説明

中性固化材用の添加材、中性固化材および重金属類の溶出抑制方法

【課題】固化処理物から滲出する液のpHが排水基準のpH5.8〜8.6を満たし、固化強度が高く、重金属類の溶出を環境基準値以下に抑制することができる中性固化材等を提供する。
【解決手段】酸性硫酸塩100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物を、炭酸カルシウム換算で3〜42質量部含む中性固化材用の添加材を提供する。また、前記中性固化材用の添加材と、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物とを含有する中性固化材であって、前記酸性硫酸塩100質量部に対し、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物を、酸化マグネシウム換算で7〜98質量部含有する中性固化材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属類を含む土壌等を固化して、重金属類の溶出を抑制することができる中性固化材用の添加材、中性固化材および重金属類の溶出抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、事業所、廃棄物処理場の跡地等の土壌が、鉛、ヒ素等の重金属やフッ素等により汚染されているという事例が、近年、多数報告されている。
重金属等により土壌が汚染されると、重金属等の汚染域が地下水にまで拡散し、汚染された地下水を経由して最終的には人体や穀物に重金属等が蓄積され、健康を害する事態が生じうる。
また、土壌中の重金属等の濃度が環境基準値を超えると、跡地をそのまま利用できなくなり、土地の有効利用の観点からも問題である。
【0003】
これらの問題に対処するために、汚染土壌中の重金属等を固化して、重金属等が土壌から溶出するのを防止する手段として、セメント系、石灰系、石膏系およびマグネシア系の固化材が用いられている。
【0004】
しかし、セメント系および石灰系の固化材のスラリーは、pH12程度の高アルカリ性を呈するため、該固化材を用いて汚染土壌を固化した改良土から、アルカリ性条件下で溶解しやすい鉛等の両性金属が溶出するという問題がある。また、改良土を埋立てる場合や盛土等として再利用する場合に、降雨等により改良土や盛土から滲出する液のpHは、排水基準であるpH5.8〜8.6(水道法第4条に基づく水質基準許容値)に適合することが求められている。
【0005】
また、石膏系固化材は、ほぼ中性ではあるが固化強度が低いため、その用途は強度が要求されない分野に限られる。
更に、マグネシア系固化材は、セメント系や石灰系の固化材よりもアルカリ性は低いが、それでもなお、マグネシア系固化材を添加した改良土等から滲出する液のpHは、10程度になるため、前記排水基準のpHを満たすことは難しい。また、その固化強度は石膏系固化材よりも高いとはいえ、まだ十分とはいえない。
【0006】
そこで、マグネシア系固化材においてアルカリ性の低減と固化強度の向上を目的とした中性固化材が、種々提案されている。
例えば、特許文献1には、15〜40重量部の酸化マグネシウムと4〜10重量部の硫酸アルミニウムおよび/または硫酸鉄と、残部がせっこうよりなる含水土壌用固化材が提案されている。該固化材は、酸化マグネシウムのアルカリ性を低減しつつ、固化強度の低下を抑制するために、酸化マグネシウムよりも少ない量の酸性塩(硫酸アルミニウムや硫酸鉄)を混合したものである。しかし、酸性塩は強酸と弱塩基の塩であって弱酸性であるため、強アルカリ性の酸化マグネシウムよりも少ない量の酸性塩の添加では、アルカリ性の低減は十分とはいえず、また、強度発現性の低いせっこうを50重量%以上も含有するため固化強度も不十分である。
【0007】
特許文献2には、酸化マグネシウムと、硫酸アルミニウム等の固化剤とを含む土壌固化剤が提案されている。また、特許文献3には、酸化マグネシウム100重量部に、10〜100重量部の酸性固化助剤を混合した土壌中性固化材が提案されている。
しかし、特許文献2および3の固化材は、いずれも特許文献1に記載の固化材と同様に、50質量%以下の酸性塩(酸性剤)しか含まないため、アルカリ性の低減は十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−109829号公報
【特許文献2】特開2000−239660号公報
【特許文献3】特開2002−206090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、固化処理物から滲出する液のpHが排水基準のpH5.8〜8.6を満たし、固化強度が高く、重金属類の溶出を環境基準値以下に抑制することができる中性固化材用の添加材、中性固化材および重金属類の溶出抑制方法を提供することを目的とする。
なお、本発明の中性固化材が溶出抑制の対象とする前記重金属類とは、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、総水銀、アルキル水銀、セレン、フッ素、ホウ素およびシアンの第二種特定有害物質、並びに、要監視項目として注意が必要な、ニッケル、モリブデン、アンチモン、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素等をいう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定量の酸性硫酸塩および特定量の炭酸カルシウム含有物を含む中性固化材用の添加材と、特定量の軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物とを含有する中性固化材は、前記本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供する。
[1]酸性硫酸塩100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物を、炭酸カルシウム換算で3〜42質量部含む中性固化材用の添加材。
[2]前記中性固化材用の添加材と、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物とを含有する中性固化材であって、前記酸性硫酸塩100質量部に対し、前記軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物を、酸化マグネシウム換算で7〜98質量部含有する中性固化材。
[3]処理対象物100質量部に対し、前記[2]に記載の中性固化材を1〜40質量部添加し混合する重金属類の溶出抑制方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中性固化材等によれば、固化処理物から滲出する液のpHが排水基準のpH5.8〜8.6を満たし、固化強度が高く、重金属類の溶出を環境基準値以下に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、中性固化材用の添加材、これを含む中性固化材および該中性固化材を用いた重金属類の溶出抑制方法である。
【0014】
中性固化材用の添加材について、以下に説明する。
本発明の中性固化材用の添加材は、酸性硫酸塩100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物を、炭酸カルシウム換算で3〜42質量部含むものである。
【0015】
前記酸性硫酸塩は、硫酸と弱塩基の塩であり、水溶液にした場合に酸性を呈する塩である。従って、該酸性硫酸塩には、pHが約7である半水石膏や二水石膏およびpHが約11である無水石膏は含まれない。
該酸性硫酸塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄等およびこれらの水和物から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。該酸性硫酸塩は、アルカリ性を呈するマグネシア系固化材のpHを中性域にまで低減することができる。
【0016】
また、前記炭酸カルシウム含有物は、炭酸カルシウムを80質量%以上含むものが好ましく、85質量%以上含むものがより好ましく、90質量%以上含むものが更に好ましい。該炭酸カルシウム含有物としては、例えば、工業用炭酸カルシウム粉末、試薬の炭酸カルシウム粉末、石灰石粉末、炭酸カルシウムを主成分とする貝殻の粉砕物またはサンゴの粉砕物等が挙げられる。その中でも、石灰石粉末は低コストであるため好適である。
【0017】
炭酸カルシウム含有物のブレーン比表面積は、3000〜7000cm/gが好ましく、4000〜6800cm/gがより好ましい。該値が3000cm/g未満であると、後述する酸性硫酸塩との反応性が低いため二水石膏の生成が十分ではなく、該値が7000cm/gを超えると、粉砕に手間がかかり粉砕コストが高くなる。
【0018】
前記中性固化材用の添加材は、水中または湿潤状態において、酸性硫酸塩由来の硫酸イオンと炭酸カルシウム含有物由来のカルシウムイオンが反応して、二水石膏を生成する。該二水石膏は、それ本来の、固化処理物の初期強度を高めるという作用に加え、二水石膏の生成過程で、結晶水として化合物(二水石膏)内に水を結合するため、固化処理物の含水量が減少する。この結果、本発明の添加材を含有する固化材は、二水石膏の形態で石膏を含有する固化材と比べ、更に固化強度が増大する。
【0019】
上述した通り、本発明の中性固化材用の添加材は、酸性硫酸塩100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物を、炭酸カルシウム換算で3〜42質量部含むものであり、5〜40質量部含むものが好ましく、10〜30質量部含むものがより好ましい。該含有量が3質量部未満では固化強度の増大効果が低く、該含有量が42質量部を超えると、酸性硫酸塩が炭酸カルシウムとの反応により消費されすぎて、固化材のpH低減効果が低下する。
【0020】
次に、本発明の中性固化材について説明する。
本発明の中性固化材は、前記中性固化材用の添加材と、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物とを含有するものであって、酸性硫酸塩100質量部に対し、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物を、酸化マグネシウム換算で7〜98質量部含有する中性固化材である。
【0021】
前記軽焼マグネシアは、例えば、炭酸マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含む固形物を、650〜1300℃で焼成することによって得ることができる。
【0022】
前記固形物中の炭酸マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムの含有率は80質量%以上であり、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。該含有率が80質量%未満では、軽焼マグネシアに含まれる酸化マグネシウム成分が少なく、固化強度や重金属類の溶出抑制効果が低下する傾向がある。
前記固形物としては、マグネサイト、ドロマイト、ブルーサイトまたは海水中のマグネシウム成分を消石灰等のアルカリで沈殿させて得た水酸化マグネシウム等の、塊状物または粉粒状物が挙げられる。
【0023】
前記固形物の焼成温度は、通常、650〜1300℃であり、750〜950℃が好ましく、800〜900℃がより好ましい。該焼成温度が650℃未満では、軽焼マグネシアが生成し難く、該焼成温度が1300℃を超えると、固化強度や重金属類の溶出抑制効果が低下する虞がある。前記固形物の焼成時間は、固形物の仕込み量や粒径等にもよるが、通常、30分〜5時間である。
【0024】
前記軽焼マグネシアに代えて使用する軽焼マグネシア部分水和物は、前記軽焼マグネシアを粉砕した後、該粉砕物に水を添加して撹拌し混合するか、または、該粉砕物を相対湿度80%以上の雰囲気下に1週間以上保持することにより得られる。
【0025】
前記軽焼マグネシア部分水和物は、酸化マグネシウムを65〜96.5質量%および水酸化マグネシウムを3.5〜30質量%含有するものが好ましく、酸化マグネシウムを70〜95質量%および水酸化マグネシウムを5〜20質量%含有するものがより好ましく、酸化マグネシウムを75〜90質量%および水酸化マグネシウムを7〜17質量%含有するものが更に好ましい。該値を好ましい範囲とすれば、固化強度や重金属類の溶出抑制効果をより高めることができる。
【0026】
軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物は、前記の成分の他、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムを含有してもよい。軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物中の酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムの合計の含有率は、酸化物換算で、3.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が更に好ましい。該含有率が3.0質量%を超えると、重金属類による汚染の程度の高い処理対象物に使用した場合、重金属類の溶出抑制効果が低下することがある。
【0027】
なお、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物は、前記成分(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム)以外の成分(例えば、シリカ、酸化鉄等の夾雑物)を、好ましくは4.0質量%以下で含むことができる。該含有率が4.0質量%を超えると、重金属類による汚染の程度の高い処理対象物に使用した場合、固化強度や重金属類の溶出抑制効果が低下することがある。
【0028】
軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物のブレーン比表面積は、3000〜15000cm/gが好ましく、4000〜10000cm/gがより好ましく、4500〜7000cm/gが特に好ましい。該値が3000〜15000cm/gの範囲であると、重金属類の溶出抑制効果は増大する。
【0029】
本発明の中性固化材は、上述した通り、中性固化材用の添加材と、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物とを含有するものであって、酸性硫酸塩100質量部に対し、通常、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物を、酸化マグネシウム換算で7〜98質量部含有するものであり、10〜90質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましく、30〜70質量部が更に好ましい。
該含有量が7質量部未満では、固化強度や重金属類の溶出抑制効果が十分でなく、98質量部を超えると、固化材のpHを中性域へ調整することが困難になる虞がある。
【0030】
次に、本発明の重金属類の溶出抑制方法について説明する。
本発明の重金属類の溶出抑制方法は、以下の(1)粉体添加方法と(2)スラリー添加方法がある。
【0031】
(1)粉体添加方法
該方法は、処理対象物100質量部に対し、中性固化材を1〜40質量部添加し混合する方法である。該添加量が1質量部未満では、処理対象物と中性固化材を均質に混合することが困難であるうえ、固化強度が低く、また、重金属類の溶出抑制効果は十分でない。該添加量が40質量部を超えると、固化強度の増加は飽和する傾向にあり、むしろコスト高になる。
ここで、処理対象物は、中性固化材との混合(混練)や、軽焼マグネシアの水和および酸性硫酸塩等の溶解に必要な水量を含むことが望ましい。処理対象物中の含水量は、含水比(処理対象物中の固形分に対する、処理対象物中の水の質量比)で0.2〜2.0が好ましく、0.3〜1.5がより好ましく、0.4〜1.0が特に好ましい。該含水比が0.2未満では処理対象物と中性固化材の混合等が困難になり、2.0を超えると固化強度が十分でない。該含水比が小さい場合は、予め処理対象物に水を添加して、前記含水比の範囲に調製する必要がある。
【0032】
(2)スラリー添加方法
該方法は、以下の(i)および(ii)の方法を含むものである。
(i)酸性硫酸塩の水溶液(A)と、該酸性硫酸塩100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物を、炭酸カルシウム換算で3〜42質量部、および、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物を、酸化マグネシウム換算で7〜98質量部含有するスラリー(B)とを混合した後、(A)と(B)の混合液を処理対象物に添加し混合する方法。
(ii)酸性硫酸塩の水溶液に、該酸性硫酸塩100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物を炭酸カルシウム換算で3〜42質量部、および、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物を、酸化マグネシウム換算で7〜98質量部、粉体のままで添加し混合してスラリーを調製した後、該スラリーを処理対象物に添加し混合する方法。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.固化材の各成分の調製等
(1)軽焼マグネシア粉砕物(M1)および軽焼マグネシア部分水和物(W1)
炭酸マグネシウムを97質量%含むマグネサイトを、850℃で30分間、電気炉(中外エンジニアリング社製、型式:KSL−2)で焼成して軽焼マグネシアを得た。次に、該軽焼マグネシアを粉砕して、ブレーン比表面積6500cm/gの軽焼マグネシア粉砕物(M1)を得た。更に、該粉砕物を温度20℃、相対湿度100%の恒温恒湿槽に10日間放置し、軽焼マグネシアの一部を水和させて、ブレーン比表面積6500cm/gの軽焼マグネシア部分水和物(W1)を得た。
軽焼マグネシア部分水和物(W1)は、酸化マグネシウムを88.0質量%および水酸化マグネシウムを8.5質量%含有するものであった。
【0034】
(2)酸性硫酸塩
酸性硫酸塩は、無水硫酸アルミニウム(試薬1級、関東化学社製)と硫酸第一鉄1水塩(試薬1級、関東化学社製)を用いた。
【0035】
(3)炭酸カルシウム含有物
炭酸カルシウムを92質量%含む粒状の石灰石を粉砕し、ブレーン比表面積が5500cm/gの炭酸カルシウム含有物を得た。
(4)二水石膏
二水石膏は、排煙脱硫二水石膏(中部電力社 碧南火力発電所産、ブレーン比表面積が6000cm/g)を用いた。
【0036】
2.固化処理土のpHと固化強度、および、重金属類の溶出試験
[供試体の作成]
表1の配合に従い固化材を調製した。次に、鉛、ヒ素およびフッ素を含有する粘性土(含水比0.5)100質量部に対し、該固化材を20質量部添加し、ホバートミキサを用いて混合して混合物を調製した。また、比較のため、前記粘性土100質量部に対し、表1の配合2の固化材を0.5質量部および50質量部添加し混合して混合物を調製した。
前記混合物を用いて、JGS0821−2009「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に準拠して供試体を作製した。
【0037】
[pH測定]
作製した供試体を20℃の恒温室にて湿空養生した後、材齢1日の供試体のpHを、地盤工学会基準JGS0211−2009に準拠して測定した。ちなみに、排水基準のpHは5.8〜8.6である。
【0038】
[重金属類の溶出試験]
該供試体からの重金属類の溶出試験は、鉛では環境省告示46号およびJIS K 0120−2008 5.4「ICP質量分析法」に準拠して、ヒ素では環境省告示46号法およびJIS K 0120−2008 61.4「ICP質量分析法」に準拠して、フッ素では環境省告示46号および昭和46年12月環境庁告示第59号付表6「イオンクロマトグラフ法」に準拠して行なった。ちなみに、重金属類の環境基準値は、鉛およびヒ素では0.01mg/L、フッ素では0.8mg/Lである。
【0039】
[一軸圧縮強さ試験]
前記混合物を、内径50mm、長さ100mmの型枠に入れて、20℃で3日間、密閉養生して供試体を作成した後、該供試体の一軸圧縮強さを自動一軸圧縮試験装置(win土質2007、テスコ社製)を用いて測定した。
以上の結果を表2に示す。
なお、比較例7では、中性固化材用の添加材に代えて二水石膏を用いた。また、参考例では、粘性土のみを用いた。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表2に示すように、本発明の中性固化材(実施例1〜14)を用いた固化処理物から滲出した液のpHは、5.9〜8.5であるから、すべてにおいて排水基準のpH5.8〜8.6を満たしている。
また、該浸出液中の鉛、ヒ素およびフッ素の濃度は、すべてにおいて環境基準値未満である。
【0043】
さらに、固化処理物の一軸圧縮強さについて、硫酸塩と炭酸カルシウムを合計で120質量部含む実施例2、5、7および8では、270〜298kN/mであるのに対し、二水石膏を同じ120質量部含む比較例7では、179kN/mである。従って、本発明の添加材を含有する中性固化材を用いた場合は、当初から二水石膏を含有する固化材を用いた場合と比べ、固化処理物の一軸圧縮強さは格段に高い。
また、固化処理物から滲出した液のpHは、前記中性固化材(実施例2、5、7および8)を用いた場合では、7.4(実施例8)〜7.8(実施例2)と中性域にあるのに対し、当初から二水石膏を含有する固化材を用いた場合では、10.4である。従って、本発明の中性固化材の添加材は、二水石膏と比べpHの低減効果も格段に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性硫酸塩100質量部に対し、炭酸カルシウム含有物を、炭酸カルシウム換算で3〜42質量部含むことを特徴とする中性固化材用の添加材。
【請求項2】
前記中性固化材用の添加材と、軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物とを含有する中性固化材であって、前記酸性硫酸塩100質量部に対し、前記軽焼マグネシアまたは軽焼マグネシア部分水和物を、酸化マグネシウム換算で7〜98質量部含有することを特徴とする中性固化材。
【請求項3】
処理対象物100質量部に対し、請求項2に記載の中性固化材を1〜40質量部添加し混合することを特徴とする重金属類の溶出抑制方法。

【公開番号】特開2012−92180(P2012−92180A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238941(P2010−238941)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】