理装置10は、ステップS111に処理を移行して、外周情報13cを検出する。
【0112】
つづいて、ステップS108の外周部・中心位置の補正処理について、図12を用いて説明する。図12は、硬貨処理装置10が実行する外周部・中心位置補正処理手順を示すフローチャートである。
【0113】
図12に示すように、外周補正部14eは、外周検出部14dによって検出された32箇所の外周部について、対角径長を算出し(ステップS201)、算出した16本分の対角径長を径長でソートを行う(ステップS202)。
【0114】
そして、外周補正部14eは、ソートした対角径長の中央の4本の平均を基準径長として算出し(ステップS203)、規準径長に基づいて外周部の補正を行い(ステップS204)、中心補正部14fは、補正された外周部に基づいて仮の中心から真の中心位置へ補正する(ステップS205)。
【0115】
ところで、本実施例においては、図4および図5を用いて説明したように、外周部切り出し部14cが、画像情報13aから仮中心設定部14bで設定された仮の中心を中心とする2つの同心円に囲まれた部分画像を切り出すこととした。
【0116】
しかし、撮像された画像から硬貨が通過する搬送路の幅を超えるエリアの画像データを無効として、搬送路外のエリアが外周部として検出されないようにすることとしてもよい。たとえば、かかるエリアの画素の輝度を0として、外周部として検出されないようにする。具体的な部分画像の切り出し手法について、図13を用いて説明する。
【0117】
図13は、部分画像の切り出しの変形例を示す図である。同図に示すように、硬貨の外周部を実線の円で表わし、仮の中心を中心とする同心円の外側の円を破線で表わした。なお、以下では同図右に示すような座標軸を適宜用いて説明を行うこととする。
【0118】
Y軸方向に硬貨が搬送されるとした場合、硬貨処理装置10では、予め搬送路の両端である右ラインおよび左ラインを設定しておく。そして、図13の斜線部分で示したような、右ラインよりX軸の正方向側または左ラインよりX軸の負方向側に位置するエリアの画像データを無効とする。
【0119】
たとえば、図13の「三角」印で示したような画素(点A)のx座標が左ラインのx座標未満である、または、右ラインのx座標を超えている場合に、かかる画素の画像データを無効とする。具体的には、仮の中心の座標をC(x,y)、基準径長をrとし、線分ACとX軸のなす角をθとする。この場合、式(5)または式(6)が成り立つならば、点Aの画素の画像データを無効とする。
x+r*cosθ<左ラインのx座標 …(5)
x+r*cosθ>右ラインのx座標 …(6)
【0120】
このようにして、搬送路の幅を超えるエリアの画像データを無効とすることによって、搬送路外に搬送ピン等の異物が撮像されていた場合であっても、高精度に硬貨の中心位置を検出することができる。
【0121】
上述してきたように、本実施例では、円形物の中心位置を検出する中心位置決定装置に適用される中心位置決定方法であって、円形物の画像を取得し、取得された画像の特徴に基づいて円形物の仮の中心を設定し、設定された仮の中心について取得された画像を極座標変換した画像を取得し、取得された画像に基づいて円形物における外周部の軌道を検出し、検出された外周部の軌道に基づいて円形物の仮の中心を真の中心位置へ補正することとした。
【0122】
したがって、本発明に係る中心位置決定方法では、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出することができる。
【0123】
なお、本発明の請求項に記載の中心位置決定装置は硬貨処理装置10、画像取得工程は画像取得部14a、仮中心設定工程は仮中心設定部14b、極座標画像取得工程は外周部切り出し部14c、外周検出工程は外周検出部14d、中心補正工程は中心補正部14fの一例として挙げられる。
【0124】
なお、上述した実施例では、極座標変換した画像データから32等分した画像データ部分を抽出して外周部および中心位置を補正することとしたが、所定数たとえば64等分した画像データ部分を抽出することとしてもよい。
【0125】
また、上述した実施例では、硬貨処理装置に適用する例を説明したが、円形状に加工される部品、たとえば、ねじ山やワッシャー等の円形部品の形成精度を検査する装置、または、偏芯度を検査する装置等にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明に係る中心位置決定方法および中心位置決定装置は、撮像された円形物の画像に、汚れや外周部の欠落が撮像されている場合であっても高精度に円形物の中心位置を検出する場合に有用である。
【符号の説明】
【0127】
10 硬貨処理装置
11 撮像部
13 記憶部
13a 画像情報
13b 中心位置情報
13c 外周情報
14 制御部
14a 画像取得部
14b 仮中心設定部
14c 外周部切り出し部
14d 外周検出部
14e 外周補正部
14f 中心補正部
14g 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形物の中心位置を検出する中心位置決定装置に適用される中心位置決定方法であって、
前記円形物の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程によって取得された画像の特徴に基づいて前記円形物の仮の中心を設定する仮中心設定工程と、
前記仮中心設定工程によって設定された前記仮の中心について前記画像取得工程によって取得された画像を極座標変換した画像を取得する極座標画像取得工程と、
前記極座標画像取得工程によって取得された画像に基づいて前記円形物における外周部の軌道を検出する外周検出工程と、
前記外周検出工程によって検出された前記外周部の軌道に基づいて前記円形物の前記仮の中心を真の中心位置へ補正する中心補正工程と
を含んだことを特徴とする中心位置決定方法。
【請求項2】
前記極座標画像取得工程は、
少なくとも前記外周部を含むように前記仮の中心を中心とする2つの同心円を設定するとともに、設定された2つの前記同心円によって囲まれる部分画像を極座標変換し、
前記外周検出工程は、
前記極座標画像取得工程によって極座標変換された前記部分画像に基づいて前記外周部を検出することを特徴とする請求項1に記載の中心位置決定方法。
【請求項3】
前記外周検出工程は、
検出された前記軌道を平滑化することによって該軌道を補正する外周補正工程
をさらに含み、
前記中心補正工程は、
前記外周補正工程によって補正済みの前記軌道に基づいて前記円形物の前記仮の中心を前記真の中心位置へ補正することを特徴とする請求項1または2に記載の中心位置決定方法。
【請求項4】
前記中心補正工程は、
前記外周部の軌道上の位相差が180度となる2点について当該2点間の距離を前記外周部上の複数箇所について算出し、算出した前記距離に基づいて前記円形物の仮の径を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の中心位置決定方法。
【請求項5】
中心が前記真の中心位置であり半径が前記仮の径である円周上の所定の点から前記仮の中心までの距離を表わす周期関数に対して前記軌道上の点を代入することによって前記真の中心位置と前記仮の中心とのずれ量を算出し、算出した前記ずれ量を用いて前記仮の中心を前記真の中心位置へ補正することを特徴とする請求項4に記載の中心位置決定方法。
【請求項6】
円形物の中心位置を検出する中心位置決定装置であって、
前記円形物の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された画像の特徴に基づいて前記円形物の仮の中心を設定する仮中心設定手段と、
前記仮中心設定手段によって設定された前記仮の中心について前記画像取得手段によって取得された画像を極座標変換した画像を取得する極座標画像取得手段と、
前記極座標画像取得手段によって取得された画像に基づいて前記円形物における外周部の軌道を検出する外周検出手段と、
前記外周検出手段によって検出された前記外周部の軌道に基づいて前記円形物の前記仮の中心を真の中心位置へ補正する中心補正手段と
を備えたことを特徴とする中心位置決定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−198146(P2011−198146A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65190(P2010−65190)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】