説明

中性紙及びその製造方法

【課題】 中性サイズ剤等の使用薬品の歩留まりを向上させることで、サイズ性等に優れた中性紙を提供する。
【解決手段】 ISO白色度が80%以上であり、かつ、過マンガン酸カリウム価(JIS P 8206)が2以上であるECF(エレメンタリークロリンフリー)漂白パルプが使用されており、かつ、中性内添サイズ剤を含む中性紙。該ECF漂白パルプは、温度70℃以下、二酸化塩素添加率が絶乾パルプ質量に対し、漂白前カッパー価(JIS P 8211)1当り0.06質量%以下である二酸化塩素段を漂白初段として含む多段漂白工程による漂白パルプであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECF(エレメンタリークロリンフリー)漂白パルプから製造する中性紙に関し、さらに詳しく述べれば、中性内添サイズ剤の歩留まりがよく、紙のサイズ度に優れた中性紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抄紙に際して紙に耐水性を付与する目的でロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、アルケニルコハク酸塩、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等の製紙用サイズ剤等がパルプスラリーに添加され使用されている。これらのサイズ剤に関する大きな問題点の一つとして、特に中性抄紙におけるサイズ剤の歩留まり不良がある。サイズ剤のパルプへの定着機構はサイズ剤の種類によって異なるが、特に中性抄紙で用いられるアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等は歩留まりが悪く、不安定であるため、得られる紙のサイズ度が低い等の問題点を有する。このため、サイズ剤の歩留まりや紙の強度を向上させる目的で、カチオン変性デンプン、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂等のような種々のカチオン性の薬品が添加される。しかしながら、かかる処理をしても得られる効果が十分でなかったり、他に添加される薬品や填料によって効果が落ちたり、品質が安定しない等の問題点を有する。
【0003】
さらに、内添サイズ剤と共に、紙の強度を高める目的で内添紙力増強剤として変性デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリアミドーエピクロルヒドリン樹脂、メラミンーホルムアルデヒド樹脂、尿素ーホルムアルデヒド樹脂等が使用されているが、これらは単独で使用しても歩留まりが悪い、紙力増強効果が小さい、地合が悪化する等種々の欠点があり、操業や紙質の点で十分に満足し得るものではない。これを改善する方法として、アニオン性ポリアクリルアミドとマンニッヒ変性或いはホフマン変性したカチオン性ポリアクリルアミドを併用する方法、或いはこれらを混合して添加する方法が知られているが、これらの併用処方或いは混合処方により、若干の歩留まり向上や紙力向上が図られるものの、硫酸バンドの添加量の多寡やその他に添加併用される薬品助剤の影響が大きく、その効果は満足し得る水準には到達していない。
【0004】
カルボキシメチルセルロース(以下CMCという)やカルボキシエチルセルロース(以下CECという)等のセルロース誘導体にも、紙の強度を増強する作用があることは古くから知られているが、内添用紙力増強剤としては紙力増強効果が小さく、また、硫酸バンドを添加併用しなければ紙に留まらず、効果を発現しない等の問題点があり、内添用紙力増強剤としては現在ほとんど使用されていないのが実状である。
【0005】
これらのサイズ性や紙力の問題を解決する手段として、パルプスラリーにCMC及び/又はCECを添加し、次いで鉱酸を添加してパルプ繊維スラリーのpHを2〜6の範囲に調整し、CMC及び/又はCECを酸型に転換してパルプに吸着させ、抄紙する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、置換度が0.3〜0.6の範囲にある低置換度のCMCを使用する必要があり、また、特に中性からアルカリ領域における抄造では十分な効果が得られないといった問題を有する。
【0006】
一方、キトサンはエビやカニの甲羅に含まれるキチンを高濃度の熱アルカリ処理にて脱アセチルすることで得られ、パルプスラリーに添加することで紙力増強効果があることが知られている。パルプスラリー中でサイズ剤や紙力増強剤等とCMC又はCECとキトサンとを混合すると、紙用薬品、CMC又はCECとキトサンが複合体を生成し、該複合体がパルプに吸着し、抄紙薬品の歩留まりが向上することが開示されている(特許文献2)。しかしながら、この方法を用いても、十分な歩留まり向上効果や紙力増強効果は得られず、製紙用内添薬品として、キトサンはほとんど使用されていない。このように、サイズ剤や紙力増強剤等の抄紙薬品の歩留まりを向上させ、サイズ性や紙力に優れた中性抄紙が求められている。
【0007】
また、亜塩素酸を用いて、漂白パルプ中のセルロース、ヘミセルロース分子鎖の還元末端であるアルデヒド基をカルボキシル基に酸化し、アルキルケテンダイマーを添加するとサイズ度が向上することが知られている(非特許文献1)。さらに、漂白パルプを水に分散させてpHを10〜11に保ち、触媒量の2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシラジカル(TEMPO)と臭化ナトリウムを溶解させ、次亜塩素酸を添加することで漂白パルプにカルボキシル基を導入し、ロジンサイズ剤を添加するとサイズ度が向上することが知られている(非特許文献2)。しかし、これらのパルプ改質によるサイズ剤定着方法には、薬品費が増大したり、設備コストかかかる等の問題があり、実際的ではない。
【0008】
一方、近年、木材中に存在する4−O−メチルグルクロン酸が蒸解工程でヘキセンウロン酸に変換され、未晒パルプ中に存在することが知られるようになった(非特許文献3)。このヘキセンウロン酸は、多段漂白工程で分解されずに漂白パルプに多量に残存すると、酸性紙の褪色性を悪化させることがわかっており(非特許文献4)、ヘキセンウロン酸を除去して酸性紙の褪色性を改善する方法が数多く提案されている(例えば、特許文献3)。
【0009】
しかしながら、このヘキセンウロン酸を漂白パルプに残留させ、そのカルボキシル基を利用して中性サイズ剤等の歩留まりを向上させる方法は知られていない。
【特許文献1】特開平9−291490号公報
【特許文献2】特開2000−27092号公報
【特許文献3】特表平10−508346号公報
【非特許文献1】磯貝明、紙パルプ技術タイムス46(7)、1-6、2003
【非特許文献2】Takuya Kitaokaら、Nordic Pulp and Paper Research Journal、15(177)、2000
【非特許文献3】T.Vuorinenら、1996 Int Pulp Bleaching Conf.,Vol.1 pp.43−52
【非特許文献4】Ayano Kawaeら、Appita Journal vol58(5)、378−381、2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の欠点を克服し、中性サイズ剤等の使用薬品の歩留まりを向上させることで、サイズ性等に優れた中性紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、かかる背景に鑑み、中性抄紙におけるサイズ剤や紙力増強剤等の抄紙薬品の歩留まりを向上させ、紙の品質を向上させる方法を見い出すべく鋭意検討を重ねた。この中で、特に漂白パルプ中に存在するヘキセンウロン酸が有するカルボキシル基に着眼した。過マンガン酸カリウム価が高く、ヘキセンウロン酸が多量に残存する漂白パルプを用いて酸性紙を製造すると、褪色性が著しく悪化するが、中性紙を製造する場合には褪色はさほど問題にならない。
【0012】
一方、漂白パルプ中にカルボキシル基量が増加すると、中性サイズ剤や紙力増強剤の歩留まりが向上する。これらのことより、過マンガン酸カリウム価が高く、ヘキセンウロン酸が多量に存在する漂白パルプを用いて中性紙を製造した場合、漂白パルプ中の多量のカルボキシル基の作用により、中性サイズ剤や紙力増強剤の歩留まりが大幅に向上し、サイズ性や紙力により一層優れた中性紙を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記目的を達成することができる本発明は、以下の各発明を包含する。
【0013】
(1)ISO白色度が80%以上であり、かつ、過マンガン酸カリウム価(JIS P 8206)が2以上であるECF(エレメンタリークロリンフリー)漂白パルプが使用されており、かつ、中性内添サイズ剤を含む中性紙。
【0014】
(2)前記漂白パルプ中のヘキセンウロン酸量が15mmol/kg以上であることを特徴とする(1)記載の中性紙。
【0015】
(3)前記漂白パルプは、漂白初段が温度70℃以下で、二酸化塩素添加率が絶乾パルプ質量に対し、漂白前カッパー価(JIS P 8211)1当り0.06質量%以下である二酸化塩素段を含むECF(エレメンタリークロリンフリー)多段漂白工程によって漂白されたパルプであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の中性紙。
【0016】
(4)前記漂白パルプは、過酸化水素添加率の総計が絶乾パルプ質量当り0.3%以上となるように少なくとも一つのアルカリ性過酸化水素段を含むECF多段漂白工程によって漂白されたパルプであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の中性紙。
【0017】
(5)前記中性内添サイズ剤が、アルキルケテンダイマー又はアルケニル無水コハク酸であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の中性紙。
【0018】
(6)ISO白色度が80%以上で、過マンガン酸カリウム価(JIS P 8206)が2以上であり、かつ、ヘキセンウロン酸量が15mmol/kg以上である漂白パルプを原料パルプとし、中性内添サイズ剤を添加して抄造することよりなる中性紙の製造方法。
【0019】
(7)前記漂白パルプが、ECF(エレメンタリークロリンフリー)多段漂白工程にしたがって製造されている漂白パルプである(6)記載の中性紙の製造方法。
【0020】
(8)前記ECF多段漂白工程が、温度70℃以下で、二酸化塩素添加率が絶乾パルプ質量に対し、漂白前カッパー価(JIS P 8211)1当り0.06質量%以下である二酸化塩素段を漂白初段として含む多段漂白工程である(7)記載の中性紙の製造方法。
【0021】
(9)前記ECF多段漂白工程が、過酸化水素添加率の総計が絶乾パルプ質量当り0.3%以上となるようにアルカリ性過酸化水素段を少なくとも一つ含む多段漂白工程である(6)又は(7)に記載の中性紙の製造方法。
【0022】
(10)前記多段漂白工程は、初段が二酸化塩素漂白段(D)であり、二段目は過酸化水素段(P)もしくはアルカリ抽出段(E)であり、三段目以降は二酸化塩素段又は過酸化水素段である漂白シーケンスにしたがった漂白工程である(7)〜(9)のいずれか1項に記載の中性紙の製造方法。
【0023】
(11)前記漂白パルプは、原料となるリグノセルロース物質として広葉樹材を使用して製造されている漂白パルプである(6)〜(10)のいずれか1項に記載の中性紙の製造方法。
【0024】
(12)前記中性内添サイズ剤が、アルキルケテンダイマー又はアルケニル無水コハク酸であることを特徴とする(6)〜(11)のいずれか1項に記載の中性紙の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
ISO白色度が80%以上であり、かつ、過マンガン酸カリウム価(JIS P 8206)が2以上であるECF(エレメンタリークロリンフリー)漂白パルプを使用することで、中性紙を製造する場合に中性サイズ剤や紙力増強剤の歩留まりを改善でき、紙のサイズ度や強度を大幅に向上させることが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明で用いられる漂白パルプの原料となるリグノセルロース物質は、特に限定されるものではない。広葉樹材、針葉樹材、非木材でも良いが、広葉樹材から製造する漂白パルプにはヘキセンウロン酸が多く含まれるため、本発明の効果が大きく、好ましい。また、本発明で使用される漂白パルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法又はポリサルファイド蒸解法が好適に用いられる。
【0027】
例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、蒸解温度は130〜170℃で、蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよく、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解液を多点で添加する修正蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。
【0028】
蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤として公知の環状ケト化合物、例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、あるいは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらには、ディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種あるいは2種以上が添加されてもよく、その添加率は木材チップの絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
【0029】
本発明では、公知の蒸解法により得られた未漂白パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンされる。本発明に使用されるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法或いは高濃度法がそのまま適用できるが、現在、汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15%で行われる中濃度法が好ましい。
【0030】
前記中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。
【0031】
酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15質量%であり、この他の条件は公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。アルカリ酸素漂白が施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られる。パルプは洗浄後、酸処理工程あるいは多段漂白工程へ送られる。
【0032】
本発明の漂白パルプを得るための多段漂白処理では、ヘキセンウロン酸の除去効果の高い元素状塩素を用いないことが大きな特徴となっている。元素状塩素を用いない漂白〔一般にECF(Elementary Chlorine Free)漂白と呼ばれる〕方法の組み合わせであればいずれでもよく、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を挙げることができるが、ヘキセンウロン酸の分解効率が比較的悪い二酸化塩素、アルカリ、酸素、過酸化水素が好適である。
【0033】
もちろん、オゾンや過酸等も使用できるが、オゾンや過酸はヘキセンウロン酸を比較的効率良く分解してしまうため、その使用は制限される。硫酸等による酸処理も用いることができるが、75℃を超える高温での酸処理ではヘキセンウロン酸が分解されてしまうため、75℃以下で行うのが好ましい。多段漂白処理工程の初段はヘキセンウロン酸の分解効率が比較的悪い二酸化塩素漂白段(D)を用い、二段目にはさらにヘキセンウロン酸の分解効率の悪い過酸化水素段(P)もしくはアルカリ抽出段(E)、二断目以降又は三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。漂白段数は特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。
【0034】
本発明の多段漂白工程の初段の二酸化塩素段では、二酸化塩素を多量に添加するとヘキセンウロン酸を分解してしまうため、二酸化塩素添加率は絶乾パルプ重量に対し、漂白前カッパー価1あたり0.06重量%以下であることが好ましい。また、二酸化塩素段の温度が70℃を超えるとヘキセンウロン酸の分解量が多くなるため、温度は70℃以下であるのが好適である。二酸化塩素段のpHは2〜6であり、pHを調整するために任意の酸又はアルカリを補助的に添加することも可能である。二酸化塩素処理時間、パルプ濃度等のその他の二酸化塩素漂白条件は、全て公知の条件を採用することができる。
【0035】
本発明の多段漂白工程で少なくとも1つ以上用いられるアルカリ性過酸化水素段では、ヘキセンウロン酸をあまり分解しない過酸化水素を絶乾パルプ重量当り0.3%以上添加するのが好ましい。これは、二酸化塩素段においてヘキセンウロン酸の過剰の分解を避けるために二酸化塩素添加率が制限されるため、アルカリ性過酸化水素段で白色度を大きく向上させることができるからである。また、本発明のアルカリ性過酸化水素段では、酸素を併用することができる。その他、本発明のアルカリ性過酸化水素段の条件は、全て公知の条件を採用することができる。
【0036】
本発明における多段漂白処理のシーケンスとして、例えばD−E/P−D、D−E/OP−D、D−E/P−P、D−E/OP−P、D−E−P−D、D−E/P−P−D、D−E/OP−P−D、D−E/OP−D−P等を挙げることができる。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。この多段漂白シーケンスの如何は、本発明をいささかも制限するものではない。
【0037】
前記多段漂白処理では、漂白後のヘキセンウロン酸を多量に残留させるために、ヘキセンウロン酸の除去効果の低いアルカリ性下で行なわれる漂白段を強化でき、その結果、二酸化塩素の使用量を削減できるため、漂白排水負荷を低減できるという利点がある。
【0038】
本発明の多段漂白処理において、漂白パルプの過マンガン酸カリウム価を2以上にすれば、中性サイズ剤や紙力増強剤の歩留まりが向上する理由の詳細については今後の研究を待たなければならないが、過マンガン酸カリウム価として評価されるヘキセンウロン酸が有するカルボキシル基の存在がサイズ剤や紙力増強剤の歩留まりに関与しているものと推測している。したがって、ヘキセンウロン酸の含有量あるいはカルボキシル基の含有量を一定量以上に制御する漂白方法もサイズ剤や紙力増強剤の歩留まりを改善する上で非常に効果的である。
【0039】
本発明では、紙匹に所望のサイズ性や強度を付与するため、パルプスラリーに中性サイズ剤や紙力増強剤等の抄紙薬品の添加を行い、十分に撹拌し混合する。この際、使用するサイズ剤としては、中性抄紙用サイズ剤であるアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸や合成カチオンサイズ剤が使用できる。この場合の紙力増強剤やサイズ剤等個々の抄紙薬品の添加量は、その紙匹が必要とされる性能により異なるが、一般的には、パルプ繊維の絶乾質量当り0.01〜1.0質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲から選ばれる。
【0040】
また、本発明で使用する紙力増強剤としては、例えば、カチオン変性デンプン、アニオン性デンプン、両性デンプン、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂等のカチオン性やアニオン性、両性の紙力増強剤等が挙げられる。この際、必要に応じ、紙の白色度や不透明度、印刷適性を向上させる目的で、炭酸カルシウムを添加するが、酸化チタン、含水シリカ、タルク、クレー、カオリン等の公知の製紙用填料を添加しても良い。本発明を用いると紙力増強剤、サイズ剤等の抄紙薬品のみならず、填料の歩留まり向上においても効果的である。
【0041】
このように調成された抄紙原料は、通常の抄紙工程で抄造され、必要に応じ外添サイズプレスやカレンダリング処理を行う。この際に使用される抄紙機は、長網、丸網、短網等の抄紙機が挙げられるが、特に限定されるものではない。ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等の高速抄紙機では、脱水が強化されているため、一般的に薬品歩留まりが低下することが知られており、本発明が特に効果的である。また、このようにして得られた紙匹は、そのまま印刷、筆記用紙等に使用可能であり、また、紙匹上に、公知公用の塗工設備、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロッドコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター等の塗工装置によって、片面または両面に塗被層を設け、塗工紙として使用することもできる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に示す実施例1は、工場製アルカリ酸素漂白後広葉樹クラフトパルプをD−EP−P-Dシーケンスで漂白を行ったものであり、実施例2は、D−EP−D−Pシーケンスで漂白を行ったものであり、実施例3、4は、D−EP−Dシーケンスで漂白を行ったものである。また、比較例1は、C−E−H−Dシーケンスで漂白を行ったものであり、比較例2は、Z−E−P−Dシーケンスで漂白を行ったものであり、比較例3、4、6は、D−EP−Dシーケンスで漂白を行ったものであり、比較例5は、D−E−Dシーケンスで漂白を行ったものである。
【0043】
また、特に示さない限り、カッパー価の測定、過マンガン酸カリウム価の測定、パルプ中のヘキセンウロン酸量の測定、パルプのISO白色度の測定、ステキヒトサイズ度の測定はそれぞれ以下の方法で行った結果を示している。なお、実施例及び比較例における薬品の添加率は絶乾パルプ質量当たりの質量%示す。
【0044】
1.パルプのカッパー価の測定
JIS P 8211に準じて行った。
【0045】
2.パルプの過マンガン酸カリウム価の測定
JIS P 8206に準じて行った。
【0046】
3.パルプ中のヘキセンウロン酸量の定量
500mlのSUS製容器に、十分にイオン交換水で洗浄したパルプを絶乾パルプ5g量り取って入れ、蟻酸−蟻酸ナトリウムバッファー10mmol/l溶液を用いてトータル300mlとした。その後、SUS製容器内を窒素ガスで置換し、油恒温槽内で110℃、5時間処理した。SUS容器を流水冷却後、処理後のパルプ懸濁液を洗浄液を含めて500mlにメスアップした後、ろ過して、液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて分析し、2−furoicacidと5―carboxy−2−furaldehydeを定量した。定量に際し、算出式、参考文献は、以下のものを使用した。
【0047】
測定サンプル中の2−furoic acidの定量値をa(ng/μl)、5−carboxy−2−furaldehydeの定量値をbとした。
1)2−furoic acid量(mmol/kg)=a×(500/1000)/(10×10-3)/112.08
2)5−carboxy−2−furaldehyde量(mmol/kg)=b×(500/1000)/(10×10-3)/140.1
3)ヘキセンウロン酸量(mmol/l)=(2−furoic acid量)+(5−carboxy−2−furaldehyde量)
【0048】
参考文献:著者 Vuorinen,T.Selective hydrolysis of hexenuronic acid groups AND its application in ECF AND TCF bleaching of kraft pulpsINternational Pulp Bleaching Conference,April 14−18,1996,P43−51
【0049】
4.白色度測定用パルプシートの作成方法
漂白パルプを離解後、Tappi試験法T205os−71(JIS P 8209)に準じて坪量60g/m2のシートを作製した。
【0050】
5.パルプ白色度の測定
JIS P 8123に準じてパルプの白色度を測定した。
【0051】
ステキヒトサイズ度の測定
JIS P8122に準じて測定した。
【0052】
実施例1
工場製広葉樹の蒸解−アルカリ酸素漂白後クラフトパルプ(ISO白色度47.2%、カッパー価9.9)の絶乾質量80.0gをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.4%添加し、温度が70℃の恒温水槽に60分間浸漬して初段の二酸化塩素段(以下、D段と略す)の漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。D段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、苛性ソーダ、過酸化水素を各々絶乾パルプ質量当たり1.0%、0.3%加え、温度70℃で90分間処理し、アルカリ抽出及び過酸化水素漂白段(以下、EP段と略す)を行った。得られたパルプをイオン交換水で希釈してパルプ濃度を3%に調整した後、ブフナーロートで脱水、洗浄して、EP段後パルプを得た。
【0053】
続いて、EP段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、苛性ソーダ、過酸化水素を各々絶乾パルプ質量当たり1.0%、0.2%加え、温度70℃で90分間処理し、過酸化水素段(以下、P段と略す)を行った。
得られたパルプをイオン交換水で希釈してパルプ濃度を3%に調整した後、ブフナーロートで脱水、洗浄して、P段後パルプを得た。P段後パルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.2%添加し、D段と同様にして温度70℃で180分間処理し、二回目のD段の漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈し、ブフナーロートを用いて洗浄、脱水し、ISO白色度が85.4%の漂白パルプを得た。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量を測定し、表1に示した。
【0054】
得られた漂白パルプを実験用PFIミルにてろ水度を450mlCSF(カナダ標準フリーネス)に調整した。このときのPFIミル回転数を表1に示した。2%濃度のパルプスラリーに、スリーワン・モーターにて450rpmの速度で攪拌しながら、硫酸バンド0.5%、アルキルケテンダイマーを成分とする中性抄紙用サイズ剤(商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.2%、製紙用填料として軽質炭酸カルシウム10%をこの順番に添加し、添加終了後1分間撹拌を続けた。このストックのpHを測定したところ7.2であった。このパルプ紙料を用いてTAPPI標準の角型シートマシンで坪量60g/m2の紙を抄いて、ドラム式乾燥機にて120℃で3分処理し乾燥した。この手抄きシートを温度20℃、相対湿度65%にて24時間調湿した後、紙のステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0055】
実施例2
多段漂白工程のP段と二回目のD段を入れ替えたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。多段漂白後パルプのISO白色度は85.9%であった。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0056】
実施例3
多段漂白初段の二酸化塩素添加率を0.5%、EP段の過酸化水素添加率を0.5%に変え、P段を行わなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。多段漂白後パルプのISO白色度は86.2%であった。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0057】
実施例4
多段漂白を行うパルプを、ISO白色度43.5%、カッパー価12.7の工場製広葉樹の蒸解−アルカリ酸素漂白後クラフトパルプに替え、多段漂白初段の二酸化塩素添加率を0.7%に変えたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。多段漂白後パルプのISO白色度は84.5%であった。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0058】
比較例1
工場製広葉樹の蒸解−アルカリ酸素漂白後クラフトパルプ(ISO白色度47.2%、カッパー価9.9)の絶乾質量80.0gをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を5%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり塩素を1.5%添加し、温度が50℃の恒温水槽に30分間浸漬して初段の塩素段(以下、C段と略す)の漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。C段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、苛性ソーダを絶乾パルプ質量当たり1.0%加え、温度60℃で90分間処理し、アルカリ抽出段(以下、E段と略す)を行った。得られたパルプをイオン交換水で希釈してパルプ濃度を3%に調整した後、ブフナーロートを用いて洗浄、脱水してE段後パルプを得た。
【0059】
続いて、E段後パルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり次亜塩素酸塩を0.2%(有効塩素換算)、苛性ソーダを0.1%添加し、温度70℃で90分間処理し、次亜塩素酸塩段(以下H段と略す)の漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈し、ブフナーロートを用いて洗浄、脱水した。H段後パルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.2%添加し、温度70℃で180分間処理し、二酸化塩素段漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈し、ブフナーロートを用いて洗浄、脱水し、ISO白色度が85.6%の漂白パルプを得た。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0060】
比較例2
工場製広葉樹の蒸解−アルカリ酸素漂白後クラフトパルプ(ISO白色度47.2%、カッパー価9.9)をプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を4%に調整した後、硫酸を添加してpH2.5に調整し、温度が35℃の恒温水槽に10分間浸漬して酸処理を行った。得られたパルプをブフナーロートで脱水、洗浄した。次に、このパルプをパルプ濃度35質量%まで脱水し、オゾン添加率0.5%、反応温度30℃、反応時間2分でオゾンリアクター内でオゾン漂白(以下Z段を略す)を行なった。Z段後パルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度4%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを1%添加し、15分間のアルカリ抽出段(以下E段と略す)を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈し、ブフナーロートを用いて洗浄、脱水した。
【0061】
続いて、E段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、苛性ソーダ、過酸化水素を各々絶乾パルプ質量当たり1.0%、0.3%加え、温度70℃で90分間処理し、過酸化水素段(以下、P段と略す)を行った。得られたパルプをイオン交換水で希釈してパルプ濃度を3%に調整した後、ブフナーロートで脱水、洗浄して、P段後パルプを得た。P段後パルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.2%添加し、D段と同様にして温度70℃で180分間処理し、二段目のD段の漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈し、ブフナーロートを用いて洗浄、脱水し、ISO白色度が86.7%の漂白パルプを得た。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0062】
比較例3
多段漂白初段の温度を90℃、EP段の過酸化水素添加率を0.3%に変えたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。多段漂白後パルプのISO白色度は86.3%であった。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0063】
比較例4
多段漂白を行うパルプを、ISO白色度43.5%、カッパー価12.7の工場製広葉樹の蒸解−アルカリ酸素漂白後クラフトパルプに替え、多段漂白初段の二酸化塩素添加率を1.0%に変えたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。多段漂白後パルプのISO白色度は86.1%であった。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0064】
比較例5
多段漂白初段の二酸化塩素添加率を0.8%、EP段の過酸化水素を添加しなかったこと以外は実施例3と同様の操作を行った。多段漂白後パルプのISO白色度は85.3%であった。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0065】
比較例6
多段漂白初段の二酸化塩素添加率を0.7%、EP段の過酸化水素添加率を0.1%に変えたこと以外は実施例3と同様の操作を行った。多段漂白後パルプのISO白色度は85.6%であった。得られた漂白パルプの過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量、ろ水度450mlCSFに調整するのに要したPFIミル回転数、及び手抄きシートのステキヒトサイズ度を測定し、表1に示した。
【0066】
【表1】

【0067】
表1の実施例1〜4と比較例1、2を比較することから明らかなように、多段漂白が元素状塩素を用いないECF(エレメンタリークロリンフリー)漂白でなければ、またECF漂白であっても漂白初段が二酸化塩素段でなければ、過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量が低く、サイズ度も低い。また、実施例3、4と比較例3、4を比較することから明らかなように、漂白初段が二酸化塩素段であっても、該漂白段の温度が高すぎる場合や、該漂白段での二酸化塩素添加率が漂白前カッパー価に対して高すぎる場合は、過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量が低く、サイズ度も低い。また、実施例1〜3と比較例5、6を比較することから明らかなように、多段漂白工程に少なくとも1つ以上の過酸化水素段を含み、該漂白段での過酸化水素添加率が0.3%以上でなければ過マンガン酸カリウム価、ヘキセンウロン酸量が低く、サイズ度も低い。また、過マンガン酸カリウム価が高く、ヘキセンウロン酸量が多いパルプほど叩解負荷が低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上の結果から明らかなように、ISO白色度が80%以上であり、過マンガン酸カリウム価が2以上のECF漂白パルプを使用することで、紙のサイズ度を大幅に向上させることが可能になることがわかる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO白色度が80%以上であり、かつ、過マンガン酸カリウム価(JIS P 8206)が2以上であるECF(エレメンタリークロリンフリー)漂白パルプが使用されており、かつ、中性内添サイズ剤を含む中性紙。
【請求項2】
前記漂白パルプ中のヘキセンウロン酸量が15mmol/kg以上であることを特徴とする請求項1記載の中性紙。
【請求項3】
前記漂白パルプは、漂白初段が温度70℃以下で、二酸化塩素添加率が絶乾パルプ質量に対し、漂白前カッパー価(JIS P 8211)1当り0.06質量%以下である二酸化塩素段を含むECF(エレメンタリークロリンフリー)多段漂白工程によって漂白されたパルプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の中性紙。
【請求項4】
前記漂白パルプは、過酸化水素漂白段の過酸化水素添加率の総計が絶乾パルプ質量当り0.3%以上となるように少なくとも一つの過酸化水素漂白段を含むECF多段漂白工程によって漂白されたパルプであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中性紙。
【請求項5】
前記中性内添サイズ剤が、アルキルケテンダイマー又はアルケニル無水コハク酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の中性紙。
【請求項6】
ISO白色度が80%以上で、過マンガン酸カリウム価(JIS P 8206)が2以上であり、かつ、ヘキセンウロン酸量が15mmol/kg以上である漂白パルプを原料パルプとし、中性内添サイズ剤を添加して抄造することよりなる中性紙の製造方法。


【公開番号】特開2007−314916(P2007−314916A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146661(P2006−146661)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】