説明

中空コンクリート杭の破砕ヘッド

【課題】基礎杭の工事の際に、邪魔になる既設中空コンクリート杭を効率的に破砕して除去する。連結杭の中間部の端板があっても、そのまま下方の杭壁を破砕する。
【解決手段】 破砕ヘッド1は、ヘッド本体2の側面に、破砕刃10、10を有する螺旋羽根5、5を2つ取り付けて構成する。螺旋羽根5、5は軸2bに対して回転対称で、各螺旋羽根5は、旋回角度が1回転よりも若干小さな角度で形成する。下端6はから上端7に向けて徐々に半径が大きくなるように形成され、下端6を、中空コンクリート杭30の内径より小さくする。破砕刃10は、螺旋羽根5の外周壁8に、間隙14を空けて、刃先12を斜め下方に向けて固定する。破砕刃10の基端11は螺旋羽根5の上面5bよりも上方に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新たに基礎杭を構築する際、既に埋設された中空コンクリート杭を破砕する際に使用する中空コンクリート杭の破砕ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
新たに基礎杭を構築する現場で、既に中空コンクリート杭が埋設されており、この既設の杭が、構築予定の基礎杭の近接位置の場合には、工事の邪魔になる場合があった。また、工事中に何らかの原因で既設の中空コンクリート杭を構築し直す場合もあった。これらの場合には、その既設の中空コンクリート杭を除去する必要があった。
【0003】
従来は、下端に破砕用の刃を設けた装置で、刃を回転しながら中空コンクリート杭を上面から破砕する装置が使用されていた(例えば、特許文献2、3)。
【0004】
これらの装置は大型化して、取り扱いが煩雑であり、破砕効率が悪いため、出願人は、螺旋羽根の外周に破砕刃を設けて破砕装置を構成し、中空コンクリート杭の中空部から外側に向けて破砕する装置を提案していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−203039
【特許文献2】特開昭61−250230
【特許文献3】特開平4−368513
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の技術では、螺旋羽根は、多少捻ってあるが(平面視で60度程度)板状の構造であり、破砕刃で破砕後に鉄筋類を巻き付けて除去する場合には、好都合であったが、破砕時に螺旋羽根に生じる負荷が大きく、螺旋羽根の材厚を厚くせざるを得なかった。また、中空コンクリート杭には鋼製の端板があるため、端板を除去するためには、別途端板を除去するための作業が必要となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
然るにこの発明は、少なくとも180度以上に捻ってある螺旋羽根を使用して、破砕刃の刃先を間隔を空けて、下向きに配置したので、前記問題点を解決した。
【0007】
即ちこの発明は、以下のように構成したことを特徴とする中空コンクリート杭の破砕ヘッドである。
(1) 回転ロッドとの連結部を有するヘッド本体に、螺旋羽根を配置する。
(2) 前記螺旋羽根は、下端から上端に向けて徐々に半径が大きくなるように形成し、下端の半径を破砕予定の中空コンクリート杭の内径より小さく形成した。
(3) 前記螺旋羽根の外周壁に、所定間隔を空けて複数の破砕刃を固定し、該破砕刃の刃先を取付位置の前記螺旋羽根の下面より下向きに位置させ、前記破砕刃の基端を取付位置の前記螺旋羽根の上面より上向きに位置させた。
(4) 前記各螺旋羽根は、「少なくとも2枚の螺旋羽根を、位相を違えて配置して、前記ヘッド本体の軸を中心として少なくとも180度以上の範囲に形成する。」あるいは「ヘッド本体の軸から放射方向で上下に複数の破砕刃が位置するように形成する。」
【0008】
また、前記において、破砕刃の間隙を、破砕予定の中空コンクリート杭のリング状の端板の幅より大きく形成した中空コンクリート杭の破砕装置である。更に、ヘッド本体の下端に破砕予定の中空コンクリート杭の中空部の充填固化物を除去できる除去ヘッドを取り付けた中空コンクリート杭の破砕装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の破砕ヘッドは、ヘッド本体の軸を中心として旋回角度180度以上の螺旋羽根を設けて、所定間隔を空けて配置した下向きの破砕刃を設け、あるいはヘッド本体の軸から放射方向で上下に複数の破砕刃が位置するように破砕刃を位置させたので、中空コンクリート杭の継手端板が存在しても端板の上下の杭壁を破砕でき、破砕効率を高めた。また、所定間隔を空けて配置した破砕刃の上端を螺旋羽根の上面より上方に位置させたので、残った端板を係止した状態で、下方の杭壁を破砕できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
破砕ヘッド1は、中空円筒状のヘッド本体2の上、下に、他のロッドとの上連結部3、下連結部4を形成し、ヘッド本体2の側面2aに、破砕刃10、10を有する螺旋羽根5、5を2つ取り付けて構成する(図1、図3)。螺旋羽根5、5は位相を違えて、2枚の螺旋羽根5、5は、軸2bに対して回転対称に取り付ける。
また、各螺旋羽根5は、旋回角度が1回転よりも若干小さな角度で形成され、下端6(直径D)から上端7(直径D00)に向けて徐々に半径(ヘッド本体の軸2bからのねじりの半径)が大きくなるように形成され、下端6の直径Dを、破砕予定の中空コンクリート杭30の内径より小さく形成する(図3(b))。
破砕刃10、10は、螺旋羽根5の外周壁8に、間隙14を空けて、刃先12を斜め下方に向けて固定され、破砕刃10の基端11は、固定位置の螺旋羽根5の上面5bよりも上方に位置している(図3(b))。
また、破砕刃10、10は、放射方向Y11、Y12、Y21、Y22で上下に、破砕刃10、10は複数配置される(図3(b))。
【実施例1】
【0011】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0012】
[1]破砕ヘッド1の構成
【0013】
(1) 軸2bを上下に配置した中空円筒状のヘッド本体2の上端に、他のロッドとの上連結部3を形成し、下端に他の部材やロッドとの下連結部4を形成する。ヘッド本体2の側面2aに、ヘッド本体2の長さ方向の中心を軸2bとして、2枚の螺旋羽根5、5を、位相を違えて取り付ける。従って、2枚の螺旋羽根5、5は、軸2bに対して回転対称に取り付ける。
【0014】
また、各螺旋羽根5は、下端6から上端7に向けて徐々に半径(ヘッド本体の軸2bからのねじりの半径)が大きくなるように形成され、螺旋羽根5、5の下端6の直径D、上端7の直径D0として、下端7の直径Dは、破砕予定の中空コンクリート杭30の内径より小さく形成する。螺旋羽根5の直径は例えば、以下のように設定する。
下端D=600mm
上端D00=1300mm
また、各螺旋羽根5、5は旋回角度315度程度(1周より若干小さい。上端6から下端7に向けてのねじりの範囲)で形成されている。
【0015】
螺旋羽根5の外周壁8に、破砕刃10、10を固定する。破砕刃10は、両螺旋羽根5、5で同じ高さ位置(ヘッド本体2の軸2bに対して直径対称な位置)に固定され、所定の間隔14を空けて5個つづ取り付けられている。螺旋羽根5の下端部(D)と破砕予定の中空コンクリート杭の外径に応じて、直径D〜Dの位置に配置されている(図3(b)。前記位置は例えば、現状で普及している中空コンクリート杭の外径の規格に応じて、以下のように設定する。
=Φ600mm
=Φ750mm
=Φ900mm
=Φ1050mm
=Φ1200mm
この規格であれば、外径900mm(内径660mm)〜外径1200mm(内径900mm)の中空コンクリート杭の破砕に対応できる。
【0016】
(2) また、破砕刃10は、螺旋羽根5の外周壁8の傾きに沿って下向きに固定され、螺旋羽根5の上から下に向けた傾きよりも若干下向きに形成され、破砕刃10の先端12は、固定位置の螺旋羽根5の下面5aよりも下方に位置し、破砕刃10の基端11は、固定位置の螺旋羽根5の上面5bよりも上方に位置している。
【0017】
(3) 破砕刃10は、螺旋羽根5で上記の直径位置に配置されるので、1つの螺旋羽根5の外周壁8で、下端6から上端7まで破砕刃10を追えば、各破砕刃10、10の間には間隙14、14が形成される。この間隙14は最下端の間隙L(直径D位置の破砕刃と直径D位置の破砕刃10の間)が最も小さくは、この間隙Lは少なくとも破砕される中空コンクリート杭の端板の幅Lよりも大きく形成されることが好ましい(図1、図3(b))。間隔Lは、D位置の破砕刃が外径750mm以下の中空コンクリート杭を対象としているので、この場合、
間隔L=100mm
で設定される(図1)。
【0018】
(4) また、破砕刃10、10は、ヘッド本体1の軸2bから、直径D又は直径Dに対応する放射方向Y11で、上下に2個の破砕刃10、10が配置され、放射方向Y11と対称な他側の放射方向Y12でも同様に上下に2個の破砕刃10、10が配置されている。また、直径D又は直径Dに対応する放射方向Y21で、上下に2個の破砕刃10、10が配置され、放射方向Y21と対称な他側の放射方向Y22でも同様に上下に2個の破砕刃10、10が配置されている(図3(b)。
【0019】
ここで、軸2bから4つの放射方向Y11、Y12、Y21、Y22で上下に2個づつ破砕刃10、10を配置したが。少なくとも2つの放射方向で、破砕刃10、10が上下に2個づつ破砕刃10、10を配置することが好ましい。
【0020】
(5) 以上のようにして、この発明の破砕ヘッド1を構成する(図1図3(a)(b))。
【0021】
[2]破砕ヘッド1の使用
【0022】
(1) 破砕ヘッド1の下連結部4に、中空コンクリート杭30の中空部33に充填されたソイルセメントや泥土を掻き出す除去ヘッド20を取り付ける。除去ヘッド20は、通常の掘削ヘッドと同様に螺旋羽根21、21の下端に掘削刃22、22を有する構造である(図1)。
【0023】
(2) 中空コンクリート杭30は、上下に端板35、35を有し、通常は複数本の単位杭の上下を端板35、35で連結して構成されている。最上段の中空コンクリート杭30の上の端板35は、別途の装置で除去しておく(図1鎖線図示)。
【0024】
(3) 続いて、螺旋羽根5と同一方向にねじられたスパイラル26を有する回転ロッド25の下端に、この破砕ヘッド1を連結して、回転させながら下降して、破砕予定の中空コンクリート杭30の上方から、中空部33に溜まったソイルセメントや泥土を除去ヘッド20で除去する。除去ヘッド20でソイルセメントなどを除去しながら、その上方では破砕ヘッド1の破砕刃10、10で中空コンクリート杭30の杭壁を上部側(上部内壁側又は上端側)から崩す(図2(a))。この際、中空部33に溜まったソイルセメントや泥土と破砕されたコンクリート片は螺旋羽根21、5、スパイラル26で上方に送られて、地上まで搬送される。
この際、中空コンクリート杭30のPC鋼棒や螺旋鉄筋その他の鉄筋(以下「鉄筋類」)がある場合には、螺旋羽根5、5の破砕刃10の基端11で絡めて巻き取ることができ、他の破砕刃10、10の先端11で、中空コンクリート杭30を破砕し続けることができる。ある程度絡んだ鉄筋類が増えた場合には、一旦破砕ヘッド1を地上に上げて、鉄筋類を除去して、再度除去装置を下降して、同様に破砕をする。
【0025】
(4) 続いて、途中に端板35、35があった場合(連結杭の継手部分があった場合)、中空コンクリート杭30の内径にもよるが、回転ロッド25を振って破砕ヘッド1を横方向に振れば、下端、2番目の破砕刃10、10、が端板35の内側(中空部)を通って、中空コンクリート杭30の端板35の下方の内壁31を破砕できるので、端板35を残したまま、その下方の内壁31を破砕できる(図2(b))。
【0026】
(5) この際、残った端板35は、その下側の中空コンクリート杭30の杭壁が破砕できたならば、分離され、螺旋羽根5、5の破砕刃10、10の基端11に掛止され、係止された状態で、下方の杭壁を他の破砕刃10で破砕できる(図2(c))。
全部の中空コンクリート杭30の破砕又は必要な破砕が完了したならば、破砕ヘッド1を地上に引き上げる。
【0027】
[3]他の実施例
【0028】
(1) 前記実施例において、破砕ヘッド1の螺旋羽根5の旋回角度を約315度としたが、2枚の螺旋羽根5、5の場合、1枚の螺旋羽根5の旋回角度は180度以上としてあれば好ましい。180度以上であれば上下方向で必ず2つの破砕刃10、10が位置できるので、破砕効率を高めることができる。
また、1つの螺旋羽根5の旋回角度は180度未満であっても、螺旋羽根5を3つ以上設け、あるいは上下に螺旋羽根5を配置して、略鉛直方向で破砕刃10の上方に他の破砕刃10が位置するように形成することもできる(図示していない)。
【0029】
(2) また、前記実施例において、ヘッド本体2の下端に下連結部4を設けたが、省略することもできる(図4)。この場合には、別の手段で、予め中空コンクリート杭30の中空部33の固化セメントミルク類を掻き出しておけば(あるいは中空部33にはじめから固化セメントミルク類が無い場合)、破砕機能専用であるので、破砕効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施例の側面図である。
【図2】(a)〜(c)はこの発明を使用した破砕を説明する概略した縦断面図である。
【図3】この発明の実施例で、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図4】この発明の他の実施例の側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 破砕ヘッド
2 ヘッド本体
2a ヘッド本体の側面
2b ヘッド本体の軸
3 上連結部
4 下連結部
5 螺旋羽根
6 螺旋羽根の下端
7 螺旋羽根の上端
8 螺旋羽根の外周壁
10 破砕刃
11 破砕刃の基端
12 破砕刃の先端
14 破砕刃間の間隙
20 除去ヘッド
21 除去ヘッドの螺旋羽根
22 除去ヘッドの掘削刃
25 回転ロッド
30 中空コンクリート杭
31 中空コンクリート杭の内壁
32 中空コンクリート杭の外壁
33 中空コンクリート杭の中空部
35 中空コンクリート杭の端板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のように構成したことを特徴とする中空コンクリート杭の破砕ヘッド。
(1) 回転ロッドとの連結部を有するヘッド本体に、螺旋羽根を配置する。
(2) 前記螺旋羽根は、下端から上端に向けて徐々に半径が大きくなるように形成し、下端の半径を破砕予定の中空コンクリート杭の内径より小さく形成した。
(3) 前記螺旋羽根の外周壁に、所定間隔を空けて複数の破砕刃を固定し、該破砕刃の刃先を取付位置の前記螺旋羽根の下面より下向きに位置させ、前記破砕刃の基端を取付位置の前記螺旋羽根の上面より上向きに位置させた。
(4) 前記各螺旋羽根は、「少なくとも2枚の螺旋羽根を、位相を違えて配置して、前記ヘッド本体の軸を中心として少なくとも180度以上の範囲に形成する。」あるいは「ヘッド本体の軸から放射方向で上下に複数の破砕刃が位置するように形成する。」
【請求項2】
破砕刃の間隙を、破砕予定の中空コンクリート杭のリング状の端板の幅より大きく形成した請求項1記載の中空コンクリート杭の破砕装置。
【請求項3】
ヘッド本体の下端に破砕予定の中空コンクリート杭の中空部の充填固化物を除去できる除去ヘッドを取り付けた請求項1記載の中空コンクリート杭の破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−256889(P2009−256889A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104389(P2008−104389)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】