説明

中性新聞用紙およびその製造方法

【課題】古紙原料に含まれる炭酸カルシウムを有効に利用して、表面塗工を行わずに炭酸カルシウムのみで高い不透明度を達成できるようにする。
【解決手段】脱墨古紙パルプを原料とし、pHが6〜7で抄紙される紙支持体の炭酸カルシウムを前記脱墨古紙パルプの炭酸カルシウムで含有量5〜15重量%にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性新聞用紙およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新聞用紙は、より多くのカラー写真や情報を掲載するための増ページや配達時の重量負担を軽減するように低坪量が求められ、このため低坪量であっても裏抜けが生じない高い不透明度が求められる。また、配達時間の制限から高速オフセット印刷でも断紙しない強度が求められており、低坪量、高不透明度および高強度という相反する紙質が要求される。さらに、近年は酸性抄紙した新聞古紙は褪色しやすくリサイクル性が低いため、前記特性に加え中性の紙支持体を有する中性新聞用紙が強く望まれている。
この種の中性新聞用紙として、特許文献1に示すように、填料として炭酸カルシウムを5〜15重量%加えた新聞用紙およびその製造方法が知られている。
【0003】
前記中性新聞用紙は、新聞印刷古紙または中質印刷古紙の脱墨古紙パルプを用紙原料として、パルプ中に含有されている樹脂成分を繊維に定着させるため、硫酸バンドを加えて通常の酸性パルプスラリーを調整し、硫酸バンドのカチオン性を維持すべく炭酸カルシウムを抄紙工程の後段で添加して抄紙するというものである。
【特許文献1】特開平09−78491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新聞古紙は大量のチラシを含んで回収され、このチラシ用紙には炭酸カルシウムが填料や塗料として多く用いられている。しかし、これらのチラシを含んでいても、標準的な新聞古紙の炭酸カルシウム濃度が6%未満と低いため、前記特許文献1ではファンポンプ前で炭酸カルシウムを新たに添加する必要がある。また、酸性パルプスラリーでピッチコントロールを行うため、古紙に含有される炭酸カルシウムの大部分は溶解し、古紙資源を有効活用しているとは言えず、新たに炭酸カルシウムを多量に必要とするので製造コストが高騰する可能性がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決し得る中性新聞用紙およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、脱墨古紙パルプを原料として、pHが6〜7で抄紙される紙支持体の炭酸カルシウムの紙支持体含有量を、前記脱墨古紙パルプの炭酸カルシウムの原料含有量を調整することにより、多量に炭酸カルシウムを含んだ古紙材料であっても、炭酸カルシウム粒子の表面を微少に溶解するに留めるpHで抄紙するので、古紙原料に多量に含まれる炭酸カルシウムの大部分を再利用でき、製造コストの低減が可能となる中性新聞用紙を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、紙支持体のpHを6〜7に維持して脱墨古紙パルプに填料として含まれる炭酸カルシウム粒子の溶解を抑えながら、この脱墨古紙パルプの炭酸カルシウムの原料含有量を調整することにより、古紙原料に多量に含まれる炭酸カルシウムの大部分を再利用でき、製造コストの低減が可能となる中性新聞用紙の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は中性新聞用紙に、次の手段を講じた。
即ち、脱墨古紙パルプを原料とし、pHが6〜7で抄紙される紙支持体の炭酸カルシウムの紙支持体含有量を前記脱墨古紙パルプの炭酸カルシウムの原料含有量を調整することにより5〜15重量%にしている。
これによって、多量に炭酸カルシウムを含んだ古紙材料であっても、炭酸カルシウム粒子の表面を微少に溶解するに留めるpHで抄紙するので、古紙原料に多量に含まれる炭酸カルシウムの大部分を再利用でき、製造コストの低減が可能となる。
【0008】
また、炭酸カルシウム粒子の鋭角な縁部を溶解させられるので、抄紙ワイヤーの摩耗を防止することも可能となる。
前記紙支持体含有量が15重量%以下の範囲内で、別途炭酸カルシウムを添加している。
これによって、古紙原料の炭酸カルシウム含有量が変動しても調整が可能となり、紙支持体の炭酸カルシウム量をコントロールすることが可能となる。
前記紙支持体に抄き込まれる炭酸カルシウムの紙支持体含有量が原料含有量の30重量%以上である。
【0009】
これによって、古紙原料に多量に含まれる炭酸カルシウムの大部分を紙支持体に抄き込むことが可能となり、新たに投入する炭酸カルシウムを減らすことが可能となる。
坪量が38〜50g/m2に抄紙されていて、不透明度88〜97%、引裂強度30g以上、平滑度30〜50秒またはコッブ値50〜150g/m2の内の少なくともひとつを満足する。
これによって、低坪量の新聞用紙に抄紙しても印刷の裏抜けが生じたり、印刷時に断紙したり、印字のカスレが生じたり、紙粉が発生したり、または印字が滲むのを防ぐことが可能となる。
【0010】
表面サイズ度テスターによる2秒後の最大信号強度が60%以上である。
これによって、インクの滲みを実際の印刷ラインとの相関性よく評価できるので、印字の滲みをコッブ値を用いて設計するのに比べより現実的に防止できるようになる。
紙支持体のpHを6〜7に維持して脱墨古紙パルプに填料として含まれる炭酸カルシウム粒子の溶解を抑えながら、この脱墨古紙パルプの炭酸カルシウムの原料含有量を調整することにより炭酸カルシウム含有量が5〜15重量%の紙支持体を抄紙する。
これによって、調成または抄紙段階で炭酸カルシウムを新たに添加する必要が無く、製造工程の簡素化が可能となる。
【0011】
前記紙支持体含有量が15重量%以下の範囲内で、別途炭酸カルシウムを添加する。
これによって、古紙原料の炭酸カルシウム含有量が変動した場合でも、一定の炭酸カルシウム含有量に紙支持体を制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中性新聞用紙により、古紙原料に含まれる炭酸カルシウムの有効利用が可能となり、表面塗工を行わなくても高い不透明度を達成できる。
また、本発明の中性新聞用紙の製造方法により、調成または抄紙段階で炭酸カルシウムを新たに添加する必要が無く、製造工程の簡素化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の中性新聞用紙は脱墨古紙パルプを原料の主成分としており、この主成分の脱墨古紙パルプにサーモメカニカルパルプなどの機械パルプあるいはクラフトパルプなどの化学パルプを加えて紙支持体が構成されている。原料の主成分に脱墨古紙パルプを用いることで、脱墨古紙パルプに填料として含まれる炭酸カルシウム(以下、原料含有炭酸カルシウムと呼び、その含有量を原料含有量と呼ぶ。)を利用することが可能となり、新たに炭酸カルシウムの添加が不要となるので製造コストを低減させることができる。
前記脱墨古紙パルプは、紙支持体の炭酸カルシウム含有量(以下、紙支持体含有量と呼ぶ。)を5〜15重量%、好ましくは6〜12重量%、より好ましくは8〜11重量%とできるように、原料含有量の多い古紙原料を用いるのが好ましい。この古紙原料としては従来から用いられてきた古紙原料、例えば上白、罫白、カード、特白、中白、ケント、白アート、新聞、雑誌などを用いることができ、これらの少なくとも2種以上を混合して用いても良い。また、好適には前記古紙原料の中でも原料含有量の高い雑誌古紙を選ぶのが良く、雑誌古紙と他の古紙原料を混合して使用するのが好ましい。雑誌古紙を古紙原料とすることで、通常5%程度の原料含有量を7〜16%まで上げることができ、炭酸カルシウムの紙支持体含有量を5〜15重量%、好ましくは6〜12重量%、より好ましくは8〜11重量%にすることが可能となる。
【0014】
前記脱墨古紙パルプを主成分とする原料を調整して得られるパルプスラリーに、炭酸カルシウムが7〜16重量%含まれるように、前記脱墨古紙パルプと他のパルプとの混合比率を調整する。なお、この混合比率は原料に用いる脱墨古紙パルプの古紙原料によって異なるため、混合比率を一律に規定できるものではないが、パルプスラリー中の炭酸カルシウム含有量を7〜16重量%にすることで紙支持体に炭酸カルシウムを5〜15重量%、好ましくは6〜12重量%、より好ましくは8〜11重量%含有させることが可能となり、多量に含まれる炭酸カルシウムの作用により表面塗工無しで不透明度を向上させることが可能となる。
【0015】
前記原料含有量が7%未満の場合は、前記パルプスラリーに炭酸カルシウムを添加するのが好ましい。この新たに添加する炭酸カルシウム(以下、追加添加炭酸カルシウムと呼び、その量を追加添加量と呼ぶ。)は、好ましくは軽質炭酸カルシウムが良い。鋭角に尖った粒子形状の重質炭酸カルシウムは抄紙ワイヤーの摩耗性や印刷版の摩耗性を悪化させる可能性があるためである。ただし、追加添加炭酸カルシウムに重質炭酸カルシウムを用いても、抄紙のpHを調整することで版摩耗を抑えることは可能である。
前記紙支持体は、そのpHが6〜7、好ましくは6.5〜7になるように抄紙され、このpHで抄紙することで前記原料含有炭酸カルシウムの30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは85重量%以上を紙支持体含有炭酸カルシウムとして抄き込むことが可能となる。pHを6、好ましくは6.5より高くすることで、溶解によって多量に炭酸カルシウムが失われるのを防ぐことが可能となる。また、pHを7より低くすることで、原料含有炭酸カルシウムとして古紙原料に含まれていた重質炭酸カルシウム粒子の縁部を溶解させ、その鋭角が縁部が溶解により丸みを帯びることで、炭酸カルシウムが多量に含まれる用紙に起こりがちな抄紙ワイヤーの摩耗や印刷版の消耗を少なくすることが可能となる。
【0016】
前記原料含有炭酸カルシウムは、連続的な古紙原料の供給を行う場合は原料含有量が2〜3%程度は変動するため、特に原料添加量が少ない場合は、追加添加炭酸カルシウムを投入するのが好ましい。この追加添加炭酸カルシウムの追加添加量は、紙支持体の1〜8重量%、好ましくは1〜5重量%とするのが良い。これによって、炭酸カルシウムの紙支持体含有量を安定して5〜15重量%、好ましくは6〜12重量%、より好ましくは8〜11重量%に維持することが可能となるからである。
前記脱墨古紙パルプを用いて中性抄紙された新聞用紙は、多量の炭酸カルシウムを紙支持体に含むため、坪量38〜50g/m2の低坪量に抄紙しても、不透明度が88〜97%と高くなるため印刷の裏抜けが生じたり、引裂強度が30g以上と高いため高速オフセット印刷で断紙が生じたり、平滑度が30〜50秒であるため印刷時のカスレが起ったり、さらにコッブ値が50〜150g/m2と良好であるため印字の滲みが生じたりしにくい。
【0017】
特に、コッブ値より印刷ラインとの相関に優れる吸水性の評価方法である表面サイズ度テスターによる2秒後の最大信号強度においても、最大信号強度が60秒以上と高くなり、極めて良好な印刷適性を発揮させることが可能となる。
本発明の中性新聞用紙の製造方法は、前記古紙原料またはパルプ原料の選定と混合により、炭酸カルシウムの原料含有量が従来の製造方法より多いパルプスラリーを調成し、このパルプスラリーを炭酸カルシウム粒子の溶解を抑えられるpHを6〜7に維持しつつ抄紙して、紙支持体含有量が5〜15重量%、好ましくは6〜12重量%、より好ましくは8〜11重量%の紙支持体を得るものである。
【0018】
前記脱墨古紙パルプに炭酸カルシウムの多い原料を用い、炭酸カルシウムが溶解で失われにくいpH6〜7で抄紙することで、パルプスラリーの調成または抄紙段階で追加添加炭酸カルシウムを用いずに紙支持体を得ることが可能となり、製造工程の簡素化が可能となる。また、従来から行われてきたように酸性のパルプスラリーに多量の炭酸カルシウムを添加してpH調整する必要がないので、多量の追加添加炭酸カルシウムが不要となり、製造コストの低減が可能となる。
前記脱墨古紙パルプに含まれる炭酸カルシウム含有量は古紙原料の種類に応じて変動することがあるため、パルプスラリーの調整段階あるいはそれ以降に炭酸カルシウムを別途添加しても良く、これによって炭酸カルシウムの紙支持体含有量を5〜15重量%、好ましくは6〜12重量%、より好ましくは8〜11重量%に制御することが可能となる。
〔実施例〕
以下に実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0019】
原料パルプは、炭酸カルシウムの原料含有量が異なる脱墨古紙パルプ3種類と機械パルプを適宜混合して用いた。
前記古紙原料には、雑誌古紙を主体とし炭酸カルシウムが18〜22重量%含まれる古紙A、チラシを包含する新聞古紙を主体とし炭酸カルシウムが8〜12重量%含まれる古紙B、上質印刷古紙を主体とし炭酸カルシウムを含まない古紙Cを用いた。また、機械パルプはスプルース系の原木から得られるN材のサーモメカニカルパルプを用いた。これらの古紙原料と機械パルプを混合し、パルプスラリーを調成した。
【0020】
前記パルプスラリーには、内添サイズ剤(BASF社製、商品名:バソブラスト860D)1.5kg/tを添加した。
前記パルプスラリーをツインワイヤー形抄紙機で坪量43g/m2に抄紙し、サイズプレスにて外添サイズ剤(星光PMC社製、商品名:SE2066)0.01g/m2および酸化澱粉(日本食品化工社製、商品名:MS3800)0.6g/m2を塗布して紙支持体を得た。この紙支持体について、不透明度、平滑度、引裂強度、コッブサイズ度、EST(表面サイズ度テスターによる2秒後の応答強度)、ワイヤー摩耗性および経済性を評価した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
なお、前記不透明度はJIS P−8149(2000年)、平滑度はJIS P−8119(1998年)、引裂強度はJIS P−8116(2000年)、コッブサイズ度はJIS P−8140(1998年)に従って測定した。また、ESTは表面サイズ度テスター(スペクトリス社製、「EST12」)を用いて測定し、ワイヤー摩耗性は各条件で90日の連続稼働後に、ワイヤー厚みをマイクロメータで計測し、摩耗による厚みの減少を百分率で算出して評価しており、厚みの80%以上85%未満のものを○、80%未満または90日を経ずにワイヤー交換が必要となったものを×と評価した。
【0023】
さらに、表1の○×評価は、不透明度については88%未満を×、88%以上92%未満を△、92%以上を○とし、平滑度については20秒未満を×、20秒以上30秒未満を△、30秒以上50秒未満を○、50秒以上70秒未満を△、70秒以上を×として評価した。また、引裂強度については、30g未満を×、30g以上を○とし、コッブサイズ度については、50〜150g/m2に含まれる場合を○、それ以外を×と評価した。
総合評価は、不透明度、平滑度、引裂強度、サイズ度、EST(表面サイズ度テスターによる応答強度)、耐摩耗性、経済性のいずれかの評価項目に×の評価がある場合を×と総合評価し、いずれの評価項目にも×の評価を有さない場合に○の総合評価を下した。
【実施例1】
【0024】
実施例1は、古紙Aと古紙BとTMPとで原料を調整し、炭酸カルシウムの原料含有量が10重量%のパルプスラリーを、中性ピッチコントロール剤を添加してpH6で抄紙したものである。
炭酸カルシウムの紙支持体含有量は6.0重量%であり、いずれの評価項目でも優れた評価を得ており、実施例中でも最も優れている。
【実施例2】
【0025】
実施例2は、実施例1と同様のパルプスラリーを用いて抄紙pHを7としたものであり、炭酸カルシウムの紙支持体含有量は9.5重量%と実施例1より高くなっている。
しかし、炭酸カルシウムの溶解が殆ど生じないので炭酸カルシウム粒子の形状に鋭角な縁部が残りやすく、耐摩耗性が実施例1ほど良くないが、抄紙pHが8の比較例4と比べると耐摩耗性は良好であり、耐摩耗性を良好にするには抄紙時のpHは7以下とするのが良いことが分かる。
【実施例3】
【0026】
実施例3は、古紙Aの配合量を減らして、炭酸カルシウムの原料含有量を7重量%に下げたものである。抄紙時のpHは6.5であるが、原料に含まれる炭酸カルシウムの原料含有量が低いので、紙支持体含有量は6.3重量%と低くく、実施例1ほど不透明度が良くない。
しかし、原料含有量が6重量%の比較例1よりは不透明度が良好となっており、不透明度を高くするには炭酸カルシウムの原料含有量を7重量%以上とするのが好ましいことが分かる。
【実施例4】
【0027】
実施例4の炭酸カルシウムの原料含有量は16重量%と実施例中最も多くの炭酸カルシウムを含んでおり、炭酸カルシウムの紙支持体含有量も14.4重量%と多い。このため、耐摩耗性は実施例1ほど良くない。
【実施例5】
【0028】
実施例5は、古紙AとTMPのみをパルプ原料として、炭酸カルシウムの原料含有量が16重量%と実施例4と同量の炭酸カルシウムを含有する原料を用いている。
抄紙pHも7と高く、紙支持体含有量が15.2重量%と実施例中最も多くの炭酸カルシウムが紙支持体に抄き込まれている。実施例5は炭酸カルシウムの紙支持体含有量が多いため、実施例1に比べて平滑度と耐摩耗性とが良くないが、炭酸カルシウムの紙支持体含有量が16.2重量%の比較例2よりは、平滑度が良好である。従って、平滑度を良好にするには原料含有量を16重量%以下にするのが良いことが分かる。また、原料含有量を上げるため、やや高価な古紙Aのみで原料が構成されているため、経済性も実施例1より良くない。
「比較例1」
炭酸カルシウムの原料含有量が少ないため、紙支持体含有量が少なく、不透明度が良くない。
「比較例2」
炭酸カルシウムの原料含有量が多いため、紙支持体含有量が多く、引裂強度、平滑度、耐摩耗性および経済性が良くない。
「比較例3」
実施例1と同量の炭酸カルシウムを含む原料を用いているが、抄紙時のpHが4と低くいので炭酸カルシウムの溶解量も大きく、紙支持体含有量は0.6重量%と少なく、不透明度及び平滑度が良くない。
「比較例4」
抄紙時のpHが8と高いので、原料含有炭酸カルシウムの溶解が殆ど生じないため、炭酸カルシウムの鋭角な縁部が溶残し、耐摩耗性等を低下させている。
「比較例5」
硫酸バンドを用いているため、抄紙pHが4と低く、実施例1同様の原料含有量であるが、紙支持体含有量は0.5重量%と少ない。このため、不透明度及び平滑度が良くなく、経済性にも劣る。
「従来例1及び従来例2」
ピッチコントロール剤に硫酸バンドを用い、pH4で原料調整し、ファンポンプの手前でpHを8にしたものである。炭酸カルシウムの紙支持体含有量は10重量%であるが、炭酸カルシウムの追加添加が必要となるため、経済性が良くない。
【0029】
また、追加添加炭酸カルシウムは表面の溶解が不十分であるため、実施例1ほど耐摩耗性が良くない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱墨古紙パルプを原料とし、pHが6〜7で抄紙される紙支持体の炭酸カルシウムの紙支持体含有量を前記脱墨古紙パルプの炭酸カルシウムの原料含有量を調整することにより5〜15重量%にしていることを特徴とする中性新聞用紙。
【請求項2】
前記紙支持体含有量が15重量%以下の範囲内で、別途炭酸カルシウムを添加していることを特徴とする請求項1に記載の中性新聞用紙。
【請求項3】
前記紙支持体に抄き込まれる炭酸カルシウムの紙支持体含有量が原料含有量の30重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の中性新聞用紙。
【請求項4】
坪量が38〜50g/m2に抄紙されていて、不透明度88〜97%、引裂強度30g以上、平滑度30〜50秒またはコッブ値50〜150g/m2の内の少なくともひとつを満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中性新聞用紙。
【請求項5】
表面サイズ度テスターによる2秒後の最大信号強度が60%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中性新聞用紙。
【請求項6】
紙支持体のpHを6〜7に維持して脱墨古紙パルプに填料として含まれる炭酸カルシウム粒子の溶解を抑えながら、この脱墨古紙パルプの炭酸カルシウムの原料含有量を調整することにより炭酸カルシウム含有量が5〜15重量%の紙支持体を抄紙することを特徴とする中性新聞用紙の製造方法。
【請求項7】
前記紙支持体含有量が15重量%以下の範囲内で、別途炭酸カルシウムを添加することを特徴とする請求項6に記載の中性新聞用紙の製造方法。

【公開番号】特開2006−124886(P2006−124886A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316827(P2004−316827)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】