説明

中性子照射量測定方法及び核燃料破損検出方法

【課題】原子炉に使用する部材の破損に至る中性子照射量を容易に求めることができる方法及び装置を実現する。
【解決手段】タグガス(Xe,Kr)の組成(同位体比)が中性子照射量に応じて変化することに着目し、被検出部材に所定の組成のタグガスを含ませておき、この被検出部材が破損することによって放出されたタグガスの組成を計測し、該組成の変化量を算出することにより、破損した被検出部材の同定と該破損に至る中性子照射量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子照射量測定方法及び核燃料破損検出方法及びこれらの方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速炉の破損燃料検出の1手法であるタギング法は、燃料集合体(燃料棒)ごとに同位体比を変えたXe(キセノン),Kr(クリプトン)等の標識ガス(タグガス)を予め燃料被覆管内に封入しておき、燃料破損時に放出されてカバーガス空間に移行するタグガスの同位体比を分析することにより破損してタグガスを放出した燃料棒を同定する手法である。
【0003】
この手法は、炉内で試験片をクリープ破断させる照射試験において、破断した試験片の同定にも応用されているが、照射試験で重要なパラメタである中性子照射量は、多重放射化箔法により別途測定・評価するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−43133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の照射試験において、中性子照射量の測定を行う多重放射化箔法は、数種類以上のドシメータセットを試験片の照射位置ごとに合わせて照射する必要があり、かつ、その測定は、全照射試験が終了して照射試験装置を炉外に取り出した後に回収し、放射線計測を行うものであり、多大な手間を要する問題がある。また、放射化箔の放射化の飽和と減衰の問題により、得られる実験値は照射終了間際の平均フラックスであり、さらに、個々の試験片の破断時の照射量は、別途運転履歴による積分計算を行わなければならない面倒さがある。
【0006】
本発明の1つの目的は、原子炉に使用する部材の破損に至る中性子照射量を容易に求めることができる中性子照射量測定方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、原子炉内で破損した燃料棒を容易に同定することができる核燃料破損検出方法を提供することにある。特に、炉内に実装される燃料棒に設定するタグガスの種類を少なくすることができるようにする。
【0008】
本発明の他の目的は、中性子照射量測定方法及び核燃料破損検出方法の実現に好適な測定装置及び検出装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記測定装置及び検出装置に使用するのに好適な分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の中性子照射量測定方法は、タグガス(Xe,Kr)の組成(同位体比)が中性子照射量に応じて変化することに着目し、被検出部材に所定の組成のタグガスを含ませておき、この被検出部材が破損することによって放出されたタグガスの組成を計測し、該組成の変化量を算出することにより、被検出部材の破損と該破損に至る中性子照射量を求めるものである。
【0011】
被検出部材が原子炉機材の材料開発試験片である場合には、複数の試験片に各試験片に異なる特有の組成のタグガスを含ませておき、これらの試験片を試験炉内に入れて放射線照射を行い、試験片が破損することによって放出されたタグガスの組成を計測し、該組成の変化量を算出することにより、破損した試験片の同定と該試験片の中性子照射量を求める。
【0012】
本発明の原子炉内で破損した燃料棒を同定する核燃料破損検出方法は、燃料交換が群単位で異なる時期に行われることに着目し、原子炉に実装する燃料棒を同一交換時期のものを1つの群とする複数群に区分し、各群内における燃料棒(燃料被覆管内)に封入するタグガスは該燃料棒が破損して放出されたときにその組成を測定して識別することによって各群内での同定を行うことができるように変えておき、燃料棒破損時に放出されたタグガスの組成によって各群における燃料棒を同定し、どの群の燃料棒かの識別は、放出されたタグガスの組成の変化量を算出することにより該燃料棒が実装されたときからの中性子照射量を求め、この中性子照射量に基づいて実装時期(交換時期)を求めて行うものである。
【0013】
本発明の中性子照射量測定方法及び核燃料破損検出方法の実現に好適な測定装置及び検出装置は、被検出部材の破損によって放出されたタグガスの組成を測定し、該組成の変化量(同位体比の変化量)を算出し、算出した組成の変化量に基づいて中性子照射量を求めることができるように構成する。
【0014】
このような測定方法及び検出方法においてタグガスの組成を測定するのに好適な装置は、測定対象の元素に固有の共鳴エネルギーに等しい波長のレーザ光を照射し、共鳴励起・イオン化して質量分析するレーザ共鳴イオン化質量分析装置であり、具体的には、イオン化室内に導入したサンプリングガスにレーザ光を照射することにより共鳴励起・イオン化し、制御電極群によってイオンビーム形態としてマスゲートを通過せることによりタグガスイオンビームとし、このタグガスイオンビームを反射電極群によって反射させることによりタグガスイオン(原子・分子)を質量の小さい順にマイクロチャンネルプレートに到達させて質量スペクトル信号に変換するように構成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の中性子照射量測定方法は、被検出部材が破損することによって放出されるタグガスの組成の測定し、その変化量を算出することにより、被検出部材の破損と該破損に至る中性子照射量を求めるようにしたことにより、原子炉に使用する部材の破損に至る中性子照射量を容易に求めることができる。
【0016】
本発明の核燃料破損検出方法は、燃料棒(燃料被覆管内)に封入するタグガスは該燃料棒が破損して放出されたときにその組成を測定することによって各群内での同定し、どの群の燃料棒かの識別は、放出されたタグガスの組成を計測し、その変化量を算出して行うようにしたことにより、原子炉内で破損した燃料棒を少ない種類のタグガスを使用して容易に同定することができる。
【0017】
本発明の中性子照射量測定方法及び核燃料破損検出方法を実現するための測定装置及び検出装置は、被検出部材の破損によって放出されたタグガスの組成を測定し、該組成の変化量(同位体比の変化量)を算出するように構成したことにより、放出されたタグガスの組成と該組成の変化量に基づいて破損した被検出部材の同定と該破損に至るまでの中性子照射量を求めることができる。
【0018】
本発明の分析装置は、導入したサンプリングガスにレーザ光を照射することにより共鳴励起・イオン化し、制御電極群によってイオンビーム形態としてマスゲートを通過せることによりタグガスイオンビームとし、このタグガスイオンビームを反射電極群によって反射させることによりタグガスイオン(原子・分子)を質量の小さい順にマイクロチャンネルプレートに到達させて質量スペクトル信号に変換するように構成したことにより、被検出部材の破損によって放出されたタグガスの組成と中性子照射量による組成を正確に測定し、その変化量(同位体比)を正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の中性子照射量測定システムの系統図である。
【図2】タグガスとして使用するXeガスの同位体比を中性子捕獲面積と併せて示すグラフである。
【図3】Xeの中性子照射量と組成変化の関係を示す特性図である。
【図4】タグガス測定装置の具体的な構成を示す模式図である。
【図5】レーザ共鳴イオン化質量分析法によりXeタグガスの同位体組成比を測定して得た質量スペクトルを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、タグガスの組成(同位体比)が中性子照射量に応じて変化することに着目し、被検出部材に所定の既知の組成のタグガスを含ませておき、被検出部材が破損することによって放出されるタグガスの組成を測定し、該組成の変化量を算出することにより、被検出部材の破損に至る中性子照射量を求めるものであり、
複数の被検出部材の破損と中性子照射量を検出するときには、各被検出部材に異なる特有の組成のタグガスを含ませておき、これらの被検出部材を試験炉内に入れて放射線照射を行い、被検出部材が破損することによって放出されたタグガスの組成を測定し、該組成の変化量を算出することにより、破損した被検出部材の同定と該被検出部材の中性子照射量を求めるものである。
【0021】
タグガスの組成の変化量は、所定の2つの同位体の比の変化を算出して求めるように構成する。Xeをタグガスとして使用する場合には、129Xeと130Xeの同位体比(130Xe/129Xe)の変化量を求めるように構成するのが好適である。
【0022】
複数の被検出部材の破損と中性子照射量を検出する場合において各被検出部材に含ませるタグガスの特有の組成は、放射線照射によって生じる組成の変化によって他の被検出部材に含ませたタグガスの組成と混同して破損した被検出部材の同定と中性子照射量を求めることができなくなるのを避けることができるように異ならせておくことが必要である。
【0023】
破損した被検出部品の同定と該被検出部材の中性子照射量を検出するために使用するタグガスとしては、XeやKrが存在するが、中性子反応断面積が大きく、有意な組成変化を測定することが可能なガスとしてはXeが好適であり、中性子照射量を高精度で検出するにはXeの使用が望ましい。
【実施例1】
【0024】
図1は、中性子照射量測定システムの系統図である。この中性子照射量測定システムにおいて、被検出部材であるクリープ破断試験片1は、中空状に形成してその内部にヘリウムガス(He)と所定(既知)の組成のタグガス(Xe)を混合して封入・加圧して構成する。このように構成したクリープ破断試験片1は、照射装置2によって原子炉容器3の炉心部3aに設置する。原子炉容器3内には冷却液4を流通させ、上部空間5はカバーガス(Ar)で満たす。原子炉容器3の上部空間5に開口するガスパイプ6は、カバーガスをガスサンプリング装置7に連通してカバーガスをガスサンプリング装置7に導く。タグガス測定装置8は、ガスサンプリング装置7によって定期的にサンプリングしたカバーガスに含まれるタグガスの組成を測定するように構成する。コンピュータ9は、クリープ破断試験片1に封入したタグガス(Xe)の初期組成データを保持し、タグガス測定装置8から測定データを取得し、初期組成データと測定データを比較することにより、検出したタグガスの組成(種類)を同定すると共に組成の変化量を算出して中性子照射量を求めるように構成する。
【0025】
ボイド検出装置10は、照射装置2に内蔵したボイド検出用熱電対に接続し、このボイド検出用熱電対の検出信号(クリープ破断試験片1が破断ことにより発生する温度のゆらぎに応動する。)に基づいてクリープ破断試験片1に破断が発生したことを検出するように構成する。
【0026】
このように構成した中性子照射量測定システムは、照射装置2によって原子炉容器3の炉心部3aに設置したクリープ破断試験片1が破断すると、ボイド検出装置10におけるボイド検出用熱電対から出力される検出信号にゆらぎが発生するのでクリープ破断試験片1の破断を検出することができる。そして、破断によってクリープ破断試験片1から放出されるヘリウムガスとタグガスが気泡11となって冷却液4中を上昇して上部空間5のカバーガスに混入する。
【0027】
ガスサンプリング装置7は、カバーガスを定期的にサンプリングしてタグガス測定装置8に移送する。タグガス測定装置8は、移送されたカバーガスをレーザ共鳴イオン化質量分析法により質量分析することによってカバーガスに含まれるタグガスの組成を測定する。
【0028】
コンピュータ9には、クリープ破断試験片1に封入するタグガス(Xe)の初期組成データを予め入力して保持させておき、タグガス測定装置8から測定データを取得して初期組成データと比較することにより、測定したタグガスの組成から予想される組成変化量だけシフトした組成に近似する初期組成データのガスを封入したタグガスと同定すると共に測定したタグガスの組成(同位体比)の変化量を算出して中性子照射量を求める。
【0029】
物性の異なる複数のクリープ破断試験片1を同時にクリープ破断試験するときには、封入するタグガスをクリープ破断試験片1ごとに異なる特有の組成(同位体比)のものとし、
測定データと初期組成データと比較することにより、測定したタグガスの組成から予想される組成変化量だけシフトした組成に近似する初期組成データのガスを封入したタグガス(破断したクリープ破断試験片1)と同定すると共に組成(同位体比)の変化量を算出して中性子照射量を求める。
【0030】
中性子照射量とタグガスの組成(同位体比)の変化量の関係は、封入するタグガスの種類ごとに予め照射試験により測定及び計算により求めてテーブル化してコンピュータ9に保持させておくことにより、クリープ破断試験においては、求めたタグガスの組成(種類)と組成変化量に基づいてテーブル参照することにより中性子照射量を求める。
【0031】
ガスサンプリング装置7は、サンプリングしたガスを収容するガス収容容器を切り離し可能に設け、ガスサンプリング装置7から遠く離れて位置するタグガス測定装置8にガス収容容器を搬送して接続することによりタグガスの組成を測定するように構成することも可能である。このような構成は、タグガス測定装置8を他のシステムのガス測定装置として共用することを可能にする。
【0032】
図2は、タグガスとして使用するXeガスの同位体比を中性子捕獲面積と併せて示すグラフである。同位体比は、天然比とほぼ同一である。中性子照射による同位体比の変化としては、124Xeの断面積が最大であるが、存在比が小さいため、変化量の絶対値としては小さく、最大となるのは、129Xe(n,γ)と130Xeである。変換先の130Xeの存在比は129Xeの1/7程度であるので、129Xeと130Xeの比(130Xe/129Xe)の変化量を求めるのが最善である。
【0033】
図3は、Xeの中性子照射量と組成変化の特性を示している。同位体比130Xe/129Xeは、全中性子照射量6.9×1022n/cmで20%増加する。なお、被検出部材破断により放出されたタグガスの測定では、放出前のカバーガスに含まれているXeを予め測定しておき、放出後の測定値から差し引くことが必要である。
【0034】
図4は、タグガス測定装置8の具体的な構成を示す模式図である。このタグガス測定装置8は、レーザ共鳴イオン化質量分析法によってタグガスの組成を測定する装置であり、測定対象の元素に固有の共鳴エネルギーに等しい波長のレーザ光を照射し、共鳴励起・イオン化して質量分析するものであり、原理的にバックグラウンドイオンが発生せず、S/N比を大幅に向上させることを可能とする。波長可変システムと飛行時間型質量分析計を使用して極微量の希ガス同位体分析システムを構成することにより、レーザ光の散乱等による妨害イオンの除去等の工夫を行うことによって、定量限界(バックグラウンドゆらぎの10σ)は、Xeの同位体については2ppt、Krの同位体については5pptを達成可能とするものである。
【0035】
飛行時間型質量分析計81は、試料ガスイオン化室部811と質量分析管部812を備える。
【0036】
試料ガスイオン化室部811は、ターボ分子ポンプ813とスクロールポンプ814によって高度に真空排気し、ガスサンプリング装置7から超音速パルス分子線バルブ8111を通してサンプリングガスをイオン化室内に導入し、導入したサンプリングガスにレーザ光を照射して共鳴励起・イオン化し、制御電極群8112によってイオンビーム82として質量分析管部812内に送り出す。レーザ光は、レーザ光入口窓8113からイオン化室内に導入し、偏光フィルタ付きレーザ光出口窓8114から導出する。
【0037】
質量分析管部812は、ターボ分子ポンプ815とスクロールポンプ816によって高度に真空排気し、試料ガスイオン化室部811から送り込まれたイオンビーム82をマスゲート8121によって偏向制御してタグガス組成成分のみを通過させる。マスゲート8121を通過したタグガスイオンビーム82は、反射電極群8122によって反射させてイオン検出部であるマイクロチャンネルプレート8123に入射させる。タグガスイオンビーム(原子・分子)82は、質量の小さい順にマイクロチャンネルプレート8123に到達して質量スペクトル信号に変換される。
【0038】
試料ガスイオン化室部811のイオン化室内に導入したサンプリングガスに照射するレーザは、YAGを励起に用いたYAGレーザ発振器817で発振したレーザ光を波長可変システム818により試料ガスイオン化に好適な波長の共鳴イオン化用レーザビーム83に調整し、ガスイオン化部に集束するようにレンズ819により絞ってレーザ光入口窓8113からイオン化室内に入射させる。
【0039】
デジタル信号処理装置84は、コンピュータ9と連係し、超音速パルス分子線バルブ8111とYAGレーザ発振器817を制御し、マイクロチャンネルプレート8123から出力される
そして、コンピュータ9は、前述したように、予め入力されるタグガス(Xe)の初期組成データと、中性子照射による組成変化量(予想値)と、中性子照射量とタグガスの組成(同位体比)の変化量の関係を示す中性子照射量テーブルを保持させておき、タグガス測定装置8から測定データを取得して初期組成データと比較することにより、測定したタグガスの組成から予想される組成変化量だけシフトした組成に近似する初期組成データのガスを封入したタグガスと同定すると共に組成(同位体比)の変化量を算出して中性子照射量テーブルを参照することにより中性子照射量を求める処理を行う。
【0040】
ちなみに、図5は、組成の異なるXeタグガスを封入した複数の被検出部材を炉内クリープ試験して中性子を照射し、被検出部材破断後にタグガス(試験炉のカバーガス)を採取して、レーザ共鳴イオン化質量分析法によりXeタグガスの同位体組成比を測定して得た質量スペクトルを示している。タグガスは、カバーガス空間において核種濃度で10〜10ppbまで希釈されるが、レーザ共鳴イオン化質量分析法により良好な質量スペクトルが得られ、これにより求められた同位体比を用いてタグガスの組成(破断した被検出部材)を同定し、同位体組成の変化量に基づいて中性子照射量を求めることができる。
【実施例2】
【0041】
原子炉内で破損した燃料棒を同定する場合には、原子炉に実装する燃料棒を同一交換時期のものを1つの群とする複数群に区分し、各群内における燃料棒(燃料被覆管内)に封入するタグガスは該燃料棒が破損して放出されたときにその組成を測定して識別することによって各群内での同定を行うことができるように変えておき、実施例1で説明した中性子照射量測定システムにおけるタグガス測定装置8を使用して、定期的にサンプリングされた原子炉内のカバーガスを測定することにより、燃料棒破損時に放出されたタグガスの組成に基づいて各群における燃料棒を同定し、どの群の燃料棒かの識別は、放出されたタグガスの組成の変化量を算出することにより該燃料棒が実装されたときからの中性子照射量を求め、この中性子照射量に基づいて実装時期(交換時期)を求めて行う。
【0042】
原子炉内における燃料棒の中性子照射量(被爆量)は、燃料棒が実装されてからの原子炉運転時間によって計算することができることから、原子炉運転時間と中性子照射量(被爆量)の関係を予め計算により求めてテーブル化したものを運転時間テーブルとしてコンピュータ9に保持させておき、タグガス測定結果から求めた中性子照射量(被爆量)により運転時間テーブルを参照することによって実装時期(燃料棒群)を同定する。
【符号の説明】
【0043】
1…クリープ破断試験片、2…照射装置、3…原子炉容器、3a…炉心部、4…冷却液、5…上部空間、6…ガスパイプ、7…ガスサンプリング装置、8…タグガス測定装置、9…コンピュータ、11…気泡、81…飛行時間型質量分析計、811…試料ガスイオン化室部、812…質量分析管部、8121…マスゲート、8122…反射電極群、8123…マイクロチャンネルプレート、817…YAGレーザ発振器、818…波長可変システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出部材に所定の組成のタグガスを含ませておき、この被検出部材が破損することによって放出されたタグガスの組成を計測し、該組成の変化量を算出することにより、被検出部材の破損に至る中性子照射量を求めることを特徴とする中性子照射量測定方法。
【請求項2】
請求項1において、複数の被検出部材の破損と中性子照射量を検出するときには、各被検出部材に異なる特有の組成のタグガスを含ませておき、これらの被検出部材を炉内に入れて放射線照射を行い、被検出部材が破損することによって放出されたタグガスの組成を測定し、該組成の変化量を算出することにより、破損した被検出部材の同定と該被検出部材の中性子照射量を求めることを特徴とする中性子照射量測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、タグガスの組成の変化量は、所定の2つの同位体の比の変化を算出して求めることを特徴とする中性子照射量測定方法。
【請求項4】
請求項3において、所定の2つの同位体は、129Xeと130Xeであり、比は130Xe/129Xeであることを特徴とする中性子照射量測定方法。
【請求項5】
原子炉に実装する燃料棒を同一交換時期のものを1つの群とする複数群に区分し、各群内における燃料棒(燃料被覆管内)に封入するタグガスは該燃料棒が破損して放出されたときにその組成を測定して識別することによって各群内での同定を行うことができるように変えておき、燃料棒破損時に放出されたタグガスの組成によって各群における燃料棒を同定し、どの群の燃料棒かの識別は、放出されたタグガスの組成の変化量を算出することにより該燃料棒が実装されたときからの中性子照射量を求め、この中性子照射量に基づいて実装時期(交換時期)を求めて行うことを特徴とする核燃料破損検出方法。
【請求項6】
請求項5において、燃料棒破損時に放出されたタグガスの組成の測定は、原子炉のカバーガスをサンプリングして行うことを特徴とする核燃料破損検出方法。
【請求項7】
被検出部材が破損することによって放出されるタグガスをサンプリングするガスサンプリング装置と、サンプリングしたタグガスの組成を計測するタグガス測定装置と、測定した組成の変化量を算出し、変化量に基づいて被検出部材の破損に至る中性子照射量を求める手段を備えたことを特徴とする中性子照射量測定装置。
【請求項8】
被検出部材が破損することによって放出されるタグガスをサンプリングするガスサンプリング装置と、サンプリングしたタグガスの組成を計測するタグガス測定装置と、測定した組成の変化量を算出し、測定した組成に基づいて破損した被検出部材を同定するとともに変化量に基づいて被検出部材の破損に至る中性子照射量を求める手段を備えたことを特徴とする中性子照射量測定装置。
【請求項9】
実装する燃料棒を同一交換時期のものを1つの群とする複数群に区分し、各群内における燃料棒(燃料被覆管内)に封入するタグガスは該燃料棒が破損して放出されたときにその組成を測定して識別することによって各群内での同定を行うことができるように変えた構成の原子炉において、
燃料棒が破損することによって放出されるタグガスをサンプリングするガスサンプリング装置と、サンプリングしたタグガスの組成を測定するタグガス測定装置と、
測定したタグガスの組成によって各群における燃料棒を同定し、測定した組成の変化量を算出し、測定した組成に基づいて破損した群を同定する手段を備えたことを特徴とする核燃料破損検出装置。
【請求項10】
導入したサンプリングガスにレーザ光を照射することにより共鳴励起・イオン化し、制御電極群によってイオンビーム形態としてマスゲートを通過せることによりタグガスイオンビームとし、反射電極群によって反射させることによりタグガスイオンビーム(原子・分子)の質量の小さい順にマイクロチャンネルプレートに到達させて質量スペクトル信号に変換するように構成したことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−21923(P2011−21923A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165399(P2009−165399)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年7月5日 インターネットアドレス「http://meteor.nucl.kyushu−u.ac.jp/isord−5/abstract0705」に発表
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】