説明

中間転写ベルトおよび中間転写ベルトの製造方法

【課題】低温低湿環境下において用いた場合にも文字チリの発生が抑制され、さらに、長期間にわたって用いた場合にも画像アレ現象の発生が抑制される中間転写ベルトおよびその製造方法の提供。
【解決手段】中間転写ベルトは、導電性フィラーが分散されてなるポリイミドからなる、電子写真方式の画像形成装置用のものであって、前記ポリイミドが、水酸基含有ジアミンおよび水酸基を含有しない芳香族ジアミンのジアミンの合計1.00モルに対してテトラカルボン酸を0.85〜1.20モルの比率で、さらにジアミン中の前記水酸基含有ジアミンと前記水酸基を含有しない芳香族ジアミンとのモル比が0.10:0.90〜1.00:0.00(水酸基含有ジアミン:水酸基を含有しない芳香族ジアミン)で用いて合成されたポリアミック酸を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置用の中間転写ベルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式の画像形成方法によって画像を形成する画像形成装置においては、装置の寿命の向上などを目的として、感光体ドラムなどの像担持体上にトナーにより形成されたトナー像を、画像支持体上に直接定着させる直接転写方式ではなく、像担持体上のトナー像を中間転写ベルトに一旦転写(1次転写)し、それを画像支持体上に転写(2次転写)してから定着を行う中間転写方式のものを採用することが検討されている。さらに、装置の小型化などを目的に、中間転写ベルトに画像支持体の搬送も兼ねさせる方式のものも検討されている。
このような中間転写ベルトとしては、半導電性ベルトが用いられており、具体的には、例えば、ポリイミドに導電性フィラーとしてファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが分散されてなる中間転写ベルトが提案されている(特許文献1〜3参照。)。
【0003】
しかしながら、これらの中間転写ベルトを用いた画像形成装置によっては、低温低湿環境において文字チリが発生することがあり、さらに、長期間にわたって用いた場合には、画像アレ現象が発生することがある、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−311263号公報
【特許文献2】特開2003−277502号公報
【特許文献3】特開2005−247988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、低温低湿環境下において用いた場合にも文字チリの発生が抑制され、さらに、長期間にわたって用いた場合にも画像アレ現象の発生が抑制される中間転写ベルトおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の中間転写ベルトは、導電性フィラーが分散されてなるポリイミドからなる、電子写真方式の画像形成装置用の中間転写ベルトであって、
前記ポリイミドが、下記一般式(1)で表される構造単位を含有するものであることを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
〔上記式中、Xは下記式(a)〜下記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。〕
【0009】
【化2】

【0010】
〔上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。〕
【0011】
本発明の中間転写ベルトにおいては、下記一般式(2)で表される水酸基含有ジアミンおよび水酸基を含有しない芳香族ジアミンのジアミンの合計1.00モルに対してテトラカルボン酸を0.85〜1.20モルの比率で、さらに
ジアミン中の前記水酸基含有ジアミンと前記水酸基を含有しない芳香族ジアミンとのモル比が0.10:0.90〜1.00:0.00(水酸基含有ジアミン:水酸基を含有しない芳香族ジアミン)で用いて合成されたポリアミック酸を用いることが好ましい。
【0012】
【化3】

【0013】
〔上記式中、Xは、下記式(a)〜下記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。〕
【0014】
【化4】

【0015】
〔上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。〕
【0016】
さらに、本発明の中間転写ベルトの製造方法は、上記の中間転写ベルトを製造する方法であって、
少なくともテトラカルボン酸および下記一般式(2)で表される水酸基含有ジアミンを用いてポリアミック酸を合成し、当該ポリアミック酸からポリイミドを得る工程を経ることを特徴とする。
【0017】
【化5】

【0018】
〔上記式中、Xは、下記式(a)〜下記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。〕
【0019】
【化6】

【0020】
〔上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。〕
【0021】
本発明の中間転写ベルトの製造方法においては、前記ポリアミック酸を、テトラカルボン酸、上記一般式(2)で表される水酸基含有ジアミンおよび水酸基を含有しない芳香族ジアミンを用いて合成し、前記水酸基含有ジアミンおよび前記水酸基を含有しない芳香族ジアミンとのジアミンの合計1.00モルに対して前記テトラカルボン酸を0.85〜1.20モルの比率で、さらにジアミン中の前記水酸基含有ジアミンと前記水酸基を含有しない芳香族ジアミンとのモル比が0.10:0.90〜1.00:0.00(水酸基含有ジアミン:水酸基を含有しない芳香族ジアミン)で用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の中間転写ベルトによれば、これを構成するポリイミドが水酸基の導入されたものであることにより、残留電荷が低いものとなって印加された電圧による表面抵抗率の変動が抑制されるために、長期間にわたって表面抵抗率を所期の範囲内に維持することができることから、低温低湿環境下において用いた場合にも文字チリの発生が抑制され、さらに、長期間にわたって用いた場合にも画像アレ現象の発生が抑制される。
【0023】
本発明の中間転写ベルトの製造方法によれば、水酸基含有ジアミンを用いることにより水酸基が導入されたポリアミック酸が得られるために、当該水酸基が導入されたポリアミック酸に導電性フィラーを添加し、さらにイミド化することによって、当該導電性フィラーがポリイミド中において高い分散性で分散された状態の中間転写ベルトが得られるので、結局、長期間にわたって表面抵抗率を所期の範囲内に維持することができる中間転写ベルトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0026】
〔中間転写ベルト〕
本発明の中間転写ベルトは、電子写真方式の画像形成装置用の中間転写ベルトであって、下記に詳述するポリイミドに導電性フィラーが分散されてなる半導電性ベルトである。
【0027】
本発明の中間転写ベルトは、具体的には無端状のベルト形状を有するものであり、水酸基が導入されたポリアミック酸から生成されたポリイミドに導電性フィラーが分散されてなるものそれ自体によって構成されていてもよく、当該水酸基が導入されたポリアミック酸から生成されたポリイミドを基体としてその外側に、トナーフィルミング防止層として厚さ5〜50μmのフッ素の層が被覆されてなる2層構造のものであってもよい。
【0028】
本発明の中間転写ベルトは、表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ω/□であるものとされることが好ましい。
表面抵抗率が1×1010Ω/□未満である場合は、得られる可視画像において文字チリが発生するおそれがあり、表面抵抗率が1×1013Ω/□を超える場合は、得られる可視画像において1次転写ムラが発生するおそれがある。
【0029】
表面抵抗率は、「HirestaIP UPプローブ」(三菱化学社製)によって、常温常湿(温度20±1℃、湿度50±2%)環境下において、幅方向に等ピッチで3ヶ所を、縦(周)方向に4クール、合計12ヶ所について、各々、電圧500Vを10秒間印加した後に計測される値の平均値である。
【0030】
本発明の中間転写ベルトの厚みは、40〜300μmであることが好ましく、より好ましくは45〜200μmである。
【0031】
〔導電性フィラー〕
本発明の中間転写ベルトに含有される導電性フィラーとしては、公知の種々のものを用いることができ、例えば、カーボンブラックの粉体や短繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛が粉砕されてなる粉体、チタン酸塩の短繊維、Sbがドープされた酸化スズ、Inがドープされた酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物の粉体、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレンなどの導電性高分子の粉体などが挙げられる。カーボンブラックの具体例として、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、酸性カーボンなどが挙げられる。
【0032】
導電性フィラーとしては、後述する製造方法において、ポリアミック酸溶液に溶解するものであっても、溶解することなく分散するものであってもよいが、ポリアミック酸溶液に分散するものであることが好ましい。
【0033】
中間転写ベルトにおける導電性フィラーの含有量は、通常、ポリイミドに対して1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量%である。
中間転写ベルトにおける導電性フィラーの含有量が上記の範囲であることにより、当該中間転写ベルトが所期の表面抵抗率を有するものとされる。一方、中間転写ベルトにおける導電性フィラーの含有量が過少である場合は、表面抵抗率が過度に高くなってしまうおそれがあり、また、中間転写ベルトにおける導電性フィラーの含有量が過多である場合は、表面抵抗率が過度に低くなってしまうおそれがある。
【0034】
そして、本発明の中間転写ベルトを構成するポリイミドは、上記一般式(1)で表される構造単位を含有するものである。
上記一般式(1)中、Xは上記式(a)〜上記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。
また、上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。
【0035】
本発明の中間転写ベルトにおいて、水酸基の含有割合は、アミド結合:水酸基がモル比で2.00:0.10〜1.70:2.00であることが好ましい。
【0036】
中間転写ベルトにおける水酸基の含有割合がアミド結合の含有割合に対して上記の範囲であることにより、適度に電流が流れて確実に残留電荷が低いものとなって、長期間にわたって確実に表面抵抗率を所期の範囲内に維持することができる。一方、水酸基の含有割合がアミド結合の含有割合に対して過少である場合は、残留電荷が高いものとなって耐久性が低くなる、すなわち、表面抵抗率を所期の範囲内に維持することを、長期間にわたってはできないおそれがあり、水酸基の含有割合がアミド結合の含有割合に対して過多である場合は、最大電位が高くなりすぎるために適度に電荷を保持することが難しくなるおそれがある。
【0037】
以上のような中間転写ベルトによれば、これを構成するポリイミドに水酸基が導入されていることにより、残留電荷が低いものとなって印加された電圧による表面抵抗率の変動が抑制されるために、長期間にわたって表面抵抗率を所期の範囲内に維持することができることから、低温低湿環境下において用いた場合にも文字チリの発生が抑制され、さらに、長期間にわたって用いた場合にも画像アレ現象の発生が抑制される。
【0038】
〔中間転写ベルトの作製方法〕
本発明の中間転写ベルトは、テトラカルボン酸と、少なくとも水酸基含有ジアミンとを用いて、ポリイミドの中間体であるポリアミック酸を合成し、このポリアミック酸からポリイミドを得る工程を経ることにより、作製することができる。
【0039】
本発明の中間転写ベルトを作製する具体的な工程の一例を挙げると、例えば、
(1)テトラカルボン酸と水酸基含有ジアミンとを用いてポリアミック酸を合成するポリアミック酸合成工程、
(2)ポリアミック酸に導電性フィラーを添加したポリアミック酸ドープ液から無端ベルト状前駆体を作製するベルト状前駆体作製工程、
(3)無端ベルト状前駆体を焼成してポリイミドによるベルトを作製するイミド化反応工程
から構成される。
【0040】
(1)ポリアミック酸合成工程
このポリアミック酸合成工程は、テトラカルボン酸と少なくとも水酸基含有ジアミンを含むジアミンとを縮重合することにより、ポリアミック酸を合成する工程である。
具体的には、ポリアミック酸の良溶媒からなる溶媒中で縮重合を行い、ポリアミック酸が溶解されたポリアミック酸溶液を得る。
【0041】
ポリアミック酸の良溶媒とは、当該ポリアミック酸を、25℃において20質量%以上の濃度で均一に溶解することができる溶媒をいう。このような良溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルスルホルアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホンなどのスルホン類などの有機極性溶媒を挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を併用してもよい。
溶媒としては、N−メチルピロリドンを用いることが好ましい。
【0042】
使用する溶媒の量は、縮重合後に得られるポリアミック酸溶液中のポリアミック酸の濃度が例えば2〜50質量%の範囲内になるような量であればよい。
【0043】
テトラカルボン酸とジアミンとを縮重合させる方法としては、公知の種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば、テトラカルボン酸とジアミンとをほぼ等モルで用い、溶媒中において、100℃以下、好ましくは0〜80℃の温度範囲にて0.1〜60時間縮重合する方法が挙げられる。
【0044】
〔水酸基含有ジアミン〕
水酸基含有ジアミンは、上記一般式(2)で表される化合物である。
上記一般式(2)中、Xは上記式(a)〜上記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。
また、上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。
【0045】
水酸基含有ジアミンの具体例としては、下記式(A)〜(C)で表される化合物を挙げることができる。
【0046】
【化7】

【0047】
本発明に係るポリアミック酸の合成においては、水酸基含有ジアミンと水酸基を含有しない芳香族ジアミンを併用することができる。
水酸基を含有しない芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)などのジアミノジフェニルエーテル化合物;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパンなどのジアミノジフェニルアルカン化合物;ベンチジン、3,3’−ジメチルベンチジンなどのベンチジン化合物;4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィドなどのジアミノジフェニルスルフィド化合物;4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノフェニルスルホンなどのジアミノジフェニルスルホン化合物;メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン(PPD)などのジアミノベンゼン化合物などを挙げることができる。
これらの中でも、ジアミノジフェニルエーテル化合物およびジアミノジフェニルアルカン化合物が好ましい。
【0048】
水酸基を含有しない芳香族ジアミンを併用する場合、水酸基含有ジアミンの使用量は、水酸基を含有しない芳香族ジアミンとの合計100モル%において10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは35モル%以上である。
水酸基含有ジアミンの使用量が上記の範囲であることにより、長期間にわたって電気抵抗率が所期の範囲内に維持される中間転写ベルトを製造することができる。
【0049】
〔テトラカルボン酸〕
本発明に係るポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、脂肪族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸、その酸無水物、その塩およびエステル化物、並びにそれらの混合物を挙げることができ、特に芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物を用いることが好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸の具体例としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸などを挙げることができる。
芳香族テトラカルボン酸の具体例としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸などのビフェニルテトラカルボン酸化合物;3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸などのベンゾフェノンテトラカルボン酸化合物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンなどのジフェニルアルカンテトラカルボン酸化合物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテルなどのジフェニルエーテルテトラカルボン酸化合物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンなどのジフェニルスルホンテトラカルボン酸化合物;2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸などのナフタレンテトラカルボン酸化合物;ピロメリット酸などのテトラカルボキシベンゼン化合物などを挙げることができる。
【0050】
テトラカルボン酸と塩を形成する成分としては、例えば、アンモニア、有機物モノアミン、有機物ジアミン、有機物トリアミン、有機物テトラミンが挙げられ、特に下記に詳述する芳香族ジアミンが好ましい。
テトラカルボン酸とエステル化物を形成する成分としては、例えば、1価のアルコール、2価のアルコール、3価のアルコールなどが挙げられる。
【0051】
これらのテトラカルボン酸の中で、ビフェニルテトラカルボン酸化合物およびテトラカルボキシベンゼン化合物の酸二無水物およびエステル化物が好ましく、特に、テトラカルボキシベンゼン化合物の酸二無水物が好ましい。
【0052】
テトラカルボン酸としては、使用される全量に対して芳香族テトラカルボン酸に係る化合物が80モル%以上使用されることが好ましい。
【0053】
テトラカルボン酸の使用量は、テトラカルボン酸:ジアミン(水酸基含有ジアミンおよび水酸基を含有しない芳香族ジアミン)がモル比で0.85:1〜1.2:1である量であることが好ましい。
【0054】
ポリアミック酸は、数平均分子量が1,000以上であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000であり、特に好ましくは5,000〜150,000である。
【0055】
ポリアミック酸の数平均分子量は、GPCによって測定されるものである。具体的には、装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×102 、2.1×103 、4×103 、1.75×104 、5.1×104 、1.1×105 、3.9×105 、8.6×105 、2×106 、4.48×106 のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成した。また、検出器には屈折率検出器を用いた。
【0056】
(2)無端ベルト状前駆体作製工程
この無端ベルト状前駆体作製工程は、例えばキャスト法や押出成形法によって、ポリアミック酸からシート状前駆体を得、これを環状にする、あるいは直接管状に成形することによって無端ベルト状前駆体を作製する工程である。
【0057】
<キャスト法による無端ベルト状前駆体の作製工程>
キャスト法においては、具体的には、上記のポリアミック酸の合成工程において得られたポリアミック酸溶液よりのポリアミック酸ドープ液を適宜の支持体上に流延または金型に注入してシート形状を形成した後、溶媒を蒸発させて除去することにより、シート状前駆体が作製される。
【0058】
キャスト法で使用されるポリアミック酸ドープ液は、上記のポリアミック酸の合成工程において得られたポリアミック酸溶液に導電性フィラーを溶解または分散させると共に必要に応じて導電剤、界面活性剤、粘度調整剤、可塑剤などの添加剤を含有させ、必要に応じて、希釈用の溶媒を添加して濃度および粘度を調整することにより、調製される。
【0059】
ポリアミック酸ドープ液における全溶媒の量は、20〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。
また、ポリアミック酸ドープ液の粘度は、所望の厚みを有するシート状前駆体が得られる限り特に制限されず、例えば10cp〜10,000cpとされる。
【0060】
希釈用の溶媒としては、上記のポリアミック酸の良溶媒や、以下のポリアミック酸の貧溶媒が使用できる。
ポリアミック酸の貧溶媒とは、25℃において当該ポリアミック酸を溶解させたときに最大の濃度が2質量%未満、特に1質量%未満となる溶媒である。このような貧溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;エチレングリコール、キノリン、イソキノリン、0号ソルベント、1−デカノールなどを挙げることができる。0号ソルベントとは、灯油留分を精製して得られるn−パラフィン系の溶剤である。これらは、1種単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0061】
キャスト法で使用されるポリアミック酸ドープ液としては、製膜速度を高め、生産効率を高める観点から、貧溶媒、特に、ポリアミック酸溶液を構成する良溶媒と相溶し、かつ、当該良溶媒よりも高い沸点を有する貧溶媒、具体的には、沸点または熱分解点が150〜500℃、好ましくは170〜300℃である貧溶媒が添加されてなるものであることが好ましい。
具体的には、貧溶媒の含有量が、ポリアミック酸溶液を構成する良溶媒に対して0.01〜40質量%、特に0.1〜20質量%であるものが好ましい。
【0062】
界面活性剤および粘度調整剤などの添加剤としては、最新ポリイミド−基礎と応用−(日本ポリイミド研究会編(NTS出版)および最新ポリイミド材料と応用技術(監修;柿本雅明、CMC出版)に記載の物質が使用できる。
【0063】
ポリアミック酸ドープ液に溶解しない導電性フィラーおよび/または添加剤を含有させる場合には、ポリアミック酸ドープ液に対して、均一な分散を達成する手段を用いることが好ましい。例えば、撹拌羽根による混合、スタチックミキサーによる混合、1軸混練機や2軸混練機による混合、ホモジナイザーによる混合、超音波分散機による混合など、公知の混合機を用いて混合・分散するとよい。
【0064】
キャスト法におけるポリアミック酸ドープ液からのシート状前駆体の形成に際しては、バーコーター、ドクターブレード、スライドホッパー、スプレーコート、Tダイ押出しなどの薄膜化手段を用いることができる。
【0065】
キャスト法において溶媒を蒸発させるための乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、溶液を流延させた支持体または溶液を注入した金型を加熱する方法が採用できる。このとき、当該支持体および金型と同程度に加熱されたロール形状またはボード形状の加熱体もしくは風を用いて溶媒の蒸発を促進させてもよい。
乾燥温度は、後述するイミド化開始温度より低い温度であって、溶媒が蒸発し得る温度であれば特に制限されず、例えば、40〜280℃、好ましくは80〜260℃であり、より好ましくは120〜240℃、特に好ましくは120〜220℃である。
キャスト法における乾燥は、乾燥後のシート状前駆体の溶媒含有量が無端ベルト状前駆体の形成に適した程度となるまで行えばよい。
【0066】
シート状前駆体の厚みは、特に制限されず、通常は5μm〜500μm、好ましくは10μm〜300μmとされる。
【0067】
シート状前駆体から無端ベルト状前駆体を形成する手法としては、特に限定されず、公知の種々の方法を採用することができる。公知の方法により、シート状前駆体の両端を接合してなる形状を有する無端ベルト状前駆体を形成することができる。
【0068】
<押出成形法による無端ベルト状前駆体の作製工程>
押出成形法においては、具体的には、上記のポリアミック酸の合成工程において得られたポリアミック酸溶液より形成されるポリアミック酸ゲルをTダイより適宜の支持体上に押し出し、溶媒を蒸発させて除去することにより、シート状前駆体が作製される。
【0069】
押出成形法で使用されるポリアミック酸ゲルは、上記のキャスト法と同様にしてポリアミック酸ドープ液を調製し、当該ポリアミック酸ドープ液を乾燥させて溶媒を蒸発させることにより、得られる。
【0070】
ポリアミック酸ゲルにおける溶媒の量は、8〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは8〜10質量%である。
【0071】
ポリアミック酸ドープ液からポリアミック酸ゲルを得るための乾燥方法としては、例えば、加熱した金属製ドラムにポリアミック酸ドープ液を流延・塗布して乾燥する方法、およびポリアミック酸ドープ液を金属製の容器に入れて水浴または油浴中で加熱して乾燥する方法などが挙げられる。いずれの方法を採用する場合においても、乾燥温度は、後述するイミド化開始温度より低い温度であって、溶媒が蒸発し得る温度であれば特に制限されず、例えば、キャスト法における乾燥温度と同様の範囲内であってよい。
【0072】
ポリアミック酸ゲルを適宜の支持体上に押し出す具体的な方法としては、特に制限されず、例えば、吐出口にいわゆるTダイを取り付けた市販の1軸または2軸の押出機を用いることができる。
押し出すときのポリアミック酸ゲルの温度は、後述するイミド化開始温度より低い温度であれば特に制限されず、製造コストの観点から10〜100℃であることが好ましく、特に室温が好ましい。
【0073】
適宜の支持体上に押し出したポリアミック酸ゲルは、押出コーター、ロールコーターなどの薄膜化手段によって薄膜化することが好ましい。
【0074】
押出成形法において溶媒を蒸発させるための乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、ゲルを押し出した支持体を加熱する方法が採用できる。このとき、当該支持体および金型と同程度に加熱されたロール形状またはボード形状の加熱体もしくは風を用いて溶媒の蒸発を促進させてもよい。
乾燥温度は、後述するイミド化開始温度より低い温度であって、溶媒が蒸発し得る温度であれば特に制限されず、例えば、キャスト法における乾燥温度と同様の範囲内とすることができる。
押出成形法における乾燥は、乾燥後のシート状前駆体の溶媒含有量が無端ベルト状前駆体の形成に適した程度となるまで行えばよい。
【0075】
シート状前駆体の厚みは、特に制限されず、通常は5μm〜500μm、好ましくは10μm〜300μmとされる。
【0076】
シート状前駆体から無端ベルト状前駆体を形成する手法としては、特に限定されず、公知の種々の方法を採用することができる。公知の方法により、シート状前駆体の両端を接合してなる形状を有する無端ベルト状前駆体を形成することができる。
<直接管状に成形する無端ベルト状前駆体の作製工程>
上記のポリアミック酸の合成工程において得られたポリアミック酸溶液よりのポリアミック酸ドープ液を金型の外面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本実施形態に係る成形型として良好に動作し得る。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも選択されうる。更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し金型外面に沿って移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みを調整する。円筒金型上への溶液塗布の段階で、溶液の厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
次に、ポリアミック酸組成物を塗布したこの円筒金型を、加熱環境に置き、含有溶媒の20質量%から60質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、円筒金型を傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥温度は、後述するイミド化開始温度より低い温度であって、溶媒が蒸発し得る温度であれば特に制限されず、例えば、キャスト法における乾燥温度と同様の範囲内であってよい。
【0077】
(3)イミド化反応工程
このイミド化反応工程は、無端ベルト状前駆体を特定の焼成温度において所定時間にわたって焼成することによりポリアミック酸をイミド化して、ポリイミドによる中間転写ベルトを作製する工程である。
【0078】
イミド化反応に係る特定の焼成温度は、イミド化開始温度であって、通常280℃以上、好ましくは280〜400℃、より好ましくは300〜380℃、特に好ましくは330〜380℃とされる。
また、焼成時間は、通常10分間以上、好ましくは30〜240分間である。
【0079】
以上のような中間転写ベルトの製造方法によれば、水酸基含有ジアミンを用いることにより水酸基が導入されたポリアミック酸が得られるために、当該水酸基が導入されたポリアミック酸に導電性フィラーを添加し、さらにイミド化することによって、当該導電性フィラーがポリイミド中において高い分散性で分散された状態の中間転写ベルトが得られるので、結局、長期間にわたって表面抵抗率を所期の範囲内に維持することができる中間転写ベルトを製造することができる。
【0080】
〔画像形成装置〕
本発明の中間転写ベルトは、例えば、中間転写方式の画像形成装置に搭載されるものである。
このような中間転写方式の画像形成装置としては、例えば、カラー画像を形成する画像形成装置であって、複数の像担持体に形成される互いに異なる色のトナー像を、共通の中間転写ベルトに順次に1次転写することにより当該中間転写ベルト上で各色のトナー像を重ね合わせ、この中間転写ベルト上において形成されたカラートナー像を画像支持体Pに一括して転写することにより画像支持体P上において中間トナー像を形成するものが挙げられる。
【0081】
図1は、本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す説明図である。
【0082】
この画像形成装置は、無端状のベルトからなり図1において矢印方向に循環移動される中間転写ベルト17を具えており、この中間転写ベルト17の外周面領域に設けられたトナー像形成ユニット配置領域には、中間転写ベルト17の移動方向に沿って、各々、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像およびブラックトナー像を形成する4つのトナー像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kが順次に互いに離間して並ぶよう設けられている。中間転写ベルト17は、各々のトナー像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kにおける1次転写手段14Y、14M、14C、14Kによって像担持体10Y、10M、10C、10Kの各々に対接されながら循環移動されるよう、導電性対向ローラ(以下、単に「対向ローラ」ともいう。)17d、およびローラ17a、17b、17cよりなるローラ群に張架された状態とされている。
【0083】
イエロートナー像に係るトナー像形成ユニット30Yにおいては、回転されるドラム状の感光体よりなる像担持体10Yを具え、この像担持体10Yの外周面領域において、各々、像担持体10Yの回転方向に対して、帯電手段11Y、露光手段12Yおよびイエロートナー像に係る現像剤により現像を行う現像手段13Yがこの順に並ぶよう配設されており、像担持体10Yの回転方向における現像手段13Yより下流の位置に具えられた1次転写手段14Yの下流の位置には、像担持体クリーニングブレードを具えた像担持体クリーニング手段18Yが設けられている。
【0084】
像担持体10Yは、例えば、ドラム状金属基体の外周面に有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層を有するものであり、図1においては紙面に垂直な方向に伸びる状態で配設されている。
【0085】
帯電手段11Yは、例えばグリッド電極と放電電極とを有するスコロトロン帯電器よりなり、露光手段12Yは、例えばレーザ照射装置よりなるものとされる。
【0086】
現像手段13Yは、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブおよび像担持体10Yとこの現像スリーブとの間に直流および/または交流バイアス電圧を印加する電圧印加手段(図示せず)が設けられてなるものである。
【0087】
1次転写手段14Yは、中間転写ベルト17を介して像担持体10Yの表面に押圧された状態で1次転写領域を形成するよう配設された1次転写ローラ141Yと、この1次転写ローラ141Yに接続された、例えば定電流電源よりなる転写電流供給装置(図示せず)とにより構成されており、転写電流供給装置によって1次転写ローラ141Yに電流が供給されることにより、像担持体10Y上におけるイエロートナー像を中間転写ベルト17に静電的に転写する、いわゆる接触転写方式のものである。
【0088】
像担持体クリーニング手段18Yの像担持体クリーニングブレードは、例えば、ウレタンゴムなどの弾性体よりなり、その基端部分が支持部材によって支持されると共に、先端部分が像担持体10Yの表面に当接されるよう設けられており、像担持体クリーニングブレードの基端側から伸びる方向は、当接箇所における像担持体10Yの回転による移動方向と反対方向である、いわゆるカウンター方向とされている。
【0089】
他のトナー像形成ユニット30M、30C、30Kの各々についても、現像剤がイエロートナーの代わりにそれぞれマゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーを含むものである他は、イエロートナー像に係るトナー像形成ユニット30Yと同様の構成とされている。
【0090】
中間転写ベルト17の移動方向におけるブラックトナーに係るトナー像形成ユニット30Kより下流側の位置には、2次転写手段14Sが設けられており、この2次転写手段14Sは、中間転写ベルト17を介して対向ローラ17dを押圧して2次転写領域を形成する2次転写ローラ141Sと、この2次転写ローラ141Sに接続された、転写電圧印加装置(図示せず)とにより構成されており、転写電圧印加装置によって2次転写ローラ141Sに転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト17上に形成されたカラートナー像を、搬送されてきた画像支持体Pに転写して当該画像支持体P上に中間トナー像を形成する、いわゆる接触転写方式のものである。
【0091】
中間転写ベルト17の移動方向における2次転写手段14Sより下流側の位置には、中間転写ベルト17上における残留トナーを除去するクリーニング手段18Sが設けられている。
【0092】
このような画像形成装置においては、次のようにして画像形成動作が行われる。すなわち、トナー像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kの各々において、像担持体10Y、10M、10C、10Kが回転駆動され、この像担持体10Y、10M、10C、10Kが帯電手段11Y、11M、11C、11Kによって所定の極性、例えば負極性に帯電され、次いで、像担持体の表面においてトナー像が形成されるべき画像形成領域に、露光手段12Y、12M、12C、12Kによって露光されることにより、照射箇所(露光領域)の電位が低下されて原稿画像に対応した静電潜像が像担持体10Y、10M、10C、10K上に形成され、現像手段13Y、13M、13C、13Kにおいて、像担持体10Y、10M、10C、10Kの表面電位と同じ極性、例えば負極性に帯電されたトナーが像担持体10Y、10M、10C、10Kの静電潜像に付着して反転現像が行われ、これにより各色のトナー像が形成される。
さらに、1次転写手段14Y、14M、14C、14Kによりそれぞれの1次転写領域において各色のトナー像が、この各色のトナー像が転写されるべき画像保持領域に順次に1次転写されて重ね合せられることにより、中間転写ベルト17上にカラートナー像が形成される。そして、転写電流印加機構(図示せず)により適正な大きさに制御された転写電流が2次転写手段14Sに供給されて、中間転写ベルト17上のカラートナー像が、搬送されてきた画像支持体Pに2次転写された後、定着手段(図示せず)による定着工程が行われ、これにより画像が形成される。
トナー像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kにおいては、1次転写領域を通過して像担持体10Y、10M、10C、10K上に残留する未転写トナーが、像担持体クリーニング手段18Y、18M、18C、18Kのクリーニングブレードにより除去される。
また、2次転写領域を通過して中間転写ベルト17上に残留する未転写トナーは、クリーニング手段18Sにより除去される。
【0093】
〔現像剤〕
本発明に係る画像形成装置において用いられる現像剤は、磁性または非磁性のトナーによる一成分現像剤であってもよく、トナーとキャリアとが混合された二成分現像剤であってもよい。
現像剤を構成するトナーとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができるが、例えば体積基準のメジアン径が3〜9μmであり、重合法によって得られたいわゆる重合トナーを用いることが好ましい。重合トナーを用いることにより、形成される可視画像において高い解像力および安定した画像濃度が得られると共に画像カブリの発生が極めて抑制される。
【0094】
二成分現像剤を構成する場合のキャリアとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができるが、例えば体積基準のメジアン径が30〜65μmであり、磁化量が20〜70emu/gの磁性粒子からなるフェライトキャリアが好ましい。体積基準のメジアン径が30μm未満のキャリアを用いた場合は、キャリア付着が発生して白抜け画像が生じるおそれがあり、また、体積基準のメジアン径が65μmよりも大きなキャリアを用いた場合は、均一な画像濃度の画像が形成されない場合が生じうる。
【0095】
〔画像支持体〕
本発明の画像形成方法に使用される画像支持体としては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
<実施例1>
ピロメリット酸二無水物と上記式(B)で表される水酸基含有ジアミン(B)とを1当量ずつ用い、N−メチルピロリドン(NMP)中において、常温(20℃)で縮重合反応させることにより、ポリアミック酸溶液〔A〕(固形分濃度18質量%)を得た。
このポリアミック酸溶液〔A〕200gに、「0号ソルベント」(新日本石油社製)2gおよびカーボンブラック「プリンテックスU」(デグサ社製)5.4gを添加し、ミキサーで十分に混合することにより、ポリアミック酸ドープ液〔A〕を得た。このポリアミック酸ドープ液〔A〕の溶媒含有量は82.1質量%であった。
このポリアミック酸ドープ液〔A〕を用いて、流延法により連続的にシート状前駆体を製造した。すなわち140℃に加熱した幅440mm、直径400mmの金属製ドラムを回転させながら、当該ドラムの外周面に押出コーターでポリアミック酸ドープ液〔A〕を流延・塗布して乾燥し、その後、剥離することにより、幅400mm、長さ1210mm、厚み120μmのシート状前駆体〔A〕を得た。
このシート状前駆体〔A〕を構成するポリアミック酸の数平均分子量は110,000であった。
【0099】
上記のシート状前駆体〔A〕を幅320mm、長さ970mmに切り取り、両端部を接合した状態で乾燥処理を施すことにより無端ベルト状前駆体を形成した。この無端ベルト状前駆体を、室温から5℃/分の速度で350℃まで昇温後、1時間保持してイミド化反応を行うことにより、中間転写ベルト〔1〕を得た。
この中間転写ベルト〔1〕の表面抵抗率は1.54×1012Ω/□であった。
【0100】
<実施例2〜4、比較例1〜3>
それぞれ、実施例1において、水酸基含有ジアミン(B)1当量の代わりに、表1に記載の水酸基含有ジアミンおよび/またはその他のジアミンを表1に記載の割合で合計が1当量になるよう用いたことの他は同様にして、中間転写ベルト〔2〕〜〔7〕を得た。
【0101】
(1)文字チリの発生についての評価
それぞれ中間転写ベルト〔1〕〜〔7〕に関して文字チリの発生についての評価を行った。
具体的には、画像形成装置「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に、中間転写ベルトとして上記の中間転写ベルト〔1〕〜〔7〕を搭載したものを用い、100倍に拡大したときの径が3mmであるドットが繰り返し形成されたドット画像を形成する実写テストを行い、このドット画像について、任意に選択した100個のドットについて、電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置「ルーゼックスIID」((株)ニレコ製)によって、フレーム面積に対するドット像の面積率:最大2%の条件で各ドット像の円相当径および各ドット像の周囲長を算出し、下記式(X)に従って円形度を算出し、その平均値を平均円形度として文字チリの発生についての評価をした。結果を表1に示す。
この平均円形度が0.950以上である場合が、文字チリの発生が十分に抑制されて実用に耐えると判断され、平均円形度が0.950未満である場合は、文字チリの発生が実用に耐えないレベルであると判断される。結果を表1に示す。
式(X):円形度=(ドット像の円相当径から算出した周囲長)/(ドット像の周囲長)
【0102】
(2)耐久性についての評価
それぞれ中間転写ベルト〔1〕〜〔7〕に関して耐久性についての評価を行った。
具体的には、温度20℃、相対湿度55%RHの環境下で、通電システムを用いて、印加電圧4.0kV(通電電流約60μA)、50時間運転後の表面抵抗率の変動を測定する高電圧印加テストを行った。結果を表1に示す。
この高電圧印加テスト前後の常用対数で表した表面抵抗率の差の絶対値が0.5以下である場合が、高電圧印加に対して十分に表面抵抗率が維持できると判断され、表面抵抗率の差の絶対値が0.5より大きい場合は、画像アレ現象が発生すると判断される。
なお、表1において、「under」とは、1.0×108 (Ω/□)以下の表面抵抗率(測定下限値以下)を意味し、「over」とは、1.0×1013(Ω/□)以上を意味する。
【0103】
【表1】

【符号の説明】
【0104】
10Y、10M、10C、10K 像担持体
11Y、11M、11C、11K 帯電手段
12Y、12M、12C、12K 露光手段
13Y、13M、13C、13K 現像手段
14Y、14M、14C、14K 1次転写手段
14S 2次転写手段
141Y、141M、141C、141K 1次転写ローラ
141S 2次転写ローラ
17 中間転写ベルト
17a〜17c ローラ
17d 対向ローラ
18Y、18M、18C、18K 像担持体クリーニング手段
18S クリーニング手段
30Y、30M、30C、30K トナー像形成ユニット
P 画像支持体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィラーが分散されてなるポリイミドからなる、電子写真方式の画像形成装置用の中間転写ベルトであって、
前記ポリイミドが、下記一般式(1)で表される構造単位を含有するものであることを特徴とする中間転写ベルト。
【化1】


〔上記式中、Xは下記式(a)〜下記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。〕
【化2】


〔上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。〕
【請求項2】
下記一般式(2)で表される水酸基含有ジアミンおよび水酸基を含有しない芳香族ジアミンのジアミンの合計1.00モルに対してテトラカルボン酸を0.85〜1.20モルの比率で、さらに
ジアミン中の前記水酸基含有ジアミンと前記水酸基を含有しない芳香族ジアミンとのモル比が0.10:0.90〜1.00:0.00(水酸基含有ジアミン:水酸基を含有しない芳香族ジアミン)で用いて合成されたポリアミック酸を用いることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【化3】


〔上記式中、Xは、下記式(a)〜下記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。〕
【化4】


〔上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。〕
【請求項3】
ポリアミック酸を合成する工程と、
当該ポリアミック酸を用いて無端ベルト状前駆体を作製する工程と、
当該無端ベルト状前駆体を構成するポリアミック酸からポリイミドを得る工程と
を経ることにより、請求項1または請求項2に記載の中間転写ベルトを製造する中間転写ベルトの製造方法であって、
前記ポリアミック酸を、少なくともテトラカルボン酸および下記一般式(2)で表される水酸基含有ジアミンを用いて合成することを特徴とする中間転写ベルトの製造方法。
【化5】


〔上記式中、Xは、下記式(a)〜下記式(e)で表される基であり、n、m、kはそれぞれ0または1であり、mおよびkの少なくとも一方は1である。〕
【化6】


〔上記式(c)中のpおよび上記式(e)中のqは、それぞれ1〜5の整数である。〕
【請求項4】
前記水酸基含有ジアミンおよび前記水酸基を含有しない芳香族ジアミンのジアミンの合計1.00モルに対して前記テトラカルボン酸を0.85〜1.20モルの比率で、さらに、ジアミン中の前記水酸基含有ジアミンと前記水酸基を含有しない芳香族ジアミンとのモル比が0.10:0.90〜1.00:0.00(水酸基含有ジアミン:水酸基を含有しない芳香族ジアミン)で用いることを特徴とする請求項3に記載の中間転写ベルトの製造方法。




【図1】
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【公開番号】特開2012−194551(P2012−194551A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42780(P2012−42780)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】