説明

中継接続ユニット

【課題】中継接続ユニットのネットワークマネジメント機能の状態遷移の仕様変更を可能にする。
【解決手段】電子制御ユニット30を夫々接続しているバス31間に介在させてネットワーク32を形成し、異なるバス31に属する前記電子制御ユニット30間で送受信するメッセージを中継する車載用の中継接続ユニット10であって、
前記中継接続ユニット10のネットワークマネジメント機能を実行するネットワークマネジメント処理回路11と、前記ネットワークマネジメント機能の状態遷移条件の遷移先をパラメータ化した状態遷移表Tを有する記憶回路を備え、
前記ネットワークマネジメント処理回路11は前記状態遷移表Tを用いて前記状態遷移を監視することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継接続ユニットに関し、詳しくは、中継接続ユニットのネットワークマネジメント機能の仕様変更を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される機器を制御する電子制御ユニット(ECU)を多重通信用のバス同士を中継接続ユニット(ゲートウェイ)を介して接続してネットワークを構築し、異なるバスに属するECU間で送受信されるメッセージを該中継接続ユニットで中継する車載用通信システムが採用されている。
【0003】
このような車載用通信システムにおいては、各ECUと中継接続ユニットにネットワークマネジメント機能を備えている場合がある。ネットワークマネジメント機能とは、バスに接続されたECUと中継接続ユニットが互いにリングメッセージを送受信して、ECUの初期化やネットワークの起動、ネットワーク設定、ECUやネットワークの動作状態の検知や処理及び信号送信、ECU等のパラメータの読み込みや設定などの処理を行う機能であり、該ネットワークマネジメント機能によりECUと中継接続ユニットの間の通信の安全性と信頼性を確保している。
【0004】
これらネットワークマネジメント機能の一つに状態遷移処理がある。非特許文献1に示すように、中継接続ユニットやECUは、電源投入後の初期化を行っているイニシャル状態、他の状態へ遷移する直前の状態であるリセット状態、高電力消費状態であるノーマル状態(通常動作状態)や低電力消費状態であるスリープ状態、ノーマル状態ではあるがスリープ状態となることが可能であるスリープ可能状態など、ネットワークマネジメント機能によって設定されるいずれかの状態にあり、状態遷移処理とは、所定の条件を満たした場合に中継接続ユニットやECUの状態をある状態から別の状態に遷移させる処理である。
中継接続ユニットやECUはネットワークマネジメント機能を実行するためのネットワークマネジメント処理回路を備えており、該ネットワークマネジメント処理回路に状態遷移のための条件と遷移先の情報を保有している。
【0005】
一方、近年では、車両の高機能化および高性能化に伴って車両に搭載される機器が増加しており、中継接続ユニットが送受信するメッセージの数が急増している。このため、中継接続ユニットが行う中継処理やネットワークマネジメント機能のための処理も増加しており、中継接続ユニットは各処理を高速に行うことが望まれている。
【0006】
そこで、特開2006−352235号公報(特許文献2)では、中継接続ユニットの中継処理をCPUのソフトウェア処理によらずにハードウェアで構成する方式が提案されている。中継接続ユニットは中継処理として、メッセージの中継先を特定する宛先検索処理と、メッセージの固定長セルのスイッチングを行うスイッチング処理を行っているが、特許文献1ではCPUでは宛先検索処理とスイッチング処理を行わず、ハードウェア化されたサーチエンジンとセルフルーティングモジュールにおいて宛先検索処理とスイッチング処理を行っている。
中継接続ユニットの各処理をハードウェアで構成して実行することで、CPUの処理性能が中継接続ユニットの処理速度に影響しなくなる。また、CPUは同時に1の処理しかできないが、ハードウェアにおいては並列して2以上の処理を行うことが可能となり、中継接続ユニットの各処理を高速に行うことができる。
【0007】
しかし、特許文献2ではハードウェアを用いているため、処理に用いるパラメータなどの仕様を変更する場合にはハードウェアの構成を変更しなければならず、容易に仕様を変更することが困難であるという問題がある。
特に、ネットワークマネジメント機能をハードウェアで構成した場合、状態遷移処理で用いる状態遷移条件と遷移先も予めハードウェアに組み込まれて構成される。しかし、該条件または遷移先は自動車の車種ごとに異なるため、車種毎にネットワークマネジメント機能をハードウェアで構成しなければならず、ハードウェア化されたネットワークマネジメント機能を共用化できないという問題がある。
【0008】
【非特許文献1】Network Management Concept and Application Programming Interface 発行:2004年7月26日 発行者:OSEK/VDX インターネット(URL:http://portal.osek-vdx.org/files/pdf/specs/nm253.pdf)
【特許文献2】特開2006−352235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、中継接続ユニットのネットワークマネジメント機能の状態遷移の仕様変更を可能にすると共に、ハードウェア化されたネットワークマネジメント機能を車種によらず共用化することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、電子制御ユニットを夫々接続しているバス間に介在させてネットワークを形成し、異なるバスに属する前記電子制御ユニット間で送受信するメッセージを中継する車載用の中継接続ユニットであって、
ネットワークマネジメント機能を実行するネットワークマネジメント処理回路と、
前記ネットワークマネジメント機能の状態遷移条件の遷移先をパラメータ化した状態遷移表を有する記憶回路を備え、
前記ネットワークマネジメント処理回路は前記状態遷移表を用いて前記状態遷移を監視することを特徴とする車載用中継接続ユニットを提供している。
【0011】
ネットワークマネジメント処理回路は記憶回路に記憶した状態遷移表に基づいて、ネットワークマネジメント機能の状態遷移処理を行っている。該状態遷移表はネットワークマネジメント処理回路とは別体として設けた記憶回路に予め記憶させており、中継接続ユニットの電源接続時にネットワークマネジメント処理回路が記憶回路から状態遷移表を読み出している。
このように、状態遷移表は記憶回路に記憶されているので、中継接続ユニットの状態遷移条件と遷移先を変更する場合には記憶回路の状態遷移表を書き直すだけでよく、容易に状態遷移の仕様変更を行うことができる。
【0012】
また、中継接続ユニットの状態遷移条件と遷移先をパラメータ化し状態遷移表として一覧化することで、中継接続ユニットの開発時において、開発者は状態遷移処理の動作を容易に把握することができるため、開発者は状態遷移表の変更を容易に行うことができると共に、状態遷移処理の動作の検証等を行いやすくなる。
【0013】
前記ネットワークマネジメント処理回路は、集積回路で形成し、前記記憶回路は書き換え可能な不揮発性メモリで形成していることが好ましい。
ネットワークマネジメント処理回路は集積回路からなるハードウェアで形成する一方、自動車の車種毎に異なる状態遷移表は記憶回路から読み込んでいるので、ネットワークマネジメント処理回路は状態遷移処理によらずハードウェア化することができ、ハードウェア化されたネットワークマネジメント処理回路を自動車の車種によらず共用化することができる。
ネットワークマネジメント処理回路を形成する集積回路(Integrated Circuit)は、ネットワークマネジメント機能のために設計製造される集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。また、内部の回路構成が変更可能な集積回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよい。
該ASIC又はFPGAには、ネットワークマネジメント処理機能だけでなく、不揮発性メモリからパラメータを読み込む処理、中継処理、メインループ処理等、中継接続ユニットの動作のための処理機能を備えていてもよい。
【0014】
また、ネットワークマネジメント処理回路をCPUのソフトウェアで構成した場合にはCPUは同時に1の処理しか行うことができないが、ネットワークマネジメント処理回路をハードウェアで構成することで同時に2以上の処理を並行して行うことが可能となり、中継接続ユニットの処理速度を上げることができる。
さらに、記憶回路を書き換え可能な不揮発性メモリとすることで、遷移先等のパラメータを仕様変更に応じて書き換えることができる。
【0015】
前記状態遷移表は、前記中継接続ユニットが待機状態に遷移するタイマ条件を備えていることが好ましい。
状態遷移表には、予備として中継接続ユニットの待機状態と該待機状態に遷移するためのタイマ条件、待機状態を維持する時間であるタイマ制御情報などを設定するための領域を備えている。中継接続ユニットを開発において状態遷移表を設定した後、ネットワークマネジメント機能の動作の検証で新たなタイマ条件の仕様を追加し、中継接続ユニットを待機状態に遷移させる必要が生じた場合には、予備として設けた領域に中継接続ユニットが待機状態に遷移するためのタイマ条件等を記載している。このため、状態遷移表に新たにタイマ条件を記載するための領域を設定する必要がなく、容易にタイマ条件の追加を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
前述したように、本発明の中継接続ユニットによれば、状態遷移表は記憶回路に記憶されているので、中継接続ユニットの状態遷移条件と遷移先を変更する場合には記憶回路の状態遷移表を書き直すだけでよく、容易に状態遷移表の仕様の変更を行うことができる。
また、ネットワークマネジメント処理回路をコントローラの回路からなるハードウェアで形成し、車種毎に異なる状態遷移表は記憶回路から読み出しているため、ハードウェアのネットワークマネジメント処理回路を自動車の車種によらず共用化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に本発明の第1実施形態を示す。
本発明の車載用の中継接続ユニット10は、電子制御ユニット(ECU)30を夫々接続しているバス31間に介在させてネットワーク32を形成し、異なるバス31に属する前記ECU30間で送受信するメッセージを中継するものである。
本実施形態では、中継接続ユニット10を2本のバス31A、31Bの間に介在させてネットワーク32を形成すると共に、2本のバス31A、31Bに夫々2つのECU30−1、30−2を接続している。通信プロトコルはCANである。
【0018】
図1に示すように、中継接続ユニット10は同一基板上に、中継接続ユニット用LSI40と、電源41と、EEPROM12と、ドライバ42と、コネクタ43を備えている。
中継接続ユニット用LSI40(Large scale Integrated Circuit)は集積回路(IC)であり、中継接続ユニット10用に設計されたASICでハードウェアとして構成している。中継接続ユニット用LSI40は、ネットワークマネジメント処理回路11と、EEPROM12のパラメータを読み込むEEPROM処理回路13と、送受信回路14と、中継処理回路15と、パラメタ処理回路17とを備えている。
書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM12は中継接続ユニット用LSI40と接続しており、ネットワークマネジメント処理回路11のネットワークマネジメント機能の状態遷移条件の遷移先をパラメータ化した状態遷移表Tを記憶している。
電源41は集積回路であるLSIで構成し、中継接続ユニット用LSI40と接続して、中継接続ユニット用LSI40を駆動するための電力を供給している。
ドライバ42A、42Bも集積回路であるLSIで構成し、各バス31毎に設けてコネクタ43を介して各バス31と接続している。また、中継接続ユニット用LSI40と接続しており、中継接続ユニット用LSI40が送受信するメッセージをバス31へ送信またはバス31から受信するために、メッセージを構成するデータ信号の電位を調節している。
【0019】
中継接続ユニット用LSI40は、ネットワークマネジメント処理回路11が中継処理回路15と接続しており、ネットワークマネジメントメッセージ(NMメッセージ)を中継処理回路15を介して他のECU30と送受信している。
また、ネットワークマネジメント処理回路11はネットワークマネジメント機能を実行しており、該ネットワークマネジメント機能は、中継接続ユニット10と該中継接続ユニット10とバス31を介して接続した各ECU30がNMメッセージのリングメッセージを順番に送受信することにより、状態遷移表Tを用いて中継接続ユニットの状態の遷移や監視の処理を行う機能である。
なお、本実施形態では中継接続ユニット10に2つのバス31A、31Bが接続されているので、ネットワークマネジメント処理回路11は各バス31ごとにリングメッセージを送受信している。
【0020】
図2は中継接続ユニット10の状態遷移図の例である。本実施形態では、ネットワークマネジメント処理回路11のネットワークマネジメント機能は図2の状態S1〜S7のうちいずれかにあり、中継接続ユニット10はネットワークマネジメント機能の状態S1〜S7に応じて制御される。またネットワークマネジメント処理回路11のネットワークマネジメント機能の状態S1〜S7は、所定の条件E1〜E9によって現在の状態から他の状態に遷移する。
【0021】
例えば、電源41が投入された状態では中継接続ユニット10はオフ状態S1にある。このとき、条件E1を、状態遷移可能信号をリングメッセージとして他のECU30から中継処理回路15が受信し、ネットワークマネジメント処理回路11へ渡すという条件に設定すると、条件E1を満たすとネットワークマネジメント処理回路11のネットワークマネジメント機能はオフ状態S1からイニシャル状態S2に遷移する。
同様に、イニシャル状態S2にあるネットワークマネジメント処理回路11のネットワークマネジメント機能が、所定時間を経過するという条件(条件E2)を満たすと、中継接続ユニット10はイニシャル状態S2からリセット状態S3に遷移する。
また、リセット状態S3において、ネットワークマネジメント処理回路11のネットワークマネジメント機能がエラーを検知していないという条件(条件E3)を満たすと、中継接続ユニット10はノーマル状態S5に遷移し、エラーを検知したという条件(条件E4)を満たすとリンプホーム状態S6に遷移する。
【0022】
このようなネットワークマネジメント機能を備えるネットワークマネジメント処理回路11は、EEPROM12に記憶された状態遷移表Tを示すデータ信号をEEPROM処理回路13を介して読み込む。
【0023】
書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM12は、中継接続ユニット用LSI40のEEPROM処理回路13と接続しており、ネットワークマネジメント機能の状態遷移条件の遷移先をパラメータ化した状態遷移表Tを記憶している。
図3は状態遷移表Tを示す。図3(A)の状態遷移表Tは、図2の中継接続ユニット10の状態Sと遷移条件Eとの関係を表にして示したものである。
本実施形態においては、ネットワークマネジメント処理回路11のネットワークマネジメント機能は図2に示すように7つの状態S1〜S7のいずれかとなり、また各状態に遷移するために条件E1〜E9の9の条件が必要であるため、状態遷移表Tには7の状態と9の条件を記載している。
また、状態遷移表Tの状態Sと条件Eがクロスする領域(マス目)には、中継接続ユニット10が状態Sである場合に条件Eを満たしたときの処理情報Pを記載している。
さらに、状態遷移表Tは、状態及び条件が記載されていないがEEPROM12の書き換えにより記載可能な領域を予備として予め確保している。本実施形態では、状態S8〜S17の10つの状態と、条件E9〜E19の10つの条件を記載できる予備の領域を予め確保している。該予備領域は、ある入力に対して新たに条件Eや状態Sを状態遷移表Tに追加するなどの仕様変更があった場合に使用する。
【0024】
図3(B)は状態遷移表Tの各マス目に記載される処理情報Pのフォーマットを示しており、上位ビットから12ビットのタイマ制御ビット41、4ビットの送信処理ビット42、1ビットの初期化ビット43、5ビットの遷移先ビット44を設けている。
タイマ制御ビット41には、各条件Eのうち時間に関する条件を含むものにおいて、タイマ条件の具体的な設定時間が記載されている。例えば、状態S2と条件E2とがクロスするマス目の処理情報Pに1秒間待機が記載されている場合には、状態S2において、E2のイベントが発生すると、処理情報Pを参照することにより、タイマ制御ビットに基づいたタイマを起動し、S2状態のまま次のイベント入力を待ち、1秒経過後までにイベントが入力されなければ待機が完了したものとして処理情報Pに記載された次の状態へ遷移する。
【0025】
送信処理ビット42は、ネットワークマネジメント処理回路11から他のECU30にネットワークマネジメントメッセージ(NMメッセージ)を送信する指令を出しているビットであり、NMメッセージにはウェイクアップメッセージ、アライブメッセージ、リングメッセージ、リンプホームメッセージの4種類のメッセージがある。遷移先ビット44に記載された状態に遷移する際に、ネットワークマネジメント処理回路11は中継処理回路15を介して該送信処理ビット42に記載されたメッセージを他のECU30に送信する。
例えば、状態遷移表Tにおいて、中継接続ユニット10がリセット状態S3とエラーがあるという条件E4のクロスするマス目の処理情報Pの送信処理ビット42にリンプホームメッセージの送信指令が記載されている場合、ネットワークマネジメント処理回路11は中継接続ユニット10を遷移先の状態Sに遷移させると同時にリンプホームメッセージを他のECU30に送信する。
【0026】
初期化ビット43はネットワークマネジメント処理回路11の初期化や、送受信回路の初期化を行っている。
遷移先ビット44は中継接続ユニット10が状態Sのときに条件Eを満たした場合の遷移先が記載されている。
例えば、状態遷移表Tにおいて、中継接続ユニット10がリセット状態S3と、エラーがあるという条件E4のクロスするマス目の処理情報Pの遷移先ビット44に、中継接続ユニット10がエラー状態であるリンプホーム状態S6が記載されている場合、中継接続ユニット10は条件E4を満たせばリセット状態S4からリンプホーム状態S6に遷移する。
【0027】
なお、状態遷移表Tを構成するために必要となるビット数は、(送信処理、タイマ制御、初期化の各処理を表すビット数+遷移先ビット数)×状態の数×条件の数で求められ、本実施形態の場合には、(17+5)×17×19=7106ビットである。
【0028】
また、EEPROM12は、送受信回路14が用いる通信速度のパラメータと中継処理回路15が用いるルーティングテーブルも記憶しており、送受信回路14は通信速度のパラメータをパラメタ処理回路17とEEPROM処理回路13を介してEEPROM12から読み出すと共に、中継処理回路15はEEPROM12からルーティングテーブルを読み出す。
【0029】
メインループ受信回路16は電源41と接続していると共に、ネットワークマネジメント処理回路11、中継処理回路15、パラメタ処理回路17、送受信部14と接続しており、中継接続ユニット10に電源41が投入された場合には、メインループ受信回路16はネットワークマネジメント処理回路11、中継処理回路15、パラメタ処理回路17、送受信部14にウェイクアップ信号を出力して、各処理部をウェイクアップさせている。
中継処理回路15は各バス31A、31Bと接続された送受信回路14A、14Bと接続しており、あるECU30から異なるネットワーク31に属する他のECU30へ送信される中継メッセージの中継処理を行っている。
送受信回路14A、14Bは各バス31A、31B毎に設けており、ネットワークマネジメント処理回路11からのNMメッセージ及び中継処理回路15からの中継メッセージをバス31に送信している。
【0030】
次に、中継接続ユニット10の動作について説明する。
まず、中継接続ユニット10に電源41を投入したときにネットワークマネジメント処理回路11がEEPROM12から状態遷移表Tを読み込む動作について説明する。
中継接続ユニット10のメインループ受信回路16に電源41を投入すると、メインループ受信回路16がウェイクアップする。
メインループ受信回路16はネットワークマネジメント処理回路11及びパラメタ処理回路17、送受信回路14A、14B、中継処理回路15にウェイクアップ信号を送信し、該ウェイクアップ信号を受信した各処理部はウェイクアップする。
パラメタ処理回路17はウェイクアップして動作可能となった後に、EEPROM処理回路13にウェイクアップ信号を出して、EEPROM処理回路13をウェイクアップさせる。EEPROM処理回路13はEEPROM12から状態遷移表Tを読み出し、パラメタ処理回路17を介してネットワークマネジメント処理回路11に状態遷移表Tを出力している。
【0031】
次に、状態遷移表Tを用いたネットワークマネジメント処理回路11の状態遷移処理の動作について説明する。例として、中継接続ユニット10が状態S1から状態S2、状態S2から状態S3に遷移する場合について説明する。
図4は図3の状態遷移表Tの具体例であり、図4(A)のオフ状態S1と条件E1のクロスするマス目には図4(B)に示す処理情報P1を記載している。条件E1は、状態遷移可能信号をネットワークマネジメント処理回路11が受信するという条件であり、状態遷移可能信号はリングメッセージとして他のECU30から受信するか、もしくはイグニッションキーのオンにより受信する。状態遷移可能信号はネットワークマネジメント機能が状態遷移を実行可能とするための信号である。
また、オフ状態S2と条件E2のクロスするマス目には図4(C)に示す処理情報P2を記載している。条件E2は所定時間経過まで待機という条件である。
【0032】
次に、ネットワークマネジメント処理回路11は、オフ状態S1にある場合に、条件E1を満たしているか否かを判断する。
ネットワークマネジメント処理回路11が他のECU30から状態遷移可能信号を受信した場合、条件E1を満たす。このとき、ネットワークマネジメント処理回路11は処理情報P1である図4(B)を参照し、遷移先ビット44に記載されたイニシャル状態S2に遷移する。同時に、送信処理ビット42にウェイクアップメッセージの送信指令が記載されているので、ネットワークマネジメント処理回路11は他のECU30にウェイクアップメッセージを送信する。なお、タイマ制御ビット41には記載がない(ゼロが記載されている)ため、ネットワークマネジメント処理回路11は状態遷移可能信号を受信すると、待機時間なく中継接続ユニット10の状態を遷移させると共にウェイクアップメッセージを送信する。
【0033】
中継接続ユニット10がイニシャル状態S2である場合に、ネットワークマネジメント処理回路11は所定時間待機である条件E2を満たす。そこで、ネットワークマネジメント処理回路11は図4(C)の処理情報P2を参照する。タイマ制御ビット41に1秒の指示があるため、ネットワークマネジメント処理回路11は内蔵するタイマ(図示せず)により時間を計測し、該経過時間が1秒を超えた場合には、条件E2を満たすため、遷移先ビット44に記載されたリセット状態S3に遷移する。
なお、図4(C)には送信処理ビット42には記載がない(ゼロが記載されている)ため、他のECU30にNMメッセージは送信しない。
【0034】
本実施形態によれば、状態遷移表TはEEPROM12に記憶されているので、中継接続ユニット10の状態遷移条件と遷移先を変更する場合にはEEPROM12の状態遷移表Tを書き直すだけでよく、容易に状態遷移表Tの仕様の変更を行うことができる。
また、ネットワークマネジメント処理回路11をコントローラの回路からなるハードウェアで形成し、車種毎に異なる状態遷移表Tはパラメタ処理回路17を介してEEPROM12から読み出しているため、ハードウェアのネットワークマネジメント処理回路11を自動車の車種によらず共用化することができる。
さらに、開発者はEEPROM12に記憶された状態遷移処理の動作を容易に把握できるので、状態遷移処理の動作の検証等を行いやすくなる。
【0035】
図5は本発明の第2実施形態を示す。
第2実施形態においては、第1実施形態の状態遷移図に、リンプホーム待機状態S8の状態を加えており、リンプホーム状態S6からリンプホーム待機状態S8に遷移するための条件E10と、リンプホーム待機状態S8からスリープ状態S7に遷移するための条件E11をそれぞれ設定している。
状態遷移表Tは第1実施形態において予備の領域を備えており、第2実施形態では、リンプホーム待機状態S8、及び条件E10、E11と各処理情報Pを第1実施形態の状態遷移図Tの予備の領域に記載している。
リンプホーム待機状態S8は待機のために設けた状態であり、各処理情報Pのタイマ制御ビット41には、タイマ条件として待機時間が記載されている。
【0036】
前記構成とすることで、中継接続ユニット10の開発中に状態遷移表Tを設定した後に、ネットワークマネジメント機能の動作の検証で新たなタイマ条件の仕様を追加して中継接続ユニット10を待機状態に遷移させる必要が生じた場合には、予備として設けた領域に中継接続ユニット10が待機状態に遷移するためのタイマ条件等を記載することができる。このため、新たに記載領域を設定する必要がなく、タイマ条件の仕様の追加を容易に行うことができる。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明である中継接続ユニットの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】中継接続ユニットの状態遷移図である。
【図3】(A)は状態遷移表、(B)は状態遷移表の処理情報のフォーマットの説明図である。
【図4】(A)は状態遷移表の例、(B)及び(C)は処理情報の例である。
【図5】第2実施形態を示す状態遷移図である。
【符号の説明】
【0038】
10 中継接続ユニット
11 ネットワークマネジメント処理回路
12 EEPROM
13 EEPROM処理回路
14 送受信回路
15 中継処理回路
16 メインループ受信回路
17 パラメタ処理回路
30 電子制御ユニット(ECU)
31 バス
32 ネットワーク
T 状態遷移表
P 処理情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御ユニットを夫々接続しているバス間に介在させてネットワークを形成し、異なるバスに属する前記電子制御ユニット間で送受信するメッセージを中継する車載用の中継接続ユニットであって、
ネットワークマネジメント機能を実行するネットワークマネジメント処理回路と、
前記ネットワークマネジメント機能の状態遷移条件の遷移先をパラメータ化した状態遷移表を有する記憶回路を備え、
前記ネットワークマネジメント処理回路は前記状態遷移表を用いて前記状態遷移を監視することを特徴とする車載用中継接続ユニット。
【請求項2】
前記ネットワークマネジメント処理回路は、集積回路で形成し、前記記憶回路は書き換え可能な不揮発性メモリで形成している請求項1に記載の車載用中継接続ユニット。
【請求項3】
前記状態遷移表は、前記中継接続ユニットが待機状態に遷移するタイマ条件を備えている請求項1または請求項2に記載の車載用中継接続ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−311978(P2008−311978A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158309(P2007−158309)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】