説明

主翼および調節可能なスラットを備えた航空機用の高揚力システム

主翼と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラットとを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの空気誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記空気誘導路吸気口(20)が、前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置される、航空機用の高揚力システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主翼と、調節装置によって主翼に対して様々な調節状態に調節することができるスラットとを備え、かつ、気流に影響を与える装置を含む、航空機用の高揚力システムに関する。気流に影響を与える装置によって、特に航空機のスラット上の空力騒音の低減が達成される。
【背景技術】
【0002】
離着陸時の十分な揚力の生成を可能にするために、最新の航空機のエーロフォイルは大抵、可変の高揚力装置(スラットおよびフラップ)を含み、その展開は土台形状の調節をもたらし、巡航時や低速飛行速度に最適化される。展開状態では、スラットと主翼の間に間隙ができ、その間隙を通して翼の圧力側から吸込側へかなりの音響放射を伴って空気が加速され移動する。現在、揚力を生成する表面の周りの流れが、着陸進入の際の航空機の騒音発生の大きな原因となっている。
【0003】
スラット周りの気流は再循環領域を作り出すが、この再循環領域は、一方では経路の形態でスラット圧力側によって境界が形成され、他方で自由剪断層によって高速間隙気流から分離される。この自由剪断層の不安定さが離散渦構造の形成をもたらし、次いで、離散渦構造がスラットの下側の第2のよどみ点の方向へ(仮想)分離流線に沿って継続して運ばれる。このよどみ点で気流は2つに分かれ、渦構造の一部は再循環領域に入り、一部は大きく加速されてスラットと主翼の間の間隙を通って流出する。加速した渦の運動、特に間隙からの流出は音波の放射をもたらし、固体壁と、スラットの後縁上を流れるときの自由気流との間の急激なインピーダンスジャンプが、動圧変動の結果として音響変動の生成をもたらす。もしもスラットの後縁が鈍縁であれば、生じる渦とさらに下流で生じる渦経路との相互作用が、騒音の追加原因として言及されなければならない。
【0004】
騒音低減に関する手段は、スラットの形状を再循環領域の形態に合わせて調節することを目指すことができる(変位本体、分離表面、ベローズ)。同様に、自由剪断層に影響を与える装置(ブラシの列)、または音響伝播を減衰させる装置(音響吸収体表面)を提供することもできる。
【0005】
民間機のスラットの空力騒音低減に関する1つの選択肢が、特許文献1から知られている。この構成においては、主翼の外側輪郭と合致するスラットの後方表面には、少なくとも1つの抽気ラインからの圧縮空気によって膨張させることができる中空変位本体(ベローズ)が含まれる。スラットが展開している間にベローズが加圧されると、ベローズは膨張し、隣接する再循環領域の大きさを縮小する。したがって、膨張状態において好適な形状をとることで、展開したスラットにおいて騒音を放射する渦の形成が減少する。
【0006】
特許文献2には、追加翼に取り付けられた剛性または可撓性分離表面を組み込むことについて記載されており、分離表面は、戻り流領域と間隙流の間に延在し、かつ主翼の方向に延在する分離流線に沿って配置され、その配置の結果、間隙流の流れ方向を横切るパルス交換を妨げることができ、結果としてスラットの音発生レベルを低減できる。
【0007】
航空機の追加エーロフォイルの空力騒音を低減するための同様の方法が、特許文献3に記載されている。この構成はn−安定分離表面を含み、n−安定分離表面は、追加エーロフォイルが展開状態にあるときに、作動装置によって間隙の位置まで変位することができ、その位置において、再循環領域と間隙流の間に位置する分離流線に沿って全体的にまたは部分的に延在し、その変位の結果として渦形成および最終的には音響放射を著しく低減できる。
【0008】
特許文献4から、民間機のスラット上の空力騒音を低減するためのさらなる構成が知られており、この構成は、スラット縁に沿って連続して配置したいくつかのブラシを使用して、展開したスラット上に生じる剪断層によってエネルギー交換を減少させる。分離表面を形成するこれらのブラシ列の最終流入抵抗は、気流の方向に繰り返し変化する乱流圧力のさらに穏やかな均等化をもたらし、究極的には剪断層で活発な騒音源メカニズムの弱体化をもたらす。
【0009】
特許文献5には、スラット上および/または主翼上に吸音性材料を使用することで、まだ間隙領域にある間に音波が減衰し、その結果として外に放射される音響エネルギーが縮小される構成が記載されている。
【0010】
騒音低減のためにスラットと主翼の間の間隙に剛体構造(たとえば、剛体の分離表面)を配置する構成では、格納のために必要な運動学的アクチュエータ機構に不具合がある場合に、スラットの主翼への関節連結が妨げられた結果、航空機が高揚力構成に留まる必要がある、というおそれが一般的にある。
【0011】
追加搭載部品を使用すると、基本的には維持費の増加をもたらすという不利益につながる。維持費は、使用されている材料の経年劣化または疲労の結果起こり得る破壊を防止するために、弾性または可動サブアセンブリの場合には特に必要である。疲労は、変動する空力負荷または設計に起因する交番荷重により引き起される場合がある。
【0012】
スラットの輪郭を再循環領域の形状に合致させることを目的とする構成部品の場合、流動条件(たとえば迎角)の急激な変化の結果、変化した境界条件に輪郭を即座に適合させられない限り、好ましくない空力効果が生じ得る。
【0013】
騒音の伝播を減衰させることを目的とする構成では、音響メカニズムに有利に影響を及ぼすことによっては、理論的に可能な程度まで音響放射を低減することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第10019185号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19925560号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102004056537号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10157849号明細書
【特許文献5】米国特許第6,454,219号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高揚力システムにおいて流動騒音を低減する手段を作製することにあり、その方法は設計が簡素であり、作動が安全であるとともに流動条件の変化に対してフレキシブルである一方で、翼上の空気の力に対する前記手段の影響が適度である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は請求項1の特徴によって達せられる。さらなる実施形態が、請求項1の従属請求項に記載される。
本発明は、主翼と、調節装置によって主翼に対して様々な調節状態に調節可能なスラットとを備え、主翼に面するスラットの後部と主翼との間に生じる間隙を伴い、該間隙の寸法が主翼に対するスラットの調節状態により決まる、航空機のための高揚力システムを提供する。スラットの内部には、少なくとも1つの吸気口および少なくとも1つの排気口を備えた空気誘導路が形成され、間隙内の気流に影響を与えるために、吸気口が主翼に面する後部に配置される。
【0017】
この構成では、間隙内の気流に影響を与えるために、流入調節装置によって、主翼に面する後部側に位置する吸気口において流量を調節することができる。流入調節装置は特に、後部に存在する圧力に起因して開閉が可能である閉鎖装置を含むことができる。この趣旨で、流入調節装置は吸気口に配置された開口部を含むことができ、該開口部は、吸気口の閉位置に向かってあらかじめ付勢されており、後部で発生する所定の第1の圧力で開口部が開位置に移行し、一方、後部で発生する所定の第2の圧力で開口部が閉位置に移行するように設定される。
【0018】
これに代えて、またはこれに加えて、流入調節装置は能動的に制御されてもよい。
一般的に言って、流入調節装置は空気誘導路内に、かつ/または吸気口に、かつ/または排気口に配置することができる。
【0019】
吸気口はいくつかの吸気口開口を含むことができる。さらに、吸気口開口は、スラットのスパン方向に沿って一列に配置してもよい。さらに、吸気口開口は、スラットのスパン方向に沿っていくつかの列に配置してもよい。少なくとも1つの吸気口開口は、具体的には、円形の開口であってもよい。具体的には、少なくとも1つの吸気口開口は、長尺状の開口であってもよい。
【0020】
さらに、加えてスラットの後部で、一部が吸収体材料を含んでいてもよい。吸収体材料は後部と一体化した吸収体材料層であってよく、その層では少なくとも1つの吸気口が一体化される。
【0021】
主翼に面した後部において、スラットは、主翼から見たときに凹状に湾曲した領域を含むことができ、該領域に、少なくとも1つの吸気口が配置される。前部と後部の間の位置において、スラットは、その下方領域に、スラットのスパン方向に延在する縁部を含むことができる。
【0022】
排気口は単一の排気口であってもよく、またはいくつかの排気口開口を含んでいてもよい。空気誘導路の排気口はスラットの外部環境に通じていてもよく、またスラットのスパン方向に位置する一端または両端に配置されてもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、排気口は、空気誘導路からスラットの外部環境に通じていてもよく、また後縁に配置されてもよい。さらに、これに代えて、またはこれに加えて、排気口は、空気誘導路からスラットの外部環境に通じていてもよく、またスラットの裏面に位置する縁部に配置してもよい。
【0023】
さらに、接続路が空気誘導路に接続されてもよく、該接続路は、空気誘導路から主翼の内部に通じる。
開放状態と閉鎖状態の間で流入調節装置を調節するために、流入調節装置は、流入調節装置を制御するための制御信号または制御命令を生成する制御機能部を含む制御装置に機能的に接続することができる。
【0024】
この構成では、制御装置は入力装置を含むことができ、該入力装置により、制御装置がセンサデータおよび/またはシステムデータを受信することができる。また、制御機能部は、スラットの調節状態に応じて流入調節装置を開閉するための制御命令を決定することができる。
【0025】
特に、制御装置は入力装置を含むことができ、該入力装置により、制御装置がセンサデータおよび/またはシステムデータを受信することができる。またこの構成では、制御機能部は、センサデータおよび/またはシステムデータに応じて流入調節装置を開閉するための制御命令を決定することができる。
【0026】
制御装置はスラットに組み込まれてもよい。
制御装置の入力装置は、航空機の飛行制御システムからデータを受信するように設計することができ、またこの構成においては、特に、制御機能部が、飛行制御システムからのデータに応じて吸気口を開閉するための制御命令を決定することができる。
【0027】
この構成では、航空機の飛行制御システムから受信したデータはスラットの調節位置を含むことができ、制御機能部は、スラットの調節位置に応じて流入調節装置を開閉するための制御命令を決定する。
【0028】
さらに、制御機能部は、飛行制御システムによって送信された大気データに応じて、流入調節装置のための位置調節命令を決定することができる。この構成では、大気データは、航空機の迎角、および/または速度、および/または航空機の飛行姿勢を表すことができる。
【0029】
流入調節装置の制御装置は、送信された大気データおよび/またはスラットの調節位置と、第1の設定値および第2の設定値とを比較する比較機能部を含むことができ、ある領域で第1の設定値が達成された場合には、制御機能部は流入調節装置を開放するための制御命令を流入調節装置に送信し、またある領域で第2の設定値が達成された場合には、制御機能部は流入調節装置を閉鎖するための作動命令を流入調節装置に送信する。
【0030】
制御装置は航空機胴体内に位置する飛行制御システムのコンピュータに組み込まれてもよく、制御命令は、コマンドラインによって流入調節装置に送信することができる。
さらに、高揚力システムは、気流の静圧を測定するために、スラットの後部に配置され、測定した圧力を制御機能部に送信するために入力装置に機能的に接続される少なくとも1つの圧力センサを含むことができる。制御機能部は、測定した圧力に応じて流入調節装置のための制御信号を決定するように設計される。
【0031】
流入調節装置は、具体的には、空気誘導路内の流動を調節するために空気誘導路内に設けられる1つの弁またはいくつかの弁を利用して実施される。
さらに、吸気口と排気口の間の空気流量に影響を与える少なくとも1つの気流駆動部が、空気誘導路に配置されてもよい。
【0032】
さらに、流入調節装置は、少なくとも1つの圧電アクチュエータによって作動させられることができ、具体的には、圧電アクチュエータによって、1つの、いくつかの、もしくはすべての吸気口、および/または、1つの、いくつかの、もしくはすべての排気口を開閉することができる。少なくとも1つの圧電アクチュエータは、流入調節装置を調節すべく気流の静圧を測定するために、制御装置を用いて、スラットの後部に配置される少なくとも1つの圧力センサに機能的に接続することができる。
【0033】
圧力センサは吸気口および/または排気口に配置することができる。
制御装置は、特に、少なくとも1つの吸気口の圧力と少なくとも1つの排気口の圧力とを比較する比較機能部を含むことができ、比較機能部を基に、流入調節装置のための位置調整信号が測定した差圧に応じて決定される。
【0034】
制御装置は、高揚力フラップの調節を命令する高揚力システムの中央コンピュータに組み込まれてもよい。
さらに、制御装置は、流入調節装置の所望の調節位置を備えた所定の作動データの割り当てを含むテーブルと、比較機能部とを含み、比較機能部により、測定された作動データが比較テーブルに保存された作動データと比較され、もしある領域で一致があれば、個々に関連した所望の調節位置が吸気口調節装置に送信される。
【0035】
本発明によれば、上記実施形態の1つによる高揚力システムを備えた航空機が提供される。この構成では、接続路を胴体内に通じる空気誘導路に接続することができる。
本発明は、スラット上に外部搭載部品を含まない。追加の可動要素は、吸気による除去流量の制御システム(たとえば、弁)に接続されるサブアセンブリに関する。
【0036】
吸気による除去のために必要な差圧が、スラット内の空洞と航空機上の陰圧領域との間の空気誘導接続によって生成できれば、建造費用および加わる重量は比較的少なくなる。
中空のスラットの場合、騒音低減手段の実装は、レトロフィット手段として考えることもできる。
【0037】
この構成は、流動条件のいかなる急激な変化(たとえば、迎角の変化)にも影響を受けない。
もしも吸気による除去が起こらなかった場合でも、騒音放射の増大は別として、結果として負の効果は予期されない。特に、外部搭載部品がない結果、スラットは常に格納可能な状態を保つ。
【0038】
本発明の例示的実施形態は、以下の内容の添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】気流に影響を与える本発明の装置がない場合の、スラットと主翼の間の気流を示す、主翼の一部と該主翼の前に位置する展開した状態のスラットの側断面図。
【図2】気流に影響を与える本発明の装置が存在し作動している場合の、スラットと主翼の間の気流を示す、図1に示す位置における主翼の一部とスラットの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明によれば、主翼と、調節装置によって主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラットとを備えた航空機用の高揚力システムが提供される。スラットは主翼に面する後部1bを含む。後部1bと主翼2の間には間隙5が存在し、間隙5は、主翼2に対するスラット1の調節状態に起因し、結果的には特にスラット1と主翼2との間の距離によって決まる寸法を有する。スラットの内部には、少なくとも1つの吸気口20および排気口を備えた空気誘導路11が設けられる。この構成においては、吸気口20は、間隙5内の気流に影響を与えるように、主翼に面する後部1bに配置される。
【0041】
スラット1内の空洞11は連続していてもよく、または、たとえば、個々の室内における異なる圧力状態によって制御された、吸気により除去される流量の局所的な適応を可能にするために、いくつかの分離した個々の室に分割されていてもよい。
【0042】
図2は、主翼2から展開したスラット1の空力騒音を低減するための構成の例示的実施形態の可能な設計、およびスラットの周りの気流への影響を図式的に示す。描かれた構成の二次元断面は、騒音低減のための本発明の解決法により、スラットに孔を有する内部輪郭が使用され、その構造を介して乱流空気が吸気によって再循環領域9から除去されることを示している。
【0043】
この目的のために、スラットは特に、空気誘導路11として使用される空洞を含む。主翼に面する後部1bに設けられた吸気口20は、連続的な吸気により除去される、孔を通る流量を生成するように、好適な方法を用いて、再循環領域9内の圧力に対して陰圧状態にされる。この構成では、吸入された空気は、少なくとも1つの送気管(図示せず)によって空洞から除去される。
【0044】
本発明によれば、特に、主翼に面する後部1bにおいて吸気により除去される流量は、間隙5内の気流に影響を与えるために、流入調節装置によって調節することができるようにしてもよい。空気誘導路11を通って流れる流量は、該当する場合に吸気口および排気口の開放状態に応じて、および該当する場合には空気誘導路11内で有効な気流駆動部の結果として、または空気誘導路11内で有効ないくつかの気流駆動部の結果として、少なくとも1つの吸気口および少なくとも1つの排気口における気流状態の影響を受ける。
【0045】
この趣旨で、流入調節装置は、後部1bに存在する圧力によって、独立して、すなわち能動的な操作なしで開閉できる閉鎖装置を含んでいてもよい。流入調節装置は、少なくとも1つの吸気口に、かつ/または少なくとも1つの排気口に、かつ/または空気誘導路内に配置することができる。
【0046】
この趣旨で、流入調節装置は吸気口20に配置された開口部を含むことができ、該開口部は、吸気口の閉位置に向かってあらかじめ付勢されており、後部1bで所定の第1の圧力が発生すると開口部が開位置に移行し、後部1bで所定の第2の圧力が発生すると開口部が閉位置に移行するように設定される。
【0047】
さらに、流入調節装置は能動的に制御することができる。この趣旨で、特に、流入調節装置は、空気誘導路11内および/または吸気口に配置することができる。
この構成の作動様式を詳細に説明するために、まず、影響を受けていない基本構成の周りを流動中の音発生メカニズムを図1を参照しながら説明する。一般に、主翼2に面する側であるスラット1の(内)側は、巡航中は主翼の前縁の輪郭に対してヒンジ連結可能な凹状の形状を有する。凸状の外側から凹状の内側への移行部では輪郭3に鋭い屈曲部が生じ、スラット周りの高速流はその輪郭をたどることができない。気流がこの縁部で剥離して自由剪断層6が生じ、自由剪断層6は、かく乱および不安定が原因で渦巻いて離散渦構造8となる。このようにして連続して生じる渦は、スラットの裏面の新たな作用点近くに位置するまで、(仮想)分離流線7に沿った流れで運ばれる。新たな作用点において気流は2つに分かれるが、単純化するために本明細書では一平面における気流についてのみ説明し、スパン方向において生じ得る横方向の気流は無視する。よどみ点に近づく間、渦は中間気流の剪断力にさらされて、縦方向に変形する。この構成では、流入する渦8の一部がよどみ点に到達する寸前に乱流再循環領域9に入り、高速間隙流の結果として、再循環領域9の連続的な回転運動が永久的に維持される。再循環領域内の乱流は再び自由剪断層にかく乱効果を与え、自由剪断層の崩壊を促進して離散渦構造に変える。新たな作用点に近づく渦の残り部分はスラットと主翼の間の間隙5を通して運ばれる。この過程において、渦は、最終的にスラットから出るまでに、スラットの後縁4との相互作用および状況下でその位置で生じる別の渦路10との相互作用を生じながら、著しく加速される。
【0048】
スラットでの相当な騒音発生には様々な原因がある。知られているように、1つの発生メカニズムは、壁近くの非静止状態の渦の運動によって引き起こされる外形表面上の圧力変動(表面原因)による。さらに、間隙を通って運ばれる間の渦の著しい加速が、騒音放射を直接もたらす(音量源)。スラットの後縁を越える渦の流出中の急激なインピーダンスジャンプ(縁部騒音)は、騒音のさらなる重大な原因である。特に、間隙から生じる渦との相互作用により、この位置の下流側で生じる渦路はさらなる騒音源となる。さらに下流側で、間隙を通して排出された渦は主輪郭上の境界層に入り得るため、その位置で追加の表面音を生成し得る。
【0049】
提示された構成の減音効果について説明するために、基本構成(図1)と改変された変形(図2)の間で変化した流れのトポロジの比較をすることが望ましい。両方の場合において、自由剪断層6が再循環領域9と高速間隙流の間に形成され、自由剪断層6から、かく乱と不安定の結果として最終的に離散渦構造8が形成される。スラットの内側の境界層厚さは吸気による除去の結果として減少するため、影響を受けた場合には自由剪断層は薄くなると推定される。吸気による除去の結果として、乱流空気は再循環領域9から除去され、影響を受けていない場合におけるよりも、自由剪断層6の初期発達の妨害において不安定による妨害がより少ない。これら効果が組み合わさって、基本構成と比較すると、より小さな渦構造が形成され、また、渦形成が幾分遅れることになる。スラットの内側の新たな作用点近くの分離流線7の枝分かれによって図1に示されるように、乱流空気はこの点で2つに分かれ、特に、再循環領域9に入らないで間隙5を通って加速され、スラットの後縁を越えて流出する渦は、強い音響放射を引き起こす。
【0050】
間隙5から渦が流出することに起因するこの望ましくない効果は、図2に示される構成によって部分的にまたは完全に回避できる。連続性に関する理由から、再循環領域9から吸気により除去された空気の量は、流れによって供給されなければならない。気流はスラット下縁3において表面形状に起因して剥離するため、スラットのスパン幅方向の端における境界効果の補償を除外するのであれば、空気は分離流線7の変位によって再循環領域へ流れることができるのみである。吸気による除去の結果として起こる分離流線の変位は、吸気除去孔の方向への自由剪断層8からの渦の運搬の増大をもたらし、結果として同時に間隙5を通る渦の放出が減少し、したがって騒音放射が減少する。この構成では、分岐点での渦構造の分離は、吸気により除去される流量によって制御することができる。空気が速く流れる間隙5と比較すると、乱流剪断層7の厚さが薄いため、間隙流量に対する吸気による除去流量の割合が低くても、すなわち空力効果の著しい変化がなくても、騒音低減効果が達成できる。吸気による除去流量がより多い場合には、すべての剪断層渦を再循環領域へ完全に偏向させることが可能である。しかし、吸気による除去流量の制限は、前記構成の空力的影響を制限するためのみ実用にかなっているようである。
【0051】
スラットの吸気口20は、1つの吸気口開口またはいくつかの吸気口開口を含むことができる。複数の吸気口開口が、スラットのスパン方向に沿って一列に配置されてもよい。さらに、複数の吸気口開口が、スラットのスパン方向に沿っていくつかの列をなして配置されてもよい。
【0052】
さらに、少なくとも1つの吸気口開口は円形開口21であってもよい。少なくとも1つの吸気口開口は長尺状の開口であってもよい。
本発明のさらなる実施形態によれば、スラット1の後部1bはさらに、吸収体材料を含む部分を備えていてもよい。
【0053】
もしこの構成において、空気透過性(場合によっては多孔性の)材料が使用された場合、吸気による除去と透過性で局所的に反応する吸収体表面との組合せの結果として、この構成の騒音低減効果を改善することがさらに想像できる。このように、騒音低減との関係で、騒音発生および騒音伝播の双方に有利に影響を与えることが可能になるであろう。
【0054】
スラットは様々な方法で設計することができ、特に吸気口および/または排気口の構成について、様々な方法で設計することができる。この構成では、主翼に面するスラットの後部1bは、主翼から見たときに凹状の湾曲した領域4を含むことができ、領域4には少なくとも1つの吸気口20が配置される。さらに、前部1aと後部1bの間の位置において、スラット1は、その下方領域にスラット1のスパン方向に延在する縁部3を含むことができる。
【0055】
排気口はいくつかの排気口開口を含むことができる。特に、排気口はスラット1の外部環境に通じることができ、この構成ではスラット1のスパン方向における一端または両端に配置することができる。これに代えて、またはこれに加えて、排気口は空気誘導路からスラット1の外部環境に通じることができ、後縁4に配置することができる。
【0056】
排気口は空気誘導路11からスラット1の外部環境に通じることができ、スラットの裏面に位置する縁部に配置することができる。
さらに、接続路を空気誘導路11に接続することができ、該接続路は空気誘導路11から主翼の内部まで通じる。
【0057】
本発明のさらなる例示的実施形態によれば、流入調節装置は、流入調節装置を制御するための位置調整信号または位置調整命令を生成する制御機能部を含む制御装置に機能的に接続することができ、その位置調整信号または位置調整命令によって、流入調節装置を開放状態と閉鎖状態の間で調節することができる。制御装置は入力装置を含むことができ、該入力装置により、制御装置がセンサデータおよび/またはシステムデータを受信することができる。特に、制御機能部はスラットの調節状態に応じて流入調節装置を開閉するための制御命令を決定することができる。
【0058】
さらに、制御装置は入力装置を含むことができ、該入力装置により、制御装置がセンサデータおよび/またはシステムデータを受信することができる。そして、制御機能部はセンサデータおよび/またはシステムデータに応じて流入調節装置を開閉するための位置調整命令を決定することができる。
【0059】
制御装置はスラット1に組み込まれてもよい。
制御装置の入力装置は、航空機の飛行制御システムからのデータを受信する機能を備えることができる。さらに、制御機能部は、飛行制御システムからのデータに応じて、流入調節装置を開閉するための位置調整命令を決定するように、機能的に設計されてもよい。
【0060】
この構成においては、航空機の飛行制御システムによって受信されたデータには、特にスラットの調節位置を含むことができ、制御機能部はさらに、スラットの調節位置に応じて、流入調節装置を開閉するための位置調整命令を決定するように、機能的に設計されてもよい。
【0061】
さらに、制御機能部が、飛行制御システムによって送信された大気データに応じて流入調節装置のための位置調整命令を決定できるようにしてもよい。この構成では、大気データは航空機の迎角、および/または速度、および/または航空機の飛行姿勢を表すことができる。
【0062】
さらに、流入調節装置の制御装置は、送信された大気データおよび/またはスラットの調節位置を第1の設定値および第2の設定値と比較する比較機能を有することができ、ある領域で第1の設定値が達成された場合には、制御機能部は、流入調節装置に対して流入調節装置を開放する制御命令を送信し、またある領域で第2の設定値が達成された場合には、制御機能部は、流入調節装置に対して流入調節装置を閉鎖する制御命令を送信することができる。
【0063】
制御装置は、航空機胴体内に位置する飛行制御システムのコンピュータ内に組み込むことができ、位置調整命令は、コマンドラインを用いて流入調節装置に送信される。
高揚力システムは、気流の静圧を測定するためにスラット1の後部1aに配置される少なくとも1つの圧力センサを含むことができる。圧力センサは、測定した圧力を制御機能部に送信するために入力装置と機能的に接続されていてもよく、制御機能部は、測定した圧力に応じて流入調節装置のための位置調整信号を決定するように設計されてもよい。
【0064】
本発明の実施形態では、流入調節装置は、空気誘導路11を通る流れを調節するために空気誘導路11内に設けられる1つの弁または複数の弁を利用して実施することができる。1つまたは複数の弁は、該弁を能動的に調節するために、記載された別例による制御装置に機能的に接続することができる。これに代えて、またはこれに加えて、弁の調節は、記載されたように受動的に、特に後部1bに存在する圧力に基づいて行うことができる。受動的調節を追加で備えることは、フェイルセーフ作動について安全機能を提供するために特に有利であり得る。
【0065】
本発明の上記実施形態では、空気誘導路11の空気流量は、吸気口と排気口の間の空気流量に影響を与える(すなわち生成するまたは支援する)、少なくとも1つの気流駆動部によって生成することができる。少なくとも1つの気流駆動部は、吸気口と排気口の間において空気誘導路11内に配置することができる。気流駆動部はポンプまたはプロペラであってもよい。この構成では、気流駆動部のための駆動装置は、空気誘導路11の外部に配置してもよい。
【0066】
本発明によれば、流入調節装置は、少なくとも1つの圧電アクチュエータによって作動させられてもよい。
この構成では、少なくとも1つの圧電アクチュエータは、吸気口を開閉するための閉鎖装置または開放装置に構造的に一体化されてもよい。さらに、流入調節装置は、流入調節装置の長手方向に延在する一表面または2つの対向表面に配置された1つまたはいくつかの圧電アクチュエータを含んでいてもよい。この構成では、流入調節装置の長手方向で見たときに、対応して付加された圧電アクチュエータ(位置調整方法の短縮および延長のために設計されている)が流入調節装置の形状、特に湾曲を変化させることができるように、流入調節装置がフレキシブルに設計される。
【0067】
圧電アクチュエータは、たとえば、インターデジタル電極を備えた圧電セラミックファイバーを含む、圧電セラミックホイル、薄板、ウェハーまたはファイバーの形態で設計することができる。いくつかの板状圧電アクチュエータは、順に重ねていくつかの別個の層を形成するように配置することもでき、平坦な板状アクチュエータパッケージ(多層構造としてまたはバイモルファス設計の)を形成するように作製することもできる。
【0068】
この構成では、少なくとも1つの圧電アクチュエータは、本発明による制御装置によって能動的に制御してもよく、あるいは、圧電アクチュエータは、受動回路を利用して実施されてもよく、かつ流入調節装置の動きに基づいて流入調節装置の形状を変化させることができる、すなわち生じた差圧に基づき、記載した方法で自動的に行われる初期運動を拡大する、かつ/または継続することができる。受動回路は、制御装置なしに設計されてもよく、たとえば安全機能部として制御装置を有するように設計されてもよい。この構成では、圧電アクチュエータおよび圧電アクチュエータ同士を接続する回路は、圧電アクチュエータが流入調節装置の縮小方向または拡大方向の初期運動を起因として伸長されるときに、流入調節装置の最初に得られた調節を継続する意味で前記を作動させるために、制御信号を少なくとも圧電アクチュエータのいくつかに送信するように設計される。圧電アクチュエータはまた、たとえば圧電アクチュエータの偏位に対応して変形する対応バーのような、位置調整路拡大要素を含んでいてもよい。
【0069】
特に、流入調節装置を調節すべく気流の静圧を測定するために、圧電アクチュエータは、制御装置を用いて、スラット1の後部1aに位置する少なくとも1つの圧力センサに機能的に接続されてもよい。
【0070】
少なくとも1つの圧力センサを、吸気口および/または排気口に配置することができる。
さらに、制御装置は、少なくとも1つの吸気口における圧力と少なくとも1つの排気口における圧力とを比較する比較機能部を含んでいてもよく、その比較機能部を基にして、流入調節装置のための位置調整信号が、測定した差圧に応じて決定される。
【0071】
制御装置は、高揚力フラップの調節を命令する高揚力システムの中央コンピュータに組み込まれてもよい。
制御装置は、吸気口調節装置の所望の調節位置を含む所定の作動データの割り当てを含むテーブル、および測定された作動データが比較テーブルに保存された作動データと比較し、もしいくつかの領域で一致があれば、個々に関連した所望の調節位置を吸気口調節装置に送信する比較機能部を含むことができる。
【符号の説明】
【0072】
1…スラット、1a…スラットの前部、1b…スラットの後部、2…主翼、3…(スラット1の)下縁、4…(スラット1の)後縁、5…間隙、6…自由剪断層、7…分離流線、8…渦構造、9…再循環領域、10…渦路、11…(スラット1の)空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態により決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記空気誘導路吸気口(20)は、前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置され、流量が、流入調節装置を用いて、前記主翼に面する後部(1b)に設けられた空気誘導路吸気口(20)において調節できる、航空機用の高揚力システムであって、前記流入調節装置は、前記後部(1b)に存在する圧力に起因して開閉することができる閉鎖装置を含むことを特徴とする、高揚力システム。
【請求項2】
前記流入調節装置が前記空気誘導路吸気口(20)に配置された開口部を含み、該開口部は、前記空気誘導路吸気口の閉位置に向かってあらかじめ付勢され、かつ、前記後部(1b)で生じる所定の第1の圧力で前記開口部が開位置に移行する一方で、前記後部(1b)で生じる所定の第2の圧力で前記開口部が前記閉位置に移行するように設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の高揚力システム。
【請求項3】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記誘導路吸気口(20)が前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置され、流量が、流入調節装置を用いて、前記主翼に面する後部(1b)に設けられた空気誘導路吸気口(20)において調節でき、前記流入調節装置が能動的に制御される、航空機用の高揚力システムであって、前記流入調節装置が、前記空気誘導路(11)内、および/または前記空気誘導路吸気口、および/または空気誘導路排気口に配置されることを特徴とする、高揚力システム。
【請求項4】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの空気誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記空気誘導路吸気口(20)が前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置され、流量が、流入調節装置を用いて、前記主翼に面する後部(1b)に設けられた空気誘導路吸気口(20)において調節できる、航空機用の高揚力システムであって、前記誘導路吸気口(20)がいくつかの吸気口開口を含み、かつ/または前記誘導路排気口がいくつかの誘導路排気口開口を含むことを特徴とする、高揚力システム。
【請求項5】
前記吸気口開口が前記スラットのスパン方向に沿って一列に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の高揚力システム。
【請求項6】
前記空気誘導路吸気口開口が前記スラットのスパン方向に沿っていくつかの列に配置されることを特徴とする、請求項4または5に記載の高揚力システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの空気誘導路吸気口開口が円形開口(21)であることを特徴とする、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの空気誘導路吸気口開口が長尺状の開口であることを特徴とする、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項9】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの空気誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記誘導路吸気口(20)が前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置され、流量が、流入調節装置を用いて、前記主翼に面する後部(1b)に設けられた空気誘導路吸気口(20)において調節できる、航空機用の高揚力システムであって、前記スラット(1)の後部(1b)では加えて一部が吸収体材料を含むことを特徴とする、高揚力システム。
【請求項10】
前記吸収体材料が前記スラットの後部(1b)に一体化した吸収体材料層であり、その層内に少なくとも1つの吸気口が一体化されていることを特徴とする、請求項9に記載の高揚力システム。
【請求項11】
前記主翼に面する後部(1b)において、前記スラットが、前記主翼から見たときに凹状に湾曲した領域(4)を含み、該領域(4)に前記少なくとも1つの誘導路吸気口(20)が配置されることを特徴とする、請求項9または10に記載の高揚力システム。
【請求項12】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの空気誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記空気誘導路吸気口(20)が前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置され、流量が、流入調節装置を用いて、前記主翼に面する後部(1b)に設けられた空気誘導路吸気口(20)において調節できる、航空機用の高揚力システムであって、前記スラット(1)の下部領域の前記前部(1a)と前記後部(1b)との間の位置で、前記スラット(1)が該スラット(1)のスパン方向に延在する縁部(3)を含むことができることを特徴とする、高揚力システム。
【請求項13】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの空気誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記空気誘導路吸気口(20)が前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置される、航空機用の高揚力システムであって、前記空気誘導路の空気誘導路排気口は、前記スラット(1)の外部環境に通じ、該スラット(1)のスパン方向に位置する一端または両端に配置されること、および/または前記空気誘導路排気口が前記スラットの外部環境に通じ、前記後縁(4)に配置されること、および/または前記空気誘導路(11)の空気誘導路排気口が前記スラット(1)の外部環境に通じ、該スラットの裏面に形成される縁部に配置されることを特徴とする、高揚力システム。
【請求項14】
接続路が前記空気誘導路(11)に接続され、該接続路が前記空気誘導路(11)から前記主翼の内部に通じることを特徴とする、請求項13に記載の高揚力システム。
【請求項15】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの誘導路吸気口(20)および空気誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記空気誘導路吸気口(20)が前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置され、流量が、流入調節装置を用いて、前記主翼に面する後部(1b)に設けられた空気誘導路吸気口(20)において調節でき、前記流入調節装置は、能動的に制御されるとともに、前記流入調節装置を制御するための位置調整信号または位置調整命令を生成する制御機能部を含む制御装置に接続され、前記位置調整信号または位置調整命令によって、前記流入調節装置が開放状態と閉鎖状態の間で調節することができる、航空機用の高揚力システムであって、
前記制御装置が入力装置を含み、該入力装置によって前記制御装置がセンサデータおよび/またはシステムデータを受信できること、および前記制御装置が、前記スラットの調節状態に応じて前記流入調節装置を制御するための制御信号または制御命令を決定すること、および/または、
前記制御装置が入力装置を含み、該入力装置によって前記制御装置がセンサデータおよび/またはシステムデータを受信できること、および前記制御装置が、センサデータおよび/またはシステムデータに応じて前記空気誘導路吸気口を開閉するための制御信号または制御命令を決定することを特徴とする、高揚力システム。
【請求項16】
前記制御装置が前記スラット(1)内に組み込まれることを特徴とする、請求項15に記載の高揚力システム。
【請求項17】
主翼(2)と、調節装置によって前記主翼に対して様々な調節状態に調節可能であるスラット(1)とを備え、前記主翼(2)に面するスラットの後部(1b)と前記主翼(2)との間に生じる間隙(5)を伴い、該間隙(5)の寸法が、前記主翼(2)に対する前記スラット(1)の調節状態によって決まり、前記スラットの内部に少なくとも1つの空気誘導路吸気口(20)および誘導路排気口を備えた空気誘導路(11)が形成され、前記空気誘導路吸気口(20)が前記間隙(5)内の気流に影響を与えるために前記主翼に面する後部(1b)に配置され、流量が、流入調節装置を用いて、前記主翼に面する後部(1b)に設けられた空気誘導路吸気口(20)において調節できる、航空機用の高揚力システムであって、
前記制御装置の入力装置が、航空機の飛行制御システムからデータを受信するように構成されること、および前記制御装置が、飛行制御システムからのデータに応じて前記吸気口を開閉するための前記制御命令を決定すること、
ならびに/または、
前記航空機の飛行制御システムから受信したデータが前記スラットの調節位置を含むこと、および前記制御装置が前記スラットの調節位置に応じて前記流入調節装置を制御するための制御命令を決定することを特徴とする、高揚力システム。
【請求項18】
前記制御装置が、前記飛行制御システムによって送信された大気データに応じて前記流入調節装置のための前記制御命令を決定することを特徴とする、請求項17に記載の高揚力システム。
【請求項19】
前記大気データが、前記航空機の迎角および/または速度および/または前記航空機の飛行姿勢を示すことを特徴とする、請求項18に記載の高揚力システム。
【請求項20】
前記流入調節装置の制御装置が、送信された大気データおよび/または前記スラットの調節位置と、第1の設定値および第2の設定値とを比較する比較機能部を含み、ある領域で前記第1の設定値に到達した場合には、前記制御装置が前記流入調節装置を開放するための制御命令を前記流入調節装置に送信し、またある領域で前記第2の設定値に到達した場合には、前記制御機能部が前記流入調節装置を閉鎖するための制御命令を前記流入調節装置に送信することを特徴とする、請求項15または17に記載の高揚力システム。
【請求項21】
前記制御装置が航空機胴体内に位置する前記飛行制御システムのコンピュータに組み込まれ、前記制御命令はコマンドラインによって前記流入調節装置に送信されることを特徴とする、請求項15乃至20のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項22】
前記高揚力システムが、前記気流の静圧を測定するために前記スラット(1)の後部(1a)に配置され、測定した圧力を前記制御装置に送信するために前記入力装置に機能的に接続される少なくとも1つの圧力センサを含むこと、および前記制御装置が、前記測定した圧力に応じて前記流入調節装置のための制御信号を決定するように設計されることを特徴とする、請求項15乃至21のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項23】
前記流入調節装置が、前記空気誘導路内の流動を調節するために前記空気誘導路(11)内に設けられた1つの弁またはいくつかの弁を利用して実施されることを特徴とする、請求項22に記載の高揚力システム。
【請求項24】
前記空気誘導路吸気口と前記空気誘導路排気口の間の空気流量に影響を与える少なくとも1つの気流駆動部が、前記空気誘導路(11)内に配置されることを特徴とする、請求項22または23に記載の高揚力システム。
【請求項25】
前記流入調節装置が少なくとも1つの圧電アクチュエータによって作動されることを特徴とする、請求項15乃至24のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項26】
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータが、制御装置を用いて、前記流入調節装置を調節すべく前記気流の静圧を測定するために前記スラット(1)の後部(1a)において前記少なくとも1つの圧力センサに機能的に接続されることを特徴とする、請求項25に記載の高揚力システム。
【請求項27】
前記圧力センサが前記空気誘導路吸気口および/または前記空気誘導路排気口に配置されることを特徴とする、請求項22乃至26のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項28】
前記制御装置が、前記少なくとも1つの空気誘導路吸気口の圧力と前記少なくとも1つの空気誘導路排気口の圧力を比較する比較機能部を含み、該比較機能部に基づき、前記流入調節装置のための制御信号が測定した差圧に応じて決定されることを特徴とする、請求項27に記載の高揚力システム。
【請求項29】
前記制御装置が前記高揚力システムの中央コンピュータに組み込まれ、該中央コンピュータが前記高揚力フラップの調節を命令することを特徴とする、請求項15乃至28のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項30】
前記制御装置が、前記流入調節装置の所望の調節位置を含む所定の作動データの割り当てを含むテーブルと、比較機能部とを含み、該比較機能部によって、測定された作動データが比較テーブルに保存された操作データと比較され、ある領域で一致があれば、個々に関連した所望の調節位置を前記空気誘導路吸気口調節装置に送信することを特徴とする、請求項15乃至29のいずれか一項に記載の高揚力システム。
【請求項31】
請求項1乃至30のいずれか一項に記載の高揚力システムを含む航空機。
【請求項32】
前記空気誘導路(11)に接続された前記接続路が前記胴体に通じることを特徴とする、請求項31に記載の高揚力システムを含む航空機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−506189(P2011−506189A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538496(P2010−538496)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/011042
【国際公開番号】WO2009/080355
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)