説明

中継端末装置

【課題】車車間通信等のように移動体に搭載される場合であっても、受信信号を中継する際に、受信信号と再送信号との間の周波数誤差を低減する。
【解決手段】受信信号が直交復調され、AFC回路16で、パケットのプリアンブル部を用いて周波数誤差が補正され、FFT18で複数のサブキャリア信号に分解され、位相トラッキング回路20で、FFT18から出力されたパイロットキャリア信号毎の位相回転量の平均位相回転量が演算され、各サブキャリア信号の残留周波数誤差が補正される。補正後の信号は、復調部22でデータが復調され、再変調部24で再び変調され、IFFT26でOFDM信号に変換される。合算補正量演算部28では、AFC回路16の出力である補正量と、位相トラッキング回路20の出力である補正量(平均位相回転量)とを合算した合算補正量を演算して、逆回転部30で、合算補正量分の位相回転が戻され、直交変調される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継端末装置に係り、特に、受信信号の周波数誤差を補正する構成を有する中継端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各アンテナブランチの自動周波数制御部それぞれでシフトされた各アンテナブランチの周波数誤差を合成することで合成周波数誤差を得て、ダイバーシチ合成後の信号の周波数を合成周波数誤差分だけシフトするダイバーシチ中継装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の中継端末は、地上デジタル放送などの放送波を中継することを目的としており、このような常に決まった相手から連続的に電波が受信される場合には、時間を掛けてAFC(Automatic frequency control、自動周波数制御)回路を動作させることが可能となり、AFCのみで十分な補正精度を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−67338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車車間通信などのように、様々な通信相手との間でパケットと呼ばれるデータの塊を頻繁にやり取りする通信形態では、パケットを受信する度に、AFC回路を初期化して、パケット先頭のプリアンブル部分のみを使用して、周波数誤差を検出及び補正する構成が一般的である。このため、AFC回路のみで周波数誤差を完全に除去することは困難であり、周波数誤差が残留する。通常は、AFC回路による周波数誤差の補正後の復調処理過程において、この残留周波数誤差を除去しているが、上記特許文献1に記載の技術では、この残留周波数誤差が考慮されていないため、受信信号と再送信号との間に周波数誤差が生じてしまう。特に、複数の端末で中継を行う協調通信においては、各中継端末から送信された信号に、このような周波数誤差が残留している場合には、受信端末において様々な大きさの周波数誤差が混ざり、信号の復元が不可能となってしまう可能性がある、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、車車間通信等のように移動体に搭載される場合であっても、受信信号を中継する際に、受信信号と再送信号との間の周波数誤差を低減することができる中継端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の中継端末装置は、プリアンブル部及びデータ部を含み、かつ変調された受信信号を受信する受信手段と、受信された受信信号を直交復調する直交復調手段と、前記受信信号のプリアンブル部を用いて、前記直交復調手段により直交復調された受信信号に含まれる周波数誤差の一部を補正する第1の補正手段と、前記受信信号のデータ部を用いて、前記第1の補正手段により補正された受信信号に含まれる残留周波数誤差を補正する第2の補正手段と、前記第2の補正手段により補正された受信信号に対して、前記第1の補正手段での補正量と前記第2の補正手段での補正量とを合算して逆補正する逆補正手段と、前記逆補正手段により逆補正された受信信号を直交変調する直交変調手段と、前記直交変調手段で直交変調された受信信号を送信する送信手段と、を含んで構成されている。
【0007】
本発明の中継端末装置によれば、受信手段が、プリアンブル部及びデータ部を含み、かつ直交変調された受信信号を受信し、直交復調手段が、受信された受信信号を直交復調する。直交復調後の受信信号には、端末固有の局部発振器の影響による周波数誤差が含まれるため、第1の補正手段が、受信信号のプリアンブル部を用いて、直交復調手段により直交復調された受信信号に含まれる周波数誤差の一部を補正する。時間的に短いプリアンブル部を用いているため、第1の補正手段による補正では完全に周波数誤差を除去することができない場合がある。そこで、第2の補正手段が、受信信号のデータ部を用いて、第1の補正手段により補正された受信信号に含まれる残留周波数誤差を補正する。この補正後の受信信号を再送信するために直交変調すると、直交復調手段と同一の基準周波数で動作する直交変調手段により、直交復調時と同様の誤差が生じてしまい、受信信号と再送信号との間で周波数誤差が生じてしまう。そこで、逆補正手段が、第2の補正手段により補正された受信信号に対して、第1の補正手段での補正量と第2の補正手段での補正量とを合算して逆補正し、直交変調手段が、逆補正手段により逆補正された受信信号を直交変調し、送信手段が、直交変調手段で直交変調された受信信号を送信する。
【0008】
このように、第1の補正手段による補正量のみならず、残留周波数誤差を補正する第2の補正手段による補正量も合算して逆補正するため、車車間通信等のように移動体に搭載される場合であっても、受信信号を中継する際に、受信信号と再送信号との間の周波数誤差を低減することができる。
【0009】
また、前記第1の補正手段を、自動周波数制御回路とすることができる。
【0010】
また、前記受信手段は、前記受信信号としてOFDM信号を受信し、前記第1の補正手段と前記第2の補正手段との間に、前記OFDM信号に高速フーリエ変換を施して、複数のサブキャリア信号に分解するFFT手段を備えて構成することができる。
【0011】
また、前記第2の補正手段を、前記複数のサブキャリア信号に含まれる既知のパイロットキャリア信号を用いて前記残留周波数誤差を補正する位相トラッキング回路とすることができる。また、前記第2の補正手段を、判定基準となるチャネル特性と前記複数のサブキャリア信号毎の復調処理前後の信号とに基づいて、前記複数のサブキャリア信号毎の位相変動を検出して前記残留周波数誤差を補正する判定帰還回路とすることもでき、その場合には、前記複数のサブキャリア信号毎の残留周波数誤差の平均補正量を演算するキャリア間平均演算手段を含んで構成し、前記逆補正手段は、前記第1の補正手段での補正量と前記キャリア間平均演算手段で演算された平均補正量とを合算することができる。
【0012】
また、前記受信信号を、複数のシンボルで構成されたパケット信号とし、前記逆補正手段は、前記受信信号のシンボル単位で補正量を合算して逆補正することができる。また、前記第2の補正手段におけるシンボル単位の補正量を、1パケット分時間方向に平均化した平均補正量を演算するシンボル間平均演算手段を含んで構成し、前記逆補正手段は、前記第1の補正手段で補正された補正量と前記シンボル間平均演算手段で演算された平均補正量とを合算するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の中継端末装置によれば、第1の補正手段による補正量のみならず、残留周波数誤差を補正する第2の補正手段による補正量も合算して逆補正するため、車車間通信等のように移動体に搭載される場合であっても、受信信号を中継する際に、受信信号と再送信号との間の周波数誤差を低減することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態の概略を説明するためのブロック図である。
【図2】本実施の形態で扱われるパケットの一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態に係る無線中継端末装置の構成を示すブロック図である。
【図4】第2の実施の形態に係る無線中継端末装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第3の実施の形態に係る無線中継端末装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第3の実施の形態に係る無線中継端末装置の構成の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
<本実施の形態の概要>
まず、本実施の形態の概要について説明する。
【0016】
図1(A)に示すように、周波数fの受信信号を直交復調部により基準周波数を用いて直交復調すると、基準周波数の個別の誤差により、直交復調後の周波数には周波数誤差Δfが含まれる。ここでは、説明の便宜上、直交復調による周波数誤差Δfを(Δf1+Δf2)とする。なお、この周波数誤差Δfには、直交復調による周波数誤差だけでなく、基準周波数を用いたダウンコンバータの際の周波数誤差も含めて考えてもよい。
【0017】
次に、直交復調後の周波数−(Δf1+Δf2)の信号に対して、第1の補正部で周波数誤差の補正を行う。第1の補正部では、信号に含まれる周波数誤差の一部が補正され、この補正量をΔf1とすると、補正後の信号は周波数−Δf2となる。次に、この周波数−Δf2の信号に対して、第2の補正部で周波数誤差の補正を行う。第2の補正部では、信号に含まれる残留周波数誤差が補正され、この補正量をΔf2とすると、補正後の信号は周波数0となる。この信号を、直交復調部と同一の基本周波数で動作する直交変調部により直交変調すると、直交変調による周波数誤差Δfが含まれ、直交変調後の再送信号の周波数はf+(Δf1+Δf2)となる。この場合、受信信号の周波数fと再送信号の周波数f+(Δf1+Δf2)との間に周波数誤差が生じることになる。
【0018】
そこで、本実施の形態では、同図(B)に示すように、第1の補正部で得られた補正量Δf1と第2の補正部で得られた補正量Δf2とを合算部で合算し、合算周波数誤差Δf1+Δf2を逆回転部で逆回転して、第2の補正部から出力された周波数0の信号に乗じる。これにより、直交変調部へ入力される信号の周波数は−(Δf1+Δf2)となり、直交変調部で生じる周波数誤差が加わると、直交変調後の信号の周波数はfとなり、受信信号の周波数と一致する。
【0019】
以下、本発明を適用した無線中継端末装置を車両などの移動する移動体に搭載し、複数の端末装置の間でOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号であるパケットを交換することにより無線通信を行う場合であって、複数の無線中継端末装置により協調通信を行う場合を例に説明する。
【0020】
また、本実施の形態で扱うパケットは、図2に示すように、プリアンブル部及びデータ部で構成されている。
<第1の実施の形態>
図3に示すように、第1の実施の形態の無線中継端末装置10は、受信部12、直交復調部14、AFC回路16、FFT18、位相トラッキング回路20、復調部22−1〜N(Nはサブキャリア数)、再変調部24−1〜N、IFFT26、合算補正量演算部28、逆回転部30、直交変調部32、及び送信部34を含んで構成されている。また、直交復調部14の出力とAFC回路16の出力とを乗算する乗算部36、位相トラッキング回路20の出力と各サブキャリア信号との乗算部38−1〜N、IFFT26の出力と逆回転部30の出力との乗算部40をさらに含んで構成されている。なお、復調部22−1〜N、再変調部24−1〜N、及び乗算部38−1〜Nの各々は、それぞれ同一であるため、以下では、単に、復調部22、再変調部24、及び乗算部38と表記する。
【0021】
受信部12は、他の端末から送信されたパケットを受信し、受信した無線周波数帯の信号を中間周波数帯にダウンコンバートする。また、増幅、アナログ/デジタル変換処理等の他の受信処理も行う。
【0022】
直交復調部14は、受信部12による受信処理後の信号を直交復調して、複素信号であるベースバンド信号を出力する。
【0023】
AFC回路16は、直交復調部14で直交復調されたベースバンド信号に対して、パケットのプリアンブル部を用いて周波数誤差を検出及び補正する。具体的には、まず、プリアンブル部の繰り返し信号区間だけ遅延させた信号の複素共役信号と遅延前の信号との複素乗算を行い、位相回転量を演算する。そして、繰り返し信号区間に渡り各位相回転量を平均化した平均位相回転量を演算し、この平均位相回転量から周波数誤差を補正する。
【0024】
FFT18は、AFC処理が施されたベースバンド信号に対して、高速フーリエ変換を施し、OFDM信号から複数のサブキャリア信号に分解する。
【0025】
位相トラッキング回路20は、パケットのデータ部の信号を用いて、FFT後の複数のサブキャリア信号に対して、残留する周波数誤差を補正する。上述のAFC回路16では、パケットのプリアンブル部を用いて周波数誤差を補正しているが、有限の長さのプリアンブル信号では、ベースバンド信号に含まれる周波数誤差を完全に検出及び補正することはできず、周波数誤差が残留する。この残留周波数誤差は、FFT後の各サブキャリア信号に同一の周波数誤差として重畳される。位相トラッキング回路20は、この残留周波数誤差を補正するためのものである。
【0026】
具体的には、まず、FFT後のサブキャリア信号からパイロットキャリア信号を抽出する。図2の例では、52本のサブキャリア信号から4本のパイロットキャリア信号が抽出される。そして、抽出したパイロットキャリア毎の位相回転量を検出し、各位相回転量を平均した1シンボル当たりの平均位相回転量を演算し、各サブキャリア信号に対して平均位相回転量を用いて残留周波数誤差の補正を行う。
【0027】
復調部22は、位相トラッキング回路20による周波数誤差の補正後の各サブキャリア信号のデータ部のデータを復調する。
【0028】
再変調部24は、復調部22で復調された各サブキャリア信号を再び変調する。
【0029】
IFFT26は、再変調部24で再変調された各サブキャリア信号に対して、逆高速フーリエ変換を施し、複数のサブキャリア信号をOFDM信号であるベースバンド信号に変換する。
【0030】
合算補正量演算部28は、AFC回路16における周波数誤差の補正量と、位相トラッキング回路20における残留周波数誤差の補正量とを合算した合算補正量を演算する。
【0031】
逆回転部30は、合算補正量演算部28で演算された合算補正量分の位相回転を戻すための周波数を決定し、決定した周波数の複素正弦波信号またはキャリア信号をIFFT26から出力されたベースバンド信号に乗算する。
【0032】
直交変調部32は、逆回転部30で決定された周波数の複素正弦波信号またはキャリア信号が乗算されたベースバンド信号、すなわち、AFC回路16及び位相トラッキング回路20により補正された位相回転が戻された状態のベースバンド信号を直交変調する。
【0033】
送信部34は、直交変調された中間周波数帯の再送信号を無線周波数帯にアップコンバートして送信する。また、デジタル/アナログ変換処理等の他の送信処理も行う。
【0034】
次に、第1の実施の形態の無線中継端末装置10の動作について説明する。
【0035】
まず、受信部12で、他の端末から送信されたパケットが受信されると、ダウンコンバート、増幅、アナログ/デジタル変換処理等の受信処理が行われ、受信処理後の信号が直交復調部14に出力される。直交復調部14では、受信処理後の信号が直交復調され、複素信号であるベースバンド信号に変換されて、AFC回路16及び乗算部36へ出力される。
【0036】
AFC回路16では、直交復調部14から出力されたベースバンド信号に対して、パケットのプリアンブル部を用いて周波数誤差が検出され、補正量が合算補正量演算部28及び乗算部36に出力される。乗算部36で、直交復調部14の出力とAFC回路16の出力とが乗算されることにより、ベースバンド信号がAFC処理により補正される。
【0037】
乗算部36から出力されたベースバンド信号は、FFT18に入力され、高速フーリエ変換が施され、OFDM信号から複数のサブキャリア信号に分解される。サブキャリア信号に含まれるパイロットキャリア信号は、位相トラッキング回路20に出力され、パイロットキャリア以外のサブキャリア信号は、各々乗算部38へ出力される。
【0038】
位相トラッキング回路20では、FFT18から出力されたパイロットキャリア信号毎の位相回転量が検出され、各位相回転量を平均した1シンボル当たりの平均位相回転量が演算され、平均位相回転量が合算補正量演算部28及び乗算部38へ出力される。乗算部38で、各サブキャリア信号に平均位相回転量が乗算されることにより、各サブキャリア信号が位相トラッキング処理により補正される。
【0039】
乗算部38から出力された各サブキャリア信号は、復調部22に入力され、データが復調される。復調後の各サブキャリア信号は、再変調部24に入力され、再び変調される。再変調された各サブキャリア信号は、IFFT26へ入力され、逆高速フーリエ変換が施され、複数のサブキャリア信号がOFDM信号であるベースバンド信号に変換され、変換後のベースバンド信号が乗算部40へ出力される。
【0040】
また、合算補正量演算部28では、AFC回路16の出力である補正量と、位相トラッキング回路20の出力である補正量(平均位相回転量)とを合算した合算補正量を演算して、逆回転部30へ出力する。逆回転部30では、合算補正量分の位相回転を戻すための周波数が決定され、決定された周波数が乗算部40へ出力される。乗算部40でIFFTから出力されたベースバンド信号と逆回転部30から出力された周波数の複素正弦波信号またはキャリア信号とが乗算されることにより、AFC回路16及び位相トラッキング回路20により補正された位相回転が戻され、このベースバンド信号が直交変調部32へ出力される。
【0041】
直交変調部32では、乗算部40の出力であるベースバンド信号が直交変調されて送信部34へ出力され、送信部34では、アップコンバート、デジタル/アナログ変換処理等の送信処理が行われて、再送信号が送信される。
【0042】
以上説明したように、第1の実施の形態の無線中継端末装置によれば、パケットのプリアンブル部を用いたAFC処理により補正し切れなかった残留周波数誤差を、FFT後の位相トラッキング処理で補正する場合には、AFCの補正量と位相トラッキングの補正量とを合算した補正量をIFFT後の信号に戻すため、本端末が車車間通信等のように移動体に搭載される場合であっても、受信信号を中継する際に、受信信号と再送信号との間の周波数誤差を低減することができる。
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、パケットのデータ部を用いた周波数誤差の補正として、判定帰還チャネル推定を行う点が、第1の実施の形態と異なっている。なお、第1の実施の形態の無線中継端末装置10と同一の構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図4に示すように、第2の実施の形態の無線中継端末装置210は、受信部12、直交復調部14、AFC回路16、FFT18、復調部22、判定帰還チャネル推定部42、再変調部24、IFFT26、キャリア間位相回転平均化部44、合算補正量演算部28、逆回転部30、直交変調部32、送信部34、及び乗算部36、40を含んで構成されている。
【0044】
判定帰還チャネル推定部42は、各サブキャリア信号の位相の変化を用いて、チャネル変動補正により周波数誤差を補正する。第1の実施の形態の位相トラッキング回路20と同様に、AFC後の残留周波数誤差を補正するものである。例えば、パイロットキャリア信号に基づいて、送受信間のチャネル特性を推定し、推定されたチャネル特性とサブキャリア信号の各々とに基づいて、サブキャリア信号毎の位相回転を演算する。そして、サブキャリア信号の各々に演算した位相回転を帰還することで、各サブキャリア信号の周波数誤差を補正する(詳細は、特開2007−166194号公報参照)。
【0045】
キャリア間位相回転平均化部44は、判定帰還チャネル推定部42で、サブキャリア信号毎に演算された各位相回転を平均化したキャリア間平均位相回転を演算し、このキャリア間平均位相回転を、判定帰還チャネル推定部42における残留周波数誤差の補正量とする。
【0046】
次に、第2の実施の形態の無線中継端末装置210の動作について説明する。なお、第1の実施の形態の無線中継端末装置10の動作と異なる点を中心に説明する。
【0047】
FFT18から出力された各サブキャリア信号は、復調部22及び判定帰還チャネル推定部42に入力される。復調部22からの出力は再変調部24へ出力されると共に、判定帰還チャネル推定部42へも入力され、判定帰還チャネル推定部42において、各サブキャリア信号の位相回転が演算される。演算された位相回転は、各サブキャリアに対応した復調部22及びキャリア間位相回転平均化部44へ出力される。
【0048】
キャリア間位相回転平均化部44では、判定帰還チャネル推定部42から出力された各位相回転を平均化したキャリア間平均位相回転を演算し、合算補正量演算部28へ出力する。
【0049】
以上説明したように、第2の実施の形態の無線中継端末装置によれば、パケットのプリアンブル部を用いたAFC処理により補正し切れなかった残留周波数誤差を、FFT後の判定帰還チャネル推定処理で補正する場合には、AFCの補正量とチャネル変動補正によりサブキャリア毎に演算された位相回転を平均化した補正量とを合算した補正量をIFFT後の信号に戻すため、本端末が車車間通信等のように移動体に搭載される場合であっても、受信信号を中継する際に、受信信号と再送信号との間の周波数誤差を低減することができる。
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、パケットの1シンボル毎に周波数誤差の補正及び逆補正を行って再送信する場合について説明したが、協調通信においては、パケットの受信と再送信とでは使用するタイムスロットが異なるため、第3の実施の形態では、1パケット分の周波数誤差を時間方向に平均化する場合について説明する。タイムスロットとは、所定期間の1フレームをN個に分割した場合の時間単位であり、各端末毎に各々選択したタイムスロットのタイミングでパケットを送信する。なお、第1の実施の形態の無線中継端末装置10と同一の構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
図5に示すように、第3の実施の形態の無線中継端末装置310aは、受信部12、直交復調部14、AFC回路16、FFT18、位相トラッキング回路20、復調部22、受信バッファ46、シンボル間位相回転平均化部48、再変調部24、IFFT26、合算補正量演算部28、逆回転部30、直交変調部32、送信部34、及び乗算部36、38、40を含んで構成されている。
【0051】
受信バッファ46には、復調部22による復調後の各サブキャリア信号が1パケット分保持される。
【0052】
シンボル間位相回転平均化部48は、位相トラッキング回路20で1シンボル毎に演算される平均位相回転量を、1パケット分保持し、各平均位相回転量を1パケット分平均化したシンボル間平均位相回転量を演算する。
【0053】
次に、第3の実施の形態の無線中継端末装置310aの動作について説明する。なお、第1の実施の形態の無線中継端末装置10の動作と異なる点を中心に説明する。
【0054】
位相トラッキング回路20で演算された平均位相回転量は、シンボル間位相回転平均化部48及び乗算部38へ出力される。シンボル間位相回転平均化部48では一旦、1シンボル分の平均位相回転量を保持する。乗算部38で、各サブキャリア信号に平均位相回転量が乗算されることにより、各サブキャリア信号が位相トラッキング処理により補正される。
【0055】
補正後の各サブキャリア信号は、復調部22に入力され、各サブキャリアのデータが復調され、一旦受信バッファ46に保持される。
【0056】
この処理を1パケット分繰り返し、シンボル間位相回転平均化部48に1パケット分の平均位相回転量が蓄積されると、シンボル間位相回転平均化部48で、各平均位相回転量を1パケット分平均化したシンボル間平均位相回転量が演算される。この間に、受信バッファにも1パケット分のサブキャリア信号が蓄積される。
【0057】
演算されたシンボル間平均位相回転量は、合算補正量演算部28へ出力される。また、受信バッファに保持されたサブキャリア信号は、各々のサブキャリアに対応した再変調部24へ入力され、IFFT26、合算補正量演算部28、逆回転部30、及び直交変調部32の処理を経て、送信部34により、自端末の送信スロットのタイミングで、パケットが再送信される。
【0058】
以上説明したように、第3の実施の形態の無線中継端末装置によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、1パケット分のデータを保持して周波数誤差を補正するため、周波数誤差の補正精度を向上させることができる。
【0059】
なお、第3の実施の形態のように受信バッファ46、及びシンボル間位相回転平均化部48を設けた構成は、第2の実施の形態にも適用できる。この場合、図6に示すように、無線中継端末装置310bにおいて、シンボル間位相回転平均化部48を、キャリア間位相回転平均化部44の後段に設け、キャリア間位相回転平均化部44で1シンボル毎に演算されるキャリア間平均位相回転量を、1パケット分保持し、各キャリア間平均位相回転量を1パケット分平均化したシンボル間平均位相回転量を演算するようにするとよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、合算補正量を演算してから逆回転して補正する周波数を決定する場合について説明したが、各々の補正量を逆回転してから合算するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、210、310a、310b 無線中継端末装置
12 受信部
14 直交復調部
16 AFC回路
18 FFT
20 位相トラッキング回路
22 復調部
24 再変調部
26 IFFT
28 合算補正量演算部
30 逆回転部
32 直交変調部
34 送信部
42 判定帰還チャネル推定部
44 キャリア間位相回転平均化部
46 受信バッファ
48 シンボル間位相回転平均化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリアンブル部及びデータ部を含み、かつ変調された受信信号を受信する受信手段と、
受信された受信信号を直交復調する直交復調手段と、
前記受信信号のプリアンブル部を用いて、前記直交復調手段により直交復調された受信信号に含まれる周波数誤差の一部を補正する第1の補正手段と、
前記受信信号のデータ部を用いて、前記第1の補正手段により補正された受信信号に含まれる残留周波数誤差を補正する第2の補正手段と、
前記第2の補正手段により補正された受信信号に対して、前記第1の補正手段での補正量と前記第2の補正手段での補正量とを合算して逆補正する逆補正手段と、
前記逆補正手段により逆補正された受信信号を直交変調する直交変調手段と、
前記直交変調手段で直交変調された受信信号を送信する送信手段と、
を含む中継端末装置。
【請求項2】
前記第1の補正手段を、自動周波数制御回路とした請求項1記載の中継端末装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記受信信号としてOFDM信号を受信し、
前記第1の補正手段と前記第2の補正手段との間に、前記OFDM信号に高速フーリエ変換を施して、複数のサブキャリア信号に分解するFFT手段を備えた
請求項1または請求項2記載の中継端末装置。
【請求項4】
前記第2の補正手段を、前記複数のサブキャリア信号に含まれる既知のパイロットキャリア信号を用いて前記残留周波数誤差を補正する位相トラッキング回路とした請求項3記載の中継端末装置。
【請求項5】
前記第2の補正手段を、判定基準となるチャネル特性と前記複数のサブキャリア信号毎の復調処理前後の信号とに基づいて、前記複数のサブキャリア信号毎の位相変動を検出して前記残留周波数誤差を補正する判定帰還回路とし、
前記複数のサブキャリア信号毎の残留周波数誤差の平均補正量を演算するキャリア間平均演算手段を含み、
前記逆補正手段は、前記第1の補正手段での補正量と前記キャリア間平均演算手段で演算された平均補正量とを合算する
請求項3記載の中継端末装置。
【請求項6】
前記受信信号を、複数のシンボルで構成されたパケット信号とし、
前記逆補正手段は、前記受信信号のシンボル単位で補正量を合算して逆補正する請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の中継端末装置。
【請求項7】
前記受信信号を、複数のシンボルで構成されたパケット信号とし、
前記第2の補正手段におけるシンボル単位の補正量を、1パケット分時間方向に平均化した平均補正量を演算するシンボル間平均演算手段を含み、
前記逆補正手段は、前記第1の補正手段で補正された補正量と前記シンボル間平均演算手段で演算された平均補正量とを合算する
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の中継端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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