説明

中空構造を有する電気穿孔装置

【課題】細胞を含む試料に電場を印加することにより、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入するための電気穿孔方法及び装置の提供。
【解決手段】電気穿孔中に均一な電場を提供するために長い中空型部材を使用する電気穿孔装置に関する。不導体素材の長い中空型試料充填部材400、試料充填部材の一端部と流体連通可能に連結されたリザーバー300、及び電極挿入部を備えたコネクタにより上記中空型試料充填部材の他端部と流体連通可能に連結された圧力保持手段を含み、中空型部材が細胞及び細胞に吸収される物質を含む試料で充填された後、長い中空型部材の両端の一対の電極200に電気パルスを印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を含む試料に電場を印加することにより、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入するための電気穿孔方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気穿孔法(electroporation)とは、細胞膜を透過できない巨大分子(macromolecule)を電気パルスによって細胞内に注入する技術である。電気穿孔法は、細胞実験及び遺伝子治療に直接適用可能な、非常に強力で広く使われる方法である。高い電場が印加される場合、細胞膜が一時的に多孔性化され、外部物質に対して透過性を示す。このような電気的透過性化(electropermeabilization)は、様々な要因(例えば、パルス幅、パルス持続時間、パルス数、及び他の実験条件等)に依存する。多くの研究者が、電気穿孔の機序を理解し、伝達感染(transfection)の効果を増進させるために、これらパラメーターに対する多様な研究を行った結果、電場の強度が、膜の透過性化及び伝達が起きる細胞面積の範囲制御に関与する決定的パラメーターであることが報告されている。その他のパラメーターについての研究も進行されたが、電気パルスに対する細胞の応答及びDNA伝達機序については殆ど知られておらず、電気穿孔の機序に対する貧弱な理論によって、電気穿孔の視覚化が重要な問題として台頭した。
【0003】
細胞懸濁液及び遺伝子の混合物に電場を印加するためには、通常、図1に示すように、二つの平行な電極板200が備えられたキュベットが使用される。上記二つの電極板の間に高い電場を印加する場合、遺伝子を細胞内に注入することができる。上記使い捨てのキュベットの電極としては、アルミニウム電極が使用される。しかし、上記アルミニウム電極から放出されるAl3+イオンが、細胞に悪影響を及ぼすことが報告されている。また、アルミニウム電極を使用する場合、電極上の酸化物層間の電圧降下により電場の強度が変化することがある。従って、白金又は金電極を使用することが望ましい。しかし、このような材質の電極は高価なため、1回又は数回使用した後に捨てられるキュベットの電極として使用するには、現実的に困難がある。図2は、従来の電気穿孔装置の例であり、スクエアウェーブ電気穿孔装置(ECM 830、BTX、米国)の写真である。
【0004】
このような従来の電気穿孔装置には、次のような問題点がある:一つ目に、キュベットが余りにも高価である。これは、キュベット内の対向する2つの面に電極が装着されているためである。従って、電気穿孔装置製造社はキュベットを一回のみ使用することを推奨するが、多くの使用者は数回にわたって繰り返し実験するため、実験誤差が発生する可能性が高い。二つ目に、電極物質(Al)が溶液内における反応性に優れており、水素生成に対する過電圧(overpotential)が低いため、電気パルスに対して反応したり、電極表面で水分解による気泡が発生する。三つ目に、生成されたイオン(Al3+)が細胞に悪影響を及ぼす。四つ目に、酸化膜(Al)によって表面抵抗が大きく増加する。五つ目に、電場が均一でない。多くの電流が電極の角部分を通って流れるため、電場が歪曲する。六つ目に、試料の体積が大きいため、微量の細胞の分析に適合しない。従って、このような問題点を解決し得る新しい電気穿孔装置の開発が要望されてきた。
【0005】
本発明者等は、上記の問題点を解決するために、不導体素材の長い中空型試料充填部材を使用し、上記試料充填部材の両端で電気パルスを印加して、電流が試料充填部材内に充填された試料を経由して流れるようにする電気穿孔装置を構成し、これを使用して電気穿孔を行った後、その生物学的な結果を従来の電気穿孔方法と比較することによって本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、本発明の目的は、中空型試料充填部材を用いた電気穿孔方法を提供することである。
本発明の他の目的は、電気穿孔装置を提供することである。
本発明のまた他の目的は、電気穿孔システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細胞を含む試料に電場を印加することにより、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入するための電気穿孔方法に関する。具体的には、電気穿孔が行われる不導体素材の長い中空型試料充填部材を使用して、両端部から電極を介して電気パルスを印加し、試料充填部材内で細胞に対する電気穿孔が効率的に行われるようにする電気穿孔方法、これを具現するための装置及びシステムに関する。
【0008】
一具体例において、本発明は、中空型試料充填部材、リザーバー(reservoir)、及び上記試料充填部材の一端と流体連通可能に連結され、試料充填部材に試料を提供し、試料充填部材内に試料を維持し得る適正圧力を提供する圧力保持手段が備えられた電気穿孔装置を提供する。本発明の電気穿孔装置は、試料充填部材の一端部と圧力保持手段とが、直接又はコネクタ(例えば、T字形コネクタ又はY字形コネクタ)によって連結されることができる。圧力保持手段がコネクタによって試料充填部材と連結される場合、コネクタの側面には電極を挿入できる電極挿入部が備えられ、電極挿入部に挿入された電極は、試料充填部材の内部が試料で充填される場合、試料と接触する。本発明の電気穿孔装置における圧力保持手段としては、ポンプ(pump)、シリンジ(syringe)又はピペット(pipette)を使用することができる。本発明の電気穿孔装置を使用して電気穿孔を行うに当たって、まずは、細胞を含む試料を圧力保持手段を使用して試料充填部材の内部に充填する。電極の挿入されたリザーバーに電解溶液を注入し、電気穿孔装置の中空型試料充填部材の一端を上記リザーバーの電解溶液と流体連通可能に連結した後、リザーバーにある電極とコネクタに挿入された電極との間に、電気パルス発生器によって電気パルスを印加することで、試料充填部材内に充填された試料の中の細胞を電気穿孔することができる。
【0009】
別の一具体例においては、中空型試料充填部材、リザーバー、リザーバーホルダー、及び圧力保持手段を含む本発明の電気穿孔装置は、圧力保持手段がピペットであり、上記ピペットは胴体に導電性接点体が備えられ、可動電極はピペット内に搭載されてピストンと連動し、着脱が容易になっている。可動電極は、試料を試料充填部材に注入するプランジャーの役割と、導電性接点体を介して試料を電気的に連結する電極の役割とを同時に行う。ピペットチップは、試料充填部材を構成し、その内部では可動電極の往復運動が可能であり、ピペットチップ搭載用シャフトと直接連結される。ピペットのピストンを連動させて可動電極がピペットチップ内で上下動することにより試料を試料充填部材に注入すると、試料は可動電極に接触してピストンを経てピペット胴体の導電性接点体と電気的に連結される。上記具体例において、リザーバーの底面には、貯蔵された電解溶液又は試料と接触する電極が備えられ、シリンダー型リザーバーホルダーの内管に着脱式に挿入され結合される。リザーバーホルダーは、上部にピペットを固定するための固定ユニット、及び上記ユニットと内管壁を通して連結された電極端子が備えられ、底面にはリザーバーの電極と接触する電極端子が形成された構造を有する。上記リザーバーホルダーは、胴体と蓋とに分離できるように製作するか、一体型に製作して利用することができる。
【0010】
このように本発明は、電気穿孔装置と電気パルス発生器で構成された電気穿孔システムを提供する。
【0011】
本発明による電気穿孔システムにおいて、リザーバーに貯蔵されている電解溶液又は試料と接触している電極と、コネクタに挿入されるかピストンと連動する他の電極との間に電気パルスを印加することによって、試料充填部材内に充填された試料に含まれた細胞を電気穿孔することができる。
【0012】
また、本発明において中空型試料充填部材は、チャンネル構造で提供されることができる。チャンネルは一体型、或いは上板と下板の二つの基板の結合により提供され、チャンネルの両端部は一対のウエル形態のリザーバーと流体連通可能に連結される。何れか一つのウエルを通して試料が注入されて、毛細管及び水頭圧作用、又はポンピングによりチャンネルに充填され、過量の試料が他のウエルに満たされると、各ウエルに一対の電極をそれぞれ挿入してチャンネル内の電場を印加することによって、チャンネル内の細胞に対する電気穿孔を行うことができる。
【0013】
従って、本発明による具体的な電気穿孔方法は、圧力保持手段を用いたり毛細管及び水頭圧現象を利用して試料充填部材の内部を試料で満たす段階;電気穿孔装置の試料充填部材の両端を、リザーバーに貯蔵された試料又は電解溶液と流体連通可能に連結する段階;及びそれぞれのリザーバーに電極を一つずつ挿入し、挿入された電極の間に電気パルスを印加して、上記試料充填部材内に充填された試料内の細胞を電気穿孔する段階;を含む。試料の量が非常に少ない場合、リザーバーに電極を挿入して試料と接触させる前に、試料の入っているリザーバーを、電解溶液だけを含むリザーバーに交換して使用することが望ましい。
【0014】
本発明において、試料充填部材及びリザーバーは不導体であることが望ましく、透光性プラスチック又はガラスを使用する。従って、ポリジメチルシロキサン(PDMS、polydimethylsiloxane)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、polymethylmethacrylate)、ポリカーボネート(PC、polycarbonate)、環状オレフィンコポリマー(COC、cyclic olefin copolymer)、ポリスチレン(PS、polystyrene)、ポリエチレン(PE、polyethylene)、コポリエステル熱可塑性弾性体(TPC、copolyester thermoplastic elastomer)、ポリイミド(polyimide)、 シリコン(silicon)、ガラス(glass)、又は石英(quartz)などの材質が利用され得るが、これに限定されるものではない。また、このような素材の微細チャンネル試料充填部材を有する電気穿孔装置は、PCR(重合酵素連鎖反応)、CE(毛細管電気泳動法)、混合又はろ過などを行う他のシステムにも容易に適用されることができる。
【0015】
上記にて例示したプラスチック材質は、本発明による中空型試料充填部材及びリザーバーの素材として優れた長所を有する。即ち、上記材質を用いて本発明による微細チャンネル装置を製造することが容易であり、上記材質は安価で、透明であり、且つ生体に適している。透明なプラスチック素材を使用する場合、細胞内に物質が吸収される過程をリアルタイムでその場で観察することができる。従って、生存細胞内に遺伝子を伝達する過程を視覚的に見せることができる。
【0016】
また、本発明の他の電気穿孔方法は、シリンジ又はポンプのような圧力保持手段を用いて試料充填部材の内部を試料で満たす段階;電気穿孔装置の試料充填部材の一端部を、リザーバーに貯蔵された試料又は電解溶液と流体連通可能に連結する段階;及び、一つの電極はリザーバーに挿入し、もう一つの電極は圧力保持手段を試料充填部材と連結するコネクタの電極挿入部に挿入し、挿入された電極の間に電気パルスを印加して、上記試料充填部材内に充填された試料内の細胞を電気穿孔する段階;を含む。試料の量が非常に少ない場合、リザーバーに電極を挿入して試料と接触させる前に、試料の入っているリザーバーを、電解溶液だけを含むリザーバーに交換して使用することが望ましい。
【0017】
また、本発明の他の電気穿孔方法は、ピペットタイプの圧力保持手段を用いて試料充填部材の内部を試料で満たす段階;リザーバーに電解溶液を満たしてリザーバーホルダーに挿入する段階;ピペットタイプの圧力保持手段をリザーバーホルダーに挿入して固定ユニットで固定し、試料充填部材の一端部をリザーバーに貯蔵された試料又は電解溶液と流体連通可能に連結する段階;及び、リザーバーに備えられた電極とピペット内の可動電極との間に電気パルスを印加して、試料充填部材内に充填された試料内の細胞を電気穿孔する段階;を含む。試料の量が非常に少ない場合、リザーバーに電極を挿入して試料と接触させる前に、試料の入っているリザーバーを、電解溶液だけを含むリザーバーに交換して使用することが望ましい。
【0018】
また本発明は、試料の提供、維持及び除去が、中空型試料充填部材の内部で連続的に行われるように調節することによって、電気穿孔を連続的に行うことができる。
【0019】
本発明による電気穿孔装置、電気穿孔システム又は電気穿孔方法において、電極としては、導電性の任意の電極が使用可能であり、白金電極、金電極、銀電極、銅電極、又はプラスチックに上記金属がメッキされた電極を使用することが望ましい。また、圧力保持手段としては、ポンプ、シリンジ又はピペットを使用することができる。また、中空型試料充填部材としては毛細管、チュービング又はチャンネルを使用することが望ましい。チャンネルの場合、微細チャンネルであることが望ましい。特に、試料充填部材内に電場が均一に分布するように、試料充填部材は、両端部によって規定される縦軸長さ(L、cm)と横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることが望ましい。
【0020】
細胞が熱によって損傷することは周知の事実であり、電気穿孔自体が細胞にストレスを与えるため、熱によるストレスも重要な考慮事項である。本発明による中空型試料充填部材を含む電気穿孔装置は、表面積に対する体積比が大きいため、電圧パルスによる熱を速かに除去できる。また、試料充填部材を介して流れる電流を容易に測定することによって、細胞の電気穿孔状態に関する情報を電気的に測定できる。本発明による電気穿孔装置は、DNA伝達の第1段階である電気穿孔に有用に使われることができ、電気穿孔の機序に関する研究に寄与することができる。また、遺伝子操作時に使用される電気穿孔装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、従来の電気穿孔装置に使われる、平行板形状のアルミニウム電極が備えられたキュベットの模式図である。
【図2】図2は、従来の電気穿孔装置であるスクエアウェーブ電気穿孔装置(ECM 830、BTX、米国)の写真である。
【図3】図3は、本発明の電気穿孔システムの一具体例を示す。
【図4】図4は、本発明の電気穿孔システムの一具体例を示す。
【図5】図5は、本発明の電気穿孔装置における、ディスク形態のコネクタと毛細管の連結形態を示す図である。
【図6】図6は、本発明の電気穿孔システムの一具体例を示す。
【図7】図7は、本発明の電気穿孔システムの一具体例を示す。
【図8】図8は、本発明の電気穿孔システムの一具体例を示す。
【図9】図9は、本発明の電気穿孔装置に使われるピペットの構造を示す。
【図10】図10は、図9のピペットの部分拡大図である。
【図11】図11の(a)及び(b)は、それぞれ図9のピペットに使われる試料充填部材及び可動電極を示す。
【図12】図12は、本発明の電気穿孔装置に使われるリザーバー及びリザーバーホルダーの構造を示す。
【図13】図13は、本発明の電気穿孔システムの一具体例を示す。
【図14】図14は、本発明のチャンネル構造を有する電気穿孔装置に対する斜視図である。
【図15】図15は、図14の電気穿孔装置の断面図である。
【図16−18】図16、図17及び図18は、本発明の電気穿孔装置の具体例を示す。
【図19】図19は、本発明による電気穿孔装置によって電気穿孔された細胞の顕微鏡写真であり、細胞を明視野(bright field)で観察した写真である。
【図20】図20は、図19と同じ領域の細胞について蛍光で観察した写真である。
【図21】図21は、従来の電気穿孔装置によって電気穿孔された細胞の顕微鏡写真であり、細胞を明視野(bright field)で観察した写真である。
【図22】図22は、図21と同じ領域の細胞について蛍光で観察した写真である。
【図23】図23は、本発明の電気穿孔装置を使用した電気穿孔において、試料充填部材の幾何学的形態と電気穿孔効率との関連性を示すグラフである。
【図24−33】図24〜図33は、本発明の電気穿孔装置を使用した電気穿孔において、試料充填部材の幾何学的形態と電気穿孔効率との関連性を提示する顕微鏡写真である。
【図34】図34は、多様な細胞に対して本発明による電気穿孔を行い、GFP発現により伝達感染効率を確認して示すグラフである。
【図35】図35は、図34の結果を示す顕微鏡写真である。
【図36】図36は、GFP siRNA及びpEGFPを、本発明による電気穿孔で細胞内に共感染させた後、GFPの発現を顕微鏡で確認した結果を示す。
【図37】図37は、従来のAl電極が備えられたキュベットを使用して電気穿孔する場合、電気パルスを印加する直前(a)及び印加した直後(b)のAl電極の表面を示す図である。
【図38】図38は、100μm幅の微細チャンネル内でヨウ化プロピジウム(PI、propidium iodide)の流入過程を示す図である。
【図39】図39は、100μm(a)及び500μm(b)の異なるチャンネル幅を有する二つの微細チャンネルで、電気穿孔を通してPIを注入した細胞の顕微鏡写真である。
【図40】図40は、チャンネル幅によるPIの発光強度を比較したグラフである。
【図41】図41は、150μm(a)及び500μm(b)の相異なるチャンネル幅を有する二つの微細チャンネルで、電気穿孔前後の細胞大きさの変化を示す図である。
【図42】図42は、50μm(a)、150μm(b)、200μm(c)及び250μm(d)の相異なるチャンネル幅を有する微細チャンネルで、7日間細胞を培養した結果を示す図である。
【図43】図43において、(a)は0.75kV/cmの電場を10ms間印加してから24時間が経過した時の細胞を明視野(bright field)で観察した写真、(b)は0.4kV/cmの電場を10ms間印加してから24時間が経過した時の細胞を明視野と蛍光で重ねて観察した写真、(c)は(b)の細胞を蛍光観察した写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明による電気穿孔装置、電気穿孔システム、及び電気穿孔方法について具体的に説明する。また、説明の重複を避けるために、同一の構成要素については重複記載を省略した。下記の具体例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。また、本発明に引用された文献は本発明に参考として統合される。
【0023】
図3は、本発明の電気穿孔システムの一具体例の構成図である。電気穿孔システムは、電気パルスを生成するパルス発生器100;試料を貯蔵する一対のリザーバー300;及び、内部に試料が充填された試料充填部材400、例えば、毛細管又はチュービング;を含む。上記一対のリザーバー300は、試料充填部材400により流体連通可能に相互連結される。上記一対のリザーバー300には、パルス発生器100との電気的接触のための電極200がそれぞれ挿入される。上記電極200に電気パルスを印加することによって、試料充填部材400内に充填された試料内の細胞に対する電気穿孔を行う。この時、試料充填部材400は両端部とも開放されるか、何れか一端部のみが開放され得る。即ち、試料充填部材400に試料を充填させ、両端部に電圧を印加するのに適しさえすれば、試料充填部材の何れの一部分が開放されても構わない。
【0024】
図4は、本発明の電気穿孔装置の一具体例による構成図である。ここで電気穿孔装置は、一つのリザーバー(図示せず);毛細管又はチュービングのような中空型試料充填部材400;及び、上記試料充填部材400の一端に連結され、試料充填部材の内部を上記試料で充填できるように適当な圧力を維持し得る圧力保持手段としてのシリンジ600;を含む。図4の電気穿孔装置において、試料充填部材400の一端と圧力保持手段600は、T字形コネクタ510によって連結される。上記コネクタ510には電極を挿入できる電極挿入部512が形成され、電気パルスを印加するための電極200が電極挿入部512に挿入される。このように、試料充填部材400の内部が試料で充填される場合、上記電極200は試料と接触する。上記試料充填部材400の一端と上記コネクタ510との間、及び上記コネクタ510と上記圧力保持手段600との間は、アダプター511を使用して連結させる。
【0025】
図5は、図4の電気穿孔装置における試料充填部材と圧力保持手段をディスク形態のコネクタ520を使用して連結する場合、上記ディスク型コネクタ520と試料充填部材400とが連結された形態を示す図である。図5において、ディスク形態のコネクタ520には試料を通過させるためのホール521が内側に形成され、電極挿入部はコネクタの側面に形成される。図5に示すように、電極挿入部にはL字型電極220が挿入されており、試料充填部材400の内部が試料で充填される場合、電極220が試料と接触するようになる。
【0026】
図6は、本発明の電気穿孔システムの一具体例を示す図である。上記電気穿孔システムは、リザーバー300;図4で示すような電気穿孔装置;及び、電気パルスを生成するパルス発生器100;を含む。細胞を含む試料又は電解溶液がリザーバー300に貯蔵され、リザーバー300には一つの電極200が挿入されて試料と接触する。また、試料充填部材400の一端がリザーバーの試料と流体連通可能に連結される。電気穿孔を行うにあたって、ポンプ620によって作動されるシリンジ600を圧力保持手段として使用し、試料充填部材400の内部を試料で充填させる。この時、試料充填部材400の内部を試料で充填した後、試料の入っているリザーバーを電解溶液の入っているリザーバーに交換して使用することもできる。リザーバー400に貯蔵された試料又は電解溶液と接触する電極200と、コネクタ520に挿入された電極との間に電気パルスを印加することによって、試料充填部材400内に充填された試料内の細胞を電気穿孔することができる。
【0027】
図7は、本発明の電気穿孔システムの他の一具体例であり、試料充填部材の一端部と流体連通可能に連結された圧力保持手段としてポンプ620を使用する。従って、試料充填部材400はコネクタ520を介してポンプ620に連結される。
【0028】
図8は、本発明の電気穿孔システムの他の一具体例であり、試料充填部材と流体連通する圧力保持手段としてピペット630を使用する。図9において、試料充填部材400はコネクタ520を介してピペット630に連結される。
【0029】
図9は、本発明の電気穿孔システムの他の一具体例であり、試料充填部材と流体連通する圧力保持手段としてピペット630を使用する。図10は、ピペット630に可動電極230b及び試料充填部材440が連結搭載された状態を示す。試料充填部材440はピペットチップ搭載用シャフト631と直接連結される。圧力保持手段として使われるピペット630は、その胴体に導電性接点体632が備えられ、可動電極230bがピペット内のピストン634と連動して、試料充填部材内で往復動可能にピペット内に挿入装着される。図11は、可動電極230b及び試料充填部材440を示す。
【0030】
図12は、リザーバー330及びリザーバーホルダー340を示す。リザーバーホルダー340の上部内管壁には、ピペットを固定できるようにピペット固定ユニット640が形成され、固定ユニットと電気的に連結される電極端子250bが備えられ、底面には別の電極端子250aが備わる。リザーバーの下部には、電解溶液又は試料と接触可能な電極230aが装着される。ピペット630がリザーバーホルダーのピペット固定ユニット640により固定されると、ピペット固定ユニット640、可動電極230b、及びピペットの接点体632が電気的に連結される。電気穿孔を行うにあたって、ピペットで試料を採取して試料充填部材440に充填し、電解溶液を収容しているリザーバー330をリザーバーホルダー340の内管に挿入した後、ピペットをピペット固定ユニット640に挿入固定してピペットの一端部をリザーバーの電解溶液と流体連通可能にしてから、リザーバーホルダー340の電極端子250a,250bを介して二つの電極230a,230bに電気パルスを印加して試料充填部材内の細胞を電気穿孔する。電気穿孔を行った後、ピペットをリザーバー及びリザーバーホルダーから分離しピペット押しボタン633を押すことで、電気穿孔された細胞を容易に回収できる。リザーバーホルダー340は、上部蓋340aと胴体340bとに分離できるように製作(図12参照)するか、一体型に製作することができる。試料充填部材は、ピペットチップ搭載用シャフト631に着脱式に連結されて用いられるので、一回用(使い捨て)に製作することができる(図10参照)。また、このような電気穿孔装置及び電気パルス発生器を用いることで、自動化された電気穿孔システムを提供することができる。図13は、シリンジ型圧力保持手段と連結された試料充填部材を含む電気穿孔装置が一つ以上並列配置された構造を有する電気穿孔システムの他の一具体例を示す。
【0031】
図14は、本発明による微細チャンネル構造の試料充填部材及びウエル形態のリザーバーを有する電気穿孔装置についての斜視図である。上板350aと下板350bとから構成された基板に微細チャンネルの中空型試料充填部材、及び上記試料充填部材の両端部で流体連通可能に連結された一対のウエル(well)を含む電気穿孔装置を示す。図15は、図14のA−A線に沿った断面図である。上記電気穿孔装置は、細胞を含む試料に電気パルスを印加できるように、パルス生成器の電極を挿入するための一対以上のウエル351a〜355a,351b〜355bが両側に形成されており;上記ウエルのうち相互対応するウエル351a−351b,352a−352b,353a−353b,354a−354b,355a−355bを連結し、試料を充填するための空間を形成する中空型試料充填部材が微細チャンネル451〜455として形成される。ウエルに電極を挿入した後電気パルスを印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入することができる。上記電気穿孔装置において、チャンネル経路の長さは相異なる。従って、パルス生成器の電極に同じ電圧を印加しても、各チャンネルでの電場の強度は異なる。
【0032】
上記電場の強度は、下記の数式1によって求められる。
【0033】
【数1】

【0034】
上記式において、
Eは印加される電場の強度、
Vは電極の両端間の電圧差、
Lはチャンネル経路の長さである。
【0035】
従って、上記微細チャンネルの両端に同じ電圧Vを印加しても、チャンネル経路の長さLの変化に応じて、異なる強度の電場が得られる。
【0036】
上記微細チャンネル試料充填部材を有する電気穿孔装置は、一体型に製造するか、ガラス基板又はプラスチック基板を接合して製造することが可能である。プラスチック基板を接合して製造する場合、本発明による装置は、上部基板350a及び下部基板350bを含み、上部基板にはウエルを形成するホールが形成されており、上部基板又は下部基板にはチャンネルが陰刻されることが望ましい。
【0037】
本発明による電気穿孔装置では、試料充填部材の長さを1mm〜10cmに製造することが望ましい。より望ましくは、試料充填部材の長さが約1cm〜5cmになるように製造する。試料充填部材がチャンネル構造である場合、チャンネルの高さは約2μm〜2mmで、幅は約10μm〜10mmであることが望ましい。より望ましくは、チャンネルの高さが約20μm〜200μmで、幅が約100μm〜5mmになるように製造する。本発明によるチャンネル構造の試料充填部材を有する電気穿孔装置は、MEMS技術によって製造できる。
【0038】
図16の(a)、(b)、(c)及び(d)は、本発明の電気穿孔装置の多様な構造を示す。図16の(a)〜(c)では、パルス生成器の電極を挿入するための複数対のウエルが両側に形成されており;上記複数対のウエルを連結し、上記試料を充填するための空間を形成するチャンネルが各対のウエルに対して1個ずつ形成されている。特に、図16(c)に示す電気穿孔装置は、各対のウエル間の最短距離が異なるようにウエルが配置されている。
【0039】
図16の(d)に示す電気穿孔装置は、パルス生成器の電極を挿入するための一対のウエルが両側に形成され;上記一対のウエルを連結し、上記試料を充填するための空間を形成するチャンネルが複数個形成されている。
【0040】
図17に示す電気穿孔装置は、パルス生成器の電極を挿入するための複数対のウエルが両側に形成され、各対のウエルに対してはチャンネルが1個ずつ形成されており、それぞれのチャンネル幅は相異なる。試料充填部材の各チャンネル経路の長さが異なる場合、各チャンネル毎に異なる電場を印加できる。
【0041】
図18の(a)及び(b)に示す電気穿孔装置は、対応するウエルを連結する各チャンネルのチャンネル経路長さ及びチャンネル幅が全て異なる。本発明による電気穿孔装置は、中空型試料充填部材を介してのみ電流が流れるため、従来の電気穿孔装置と比較する時、同じ電場ではるかに少ない電流が流れる。従って、電力の消耗を最小化でき、必要な場合は乾電池を電源として使用する携帯用装置としても製造できる。
【0042】
以下、本発明による電気穿孔装置及びシステムを用いた電気穿孔実験及び生物学的結果について説明する。
【実施例】
【0043】
実施例1:ピペット型電気穿孔装置を利用したHEK−293細胞株の電気穿孔実験
【0044】
1−1.細胞の準備
HEK−293細胞株(ATCC、CRL−1573)を、25cm培養フラスコ内で10%FBSで補充した培地内に保管し、COインキュベーター内で培養して、70%分布(confluency)まで培養した。次に、培地を除去し、PBS緩衝液を用いて細胞を洗浄した後、トリプシン処理した。FBSで補充された培地を加え遠心分離した。次に、PBS緩衝液で細胞を洗浄し、10%FBSで補充された培地内で再懸濁させて細胞試料を準備した。
【0045】
1−2.電気穿孔
上記1−1で準備したHEK−293細胞試料約100μlを室温でリザーバーに注入した。上記試料100μlに感染物質としてプラスミドDNA pEGFP(入手処:GenBank Accession:U55762;CLONTECH Lab.)5μgを入れて混合した。次に、本発明による電気穿孔装置(図8の装置)の試料充填部材の一端をリザーバー内の混合液に入れた。試料充填部材の一端がリザーバーに貯蔵された混合液に流体連通可能に連結された状態で、ピペット型圧力保持手段を用いて試料充填部材の内部を試料で充填した。次に、リザーバーを電解溶液のみが入っているリザーバーに交換して、試料充填部材の一端を電解溶液が入っているリザーバーに相互に流体連通可能に浸かるようにした後、パルス電圧、パルス持続時間、及びパルス繰り返し回数などの電場印加条件を設定した。本実験では、0.57kV/cmの電場を、30msのパルス持続時間で1回印加するよう設定した。次に、電気穿孔装置のうち、コネクタに挿入された電極と電解溶液のみが入っているリザーバーに挿入された電極との間に、上記設定した条件で電気パルスを印加した。
【0046】
1−3.電気穿孔された細胞の回収
ピペットを使用して試料充填部材内の試料を培養プレートに移し、培地を加えた。COインキュベーター内で収得した細胞を培養した。細胞を計数して感染率を測定した。
【0047】
1−4.結果
図19及び図20は、本発明による電気穿孔装置によってプラスミドDNA pEGFPが挿入されたHEK−293細胞株を顕微鏡で撮影した写真である。図19は明視野で観察した写真、図20は蛍光観察した写真である。実験の結果、感染率は約90〜95%であり、写真に現れた通り、細胞の生存率も非常に優れていた。図21及び図22は、図1に示すように、従来の電気穿孔装置を使用して同じ条件で実験した結果であり、プラスミドDNA pEGFPが挿入されたHEK−293細胞株を顕微鏡で撮影した写真である。図21は明視野で観察した写真、図22は蛍光観察した写真である。実験の結果、感染率は約50%であり、細胞生存率も本発明に比べて低かった。従来の技術で度々見られたような、死んだりよく育たなかった細胞(図21における、丸い形の細胞)が、本発明による結果(図19及び図20)では顕著に減少したことがわかる。従って、本発明による電気穿孔装置を使用する場合、感染率及び生存率がより一層優れていることがわかる。また、本発明による電気穿孔装置を使用する場合、電気穿孔によって特定の物質が注入された細胞を容易に回収することができる。
【0048】
1−5.試料充填部材の幾何構造変化による効果分析
上記1−1で準備したHEK−293細胞試料約100μlを室温でリザーバーに注入した。上記試料100μlに感染物質としてプラスミドDNA pEGFP5μgを入れて混合した。次に、図8の電気穿孔装置を使用して実験を行った。ピペット型圧力保持手段で試料を採取した後、リザーバーを電解溶液のみが入っているリザーバーに交換して、試料充填部材の一端を電解溶液が入っているリザーバーに相互に流体連通可能に浸かるようにしてから、425V/cmの電場を10msのパルス持続時間で3回印加するよう設定した。毛細管形態の試料充填部材は、横断面の直径を0.135cmに固定し、両端部間の長さを0.4cm〜4cmに変化させながら電気穿孔を行った。表1は実験条件を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1で、Lは試料充填部材の縦軸長さ(cm)、Dは横断面の直径(cm)、Aは横断面面積(cm)、R(cm−1)はL/Aを意味する。
【0051】
上記条件にて電気穿孔を行った後、試料充填部材内の試料を培養プレートに移して24時間培養した。細胞を計数し、感染率(蛍光発現細胞数/生存細胞数)をカウントして伝達感染率を測定した。図22はその結果を示す。
【0052】
図23のグラフは、R値が50以下になると感染率が顕著に減少することを示す。図24〜図33は、プラスミドDNA pEGFPが挿入されたHEK−293細胞株を顕微鏡で撮影した写真であり、各図において、左側は明視野で観察した写真で、右側は蛍光観察した写真である。
【0053】
1−6.多様な細胞株を用いた電気穿孔実験
上記1−1〜1−4の実験を、細胞株を異にしたことを除いては同じ条件で行った。その結果、下記表2に示すように、本発明の電気穿孔装置は、実験した全ての細胞に対して優れた伝達感染率を提示した。図34は伝達感染率をグラフで示したものであり、図35はGFP発現についての顕微鏡写真の結果を示す。
【0054】
【表2】

【0055】
1−7.細胞株に対する共同伝達感染(cotransfection)実験
CHO細胞株(ATCC:CRL−9618)、HeLa細胞株(ATCC、CCL−2)及びSKOV細胞株(ATCC、HTB−77)を実験に使用した。感染物質として、GFP siRNA(Ambion、No.4626、USA)0.25nmolとpEGFP5μgを試料100μlに混合し、pEGFPを5μg及びsiRNAを0.25nmol使用したことを除いては、上記1−1〜1−4と同じ方法で電気穿孔を行い、GFPの発現を観察した。その結果、図36に示すように、感染物質としてGFP siRNAとpEGFPの混合液を使用したものは、GFP発現が殆ど観察されず、これは、電気穿孔によりpEGFPとsiRNAが両方とも細胞内に非常に効率的に伝達され、細胞内でsiRNAによりGFP発現が抑制されたことを提示する。
【0056】
実施例2:チャンネル構造の電気穿孔装置を用いたSK−OV−3細胞の電気穿孔実験
2−1.微細チャンネル構造の製造
実施例2では、微細チャンネル構造の試料充填部材を有する電気穿孔装置を使用して生物学的実験を行った。電極を挿入するためのウエルと、上記ウエルを連結する中空型試料充填部材としてのチャンネルを備える電気穿孔装置をモールディングなどの方法によって製造した。チャンネル構造の試料充填部材は、高さ20μm、長さ2cmであり、チャンネル幅を100〜500μmと多様に製造した。しかし、フォトマスクを使用するフォトリゾグラフィー方法によってチャンネルパターンの形成が可能なことは勿論である。例えば、まずネガティブフォトレジスト(SU−8、MicroChem、マサチューセッツ、米国)をシリコンウエハ上にスピンコーティングして、20μm厚さのモールドマスターを形成する。以後、ソフトベークを行い、マスクアライナー(MA−6、Karl Suss GmbH、ドイツ)によって上記SU−8コーティングされたシリコンウエハ上にマスクパターンを移す。SU−8パターンを露光させてから、露光後ベーク(post-exposure bake)、現像、及びハードベーク工程を行った後、PDMS及びキュアエージェント(cure agent)の混合物(Sylgard 184、DOW Corning Co.、米国)を上記パターン上に注ぐ。キュア条件は、90℃で30分間である。PDMSをガラス基板と接合させ、25Wで酸素プラズマ処理をして微細チャンネルを形成する。
【0057】
2−2.細胞の準備及び培養
10%(v/v)の熱−不活性のウシ胎仔血清(FBS、Sigma)、ペニシリン(100unit/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)及びL−グルタミン(4mM)が供給されたDMEM(Dulbecco's modified Eagle's Medium)培地を使用する、温度37℃、湿度5%のCOインキュベーターで、SK−OV−3細胞(ATCC、HTB−77)を成長させた。トリプシン−EDTAを使用して25cmの組織培養フラスコで細胞を分離した。最終的な細胞懸濁液の濃度を1×10細胞/mlに調整した。パルス印加後、細胞の成長能力を生存能の直接的証拠として使用した。電気パルスを加える前に、ヨウ化プロピジウム(PI、propidium iodide)を細胞培地に加えた。PIは、通例的に使われる蛍光マーカー(marker)である。上記PIは、生存細胞内への細胞膜注入の指示子であり、核酸分子間に挿入される。細胞膜が透過性である場合、PIは細胞内に入って行き、核酸と結合して赤色蛍光を放射する。赤色蛍光の強度が核酸に結合されたPIの量により決定されるので、定量分析が可能である。本実験では、1.0mg/mlのPIを1:20(v/v)の割合で細胞培地に加えた。
【0058】
クラゲ(Aequorea victoria)から抽出された緑色蛍光タンパク質(GFP、green fluorescent protein)が、高可視性及び効果的な内部蛍光発色団(fluorophore)の放射によって、生化学及び細胞生物学の分野で多様に使われる。上記GFPは、細胞及び機関内で、遺伝子発現及びタンパク質標的化のマーカーとして使われる。本実験では、大腸菌E.coli由来のGFPを伝達するpEGFP−N1プラスミドを抽出、精製するために、プラスミドアイソレーションキット(Promega、米国)を使用した。抽出されたプラスミドDNAをアガロースゲル上で電気泳動によって確認した。分光光度計を使用して260nmでの吸光度を測定し、濃度を測定した。パルスを印加する前に、0.1μg/μlの濃度でパルス培地にプラスミドpEGFP−N1を加えた。リポーター遺伝子の発現を成功的な感染の評価として使用した。EGFPの発現を検査するために、電気パルスに露出された細胞を培養した。パルス印加後、チャンネル構造の電気穿孔装置をDMEM培地に浸漬させた後、EGFPの発現検査前に24時間、インキュベーターに置いた。細胞を培養するために、上記微細チャンネル装置にOプラズマ以外の前処理は行わなかった。
【0059】
2−3.電気穿孔
電気穿孔のためのシステムは、チャンネル構造の試料充填部材を有する上記2−1の電気穿孔装置、家庭用電源、Pt電極、及び電極ホルダーなどで構成した。上記2−2で準備した細胞試料を一方のウエルに注入してチャンネル型試料充填部材が細胞試料で充填され、毛細管及び水頭圧作用によって過量の試料が他のウエルに満たされるようにするか、ポンピングによってウエル及び試料充填部材に試料を注入した。電極ホルダー(添付ファイル)を顕微鏡上に装着させることによって、電気パルス印加中の電気透過性化過程を観察できた。アナログ出力ボード(COMI−CP301、Comizoa、韓国)を介して電気穿孔装置をコンピュータに連結し、LabVIEW ver6.1(National Instrument、米国)プログラムで制御した。本発明による電気穿孔装置の性能を確認するために、スクエアウェーブ電気穿孔装置(ECM830、BTX、米国、図2参照)及び平行板形状のアルミニウム電極が備えられた2mm間隙のキュベット(図1参照)での生物学的実験の結果と比較した。同じ電場(1kV/cm)で二つのシステムの性能を分析するために、キュベットに200Vを印加し、本発明による微細チャンネル装置に2kVを印加した。チャンネル幅を100μm〜500μmの範囲で100μm単位で変化させ、五つのケースについてPIを使用して実験を行った。GFP感染及び発現のために、10msの間、0.75kV/cm〜0.25kV/cmの多様なパルス条件下で実験を行った。PI吸収を観察するために、100Wの水銀ランプ及び20x/0.4NAの対物レンズを備えた逆相蛍光顕微鏡(LX790、Olympus、米国)を使用した。励起光を530±20nmのバンドパスフィルターで光学的にフィルタリングし、電気穿孔された細胞から誘導された蛍光を590nmのロングパスフィルターでフィルタリングした。12−ビットCCDカメラ(PCO、Kelheim、ドイツ)を使用して、15フレーム/秒で解像度640×480画素のイメージを得た。露出時間は全てのケース対して10msであった。細胞生存能及びGFP感染に対する蛍光を観察するために、励起光を475±15nmのバンドパスフィルターでフィルタリングし、誘導された蛍光を520nmのロングパスフィルターでフィルタリングした。カラー3ITCCDカメラ(AW−E300、Panasonic、米国)を使用して、解像度640×480画素のイメージを得た。
【0060】
2−4.結果
Al電極を使用するキュベット(図1参照)内で電気パルスを印加した場合、電極の表面に電気化学的に気泡が発生して、液体及び気体の2相の層が生成された。図37は、電気パルス印加前後のキュベットのAl電極表面を示した図である。左側の(a)は、電気パルス印加直前の電極表面である。右側の(b)は、電気パルス印加直後の電極表面上における気泡の形成を示したものである。上記気泡は、非常に速い速度で生成され、複雑な液体運動を起こす。このような気泡の運動は、パルス印加中に電気泳動と結合して、バルク培地及び細胞の不均一な状態を引き起こす。またアルミニウムは、電解質によって酸化層(Al)を容易に形成する物質である。上記アルミニウム電極の酸化層が高抵抗層として作用する。本発明による装置では、気泡の形成や培地の複雑な運動が発見されなかった。これにより、本発明で使用した電極物質(Pt)が化学的に安定していること、また、電極の位置が両端にだけ位置することで気泡形成が直接的に試料に影響を及ぼさないことが説明できる。従って、気泡が生成されるキュベット内におけるバルク培地の運動は非常に強いが、気泡の影響が少ない本発明によるチャンネル構造を有する電気穿孔装置内の培地は、安定した条件を維持できる。また、本発明の微細チャンネル装置は視覚的透過性に優れており、電極などによって視覚的に妨げられないため、電気穿孔の機序を顕微鏡などの装置を用いて視覚的に研究できる。
【0061】
2−5.挿入率(intercalation rate)及び電気透過性化過程の検査
本発明による微細チャンネル試料充填部材を有する電気穿孔装置でパルスを印加した後、PIのミリ秒(ms)単位でのチャンネル内への局所的な流入が観察された。通常のシステムで同じ範囲の電場が印加された場合、微細チャンネル内の殆どの細胞でPIの透過性化が検知された。図38は、100μm幅のチャンネル内におけるPI流入過程を示した図である。パルス印加直後、PIが陽極(anode)方向からのみ流入した。時間が経過するにつれて、蛍光が全体の細胞の内部(c〜d)に拡散され、10秒後には核酸が蛍光(e〜h)を放射し始めた。このような観察は、核酸に結合するPI特性を直接的に反映する。単一生存細胞でリアルタイムで観察できる機能は非常に有利である。基本的な細胞過程の間に重要な情報を提供できるからである。例えば、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET、fluorescence resonance energy transfer)を検出することによって、細胞質内でオリゴDNA対がc−fos mRNAと混成されるのを観察できる。また、リアルタイムで直接的な観察が可能であるため、本発明による微細チャンネル装置は非常に有用である。
【0062】
2−6.微細チャンネル試料充填部材を有する電気穿孔装置におけるチャンネル幅の変化による電気穿孔の効果
電気穿孔装置で、染料の吸収による蛍光の強度がチャンネル幅によって異なることが観察された。同じ電気パルスが印加される場合にも、チャンネル幅が増加するほど細胞領域に対するグレースケール単位の強度が減少した。図39は、それぞれ100μm(a)及び500μm(b)の相異なるチャンネル幅を有する二つのチャンネルに対してパルスを印加して30秒後に撮影した細胞の顕微鏡写真である。電場は1kV/cm、パルス持続時間は10msであった。チャンネル幅の狭い微細チャンネル(100μm)でのPI吸収が、チャンネル幅の広い微細チャンネル(500μm)での吸収よりも大きいことが確認された。チャンネル幅が相異なる5個の微細チャンネルに対するPI吸収を比較するために、実験を行いながら15フレーム/秒で映像を撮影した。50フレームごとに映像処理を行った。グラフィック・ソフトウェア(Paint Shop Pro 7.0、Jasc Software、米国)、及びMATLABプログラム(MathWorks,Inc.、米国)を使用して、細胞領域に対するグレースケールユニットから背景に対するグレースケールユニットの平均強度を減算した。PI強度に対する比較データを図40に示した。PI吸収に対してチャンネル幅が影響を及ぼすことがわかる。キュベット基盤のシステムで電極間隙を除いた幾何学的パラメーターは、深刻に考慮されなかったため、微細チャンネル試料充填部材でのこのような現象は注目に値する。細胞に対する電気パルスの効果を、明視野(bright field)で分析した。明視野分析法を、150μm及び500μm幅の2種類の条件下で行った。パルス条件は他の実験と同じであった(10ms間で1kV/cmの電場)。電気パルスに露出させた後の映像を、パルスを印加して25秒後に得た。電気パルスに露出されると、細胞はすぐに膨潤した。図41は、150μm(a)及び500μm(b)の2種類のケースに対するイメージ分析結果を示した図である。オートキャド(AutoCAD)2002(Autodesk,Inc.、米国)を使用して、細胞直径の増加を測定し、パルス印加前の直径に対する増加率を計算した。150μmのチャンネル幅での細胞直径は約23%増加したが、500μmのチャンネル幅での細胞直径は約10%が増加した。チャンネル幅によるこのような相違は、電気穿孔の程度が相違しているためであると思われる。このような結果から、微細チャンネル試料充填部材での電気穿孔時、チャンネル幅又は高さのようなチャンネル断面の幾何学的形状を考慮すべきであることを確認した。
【0063】
2−7.PDMSチャンネル試料充填部材での細胞培養
PDMSは、その生体適合性及び透過性の面からチャンネル装置の細胞培養システムに適した物質である。EGFP感染実験時、電気穿孔後細胞内に発現させるためには通常24時間以上かかるため、本発明によるチャンネル試料充填部材でEGFP感染実験をする際には細胞培養機能が必要である。チャンネル試料充填部材が細胞培養機として使用可能かを検査した。チャンネル内に細胞を注入し、PDMSチャンネル装置全体を細胞培地(DMEM)に浸漬させた。これを、インキュベーターで7日間保管した。図42は、培養の結果を示した図である。PDMSチャンネル装置にはPDMSとガラスを結合させるためのOプラズマ処理だけを行った。7日後、ウエル及びチャンネル末端の細胞を観察した結果、底面のウエル上によく分散されて、良い状態にあることがわった。50μmチャンネル幅のチャンネル中央の細胞は、依然として生存していたが、状態はあまり良くなかった(図42の(a))。これは、チャンネル長さに比べて、チャンネル幅が小さくて物理的空間が狭いことと、酸素及びCOなどの不足とが、細胞培養に悪影響を及ぼしたものと見られる。図42の(b)、(c)及び(d)は、それぞれチャンネル幅が150μm、200μm及び250μmの場合に対する実験結果を示した図である。広い微細チャンネルでほど細胞が付着され、拡散し、成功的に移動しているのがわかる。上記の結果から、本発明による電気穿孔装置をもって細胞の培養が可能であることを確認した。これは、長期間にわたっての多様な細胞研究に、リアルタイムの視覚化機能とともに多くの長所を提供する。また、ナノミリメータサイズの半導体であるカンタムドット(quantum dot)を使用して、長期間にわたって生存細胞内の多数のタンパク質の経路を同時に追跡する場合に、本発明による装置が使われ得るものと期待される。
【0064】
2−8.SK−OV−3細胞でのEGFP発現
遺伝子発現のマーカーとして広く使われるEGFPで生物学的実験を行った。まず、1.5kVの電気パルスを印加して、0.75kV/cmの電場を10ms間誘発させた。これは、市販されているBTX電気穿孔装置を使用してSK−OV−3細胞を感染させるのに適した条件である。このような電場条件は、チャンネル構造の試料充填部材内の細胞に対しては過度に苛酷な条件であった。24時間後に細胞を検査し、その結果を図43の(a)に示した。細胞が底面に拡散するような良い状態でないことがわかる。蛍光は検出されなかった。市販されている電気穿孔装置に適する電場は、本発明によるチャンネル構造の電気穿孔装置に適用するには過度に強いため、本実験では電場を0.25kV/cm〜0.75kV/cmの範囲内で変化させた。その結果、0.4kV/cm〜0.5kV/cmの範囲において、細胞が成功的に感染され、緑色蛍光を発現することを確認した。最も望ましい条件は、0.4kV/cmであった。図43の(b)及び(c)は、その結果を示した図である。このような結果から、本発明の電気穿孔装置内での電気穿孔のためのエネルギー効率は、キュベットを使用する場合より遥かに優れていることを確認した。
【0065】
このように、本発明による電気穿孔装置及びこれを用いた電気穿孔では、リアルタイムで注入過程を視覚化できる。本発明の方法による電気穿孔では、気泡生成も、細胞培地と細胞の複雑な運動も観察されなかった。キュベットと異なり細長い中空型試料充填部材は、その幾何学的構造によって電流が流れる方向が限定されるので、試料充填部材全体にかけて均一した電場が形成される。このような試料充填部材内の均質な内部環境は、細胞内の物質吸収率を上昇させる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
上述したように、本発明による電気穿孔装置を用いることによって、細胞を容易に電気穿孔することができる。また、細胞が毛細管又はチュービングのような管、又は微細チャンネルの中で電気穿孔されるので、電気穿孔された細胞を容易に効果的に回収して使用することができる。細長い構造の中空型試料充填部材は、電流が狭い管を通ってのみ流れるようにするため、従来の広くて短い構造のキュベットに比べて試料充填部材内に均一な電場を提供する。従って、実験条件の誤差を縮めることができる。本発明による電気穿孔装置における電極及び試料充填部材は着脱が可能であるので、性能が優れた白金電極などを永久的に使用するか、低廉な材質の一回用(使い捨て)電極を選択して使用することができ、試料充填部材は1回用として簡便に使用することができる。優れた性能の電極を使用するので、水の分解による水素発生又は金属イオン形成などを抑制できる。また、少量の試料を試料充填部材に充填させた後、電気穿孔して回収できるため、試料の損失が殆ど無く、少量の試料のみでも実験が可能である。また、表面積対体積の比が大きな、細長い試料充填部材を使用するので、熱放出が速く、細胞が熱によるストレスを受けることがない。また、圧力維持手段を適切に制御することによって、大容量の試料を自動化して実験することができ、複数個の電気穿孔装置を使用して並列的に処理することによって、最適の実験条件を容易に造成して、いくつかの試料を同時に処理できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入するための電気穿孔システムであって、
電気穿孔装置;及び
電気パルスを生成するパルス発生器;を含み、
上記電気穿孔装置は、不導体素材の長い中空型試料充填部材、試料充填部材の一端部と流体連通可能に連結されたリザーバー、及び電極挿入部を備えたコネクタにより上記中空型試料充填部材の他端部と流体連通可能に連結された圧力保持手段を含む電気穿孔装置であり、
上記リザーバーには試料又は電解溶液と接触する電極が備えられ、
上記圧力保持手段により試料充填部材の内部が試料で充填され、上記リザーバーに貯蔵された試料又は電解溶液に電気穿孔装置の試料充填部材の一端が互いに流体連通可能に連結され、
上記リザーバーに貯蔵された試料又は電解溶液と接触する電極と、コネクタの電極挿入部に挿入された他の電極との間に電気パルスを印加することによって、上記試料充填部材内に充填された試料内の細胞を電気穿孔する電気穿孔システム。
【請求項2】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項1に記載の電気穿孔システム。
【請求項3】
中空型試料充填部材が毛細管(capillary)、チュービング(tubing)又はチャンネル(channel)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気穿孔システム。
【請求項4】
二つ以上の電気穿孔装置が並列に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気穿孔システム。
【請求項5】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入するための電気穿孔システムであって、
電気穿孔装置;及び
電気パルスを生成するパルス発生器;を含み、
上記電気穿孔装置は、不導体素材の長い中空型試料充填部材;上記中空型試料充填部材の一端部と流体連通可能に連結された圧力保持手段;試料充填部材の他端部と流体連通可能に連結され、試料又は電解溶液と接触する電極が備えられたリザーバー;及び、圧力保持手段を固定する固定ユニット、固定ユニットと電気的に連結された電極端子、及びリザーバーに備えられた電極と電気的に連結される電極端子を有するリザーバーホルダー;を含み、
上記圧力保持手段は、導電性接点体が胴体の一部に備えられ、可動電極がピストンと連動可能に挿入されたピペットであり、中空型試料充填部材がピペットのチップ搭載用シャフトに直接着脱式に連結され、
ピペットの押しボタンを用いて、可動電極を試料充填部材の一端部に下降及び上昇させて試料充填部材に試料を充填し、ピペットをリザーバーホルダーの内管に挿入固定して、ピペット胴体の接点体がリザーバーホルダーの内管の固定ユニットを介して電極端子と電気的に連結され、試料充填部材がリザーバー内の貯蔵された試料又は電解溶液と流体連通できるように位置させた後、
上記リザーバーに貯蔵された試料又は電解溶液と接触する電極と可動電極との間に電気パルスを印加することによって、上記試料充填部材内に充填された試料内の細胞を電気穿孔する電気穿孔システム。
【請求項6】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項4に記載の電気穿孔システム。
【請求項7】
中空型試料充填部材が毛細管(capillary)、チュービング(tubing)又はチャンネル(channel)であることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気穿孔システム。
【請求項8】
可動電極はプラスチックにメッキしたものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気穿孔システム。
【請求項9】
二つ以上の電気穿孔装置が並列に配置されることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気穿孔システム。
【請求項10】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入するための電気穿孔システムであって、
電気穿孔装置;及び
電気パルスを生成するパルス生成器;を含み、
上記電気穿孔装置は、不導体素材の長い中空型試料充填部材、及び上記中空型試料充填部材と同じ基板上に形成されて試料充填部材の両端部と流体連通可能に連結された一対のウエル(well)を含み、上記パルス生成器から試料に電気パルスを印加できる電極が備えられ、電極をウエルに挿入し電気パルスを印加して試料充填部材内の細胞を電気穿孔する電気穿孔システム。
【請求項11】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項10に記載の電気穿孔システム。
【請求項12】
中空型試料充填部材が微細チャンネルであることを特徴とする請求項10又は11に記載の電気穿孔システム。
【請求項13】
二つ以上の電気穿孔装置が並列に配置されることを特徴とする請求項10又は11に記載の電気穿孔システム。
【請求項14】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入するための電気穿孔システムであって、
電気穿孔装置;及び
電気パルスを生成するパルス発生器;を含み、
上記電気穿孔装置は、不導体素材の長い中空型試料充填部材、試料充填部材の両端部と流体連通可能に連結される一対のリザーバーを含む電気穿孔装置で、
上記リザーバーには試料又は電解溶液と接触する電極が備えられ、
上記リザーバーに貯蔵された試料又は電解溶液と接触する電極間に電気パルスを印加することによって、上記試料充填部材内に充填された試料内の細胞を電気穿孔する電気穿孔システム。
【請求項15】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項14に記載の電気穿孔システム。
【請求項16】
中空型試料充填部材が毛細管(capillary)、チュービング(tubing)又はチャンネル(channel)であることを特徴とする請求項14又は15に記載の電気穿孔システム。
【請求項17】
二つ以上の電気穿孔装置が並列に配置されることを特徴とする請求項14又は15に記載の電気穿孔システム。
【請求項18】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入する電気穿孔装置であって、不導体素材の長い中空型試料充填部材、試料充填部材の一端部と流体連通可能に連結されたリザーバー、及び上記中空型試料充填部材の他端部と流体連通可能に連結された圧力保持手段を含む電気穿孔装置。
【請求項19】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項18に記載の電気穿孔装置。
【請求項20】
中空型試料充填部材が毛細管、チュービング又はチャンネルであることを特徴とする請求項18又は19に記載の電気穿孔装置。
【請求項21】
圧力保持手段は、電極を挿入できる電極挿入部が備えられたコネクタにより連結されることを特徴とする請求項18又は19に記載の電気穿孔装置。
【請求項22】
電極挿入部には電気パルスを印加するための電極が挿入され、試料充填部材の内部が試料で充填される場合、上記電極は上記試料と接触することを特徴とする請求項21に記載の電気穿孔装置。
【請求項23】
コネクタは上記試料を通過させるためのホールが内側に形成されているディスク形態であり、上記電極挿入部はディスク側面に形成されることを特徴とする請求項21に記載の電気穿孔装置。
【請求項24】
圧力保持手段がポンプ、シリンジ又はピペットであることを特徴とする請求項18又は19に記載の電気穿孔装置。
【請求項25】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入する電気穿孔装置であって、不導体素材の長い中空型試料充填部材;上記中空型試料充填部材の一端部と流体連通可能に連結された圧力保持手段;試料充填部材の他端部と流体連通可能に連結され、試料又は電解溶液と接触する電極が備えられたリザーバー;及び、圧力保持手段を固定する固定ユニット、固定ユニットと電気的に連結された電極端子、及び上記リザーバーに備えられた電極と電気的に連結される電極端子を有するリザーバーホルダー;を含む電気穿孔装置。
【請求項26】
圧力保持手段が、導電性接点体が胴体の一部に備えられ、可動電極がピストンと連動できるように挿入されたピペットであり、中空型試料充填部材がピペットのチップ搭載用シャフトに直接着脱式に連結されることを特徴とする請求項25に記載の電気穿孔装置。
【請求項27】
中空型試料充填部材が毛細管又はチュービングであることを特徴とする請求項25又は26に記載の電気穿孔装置。
【請求項28】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、50〜10,000であることを特徴とする請求項25又は26に記載の電気穿孔装置。
【請求項29】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入する電気穿孔装置であって、不導体素材の長い中空型試料充填部材、及び上記中空型試料充填部材の両端部と流体連通可能に連結された一対のリザーバーを含むことを特徴とする電気穿孔装置。
【請求項30】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項29に記載の電気穿孔装置。
【請求項31】
中空型試料充填部材が毛細管又はチュービングであることを特徴とする請求項28又は29に記載の電気穿孔装置。
【請求項32】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入する電気穿孔装置であって、不導体素材の長い中空型試料充填部材、及び上記中空型試料充填部材と同じ基板上に形成されて試料充填部材の両端部と流体連通可能に連結された一対のウエル(well)を含むことを特徴とする電気穿孔装置。
【請求項33】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項32に記載の電気穿孔装置。
【請求項34】
中空型試料充填部材が微細チャンネルであることを特徴とする請求項32又は33に記載の電気穿孔装置。
【請求項35】
二つ以上の中空型試料充填部材のチャンネルが一対のウエルと流体連通可能に連結されることを特徴とする請求項32又は33に記載の電気穿孔装置。
【請求項36】
各チャンネルのチャンネル経路の長さが相異なることを特徴とする請求項35に記載の電気穿孔装置。
【請求項37】
各チャンネルの幅が相異なることを特徴とする請求項35に記載の電気穿孔装置。
【請求項38】
電気穿孔装置は上部基板及び下部基板から構成され、上部基板にはウエル(well)を形成するホールが形成されており、上部基板又は下部基板には上記チャンネルが陰刻されることを特徴とする請求項35に記載の電気穿孔装置。
【請求項39】
細胞を含む試料に電場を印加することによって、細胞膜を電気的に穿孔して細胞内に物質を注入する電気穿孔方法であって、不導体素材の長い中空型試料充填部材に試料を充填し、上記充填された試料を介して電流が流れ得るように両端部に電気パルスを印加する電気穿孔方法。
【請求項40】
中空型試料充填部材の両端部により規定される縦軸長さ(L、cm)と試料充填部材の横断面面積(A、cm)の比(R、cm−1)が、1/50〜1/10,000であることを特徴とする請求項39に記載の電気穿孔方法。
【請求項41】
中空型試料充填部材は毛細管、チュービング又はチャンネルであることを特徴とする請求項39又は40に記載の電気穿孔方法。
【請求項42】
試料充填部材内での電気穿孔が連続的に行われることを特徴とする請求項39又は40に記載の電気穿孔方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2010−178746(P2010−178746A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−56713(P2010−56713)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【分割の表示】特願2007−527027(P2007−527027)の分割
【原出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(509221146)インビトロゲン シンガポール ピーティーイー.リミテッド. (1)
【Fターム(参考)】