説明

丸棒素材底面レベル一定供給方法およびその装置

【課題】丸棒素材を切断機に送材する際にV溝ローラに支持された素材の底面レベルと切断機側の搬送レベルとの差を機械的に補正可能にした丸棒素材の供給方法とその装置の提供。
【解決手段】切断機1への丸棒素材供給方法において、素材送り手段5と素材Wを素材送り手段へ給材する素材給付手段9と、素材給付手段から素材を受け取るときY軸方向の位置決めをする丸棒側面レベル調整手段10と、Z軸方向の素材高さを調整する丸棒底面レベル調整手段12とを備え、丸棒素材の端面レベルが切断機の本体バイス基準ラインBLへ一致するよう丸棒素材を給材すると同時にまたは給材した後、丸棒底面レベル調整手段は丸棒側面レベル調整手段の位置決め位置により一義的に丸棒素材の底面レベルが一定となるよう丸棒素材の高さを調整して、素材送り手段が切断機へ送材するときの丸棒素材の底面レベルが一定となることを特徴とする丸棒素材底面レベル一定供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は丸棒素材底面レベル一定供給方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、丸鋸盤や横型帯鋸盤等の切断機において、切断機の一側(上流側、機械後方側)には素材供給装置が設けられていると共に、切断機の他側(下流側、機械前方側)には切断機にて切断した製品の製品受台が設けられている。そして、該素材供給装置は、丸棒の如き複数の長尺素材を順次切断する場合、切断機の後方側に長尺素材および切断後再利用する残材をストックし後述の送材コンベアへ素材を給付する給付コンベアと、複数のV溝ローラからなる送材コンベアとからなる。
【0003】
ここで、前記送材コンベアはV溝ローラを送材方向(X軸方向)へ回転自在にして切断機に素材を送材し、前記給付コンベアはチェーンを送材方向に対して水平面上で直交する方向(Y軸方向)へ回転自在にして送材コンベアに素材を給材し、また、送材コンベアには給材位置へ給材された素材を給付コンベアから受け取る為に該V溝ローラに素材を載置すべく昇降装置があり、それによりV溝ローラはXY軸に鉛直な上下方向(Z軸方向)に昇降自在にして素材を載置する、これらの移動位置決め自在に設けた供給装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−24524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13により、前述の特許文献1記載の素材供給装置により素材を切断機に送材する場合について説明する。
【0006】
まず、図示省略の給付コンベアにおけるチェーン上に載置された丸棒の如き素材Wの右側面(図13における右側)が切断機の本体バイス基準ラインK−K線に一致する位置に給付コンベアにより位置決めする。
【0007】
次いで、複数のV溝ローラ101からなる送材コンベアのV溝ローラ101のV溝中心が素材Wの中心に一致する位置にY軸方向に水平移動させてから、図示省略の送材コンベアを図示省略のリフトシリンダで定位置に上昇させることで、V溝ローラ101をZ軸方向に昇降移動(上昇)させて素材WをV溝ローラ上に支持した後、V溝ローラ101をX軸方向の送材方向に回転駆動し、素材Wを所望の長さだけ送材して切断機の固定バイスで固定して切断する。
【0008】
前述の特許文献1に記載の素材供給装置によって丸棒の如き長尺素材を切断する場合、次のような問題がある。
【0009】
再度図13を参照するに、異なる直径を有する素材Wの右側面を本体バイス基準ラインK−K線に位置決めして、V溝ローラ101で素材Wを一定の位置まで上昇支持したとき、素材がV溝ローラと接線当接する位置が素材径によって異なるため、V溝ローラ底部から素材底面までの距離が変化し、よって機械のパスラインに対する素材の底面レベルにバラツキが生じる。例えば、V溝ローラ101のV溝の角度が151度である場合、φ330の丸棒とφ30の丸棒とでは、V溝ローラ101に支持された素材Wの底面のレベルの差が約4.9mmとなる。
【0010】
そうすると、丸棒素材Wを帯鋸盤の如き切断機に送材するとき、V溝ローラの昇降高さについてφ30の丸棒の底面レベルが切断機側の搬送ローラの搬送レベルとなるよう調整した場合は、φ330の丸棒の底面は切断機側の搬送レベルより4.9mm上方に位置することになり送材中に素材Wが落下する状態となり、逆にφ330の丸棒の底面レベルが切断機側の搬送レベルとなるよう調整した場合には、φ30の丸棒の底面は4.9mm下方に位置するため切断機側の搬送ローラに衝突してしまい送材が困難になってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は上述の如き問題を解決するために成されたものであり、本発明の課題は、丸棒素材をV溝ローラを備えた送材コンベアにより帯鋸盤の如き切断機に送材する場合、送材コンベアのV溝ローラに支持された丸棒素材の底面レベルと切断機側の搬送レベルとの差を機械的に補正可能にした切断機に対する素材供給方法およびその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の丸棒素材底面レベル一定供給方法は、切断機に丸棒素材を該丸棒の長手方向に供給する丸棒素材供給方法において、該丸棒素材を該切断機へ送材する方向をX軸方向、X軸方向に対して水平面上で直交する方向をY軸方向、XY軸方向に対して鉛直方向をZ軸方向とし、該丸棒素材を該切断機へ搬送するためX軸方向へ送材する素材送り手段と、該丸棒素材を該素材送り手段へ受け渡すべくY軸方向へ給材する素材給付手段と、該素材送り手段が該丸棒素材を該素材給付手段から受け取るときY軸方向の位置決めをする丸棒側面レベル調整手段と、該素材送り手段が該丸棒素材を該切断機へ送材するときの素材高さ方向であるZ軸方向へ高さ調整する丸棒底面レベル調整手段とを備え、該素材給付手段は該丸棒素材の端面レベルが切断機の本体バイス基準ラインへ一致となるよう該丸棒素材を給材すると同時にまたは給材した後、該丸棒底面レベル調整手段は該丸棒側面レベル調整手段の位置決め位置により一義的に該丸棒素材の底面レベルが一定となるよう該丸棒素材の高さを調整して、該素材送り手段が該切断機へ送材するときの該丸棒素材の底面レベルが一定となることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置は、切断機に丸棒素材を該丸棒の長手方向に送材する素材送り装置と、該素材送り装置に丸棒素材を給付する素材給付装置とを備えた丸棒素材供給装置において、該丸棒素材を該切断機へ送材する方向をX軸方向とし、素材給付装置がX軸方向に対して水平面上で直交し該丸棒素材を素材送り装置へ給付する方向をY軸方向とし、XY軸方向に対して鉛直な方向をZ軸方向とするとき、少なくとも該丸棒素材をV溝で支持する回転自在な素材送りローラを含む送材コンベアと、該素材送りローラのZ軸方向調整をする丸棒底面レベル調整装置と、該素材給付装置から該丸棒の給付される位置に該素材送りローラのV溝中心をY軸方向位置決めする丸棒側面レベル調整装置を含み、該丸棒素材をX軸方向にある該切断機へ送材する素材送材装置を備え、少なくとも該丸棒素材を支持する回転自在チェーンを含む給付コンベアを含み、該丸棒素材を該素材送り手段へ受け渡すべくY軸方向へ給付する素材給付装置を備え、該素材給付装置が該丸棒素材の端面レベルを切断機の本体バイス基準ラインへ一致となるよう該丸棒素材をY軸方向に位置決めする動作に合わせて、該丸棒側面レベル調整装置は該素材送りローラのV溝中心と該丸棒素材の中心とを一致させるようY軸方向に位置決めしたとき、該丸棒底面レベル調整は該丸棒素材の底面レベルが一定となるよう該丸棒素材の高さを一義的に調整し、該素材送り装置が該切断機へ送材するときの該丸棒素材の底面レベルが一定となることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置は、請求項2に記載の丸棒底面レベル調整装置において、前記丸棒側面レベル調整装置と前記丸棒底面レベル調整装置とは、一体的な構成であって、前記本体バイス基準ラインの方向に向かって傾斜する傾斜面を少なくとも1つ備えたガイドベースに摺動自在に係合して設けてあることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置は、請求項2に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置において、前記丸棒素材が前記素材送りローラのV溝に接線当接し、V溝角度を2αとし、V溝中心のZ軸方向の傾きをβとしたとき、前記丸棒側面レベル調整装置と前記丸棒底面レベル調整装置とにあるY軸方向位置決め手段とZ軸方向位置決め手段とは、一義的に連動する構成であって、「Z軸方向の調整量」/「丸棒素材の半径の差」の比が、(cosβ−sinα)/sinα となるよう位置決め調整可能に設けてあり、合わせて「Y軸方向の調整量」/「丸棒素材の半径の差」の比が、sinβ/sinα となるよう位置決め調整可能に設けてあることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置は、請求項4に記載の丸棒素材底面レベル調整装置において、「90°−角度α+角度β」または「90°−角度α−角度β」はV溝の双方の傾きであり、どちらか小さい角度について、前記丸棒素材の自重と該丸棒素材中心にかかる水平外力に係り、該自重の5%から25%の該水平外力が均衡する角度をその角度とし、βは0°から5°であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の丸棒素材底面レベル一定供給方法およびその装置によれば、丸棒素材をV溝ローラを備えた送材コンベアにより帯鋸盤の如き切断機に送材する場合、送材コンベアのV溝ローラに支持された素材の底面レベルと切断機側の搬送レベルとの差を素材の側面レベルを本体バイス基準ラインに合わせる動作に合わせて機械的に補正することができる。
【0018】
したがって、丸棒素材を切断機に送材する場合、作業者は送材コンベアのV溝ローラに支持された素材の底面レベルと切断機側の搬送レベルとの差を気にする必要がなくなり、素材が切断機側の搬送ローラに衝突してしまい送材が困難になるということがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係る切断機に対する素材供給装置の側面の説明図。
【図2】図1のA−A断面の説明図。
【図3】図2のC−C断面図。
【図4】図2の上面図。
【図5】図1のB−B断面図。
【図6】図5の上面図。
【図7】直径の異なる丸棒素材W1〜W4の側面を本体バイス基準ラインBLに位置決めした際における各素材W1〜W4の底面と素材送りローラのV溝中心Vとの交点P1〜P4を通る直線A−Aについて説明する図。
【図8】本願発明に係る丸棒素材底面レベル一定供給方法およびその装置において、素材送りローラ3のV溝の角度αと勾配θとの関係について説明する図。
【図9】図8において、素材送りローラのV溝中心VがZ軸に対してβ度傾斜している場合の素材送りローラ3のV溝の角度と傾斜面37の勾配θとの関係について説明する図。
【図10】素材送りローラ3のV溝の内表面に丸棒素材Wの外径部が接線で接触しない場合の勾配について考察した図である。
【図11】図9における角度α、角度βおよび素材の自重と水平外力との関係を説明する図。
【図12】図9において、素材経がφ400、素材重量Wが150kgf、水平外力Hをワーク重量の1〜30%、V溝幅(片側)と、設計条件からV溝幅(片側)を40mm〜95mmの場合の角度βの許容範囲の計算例。
【図13】直径の異なる丸棒素材の側面を本体バイス基準ラインに位置決めする際の従来例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0021】
図1〜図3を参照するに、例えば横型帯鋸盤或いは丸鋸盤の如き切断機1の後側(図1において右側)には、丸棒素材Wをその長手方向であるX軸方向へ送材して切断機1に供給を行う回転駆動自在の複数の素材送りローラ3備えた素材送り装置5と、丸棒素材Wを前記長手方向に水平面上で直交するY軸方向へ給材して前記素材送り装置5へ素材を給付する素材給付コンベアを備えた素材給付装置9が設けてある。
【0022】
前記素材給付コンベア7は、前記複数の素材送りローラ3の間に前記長手方向に水平面上で直交するY軸方向へ延伸し適宜な間隔に並列した複数本のチェーン11を回転自在に掛け回して構成したものであり、素材給付コンベア7により丸棒素材Wを複数の素材送りローラ3が形成するX軸方向のローラ基準ラインRL(図2参照)の上方へ給材位置決めすることができる。
【0023】
前記の複数本のチェーン11は、図示省略のチェーン駆動モータにより同期して回転駆動され、制御装置に予め入力された素材径情報と図2の本体バイス基準ラインBLより所定の(例えば10mm)左側のオフセット位置にあるセンサ(図示省略)とにより、素材が前記の複数本のチェーン11をY軸方向(図2では右から左方向)に給材しながら、該センサで素材端面を検出してから、該素材径情報と該センサ位置の前記本体バイス基準ラインBLとのオフセット量とにより、残りの移動量を算出してロータリーエンコーダ(図示省略)によりチェーン11の該残りの移動距離が検出され、該制御装置の指令にてX軸方向のローラ基準ラインRLの上方へ給材位置決めするよう素材供給手段を備えた素材供給装置になっている。
【0024】
なお、前記複数本のチェーン11は、素材給付装置9の架台(図示省略)に設けたチャンネル部材からなるチェーン支持部材13(図3参照)により水平に支持されている。
【0025】
前記素材送りローラ3は、X軸方向に水平に延伸する角パイプ状の昇降ベース15の上面にX軸方向に適宜な間隔を空けて立設した支柱17の上部に回転自在に軸支してある。
【0026】
図1に示す如く、前記各素材送りローラ3を回転させるために、各素材送りローラ3にはスプロケット19が取付けてあると共に、支柱17側面の下部付近において前記昇降ベース15に複数のスプロケット21が設けてある(図4、5参照)。
【0027】
そして、前記昇降ベース15には、ベルト,チェーン等のごとき適宜の動力伝達機構23を介して駆動スプロケット25を回転駆動するためのローラ駆動モータ27が装着してあり、前記素材送りローラ3がローラ駆動モータ27によって回転駆動されるように、前記駆動スプロケット25及び前記各スプロケット19、21にはチェーン29が掛け回してある。
【0028】
したがって、前記ローラ駆動モータ27を駆動することにより、チェーン29
を介して複数の素材送りローラ3が同期して同方向へ回転し、素材送りローラ3上の丸棒素材Wを切断機1に対して送材することができ、また逆回転時には残材を戻すことができるよう素材送り手段を備えた素材送り装置になっている。

【0029】
図1〜図6を参照するに、前記昇降ベース15の前後部には、昇降ベース15を上下方向(Z軸方向)に昇降自在にガイドするフロントリフトガイド31fとリアリフトガイド31r(図2、図5参照)とが設けてある。
【0030】
前記リアリフトガイド31rの構成は一部を除いて前記フロントリフトガイド31fと同一であるのでこのフロントリフトガイド31fを主として説明する。
【0031】
図2に示すように、前記フロントリフトガイド31fはガイドポスト33と、このガイドポスト33をY軸方向に(図2において左右方向)ガイドするガイドベース35を備えている。
【0032】
前記ガイドベース35はこのガイドベース35に一体的に設けたフランジ部35fを介して床面F.Lに水平に設置してある。このガイドベース35の上面は、Y軸方向に位置する本体バイス基準ラインBL側に向かって(図2においては右方向)上昇する勾配θを有する傾斜面37が設けてある。そして、この傾斜面37上にリニアガイドで傾斜面を容易に直線移動できるよう構成した一対の平行なガイドレール39がY軸方向に延伸して敷設してある。
【0033】
前記ガイドポスト33は、上面が平坦な支持ベース部34とこの支持ベース部に一体的に立設した昇降ガイド部33fとを有し、支持ベース部34の底面には、前記ガイドベース35上面の傾斜面37に平行な勾配θが設けてあり、この支持ベース部34の底面に前記リニアガイドの前記ガイドレール39に移動自在に係合する複数個(実施例では2個ずつ計4個)の前記リニアガイドのベアリングに結合されたガイド41が係合させてある。
【0034】
図2、図4に示されているように、前記ガイドポスト33に一体的に設けた支持ベース部34の下面には、前記平行なガイドレール39の間を前記傾斜面37に沿って延伸するボールネジの如き駆動軸43が支持ベース部34の左端部に固定して設けたナット部材45に回転自在に螺合してある。
【0035】
前記駆動軸43に直交する同期回転軸47に設けた傘歯車49に係合する傘歯車50が駆動軸43の左端部(図2、4において左側)に設けてある。そして、同期回転軸47の他端部にはフロントリフトガイド31fをY軸方向へ移動位置決めするための駆動モータ51(図6参照)が設けてある。そして、同期回転軸47の先端部(図4では下端部)には、同期回転軸47の回転量を検出してフロントリフトガイド31fのY軸方向の移動量を計測するロータリーエンコーダ52が設けてある。
【0036】
前記昇降ガイド部33fには、フロントリフトガイド31fと昇降ベース15との間におけるZ軸方向の移動を可能とし、かつY軸方向及びX軸方向への相対的移動を規制するX軸ガイド溝53aとY軸ガイド溝53bとが設けてある。
【0037】
一方、昇降ベース15には、ガイド溝53a、53bに昇降自在に係合するガイドローラ55a、55bを軸支したガイドローラ軸56を固定保持するガイドローラ保持部15hが昇降ベース15に一体的に設けてある。
【0038】
また、上述の昇降ベース15の下面には、昇降ベース15から左右方向(Y軸方向)に水平に張り出したシリンダブラケット57が一体的に設けてあり、このシリンダブラケット57上には、前記ガイドポスト33に一体的に設けた支持ベース部34の上面に当接係合したピストンロッドを有する2本の空圧または油圧のシリンダ59が設けてある。
【0039】
ところで、前述のリアリフトガイド31rがフロントリフトガイド31fと相違する部分は、リアリフトガイド31rがY軸ガイド溝53aのみを有する点のみであるので、その他の同一の構成部品には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
上記構成において、前記制御装置に予め記憶された素材径情報と駆動モータの現在位置情報とからローラ基準ラインRLまでの移動量が計算され、駆動モータ51を正転または逆転駆動することにより、フロントリフトガイド31fとリアリフトガイド31rにおける同期回転軸47の傘歯車49に係合する傘歯車50が回転させられて、支持ベース部34に軸支された駆動軸43が回転駆動され、フロントリフトガイド31fとリアリフトガイド31rとが同時に昇降自在に係合する昇降ベース15の支柱17に設けた素材送りローラ3のV溝中心を通るローラ基準ラインRLの位置を本体バイス基準ラインBLに対して移動位置決めすることができるよう丸棒側面レベル調整手段を備えた丸棒側面レベル調整装置10になっている。
【0041】
すなわち、前記素材給付コンベア7が素材端面を前記本体バイス基準ラインBLに位置決めした後若しくは同時に、素材送り装置5がその素材の中心にローラ基準ラインRLが設定されるよう、素材送りローラ3のV溝中心をY軸方向に移動位置決めすることができるので、前述の位置決め後に前記シリンダ59を動作させれば、素材は本体バイス基準で把持できるように素材送りローラ3に支持される。
【0042】
ところで、本体バイス基準ラインBLに対して移動位置決め時において前記フロントリフトガイド31fとリアリフトガイド31rは、前記傾斜面37に沿ってY軸方向に移動すると同時にZ軸方向に昇降するので、素材送りローラ3もY軸方向の移動量に比例して昇降することになる。
【0043】
前述のY軸方向の移動量に比例して素材送りローラ3が昇降する量について図7を参照しながら説明する。
【0044】
図7に示すように、例えば、素材送りローラ3のV溝上に種々の直径の丸棒素材W1〜W4を載置し、素材送りローラ3をY軸方向の本体バイス基準ラインBLの方向へ水平に移動させて、その種々の直径の丸棒素材W1〜W4の右側端面を本体バイス基準ラインBLに一致するように位置決めした場合、丸棒素材W1〜W4の底面と素材送りローラ3のV溝中心Vとの交点P1〜P4点を通る直線A−Aが引ける。
【0045】
上述の直線A−Aは右肩下がりの下り勾配であり、その勾配は、丸棒素材W1の半径をR、丸棒素材W4の半径をr、交点P1とP4間のレベルの差をΔZとするとき、ΔZ/(R−r)=tanθで表される。なお、θは直線A−AとY軸に平行な水平線との為す角度である。よって、この勾配をゼロにしてやれば、各丸棒素材W1〜W4の底部の水準レベルを同一にすることができる。
【0046】
すなわち、前記ガイドベース35の勾配を本体バイス基準ラインBL側に向かって上昇するΔZ/(R−r)の勾配にすれば、丸棒素材W1〜W4の右側端面を本体バイス基準ラインBLに一致するように位置決めした場合に生ずる水準レベル差をゼロにすることができるものであり、丸棒底面レベル調整手段を備えた丸棒底面レベル調整装置12になっている。
【0047】
本願発明に係る丸棒素材底面レベル一定供給装置における実施例では、素材送りローラ3のV溝の角度は151°に設定され、搬送対象とする丸棒素材Wの径をφ330〜φ30としたので、前記傾斜面37の勾配θは、上述の理論から約1/30(角度にして約1.9度)に設定してある。
【0048】
次に、前記素材送りローラ3のV溝の角度と傾斜面37の勾配θとの関係について、図8を参照しながら説明する。
【0049】
図8を参照するに、素材送りローラ3のV溝61の角度を中心線Vに対して左右振り分けの2α、大径の丸棒素材W1の中心をO1、半径をRとし、小径の丸棒素材W2の中心をO2、半径をrとするとき、丸棒素材W1とW2が素材送りローラ3のV溝61内において接線当接係合している状態において、V溝61の底点P3と丸棒素材W1の底点P1との間の距離をZ、前記底点P3と丸棒素材W2の底部P2との間の距離をZ’とすれば傾斜面37の勾配θは「Z軸方向の調整量」/「丸棒素材の半径の差」の比であって、次式(1)で表される。
[数1]
tanθ=(Z-Z')/(R-r)=(1-sinα)/sinα・・・・(1)
ここに、sinα=r'/a'=r/aであり、0°<α<90°である。
【0050】
次に、素材送りローラ3がV溝61の中心線Vに対して角度βだけ、傾斜した場合の図を図9に示す。
【0051】
図9を参照するに、V溝61の底点P3と丸棒素材W1の底点P1との間のZ軸方向(鉛直方向)の距離をZ、V溝61の底点P3と丸棒素材W2の中心をO2との間のZ軸方向(鉛直方向)の距離をb’、同様に前記底点P3と丸棒素材W2の底部P2との間のZ軸方向(鉛直方向)の距離をZ’(=b'-r)、丸棒素材W1の中心O1と前記底点P3との間の距離をHとすれば、傾斜面37の勾配θは次式(2)で表される。なお、β=0の場合は前記の式(1)に一致する。
[数2]
tanθ=(Z-Z')/(R-r)=(cosβ-sinα)/sinα・・・・(2)
ここに、sinα=r'/a'=r/a、H=a*cosβであり、0°<α<90°である。
【0052】
図9に示すように、V溝61の中心線Vに対してV溝61の中心が角度βだけ傾いたことによるV溝61の中心V’のY軸方向の勾配θ2は、「Y軸方向の調整量」/「丸棒素材の半径の差」の比であって、V溝61の底点P3と丸棒素材W1のZ軸方向の中心軸Vとの間の距離をC、丸棒素材W2のZ軸方向の中心との間の距離をC’とすれば、次式(3)で示される。
[数3]
tanθ2=(C-C')/(R-r)=sinβ/sinα・・・・(3)
【0053】
図10は、素材送りローラ3のV溝の内表面に丸棒素材Wの外径部が接線で接触しない場合の勾配について考察する図である。
【0054】
図10は、素材送りローラ3のV溝の角度が半角αを有する素材送りローラ3のV溝の片部P4に、大径の丸棒素材W1と小径素材W2の外径が係合支持された状態が示してある。
【0055】
そして、図10において、V溝の半角α、小径素材W2の半径r、V溝の底部P3とV溝の肩部P4との間の距離Lが既知であり、小径素材W2の底面とV溝中心線Vとの交点をP2、大径素材W1のV溝中心線Vとの交点をP1、大径素材W1の中心をO1、小径素材W2の中心をO2、角P114=Δ1とし、角P224=Δ2とすると、r/sinα=L/sinΔ2 なので、sinΔ2=L*sinα/r、故に、Δ2=sin-1(L*sinα/r)となり、Δ1=sin-1(L*sinα/R)となる。
【0056】
そうすると、θ=180°−(α+Δ2)なので、V溝の底部P3と小径素材W2の中心O2間の距離Dは、
[数4]
D=sin(180°-(α+sin-1(L*sinα/r)))*r/sinα・・・(4)
となる。故に、V溝の底部P3と小径素材W2の底辺のP2との間の距離Xは、次式(5)で示される。
[数5]
X=sin(180°-(α+sin-1(L*sinα/r)))*r/sinα-r・・・(5)
【0057】
同様にW1 のO1からO1V溝の底部P3までの距離も計算して、(X−X’)を考察した場合に、(X−X’):(R−r)比については、半径rによって、角度Δが変化するので、可変の比率関係であり、つまり、一意の線形で表せる本願発明に係る実施例のような単純な機構は採用できない。
【0058】
しかしながら、角度Δに起因する長さLと角度αは一定であるから、rを変数とする分数関数であり、素材Wの中心OとP4とP3 とのなす角が90°以上である場合に素材WがLの端点で当接するのであるから、L*sinα<rである。
【0059】
さすれば、ある程度直線近似することは可能であるので、勾配を多段にすれば実用的範囲になり得る。また、正確に位置決め制御するならば、位置計算した結果でもってサーボ制御等を用いて任意に位置決めする機構をとればよい。
【0060】
さらに、V溝幅と丸棒素材径との関係から、径の大きさが増すことに対して丸棒底面を上昇させる割合は徐々に小さくなるのであるから、勾配を最初の1段のままで使用しても差し支えない実用範囲が想定される。
【0061】
上述の如き素材供給装置によって、ガイドポスト33を本体バイス基準ラインBLの方向に向かって移動させることにより、昇降ベース15が前記切断機側の搬送レベルになるパスラインPL位置に上昇させたとき、それぞれの丸棒素材の底面レベルがガイドベース35に設けた上り勾配により、送材コンベアのV溝ローラに支持された素材の底面レベルと切断機側の搬送レベルとの差を機械的に補正して同水準レベルとなる切断機に送材することができる。
【0062】
したがって、丸棒素材を切断機に送材する場合、作業者は送材コンベアのV溝ローラに支持された素材の底面レベルと切断機側の搬送レベルとの差を気にする必要がなくなり、素材が切断機側の搬送ローラに衝突してしまい送材が困難になるということがなる。なお、パスラインPLは前記素材給付コンベア7のチェーン11より若干上方に位置している。
【0063】
なお、上述の本願発明の実施例においては、フロントリフトガイド31fとリアリフトガイド31rとをY軸方向の勾配θの傾斜面37に沿って移動させることにより、素材送りローラ3のV溝に支持された素材Wの底面レベルが直径の違いによって相違する水準レベルの差をガイドベースの勾配により機械的に補正を行うようにしたが、フロントリフトガイド31fとリアリフトガイド31rとをY軸方向とZ軸方向に移動可能に設け、Y軸移動量とZ軸移動量とを制御装置により同期制御または非同期制御でもって個別に位置制御するようにしても構わない。すなわち、素材送りロー ラ3のY軸移動量とZ軸移動量とを制御装置により同期制御または非同期制御することにより、素材送りロー ラ3のV溝に支持された素材Wの底面レベルが直径の違いによって生じる水準の差を補正するようにしても構わない。
【0064】
ところで、丸棒素材をV溝面で接線当接支持することについて講ずるに、例えば日本の建築基準法などからすると自重の0.2倍の水平力(中地震時)に対して安全な構造であることが望まれている。地震の少ない地域や前記基準も考慮すれば、丸棒素材の自重の5%から25%の水平外力が該丸棒素材に加わった場合を想定することが好ましいという考え方も成り立つ。またそのV溝面で耐えうる角度は、前記角度αと前記角度βとで考察すれば、「90°−角度α+角度β」または「90°−角度α−角度β」で算出されるV溝の双方の傾きのうち、どちらか小さい角度aについて、前記丸棒素材の自重と該丸棒素材中心にかかる水平外力に係り、該自重の5%から25%の該水平外力が均衡する角度をその角度aにすることができる。
【0065】
その点について図11および図12で説明する。図11は点Aまわりのモーメントつり合いを表した図であって、ワークWの重量と水平外力Fとがつり合う角度aについて説明したものである。つまり、重量Wを水平方向のHと鉛直方向のVに分解して、そのうちの水平方向分力Hと水平外力Fとつり合えばよいわけであり。このとき、法規や何らかの規格などによって、水平外力Fが自重Wの例えば20%を許容すると規定すれば、自ずと角度aはtan-1(H/V)≒11.3度で確定する。
【0066】
また、ワーク重量Wを150kgfとした場合に、水平外力はWの1%から30%とし、角度aを算出し、角度βを0°から7°まで振ったときのa’(=90°−a)、角度β分によって変化した(H/V)角度、φ400をV溝に載せたときのV溝幅(片側分)を算出すると、図12のようになる。
【0067】
このとき、機械の設計意図より片側分のV溝幅が40mm以上95mm以下で、水平外力Fはワーク重量Wの5%以上25%以下であるものを算出し、その条件を満たす領域に太枠で囲って表示した。この結果から、角度βは0°から5°の範囲は許容できると判断した。
【0068】
改めて前記角度βについて考察すれば、前述の如く安全面から前記丸棒素材にかかる水平外力がY軸方向の両側面で均一であることが、Y軸方向に対しての理論上好ましい耐震角度であるが、自重に対する水平力の許容範囲と相まって、角度βは0°から5°である限りは実質的な効果を得られるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 切断機
3 素材送りローラ
5 素材送り装置
7 素材給付コンベア
9 素材給付装置
10 丸棒側面レベル調整装置
11 チェーン
12 丸棒底面レベル調整装置
13 チェーン支持部材
15 昇降ベース
15h ガイドローラ保持部
17 支柱
19 スプロケット
21 スプロケット
23 動力伝達機構
25 駆動スプロケット
27 ローラ駆動モータ
29 チェーン
31f フロントリフトガイド
31r リアリフトガイド
33 ガイドポスト
33f 昇降ガイド部
34 支持ベース部
35 ガイドベース
35f フランジ部
37 傾斜面
39 ガイドレール
41 ベアリングのガイド
43 駆動軸
45 ナット部材
47 同期回転軸
49 傘歯車
50 傘歯車
51 駆動モータ
52 ロータリーエンコーダ
53a X軸ガイド溝
53b Y軸ガイド溝
55a、55b ガイドローラ
56 ガイドローラ軸
57 シリンダブラケット
59 シリンダ
61 V溝
BL 本体バイス基準ライン
F.L 床面
RL ローラ基準ライン
V 中心線
丸棒素材W(W1〜Wn

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断機に丸棒素材を該丸棒の長手方向に供給する丸棒素材供給方法において、該丸棒素材を該切断機へ送材する方向をX軸方向、X軸方向に対して水平面上で直交する方向をY軸方向、XY軸方向に対して鉛直方向をZ軸方向とし、該丸棒素材を該切断機へ搬送するためX軸方向へ送材する素材送り手段と、該丸棒素材を該素材送り手段へ受け渡すべくY軸方向へ給材する素材給付手段と、該素材送り手段が該丸棒素材を該素材給付手段から受け取るときY軸方向の位置決めをする丸棒側面レベル調整手段と、該素材送り手段が該丸棒素材を該切断機へ送材するときの素材高さ方向であるZ軸方向へ高さ調整する丸棒底面レベル調整手段とを備え、該素材給付手段は該丸棒素材の端面レベルが切断機の本体バイス基準ラインへ一致となるよう該丸棒素材を給材すると同時にまたは給材した後、該丸棒底面レベル調整手段は該丸棒側面レベル調整手段の位置決め位置により一義的に該丸棒素材の底面レベルが一定となるよう該丸棒素材の高さを調整して、該素材送り手段が該切断機へ送材するときの該丸棒素材の底面レベルが一定となることを特徴とする丸棒素材底面レベル一定供給方法。
【請求項2】
切断機に丸棒素材を該丸棒の長手方向に送材する素材送り装置と、該素材送り装置に丸棒素材を給付する素材給付装置とを備えた丸棒素材供給装置において、該丸棒素材を該切断機へ送材する方向をX軸方向とし、素材給付装置がX軸方向に対して水平面上で直交し該丸棒素材を素材送り装置へ給付する方向をY軸方向とし、XY軸方向に対して鉛直な方向をZ軸方向とするとき、少なくとも該丸棒素材をV溝で支持する回転自在な素材送りローラを含む送材コンベアと、該素材送りローラのZ軸方向調整をする丸棒底面レベル調整装置と、該素材給付装置から該丸棒の給付される位置に該素材送りローラのV溝中心をY軸方向位置決めする丸棒側面レベル調整装置を含み、該丸棒素材をX軸方向にある該切断機へ送材する素材送材装置を備え、少なくとも該丸棒素材を支持する回転自在チェーンを含む給付コンベアを含み、該丸棒素材を該素材送り手段へ受け渡すべくY軸方向へ給付する素材給付装置を備え、該素材給付装置が該丸棒素材の端面レベルを切断機の本体バイス基準ラインへ一致となるよう該丸棒素材をY軸方向に位置決めする動作に合わせて、該丸棒側面レベル調整装置は該素材送りローラのV溝中心と該丸棒素材の中心とを一致させるようY軸方向に位置決めしたとき、該丸棒底面レベル調整装置は該丸棒素材の底面レベルが一定となるよう該丸棒素材の高さを一義的に調整し、該素材送り装置が該切断機へ送材するときの該丸棒素材の底面レベルが一定となることを特徴とする丸棒素材底面レベル一定供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置において、前記丸棒側面レベル調整装置と前記丸棒底面レベル調整装置とは、一体的な構成であって、前記本体バイス基準ラインの方向に向かって傾斜する傾斜面を少なくとも1つ備えたガイドベースに摺動自在に係合して設けてあることを特徴とする丸棒素材底面レベル一定供給装置。
【請求項4】
請求項2に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置において、前記丸棒素材が前記素材送りローラのV溝に接線当接し、V溝角度を2αとし、V溝中心のZ軸方向の傾きをβとしたとき、前記丸棒側面レベル調整装置と前記丸棒底面レベル調整装置とにあるY軸方向位置決め手段とZ軸方向位置決め手段とは、一義的に連動する構成であって、「Z軸方向の調整量」/「丸棒素材の半径の差」の比が、(cosβ−sinα)/sinα となるよう位置決め調整可能に設けてあり、合わせて「Y軸方向の調整量」/「丸棒素材の半径の差」の比が、sinβ/sinα となるよう位置決め調整可能に設けてあることを特徴とする丸棒素材底面レベルおよび側面レベル一定供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の丸棒素材底面レベル一定供給装置において、「90°−角度α+角度β」または「90°−角度α−角度β」はV溝の双方の傾きであり、どちらか小さい角度について、前記丸棒素材の自重と該丸棒素材中心にかかる水平外力に係り、該自重の5%から25%の該水平外力が均衡する角度をその角度とし、βは0°から5°であることを特徴とする丸棒素材底面レベルおよび側面レベル一定供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−251391(P2011−251391A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128197(P2010−128197)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【出願人】(504279326)株式会社アマダマシンツール (65)
【出願人】(309039347)株式会社アマダマシンツールエムエフジー (5)
【Fターム(参考)】