説明

中性媒質中に安定なフェロ流体、および変性された表面を有する粒子を用いたフェロ流体

本発明は、20nmまたはそれ以下の寸法を有する、磁気酸化鉄をベースとする粒子であって、この表面が、前記粒子の表面と共有結合されたアミノ基Rのグラフト化によって変性されている粒子を含む水性分散液であって、このように変性された表面を有する粒子の等電点が、10またはそれ以上である水性分散液に関する。本発明はまた、これらの水性懸濁液の調製方法、ならびに特に生体内投与可能な磁気化合物の配合のため、とりわけMRI用の造影剤の注射可能な組成物の配合のための、多糖類例えばデキストランの特に固定化による、これらの分散液中に存在する粒子の表面の変性方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に中性媒質中で非常に低い粒子間凝集率を示す、変性された表面を有する磁気酸化鉄をベースとするナノメートル寸法の粒子の水性分散液に関する。変性された表面を有し、および本質的に個別化された磁気粒子のこれらの分散液は、特に診断または治療的利点を有する組成物の調製、および注射による投与に適した組成物の調製のためにとりわけ有用であることが明らかになる。
【0002】
現在、水性(水または水溶液)、また多くの有機性(特に炭化水素、ケロシン、キシレン、トルエン、ポリグリコール、またはフェニルエーテル)の液体分散性媒質中に分散された、ナノメートル(100nm未満の寸法)の磁気粒子を含んでいる組成物の様々な型が公知である。
【0003】
これらの組成物において、最も多く用いられている粒子は、鉄(Fe−α)、コバルト(Co−α)をベースとする粒子、および磁気酸化鉄、例えばフェライト(すなわち、最も多くの場合、全体式MIIFeIIIFeII(式中、MIIは、酸化状態+IIにある、Fe、Co、Ni、Cd、Mn、Zn、またはMgから選択された金属を示す)の酸化物)をベースとする粒子である。
【0004】
これらは一般に、Fe−αまたはCo−αの粒子よりも顕著でない磁気特性を有するが、磁気酸化鉄をベースとする粒子(特にフェライトをベースとする粒子)は、酸化に対してより安定であることが明らかになり、これらはこの結果、特に水性分散液において、より幅広く用いられている。この枠内で、特にマグネタイト(Fe)またはマグヘマイト(Fe−γ)をベースとするフェリ磁気粒子が用いられる。
【0005】
磁気酸化鉄をベースとする粒子の分散液、特に水性の分散液は、多くの場合、「フェロ流体(ferrofluid)」という一般名称で呼ばれている。この名称は、この型の分散液が、酸化鉄粒子の十分に大きい濃度を有するとき、磁場勾配の適用が、液体を同伴する粒子の移動を引起こすという事実に由来する。巨視的レベルでは、観察された挙動は、概略的に「磁気液体」の挙動である。
【0006】
フェロ流体を合成する時に解決すべき問題の1つは、凝集に対する磁気粒子の安定化の問題である。
【0007】
実際、一般的に、フェロ流体において(ナノメートル寸法の酸化物粒子のあらゆる分散液においてのように)、酸化物をベースとする粒子は、特にファンデルワールス型の引っ張り相互作用によって、互いに引き付け合う傾向がある。したがって、羊毛状塊となる自然現象を阻害するように、分散液の安定化を確保する必要があることが明らかになる。粒子間凝集現象を阻害するために、一般に、「フェロ流体」型の分散液中で、これらの粒子間に斥力相互作用を誘発する表面電荷を有する(「静電安定」)粒子、または吸着またはグラフト化されたマクロ分子を表面に有する(「立体安定」)粒子を利用する。2つの安定化方法が同時に用いられるとき、「電気立体安定化」と呼ばれる。
【0008】
フェロ流体の安定化は、存在する粒子のサイズが小さくなり、および粒子濃度が高くなればなるほど、これだけ一層実施が難しいことが明らかになる。
【0009】
ところで、特に十分に顕著な磁気特性を得るために、粒子濃度がフェロ流体中で高いことが一般に望ましい。
【0010】
さらには「フェロ流体」型の磁気粒子の分散液において、酸化物の粒子が、小さい寸法、好ましくは20nm未満、典型的には3から15nmの粒子であることが特に有利である。この場合実際に、これらの粒子は一般に単結晶であり、これらの粒子の各々はこの際、固有の磁気モーメントを有し、および磁気マクロスピン(macrospin)として挙動する、「モノドメイン」磁気粒子である。したがってフェロ流体は、常磁性の全体的な挙動(「超常磁性」と呼ばれる現象)を有する。すなわち、これらの粒子は、磁場の不存在下に残留磁化を保持しない。残留磁化が存在しないということは、これらの残留磁気モーメントを補うために互いに引き付け合う傾向がある、非単結晶磁気粒子を用いて見られるものとは反対に、凝集を引起こす性質の粒子間に磁気相互作用を誘発しないという利点を有する。
【0011】
同様に、例えばMRI用の造影剤として、動物またはヒトにおける投与のために磁気粒子の分散液を用いたい場合、特に最大限の生物膜を通過するように、できるだけ小さい流体力学的直径を有する粒子を入手する必要があることが多いことにも注目すべきである。これらの分散液が静脈内注射されるとき、粒子サイズの減少はまた、特に毛管レベルでの血液網の閉塞現象を回避するために、特に塞栓症のリスクを制限するためにも必要であることが明らかになる。
【0012】
できるだけ減少した粒子間凝集率を有する磁気酸化鉄の粒子の水性分散液を得るための最も通常な手段の1つは、分散性水性媒質のpHを、5未満の値(酸性フェロ流体)、または10超の値(塩基性フェロ流体)に制御することからなる。
【0013】
このことに関して、水性媒質中で、酸化鉄例えばフェライトの粒子の表面において、≡FeIII−OHによって概略を示すことができるヒドロキシル種の形成を生じる、水分子の化学吸着が見られることが観察された。これらのヒドロキシル種は、両性であり、水性媒質のpHに応じて、これらは、次の反応図式にしたがって正電荷または負電荷の形成を生じる:
≡Fe−OH+H⇔≡Fe−OH+HO(酸性媒質)
≡Fe−OH+OH⇔≡Fe−O+HO(塩基性媒質)
しかしながら、pH5から10において、酸化鉄の粒子の表面に存在する電荷密度は、静電型の安定化を確保するには弱すぎる。このことに関して、酸化鉄の等電点、すなわち酸化鉄の表面に存在する電荷が相殺し合うpHが、一般に7程度である(これは一般に6から9であり、典型的には特にマグヘマイトの場合7である)ことに注目すべきである。このようにして、pH7程度における水性フェロ流体(特にUSPIO型)の安定性は、単純な静電安定化によって得ることができないことが明らかになる。このことは特に、生理的pH、すなわちpH7.4程度で安定な分散液を入手することが正に必要である医療用途(特にIRM用の造影剤)へのフェライト型の酸化鉄の粒子の使用への制限となる。
【0014】
中性pHの水性フェロ流体の安定性を確保するために、したがって、分散液の等電点を移動させ、この結果、粒子間凝集に対するこの分散液の安定性の範囲を移動させることを目的として、これらの粒子の表面での分子のグラフト化を利用する安定化方法が開発された。
【0015】
本明細書において言及されているフェロ流体の粒子の「等電点」とは、前記粒子が有する表面電荷が相殺し合う分散液のpH値を示す。この等電点(またはPIE)は特に、ゼータ測定(zetametrie)によって、すなわち、例えばR.J.Hunterによって「コロイド科学におけるゼータ電位、原理、および用途(Zeta Potential in Colloid Science,Principles and Applications)」、Academic Press,ロンドン(1986)に記載されている方法にしたがって、様々なpH値における粒子の分散液のゼータ電位を測定して決定することができる。
【0016】
一般的に、フェロ流体は、PIEから離れたpH範囲内の粒子間凝集に対して安定であり、一方、このPIE程度のpHにおいて、フェロ流体は不安定になる。不安定性帯域は、PIEの値の周りで多少なりとも狭めることができ、この帯域の広がりは、特にフェロ流体の粒子のサイズおよび表面帯電部位の数に応じて様々である。このようにして一般に、不安定性帯域の広がりは、粒子のサイズとともに減少する。大部分の場合、フェロ流体は、(PIE−2)未満(及び(PIE+2)超)のpHの値で安定であるが、フェロ流体の安定性帯域は、しかしながら多少なりとも大きく変動しうる。いずれにせよ、フェロ流体は、PIEの近くのpHで安定性を失う。したがって、中性媒質中で安定なフェロ流体を得るために、7の値からできるだけ離れたPIEを有するフェロ流体を得る努力がなされた。この枠内で特に、中性媒質中に安定化されたフェロ流体であって、アミノ種によって変性された表面を有し、例えばアミノシランなどの分子のグラフト化によって得られた組成物について記載された。
【0017】
しかしながらこの目的で開発された方法は、最も多くの場合、グラフト化の間、粒子の凝集プロセスを生じ、これらの方法は、この事実から、表面でグラフト化された粒子凝集体を得ることだけを可能にする。大きいサイズの粒子を得ることにつながるこの型の方法として、例えば特にWhiteheadらによって米国特許第4,695,393号に記載されている方法を挙げることができる。
【0018】
アミノシラン型の種によるグラフト化の間、粒子間凝集現象を避けるために、グラフト化が実施される媒質中で、酸化物粒子の分散液を得ることを目的として、反応媒質を、超音波下の処理(音波処理)に付して、グラフト化反応を行なうことが提案された。このことに関して、特にLesniakらのMat.Res.Soc.Symp.Proc.,432、169−174、(1997)における論文を参照することができるであろう。これらの方法において、最適なグラフト化を得ることができるように、できるだけ強い条件下に音波処理を行なうことが推奨される。これらの条件下、この型の方法は、小さいサイズの粒子の入手に導くことができ、この場合、これらの粒子は、9.5程度の値に達しうるPIEを有しうる。このことによって、pH7.5程度までのこれらの利用を考えることができる。
【0019】
ところであらゆる予想に反して、本発明者らは今や、最新技術によって教示された強度の音波処理をこのために用いる必要もなく、小さいサイズの粒子の入手につながる、酸化鉄をベースとする粒子のグラフト化を実施することが可能であることを発見した。ただし、このグラフト化は、粒子の安定コロイド分散液の形態の酸化鉄をベースとする粒子に対して実施し、およびコロイド分散液の安定条件下に表面の処理を行なって(すなわち、これらの粒子の羊毛状塊または凝集を避けて)実施することを条件とする。この枠内で、本発明者らは、得られたグラフト化粒子の流体力学的直径が、出発コロイド分散液の粒子の流体力学的直径に実質的に等しい(さらには、最も多くの場合同一である)ことを証明した。
【0020】
さらに驚くべきことには、本発明者らの研究によって、このほかに、次のことを確立することができた。すなわち、グラフト化の間、コロイド分散液の形態に維持された酸化鉄をベースとする粒子に対して実施されたグラフト化は、音波処理下のグラフト化を利用する現在公知の方法によって得られた粒子の等電点よりも高い等電点を有する粒子を得ることを可能にするということである。このことに関して、特別な理論によって縛られたいわけではないが、まったく意外にも、音波処理下の分散に維持された分散液よりも、安定コロイド分散液のそういうものとしての利用が、これらの粒子のより均一なグラフト化を生じ、このことは得られた粒子を、中性媒質中に、より安定なものにするように思われる。
【0021】
さらに意外なことに、本発明者らはまた、研究の間に、フェロ流体の酸化物の粒子に対する化合物例えばアミノシランのグラフト化が、これらの粒子の熱安定性を実質的に改良すること、特に、これらの粒子がマグヘマイトの粒子である場合であることも発見した。このことは特に、複合材料、または高温で磁気特性を有するセラミックの製造におけるこれらの使用にとって有利であることが明らかになる。
【0022】
このほかに、本発明者らが実施したような表面の変性が、アミノ基によって表面でグラフト化された粒子を得ることを可能にし、これらを介して、化学種特に巨大分子は、グラフト化された粒子の表面に固定化されうることが明らかになる。特に、本発明者らによって実施された表面の変性は、多糖類とアミノ基との間の共有結合の確立という手段によって、多糖類分子、特にデキストラン分子の固定化を可能にする。
【0023】
この特定の枠内で、本発明者らの研究によって、驚くべきことに、アミノ基に対する多糖類などのような巨大分子のグラフト化が、本質的に個別化された粒子の集団を保持しつつ、およびさらには小さい流体力学的直径、典型的には50nm未満、最も多くの場合40nm未満の直径を保持しつつ実施することができることを証明することができた。
【0024】
(i)減少した流体力学的直径を有し、および(ii)共有結合された多糖類(特にデキストラン)型の巨大分子によって表面でグラフト化されている磁気粒子を得るこの可能性は、特に動物またはヒトにおける投与のための組成物の作製のため、特に磁気共鳴映像法(MRI)用の造影剤組成物の作製のために大きい利点を有する。
【0025】
実際、このようにして得られた粒子の分散液は、特に生体内MRI用造影剤として現在用いられている磁気粒子分散液の特に有利な代替分散液になる。
【0026】
現在、生体内投与のための磁気粒子の分散液は、実際、(特に良好な組織拡散を確保するために)できるだけ小さい、典型的には100nm未満の流体力学的直径を有し、およびこの表面が、一般的に表面上に吸着された親水性巨大分子、例えばデキストランによって覆われている粒子である。粒子の表面のこの被覆は特に、これらの粒子の表面を、親水性および電気的に中性にし、免疫系による粒子の検出を遅らせるようにするため(すなわち、生体内での粒子の半減期を増加させ、例えば肝臓のレベルでこれらの排除を遅らせるため)に実施される。
【0027】
最新技術のデキストラン型の分子によって被覆されたこれらの粒子は一般に、特にデキストランの被覆が、最も多くの場合、デキストラン層によって取囲まれた複数の磁気粒子の凝集を生じる条件下に実施されるという事実によって、比較的大きいサイズを有する。しかしながら、あるいくつかの合成条件下、例えば米国特許第4,452,773号に記載されている条件下、比較的小さい、典型的には50nm程度のサイズの粒子を作製するに至った。これらは一般に、「USPIO」(英語で「極小超常磁性酸化鉄(Ultrasmall Superparamagnetic Iron Oxides)」)、さらにはまた「MION」(英語で「微晶質酸化鉄ナノ粒子(Microcrystalline Iron Oxide Nanoparticles)」という用語によって示されている。しかしながら、これらのサイズがどんなものであっても、現在公知のデキストラン型の巨大分子で被覆された磁気粒子は、最も多くの場合、これらが生体内に投与されたとき、デキストランの枯渇現象を生じる。このことは、これらが導入された生体における滞留時間を減少させる。
【0028】
これに対して、本発明者らによって開発されたデキストラン型の巨大分子によって表面でグラフト化された磁気粒子の分散液は、デキストラン型の巨大分子が、これらの粒子の表面に共有結合されているかぎり、このような不都合を示さない。このことによって、上記の「USPIO」または「MION」型のフェロ流体の場合に観察された枯渇現象を避けることができる。
【0029】
このほかに、本発明者らによって実施された研究によって、「USPIO」または「MION」型のフェロ流体の粒子とは反対に、本発明者らによって発見された、共有結合された多糖類型の巨大分子によって変性された表面を有する粒子これ自体が、例えば生物学的な利点を有する粒子(例えば特定の細胞または器官への標的化のためのエフェクター分子、また活性成分もしくはオリゴヌクレオチド)によって機能化されうること、しかもこの結果として粒子の流体力学的直径を増加させず、およびこのほかに最も多くの場合、本質的に個別化された粒子の集団を保持することを証明することができた。
【0030】
これらの発見に基づいて、本発明は特に、非常に小さい粒子サイズを有し、および中性媒質、特に生理的媒質中に安定であるような水性フェロ流体を提供することを目的とする。より特定すれば、本発明は特に、pH8まで安定な、特にpH6から8の範囲内で安定なフェロ流体を提供することを目的とする。
【0031】
一般的に、本発明はまた、フェロ流体の磁気レオロジー特性を変更することなく、特にこの磁気特性、およびこれらの粒子の流体力学的直径を本質的に保持しつつ、生理的媒質のpHを包含する、pH8までの範囲内でコロイドフェロ流体の安定範囲を移動させることができる方法を提供することも目的とする。
【0032】
本発明のもう1つの目的は、粒子間凝集現象を生じることなく、中性媒質中での低い粒子間凝集率を示し、およびこれらの粒子が化学種、例えば巨大分子によってグラフト化されうる水性フェロ流体を提供することである。この枠内で、本発明はより特定すれば、生体内に投与可能な多糖類型の親水性分子、特にデキストラン分子によって表面で変性された粒子を含み、およびこれらの粒子が、これらが導入された生体中で高い滞留時間を有するフェロ流体を供給することを目標とする。
【0033】
本発明はまた、診断目的のために(特にMRI用の生体特異的造影剤組成物)、または治療目的のために(活性成分特に例えば薬剤の、標的されたベクトル化)、特定の細胞または器官への標的化を可能にするのに適した、特に注射により生体内投与可能な、小さい流体力学的直径の磁気粒子の分散液を提供することを目標とする。
【0034】
このようにして、第一の側面によれば、本発明は、20nmまたはそれ以下の寸法の磁気酸化鉄をベースとする粒子(p)であって、この表面が、前記粒子の表面へ共有結合されたアミノ基Rのグラフト化によって変性されている粒子を含む、以下で「アミノフェロ流体」と呼ばれる水性分散液であって、このように変性された表面を有する粒子の等電点が、10またはそれ以上である分散液を目的とする。
【0035】
「粒子の水性分散液」とは、本明細書の意味では、水性の媒質、例えば水、水溶液、また、水/アルコール混合物中の粒子の分散液のことを言う。
【0036】
本発明のアミノフェロ流体は、最も多くの場合、水性媒質中に分散された酸化鉄をベースとする粒子のみからなる、最新技術の水性フェロ流体(「非グラフト化」フェロ流体)のものと類似の磁気およびレオロジー特徴を示す。このようにして、存在する粒子のサイズおよび形態、ならびに磁気外力下のこの流体の特性は一般に類似である。しかしながら「非グラフト化」型のフェロ流体とは異なって、本発明のアミノフェロ流体は、このほかに、10超の等電点を有するという利点を有する。この等電点は、10.1またはそれ以上のことが最も多く、有利には10.2またはそれ以上、さらには10.3超であり、この等電点は一般に、11またはそれ以下であり、最も多くの場合、10.5またはそれ以下である。このようにして、本発明によるフェロ流体中に存在する、変性された表面を有する粒子(p)は、pH8未満の媒質、したがって中性媒質、特にpH6から8で、例えば生理的環境、すなわち「非グラフト化」フェロ流体が明らかな羊毛状塊を形成する傾向を示す範囲における粒子間凝集に対して一般に安定である。
【0037】
好ましくは本発明によるアミノフェロ流体は、pH8またはそれ以下を有する水性分散液の形態にある。場合により、本発明のアミノフェロ流体は、最も多くの場合、20nmまたはそれ以下の平均流体力学的直径を有する粒子の分散液の形態にある。特に、これらの粒子(p)が十分に小さいとき、典型的には5から7.5nmの寸法を有するとき、pH8またはそれ以下の本発明によるアミノフェロ流体は一般に、本質的に個別化された粒子の安定コロイド分散液の形態にある。
【0038】
このようにして、最も多くの場合、本発明によるアミノフェロ流体において、存在する粒子の少なくとも95%、好ましくは存在する粒子の少なくとも98%が、個別化された、すなわち1つまたは複数のほかの粒子と凝集されていない粒子である。換言すれば、本発明によるアミノフェロ流体は一般に、極端に減少した粒子間凝結体率を有する。したがって一般に、本発明によるアミノフェロ流体において、100のうち多くても5(好ましくは多くても2)個の懸濁液中固体要素が、粒子の凝結体の形態にある。一般に、本発明によるアミノフェロ流体において、30nm超のサイズの粒子間凝結体は見られない。
【0039】
ここで言及されている「平均流体力学的直径」は、光子相関分光分析によって、例えばゼタサイザー(Zetasizer)型装置、例えば特にマルバーン・インストルメンツ(Malvern Insruments)によって商品化されているゼタサイザー3000HSによって測定されているような数平均流体力学的直径である。この測定方法は一般に、ドップラー効果を有するレーザー干渉分光法による分析と組合わされた、毛管電気泳動法を利用する。透過型電子顕微鏡で実施された写真撮影は一般に、X線回折で実施された測定と同様に、この平均流体力学的直径を確認する。一般に、本発明による分散液中のグラフト化粒子の平均流体力学的直径は、3から15nmである。特に注射による生体内投与のための組成物の調製のために、特に本発明のアミノフェロ流体の使用を考える場合、この流体力学的直径は、12nm未満、有利には10nm未満、より好ましくは8nmであるのが有利であろう。
【0040】
本発明による組成物中に存在する磁気酸化鉄をベースとする粒子(p)は一般的に、全部または一部が、磁気特性、好ましくはフェリ磁気特性を有する酸化鉄からなる粒子である。これらの粒子において、磁気酸化鉄の量は、これらの粒子中に存在する無機化合物の総質量の好ましくは少なくとも50質量%、有利には少なくとも60質量%、さらにより好ましくは少なくとも90質量%であり、これらの粒子は好ましくは本質的に、1つまたは複数の酸化鉄から構成され、この酸化鉄は、いずれの場合も、少なくとも粒子(p)の表面のレベルに存在する。好ましくは本発明の水性分散液の粒子(p)の構成磁気酸化鉄は、式MFe(M=CO、Ni、Cd、Mn、ZnまたはMgとの)のフェライト、マグネタイトFe、マグヘマイト(Fe−γ)、またはこれらの酸化物の混合物から選択される。
【0041】
本発明の好ましい実施態様によれば、粒子(p)は本質的に、マグネタイト(Fe)および/またはマグヘマイト(Fe−γ)から構成され、有利にはこれらは、本質的にマグヘマイトである。
【0042】
このようにして本発明の粒子(p)は、フェライト、マグヘマイト、および/またはマグネタイトから、少なくとも95質量%の割合で、有利には少なくとも98質量%の割合で構成されることが好ましい。
【0043】
これらの正確な性質がどんなものであれ、粒子(p)は、結晶性の粒子であることが好ましい。有利には粒子(p)は、少なくとも一部(好ましくは本質的には)、酸化鉄の単結晶、有利にはマグネタイトまたはマグヘマイトの単結晶である。
【0044】
さらには特徴的には、本発明による磁気粒子の水性分散液において、粒子(p)は、アミノ基Rによって表面でグラフト化されている。これらの基Rの各々は一般に、第一アミノ基−NHを含んでいる。最も多くの場合、これらの基は、プロトン形態にあることが多い。これらのアミノ基Rは、粒子に共有結合され、有利には−(A)−NH(式中、基−(A)−は、1から12個、好ましくは多くても8個の炭素原子を含む炭化水素鎖を示し、この鎖は場合により、1つまたは複数の基−NH−によって、一般に場合により1から3個の基−NH−によって中断されている)の基である。最も多くの場合、基Rにおいて、基−(A)−が線状鎖を示すことが好ましい。さらには基−(A)−は有利には、飽和炭化水素鎖である。考えられる変形例によれば、基−(A)−は、しかしながら芳香環を含んでいてもよい。
【0045】
特に有利には、本発明による分散液の粒子(p)の表面へ共有結合されたアミノ基Rは、次のものから選択される:
(i)式−(CH)n−NH(式中、n=1、2、3、4、5、6、7、または8であり、nは好ましくは3、4、5、または6であり、有利には3である)の基;
(ii)式−(CH)n−NH−(CH)n2’−NH(式中、nおよびn2’は、同一または異なって、各々1、2、3、4、5、または6であり、好ましくは1、2、または3であり、有利には2を示し、(n+n2’)は、2から9内に留まると理解される)の基;;
(iii)式−(CH)n−NH−(CH)n3’−NH−(CH)n3”−NH(式中、n、n3’ 、およびn3”は、同一または異なって、各々1、2、3、または4、好ましくは1、2、または3、有利には2を示し、(n+n3’+n3”)は、3から12内に留まると理解される)の基。
【0046】
例として、基Rは、次の基から選択された基を表わしうる:
−(CH−NH
−(CH−NH
−(CH−NH−(CH−NH
−(CH−NH−(CH−NH
−(CH−NH−CH(CH)−CH−NH
−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH
【0047】
【化2】

【0048】
これらの正確な性質がどんなものであれ、アミノ基Rは、特徴的には、共有結合を介して粒子(p)へ結合された基である。最も多くの場合、この共有結合は、次の図式的構造にしたがって、ケイ素原子を介して確保される:
【0049】
【化3】

【0050】
換言すれば、粒子(p)の表面に存在する基Rは一般に、基Rを有するシランと、磁気酸化鉄をベースとする粒子(p)との反応によって得られる。
【0051】
一般に、粒子(p)の表面で共有結合されている基Rの平均量は、1mあたり少なくとも2マイクロモル(μモル/m)であり、これは最も多くの場合、3から10μモル/mであり、これは4μモル/m超に留まるのが好ましいと理解される。一般にこの量は、8μモル/m未満に留まる。
【0052】
本発明による分散液は、比較的大きい数がグラフト化された粒子を含みうることを強調すべきである。したがって、本発明による分散液について、1リットルあたり酸化鉄30グラム超、さらには100g/L、同様にあるいくつかの場合500g/L超の粒子(p)の濃度を考えることができる。したがって典型的には、本発明によるアミノフェロ流体は、酸化鉄50から600gの割合の粒子(p)を含みうる。このような濃度の利用の可能性を考慮に入れると、本発明による分散液は特に、超常磁性挙動を有するフェロ流体として特に有用であることが明らかになる。場合により粒子(p)は、好ましくは単結晶粒子、好ましくはマグヘマイトの「モノドメイン」粒子である。
【0053】
もう1つの側面によれば、本発明は、上に記載されているようなアミノフェロ流体の調製方法に関する。
【0054】
この方法は、次のものからなる工程を含むことを特徴とする:
(A)20nm未満の寸法の磁気酸化鉄をベースとする粒子(p)の酸性水性分散液を供給する工程であって、前記分散液は、酸性媒質中で、少なくともpH範囲内においてコロイド安定性を有し、この安定性は、前記pH範囲内において、攪拌を維持する必要もなく、20nm未満の平均流体力学的直径を有する、本質的に個別化された粒子の分散液が見られるようなものである工程;
(B)工程(A)の酸性コロイド分散液と、式R−SiX(式中、
− Rは、前に定義されているようなアミノ基を示し;
− X、X、Xは、同一または異なる基であり、各々酸性媒質中に加水分解可能な基を示す)
のシランとを接触させる工程であって、
この接触は、分散液のコロイド安定性が確保されるpH範囲内に媒質を維持しつつ実施され、これによって、基X、X、およびXの加水分解により、これらの粒子の分散液の媒質中のシラノールの形成が得られる工程;
(C)水の沸騰温度よりも高い沸騰温度の水溶性湿潤剤を反応媒質へ添加し、ついで水を除去するが、湿潤剤を除去しないのに十分な温度へ反応媒質を加熱する工程であって、これによって、(湿潤剤中に分散されたままである)粒子の凝集を避けつつ、粒子の表面でシラノールの凝縮が得られる工程;および
(D)工程(C)を終えて得られる粒子を回収し、これらを水性媒質中に分散する工程であって、これによって、本発明によるアミノフェロ流体が得られる工程。
【0055】
実際に、存在する粒子の流体力学的直径、および工程(D)を終えて得られたアミノフェロ流体の磁気特性は、工程(A)において供給された酸性コロイド水性分散液のものと極端に類似しているか、さもなければ同一であることが確認される。このようにして、本発明の調製方法を終えて得られた分散液の磁気レオロジー特性は一般に、工程(A)において利用された酸性コロイド水性分散液の特性によって完全に決定される。
【0056】
工程(A)において利用された酸性コロイド水性分散液は、一般にpH5未満、最も多くの場合pH2から4、有利にはpH3未満の酸化鉄をベースとする粒子のコロイド水性分散液である。好ましくは工程(A)のコロイド酸性水性分散液は、コロイド安定性が確保されるpH範囲において、懸濁液中に見られる粒子の平均流体力学的直径が、3から15nmであるようなものであり、この直径はあるいくつかの場合、12nmまたはそれ以下、さらには10nmまたはそれ以下、また、あるいくつかの特別な場合、8nmまたはそれ以下であってもよい。
【0057】
さらには、コロイド安定性が確保されるpH範囲において、懸濁液中に見られる固体種の数の5%未満、有利には2%未満、好ましくは1%未満が、複数の粒子のアグロメレートであるのが好ましい。
【0058】
一般に、工程(A)の酸性水性分散液はこのようにして、適合した流体力学的直径およびコロイド安定性を有する、最新技術から公知である安定化された水性「酸性フェロ流体」の大部分から選択することができる。したがって工程(A)の酸性コロイド分散液は有利には、Massartらによって、例えば米国特許第4,329,241号またはIEEE Trans.Magn.,MAG−17(2)、pp.1247−1248(1981)に記載されている方法を利用して得られるような、フェライト、マグネタイト、および/またはマグヘマイトの粒子の酸性水性フェロ流体であってもよい。
【0059】
特に有利には、工程(A)の酸性コロイド水性分散液は、次のものからなる工程を含む方法にしたがって調製されたマグヘマイトの粒子の分散液である:
(a1)鉄(II)の塩(および鉄(III)の塩)の混合物を含有する水溶液へ、塩基を好ましくは過剰に添加して、第一鉄塩または第二鉄塩の共沈を実施し、マグネタイトの粒子の綿状沈殿物を得るようにする工程;
(a2)例えば磁気デカンテーションによる、綿状沈殿物の場合による分離後(このことは一般に有利であることが明らかになっている)、得られた粒子の前記綿状沈殿物を、HNO、HCl、もしくはCHCOOHから選択された酸を用いて、有利にはHNOによって処理する工程であって、このことによって、粒子の表面を酸性化し、第一鉄イオンの可溶化によってこれらの粒子の表面酸化を実施することができる工程;
(a3)媒質へ、第二鉄塩の溶液を添加し、好ましくは媒質を加熱しつつ反応させておく工程(有利にはこの反応は、媒質を沸騰させて実施するが、これによって、マグヘマイトの粒子の形態の粒子の酸化が得られる);および
(a4)HNOもしくはHClOから選択された酸の添加によって、水性媒質中で先行工程を終えて得られたマグヘマイトの粒子の綿状沈殿物を分散する工程。
【0060】
場合により、上記方法の工程(a1)において利用された条件は、好ましくは次のとおりである:
− 用いられる鉄IIの塩:塩化第一鉄または硫酸第一鉄、有利には塩化第一鉄;
− 用いられる鉄IIIの塩:塩化第二鉄または硝酸第二鉄、有利には塩化第二鉄;
− 当初Fe(III)/Fe(II)モル比:好ましくは2程度;
− 共沈に用いられる塩基:アンモニアまたは水酸化ナトリウム。
【0061】
水酸化ナトリウムが用いられるとき、共沈の媒質が硝酸ナトリウムを含有することが好ましい。
【0062】
より一般的には、最も多くの場合、本発明の方法の工程(B)から(D)において実施された処理は、工程(A)の酸性コロイド水性分散液の粒子の内部の物理化学的性質に影響を与えない表面の処理であることに注目すべきである。この結果、工程(A)の分散液の粒子の化学的性質は一般に、工程(D)を終えた時に得たいと思う分散液の粒子(p)の性質と同じである。
【0063】
有利であることが明らかになる1つの実施態様によれば、工程(A)の酸性コロイド分散液中に存在する粒子は、50m/gから1,000m/gのBET比表面積を有し、この比表面積は好ましくは、100から200m/g、有利には130m/g程度である。
【0064】
本発明の方法の工程(B)は、これらの粒子を分散状態に維持しつつ、工程(A)のコロイド分散液と、アミノ基Rを有するシランとを接触させることからなる。シランと、分散状態にある粒子とのこの接触工程は一般に、工程(A)の時に供給された粒子の懸濁液中へのシランの添加によって実施され、一般に、得られた媒質を2から15時間の間、最も多くの場合攪拌下に反応させておく。一般にこの反応は、周囲温度で実施される。
【0065】
工程(B)において利用されるシランは、好ましくは式R−Si(−OR’)(−OR”)(−OR”’)のアミノトリアルコキシシランである:
(式中、
− Rは、前に定義されたアミノ基であり;
− R’、R”、およびR”’は、同一または異なって、各々1から5個の炭素原子を含むアルキル基を示し、R’、R”、およびR”’の各々は、好ましくはメチル基またはエチル基、有利にはメチル基を示す)。
【0066】
このようにして、工程(B)の特に有利なシランとして、特に次のものを挙げることができる:
− γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(CHO)−Si−(CH−NH
− N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(CHO)−Si−(CH−NH−(CH−NH
− N’−β−アミノエチル−N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(CHO)−Si−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH
【0067】
工程(B)において考えられるほかのシランは、次のとおりである:
− 4−アミノブチルトリエトキシシラン、
− N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチル−メチルジメトキシシラン、
− アミノエチルアミノメチル)フェネチル−トリメトキシシラン、
− N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチル−ジメトキシシラン、
− N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
− N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピル−トリメトキシシラン、
− m−アミノフェニルトリメトキシシラン、
− p−アミノフェニルトリメトキシシラン、
− 3−アミノプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
− 3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、
− 3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
− 3−アミノプロピルトリメトキシシラン。
【0068】
一般に、これらの性質がどんなものであれ、工程(B)のシランは、純粋な形態、または有機溶媒中、好ましくは場合によってはアルコール例えばメタノールもしくはエタノール中、より有利にはメタノール中の溶液の形態で、工程(A)の媒質中に導入される。シランが溶液として導入される時、有機溶媒中のシラン濃度は有利には、3から4重量%である。
【0069】
工程(B)中に導入されるシランの量は一般に、シラン基により粒子表面のできるだけ完全なカバー率を得るために調節される。このために、工程(A)の酸性コロイド分散液の粒子(p)によって拡張された利用可能な総表面積に対する、導入された基Rを有するシランの量は、少なくとも2.5μモル/m、好ましくは少なくとも10μモル/mであるのが一般に好ましい。粒子(p)によって拡張された利用可能な総表面積は、粒子の質量(g)に、これらの粒子のBET比表面積(m/g)を掛けて計算される。
【0070】
本発明において特徴的には、工程(B)の後に、脱水工程(C)が行なわれ、これは湿潤剤の存在下に実施される。この処理は、これらの粒子を湿潤剤中に懸濁させたまま脱水を実施することを目的とする。これによって、湿潤剤の不存在下に観察されるであろう粒子間凝結現象を避けつつ、酸化物の粒子の表面におけるシラノール種の効果的なグラフト化が得られる。この熱処理工程は特に、米国特許第4,524,088号または米国特許第4,695,393号に記載された方法において利用されている工程の型のものであってもよい。
【0071】
工程(B)のシランが、有機溶媒中溶液として導入されるとき、工程(C)の湿潤剤は好ましくは、工程(B)中に導入されたシランを可溶化する有機溶媒中に可溶であり、および前記有機溶媒の沸騰温度よりも高い沸騰温度を有する湿潤剤であり、工程(C)は一般に、湿潤剤を除去することなく、前記有機溶剤を除去するのに十分な温度での加熱工程を含む。溶媒のこの除去は、水の除去とともに、また別個に、場合により好ましくは水の除去に先立って実施されてもよい。
【0072】
すべてのモデルケースにおいて、工程(C)の実施に特に有利な湿潤剤は、グリセロールである。
【0073】
好ましくは、湿潤剤の性質がどんなものであれ、工程(C)の加熱は、真空下に実施され、このことによって特に、中程度の温度で作業を行なうことが可能になり、合成の間、グラフト化層を保護することが可能になる。このようにして、工程(C)の加熱が真空下に実施されるとき、工程(C)の脱水を、130℃またはそれ以下、好ましくは120℃未満(典型的には80から100℃程度)の温度で実施するのが特に有利であることが明らかになる。さらには工程(C)が有機溶媒の除去工程を含んでいるならば、この工程は好ましくは、できるだけ低い温度、有利には50℃またはそれ以下の温度で実施される。
【0074】
工程(C)の後に、本質的に湿潤剤(最も多くの場合グリセロール)からなり、および一般に工程(B)の時に導入されて反応しなかったシランを含有する媒質中で、基Rによって変性された表面を有する粒子、および場合によりほかの副生物が得られる。本方法の工程(D)は、この媒質から粒子を回収し、ついで水性媒質中にこれらを分散することからなる。
【0075】
最も多くの場合、工程(D)は、例えばアセトンまたは水/アセトン混合物による、工程(C)を終えて得られた粒子の洗浄を含む。場合により、洗浄の間、これらの粒子を乾燥させないように注意する。このことによって特に、粒子間凝集のあらゆる現象を回避することができる。洗浄を終えて得られた、乾燥されていない粒子の綿状沈殿物はついで、水性媒質中に分散される。洗浄の時に乾燥がないことによって、水性媒質中の粒子の最適分散が可能になる。水性媒質中に導入された洗浄溶媒の痕跡(特にアセトンの痕跡)はついで、例えば真空下のエントレインメントによって除去することができる。
【0076】
有利には、工程(D)の時に実施された粒子の分散は、工程(C)を終えて回収された粒子を水中に入れ、酸、例えば硝酸、塩酸、または過塩素酸のゆっくりとした添加によって、媒質のpHを徐々に低下させて実施される。好ましくは硝酸を用いる。さらには、pHの漸減は、典型的には複数の工程で、好ましくは中程度の攪拌下、各工程における媒質のpHのpH1単位ずつの減少(decrementation)によって実施される。「酸によるペプチゼーション」と呼ばれるpHのこの漸減工程によって、粒子の表面に作られたグラフト化層を特によく保持することができる。上記ペプチゼーション技術を用いる時一般に、pH3程度に達したとき、個別化された粒子の形態で導入された綿状沈殿物の最適な分散液が見られる。ひとたびこの分散液が作製されたら、pHは、得られた懸濁液の安定性に影響を与えることなく、pH8未満の値の範囲内で変えることができる。特にpH6から8の安定アミノフェロ流体を得るために、特に、塩基例えば水酸化ナトリウムまたはアンモニアの添加によってpHを変えることができる。
【0077】
もう1つの側面によれば、本発明は、前記のアミノフェロ流体について考えることができる使用を目的とする。
【0078】
強調されているように、本発明のアミノフェロ流体は、通常のフェロ流体の特徴と同様な特徴(特に粒子の小さいサイズ)を有するが、これらはこのほかに、中性媒質中、特にpH6から8の範囲内で安定であるという利点を有する。一般的に、本発明のアミノフェロ流体は、したがって従来のフェロ流体の公知のあらゆる用途範囲において用いることができるが、中性媒質中のこれらの安定性は、これらをほかの型の用途に適するようにする。
【0079】
したがって、特にpH7程度において、特に生理的媒質中でのこれらの安定性を考慮に入れると、本発明のアミノフェロ流体は、特に生体内の磁気共鳴画像法用の造影剤組成物の調製のために特に有用であることが明らかになる。この型の用途において、アミノ基Rによって変性された粒子の小さいサイズは、良好な組織拡散に特に適していることが明らかになる。さらには、本発明者らはこのほかに、工程(A)および(B)の条件下に実施された、アミノ基Rによる表面の変性は、アニオン、例えば塩化物アニオンに対する当初酸性フェロ流体の安定性を増加させることも可能であることを証明した。これらのアニオンは、粒子の表面の正電荷の補償によって、酸性フェロ流体の安定性の損失を誘発しうるとして公知である。アニオンの存在下におけるこの安定化は、このフェロ流体が塩媒質と接触させられることが多い、生体内用途に特に有利であることが明らかになる。
【0080】
したがって一般的に、本発明のアミノフェロ流体は、ヒトまたは動物における経口または腸管外投与可能である、特に治療および/または診断用の組成物の調製のために、特に注射可能な組成物の調製のために特に有利であることが明らかになる。この枠内で得られたヒトまたは動物における投与のための組成物、特に磁気共鳴画像法用の造影剤の注射可能な組成物は、本発明のもう1つの目的を構成する。
【0081】
pH8未満のすべての範囲における本発明のアミノフェロ流体の安定性によって、このほかに、ほかの用途、特に様々な磁気組成物もしくは材料、例えばポリマー組成物もしくは材料(ここで、フェロ流体の粒子は例えば、複数のポリマー粒子間の網状化を確保しうる)における、またさらにはセラミック型の材料における磁荷としてのこれらの利用を考えることができる。この型の用途において、本発明のアミノフェロ流体は特に、組成物または材料の調製が、水性配合物を利用する時に特に有用であることが明らかになる。この型の利用に関して、本発明のアミノフェロ流体が、熱的に安定化された粒子を含有することを思い出すべきである。特にこれらは、740K超で、一般に1,050Kまでの温度で安定である。これらの粒子は、これらの磁気特性を失うことなく、740K超の温度で用いることができる磁気材料、特にセラミックの製造のための磁荷として用いることができる。
【0082】
さらには、強調されているように、本発明のアミノフェロ流体は、化学種と反応して、このアミノフェロ流体の粒子の表面化学を変性することができる、アミノ基Rが結合されている粒子(p)を含有する。驚くべきことに本発明者らは、本発明のアミノフェロ流体の粒子の安定性は、化学種と基Rとの反応による粒子(p)の表面の変性が、粒子間凝結現象が観察されることなく実施しうるようなものであることを発見した。このようにして、本発明のアミノフェロ流体は、本質的に個別化された磁気粒子の懸濁液の調製に用いることができ、これらの表面において、化学種が固定化され、ここで、化学種の固定化は、前記化学種と、アミノフェロ流体中に含有されている粒子(p)の表面に存在するアミノ基Rとの間の好ましくは共有的な結合を確立して実施される。
【0083】
この枠内で、本発明はより特定すれば、本発明によるアミノフェロ流体の粒子(p)の表面の変性方法を目的とする。この方法は、前記アミノフェロ流体と、粒子(p)の表面に存在するアミノ基Rと好ましくは共有的な結合を形成しうる化学種Eとを反応させることからなる工程(G1)を含み、この反応は、アミノフェロ流体の安定性条件において、すなわち一般にpH8未満で、有利にはpH4またはそれ以下、好ましくはpH3またはそれ以下で実施される。
【0084】
工程(G1)において利用される種Eの性質は、かなり大きい範囲で様々であってもよく、用いられるアミノフェロ流体の安定性条件において、工程(G1)の表面の変性に適した種を決定することは、当業者の能力の範囲内にある。
【0085】
最も多くの場合、上記工程(G1)を利用するとき、アミノフェロ流体の粒子(p)上に存在するアミノ基Rは、基−NHを有することが好ましい。この場合、工程(G1)において用いられた化学種Eは、好ましくはアルデヒド−CHO、カルボキシル−COO−、酸無水物、イソチオシアネート−SCN、シアネート−CN、またはマレイミド基を有する。
【0086】
有利には、アミノ基Rが基−NHを有するとき、工程(G1)において用いられた化学種Eは、アルデヒド基を有する。この場合、工程(G1)の反応は一般に、アミノフェロ流体と、基−CHOを有する化学種Eとを、還元剤、例えばNaBHの存在下に反応させることからなる。概略的には、粒子の表面で生じる反応は、この際、次の反応順序によって表わすことができる。
【0087】
工程1:[粒子]−NH+[E]−CHO→[粒子]−N=CH−[E]
工程2:[粒子]−N=CH−[E]+[還元剤]→[粒子]−CH−NH−[E]
好ましい実施態様によれば、工程(G1)において利用される種Eは、多糖類の分子、有利にはデキストラン分子であり、これの基−OHの一部が、基−CHOへ酸化されている。場合により、基−OHの基−CHOへの部分的変性は例えば、特にMolteniによって「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」、112、285−295(1985)に記載された方法にしたがって、酸化剤例えば過ヨウ素酸ナトリウムNaIOによって管理された酸化によって実施される。
【0088】
しかしながら工程(G1)において、ほかの種Eの使用も考えることができる。したがって種Eは、例えば着色剤であってもよく、これによって、得られた分散液は例えば、磁気インク組成物の作製に用いることができる。もう1つの考えられる変形例によれば、種Eは、一定の組成物に対して親和性を有する化合物であってもよい。この場合、得られた分散液は、前記化合物の磁気抽出(粒子と化合物との間の反応、ついで磁場によって反応した粒子の抽出)を実施するために用いることができるであろう。この用途は、特に精製、汚染除去(特に廃水の)、または該化合物の抽出方法において有効に利用することができるであろう。
【0089】
工程(G1)を利用し、本発明のアミノフェロ流体の前記変性方法にしたがって得ることができる、化学種Eがこの表面に固定化された変性表面を有する磁気酸化鉄をベースとする粒子の水性分散液は、本発明の特定の目的を構成する。これらの組成物は、次の記載において「変性されたアミノフェロ流体」という用語によって示されるであろう。
【0090】
本発明による「変性されたアミノフェロ流体」において、存在する粒子は一般に、よく個別化されている。したがって最も多くの場合、本発明にしたがって変性されたアミノフェロ流体中に含有されている固体要素の数の少なくとも90%、好ましくは95%は、磁気酸化鉄をベースとした、単一中心核を含んでいる個別化された粒子であり、この核は、20nm未満の寸法を有する。
【0091】
最も多くの場合、本発明にしたがって変性されたアミノフェロ流体は、専ら粒子の表面の変性のみで、当初アミノフェロ流体と非常に類似した構造を有する。特に、工程(G1)は、酸化鉄をベースとする粒子これ自体を変性しないことに注目すべきである。これらは一般に、当初フェロ流体中に存在する粒子と同一である。したがって、本発明にしたがって変性されたアミノフェロ流体において、酸化鉄をベースとする粒子は好ましくは、有利には20nm未満、一般に3から15nmのサイズを有する、好ましくは単結晶(「磁気モノドメイン」)のマグヘマイトの粒子である。
【0092】
種Eが、基−OHの一部が基−CHOへ酸化されている多糖類である変性アミノフェロ流体は、本発明にしたがって変性された、特に有利なアミノフェロ流体を構成する。特に詳しくは、種Eが、基−OHの一部が基−CHOへ酸化されているデキストラン分子である変性アミノフェロ流体が、この枠内で特に有利である。
【0093】
本発明者らは、これらの特別な変性アミノフェロ流体が、現在公知の「USPIO」(または「MION」)型のフェロ流体の利点(すなわち、粒子の小さいサイズ、および多糖類による粒子のカバー)を有し、このほかに補足的利点、すなわち、粒子の表面での多糖類分子の効率的な固定化をともなうことを証明した。現在公知のフェロ流体において確保されていないこの効果的な固定化は、次のことを可能にする:(i)生体内投与されたとき、粒子の血漿半減期を増加させること(これらの粒子が認識されず、免疫系によって除去される期間を反映する粒子の半減期は特に、粒子の表面のデキストラン型の多糖類の固定化の安定性に応じる);および(ii)糖類の枯渇または粒子間凝集現象を生じることなく、多糖類のカバー層上の化学種のグラフト化を可能にすること。
【0094】
以下の記載において、種Eが、基−OHの一部が基−CHOへ酸化されている多糖類である変性アミノフェロ流体であって、「USPIO」型のフェロ流体の特に有利な代替物を構成するアミノフェロ流体は、「VUSPIOフェロ流体」(英語で、「多目的極小超常磁性酸化鉄(Verstile Ultrasmall Superparamagnetic Iron Oxides)」という用語で示されるであろう。「VUSPIO」と呼ばれるこれらのフェロ流体は、本発明の特別な目的を構成する。
【0095】
「VUSPIO」フェロ流体は一般に、(一般に20nm未満、典型的には3から15nmの)寸法を有し、表面に、共有結合−NH−CH−を介して表面に結合された多糖類分子が共有結合によって固定化されている、磁気酸化鉄をベースとする粒子の水性分散液の形態にある。多糖類分子がデキストラン分子である「VUSPIO」フェロ流体が、特に有利である。
【0096】
最も多くの場合、「VUSPIO」フェロ流体において、多糖類分子によって変性された表面を有する粒子の平均流体力学的直径は、50nm未満であり、これは一般に、特に多糖類分子がデキストラン分子であるとき、40nmまたはそれ以下であり、さらには30nmまたはそれ以下である。
【0097】
さらには、「VUSPIO」フェロ流体において、非常に減少した非常に低い粒子凝集率を得ることができる。このようにして、「VUSPIO」フェロ流体は例えば、懸濁液中の固体要素として、これが、20nm未満の寸法を有する、酸化鉄をベースとした、単一中心核を含む個別化粒子を本質的に(すなわち、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、有利には少なくとも98%)含有するようなものであってもよい。この核は、共有結合された多糖類分子を含む層によって取囲まれている。この構造は特に、多糖類がデキストラン分子であるときに見ることができる。
【0098】
より一般的には、「VUSPIO」フェロ流体は、多糖類マトリックス中に「捕獲された」、1から250個の無機粒子からなる「核」を含む粒子を含んでいてもよい。しかしながら多糖類マトリックス中に捕獲された粒子の数は、かなり大きい程度で調節することができる。特に有利な方法によれば、この核数は、100未満、好ましくは50未満、有利には10未満である。特に有利には、この数は5未満であり、この数が1から3程度であることが特に有利である。粒子の大部分が、多糖類マトリックスによって取囲まれた単一核から構成されている「VUSPIO」フェロ流体が、本発明の1つの特別な目的を構成する。
【0099】
本発明による「VUSPIO」フェロ流体において、酸化鉄/多糖類の質量比は、好ましくは10:90から90:10、有利には30:70から40:60であり、この比は有利には35:65程度である。
【0100】
好ましくは本発明による「VUSPIO」フェロ流体において、磁気酸化鉄をベースとする粒子は、本質的にマグヘマイト(Fe3−γ)からなる。有利にはこれらの粒子は、単結晶(「磁気モノドメイン」)である。特にこの場合、本発明による「VUSPIO」フェロ流体は、磁気共鳴映像法用の造影剤組成物の調製のため、特に注射による生体内投与用組成物の調製のために特に有用であることが明らかになる。「VUSPIO」フェロ流体を含む磁気共鳴映像法用の造影剤組成物は、本発明のもう1つの特別な目的を構成する。
【0101】
さらには「VUSPIO」フェロ流体において、これらの粒子の表面に固定化された多糖類分子の基−OHの一部が、基−CHOの形態に酸化されることに注目すべきである。実際、最も多くの場合、本発明によるアミノフェロ流体の変性工程(G1)において用いられた酸化多糖類の基−CHOの一部だけが、アミノ基Rとの反応に入れられる。残留基−CHOは、「VUSPIO」フェロ流体の粒子の表面で化学種を固定化することができるかぎりにおいて、特に有利であることが明らかになる。より一般的には、このような残留基−CHOが存在してもしなくても、「VUSPIO」フェロ流体の安定性は、最も多くの場合、粒子間凝集の顕著な現象を観察することなく、これらの特別なフェロ流体の粒子の表面での化学種のグラフト化を考えることができるようなものである。換言すれば、「VUSPIO」フェロ流体は、化学種のグラフト化が、前記化学種Fと多糖類分子との間に好ましくは共有的な結合を確立して実施される、化学種Fが表面に固定化された個別化磁気粒子の分散液の製造のために有用であることが明らかになる。
【0102】
最後の側面によれば、本発明は、「VUSPIO」フェロ流体のこの特別な利用法、ならびにこれらの特定のフェロ流体の粒子の表面の変性によって得られた組成物を目的とする。
【0103】
特に本発明は、固定化された多糖類が、基−CHOの形態で酸化されたこれらの基OHの一部を有する「VUSPIO」フェロ流体の使用法であって、表面に化学種Fが固定化されている個別化された磁気粒子の分散液の製造のために有用であることが明らかであり、前記種Fの固定化が、種Fと、多糖類分子上に存在する基−CHOとの間に共有結合を確立して実施される使用法を目的とする。場合により種Fは好ましくは、1つまたは複数の基NHを有する。
【0104】
より特定すれば、本発明は、「VUSPIO」フェロ流体中に存在する粒子の表面の変性方法であって、前記「VUSPIO」フェロ流体と、多糖類分子と好ましくは共有的な結合を形成しうる化学種Fとを反応させることからなる工程(G2)を含む方法を目的とする。この方法において、用いられる「VUSPIO」フェロ流体は好ましくは、固定化された多糖類が、基−CHOの形態で酸化されたこれらの基OHの一部を有するフェロ流体であり、化学種Fはこの際一般に基−NHを有する。場合により、工程(G2)は一般に、「VUSPIO」フェロ流体と種Fとを反応させ、ついで、得られた媒質を、還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウムによって処理することからなる。
【0105】
前記変性方法を利用することによって、多糖類分子、有利にはデキストラン分子が、式−NH−CH−の共有結合を介して共有結合によって表面に固定化されている、磁気酸化物をベースとする粒子の水性分散液が得られる。これらの多糖類分子はこれ自体、化学種Fへ、好ましくはこれもまた共有結合を介して結合されている。これらの特別な水性懸濁液は、以下の記載において、「機能化VUSPIOフェロ流体」という用語で示される。
【0106】
本発明による「機能化VUSPIO」フェロ流体は、多数の用途分野において用いることができる。
【0107】
このようにして、これらのフェロ流体は特に、一定の細胞、組織、または器官への親和性を有する医療映像法用の造影剤組成物の調製に用いることができる。この枠内で、種Fは、これへの特異性が追求されている細胞、組織、または器官に対して親和性を示す種から選択される。このような種Fによって機能化されたVUSPIOフェロ流体を含む医療映像法用の造影剤組成物は、本発明のもう1つの特定の目的を構成する。
【0108】
本発明による「機能化VUSPIO」フェロ流体はまた、治療用の組成物の調製のために利用することもできる。これらの治療用の組成物は、本発明のもう1つの目的を構成する。この枠内で、種Fは、治療的活性成分、特に製薬活性成分、またオリゴヌクレオチドである(またはこれらを含む)。これらの種はこの際、特定の細胞または器官のレベルでベクトル化することができ、フェロ流体の小さいサイズによって、様々な生理的バリヤーを越えることができる。
【0109】
この上、本発明による「機能化VUSPIO」フェロ流体をベースとする治療用の組成物は、特にMRIによる活性成分の分布の調査をともなう、活性成分の送達に適合している。分布の調査をともなう生体内活性成分の投与の用途のために、利用される種Fが(i)治療的活性成分、および(ii)蛍光色素種などのマーカーを含んでいる、「機能化VUSPIO」型のフェロ流体を用いることが特に有利であることが明らかになる。これらの粒子の磁気特性によって、例えばMRIによる生体中のこれらの全体的な位置決定が可能になり、ついでより正確な位置決定を、蛍光色素型のマーカーを用いて実施することができる。これらのマーカーは例えば、活性成分が運ばれた組織を着色し、前記組織の同定を可能にする。
【0110】
一般的に、診断または治療的利点を有する種によってグラフト化された粒子を有する、本発明による分散液を含んでいる、治療用または診断用の組成物(医療映像法用の造影剤)は、最も多くの場合、経口または腸管外投与可能な組成物の形態、特に注射可能な組成物の形態にある。この枠内で、本発明による組成物は、分散液中に存在する粒子のほかに、考えられている投与に適した1つまたは複数の添加剤、および特に選択された投与方法に適したビヒクルを含んでいてもよい。
【0111】
本発明の様々な利点および特徴は、下に示されている例証例から考えて、さらによりはっきりと明確になるであろう。
【実施例1】
【0112】
アミノシランのカップリングによって変性された表面を有する、マグヘマイトのナノメートル粒子の水性分散液の合成(アミノフェロ流体)
1.1.マグヘマイトのナノメートル粒子の水性分散液の合成(酸性フェロ流体)
1.1.1.分散液(D1)
次の工程を実施して、マグヘマイトのナノメートル粒子の水性分散液(D1)を作製した:
・マグネタイト粒子の形成:1.5M塩酸170mL中に、塩化第一鉄31.41g(すなわち0.158モル)を溶解した。水3.5L中に溶解された塩化第二鉄85.4g(すなわち0.316モル)が入っている5Lのビーカーに、この溶液を導入した。25℃で攪拌下、2Mアンモニア溶液200mLの添加によって、鉄塩の共沈を実施した。このことは、マグネタイトのコロイド沈殿物の形成を生じた。得られたマグネタイト粒子を、磁気プレート上にデカントさせておき、ついで上澄み液を除去した。
【0113】
・対イオンNHの脱着および表面の酸化:先行工程で作製された綿状沈殿物を、2M濃度の硝酸200mLによって15分間処理した。硝酸によるこの処理は、対イオンNH(フロキュレーション剤)を脱着し、これらを硝酸塩イオンによって置き換えて、粒子の表面を酸性化するため、および同時に、表面酸化によって第一鉄イオンを可溶化するために実施した。綿状沈殿物をついでデカントし、上澄み液を再び除去した。
【0114】
・粒子の中心の酸化:ついで、予め沸騰させた0.33M濃度の硝酸第二鉄の水溶液600mLを導入した。30分間反応させておき、ついで磁気的にデカントし、上澄み液を除去した。この工程において、溶液状のFe3+イオンの供給は、これらの粒子のFeIIの酸化を引起こし、このことは、粒子中でのγFeマグヘマイト相の形成を生じる。
【0115】
・ぺプチゼーション:得られた媒質を、2M濃度の硝酸200mLによって処理した。この工程のとき、この酸によって供給されたプロトンは、酸化物の粒子の表面に吸着され、このことによって、粒子間静電斥力を可能にする表面電荷が得られる。
【0116】
ついで、この媒質を磁気デカンテーションに付した。これによって、マグヘマイト粒子の綿状沈殿物が得られ、これをアセトンによって3回洗浄した。これらの洗浄の際、粒子の凝集を避けるために、綿状沈殿物を乾燥させないように注意した。ついで、このようにして洗浄された(乾燥されていない)マグヘマイトの綿状沈殿物を、脱イオン水500mL中に入れた。これによって、ゾル状態の粒子の水性分散液が得られた。残留アセトンは、40℃で真空下、蒸発によって除去した。ついでこの容積を、10MΩで超純水の添加によって、1リットルにした。
【0117】
1.1.2.分散液(D2)
次の工程を実施して、マグヘマイト粒子の水性分散液(D2)を作製した。
【0118】
・マグネタイト粒子の形成:1M硝酸ナトリウムの水溶液2.5リットルが入っている5リットルのビーカーにおいて、塩化第一鉄31.41g(すなわち0.158モル)および硝酸第二鉄127.66gを溶解した。ついでpH13.2を得るまで、5M濃度の水酸化ナトリウム溶液の添加によって、鉄塩の共沈を実施した。このことは、コロイドマグネタイトの沈殿物の形成を生じ、これを、15分間攪拌下に維持した。得られたマグネタイトの粒子を、磁気プレート上でデカントさせておき、上澄み液を除去した。得られた綿状沈殿物を、ついで2回×2リットルの水で洗浄した。
【0119】
・対イオンNHの脱着および表面の酸化:先行工程の綿状沈殿物を、2M濃度の硝酸400mLによって15分間処理した。
【0120】
・粒子の中心の酸化:得られた媒質を沸騰させ、そこに0.33M濃度の硝酸第二鉄の水溶液600mLを導入した。30分間反応させておいた。このことは、粒子中でのγFeマグヘマイト相の形成を生じ、ついでこれらの粒子を磁気的にデカントし、上澄み液を除去した。
【0121】
・ぺプチゼーション:得られた媒質を、2M硝酸200mLによって処理し、粒子間静電斥力を誘発する表面電荷を得るようにした。
【0122】
この媒質を磁気デカンテーションに付し、これによって、得られたマグヘマイト粒子の綿状沈殿物が得られ、これを、綿状沈殿物を乾燥させないように注意しながら、アセトンによって3回洗浄した。ついで、このようにして洗浄された(乾燥されていない)マグヘマイトの綿状沈殿物を、脱イオン水500mL中に入れた。これによって、ゾル状態の粒子の水性分散液が得られた。残留アセトンは、40℃で真空下、蒸発によって除去した。ついで、この容積を10MΩで超純水の添加によって、1リットルにした。
【0123】
1.1.3.分散液(D3)
次の工程を実施して、マグヘマイト粒子の分散液(D3)を作製した。
【0124】
・マグネタイト粒子の形成:3M硝酸ナトリウムの水溶液2.5リットルが入っている5リットルのビーカーにおいて、塩化第一鉄31.41g(すなわち0.158モル)および硝酸第二鉄127.66gを溶解した。ついでpH13.2を得るまで、5M濃度の水酸化ナトリウム溶液の添加によって、鉄塩の共沈を実施した。このことは、コロイドマグネタイトの沈殿物の形成を生じ、これを、15分間攪拌下に維持した。得られたマグネタイトの粒子を、磁気プレート上でデカントさせておき、上澄み液を除去した。得られた綿状沈殿物を、ついで2回×2リットルの水で洗浄した。
【0125】
・対イオンNHの脱着および表面の酸化:先行工程で作製された綿状沈殿物を、2M濃度の硝酸400mLによって15分間処理した。
【0126】
・粒子の中心の酸化:得られた媒質を沸騰させ、そこに0.33M濃度の硝酸第二鉄の水溶液600mLを導入した。30分間反応させておいた。このことは、粒子中でのγFeマグヘマイト相の形成を生じ、ついで、得られた粒子を磁気的にデカントし、上澄み液を除去した。
【0127】
・ぺプチゼーション:得られたゾルを、2M硝酸200mLによって処理した。この工程のとき、この酸によって供給されたプロトンが、酸化物粒子の表面に吸着され、このことによって、斥力を可能にする表面電荷が得られる。
【0128】
ついで、得られた媒質を磁気デカンテーションに付した。これによって、マグヘマイト粒子の綿状沈殿物が得られ、これを、綿状沈殿物を乾燥させないように注意しながら、アセトンによって3回洗浄した。ついで、このようにして洗浄された(乾燥されていない)マグヘマイトの綿状沈殿物を、脱イオン水500mL中に入れた。これによって、ゾル状態の粒子の水性分散液が得られた。残留アセトンは、40℃で真空下、蒸発によって除去した。ついでこの容積を、10MΩで超純水の添加によって、1リットルにした。
【0129】
分散液(D1)から(D3)の物理化学的特徴を、下記の表1にまとめる。
【0130】
【表1】

【0131】
1.2.実施例1.1.1から1.1.3において合成された酸性フェロ流体中のマグヘマイト粒子の表面の変性
先行工程において合成された安定化酸性フェロ流体(D1)、(D2)、および(D3)から、(D1a)、(D1b)、(D1c)、(D2a)、および(D3a)と記載された変性された表面を有するマグヘマイト粒子(アミノフェロ流体)の様々な分散液を作製した。表面の変性は、次の一般的なプロトコルを利用して、様々なアミノシラン化合物によって実施した。
【0132】
カップリング反応:
0.35MのFe3+濃度の該フェロ流体(場合に応じて(D1)、(D2)、および(D3))200mLの容積を、1分あたり300回転の速度で、磁気攪拌下に置いた。攪拌下、このフェロ流体へテクニカルメタノール(methanol technique)100mLを添加した。ついで、攪拌下に維持されているこの混合物へ、該フェロ流体の粒子によって拡張された表面積1mあたり148.3マイクロモルのシランに相当するアミノシラン化合物の量、すなわち、フェロ流体(D1)については0.1モル、(D2)については0.2モル、(D3)については0.5モルの、メタノール100mL中の溶液を添加した。この反応を12時間続行させておいた。
【0133】
・熱処理(脱水)
先行工程に続き、グリセロール200mLを添加し、1分あたり500回転の攪拌下に、数分間媒質を均一化した。ついで回転蒸発器を用いて、メタノールおよび水を抽出した(メタノールについては40℃で、ついで水については80℃で1時間、一次真空下の抽出)。
【0134】
得られた媒質を、ついで100℃で二次真空下(ベーンポンプ)2時間、熱処理に付した。ついで、媒質を周囲温度まで冷ましておいた。
【0135】
・抽出、洗浄
熱処理を終えて得られた混合物(このほかに、反応しなかったシランを含有する、本質的にグリセロールからなる媒質中のマグヘマイトの変性された粒子)を、ビーカーに導入した。このビーカーに、ゆっくりとした攪拌下(1分あたり100回転)、エタノール100mL、ついでアセトン200mLを連続的に注ぎ、変性されたマグへマイトの粒子のフロキュレーション、ならびにオリゴマー化されたシラン過剰の沈殿を実施した。
【0136】
磁気プレート上で粒子のデカンテーションを実施し、オリゴマー化されたシランを含む上澄み液を除去した。得られた粒子の綿状沈殿物を、3回×400mLの混合物(アセトン/超純水)(70:30v/v)で洗浄し、シランのオリゴマーおよび残留グリセロールを除去した。ここでもまた、これらの洗浄は、綿状沈殿物を乾燥させないようにして実施した。
【0137】
ぺプチゼーション
先行工程の最後の洗浄後、得られた綿状沈殿物へ超純水400mLを添加した。この際、pHは10.4であると測定され、これは、マグヘマイトの表面におけるアミノ官能基の存在、およびアミノ官能基によるこの表面の飽和を証明した。
【0138】
ついでこの媒質へ、高攪拌下(1分あたり700回転程度)、1M硝酸を一滴ずつ添加し、少しずつ各工程でpH約1単位ずつ、pHを徐々に低下させた。この酸性化によって特に、先行工程において粒子の表面上に形成されたアミノポリシロキサンのフィルムの接着を保持することができた。
【0139】
pH6に達したとき、マグヘマイト粒子は、分散を開始した。媒質のpHを3に調節し、この媒質を一日、攪拌下に放置した。ついでpHを新たにpH3に再調節した。
【0140】
これらの条件下、次の5つの分散液(アミノフェロ流体)を作製した。
【0141】
【表2】

【0142】
1.3.得られた変性マグヘマイト粒子(アミノフェロ粒子)の分散液の特性
得られた5つのアミノフェロ流体の特徴を、下記の表2にまとめる。
【0143】
【表3】

【実施例2】
【0144】
塩化物イオンの存在下におけるフロキュレーションに対する安定性
フロキュレーションに関して、酸性フェロ流体に対する本発明のアミノフェロ流体の増加した安定性を例証するために、2つの型のフェロ流体中へ漸増濃度において塩化物イオンを導入することからなる比較テストを実施した。
【0145】
下記の表3は、実施例1の分散液(D1)、(D1a)、(D1b)、および(D1c)について、pH=3において観察されたフロキュレーションの限界濃度を示している。フロキュレーションの限界濃度は、該pHにおける、分散液中の塩化物イオンの最小濃度であり、これから、フロキュレーションの開始、すなわち媒質中の綿状沈殿物の形成およびこのサイズの増加による濁度の増加が観察される。限界濃度は、800nmの波長において測定された、光学密度の増加が観察される濃度に相当する。
【0146】
【表4】

【0147】
上記データを見ると、表面の変性は、塩化物イオンの存在下にフロキュレーションの限界濃度を少なくとも2倍にすることができることがわかる。
【実施例3】
【0148】
デキストラン分子のグラフト化(「VUSPIO」型の変性アミノフェロ流体の合成)
実施例1.2のアミノフェロ流体の粒子に対してデキストラン分子のグラフト化を実施した。デキストランの異なる4つの種類をテストした(デキストランT5:平均分子量=5,000:デキストランT15:平均分子量=15,000;デキストランT40:平均分子量=40,000;およびデキストランT70:平均分子量=70,000)。
【0149】
グラフト化は、次のプロトコルにしたがって実施した。
【0150】
・デキストランの活性化:
超純水200mL中のデキストラン10gの溶液を作製した。この媒質へ、2.06モル.L−1でNaIOの水溶液10mLを添加し、この混合物を12時間攪拌下に放置した。この酸化工程を終えたとき、この媒質中で得られた過ヨウ素塩を除去した。これを行なうために、薄い黄色の得られた溶液を、セルロース製の透析管(切断閾値(seuil de coupure)12,400g/モル−1、オルドリッチ(Aldrich))に注いだ。透析は、超純水が入っている5Lビーカーにおいて実施した。水は、2時間毎に5回取り替えた。得られた活性化デキストラン溶液を、4℃で保存した。アルデヒドの存在は、フェーリングテストによって確認した。
【0151】
・アミノフェロ流体の粒子に対する活性化デキストランのグラフト化
前に得られた10g/Lでの活性化デキストランの溶液200mLの容積を、実施例1.2において得られたようなフェロ流体20mL中に注いだ。作製された混合物を、24時間攪拌下に放置し、ついで0.206モル.L−1で水素化ホウ素ナトリウムの溶液10mLを添加した。得られた媒質を、pH=9で4時間、攪拌下に放置した。
【0152】
いずれの場合も、安定ゾルが得られた。
【0153】
・接線限外濾過(ultrafiltration tangentielle)によって得られたゾルの精製
蠕動ポンプ(ミリポア(Millipore)N80EL005)、シリコーン配管、および切断閾値100kDのポリ(エーテルスルホン)製の膜を含んでいるカートリッジ(プレプ/スケール(Prep/Scale)(商標)−TFF)から構成された限外濾過装置を用いた。
【0154】
このゾルを保存タンクに入れた。ゾルの膜中の通過後、洗浄を行なうために、このタンクに1Lの水を注いだ。ゾルを洗浄し、超純水3Lに対して中和した。得られた精製ゾルは、当初ゾルよりもさらに希釈されているが、この理由は、この装置の死容積が約100mLであるからである。この生成物の一部は、膜の内部に詰まったままである。しかしながらこれは、数時間の洗浄後、排出される。蒸発によって、粒子の分散液を、0.08MのFe3+濃度に濃縮した。
【0155】
下の表は、実施例1.2のアミノフェロ流体(D1a)、(D2a)、および(D3a)に対する様々なデキストランのグラフト化によって得られた結果をまとめる。得られた様々な変性アミノフェロ流体に、(G1)から(G9)という番号をつける。
【0156】
【表5】

【実施例4】
【0157】
機能化「VUSPIO」フェロ流体の合成
4.1.実施例3の変性フェロ流体の粒子に対する(ジアミノ)アミノテレシェリック(aminotelechelique)ポリ(酸化エチレン)のグラフト化
実施例3の変性アミノフェロ流体(G1)から(G3)の粒子に対して、デキストランのジアミノポリ(酸化エチレン)の分子のグラフト化を実施した。
【0158】
グラフト化を、次のプロトコルにしたがって実施した。
【0159】
該フェロ流体(場合に応じて(G1)、(G2)、または(G3))200mLの容積へ、水100mL中の20.5gのジアミノPOE(分子量=2,000g/モル)の溶液を添加した。次に、この媒質へ、0.206モル/Lの濃度の水素化ホウ素ナトリウムの水溶液100mLを添加した。pH9で攪拌下4時間反応させておき、次に超純水5Lに対する接線限外濾過下、ジアミノPOEの過剰を除去した。得られたホウ化水素およびホウ酸塩の分散液を、0.08MのFe3+濃度を得るまで、水の蒸発によって濃縮した。
【0160】
下の表Vは、3つの場合において得られた結果を示す。
【0161】
【表6】

【0162】
4.2.実施例3の変性フェロ流体粒子に対するモノアミノポリ(酸化エチレン)のグラフト化
実施例3のアミノフェロ流体(G4)、(G6)、および(G9)を用い、これを行なうために実施例4の操作プロトコルを利用して、実施例4と同様なグラフト化を実施した。ただし、モノアミノPOE(分子量=2,000g/モル)を用いた。さらに、POEの量は、実施例4に対して2分の1にした。このようにして、添加されたPOEの溶液は、水100mL中の10.25gのモノアミノPOEを含有する。
【0163】
下の表VIは、実施例1.2のアミノフェロ流体(D1a)、(D2a)、および(D3a)のグラフト化によって得られた結果をまとめる。
【0164】
【表7】

【0165】
4.3.蛍光種による実施例3の変性フェロ流体の粒子のグラフト化
リン酸塩緩衝液(pH7.4;0.01M)によって緩衝された、0.08MのFe3+濃度の、実施例3の変性フェロ流体100mLと、二リチウム(dilithie)塩の形態のローダミン(Rhodamine)B(Rh B)もしくはルシファー(Lucifer)イエロー(LY)10−3モルとを、光を避けて24時間反応させておいた。次に、実施例3の条件下にホウ化水素での還元を実施した。これらのアミノ種は、酸化デキストランのアルデヒド官能基と直接反応する。この反応の後に、有機相が無色になるまで、液−液(水/クロロホルム)抽出によって蛍光種(蛍光色素)の過剰を除去した。次にクロロホルムの痕跡を、回転蒸発器で除去する。
【0166】
4.4.蛍光種による実施例4.1の変性フェロ流体の粒子のグラフト化
TRITC(テトラメチルローダミンイソチオシアネート誘導体)もしくは(5−FAM、SE)(5−カルボキシフルオロセインのスクシンイミドエステル)10−3モルによる、炭酸塩/重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9;0.01M)によって緩衝された、0.08MのFe3+濃度の、実施例4.1によるフェロ流体100mLに対してカップリング反応を実施した。(5−FAM、SE)を、予め3mLのDMF中に溶解した。蛍光種の過剰の除去は、有機相が無色になるまで、液−液(水/クロロホルム)抽出によって実施した。クロロホルムの痕跡を、回転蒸発器で除去した。
【0167】
4.5.蛍光種による実施例6の変性フェロ流体の粒子のグラフト化
用いられた操作方法は、ジアミノPOEをモノアミノPOEとジアミノPOEとの2:1の割合の混合物と置き換えること以外、実施例4.4の方法と同じである。
【0168】
4.6.実施例4.1および4.2のフェロ流体の粒子に対するドキソルビシンのグラフト化
2.22.10−4モルのドキソルビシン(1/30モルグルコシド残渣に等しいモル数)を、ホウ化水素での還元の前に、実施例3において調製されたナノメートル粒子の分散液中に添加した。次に、実施例3に記載された操作方法にしたがう。ドキソルビシンで処理された粒子を、ついで、実施例4.1または4.2を終えたものと同じ処理に付す。
【0169】
4.7.実施例3のフェロ流体の粒子に対する葉酸のグラフト化
4.7.1.N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)での葉酸のエステル化
葉酸5gを、100mLのDMSO中に溶解した。この混合物に、2.5mLのトリエチルアミンおよび2.6gのNHSおよび4.7gのカルボジイミドを添加した。周囲温度で一晩反応させておいた。この反応の共生成物であるジシクロヘキシルウレアを、濾過によって抽出する。NHSとカップリングされた葉酸の溶液を、減圧下、蒸発器で濃縮した。生成物を、ついでジエチルエーテル中に沈殿させた。
【0170】
4.7.2.NHSとカップリングされた葉酸とのジアミノPOEの共役
15gのジアミノPOE(分子量=2,000g/モル)を、pH10.5で炭酸塩/重炭酸塩緩衝液100mL中に溶解した。工程4.7.1を終えて得られた生成物(葉酸−NHS)4.5gを、最少のDMSO(10mL)中に溶解した。ついでこの溶液を、ジアミノPOEを含有する溶液へ一滴ずつ注ぎ、12時間反応させておいた。ついで生成物を、切断閾値1kDの透析管において、12時間、規則的に水を交換しながら、超純水に対して透析した。
【0171】
4.7.2.実施例3の粒子に対する工程4.7.2の共役体のグラフト化
操作方法は、モノアミノPOEを、工程4.7.2のPOE−葉酸共役体と置き換えた、実施例4.5の方法と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20nmまたはそれ以下の寸法を有する磁気酸化鉄をベースとする粒子(p)であって、その表面が、前記粒子の表面に共有結合されたアミノ基Rのグラフト化によって変性されている粒子を含んでいる水性分散液であって、このように変性された表面を有する粒子の等電点が、10またはそれ以上である水性分散液。
【請求項2】
pHが8またはそれ以下であって、および20nmまたはそれ以下の平均流体力学的直径を有する粒子の分散液の形態にあることを特徴とする、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
粒子(p)の平均流体力学的直径が、3から15nmであることを特徴とする、請求項2に記載の分散液。
【請求項4】
粒子(p)は、マグヘマイト(Fe−γ)好ましくは単結晶のマグヘマイト(Fe−γ)から本質的になることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項5】
アミノ基Rが、式−(A)−NH(式中、基−(A)−が、場合によっては1つまたは複数の基−NH−によって中断されている、1から12個の炭素原子を含む炭化水素鎖を示す)の基であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項6】
アミノ基Rが、
(i)式−(CH)n−NH(式中、n=1、2、3、4、5、6、7または8)
の基;
(ii)式−(CH)n−NH−(CH)n2’−NH(式中、nおよびn2’は、同一または異なって、各々1、2、3、4、5、または6を示し、(n+n2’)は、2から9の範囲内に留まると理解される)の基;
(iii)式−(CH)n−NH−(CH)n3’−NH−(CH)n3”−NH(式中、n、n3’ 、およびn3”は、同一または異なって、各々1、2、3、または4を示し、(n+n3’+n3”)は、3から12の範囲内に留まると理解される)の基
から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の分散液。
【請求項7】
アミノ基Rは、結合:
【化1】

を介して粒子(p)の表面に結合されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項8】
(A)20nm未満の寸法を有する磁気酸化鉄をベースとする粒子(po)の酸性水溶性分散液を供給する工程であって、前記分散液は、酸性媒質中で、少なくともpH範囲内においてコロイド安定性を有し、この安定性は、前記pH範囲内において、攪拌を維持する必要をともなわずに、20nm未満の平均流体力学的直径を有する、本質的に個別化された粒子の分散液が見られるようなものである工程;
(B)工程(A)の酸性コロイド分散液と、式R−SiX(式中、
− Rは、請求項1または請求項5もしくは6に定義されているようなアミノ基を示し;
− X、X、およびXは、同一または異なって、各々酸性媒質中で加水分解可能な基を示す)
のシランとを接触させる工程であって、
この接触は、前記分散液のコロイド安定性が確保されるpH範囲内に媒質を維持しつつ実施される工程;
(C)水の沸騰温度よりも高い沸騰温度を有する水溶性湿潤剤を反応媒質へ添加し、ついで水を除去するのに十分であるが、湿潤剤を除去しない温度へ反応媒質を加熱する工程;および
(D)工程(C)を終えて得られる粒子を回収し、これらを水性媒質中に分散する工程
からなる工程を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の分散液の調製方法。
【請求項9】
工程(A)のコロイド酸性水性分散液は、コロイド安定性が確保されるpH範囲内において、懸濁液中に見られる粒子の平均流体力学的直径が、3から15nmであるようなものであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(A)のコロイド酸性水性分散液は、コロイド安定性が確保されるpH範囲内において、懸濁液中に見られる固体種の数の5%未満が、複数の粒子の凝集物であるようなものであることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
工程(B)において利用されたシランは、式R−Si(OR’)(OR”)(OR”’)(式中:
− Rは、請求項8に定義されているようなアミノ基を示し;
− R’、R”、およびR”’は、同一または異なって、各々1から5個の炭素原子を含むアルキル基を示す)
のアミノトリアルコキシシランであることを特徴とする、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(B)のシランが、
− 式(CHO)−Si−(CH−NHのγ−アミノプロピルトリメトキシシラン;
− 式(CHO)−Si−(CH−NH−(CH−NHのN−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;
− 式(CHO)−Si−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NHのN’−β−アミノエチル−N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(B)のシランが、有機溶媒中の溶液として導入されること、工程(C)の湿潤剤が、工程(B)に導入されたシランを可溶化する有機溶媒中に可溶であり、前記有機溶媒の沸騰温度よりも高い沸騰温度を有すること、および工程(C)が、湿潤剤を除去することなく前記有機溶媒を除去するのに十分な温度への加熱工程を含むことを特徴とする、請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(C)において、前記湿潤剤がグリセロールであることを特徴とする、請求項8から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(C)の加熱が、真空下に実施されることを特徴とする、請求項8から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程(C)の脱水が、130℃またはそれ以下の温度で実施されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(D)が、前記粒子を乾燥させることなく実施される、工程(C)を終えて得られた粒子の洗浄、ついで水性媒質中の得られた非乾燥粒子の羊毛状塊の分散を含むことを特徴とする、請求項8から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程(D)の際に実施された粒子の分散が、工程(C)を終えて回収された粒子を水中に入れ、酸のゆっくりとした添加によって、媒質のpHを徐々に減少させて実施されることを特徴とする、請求項8から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ヒトおよび動物における、経口または非経口投与可能な組成物の調製のための、特に磁気共鳴映像法用の造影剤の注射可能な組成物の調製のための、請求項1から7のいずれか1項に記載の分散液の使用。
【請求項20】
請求項1から7のいずれか1項に記載の分散液を含んでいる、ヒトまたは動物における投与のための組成物。
【請求項21】
組成物または磁気材料中の磁荷としての、請求項1から7のいずれか1項に記載の分散液の使用。
【請求項22】
化学種が固定化された表面において、本質的に個別化された磁気粒子の懸濁液の調製のための請求項1から7のいずれか1項に記載の分散液の使用であって、化学種の固定化は、前記化学種と、粒子(p)の表面に存在するアミノ基Rとの間に結合を確立して実施される使用。
【請求項23】
請求項1から7のいずれか1項に記載の分散液の粒子(p)の表面の変性方法であって、請求項1から7のいずれか1項に記載の前記分散液と、pH8未満で、粒子(p)の表面に存在するアミノ基Rと結合を形成しうる化学種Eとを反応させることからなる工程(G1)を含む、前記方法。
【請求項24】
化学種Eが、アルデヒド基を有すること、アミノ基Rが、基−NHを有すること、および工程(G1)が、還元剤の存在下に、請求項1から9のいずれか1項に記載の分散液と、基−CHOを有する化学種Eとを反応させることからなることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記種Eは、基−OHの一部が基−CHOへ酸化されている多糖類分子であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記種Eは、基−OHの一部が基−CHOへ酸化されているデキストラン分子であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項23から26のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる化学種Eが、表面に固定化されている、変性された表面を有する磁気酸化鉄をベースとする粒子の水性分散液。
【請求項28】
含有されている固体要素の数の少なくとも90%が、20nm未満の寸法を有し、磁気酸化鉄をベースとした、単一中心核を含んでいる個別化された粒子であることを特徴とする、請求項27に記載の分散液。
【請求項29】
前記種Eは、基−OHの一部が基−CHOへ酸化されている多糖類、例えばデキストラン分子である、請求項27または28に記載の分散液。
【請求項30】
式−NH−CH−の共有結合を介して、表面に結合された多糖類分子が、共有結合によって表面に固定化されている磁気酸化鉄をベースとする粒子の水性分散液であって、前記懸濁液は、請求項25に記載の方法によって得ることができる分散液。
【請求項31】
共有結合−NH−CH−を介して、デキストラン分子が共有結合によって表面に固定化されている磁気酸化鉄をベースとする粒子の水性分散液であって、この分散液は、請求項26に記載の方法によって得ることができる分散液。
【請求項32】
多糖類分子によって変性された表面を有する分子の平均流体力学的直径が、50nm未満である、請求項30または31に記載の分散液。
【請求項33】
懸濁液中の固定要素の少なくとも90%が、20nm未満の寸法を有し、酸化鉄をベースとした、単一中心核を含んでいる個別化された粒子であり、この核が、共有結合された多糖類分子を含んでいる層によって取囲まれている、請求項29から32のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項34】
磁気酸化鉄をベースとする粒子は、マグヘマイト(Fe−γ)から本質的に構成されている、請求項29から33のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項35】
粒子の表面に固定化された多糖類分子の基−OHの一部が、基−CHOの形態で酸化される、請求項29から34のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項36】
磁気共鳴映像法用の造影剤組成物の調製のための、請求項29から35のいずれか1項に記載の分散液の使用。
【請求項37】
請求項29から35のいずれか1項に記載の分散液を含んでいる、磁気共鳴映像法用の造影剤組成物。
【請求項38】
化学種Fが表面に固定化されている個別化された磁気粒子の分散液であって、前記化学種のグラフト化が、前記化学種と多糖類分子との間に結合を確立することによって実施される分散液の製造のための、請求項29から35のいずれか1項に記載の分散液の使用。
【請求項39】
化学種が表面に固定化されている個別化された磁気粒子の分散液であって、前記化学種の固定化が、前記化学種Fと多糖類分子上に存在する基−CHOとの間に共有結合を確立することによって実施される分散液の製造のための、請求項35に記載の分散液の使用。
【請求項40】
請求項30から35のいずれか1項に記載の分散液中に存在する粒子の表面の変性方法であって、請求項30から35のいずれか1項に記載の前記分散液と、多糖類分子と結合を形成しうる化学種Fとを反応させることからなる工程(G2)を含む方法。
【請求項41】
工程(G2)は、請求項35に記載の分散液と、基−NHを有する化学種Fとを反応させること、および得られた媒質を還元剤によって処理することからなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
式−NH−CH−の共有結合を介して、デキストラン分子が共有結合によって表面に固定化されている磁気酸化鉄をベースとする粒子の水性分散液であって、これらのデキストラン分子はこれ自体が化学種Fへ結合され、この分散液は、請求項40または41に記載の方法によって得ることができる水性分散液。
【請求項43】
一定の細胞、組織、または器官への親和性を有する医療用映像法用の造影剤組成物であって、前記種Fが、前記細胞、前記組織、または前記器官に対して親和性を有する種である、請求項42に記載の分散液を含むことを特徴とする組成物。
【請求項44】
前記種Fが治療的活性成分である、請求項42に記載の分散液を含むことを特徴とする、治療用組成物。
【請求項45】
注射可能な組成物の形態にあることを特徴とする、請求項43または44に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−511466(P2007−511466A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530350(P2006−530350)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001169
【国際公開番号】WO2004/107368
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(593174249)サントル・ナシオナル・ドウ・ラ・ルシエルシユ・シアンテイフイク(セー・エヌ・エール・エス) (4)
【Fターム(参考)】