中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法
【課題】コンパクトでありながら安定して良好な水質の水を得ることができる中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る中空糸膜モジュールは、多数本の中空糸膜から成る糸束と、糸束を収容し且つ側面にノズルを有する筒状ケースと、筒状ケース内の糸束の両端部において、中空糸膜の外面同士及び当該外面と筒状ケースの内面との隙間を封止する注型剤から成る一対の固定部と、一端が固定部によって封止され、糸束の両端部をそれぞれ囲繞するように延在する一対の整流筒とを備え、一対の整流筒は固定部から離隔した位置に、整流筒内側の水がノズルに流通し得る開口をそれぞれ有し、少なくとも一方の整流筒は固定部の界面位置に、当該整流筒の外面から内面にかけて貫通する相当直径1mm以上10mm以下の小穴を有する。
【解決手段】本発明に係る中空糸膜モジュールは、多数本の中空糸膜から成る糸束と、糸束を収容し且つ側面にノズルを有する筒状ケースと、筒状ケース内の糸束の両端部において、中空糸膜の外面同士及び当該外面と筒状ケースの内面との隙間を封止する注型剤から成る一対の固定部と、一端が固定部によって封止され、糸束の両端部をそれぞれ囲繞するように延在する一対の整流筒とを備え、一対の整流筒は固定部から離隔した位置に、整流筒内側の水がノズルに流通し得る開口をそれぞれ有し、少なくとも一方の整流筒は固定部の界面位置に、当該整流筒の外面から内面にかけて貫通する相当直径1mm以上10mm以下の小穴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や地下水などの比較的清澄な原水又は超純水を対象として除濁、除菌を行うためのろ過用モジュール及びろ過方法に関する。本発明は、特に、超純水製造ラインにおける保安用フィルターとして好適な中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や表示素子等の電子・電気部品の製造で用いられる超純水を製造するラインにおいては、精密ろ過膜やイオン交換樹脂、逆浸透ろ過膜を用いて製造した超純水をユースポイントに供給する直前に精密ろ過膜又は限外ろ過膜を用いてろ過している。この精密ろ過膜又は限外ろ過膜は、保安用フィルターとしての機能を担っている。この用途のろ過膜モジュールとしては、中空糸膜の外側に原水を供給してろ過する外圧式ろ過膜モジュールが主に使用されていた(非特許文献1,2を参照)。
【0003】
一方近年、製造規模の拡大と共に使用する超純水量が多くなっており、超純水製造設備も大型化する傾向にあり、該製造設備をコンパクトにする要求が強くなっている。このような状況において、高いろ過能力を有するモジュール、すなわち、1モジュールあたりのろ過流量が大きく、かつ、単位容積あたりのろ過流量が大きいモジュールが求められている。
【0004】
従来の外圧式モジュールにあっては、供給水量を多くして単位時間あたりの処理量を増大させた場合、モジュール内を水が高速で流れることになり、それによって中空糸膜が激しく振動する現象が起こる。これは、長期間ろ過を継続するうちに中空糸膜同士や中空糸膜とモジュール内の構成部材とが擦れることにより膜表面の細孔が閉塞して透水性能が低下したり、中空糸膜が破損してろ過水の水質が低下する原因となる。
【0005】
このような水流による中空糸膜のダメージを防止する方法として、ハウジングと中空糸膜束の間に保護用円筒体を設ける方法が提案されている(特許文献1−3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−204804号公報
【特許文献2】特公平07−102307号公報
【特許文献3】特開2000−37616号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】黒田、「超純水配管システム 超純水用ファイナルフィルターの開発」、配管と装置、三幸企画出版部、1997年3月、第37巻、第3号、p.2−7
【非特許文献2】伊藤、「超純水製造プロセスにおける膜分離技術」、クリーンテクノロジー、日本工業出版、1998年10月、第8巻、第10号、p.22−25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような保護用円筒体を使用しても高い流量で継続的にろ過を行うと、中空糸膜の破損などによってろ過水の水質が低下してしまう問題があった。そこで、本発明は、コンパクトでありながら安定して良好な水質の水を得ることができる中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、中空糸膜を収容する筒状ケース内に特定の構造を有する整流筒を設けることが上記問題を解消するのに極めて有用であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、多数本の中空糸膜から成る糸束と、糸束を収容し且つ側面にノズルを有する筒状ケースと、筒状ケース内の糸束の両端部において、中空糸膜の外面同士及び当該外面と筒状ケースの内面との隙間を封止する注型剤から成る一対の固定部と、一端が固定部によって封止され、糸束の両端部をそれぞれ囲繞するように延在する一対の整流筒とを備え、一対の整流筒は固定部から離隔した位置に、整流筒内側の水が上記ノズルに流通し得る開口をそれぞれ有し、少なくとも一方の整流筒は固定部の界面位置に、当該整流筒の外面から内面にかけて貫通する相当直径1mm以上10mm以下の小穴を有する中空糸膜モジュールを提供する。
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールによれば、所定の位置に開口及び小穴を有する整流筒を使用することにより、通水時における中空糸膜の振動を十分に抑制できる。これに加え、上記固定部の近傍において中空糸膜が水流から受ける剪断力を十分に低減できる。従って、水流による中空糸膜のダメージを十分に抑制でき、従来のろ過装置と比較し、高いろ過能力を達成できる。
【0012】
また、本発明の中空糸膜モジュールによれば、中空糸膜の糸束の上端側に残留しやすい空気を固定部の界面位置に設けられた小穴を通じて整流筒の外側へと、更にはモジュールの外へと排出できる。モジュール内に残存する空気を十分に低減することで、モジュール内における微生物の増殖を十分に抑制でき、優れた水質のろ過水を長期にわたって継続的に製造することが可能となる。
【0013】
小穴は、整流筒の内面と糸束の最外面を成す中空糸膜との距離が5mm以上である部位に設けられていることが好ましい。かかる構成を採用することにより、整流筒内における気泡の残存をより一層低減できる。また小穴は、必ずしも整流筒に独立して形成された貫通孔である必要はなく、整流筒の端部に設けられたスリットの一部を利用したものであってもよい。すなわち、小穴を有する整流筒は一端から長手方向に延在する幅1mm以上10mm以下のスリットを有し、当該小穴はスリットの一部が固定部によって包埋されることによって形成されたものであってもよい。
【0014】
本発明においては、糸束が多数本の中空糸膜を束ねて形成された小束を筒状ケース内に複数並行に充填したものであり、少なくとも固定部の界面位置に、他の部分と比較して中空糸膜の充填密度が低い部分を有することが好ましい。円筒ケース内に中空糸膜の充填密度が低い部分を設けることで、筒状ケース内を流れる水の抵抗を小さくできる。また、中空糸膜の充填密度が低い部分を通じて気泡が小穴まで移動しやすくなるという利点もある。
【0015】
更に、本発明は、上記中空糸膜モジュールを用いたろ過方法を提供する。すなわち、本発明に係るろ過方法は、上記中空糸膜モジュールを整流筒に設けられた小穴が上方に配置されるように設置する工程と、被処理水を当該モジュールの下方から中空糸膜の中空部へと供給する工程と、中空糸膜の外側に流出したろ過水を筒状ケースのノズルから採取する工程とを備える。
【0016】
本発明のろ過方法によれば、上記中空糸膜モジュールを使用することで、水流による中空糸膜のダメージを十分に低減できると共に、モジュール内における微生物の増殖を十分に抑制でき、優れた水質のろ過水を長期にわたって安定的に製造できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比較的コンパクトでありながら高いろ過能力を有する中空糸膜モジュールが提供される。この中空糸膜モジュールを用いたろ過方法によれば、優れた水質のろ過水を長期にわたって安定的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る中空糸膜モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す中空糸膜モジュールのII−II線断面図である。
【図3】図2に示す整流筒のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の中空糸膜モジュールを備えたろ過装置の構成の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の中空糸膜モジュールを備えたろ過装置の構成の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明に係る中空糸膜モジュールの他の実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る中空糸膜モジュールの更に他の実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図8】本発明に係る中空糸膜モジュールの更に他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図9】参考例4に係る中空糸膜モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【図10】図9に示す中空糸膜モジュールのX−X線断面図である。
【図11】図10に示す筒状部材のXI−XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<中空糸膜モジュール>
図1〜3を参照しながら、本発明に係る中空糸膜モジュールの実施形態について説明する。本実施形態に係る中空糸膜モジュール10は、多数本の中空糸膜1aから成る糸束1と、糸束1を収容する筒状ケース2と、糸束1の両端部に設けられた注型剤から成る一対の固定部3a,3bと、糸束1の両端部をそれぞれ囲繞するように配置された一対の整流筒4,5とを備える。モジュール10は、筒状ケース2の両端に配管接続キャップ6a,6bをナット7a,7bによってそれぞれ装着できるようになっている。ナット7a,7bを締めることで、キャップ6a,6bの溝に配置されたOリング8a,8bによって当該箇所がシールされる。
【0020】
糸束1は、多数本の中空糸膜1aによって形成される。多数本の中空糸膜1aを一束にまとめて糸束を形成することもできるが(図8参照)、図2に示すように、糸束1を複数の小束1bに分割した状態とすることが好ましい。特に、多数本の中空糸膜1aから成る小束1bをネット1cで包んだ状態とすることがより好ましい。このようにしてモジュール10内に中空糸膜が充填されていない部分(膜充填密度が低い部分)を設けることによって、中空糸膜1aの外側を流れる水の抵抗が小さくなり、ひいてはより高いモジュール透水性能を実現することができる。なお、小束1bの表面を覆うことができ且つ透水性を有する素材からなるものであれば、小束を包むものとしてネットの代わりに不織布などを使用してもよい。
【0021】
中空糸膜1aの種類は、モジュール10の用途に応じて適宜選択することができる。中空糸膜1aの具体例として、限外ろ過膜及び精密ろ過膜を例示できる。例えば、モジュール10を超純水用ファイナルフィルターの用途に用いるのであれば、中空糸膜1aは平均孔径0.05μm以下(より好ましくは0.02μm以下)の限外ろ過膜であることが好ましい。中空糸膜1a材質は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート及びポリアクリロニトリルから選択できる。
【0022】
中空糸膜1aは、内面積換算の短糸透水量(25℃)が2000L/m2/hr/0.1MPa(以下、短糸透水量の単位を「LMH」と記す。)以上であることが好ましく、4000LMH以上であることが特に好ましい。中空糸膜1aの内径は0.7〜1.0mmであることが好ましく、0.70mm〜0.85mmであることが特に好ましい。後述の通り、本実施形態のモジュール10は、通水時の振動による影響を十分に抑制できるため、上記の短糸透水量及び内径を有する中空糸膜を用いることによって、従来の約2倍のモジュール透水性能を実現できる。
【0023】
筒状ケース2は、両端に開口を有する円筒状の部材からなり、固定部3a,3bの界面Fa,Fb付近に設けられたノズル2a、2bを有する。ここでいう固定部の界面とは、固定部の一方面であって整流筒の基端部が包埋されている側の面を意味する。筒状ケース2の材質は、金属及びプラスチック類のなかから用途に応じて適宜選択することができる。加工の容易性及び軽量化の点から、筒状ケース2はプラスチック類で形成されたものが好ましく、プラスチック類の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ABS樹脂及び塩化ビニル樹脂等が挙げられる。なお、界面Fa,Fb付近にそれぞれ設けるノズルは、必ずしも1個ずつでなくてもよく、当該部位に複数個のノズルをそれぞれ設けることもできる。
【0024】
筒状ケース2の大きさは、外径が140〜200mmであり、かつ、長さが700〜1400mmであることが好ましく、外径160〜180mmであり、かつ、長さが800〜1100mmであることが特に好ましい。この範囲の大きさの筒状ケース2を使用したときに高いモジュール透水量及び最も高いモジュール透水性能を実現することができる。これに加え、この大きさならモジュール10を1人で持つことも可能であるのでハンドリング性が格段に良いという利点がある。なお、ここでいう筒状ケース2の「外径」とは、モジュール中央のろ過領域における円筒の外径を意味する。筒状ケース2の「長さ」とは、中空糸膜1aの両端面間の距離を意味する。
【0025】
固定部3a,3bは、筒状ケース2内の糸束1の両端部において、中空糸膜1aの外面同士及び当該外面と筒状ケース2の内面との隙間を封止する注型剤から成るものである。固定部3a,3bをなす注型剤としては、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が好適である。固定部3a,3bで糸束1の両端部を固定及び封止することにより、糸束1の両端面に中空糸膜1aの中空部が開口する。固定部3a,3bは、整流筒4,5の基端部4a,5aの開口を封止する役割も担っている。
【0026】
整流筒4,5は、固定部3a,3bの界面Fa,Fbの位置からモジュール10の中央の方向に向けてそれぞれ延在しており、固定部3a,3b付近の糸束1を囲繞している。整流筒4,5の材質は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0027】
一対の整流筒4,5は、上述の通り、基端部4a,5aの開口が固定部3a,3bによってそれぞれ封止されている。すなわち、整流筒4の基端部4aは固定部3aに包埋され、整流筒5の基端部5aは固定部3bに包埋されている。整流筒4,5の配置方法は、固定部3a,3bにそれぞれの基端部4a,5aを包埋させて固定する方法が一般的である。ただし、筒状ケース2に整流筒4,5を予め固定し、その後、整流筒4,5の基端部4a,5aを固定部3a,3bに包埋させる工程を経てモジュール10を作製してもよい。
【0028】
整流筒4,5は、先端部4b,5bの開口は封止されることなく、開放されている。これらの開口は、固定部3a,3bの界面Fa,Fbからそれぞれ離隔した位置にあり、整流筒4,5の内側の水をノズル2a,2bへと流通させる役割を担っている。すなわち、整流筒4内の水は先端部4bの開口から糸束1と筒状ケース2との間の空間に流出し、筒状ケース2の内面と整流筒4の外面との間隙を通ってノズル2aから排出されるようになっている。これと同様に、整流筒5内の水は先端部5bの開口から糸束1と筒状ケース2との間の空間に流出し、筒状ケース2の内面と整流筒5の外面との間隙を通ってノズル2bから排出されるようになっている。
【0029】
整流筒の先端部の開口面積をS1(m2)とし、中空糸膜モジュールの最大ろ過流量をQ(m3/s)とすると、開口面積S1は以下の不等式(1)で表される条件を満たすことが好ましい。
【数1】
この条件を満たすように開口面積S1を設定することにより、この部分を水が流通する際の圧損を小さくでき、高いモジュール透水量を実現できる。なお、ここでいう「モジュール透水量」とは、膜間差圧0.1MPaを印加したときの25℃における1時間当たりのろ過量(m3/hr/0.1MPa@25℃)をいう。また、「モジュール透水性能」とは、上記モジュール透水量をモジュールの見かけ容積で除した値((m3/hr/0.1MPa)/m3@25℃)をいう。なお、開口面積S1は、下記式(2)によって算出される値である。
【数2】
式中、D1は整流筒の先端部の内径(m)を示し、dOは中空糸膜の外径(m)を示し、Nは糸束を成す中空糸膜の本数を示す。
【0030】
整流筒4,5の先端部4b,5bの開口は、固定部の界面Fa,Fbからそれぞれ少なくとも30mm離れていることが好ましく、50mm以上離れていることがより好ましい。すなわち、固定部3a,3bのそれぞれの界面Fa,Fbから上記の長さで突出するように整流筒4,5を設置することが好ましい。このような長さの整流筒4,5で糸束1の両端部をそれぞれ囲繞することにより、界面Fa,Fb付近における中空糸膜1aの破損を効果的に防止できる。これは、中空糸膜1aを横断する方向の水の流れが固定部3a,3bの界面Fa,Fbから離れた位置で起こるため、界面Fa,Fb付近において中空糸膜1aにかかる剪断力が著しく軽減されることによるものと考えられる。
【0031】
一対の整流筒4,5のうち一方の整流筒4は、固定部3aの界面位置に所定の大きさの小穴4cが複数形成されている。小穴4cは、整流筒4の外面から内面にかけて貫通しており、空気や水が流通可能になっている。なお、ここでは、一方の整流筒4に小穴4cが形成されており、他方の整流筒5には小穴が形成されていない場合を説明するが、整流筒5にも整流筒4と同様な位置に同様な大きさの小穴を設けてもよい。
【0032】
小穴4cは、モジュール10内であって中空糸膜1a外の空気をモジュール10の外に流出させる機能を有している。内圧式ろ過を行う場合、糸束1の外周部に気泡が溜まりやすく、通水時であっても空気が水で十分に置換されない場合がある。本実施形態のように、整流筒4に小穴4cを設けることで小穴4cを通じて整流筒4の外側へと、更にノズル2aの方向へと水と共に気泡が流れ、気泡をノズル2aからモジュール10外へと排出できる。
【0033】
小穴4cが形成されていない整流筒を使用し、糸束の外周部に気泡が溜まった状態でろ過を継続していると、気泡内に存在した微生物が増殖してしまう場合がある。中空糸膜の中空部に被処理水を導入し、中空糸膜外にろ過水を得る内圧式ろ過においては、ろ過水中に微生物が混入することになり、水質の悪化を招来することになる。従って、内圧式ろ過を行う際には、中空糸膜外、特に、糸束外の空気を十分に排除しておくことは良好な水質のろ過水を継続的に製造上で重要なポイントである。
【0034】
小穴4cの相当直径は、1mm以上10mm以下であり、2mm以上9mm以下であることが特に好ましい。小穴の相当直径Rは、下記式(3)によって算出される値である。
【数3】
式中、S2は小穴の開口面積(m2)を示し、Lは小穴の縁の全長(m)を示す。なお、整流筒の内面と外面との間で小穴の寸法が変化している場合には、最も小さい値をLとする。
【0035】
整流筒4に形成する小穴4cの数は特に限定されないが、複数の小穴4cの総開口面積S3が以下の不等式(4)で表される条件を満たすように設定することが好ましい。
【数4】
開口面積比(S3/S1)を上記範囲内に設定することによって、通水時において小穴4cから流出する水量を適度な量とすることができる。S3/S1を0.005以上とすることによって、0.005未満の場合と比較して小穴4cから空気を十分に流出させることができる。他方、S3/S1を0.1以下とすることによって、0.1を超える場合と比較して固定部3aの界面Fa付近における中空糸膜1aへの水流による剪断力が軽減され、中空糸膜1aのダメージを十分に抑制できる。S3/S1は、0.01以上0.05以下であるのが特に好ましい。なお、小穴4cの形状は円形や楕円形に限定されるものではなく、三角形、四角形等の多角形であってもよい。
【0036】
小穴4cは、図1,3に示すように整流筒4の側面に予め独立した貫通孔として設けることができる。遠心注型法によって固定部3aを形成する場合には、界面Faが回転方向に基づいて曲面を形成するので、その曲面に応じて小穴の位置を設定しておくのが好ましい。
【0037】
小穴4cは、図2に示すように固定部3aの界面位置であって整流筒4の内面と糸束1の最外面を成す中空糸膜1aとの距離が5mm以上離れた位置に設けられていることが好ましい。換言すると、小穴4cが形成された整流筒4の部位と糸束1の最外面とが5mm以上離隔するように筒状ケース2内に糸束1及び整流筒4を固定することが好ましい。
【0038】
上記のように小穴4cと糸束1との間に一定の空間を設けることで、以下のような効果が奏される。すなわち、整流筒4内の気泡がこの空間を通って小穴4cにまで到達しやすくなり、整流筒4内における空気の残留をより一層確実に防止できる。これに加え、このような空間を設けない場合と比較し、小穴4c付近における水の流路面積が大きくなり、当該領域の流速を低くできる。これにより、小穴4c近傍の中空糸膜1aに作用する力が軽減され、中空糸膜1aの破損がより一層抑制できると考えられる。このような効果は、後述の実施例及び参考例によって確認されている。
【0039】
本実施形態に係るモジュール10においては、糸束1を4つの小束1bによって形成したことによって、上述の通り、モジュール10内に中空糸膜1aが充填されていない領域が形成されている。すなわち、図2に示すように、糸束1の中央部1d及び隣接する2つの小束1bによって形成される糸束1の最外面の凹部1eには中空糸膜1aが充填されていない。本実施形態においては、凹部1eと小穴4cの位置が一致するように整流筒4内に糸束1を固定することによって、小穴4cと糸束1の最外面との間隔が5mm以上となっている。
【0040】
なお、図9〜11に示すように、糸束1の端部を保護するものとして、多数の穴40aを有する保護用円筒体40が知られている。保護用円筒体40は、糸束1の外周を拘束し、それによって中空糸膜1aの過剰な揺れを防止して中空糸膜1aの破損を抑制しようとするものである。しかし、保護用円筒体40を装着した中空糸膜モジュールを用いて長期間にわたってろ過を行うと、中空糸膜1aが水流から一方向の力を継続的に受け、これによって中空糸膜1aのクリープ的な破壊が起こると考えられる。すなわち、糸束1の外周を単に拘束する方法ではクリープ的な破損を防止することは困難であり、水流によるダメージを十分に低減できないと考えられる。
【0041】
<ろ過方法>
図4を参照しながら、中空糸膜モジュール10を用いて被処理水(原水)をろ過する方法について説明する。図4に示すろ過装置100は、中空糸膜1aの中空部に被処理水を供給し、外側にろ過する内圧式ろ過を行うためのものである。ろ過装置100は、モジュール10、これに被処理水を供給する配管L1、モジュール10からろ過水及び循環水をそれぞれ排出する配管L2及び配管L3、並びに、これらの配管の途中に配設された圧力計及び弁などからなる。
【0042】
まず、小穴4cを有する整流筒4が上になるように、モジュール10を縦に配置する。配管接続キャップ6bに被処理水供給管L1を接続すると共に、配管接続キャップ6aに循環水排出管L3を接続する。また、筒状ケース2の上側ノズル2a及び下側ノズル2bにろ過水排出管L2a,L2bをそれぞれ接続する。
【0043】
被処理水供給管L1を通じて被処理水をモジュール10に導入することによって中空糸膜1aの中空部に被処理水を供給する。上側ノズル2a及び下側ノズル2bの両方から中空糸膜1aの外表面側から流出したろ過水を採取する。このような内圧式ろ過をモジュール10によって行うことにより、中空糸膜1aの破損を起こすことなく良好な水質のろ過水を長期間安定して得ることができる。
【0044】
供給した水量の約2〜5%を上側の中空糸膜1aの中空部から循環水として流出させながらろ過運転を行うのが好ましい。このようにすると、中空糸膜1aによって排除された微粒子等がモジュール10外に排出されるので、膜面の閉塞を起こし難くなり一層長期間にわたって安定したろ過水量を得ることができる。
【0045】
図4に示すように、下側ノズル2bに接続したろ過水排出管L2bはエルボで立ち上がり、他方のろ過水排出管L2aに合流している。上下両方の整流筒が同一構造である場合には、被処理水を供給する側とは反対側のノズルに近いところで上下のろ過水排出管L2a,L2bを合流させて、被処理水を供給する側とは反対側に導出することが好ましい。これにより、ろ過水のモジュール10内での流動抵抗とろ過水排出管L2内での流動抵抗とがバランスし、結果として上側ノズルからのろ過水量と下側ノズルからのろ過水量がほぼ同量になる。従って、ノズル2a,2bから流出するろ過水量をバランスさせるためにろ過水排出管L2に流量調整用弁を設ける必要が無くなり、結果として弁の数を減らせるメリットがある。
【0046】
なお、モジュール10は、内圧式ろ過のみならず、用途によっては外圧式ろ過にも用いることができる。図5に示すろ過装置200は、中空糸膜1aの外側に被処理水を供給し、中空部側にろ過するためのものである。例えば、超純水のファイナルフィルター用途では、配管中に空気溜まりができないように下側から被処理水を供給し、ろ過水を上側に導出する方法が好ましい。
【0047】
ろ過装置200は、中空糸膜モジュール10、これに被処理水を供給する配管L5、モジュール10からろ過水及び循環水をそれぞれ排出する配管L6a,L6b及び配管L7、並びに、これらの配管の途中に配設された圧力計及び弁などからなる。なお、ろ過装置200による処理を開始するに先立ち、例えば、ろ過水排出管L6bを通じて水をモジュール10内に導入し、中空糸膜1aの中空部に供給する工程を実施することもできる。この工程を実施することでモジュール10内の空気を小穴4c及びノズル2aを通じて十分に排出できる。モジュール10内の空気を十分に排出した後、弁を切り替える等して外圧式ろ過を開始することが好ましい。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、小穴4cが整流筒4の側面に独立して形成された貫通孔である場合を例示したが、図6に示すように、貫通孔を設ける代わりに整流筒4の端部に複数のスリット4dを設け、これを利用して小穴を形成してもよい。整流筒4の基端部4aを固定部3aに包埋させることによって、固定部3aの界面位置に小穴が形成される。
【0049】
スリットを利用して小穴を設ける場合、予め形成する穴の位置や固定部界面の位置を厳密に制御しなくても、比較的容易に固定部3aの界面位置に小穴を形成できるという利点がある。モジュール10内の空気を十分に排除すると共に、通水時の水流による中空糸膜1aのダメージを十分に抑制する点から、各スリット4dの幅は1〜10mmであることが好ましく、5〜8mmであることが特に好ましい。なお、図6においては、糸束1等の図示は省略する。
【0050】
また、上記実施形態においては、整流筒4の先端部4bの開口が整流筒4の内側の水をノズル2aへと流通させる開口として機能する場合を例示したが、当該開口の構成はこれに限定されるものではない。当該開口は、固定部3aの界面Faから一定の距離が離れた位置であれば、例えば、図7に示すように、整流筒の側面に設けてもよい。
【0051】
図7に示す中空糸膜モジュール20は、整流筒14が基端部14aから先端部14bに向かって径が大きくなる筒状部材からなり先端部14bが筒状ケース2の内面と接合されている。整流筒14の側面に開口14cが形成されており、整流筒14内の水が開口14cから整流筒14の外側に流出し、整流筒14の外面と筒状ケース2の内面との間隙を通ってノズル2aに流出することができるようになっている。水流による中空糸膜1aのダメージを効果的に抑制する観点から、開口14cの位置は固定部の界面Faから少なくとも30mm離れていることが好ましく、50mm以上離れていることがより好ましい。なお、図7においては、糸束1等の図示は省略する。
【0052】
整流筒14の側面に形成する開口14cの数や形状は特に限定されない。ただし、開口面積S1は、上記不等式(1)で表される条件を満たすことが好ましい。この場合、開口面積S1は、下記式(5)によって算出される値である。
【数5】
式中、W1及びW2は開口の上辺及び下辺の長さ(m)をそれぞれ示し、hは開口の高さ(m)を示し、nは開口の数を示す。
【実施例】
【0053】
以下の実施例及び参考例においては、中空糸膜としてポリスルホン製限外ろ過膜を使用した。その特性を以下に示す。
内径/外径:0.75mm/1.35mm、
内表面積換算短糸透水量:4200LMH(膜有効長5cmでの測定値)、
引張強さ:5.4MPa、
引張破断伸度:100%。
【0054】
中空糸膜の透水量は、25℃の限外ろ過水を長さ50mmの中空糸膜の内面から外面へ透過させたときのろ過水の量(LMH)である。透水量の計算にあたり有効膜面積は内面で換算した。中空糸膜の破断強度及び破断伸度は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−5Dを使用し、サンプルの長さ30mm、引っ張りスピード50mm/分で測定した。破断強度(MPa)は、中空糸膜1本当たりの破断時の荷重を、引っ張る前の膜の断面積で割ることによって算出される値である。破断伸度(%)は元の長さに対する破断に至るまでに伸びた長さの比である。
【0055】
[実施例1]
<中空糸膜モジュールの作製>
【0056】
筒状ケースとして、図1に示す筒状ケース2と同様の構成の透明ポリスルホン製のものを使用した。この筒状ケースの寸法は以下の通りである。
ろ過領域における円筒部内径/外径:154mm/170mm、
ノズル部における円筒部内径/外径:162mm/183mm、
ノズルの内径:58mm、
筒状ケースの長さ/ノズルの中心間距離:1050mm/872mm。
【0057】
整流筒として使用する透明ポリスルホン製の円筒(内径142mm、外径146mm、長さ135mm)を2つ準備した。これらの整流筒の一端にそれぞれ計8つのスリット(幅5mm、長さ25mm)を以下のように形成した。すなわち、2つのスリットが2mm間隔で形成されて成るスリットの組を、円周を4等分する位置4箇所に設けた。整流筒の側面には4箇所突起を設け、これらの突起を筒状ケースの内面に接合することによって、整流筒を筒状ケースの両端部に予め固定した。なお、上側ノズルの開口が2つのスリットの組の中間位置となるように、筒状ケース内に2つの整流筒を固定した(図2参照)。
【0058】
中空糸膜1750本をポリエチレン製ネットで包んで形成した小束を4つ準備した。中空糸膜の両端から2mm程度の位置まで中空部を閉塞させた。その後、4つの小束を筒状ケース内に設けた整流筒内に挿入し、遠心注型法によって両端から熱硬化性エポキシ樹脂を注入し、これを固化させた。なお、整流筒内に4つの小束からなる糸束を挿入する際には、2つの小束の間に形成される凹部の位置と整流筒のスリットの位置とを一致させた。50℃に加熱してキュアーし、中空糸膜の両端部を切断して中空糸膜の中空部を開口させ中空糸膜モジュールを作製した。この中空糸膜モジュールは、長さが1045mmであり、膜有効長が930mmであった。ポリスルホン製の配管接続キャップを中空糸膜モジュールの両端面にOリングを介して接合した。両方の配管接続キャップの端面間距離は、1180mmであった。
【0059】
<通水試験>
上記中空糸膜モジュールを使用し、図4に示す内圧式ろ過装置と同様の構成の装置を構成した。なお、循環水排出管L3の弁V3の下流側及びろ過水排出管L2の弁V2の下流側に各々ローター式流量計を設けた。また、ろ過水排出管L2bが上方の管L2aに合流する手前の位置に超音波式流量計を設け、下側ノズル2bから管L2bを通じて排出される水の流量を測定できるようにした。
【0060】
モジュールに25℃の純水をろ過水流量が10m3/hr、循環水量が0.3m3/hrとなるように弁V1と弁V3の開度を調整して通水を開始した。モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。なお、通水時には弁V2を全開状態とした。
【0061】
(モジュール透水量の測定)
次いで、循環水量を0.3m3/hrに固定したままろ過水流量が15m3/hr、20m3/hr、25m3/hr、30m3/hrとなるように段階的に通水量を上げていった。各段階での圧力計Pi、Po、Pfの指示値を読み取り、膜間差圧を求めた。膜間差圧ΔP(MPa)は、被処理水の圧力をPi、循環水の圧力をPo、ろ過水の圧力をPf、高さ補正値をHとしたとき、下記式(6)で算出される値である。高さ補正値H(MPa)は、Pi、Po、Pf各々の計測位置の床面からの高さをHi、Ho、Hf〔m〕としたとき、下記式(7)で算出される値である。
【数6】
【0062】
各ろ過水量と膜間差圧のグラフを描き、膜間差圧が0.1MPaのときのろ過水流量を求めたところ、27m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値がモジュール透水量である。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は1010m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。この値は、非特許文献1,2に記載のモジュールの透水性能の約2倍〜1.7倍である。また、各ろ過水流量で通水しているときに下側ノズルからの流量を測定したところ、下側ノズルからの流量がろ過水流量のほぼ1/2を示し、上下のノズルからほぼ同量のろ過水が流出していることが確認された。
【0063】
(リーク検査)
次いで、循環水量0.3m3/hr、ろ過水流量30m3/hrの条件で通水を1ヶ月間連続的に行った。1ヶ月後にモジュールを装置から取り外してリーク検査を以下のようにして行った。すなわち、両端の配管接続用キャップを取り外した後、モジュールを水槽に浸漬して内部を純水で満たした。次いで片側のノズルには栓を施して密閉状態とし、他のノズルには空気配管を接続した。0.2MPaまで徐々に空気圧を印加し、モジュール両端を観察して中空部から気泡が継続して出てこないかどうかを確認した。本実施例に係るモジュールはリークが全く無かった。なお、当該モジュールは、内部の水を垂れきった状態では重量が34kgであり、一人で持ち運ぶことができた。
【0064】
(モジュール内部の観察)
整流筒の小穴が形成されている位置でモジュールを割断して、内部を観察した。上側の整流筒の固定界面位置に形成されている8つの小穴の寸法を計測したところ、相当直径が3〜7mmの範囲に収まっていた。相当直径が一定の値でないのは界面位置が円周方向で異なっており場所によって小穴の高さが異なるためである。小穴の総開口面積S3は160mm2であり、整流筒の先端部の開口面積S1は5800mm2であった。開口面積比S3/S1は0.03であった。また、整流筒の先端部の開口は、固定部の界面から125mm〜118mmに位置していた。整流筒の小穴と糸束最外周部の中空糸膜との距離を計測したところ、8つの小穴はいずれも5〜8mmの範囲に位置していた。
【0065】
[実施例2]
以下の点の他は、実施例1と同様にして本実施例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、計8つのスリットが形成された円筒の代わりに、円周方向の所定の領域に偏在するように3つのスリット(幅8mm)が形成された円筒を上側の整流筒として使用した点、並びに、糸束を4つの小束に分割せずに中空糸膜7000本を1束として整流筒内に挿入した点である(図8参照)。なお、遠心注型を行う際には、ノズルが水平方向を向くようにして、整流筒に設けたスリットが上側になるようにセットした。図8に示す構成の中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。
【0066】
通水試験を開始し、モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。
【0067】
本実施例に係るモジュールは、モジュール透水量が25m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は930m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。また、本実施例においても、実施例1と同様に上下のノズルからほぼ同量のろ過水が流出していた。
【0068】
また、1ヶ月間連続的に通水を行った後にリーク検査を行ったところ、リークは全く無かった。リーク検査後、モジュールを割断して内部を観察した。整流筒の固定界面位置に形成されている3つの小穴の寸法を計測したところ、相当直径が7〜10mmの範囲に収まっていた。小穴の総開口面積S3は150mm2であり、整流筒の先端部の開口面積S1は5800mm2であった。開口面積比S3/S1は0.03であった。また、整流筒の先端部の開口は、固定部の界面から127mm〜120mmに位置していた。整流筒の小穴と糸束最外周部の中空糸膜との距離を計測したところ、3つの小穴はいずれも5〜7mmの範囲に位置していた。
【0069】
[実施例3]
以下の点の他は、実施例1と同様にして本実施例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、一定の径を有する円筒の代わりに、下方に向かって径が大きくなる筒状部材であり、その側面に3つの開口が形成された整流筒を用いた点である(図7参照)。本実施例で使用した整流筒は、以下のような形状である。なお、小穴を形成させるためのスリットは、実施例1における整流筒と同様にした。
基端部の内径/外径:142mm/146mm、
先端部の内径/外径:154mm/158mm、
長さ:85mm、
開口の上辺/下辺/高さ/個数:100mm/100mm/20mm/3個、
開口の上辺の位置:先端部の端面から25mm。
【0070】
図7に示す構成の中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。なお、ノズルの中心軸に対して左右45°の範囲内には開口が存在しないように整流筒を筒状ケース内に配置した。
【0071】
通水試験を開始し、モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。
【0072】
本実施例に係るモジュールは、モジュール透水量が27m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は1010m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。また、本実施例においても、実施例1と同様に上下のノズルからほぼ同量のろ過水が流出していた。
【0073】
また、1ヶ月間連続的に通水を行った後、リーク検査を行ったところ、リークは全く無かった。リーク検査後、モジュールを割断して内部を観察した。整流筒の固定界面位置に形成されている8つの小穴の寸法を計測したところ、相当直径が4〜9mmの範囲に収まっていた。小穴の総開口面積S3は220mm2であり、整流筒の先端部の開口面積S1は6000mm2であった。開口面積比S3/S1は0.04であった。また、整流筒の先端部の開口は、固定部の界面から50mm〜56mmに位置していた。整流筒の小穴と糸束最外周部の中空糸膜との距離を計測したところ、8つの小穴はいずれも5〜8mmの範囲に位置していた。
【0074】
[参考例1]
スリットが形成されていない整流筒を使用したことの他は、実施例1と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した。この中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。
【0075】
通水を開始したところ、固定部界面付近であって小束と小束の間の位置に数cmの大きさの気泡が残留しているのが観察された。循環水量を0.3m3/hrに固定したままろ過水流量が15m3/hr、20m3/hr、25m3/hr、30m3/hrとなるように段階的に通水量を上げていったが、残留気泡は整流筒内から流出することなく、上記の位置に残留したままであった。更に、30m3/hrの条件で1ヶ月通水を継続したが、気泡の残留量や位置は殆ど変化が観られなかった。気泡残留位置の解析を行うために、筒状ケースの表面に気泡が残留している位置をマーキングした。
【0076】
通水試験後、モジュールを割断して整流筒の内面と小束最外周の中空糸膜との距離を計測したところ、小束が整流筒に接する部分では1〜3mmの範囲であった。他方、気泡が残留していた部分では整流筒内面と小束最外周の中空糸膜との距離はいずれも5mm以上であった。このことから、整流筒の内面と糸束最外周の中空糸膜との間隔が5mmよりも狭い部分には気泡が溜まることはないが5mm以上離れた部分に気泡が溜まりやすいことが判明した。本参考例と実施例1の結果を対比すると、上記間隔が5mm以上の気泡が溜まりやすい箇所に小穴を設けることがモジュール内の残留する気泡の低減に極めて有用であることが示された。
【0077】
[参考例2]
糸束を整流筒内に挿入する際、糸束の向きを45°ずらした他は、実施例1と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、整流筒の小穴が2つの小束の間の凹部ではなく、各小束の中央部に位置するように糸束の両端部に整流筒を固定した。この中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。
【0078】
通水を開始したところ、固定部界面付近であって小束と小束の間の位置に数cmの大きさの気泡が残留しているのが観察された。循環水量を0.3m3/hrに固定したままろ過水流量が15m3/hr、20m3/hr、25m3/hr、30m3/hrとなるように段階的に通水量を上げていったが、残留気泡は整流筒内から流出することなく、上記の位置に残留したままであった。更に、30m3/hrの条件で1ヶ月通水を継続したが、気泡の残留量や位置は殆ど変化が観られなかった。通水試験後、モジュールを割断して整流筒に形成された小穴と小束最外周の中空糸膜との距離を計測したところ、8つの小穴はいずれも1〜3mmの範囲であった。
【0079】
[参考例3]
以下の点の他は、実施例1と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、計8つのスリットが形成された円筒を上側及び下側の整流筒としてそれぞれ使用する代わりに、スリットが形成されていない円筒を下側の整流筒として使用し、実施例1と同様のスリットが形成された円筒を上側の整流筒として使用した点である。この中空糸膜モジュールを使用し、図5に示す外圧式ろ過装置と同様の構成の装置を構成した。なお、循環水排出管L7の弁V7の下流側及びろ過水排出管L6の弁V6の下流側に各々ローター式流量計を設けた。
【0080】
モジュールに25℃の純水をろ過水流量が10m3/hr、循環水量が0.3m3/hrとなるように弁V5と弁V7の開度を調整して通水を開始した。ろ過水流量30m3/hr、循環水量0.3m3/hrの条件で1ヶ月間連続的に通水した。なお、通水時には弁V6を全開状態とした。1ヶ月後に該モジュールを装置から取り外して、実施例1と同様にしてリーク検査を行ったところ、28本の中空糸膜がリークしていた。
【0081】
モジュールを解体してリーク位置を観察したところ、下側の固定部界面付近において糸束最外周部の中空糸膜が破損していた。なお、小穴の形状や糸束との位置関係、並びに、整流筒と糸束との位置関係(整流筒内面と糸束最外周部の中空糸膜との距離等)は実施例1と同様であった。
【0082】
[参考例4]
図11に示すような多数の貫通穴を有する円筒を上側の整流筒として使用したことの他は、実施例2と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した(図9,10参照)。この整流筒の形状は以下のとおりである。
円筒の内径/外径:148mm/154mm、
長さ:85mm、
貫通穴の直径/ピッチ/配列/総個数:5mm/10mm/7行36列/252個。
【0083】
図9,10に示す構成の中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。なお、ノズルの中心軸に対して左右45°の範囲内には貫通穴が存在しないように整流筒を筒状ケース内に配置した。
【0084】
通水試験を開始し、モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。
【0085】
本参考例に係るモジュールは、モジュール透水量が20m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は750m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。本参考例においては、上側ノズルからの流量は下側ノズルからの流量の約1/2であった。
【0086】
ろ過水排出管L2bの途中にボール弁を取り付け、その開度を調整することによって上下ノズルからの流量を各々15m3/hrとなるように調整して1ヶ月間連続的に通水した。1ヶ月間連続的に通水を行った後、リーク検査を行ったところ、5本の中空糸膜がリークしていた。リーク検査後、該モジュールを解体してリーク位置を観察したところ、上側の固定部界面付近において糸束最外周部の中空糸膜が破損していた。破損していた中空糸膜は、整流筒の貫通穴との距離が1〜2mmの範囲であり、貫通穴に近接した位置に存在していた。
【0087】
上側の整流筒の固定部界面位置に形成されている貫通穴の寸法を計測したところ、相当直径が2〜5mmの範囲であった。固定部界面位置よりもモジュール中央側であって最も固定部界面に近接した貫通穴は、界面位置から5mmに位置していた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法によれば、安定して良好な水質の水を大量に得られる。本発明の中空糸膜モジュールは、コンパクトなサイズとすることができるため、特に超純水製造設備に用いる保安用フィルターとして好適である。また、当該中空糸膜モジュールは注射用水製造設備に用いるパイロジェン除去用フィルターとしても好適である。
【符号の説明】
【0089】
1…糸束、1a…中空糸膜、1b…小束、2…筒状ケース、2a,2b…ノズル、3a,3b…固定部、4,5…整流筒、4a,5a…整流筒の基端部、4b,5b…整流筒の先端部、4c…小穴、4d…スリット、10,20…中空糸膜モジュール、14…整流筒、14a…整流筒の基端部、14b…整流筒の先端部、14c…開口、100,200…ろ過装置、Fa,Fb…固定部の界面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や地下水などの比較的清澄な原水又は超純水を対象として除濁、除菌を行うためのろ過用モジュール及びろ過方法に関する。本発明は、特に、超純水製造ラインにおける保安用フィルターとして好適な中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や表示素子等の電子・電気部品の製造で用いられる超純水を製造するラインにおいては、精密ろ過膜やイオン交換樹脂、逆浸透ろ過膜を用いて製造した超純水をユースポイントに供給する直前に精密ろ過膜又は限外ろ過膜を用いてろ過している。この精密ろ過膜又は限外ろ過膜は、保安用フィルターとしての機能を担っている。この用途のろ過膜モジュールとしては、中空糸膜の外側に原水を供給してろ過する外圧式ろ過膜モジュールが主に使用されていた(非特許文献1,2を参照)。
【0003】
一方近年、製造規模の拡大と共に使用する超純水量が多くなっており、超純水製造設備も大型化する傾向にあり、該製造設備をコンパクトにする要求が強くなっている。このような状況において、高いろ過能力を有するモジュール、すなわち、1モジュールあたりのろ過流量が大きく、かつ、単位容積あたりのろ過流量が大きいモジュールが求められている。
【0004】
従来の外圧式モジュールにあっては、供給水量を多くして単位時間あたりの処理量を増大させた場合、モジュール内を水が高速で流れることになり、それによって中空糸膜が激しく振動する現象が起こる。これは、長期間ろ過を継続するうちに中空糸膜同士や中空糸膜とモジュール内の構成部材とが擦れることにより膜表面の細孔が閉塞して透水性能が低下したり、中空糸膜が破損してろ過水の水質が低下する原因となる。
【0005】
このような水流による中空糸膜のダメージを防止する方法として、ハウジングと中空糸膜束の間に保護用円筒体を設ける方法が提案されている(特許文献1−3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−204804号公報
【特許文献2】特公平07−102307号公報
【特許文献3】特開2000−37616号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】黒田、「超純水配管システム 超純水用ファイナルフィルターの開発」、配管と装置、三幸企画出版部、1997年3月、第37巻、第3号、p.2−7
【非特許文献2】伊藤、「超純水製造プロセスにおける膜分離技術」、クリーンテクノロジー、日本工業出版、1998年10月、第8巻、第10号、p.22−25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような保護用円筒体を使用しても高い流量で継続的にろ過を行うと、中空糸膜の破損などによってろ過水の水質が低下してしまう問題があった。そこで、本発明は、コンパクトでありながら安定して良好な水質の水を得ることができる中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、中空糸膜を収容する筒状ケース内に特定の構造を有する整流筒を設けることが上記問題を解消するのに極めて有用であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、多数本の中空糸膜から成る糸束と、糸束を収容し且つ側面にノズルを有する筒状ケースと、筒状ケース内の糸束の両端部において、中空糸膜の外面同士及び当該外面と筒状ケースの内面との隙間を封止する注型剤から成る一対の固定部と、一端が固定部によって封止され、糸束の両端部をそれぞれ囲繞するように延在する一対の整流筒とを備え、一対の整流筒は固定部から離隔した位置に、整流筒内側の水が上記ノズルに流通し得る開口をそれぞれ有し、少なくとも一方の整流筒は固定部の界面位置に、当該整流筒の外面から内面にかけて貫通する相当直径1mm以上10mm以下の小穴を有する中空糸膜モジュールを提供する。
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールによれば、所定の位置に開口及び小穴を有する整流筒を使用することにより、通水時における中空糸膜の振動を十分に抑制できる。これに加え、上記固定部の近傍において中空糸膜が水流から受ける剪断力を十分に低減できる。従って、水流による中空糸膜のダメージを十分に抑制でき、従来のろ過装置と比較し、高いろ過能力を達成できる。
【0012】
また、本発明の中空糸膜モジュールによれば、中空糸膜の糸束の上端側に残留しやすい空気を固定部の界面位置に設けられた小穴を通じて整流筒の外側へと、更にはモジュールの外へと排出できる。モジュール内に残存する空気を十分に低減することで、モジュール内における微生物の増殖を十分に抑制でき、優れた水質のろ過水を長期にわたって継続的に製造することが可能となる。
【0013】
小穴は、整流筒の内面と糸束の最外面を成す中空糸膜との距離が5mm以上である部位に設けられていることが好ましい。かかる構成を採用することにより、整流筒内における気泡の残存をより一層低減できる。また小穴は、必ずしも整流筒に独立して形成された貫通孔である必要はなく、整流筒の端部に設けられたスリットの一部を利用したものであってもよい。すなわち、小穴を有する整流筒は一端から長手方向に延在する幅1mm以上10mm以下のスリットを有し、当該小穴はスリットの一部が固定部によって包埋されることによって形成されたものであってもよい。
【0014】
本発明においては、糸束が多数本の中空糸膜を束ねて形成された小束を筒状ケース内に複数並行に充填したものであり、少なくとも固定部の界面位置に、他の部分と比較して中空糸膜の充填密度が低い部分を有することが好ましい。円筒ケース内に中空糸膜の充填密度が低い部分を設けることで、筒状ケース内を流れる水の抵抗を小さくできる。また、中空糸膜の充填密度が低い部分を通じて気泡が小穴まで移動しやすくなるという利点もある。
【0015】
更に、本発明は、上記中空糸膜モジュールを用いたろ過方法を提供する。すなわち、本発明に係るろ過方法は、上記中空糸膜モジュールを整流筒に設けられた小穴が上方に配置されるように設置する工程と、被処理水を当該モジュールの下方から中空糸膜の中空部へと供給する工程と、中空糸膜の外側に流出したろ過水を筒状ケースのノズルから採取する工程とを備える。
【0016】
本発明のろ過方法によれば、上記中空糸膜モジュールを使用することで、水流による中空糸膜のダメージを十分に低減できると共に、モジュール内における微生物の増殖を十分に抑制でき、優れた水質のろ過水を長期にわたって安定的に製造できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比較的コンパクトでありながら高いろ過能力を有する中空糸膜モジュールが提供される。この中空糸膜モジュールを用いたろ過方法によれば、優れた水質のろ過水を長期にわたって安定的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る中空糸膜モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す中空糸膜モジュールのII−II線断面図である。
【図3】図2に示す整流筒のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の中空糸膜モジュールを備えたろ過装置の構成の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の中空糸膜モジュールを備えたろ過装置の構成の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明に係る中空糸膜モジュールの他の実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る中空糸膜モジュールの更に他の実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図8】本発明に係る中空糸膜モジュールの更に他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図9】参考例4に係る中空糸膜モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【図10】図9に示す中空糸膜モジュールのX−X線断面図である。
【図11】図10に示す筒状部材のXI−XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<中空糸膜モジュール>
図1〜3を参照しながら、本発明に係る中空糸膜モジュールの実施形態について説明する。本実施形態に係る中空糸膜モジュール10は、多数本の中空糸膜1aから成る糸束1と、糸束1を収容する筒状ケース2と、糸束1の両端部に設けられた注型剤から成る一対の固定部3a,3bと、糸束1の両端部をそれぞれ囲繞するように配置された一対の整流筒4,5とを備える。モジュール10は、筒状ケース2の両端に配管接続キャップ6a,6bをナット7a,7bによってそれぞれ装着できるようになっている。ナット7a,7bを締めることで、キャップ6a,6bの溝に配置されたOリング8a,8bによって当該箇所がシールされる。
【0020】
糸束1は、多数本の中空糸膜1aによって形成される。多数本の中空糸膜1aを一束にまとめて糸束を形成することもできるが(図8参照)、図2に示すように、糸束1を複数の小束1bに分割した状態とすることが好ましい。特に、多数本の中空糸膜1aから成る小束1bをネット1cで包んだ状態とすることがより好ましい。このようにしてモジュール10内に中空糸膜が充填されていない部分(膜充填密度が低い部分)を設けることによって、中空糸膜1aの外側を流れる水の抵抗が小さくなり、ひいてはより高いモジュール透水性能を実現することができる。なお、小束1bの表面を覆うことができ且つ透水性を有する素材からなるものであれば、小束を包むものとしてネットの代わりに不織布などを使用してもよい。
【0021】
中空糸膜1aの種類は、モジュール10の用途に応じて適宜選択することができる。中空糸膜1aの具体例として、限外ろ過膜及び精密ろ過膜を例示できる。例えば、モジュール10を超純水用ファイナルフィルターの用途に用いるのであれば、中空糸膜1aは平均孔径0.05μm以下(より好ましくは0.02μm以下)の限外ろ過膜であることが好ましい。中空糸膜1a材質は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート及びポリアクリロニトリルから選択できる。
【0022】
中空糸膜1aは、内面積換算の短糸透水量(25℃)が2000L/m2/hr/0.1MPa(以下、短糸透水量の単位を「LMH」と記す。)以上であることが好ましく、4000LMH以上であることが特に好ましい。中空糸膜1aの内径は0.7〜1.0mmであることが好ましく、0.70mm〜0.85mmであることが特に好ましい。後述の通り、本実施形態のモジュール10は、通水時の振動による影響を十分に抑制できるため、上記の短糸透水量及び内径を有する中空糸膜を用いることによって、従来の約2倍のモジュール透水性能を実現できる。
【0023】
筒状ケース2は、両端に開口を有する円筒状の部材からなり、固定部3a,3bの界面Fa,Fb付近に設けられたノズル2a、2bを有する。ここでいう固定部の界面とは、固定部の一方面であって整流筒の基端部が包埋されている側の面を意味する。筒状ケース2の材質は、金属及びプラスチック類のなかから用途に応じて適宜選択することができる。加工の容易性及び軽量化の点から、筒状ケース2はプラスチック類で形成されたものが好ましく、プラスチック類の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ABS樹脂及び塩化ビニル樹脂等が挙げられる。なお、界面Fa,Fb付近にそれぞれ設けるノズルは、必ずしも1個ずつでなくてもよく、当該部位に複数個のノズルをそれぞれ設けることもできる。
【0024】
筒状ケース2の大きさは、外径が140〜200mmであり、かつ、長さが700〜1400mmであることが好ましく、外径160〜180mmであり、かつ、長さが800〜1100mmであることが特に好ましい。この範囲の大きさの筒状ケース2を使用したときに高いモジュール透水量及び最も高いモジュール透水性能を実現することができる。これに加え、この大きさならモジュール10を1人で持つことも可能であるのでハンドリング性が格段に良いという利点がある。なお、ここでいう筒状ケース2の「外径」とは、モジュール中央のろ過領域における円筒の外径を意味する。筒状ケース2の「長さ」とは、中空糸膜1aの両端面間の距離を意味する。
【0025】
固定部3a,3bは、筒状ケース2内の糸束1の両端部において、中空糸膜1aの外面同士及び当該外面と筒状ケース2の内面との隙間を封止する注型剤から成るものである。固定部3a,3bをなす注型剤としては、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が好適である。固定部3a,3bで糸束1の両端部を固定及び封止することにより、糸束1の両端面に中空糸膜1aの中空部が開口する。固定部3a,3bは、整流筒4,5の基端部4a,5aの開口を封止する役割も担っている。
【0026】
整流筒4,5は、固定部3a,3bの界面Fa,Fbの位置からモジュール10の中央の方向に向けてそれぞれ延在しており、固定部3a,3b付近の糸束1を囲繞している。整流筒4,5の材質は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0027】
一対の整流筒4,5は、上述の通り、基端部4a,5aの開口が固定部3a,3bによってそれぞれ封止されている。すなわち、整流筒4の基端部4aは固定部3aに包埋され、整流筒5の基端部5aは固定部3bに包埋されている。整流筒4,5の配置方法は、固定部3a,3bにそれぞれの基端部4a,5aを包埋させて固定する方法が一般的である。ただし、筒状ケース2に整流筒4,5を予め固定し、その後、整流筒4,5の基端部4a,5aを固定部3a,3bに包埋させる工程を経てモジュール10を作製してもよい。
【0028】
整流筒4,5は、先端部4b,5bの開口は封止されることなく、開放されている。これらの開口は、固定部3a,3bの界面Fa,Fbからそれぞれ離隔した位置にあり、整流筒4,5の内側の水をノズル2a,2bへと流通させる役割を担っている。すなわち、整流筒4内の水は先端部4bの開口から糸束1と筒状ケース2との間の空間に流出し、筒状ケース2の内面と整流筒4の外面との間隙を通ってノズル2aから排出されるようになっている。これと同様に、整流筒5内の水は先端部5bの開口から糸束1と筒状ケース2との間の空間に流出し、筒状ケース2の内面と整流筒5の外面との間隙を通ってノズル2bから排出されるようになっている。
【0029】
整流筒の先端部の開口面積をS1(m2)とし、中空糸膜モジュールの最大ろ過流量をQ(m3/s)とすると、開口面積S1は以下の不等式(1)で表される条件を満たすことが好ましい。
【数1】
この条件を満たすように開口面積S1を設定することにより、この部分を水が流通する際の圧損を小さくでき、高いモジュール透水量を実現できる。なお、ここでいう「モジュール透水量」とは、膜間差圧0.1MPaを印加したときの25℃における1時間当たりのろ過量(m3/hr/0.1MPa@25℃)をいう。また、「モジュール透水性能」とは、上記モジュール透水量をモジュールの見かけ容積で除した値((m3/hr/0.1MPa)/m3@25℃)をいう。なお、開口面積S1は、下記式(2)によって算出される値である。
【数2】
式中、D1は整流筒の先端部の内径(m)を示し、dOは中空糸膜の外径(m)を示し、Nは糸束を成す中空糸膜の本数を示す。
【0030】
整流筒4,5の先端部4b,5bの開口は、固定部の界面Fa,Fbからそれぞれ少なくとも30mm離れていることが好ましく、50mm以上離れていることがより好ましい。すなわち、固定部3a,3bのそれぞれの界面Fa,Fbから上記の長さで突出するように整流筒4,5を設置することが好ましい。このような長さの整流筒4,5で糸束1の両端部をそれぞれ囲繞することにより、界面Fa,Fb付近における中空糸膜1aの破損を効果的に防止できる。これは、中空糸膜1aを横断する方向の水の流れが固定部3a,3bの界面Fa,Fbから離れた位置で起こるため、界面Fa,Fb付近において中空糸膜1aにかかる剪断力が著しく軽減されることによるものと考えられる。
【0031】
一対の整流筒4,5のうち一方の整流筒4は、固定部3aの界面位置に所定の大きさの小穴4cが複数形成されている。小穴4cは、整流筒4の外面から内面にかけて貫通しており、空気や水が流通可能になっている。なお、ここでは、一方の整流筒4に小穴4cが形成されており、他方の整流筒5には小穴が形成されていない場合を説明するが、整流筒5にも整流筒4と同様な位置に同様な大きさの小穴を設けてもよい。
【0032】
小穴4cは、モジュール10内であって中空糸膜1a外の空気をモジュール10の外に流出させる機能を有している。内圧式ろ過を行う場合、糸束1の外周部に気泡が溜まりやすく、通水時であっても空気が水で十分に置換されない場合がある。本実施形態のように、整流筒4に小穴4cを設けることで小穴4cを通じて整流筒4の外側へと、更にノズル2aの方向へと水と共に気泡が流れ、気泡をノズル2aからモジュール10外へと排出できる。
【0033】
小穴4cが形成されていない整流筒を使用し、糸束の外周部に気泡が溜まった状態でろ過を継続していると、気泡内に存在した微生物が増殖してしまう場合がある。中空糸膜の中空部に被処理水を導入し、中空糸膜外にろ過水を得る内圧式ろ過においては、ろ過水中に微生物が混入することになり、水質の悪化を招来することになる。従って、内圧式ろ過を行う際には、中空糸膜外、特に、糸束外の空気を十分に排除しておくことは良好な水質のろ過水を継続的に製造上で重要なポイントである。
【0034】
小穴4cの相当直径は、1mm以上10mm以下であり、2mm以上9mm以下であることが特に好ましい。小穴の相当直径Rは、下記式(3)によって算出される値である。
【数3】
式中、S2は小穴の開口面積(m2)を示し、Lは小穴の縁の全長(m)を示す。なお、整流筒の内面と外面との間で小穴の寸法が変化している場合には、最も小さい値をLとする。
【0035】
整流筒4に形成する小穴4cの数は特に限定されないが、複数の小穴4cの総開口面積S3が以下の不等式(4)で表される条件を満たすように設定することが好ましい。
【数4】
開口面積比(S3/S1)を上記範囲内に設定することによって、通水時において小穴4cから流出する水量を適度な量とすることができる。S3/S1を0.005以上とすることによって、0.005未満の場合と比較して小穴4cから空気を十分に流出させることができる。他方、S3/S1を0.1以下とすることによって、0.1を超える場合と比較して固定部3aの界面Fa付近における中空糸膜1aへの水流による剪断力が軽減され、中空糸膜1aのダメージを十分に抑制できる。S3/S1は、0.01以上0.05以下であるのが特に好ましい。なお、小穴4cの形状は円形や楕円形に限定されるものではなく、三角形、四角形等の多角形であってもよい。
【0036】
小穴4cは、図1,3に示すように整流筒4の側面に予め独立した貫通孔として設けることができる。遠心注型法によって固定部3aを形成する場合には、界面Faが回転方向に基づいて曲面を形成するので、その曲面に応じて小穴の位置を設定しておくのが好ましい。
【0037】
小穴4cは、図2に示すように固定部3aの界面位置であって整流筒4の内面と糸束1の最外面を成す中空糸膜1aとの距離が5mm以上離れた位置に設けられていることが好ましい。換言すると、小穴4cが形成された整流筒4の部位と糸束1の最外面とが5mm以上離隔するように筒状ケース2内に糸束1及び整流筒4を固定することが好ましい。
【0038】
上記のように小穴4cと糸束1との間に一定の空間を設けることで、以下のような効果が奏される。すなわち、整流筒4内の気泡がこの空間を通って小穴4cにまで到達しやすくなり、整流筒4内における空気の残留をより一層確実に防止できる。これに加え、このような空間を設けない場合と比較し、小穴4c付近における水の流路面積が大きくなり、当該領域の流速を低くできる。これにより、小穴4c近傍の中空糸膜1aに作用する力が軽減され、中空糸膜1aの破損がより一層抑制できると考えられる。このような効果は、後述の実施例及び参考例によって確認されている。
【0039】
本実施形態に係るモジュール10においては、糸束1を4つの小束1bによって形成したことによって、上述の通り、モジュール10内に中空糸膜1aが充填されていない領域が形成されている。すなわち、図2に示すように、糸束1の中央部1d及び隣接する2つの小束1bによって形成される糸束1の最外面の凹部1eには中空糸膜1aが充填されていない。本実施形態においては、凹部1eと小穴4cの位置が一致するように整流筒4内に糸束1を固定することによって、小穴4cと糸束1の最外面との間隔が5mm以上となっている。
【0040】
なお、図9〜11に示すように、糸束1の端部を保護するものとして、多数の穴40aを有する保護用円筒体40が知られている。保護用円筒体40は、糸束1の外周を拘束し、それによって中空糸膜1aの過剰な揺れを防止して中空糸膜1aの破損を抑制しようとするものである。しかし、保護用円筒体40を装着した中空糸膜モジュールを用いて長期間にわたってろ過を行うと、中空糸膜1aが水流から一方向の力を継続的に受け、これによって中空糸膜1aのクリープ的な破壊が起こると考えられる。すなわち、糸束1の外周を単に拘束する方法ではクリープ的な破損を防止することは困難であり、水流によるダメージを十分に低減できないと考えられる。
【0041】
<ろ過方法>
図4を参照しながら、中空糸膜モジュール10を用いて被処理水(原水)をろ過する方法について説明する。図4に示すろ過装置100は、中空糸膜1aの中空部に被処理水を供給し、外側にろ過する内圧式ろ過を行うためのものである。ろ過装置100は、モジュール10、これに被処理水を供給する配管L1、モジュール10からろ過水及び循環水をそれぞれ排出する配管L2及び配管L3、並びに、これらの配管の途中に配設された圧力計及び弁などからなる。
【0042】
まず、小穴4cを有する整流筒4が上になるように、モジュール10を縦に配置する。配管接続キャップ6bに被処理水供給管L1を接続すると共に、配管接続キャップ6aに循環水排出管L3を接続する。また、筒状ケース2の上側ノズル2a及び下側ノズル2bにろ過水排出管L2a,L2bをそれぞれ接続する。
【0043】
被処理水供給管L1を通じて被処理水をモジュール10に導入することによって中空糸膜1aの中空部に被処理水を供給する。上側ノズル2a及び下側ノズル2bの両方から中空糸膜1aの外表面側から流出したろ過水を採取する。このような内圧式ろ過をモジュール10によって行うことにより、中空糸膜1aの破損を起こすことなく良好な水質のろ過水を長期間安定して得ることができる。
【0044】
供給した水量の約2〜5%を上側の中空糸膜1aの中空部から循環水として流出させながらろ過運転を行うのが好ましい。このようにすると、中空糸膜1aによって排除された微粒子等がモジュール10外に排出されるので、膜面の閉塞を起こし難くなり一層長期間にわたって安定したろ過水量を得ることができる。
【0045】
図4に示すように、下側ノズル2bに接続したろ過水排出管L2bはエルボで立ち上がり、他方のろ過水排出管L2aに合流している。上下両方の整流筒が同一構造である場合には、被処理水を供給する側とは反対側のノズルに近いところで上下のろ過水排出管L2a,L2bを合流させて、被処理水を供給する側とは反対側に導出することが好ましい。これにより、ろ過水のモジュール10内での流動抵抗とろ過水排出管L2内での流動抵抗とがバランスし、結果として上側ノズルからのろ過水量と下側ノズルからのろ過水量がほぼ同量になる。従って、ノズル2a,2bから流出するろ過水量をバランスさせるためにろ過水排出管L2に流量調整用弁を設ける必要が無くなり、結果として弁の数を減らせるメリットがある。
【0046】
なお、モジュール10は、内圧式ろ過のみならず、用途によっては外圧式ろ過にも用いることができる。図5に示すろ過装置200は、中空糸膜1aの外側に被処理水を供給し、中空部側にろ過するためのものである。例えば、超純水のファイナルフィルター用途では、配管中に空気溜まりができないように下側から被処理水を供給し、ろ過水を上側に導出する方法が好ましい。
【0047】
ろ過装置200は、中空糸膜モジュール10、これに被処理水を供給する配管L5、モジュール10からろ過水及び循環水をそれぞれ排出する配管L6a,L6b及び配管L7、並びに、これらの配管の途中に配設された圧力計及び弁などからなる。なお、ろ過装置200による処理を開始するに先立ち、例えば、ろ過水排出管L6bを通じて水をモジュール10内に導入し、中空糸膜1aの中空部に供給する工程を実施することもできる。この工程を実施することでモジュール10内の空気を小穴4c及びノズル2aを通じて十分に排出できる。モジュール10内の空気を十分に排出した後、弁を切り替える等して外圧式ろ過を開始することが好ましい。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、小穴4cが整流筒4の側面に独立して形成された貫通孔である場合を例示したが、図6に示すように、貫通孔を設ける代わりに整流筒4の端部に複数のスリット4dを設け、これを利用して小穴を形成してもよい。整流筒4の基端部4aを固定部3aに包埋させることによって、固定部3aの界面位置に小穴が形成される。
【0049】
スリットを利用して小穴を設ける場合、予め形成する穴の位置や固定部界面の位置を厳密に制御しなくても、比較的容易に固定部3aの界面位置に小穴を形成できるという利点がある。モジュール10内の空気を十分に排除すると共に、通水時の水流による中空糸膜1aのダメージを十分に抑制する点から、各スリット4dの幅は1〜10mmであることが好ましく、5〜8mmであることが特に好ましい。なお、図6においては、糸束1等の図示は省略する。
【0050】
また、上記実施形態においては、整流筒4の先端部4bの開口が整流筒4の内側の水をノズル2aへと流通させる開口として機能する場合を例示したが、当該開口の構成はこれに限定されるものではない。当該開口は、固定部3aの界面Faから一定の距離が離れた位置であれば、例えば、図7に示すように、整流筒の側面に設けてもよい。
【0051】
図7に示す中空糸膜モジュール20は、整流筒14が基端部14aから先端部14bに向かって径が大きくなる筒状部材からなり先端部14bが筒状ケース2の内面と接合されている。整流筒14の側面に開口14cが形成されており、整流筒14内の水が開口14cから整流筒14の外側に流出し、整流筒14の外面と筒状ケース2の内面との間隙を通ってノズル2aに流出することができるようになっている。水流による中空糸膜1aのダメージを効果的に抑制する観点から、開口14cの位置は固定部の界面Faから少なくとも30mm離れていることが好ましく、50mm以上離れていることがより好ましい。なお、図7においては、糸束1等の図示は省略する。
【0052】
整流筒14の側面に形成する開口14cの数や形状は特に限定されない。ただし、開口面積S1は、上記不等式(1)で表される条件を満たすことが好ましい。この場合、開口面積S1は、下記式(5)によって算出される値である。
【数5】
式中、W1及びW2は開口の上辺及び下辺の長さ(m)をそれぞれ示し、hは開口の高さ(m)を示し、nは開口の数を示す。
【実施例】
【0053】
以下の実施例及び参考例においては、中空糸膜としてポリスルホン製限外ろ過膜を使用した。その特性を以下に示す。
内径/外径:0.75mm/1.35mm、
内表面積換算短糸透水量:4200LMH(膜有効長5cmでの測定値)、
引張強さ:5.4MPa、
引張破断伸度:100%。
【0054】
中空糸膜の透水量は、25℃の限外ろ過水を長さ50mmの中空糸膜の内面から外面へ透過させたときのろ過水の量(LMH)である。透水量の計算にあたり有効膜面積は内面で換算した。中空糸膜の破断強度及び破断伸度は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−5Dを使用し、サンプルの長さ30mm、引っ張りスピード50mm/分で測定した。破断強度(MPa)は、中空糸膜1本当たりの破断時の荷重を、引っ張る前の膜の断面積で割ることによって算出される値である。破断伸度(%)は元の長さに対する破断に至るまでに伸びた長さの比である。
【0055】
[実施例1]
<中空糸膜モジュールの作製>
【0056】
筒状ケースとして、図1に示す筒状ケース2と同様の構成の透明ポリスルホン製のものを使用した。この筒状ケースの寸法は以下の通りである。
ろ過領域における円筒部内径/外径:154mm/170mm、
ノズル部における円筒部内径/外径:162mm/183mm、
ノズルの内径:58mm、
筒状ケースの長さ/ノズルの中心間距離:1050mm/872mm。
【0057】
整流筒として使用する透明ポリスルホン製の円筒(内径142mm、外径146mm、長さ135mm)を2つ準備した。これらの整流筒の一端にそれぞれ計8つのスリット(幅5mm、長さ25mm)を以下のように形成した。すなわち、2つのスリットが2mm間隔で形成されて成るスリットの組を、円周を4等分する位置4箇所に設けた。整流筒の側面には4箇所突起を設け、これらの突起を筒状ケースの内面に接合することによって、整流筒を筒状ケースの両端部に予め固定した。なお、上側ノズルの開口が2つのスリットの組の中間位置となるように、筒状ケース内に2つの整流筒を固定した(図2参照)。
【0058】
中空糸膜1750本をポリエチレン製ネットで包んで形成した小束を4つ準備した。中空糸膜の両端から2mm程度の位置まで中空部を閉塞させた。その後、4つの小束を筒状ケース内に設けた整流筒内に挿入し、遠心注型法によって両端から熱硬化性エポキシ樹脂を注入し、これを固化させた。なお、整流筒内に4つの小束からなる糸束を挿入する際には、2つの小束の間に形成される凹部の位置と整流筒のスリットの位置とを一致させた。50℃に加熱してキュアーし、中空糸膜の両端部を切断して中空糸膜の中空部を開口させ中空糸膜モジュールを作製した。この中空糸膜モジュールは、長さが1045mmであり、膜有効長が930mmであった。ポリスルホン製の配管接続キャップを中空糸膜モジュールの両端面にOリングを介して接合した。両方の配管接続キャップの端面間距離は、1180mmであった。
【0059】
<通水試験>
上記中空糸膜モジュールを使用し、図4に示す内圧式ろ過装置と同様の構成の装置を構成した。なお、循環水排出管L3の弁V3の下流側及びろ過水排出管L2の弁V2の下流側に各々ローター式流量計を設けた。また、ろ過水排出管L2bが上方の管L2aに合流する手前の位置に超音波式流量計を設け、下側ノズル2bから管L2bを通じて排出される水の流量を測定できるようにした。
【0060】
モジュールに25℃の純水をろ過水流量が10m3/hr、循環水量が0.3m3/hrとなるように弁V1と弁V3の開度を調整して通水を開始した。モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。なお、通水時には弁V2を全開状態とした。
【0061】
(モジュール透水量の測定)
次いで、循環水量を0.3m3/hrに固定したままろ過水流量が15m3/hr、20m3/hr、25m3/hr、30m3/hrとなるように段階的に通水量を上げていった。各段階での圧力計Pi、Po、Pfの指示値を読み取り、膜間差圧を求めた。膜間差圧ΔP(MPa)は、被処理水の圧力をPi、循環水の圧力をPo、ろ過水の圧力をPf、高さ補正値をHとしたとき、下記式(6)で算出される値である。高さ補正値H(MPa)は、Pi、Po、Pf各々の計測位置の床面からの高さをHi、Ho、Hf〔m〕としたとき、下記式(7)で算出される値である。
【数6】
【0062】
各ろ過水量と膜間差圧のグラフを描き、膜間差圧が0.1MPaのときのろ過水流量を求めたところ、27m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値がモジュール透水量である。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は1010m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。この値は、非特許文献1,2に記載のモジュールの透水性能の約2倍〜1.7倍である。また、各ろ過水流量で通水しているときに下側ノズルからの流量を測定したところ、下側ノズルからの流量がろ過水流量のほぼ1/2を示し、上下のノズルからほぼ同量のろ過水が流出していることが確認された。
【0063】
(リーク検査)
次いで、循環水量0.3m3/hr、ろ過水流量30m3/hrの条件で通水を1ヶ月間連続的に行った。1ヶ月後にモジュールを装置から取り外してリーク検査を以下のようにして行った。すなわち、両端の配管接続用キャップを取り外した後、モジュールを水槽に浸漬して内部を純水で満たした。次いで片側のノズルには栓を施して密閉状態とし、他のノズルには空気配管を接続した。0.2MPaまで徐々に空気圧を印加し、モジュール両端を観察して中空部から気泡が継続して出てこないかどうかを確認した。本実施例に係るモジュールはリークが全く無かった。なお、当該モジュールは、内部の水を垂れきった状態では重量が34kgであり、一人で持ち運ぶことができた。
【0064】
(モジュール内部の観察)
整流筒の小穴が形成されている位置でモジュールを割断して、内部を観察した。上側の整流筒の固定界面位置に形成されている8つの小穴の寸法を計測したところ、相当直径が3〜7mmの範囲に収まっていた。相当直径が一定の値でないのは界面位置が円周方向で異なっており場所によって小穴の高さが異なるためである。小穴の総開口面積S3は160mm2であり、整流筒の先端部の開口面積S1は5800mm2であった。開口面積比S3/S1は0.03であった。また、整流筒の先端部の開口は、固定部の界面から125mm〜118mmに位置していた。整流筒の小穴と糸束最外周部の中空糸膜との距離を計測したところ、8つの小穴はいずれも5〜8mmの範囲に位置していた。
【0065】
[実施例2]
以下の点の他は、実施例1と同様にして本実施例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、計8つのスリットが形成された円筒の代わりに、円周方向の所定の領域に偏在するように3つのスリット(幅8mm)が形成された円筒を上側の整流筒として使用した点、並びに、糸束を4つの小束に分割せずに中空糸膜7000本を1束として整流筒内に挿入した点である(図8参照)。なお、遠心注型を行う際には、ノズルが水平方向を向くようにして、整流筒に設けたスリットが上側になるようにセットした。図8に示す構成の中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。
【0066】
通水試験を開始し、モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。
【0067】
本実施例に係るモジュールは、モジュール透水量が25m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は930m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。また、本実施例においても、実施例1と同様に上下のノズルからほぼ同量のろ過水が流出していた。
【0068】
また、1ヶ月間連続的に通水を行った後にリーク検査を行ったところ、リークは全く無かった。リーク検査後、モジュールを割断して内部を観察した。整流筒の固定界面位置に形成されている3つの小穴の寸法を計測したところ、相当直径が7〜10mmの範囲に収まっていた。小穴の総開口面積S3は150mm2であり、整流筒の先端部の開口面積S1は5800mm2であった。開口面積比S3/S1は0.03であった。また、整流筒の先端部の開口は、固定部の界面から127mm〜120mmに位置していた。整流筒の小穴と糸束最外周部の中空糸膜との距離を計測したところ、3つの小穴はいずれも5〜7mmの範囲に位置していた。
【0069】
[実施例3]
以下の点の他は、実施例1と同様にして本実施例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、一定の径を有する円筒の代わりに、下方に向かって径が大きくなる筒状部材であり、その側面に3つの開口が形成された整流筒を用いた点である(図7参照)。本実施例で使用した整流筒は、以下のような形状である。なお、小穴を形成させるためのスリットは、実施例1における整流筒と同様にした。
基端部の内径/外径:142mm/146mm、
先端部の内径/外径:154mm/158mm、
長さ:85mm、
開口の上辺/下辺/高さ/個数:100mm/100mm/20mm/3個、
開口の上辺の位置:先端部の端面から25mm。
【0070】
図7に示す構成の中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。なお、ノズルの中心軸に対して左右45°の範囲内には開口が存在しないように整流筒を筒状ケース内に配置した。
【0071】
通水試験を開始し、モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。
【0072】
本実施例に係るモジュールは、モジュール透水量が27m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は1010m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。また、本実施例においても、実施例1と同様に上下のノズルからほぼ同量のろ過水が流出していた。
【0073】
また、1ヶ月間連続的に通水を行った後、リーク検査を行ったところ、リークは全く無かった。リーク検査後、モジュールを割断して内部を観察した。整流筒の固定界面位置に形成されている8つの小穴の寸法を計測したところ、相当直径が4〜9mmの範囲に収まっていた。小穴の総開口面積S3は220mm2であり、整流筒の先端部の開口面積S1は6000mm2であった。開口面積比S3/S1は0.04であった。また、整流筒の先端部の開口は、固定部の界面から50mm〜56mmに位置していた。整流筒の小穴と糸束最外周部の中空糸膜との距離を計測したところ、8つの小穴はいずれも5〜8mmの範囲に位置していた。
【0074】
[参考例1]
スリットが形成されていない整流筒を使用したことの他は、実施例1と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した。この中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。
【0075】
通水を開始したところ、固定部界面付近であって小束と小束の間の位置に数cmの大きさの気泡が残留しているのが観察された。循環水量を0.3m3/hrに固定したままろ過水流量が15m3/hr、20m3/hr、25m3/hr、30m3/hrとなるように段階的に通水量を上げていったが、残留気泡は整流筒内から流出することなく、上記の位置に残留したままであった。更に、30m3/hrの条件で1ヶ月通水を継続したが、気泡の残留量や位置は殆ど変化が観られなかった。気泡残留位置の解析を行うために、筒状ケースの表面に気泡が残留している位置をマーキングした。
【0076】
通水試験後、モジュールを割断して整流筒の内面と小束最外周の中空糸膜との距離を計測したところ、小束が整流筒に接する部分では1〜3mmの範囲であった。他方、気泡が残留していた部分では整流筒内面と小束最外周の中空糸膜との距離はいずれも5mm以上であった。このことから、整流筒の内面と糸束最外周の中空糸膜との間隔が5mmよりも狭い部分には気泡が溜まることはないが5mm以上離れた部分に気泡が溜まりやすいことが判明した。本参考例と実施例1の結果を対比すると、上記間隔が5mm以上の気泡が溜まりやすい箇所に小穴を設けることがモジュール内の残留する気泡の低減に極めて有用であることが示された。
【0077】
[参考例2]
糸束を整流筒内に挿入する際、糸束の向きを45°ずらした他は、実施例1と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、整流筒の小穴が2つの小束の間の凹部ではなく、各小束の中央部に位置するように糸束の両端部に整流筒を固定した。この中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。
【0078】
通水を開始したところ、固定部界面付近であって小束と小束の間の位置に数cmの大きさの気泡が残留しているのが観察された。循環水量を0.3m3/hrに固定したままろ過水流量が15m3/hr、20m3/hr、25m3/hr、30m3/hrとなるように段階的に通水量を上げていったが、残留気泡は整流筒内から流出することなく、上記の位置に残留したままであった。更に、30m3/hrの条件で1ヶ月通水を継続したが、気泡の残留量や位置は殆ど変化が観られなかった。通水試験後、モジュールを割断して整流筒に形成された小穴と小束最外周の中空糸膜との距離を計測したところ、8つの小穴はいずれも1〜3mmの範囲であった。
【0079】
[参考例3]
以下の点の他は、実施例1と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した。すなわち、計8つのスリットが形成された円筒を上側及び下側の整流筒としてそれぞれ使用する代わりに、スリットが形成されていない円筒を下側の整流筒として使用し、実施例1と同様のスリットが形成された円筒を上側の整流筒として使用した点である。この中空糸膜モジュールを使用し、図5に示す外圧式ろ過装置と同様の構成の装置を構成した。なお、循環水排出管L7の弁V7の下流側及びろ過水排出管L6の弁V6の下流側に各々ローター式流量計を設けた。
【0080】
モジュールに25℃の純水をろ過水流量が10m3/hr、循環水量が0.3m3/hrとなるように弁V5と弁V7の開度を調整して通水を開始した。ろ過水流量30m3/hr、循環水量0.3m3/hrの条件で1ヶ月間連続的に通水した。なお、通水時には弁V6を全開状態とした。1ヶ月後に該モジュールを装置から取り外して、実施例1と同様にしてリーク検査を行ったところ、28本の中空糸膜がリークしていた。
【0081】
モジュールを解体してリーク位置を観察したところ、下側の固定部界面付近において糸束最外周部の中空糸膜が破損していた。なお、小穴の形状や糸束との位置関係、並びに、整流筒と糸束との位置関係(整流筒内面と糸束最外周部の中空糸膜との距離等)は実施例1と同様であった。
【0082】
[参考例4]
図11に示すような多数の貫通穴を有する円筒を上側の整流筒として使用したことの他は、実施例2と同様にして本参考例に係る中空糸膜モジュールを作製した(図9,10参照)。この整流筒の形状は以下のとおりである。
円筒の内径/外径:148mm/154mm、
長さ:85mm、
貫通穴の直径/ピッチ/配列/総個数:5mm/10mm/7行36列/252個。
【0083】
図9,10に示す構成の中空糸膜モジュールを用いてろ過装置を構成し、実施例1と同様にして試験及び評価を行った。なお、ノズルの中心軸に対して左右45°の範囲内には貫通穴が存在しないように整流筒を筒状ケース内に配置した。
【0084】
通水試験を開始し、モジュール内の空気を水で置換していったところ、モジュール内が全て水で置換され気泡の残留は全く観察されなかった。
【0085】
本参考例に係るモジュールは、モジュール透水量が20m3/hr/0.1MPa@25℃であった。この値とモジュール寸法(外径170mm、長さ1180mm)からモジュール透水性能は750m3/hr/0.1MPa/m3と算出された。本参考例においては、上側ノズルからの流量は下側ノズルからの流量の約1/2であった。
【0086】
ろ過水排出管L2bの途中にボール弁を取り付け、その開度を調整することによって上下ノズルからの流量を各々15m3/hrとなるように調整して1ヶ月間連続的に通水した。1ヶ月間連続的に通水を行った後、リーク検査を行ったところ、5本の中空糸膜がリークしていた。リーク検査後、該モジュールを解体してリーク位置を観察したところ、上側の固定部界面付近において糸束最外周部の中空糸膜が破損していた。破損していた中空糸膜は、整流筒の貫通穴との距離が1〜2mmの範囲であり、貫通穴に近接した位置に存在していた。
【0087】
上側の整流筒の固定部界面位置に形成されている貫通穴の寸法を計測したところ、相当直径が2〜5mmの範囲であった。固定部界面位置よりもモジュール中央側であって最も固定部界面に近接した貫通穴は、界面位置から5mmに位置していた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の中空糸膜モジュール及びこれを用いたろ過方法によれば、安定して良好な水質の水を大量に得られる。本発明の中空糸膜モジュールは、コンパクトなサイズとすることができるため、特に超純水製造設備に用いる保安用フィルターとして好適である。また、当該中空糸膜モジュールは注射用水製造設備に用いるパイロジェン除去用フィルターとしても好適である。
【符号の説明】
【0089】
1…糸束、1a…中空糸膜、1b…小束、2…筒状ケース、2a,2b…ノズル、3a,3b…固定部、4,5…整流筒、4a,5a…整流筒の基端部、4b,5b…整流筒の先端部、4c…小穴、4d…スリット、10,20…中空糸膜モジュール、14…整流筒、14a…整流筒の基端部、14b…整流筒の先端部、14c…開口、100,200…ろ過装置、Fa,Fb…固定部の界面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の中空糸膜から成る糸束と、
前記糸束を収容し且つ側面にノズルを有する筒状ケースと、
前記筒状ケース内の前記糸束の両端部において、前記中空糸膜の外面同士及び当該外面と前記筒状ケースの内面との隙間を封止する注型剤から成る一対の固定部と、
一端が前記固定部によって封止され、前記糸束の両端部をそれぞれ囲繞するように延在する一対の整流筒と、
を備え、
前記一対の整流筒は前記固定部から離隔した位置に、前記整流筒内側の水が前記ノズルに流通し得る開口をそれぞれ有し、
少なくとも一方の前記整流筒は前記固定部の界面位置に、当該整流筒の外面から内面にかけて貫通する相当直径1mm以上10mm以下の小穴を有する中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記小穴は、前記整流筒の内面と前記糸束の最外面を成す中空糸膜との距離が5mm以上である部位に設けられている、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記小穴を有する前記整流筒は前記一端から長手方向に延在する幅1mm以上10mm以下のスリットを有し、当該小穴は前記スリットの一部が前記固定部によって包埋されることによって形成されたものである、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記糸束は、多数本の中空糸膜を束ねて形成された小束を前記筒状ケース内に複数並行に充填したものであり、少なくとも前記固定部の界面位置に、他の部分と比較して前記中空糸膜の充填密度が低い部分を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の中空糸膜モジュールを、前記整流筒に設けられた前記小穴が上方に配置されるように設置する工程と、
被処理水を当該モジュールの下方から前記中空糸膜の中空部へと供給する工程と、
前記中空糸膜の外側に流出したろ過水を前記筒状ケースの前記ノズルから採取する工程と、
を備える、ろ過方法。
【請求項1】
多数本の中空糸膜から成る糸束と、
前記糸束を収容し且つ側面にノズルを有する筒状ケースと、
前記筒状ケース内の前記糸束の両端部において、前記中空糸膜の外面同士及び当該外面と前記筒状ケースの内面との隙間を封止する注型剤から成る一対の固定部と、
一端が前記固定部によって封止され、前記糸束の両端部をそれぞれ囲繞するように延在する一対の整流筒と、
を備え、
前記一対の整流筒は前記固定部から離隔した位置に、前記整流筒内側の水が前記ノズルに流通し得る開口をそれぞれ有し、
少なくとも一方の前記整流筒は前記固定部の界面位置に、当該整流筒の外面から内面にかけて貫通する相当直径1mm以上10mm以下の小穴を有する中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記小穴は、前記整流筒の内面と前記糸束の最外面を成す中空糸膜との距離が5mm以上である部位に設けられている、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記小穴を有する前記整流筒は前記一端から長手方向に延在する幅1mm以上10mm以下のスリットを有し、当該小穴は前記スリットの一部が前記固定部によって包埋されることによって形成されたものである、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記糸束は、多数本の中空糸膜を束ねて形成された小束を前記筒状ケース内に複数並行に充填したものであり、少なくとも前記固定部の界面位置に、他の部分と比較して前記中空糸膜の充填密度が低い部分を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の中空糸膜モジュールを、前記整流筒に設けられた前記小穴が上方に配置されるように設置する工程と、
被処理水を当該モジュールの下方から前記中空糸膜の中空部へと供給する工程と、
前記中空糸膜の外側に流出したろ過水を前記筒状ケースの前記ノズルから採取する工程と、
を備える、ろ過方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−234198(P2010−234198A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82891(P2009−82891)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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