説明

乗員保護装置および乗員保護方法

【課題】 側面衝突を検知した時にシートバックを回転させて乗員の拘束力を向上し、乗員をシートと一体に移動させて二次衝突を防止できるようにした乗員保護装置の提供を図る。
【解決手段】 側面衝突を検知した時に、左・右駆動手段20A,20Bは、衝突側のシートレールインナ10cに対して非衝突側のシートレールインナ10cを相対的に車両後方に移動させ、シートバック4の乗員支持面となる前面4aを、これの面直方向が非衝突側に向くように回転させることにより、衝突時に側方から作用する荷重の一部を乗員の背面で受けて負荷面での応力を緩和できるとともに、シートバック4が乗員の背面に確実に干渉してシートバック4から乗員に垂直応力を発生させ、この垂直応力に比例してシートバック4と乗員との間の摩擦力を増加し、これによって乗員拘束能力を向上させて二次衝突を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突に対して乗員を二次衝突から保護する乗員保護装置および乗員保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時には側方から荷重入力されて、車体がその荷重入力方向に沿って変形または移動するが、この側方入力荷重に対して乗員は慣性力により元位置を維持しようとするため、結果的に乗員は相対的に衝突側に移動することになる。
【0003】
このため、側面衝突時に乗員保護を効果的に行うためには、衝突後の車体の側方移動に対して乗員を車体と一体となって運動させ、ドアやその他の車体内装部材との二次衝突を防ぐ必要があり、そのためには、生存空間の確保とともに乗員を非衝突側に車体と一体となって移動させる必要がある。
【0004】
一方、従来ではフロア部に部分的に脆弱なクラッシュスペースを設け、側面衝突時の荷重入力によるクラッシュスペースの変形モードを利用し、シートをルーフサイドレールから遠ざかる方向に移動させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、車幅方向に移動可能なシートレール構造とサイドエアバッグ構造を備え、シートとドアの空間をシートレールの車幅方向移動により確保するとともに、大きな容量のエアバッグにより衝撃を吸収するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−81465号公報(第5−6頁、第1図)
【特許文献2】特開平7−323802号公報(第2−3頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に示す乗員保護装置にあっては、衝突荷重を用いた変形モードコントロールによりシートを移動させて生存空間を確保しようとしているが、このようにシートを移動させた場合にも、乗員とシートバックとの間に働く摩擦力が前述した慣性力より遙かに少ないため、乗員をシート移動に完全に追従させることが困難になる可能性がある。
【0007】
特許文献2に示す乗員保護装置にあっては、シートの側方移動により特許文献1と同様に生存空間を確保できるのであるが、上述したように慣性力によりシートと乗員との間において十分な拘束力が得られないため、シート移動に乗員を追従させることが困難になる可能性がある。
【0008】
また、大容量のエアバッグにより衝撃を吸収する際に、荷重伝達面は主として乗員の側面であり、負荷面積を大きくとることができず、結果的に負荷面の押力が高くなって応力集中部が形成されてしまう。
【0009】
そこで、本発明は側面衝突を検知した時に、車両用シートに着座した乗員の上体を非衝突側に強制的に向けさせることにより、乗員をシートによって効果的に支持させて二次衝突を防止できるようにした乗員保護装置および乗員保護方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の乗員保護装置は、側面衝突を検出若しくは予測して側面衝突を検知し、その側面衝突を検知した時に車両用シートに着座した乗員の上体を、そのシートの乗員支持面によって非衝突側に強制的に向けさせる手段を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乗員保護装置および乗員保護方法によれば、側面衝突を検知した時に、シートの乗員支持面を、これの面直方向が非衝突側に向くように回転させるので、衝突時に側方から作用する荷重の一部を乗員の背面で受けることができ、この背面は側面に比べて面積が大きいため、衝突荷重が加わった場合の負荷面での応力を緩和することができる。
【0012】
また、衝突荷重の入力により車体は非衝突側に向かって側方移動するが、このとき、シートの乗員支持面が回転して水平面内で傾斜することになるため、車体とともにシートが移動する際に、その乗員支持面が乗員の上体を確実に拘束して乗員に垂直応力を発生させる。
【0013】
すると、前記垂直応力に比例してシートと乗員との間の摩擦力が増加し、この摩擦力および前記垂直応力の車幅方向成分が乗員の拘束力として作用するため、側面衝突時の乗員拘束能力を向上させることができ、ひいては、乗員をシートと一体に移動させて二次衝突を防止し、乗員保護を効果的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0015】
図1〜図10は本発明にかかる乗員保護装置の第1実施形態を示し、図1は乗員着座状態にある車両用シートの正面図、図2は車両用シートの骨格構造を示す斜視図、図3は図2中A−A線に沿った拡大断面図、図4は図2中B部の拡大断面図、図5は図2中C−C線に沿った拡大断面図、図6は図2中D部の拡大断面図、図7は側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図8は乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図9は乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図10は側面衝突時における車体の移動速度に対する乗員の移動速度の時間履歴を従来の乗員の移動速度と比較して示す特性図である。
【0016】
この第1実施形態の乗員保護装置は、図1,図2に示すように車両用シート1に適用したもので、この車両用シート1は、車体フロア2に設置されて乗員Mが着座するシートクッション3と、このシートクッション3の後端部から立設して乗員Mの背面を支持するシートバック4と、を備えており、シートバック4の上端中央部にはヘッドレスト5が設けられる。
【0017】
シートクッション3は、図2に示すように骨格となるシートクッションフレーム6を備え、このシートクッションフレーム6は、車幅方向両側部に車両前後方向に延在する左右一対のシートクッションサイドフレーム7L,7Rと、これら一対のシートクッションサイドフレーム7L,7Rに跨って配置された前後一対のシートクッションクロスフレーム8F,8Rと、によって略矩形状に構成される。
【0018】
前記シートクッションサイドフレーム7L,7Rは、それらの車両前後両端部分が前,後脚部9を介して車体フロア2に設けた左右一対のシートレール10L,10Rに結合される。
【0019】
また、シートバック4は、骨格となるシートバックフレーム11を備え、このシートバックフレーム11は、車幅方向両側部に位置して略車両上下方向に延在する左右一対のシートバックサイドフレーム12L,12Rと、これら一対のシートバックサイドフレーム12L,12Rの上端部に跨って配置されたシートバッククロスフレーム13と、によって略門型に形成される。
【0020】
そして、前記シートバックサイドフレーム12L,12Rのそれぞれの下端部は、左右一対のリクライニング装置14L,14Rを介してシートクッションサイドフレーム7L,7Rに取り付けられ、これらリクライニング装置14L,14Rによってシートバック4のリクライニング調整が可能となっている。
【0021】
前記シートレール10L,10Rは、ブラケット10aによって車体フロア2に固定されて、車両前後方向に延在する断面U字状のシートレールアウタ10bと、このシートレールアウタ10bに前後摺動自在に嵌挿されたシートレールインナ10cと、によって構成され、このシートレールインナ10cに前記前,後脚部9が結合してシートクッション3の前後移動が可能となっている。
【0022】
ここで、本発明の乗員保護装置は、側面衝突を検知した時に車両用シート1に着座した乗員Mの上体を、そのシート1の乗員支持面によって非衝突側に強制的に向けさせる強制転回手段を設けてある。
【0023】
前記強制転回手段は、シートクッション3の後端部から立設して乗員Mの背面を支持するシートバック4であり、側面衝突を検知した時に、シートバック4の乗員支持面となる前面4aをこれの面直方向が非衝突側に向くように回転させるシートバック回転手段Rを設けてある。
【0024】
そして、本発明の乗員保護方法では、側面衝突を検出若しくは予測して側面衝突を検知し、その側面衝突を検知した時に、車両用シート1に着座した乗員Mの上体を非衝突側に強制的に向けた状態でシート1に支持させるようにしている。
【0025】
本実施形態では前記シートバック回転手段Rを、前記左右一対のシートレール10L,10Rのうち、衝突側のシートレールに対して非衝突側のシートレールを相対的に車両後方に移動させる前後位置調整機構としてのシートレール駆動手段20によって構成してある。
【0026】
前記シートレール駆動手段20は、図2に示すように左右のシートレール10L,10Rのシートレールインナ10cをそれぞれ独立して駆動する左・右駆動手段20A,20Bで構成してある。
【0027】
即ち、側面衝突を検知した時には左・右駆動手段20A,20Bは、衝突側のシートレールインナ10cに対して非衝突側のシートレールインナ10cを相対的に車両後方に移動させるように駆動する。
【0028】
また、本実施形態では図1に示すように車両用シート1には乗員Mをシートバック4に拘束するプリテンショナー30a付きのシートベルト装置30を備え、そのプリテンショナー30aを前記強制転回手段(シートバック回転手段R)の作動に連動させて作動させ、シートベルト装置30による乗員Mの拘束力を高めるようになっている。
【0029】
また、シートベルト装置30は、緊急ブレーキ時にシートベルトを巻き取るプリクラッシュシートベルトとすることが好ましい。
【0030】
シートベルト装置30は、乗員Mの片方の肩部から反対側の腰部に亘って斜めに拘束するショルダーベルト30bと、乗員Mの腰部を左右に拘束するラップベルト30cとを備え、ショルダーベルト30bの上方は、センタピラー15の上部に設けたスルーリング30dに挿通して下方に案内した後にリトラクタ30eに巻き取るようになっており、このリトラクタ30eに前記プリテンショナー30aが組み込まれる。
【0031】
前記プリテンショナー30aは、一般に知られるように車両衝突(本実施形態では側面衝突を含む)時にシートベルトを瞬時に引き込んで、乗員Mの拘束力を高めるようになっている。
【0032】
また、前記センタピラー15の中間部分の内部には、側面衝突を検知する衝突検知手段31と、この衝突検知手段31によって検知された信号を判断して前記シートバック回転手段Rに制御信号を出力する信号制御手段32と、を設けてある。
【0033】
ところで、前記シートレール駆動手段20は、側面衝突を検知した時に左・右駆動手段20A,20Bの一方が駆動した際に、駆動した側のシートレールインナ10cが後方移動するが、このとき、後方移動したシートレールインナ10cに脚部9を介して連結したシートクッションサイドフレーム7L,7Rも後方移動する。
【0034】
このとき、車幅方向に対向する左・右のシートクッションサイドフレーム7L,7Rが前後方向にずれるとともに、これらシートクッションサイドフレーム7L,7Rの後端部にリクライニング装置14L,14Rを介して連結した左・右のシートバックサイドフレーム12L,12Rも前後方向にずれることになる。
【0035】
従って、本実施形態では左・右のシートクッションサイドフレーム7L,7Rの前後方向のずれを許容するために、図4に示すようにシートクッションクロスフレーム8F,8Rの両端部を、シートクッションサイドフレーム7L,7Rに回動自在に連結するとともに、図3に示すようにシートクッションクロスフレーム8F,8R自体を長さ方向に伸縮可能としてある。
【0036】
即ち、前記シートクッションクロスフレーム8F,8Rは、図3に示すように相互に長さ方向に摺動自在に嵌合されるシートクッションクロスフレームインナ8aとシートクッションクロスフレームアウタ8bとで構成され、これらインナ・アウタ両部材8a,8bの摺動により長さ方向の伸縮が可能となっている。
【0037】
また、前記シートクッションクロスフレーム8F,8Rの両端部は、例えば、図4にインナ8a側に例を取って示すが、シートクッションサイドフレーム7L,7Rから突設したフランジ部7aの上面に前記シートクッションクロスフレーム8F,8Rの端部を載置して、ベアリング16aを設けたピン16を介してそのシートクッションクロスフレーム8F,8Rの端部をフランジ部7aに回転自在に取り付けてある。
【0038】
一方、前記左・右のシートバックサイドフレーム12L,12Rの前後方向のずれを許容するために、図6に示すようにシートバッククロスフレーム13の両端部を、シートバックサイドフレーム12L,12Rに3方向の回転自由度をもって連結するとともに、図5に示すようにシートバッククロスフレーム13自体を長さ方向に伸縮可能としてある。
【0039】
即ち、前記シートバッククロスフレーム13は、図5に示すように相互に長さ方向に摺動自在に嵌合されるシートバッククロスフレームインナ13aとシートバッククロスフレームアウタ13bとで構成され、これらインナ・アウタ両部材13a,13bの摺動により長さ方向の伸縮が可能となっている。
【0040】
また、前記シートバッククロスフレーム13の両端部は、例えば、図6にシートバッククロスフレームインナ13a側に例を取って示すが、シートバッククロスフレーム13の端部とシートバックサイドフレーム12L,12Rとを、ボールジョイント17を介して3方向の回転自由度をもって連結してある。
【0041】
前記シートバッククロスフレーム13にはヘッドレスト5(図1参照)の取付穴13hが形成され、ヘッドレスト5から垂設した取付用の左右一対のステー5a(図5参照)を前記取付穴13hに差込み固定するようになっている。
【0042】
このとき、両端部が回転自在となった前記シートバッククロスフレーム13を、図2に示すように上下2段に設けて、これら2段のシートバッククロスフレーム13によってヘッドレスト5のステー5aを支持することにより、ヘッドレスト5の支持性を確保できるようになっている。
【0043】
ところで、前記車両用シート1には、図1に示すようにシートクッション3の内部に乗員Mが着座しているかどうかを検知する乗員着座検知手段33を設け、この乗員着座検知手段33による検出信号によって乗員Mがそのシート1に着座している場合にのみ前記シートバック回転手段Rを作動するようになっている。
【0044】
また、本実施形態では側面衝突を検知するために衝突検知手段31を設けてあるが、特に、この衝突検知手段31を側面衝突を事前に検知する衝突事前検知手段31Aとして構成することが好ましい。
【0045】
以上の構成により本実施形態の乗員保護装置によれば、図7に示すように通常の走行状態で側面衝突(この場合、左側面衝突として説明する)されると、この側面衝突は図1に示す衝突検出手段31で検出され、その信号が信号制御手段32に送られて、この信号制御手段32からシートレール駆動手段20(シートバック回転手段R)に制御信号を出力するとともに、シートベルト装置30のプリテンショナー30aに作動信号を出力する。
【0046】
この場合、前記信号制御手段32からシートレール駆動手段20に制御信号が出力されることにより、図8に示すように衝突側の駆動手段20Bによりシートレール10Lを前方に移動させるとともに、非衝突側の駆動手段20Aによりシートレール10Rを後方に移動させ、図9に示すように衝突側のシートクッションサイドフレーム7Lに対して非衝突側のシートクッションサイドフレーム7Rを相対的に車両後方に移動させる。
【0047】
このシートクッションサイドフレーム7L,7Rの前後相対移動量は、左・右のリクライニング装置14L,14Rを介してシートバックサイドフレーム12L,12Rに伝達され、図9(a)に示すように衝突側のシートバックサイドフレーム12Lに対して非衝突側のシートバックサイドフレーム12Rを車両後方に相対移動させる。
【0048】
つまり、本実施形態の乗員保護装置は、強制転回手段を設けることにより側面衝突を検知した時に、図9(b)に示すように車両用シート1に着座した乗員Mの上体を、シート1の乗員支持面によって非衝突側に強制的に向けさせることができる。
【0049】
また、本実施形態の乗員保護方法は、側面衝突を検出若しくは予測して側面衝突を検知し、その側面衝突を検知した時に、車両用シート1に着座した乗員Mの上体を非衝突側に強制的に向けた状態でシート1に支持させることができる。
【0050】
このとき、前記強制転回手段をシートクッション3の後端部から立設して乗員Mの背面を支持するシートバック4とし、側面衝突を検知した時に、シートバック回転手段Rによってシートバック4の乗員支持面(前面4a)をこれの面直方向が非衝突側に向くように回転させるので、衝突時に側方から作用する荷重Fの一部を乗員Mの背面Mbで受けることができ、この背面Mbは側面Msに比べて面積が大きいため、衝突荷重Fが加わった場合の負荷面での応力を緩和することができる。
【0051】
また、衝突荷重Fの入力により車体は非衝突側(図9中上方)に向かって側方移動するが、このとき、シートバック4の乗員支持面4aが回転して水平面内で傾斜しているため、車体とともにシートバック4が移動する際に、そのシートバック4が乗員Mの背面Mbに確実に干渉し、シートバック4から乗員Mに垂直応力Pfを発生させる。
【0052】
この垂直応力Pfに比例してシートバック4と乗員Mとの間の摩擦力fが増加し、この摩擦力fおよび前記垂直応力Pfの車幅方向成分が乗員の側方方向の拘束力Rfとして作用するため、側面衝突時の乗員拘束能力を向上させることができ、ひいては、図10に示すように乗員Mをシート1と一体に移動させて二次衝突を防止し、乗員保護を効果的に行うことができる。
【0053】
即ち、図10の側面衝突時の時間履歴では、図中実線に示す乗員速度Mvは図中一点鎖線に示す車体速度Bvにスムーズに追従しており、側面衝突で変形して車室内にドア等の車体側面パネルが侵入する場合にも、この侵入する車体側面パネルに乗員Mが干渉するのを抑制することができる。尚、図10中破線は従来の乗員速度mvを示し、この従来では車体速度Bvに対して大きなタイムラグが発生するため二次衝突を避けるのが困難になる。
【0054】
ところで、本実施形態では前記シートバック回転手段Rをシートレール駆動手段20で構成して、左右一対のシートレール10L,10Rのうち、衝突側のシートレールに対して非衝突側のシートレールを相対的に車両後方に移動させるようにしたので、これらシートレール10L,10Rの相対移動で左・右のシートクッションサイドフレーム7L,7Rを前後相対移動させてシートバック4を回転させることができる。従って、シートクッション3およびシートバック4を全体的に捻ることができるため、乗員Mの腰部に無理な捻れが発生するのを防止することができる。
【0055】
このとき、シートクッションクロスフレーム8F,8Rの両端部を、シートクッションサイドフレーム7L,7Rに回動自在に連結するとともに、シートクッションクロスフレーム8F,8R自体を長さ方向に伸縮可能としてあるので、左・右のシートレール10L,10Rに伴ってシートクッションサイドフレーム7L,7Rを前後相対移動させる際に、シートクッションクロスフレーム8F,8Rがそれらシートクッションサイドフレーム7L,7Rの移動に追従して回転,伸縮するため、これらシートクッションクロスフレーム8F,8Rが支障となることなく、シートクッションフレーム6の剛性を維持しつつスムーズな変形が可能となる。
【0056】
また、シートバッククロスフレーム13の両端部を、シートバックサイドフレーム12L,12Rにボールジョイント17を介して3方向の回転自由度をもって連結するとともに、シートバッククロスフレーム13自体を長さ方向に伸縮可能としたので、シートバックサイドフレーム12L,12Rが前後相対移動する際に、これらの移動に追従してシートバッククロスフレーム13が回転,伸縮するため、このシートバッククロスフレーム13が支障となることなく、シートバックフレーム11の剛性を維持しつつスムーズな変形が可能となる。
【0057】
更に、シートクッション3の内部に、乗員Mが着座しているかどうかを検知する乗員着座検知手段33を設け、この乗員着座検知手段33による検出信号によって乗員Mがそのシート1に着座している場合にのみ前記シートバック回転手段Rを作動するようにしたので、乗員Mが着座していない空席ではシートバック回転手段Rが作動されないので、エネルギーの無駄な消費を無くすことができるとともに、他の席に着座している乗員Mに対して違和感を与えるのを防止できる。
【0058】
更にまた、シートベルト装置30にプリテンショナー30aを備えて、そのプリテンショナー30aをシートバック回転手段Rの作動に連動させて作動させて、シートベルト装置30による乗員Mの拘束力を高めるようにしたので、シートバック4の乗員支持面4aに乗員Mをより確実に拘束することができ、シートバック4の回転による乗員Mの側方拘束力を向上することができるとともに、この向上した側方拘束力により乗員Mがショルダーベルト30bやラップベルト30cからのすり抜けを防止して、シートベルト装置30による拘束を持続させることができる。
【0059】
このとき、前記シートベルト装置30は前記プリテンショナー30aに加えてプリクラッシュシートベルトとすることにより、緊急ブレーキ時にシートベルトを巻き取ることができるので、乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
【0060】
また、衝突検知手段31を、側面衝突を事前に検知する衝突事前検知手段31Aとして構成することにより、シートレール駆動手段20(シートバック回転手段R)を実際の衝突に先がけて作動させることができるため、実際の衝突からシートバック4が回転されるまでのタイムラグを可能な限り減少させることができ、乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
【0061】
図11〜図14は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図11はシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図、図12は側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図13は乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図14は乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【0062】
この第2実施形態の乗員保護装置は、図11に示すようにシートバック回転手段Rを、シートバックサイドフレーム12L,12Rのそれぞれの下端部に設けた左右一対のリクライニング装置14L,14Rのうち、衝突側のリクライニング装置に対して非衝突側のリクライニング装置のリクライニング量を相対的に大きくするリクライニング調整機構34として構成してある。
【0063】
前記リクライニング調整機構34は、第1実施形態と同様に信号制御手段32から出力される制御信号により作動され、左・右のリクライニング装置14L,14Rのリクライニング量が制御され、衝突側のシートバックサイドフレーム12Lに対して非衝突側のシートバックサイドフレーム12Rが大きく後方に傾斜する。
【0064】
また、本実施形態にあっても左・右のシートバックサイドフレーム12L,12Rの前後方向のずれを許容するために、シートバッククロスフレーム13の両端部を、シートバックサイドフレーム12L,12Rにボールジョイント17を介して3方向の回転自由度をもって連結する(図6参照)とともに、シートバッククロスフレーム13自体をインナ13aとアウタ13bによって長さ方向に伸縮可能としてある(図5参照)。
【0065】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、第1実施形態と同様に図12に示すように通常の走行状態で側面衝突(本実施形態にあっても左側面衝突とする)されると、この側面衝突は衝突検出手段31(図1参照)で検出され、その信号が信号制御手段32(図1参照)に送られて、この信号制御手段32からリクライニング調整機構34に制御信号を出力する。
【0066】
すると、図13に示すようにリクライニング調整機構34は、衝突側のリクライニング装置14Lを起立方向にリクライニング制御するとともに、非衝突側のリクライニング装置14Rを倒し方向にリクライニング制御することにより、図14に示すように衝突側のシートバックサイドフレーム12Lに対して非衝突側のシートバックサイドフレーム12Rを車両後方に相対移動させる。
【0067】
従って、図14(b)に示すようにシートバック4の乗員支持面(前面4a)を、これの面直方向が非衝突側に向くように回転させることができ、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
ところで、本実施形態にあってはシートバック回転手段Rを左・右のリクライニング装置14L,14Rを用いたリクライニング調整機構34として構成したので、左・右のリクライニング装置14L,14Rを独立して駆動させるという簡単な構成で本発明を達成することができる。
【0069】
勿論、本実施形態にあっても、第1実施形態に示した乗員着座検知手段33(図1参照)を設けて、乗員Mがそのシート1に着座している場合にのみリクライニング調整機構34を作動することができ、また、プリテンショナー30a付きのシートベルト装置30(図1参照)を設けて、そのプリテンショナー30aを乗員着座検知手段33の作動に連動させて作動することができ、更に、シートベルト装置34をプリクラッシュシートベルトとすることが好ましい。
【0070】
更にまた、衝突事前検知手段31A(図1参照)を設けて、乗員着座検知手段33を実際の衝突に先がけて作動させることが好ましい。
【0071】
図15,図16は本発明の第3実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図15はシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図、図16はシートバック回転手段を(a)の作動開始前と(b)の作動終了後とで示す図15中E部の拡大断面図である。
【0072】
この第3実施形態の乗員保護装置は、図15に示すようにシートバック回転手段Rを、シートバック4の前面4aの非衝突側の突出量よりも衝突側の突出量を相対的に大きくするシートバック形状変化手段35で構成してある。
【0073】
前記シートバック形状変化手段35は、シートバック4内部の車幅方向両側部に車両前方への押し出しを可能にして設けられ、側面衝突を検知した時に衝突側の押し出し量が非衝突側の押し出し量よりも相対的に大きくなる左右一対の押し出し手段35L,35Rによって構成してある。
【0074】
即ち、前記押し出し手段35L,35Rは、図16(a)に示すように前面36aにサポートクッション37を取り付けたサポートクッションフレーム36と、このサポートクッションフレーム36を前後移動可能にそれぞれのシートバックサイドフレーム12L,12Rに支持するX字状のリンクアーム38と、を備えている。
【0075】
リンクアーム38は、中央部を連結するピン38aを中心に開閉自在となり、リンクアーム38の一方の対を成す一端部38b,38cは、サポートクッションフレーム36に形成したスライドレール36bに摺動自在に係合するとともに、対を成す他端部38d,38eはシートバックサイドフレーム12L,12Rに形成したスライドレール12aに摺動自在に係合する。
【0076】
前記他端部38dはモータ39で回転制御されるスクリューシャフト39aに螺合し、スクリューシャフト39aが回転すると、図16(b)に示すように前記他端部38dがもう一方の他端部38e方向に近づいて、リンクアーム38を閉じ方向に回動し、サポートクッションフレーム36をシートバックサイドフレーム12L,12Rから押し出すようになっている。
【0077】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、側面衝突(本実施形態にあっても左側面衝突とする)されると、この側面衝突は衝突検出手段31(図1参照)で検出され、その信号が信号制御手段32(図1参照)に送られて、この信号制御手段32から押し出し手段35L,35Rのモータ39に制御信号を出力する。
【0078】
すると、各押し出し手段35L,35Rのモータ39は回転してサポートクッション37を前方に押し出すが、衝突側の押し出し量が非衝突側の押し出し量よりも相対的に大きく設定されているので、シートバック4の乗員Mを支持する前面4aは、これの面直方向が非衝突側に向くように回転することになり、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
ところで、本実施形態にあっては第1,第2実施形態のようにシート1の骨格を変形させることなく、押し出し手段35L,35Rを付加することによって目的を達成できるため、既存のシート1の利用が可能となってコストを抑えることができる。
【0080】
尚、押し出し手段35L,35Rのモータ39を駆動する際、非衝突側の押し出し手段35Rを非作動として、衝突側の押し出し手段35Lのモータ39のみを駆動することにより、シートバック4の前面4aの回転量を大きくすることができる。
【0081】
勿論、本実施形態にあっても、第1実施形態に示した乗員着座検知手段33(図1参照)を設けるとともに、プリテンショナー30a付きのシートベルト装置30(図1参照)やプリクラッシュシートベルトを設けることが好ましく、更には、衝突事前検知手段31A(図1参照)を設けることが好ましい。
【0082】
図17〜図20は本発明の第4実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図17はシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図、図18はシートバック回転手段を(a)の作動開始前と(b)の作動終了後とで示す図17中F部の拡大断面図、図19は図17中G−G線に沿った拡大断面図、図20は図17中H−H線に沿った拡大断面図である。
【0083】
この第4実施形態の乗員保護装置は、前記第3実施形態と同様に図17に示すようにシートバック回転手段Rを、シートバック4の前面4aの非衝突側の突出量よりも衝突側の突出量を相対的に大きくするシートバック形状変化手段40で構成してある。
【0084】
前記シートバック形状変化手段40は、シートバック4の内部に車幅方向の伸縮を自在にして配置され、その車幅方向両端部がシートバック4の車幅方向両側部に車両前方への押し出しを可能にして取り付けられ、側面衝突を検知した時に衝突側の押し出し量が非衝突側の押し出し量よりも相対的に大きくなるサブシートバックフレーム41によって構成してある。
【0085】
サブシートバックフレーム41は、左・右辺41L,41Rと上・下辺41U,41Dとによって略矩形状に形成され、左・右辺41L,41Rは、図18にも示すようにX字状のリンクアーム42を介してシートバックサイドフレーム12L,12Rに取り付けられる。
【0086】
前記左・右辺41L,41Rは、図19に示すように回転自在にアウターチューブ43が外嵌され、このアウターチューブ43に前記リンクアーム42が取り付けられる。
【0087】
また、前記上・下辺41U,41Dは、図20に示すように中央部で左右に分断されたインナー部材44と、これら分断されたインナ部材44に跨って摺動自在に外嵌するアウター部材44aとで構成し、これら両部材44,44aの相対摺動により長さ方向に伸縮可能となっている。
【0088】
一方、前記リンクアーム42は、第3実施形態のリンクアーム38と略同様の構成となり、中央部を連結するピン42aを中心に開閉自在となり、リンクアーム42の一方の対を成す一端部42b,42cは、アウターチューブ43に形成したスライドレール43aに摺動自在に係合するとともに、対を成す他端部42d,42eはシートバックサイドフレーム12L,12Rに形成したスライドレール12bに摺動自在に係合する。
【0089】
前記シートバックサイドフレーム12L,12Rは、図18に示すようにその内部に内圧発生リンク作動機構45を設け、この内圧発生リンク作動機構45は内圧保持機能を備えたリンク作動ガイド45aを介して前記リンクアーム42の他端部42dに連結してあり、内圧発生リンク作動機構45が作動することにより、図18(b)に示すように前記他端部42dがもう一方の他端部42e方向に近づいて、リンクアーム42を閉じ方向に回動し、サブシートバックフレーム41の左・右辺41L,41Rをシートバックサイドフレーム12L,12Rから押し出すようになっている。
【0090】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、側面衝突(本実施形態にあっても左側面衝突とする)されると、この側面衝突は衝突検出手段31(図1参照)で検出され、その信号が信号制御手段32(図1参照)に送られて、この信号制御手段32からサブシートバックフレーム41の内圧発生リンク作動機構45に制御信号を出力する。
【0091】
すると、サブシートバックフレーム41の左・右辺41L,41Rをシートバックサイドフレーム12L,12Rから押し出すのであるが、衝突側の押し出し量が非衝突側の押し出し量よりも相対的に大きく設定されているので、シートバック4の乗員Mを支持する前面4aは、これの面直方向が非衝突側に向くように回転することになり、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0092】
尚、サブシートバックフレーム41の内圧発生リンク作動機構45を駆動する際、非衝突側を非作動として衝突側のみを駆動することにより、シートバック4の前面4aの回転量を大きくすることができる。
【0093】
ところで、本実施形態にあっても第3実施形態と同様に、シート1の骨格を変形させることなくサブシートバックフレーム41を付加することによって目的を達成できるため、既存のシート1の利用が可能となってコストを抑えることができる。
【0094】
勿論、本実施形態にあっても、第1実施形態に示した乗員着座検知手段33(図1参照)を設けるとともに、プリテンショナー30a付きのシートベルト装置30(図1参照)やプリクラッシュシートベルトを設けることが好ましく、更には、衝突事前検知手段31A(図1参照)を設けることが好ましい。
【0095】
図21〜図23は本発明の第5実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図21は車両用シートの斜視図、図22はシートバック回転手段の背面方向から見た構成図、図23はシートバック回転手段の作動状態を示す背面方向から見た説明図である。
【0096】
この第5実施形態の乗員保護装置は、図21に示すようにシートバック回転手段Rを、シートバック4の前面4aの反力を非衝突側よりも衝突側を相対的に大きくするシートバック反力変化手段46で構成してある。
【0097】
前記シートバック反力変化手段46は、図22に示すようにシートバック4の車幅方向両側部に左右一対配置されて、衝突側の内圧が非衝突側よりも相対的に高く設定される気体封入反力部材としてのエアクッション46L,46Rで構成してある。
【0098】
エアクッション46L,46Rは、気密性可撓膜体で中空の円筒状に形成されてそれぞれに内圧保持制御機構47が設けられ、これら内圧保持制御機構47は圧力導入管48を介して内圧分配制御機能を備えた内圧発生コンプレッサ49に接続してある。
【0099】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、側面衝突(本実施形態にあっても左側面衝突とする)されると、この側面衝突は衝突検出手段31(図1参照)で検出され、その信号が信号制御手段32(図1参照)に送られて、この信号制御手段32から内圧発生コンプレッサ49に制御信号を出力する。
【0100】
すると、内圧発生コンプレッサ49の内圧分配機能により、図23に示すように衝突側のエアクッション46Lの内圧を非衝突側のエアクッション46Rに対して相対的に高くなるように、圧力導入管48と内圧保持制御機構47を通じて分配することにより、衝突側のエアクッション46Lの変形量を小さくし、ひいては、シートバック4の乗員Mを支持する前面4aが、これの面直方向を非衝突側に向くように回転させたのと同様の機能を奏することになる。
【0101】
勿論、本実施形態にあっても、第1実施形態に示した乗員着座検知手段33(図1参照)を設けるとともに、プリテンショナー30a付きのシートベルト装置30(図1参照)やプリクラッシュシートベルトを設けることが好ましく、更には、衝突事前検知手段31A(図1参照)を設けることが好ましい。
【0102】
また、通常時において必要となるエアクッション46L,46Rの反力は、内圧保持制御機構47によってコントロールされて常時内圧を溜めており、また、必要反力が適正値に満たない場合は、適宜内圧分配制御機能を備えた内圧発生コンプレッサ49によって必要内圧を供給するようになっている。
【0103】
図24〜図26は本発明の第6実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図24は車両用シートの斜視図、図25はシートバック回転手段の背面方向から見た構成図、図26はシートバック回転手段の作動状態を示す背面方向から見た説明図である。
【0104】
この第6実施形態の乗員保護装置は、図24に示すように前記第5実施形態と同様にシートバック回転手段Rを、シートバック4の前面4aの反力を非衝突側よりも衝突側を相対的に大きくするシートバック反力変化手段50で構成してある。
【0105】
前記シートバック反力変化手段50は、図25に示すようにシートバック4の車幅方向全幅に亘って複数配置されて、衝突側から非衝突側に向かって内圧が段階的に低く設定される気体封入反力部材としてエアクッション50A〜50Dで構成してある。
【0106】
エアクッション50A〜50Dは、気密性可撓膜体で中空の円筒状に形成されてそれぞれに内圧保持制御機構51が設けられ、これら内圧保持制御機構51は圧力導入管52を介して内圧分配制御機能を備えた内圧発生コンプレッサ53に接続してある。
【0107】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、側面衝突(本実施形態にあっても左側面衝突とする)されると、この側面衝突は衝突検出手段31(図1参照)で検出され、その信号が信号制御手段32(図1参照)に送られて、この信号制御手段32から内圧発生コンプレッサ53に制御信号を出力する。
【0108】
すると、内圧発生コンプレッサ53の内圧分配機能により、図26に示すように衝突側のエアクッション50Aの内圧が最も高く、非衝突側のエアクッション50Dが最も低くなるように、各エアクッション50A,50B,50C,50Dを段階的に内圧制御し、これらエアクッション50A〜50Dの変形が非衝突側から衝突側に向かって徐々に小さくなる。
【0109】
このようにエアクッション50A〜50Dの内圧を制御することにより、シートバック4の乗員Mを支持する前面4aが、これの面直方向を非衝突側に向くように回転させたのと同様の機能を奏することになる。
【0110】
勿論、本実施形態にあっても、第1実施形態に示した乗員着座検知手段33(図1参照)を設けるとともに、プリテンショナー30a付きのシートベルト装置30(図1参照)やプリクラッシュシートベルトを設けることが好ましく、更には、衝突事前検知手段31A(図1参照)を設けることが好ましい。
【0111】
また、本実施形態にあっても前記第5実施形態と同様に、通常時において必要となるエアクッション50A〜50Dの反力は、内圧保持制御機構51によってコントロールされて常時内圧を溜めており、また、必要反力が適正値に満たない場合は、適宜内圧分配制御機能を備えた内圧発生コンプレッサ53によって必要内圧を供給するようになっている。
【0112】
図27〜図30は本発明の第7実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図27はシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図、図28は側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図29は乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図30は乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【0113】
この第7実施形態の乗員保護装置は、図27に示すようにシートバック回転手段Rを、シートバック4とシートクッション3との固定を解除する解除手段54と、シートバック4の下部中央部をシートクッション3に支持しつつ、その支持部を中心としてシートバック4を水平面に沿って回転させる回転運動制御機構55と、で構成してある。
【0114】
勿論、前記回転運動制御機構55でシートバック4を水平面に沿って回転させる方向は、シートバック4の面直方向が非衝突側に向く方向である。
【0115】
即ち、本実施形態ではシートクッションサイドフレーム7L,7Rの後端部近傍にシートクッションクロスフレーム8が部材長軸回りの回転自由度を付与されて支持され、そして、そのシートクッションクロスフレーム8に回転運動制御機構55が支持される。
【0116】
また、リクライニング装置14L,14Rに前記解除手段54を介してシートバックサイドフレーム12L,12Rが支持され、これらシートバックサイドフレーム12L,12Rの下端部近傍に跨ってシートバッククロスフレーム18が部材長軸回りの回転自由度を付与されて支持され、このシートバッククロスフレーム18は前記回転運動制御機構55を介してシートクッションクロスフレーム8に連結してある。
【0117】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、図28に示すように側面衝突(本実施形態にあっても左側面衝突とする)されると、この側面衝突は衝突検出手段31(図1参照)で検出され、その信号が信号制御手段32(図1参照)に送られて、この信号制御手段32から解除手段54と回転運動制御機構55に制御信号を出力する。
【0118】
すると、図29に示すように解除手段54によりシートバック4とシートクッション3との固定を解除するとともに、回転運動制御機構55が作動して、図30に示すようにシートバック4を、これの面直方向が非衝突側に向く方向に回転させることができ、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0119】
勿論、本実施形態にあっても、第1実施形態に示した乗員着座検知手段33(図1参照)を設けるとともに、プリテンショナー30a付きのシートベルト装置30(図1参照)やプリクラッシュシートベルトを設けることが好ましく、更には、衝突事前検知手段31A(図1参照)を設けることが好ましい。
【0120】
図31〜図34は本発明の第8実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図31はシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図、図32は側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図33は乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図、図34は乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【0121】
この第8実施形態の乗員保護装置は、図31に示すようにシートバック回転手段Rを、シートバック4下部の車幅方向両側部に設けられ、固定解除機能を備えて側面衝突を検知した時に非衝突側が固定解除される左右一対のリクライニング装置56L,56Rで構成してある。
【0122】
即ち、リクライニング装置56L,56Rは、シートクッションサイドフレーム7L,7Rとシートバックサイドフレーム12L,12Rとの間に設けられ、リクライニング装置56Lまたは56Rが固定解除されると、シートバックサイドフレーム12Lまたは12Rの支持力が無くなって、乗員Mの背面Mbの荷重で固定解除された側のシートバックサイドフレーム12Lまたは12Rが後方に倒れ、そのリクライニング量が増加される。
【0123】
勿論、前記リクライニング装置56L,56Rは、通常の走行状態では固定状態となって、通常のリクライニング機能が発揮される。
【0124】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、図32に示すように側面衝突(本実施形態にあっても左側面衝突とする)されると、この側面衝突は衝突検出手段31(図1参照)で検出され、その信号が信号制御手段32(図1参照)に送られて、この信号制御手段32から非衝突側のリクライニング装置56Rに制御信号を出力する。
【0125】
すると、図33に示すように非衝突側のリクライニング装置56Rが固定解除されて、図34に示すように非衝突側のシートバックサイドフレーム12Rのリクライニング量が増加し、シートバック4はこれの面直方向が非衝突側に向く方向に捻れ変形する。
【0126】
従って、このように捻れ変形することにより、シートバック4はこれの面直方向が非衝突側に向く方向に回転したと同様になり、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0127】
勿論、本実施形態にあっても、第1実施形態に示した乗員着座検知手段33(図1参照)を設けるとともに、プリテンショナー30a付きのシートベルト装置30(図1参照)やプリクラッシュシートベルトを設けることが好ましく、更には、衝突事前検知手段31A(図1参照)を設けることが好ましい。
【0128】
図35〜図41は本発明の第9実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図35は車両用シートのシートバック内部を透視した分解斜視図、図36はアッパーサブシートバックフレームの組み付け状態を示す図35中I部に対応する正面図であり、図37はアッパーサブシートバックフレームの組み付け状態を示す平面図、図38はアッパーサブシートバックフレームの作動状態を示す斜視図、図39はヘッドレストの作動状態を示す平面図である。
【0129】
また、図40は通常走行状態にある車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図、図41は側面衝突時の車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【0130】
この第9実施形態の乗員保護装置は、強制転回手段を、図35に示すように上下方向に2段に分割されて上段側が下段側に対して車両後方に凸となる水平な湾曲軌跡T1に沿って車幅方向に移動可能な複数のシートバック分割体としてのシートバックベースフレーム61およびアッパーサブシートバックフレーム62を備えたシートバック60とし、側面衝突を検知した時に、上段のアッパーサブシートバックフレーム62を下段のシートバックベースフレーム61に対して相対的に衝突側に移動させるシートバック駆動手段としての第1駆動モータ63を設けてある。
【0131】
前記シートバックベースフレーム61は、シートクッション3のシートクッションサイドフレーム7L,7Rの後端部にリクライニング装置14L,14Rを介して取り付けられ、シートバックベースフレーム61のサイドフレーム61L,61Rの略上半部の前部を切除した段差部61Sに前記アッパーサブシートバックフレーム62が配置され、かつ、そのアッパーサブシートバックフレーム62の上端部にヘッドレスト64が取り付けられる。
【0132】
前記サイドフレーム61L,61Rは、段差部61Sの形成部分において上下2段のアッパー湾曲レール61aおよびロア湾曲レール61bによって連結され、それら湾曲レール61a,61bは前記湾曲軌跡T1に沿った湾曲形状を成して前記アッパーサブシートバックフレーム62が移動可能に取り付けられる。
【0133】
前記アッパーサブシートバックフレーム62は、そのサイドフレーム62L,62Rの下端をベースクロスフレーム62aで連結するとともに、それらサイドフレーム62L,62Rの上半部分を前記湾曲レール61a,61bの間隔と等しい間隔をもってアッパークロスフレーム62bとセンタークロスフレーム62cで連結してあり、それらアッパークロスフレーム62bおよびセンタークロスフレーム62cは、前記湾曲レール61a,61bに沿った湾曲形状として形成される。
【0134】
そして、前記アッパークロスフレーム62bを前記アッパー湾曲レール61aに摺動自在に係合するとともに、前記センタークロスフレーム62cを前記ロア湾曲レール61bに摺動自在に係合し、それらアッパークロスフレーム62bおよびセンタークロスフレーム62cにそれぞれ2個づつ前記第1駆動モータ63を設けてあり、図36に示すようにそれら第1駆動モータ63の回転軸に設けたピニオン63aを前記湾曲レール61a,61bに設けたラックギア63bに噛合させてある。
【0135】
従って、図37に示すように前記第1駆動モータ63が駆動されることによりピニオン63aがラックギア63b上を転動し、図38に示すように前記アッパーサブシートバックフレーム62がシートバックベースフレーム61に対して車幅方向に移動し、このとき、アッパーサブシートバックフレーム62は前記湾曲レール61a,61bの湾曲軌跡T1に沿って移動する。
【0136】
また、この他、本実施形態では強制転回手段を前記ヘッドレスト64ともしてあり、このヘッドレスト64を車両後方に凸となる水平な湾曲軌跡T2に沿って車幅方向に移動可能とし、側面衝突を検知した時に、ヘッドレスト64を衝突側に移動させるヘッドレスト駆動手段としての第2駆動モータ65を設けてある。
【0137】
前記ヘッドレスト64は、図35に示すようにヘッドレストステー64Sを前記アッパーサブシートバックフレーム62のアッパークロスフレーム62bに形成した取付穴62hに上下位置調整可能に挿入することにより、シートバック60の上端部に取り付けられる。
【0138】
ヘッドレスト64は、前記ヘッドレストステー64Sを設けたヘッドレストベースフレーム64Aと、このヘッドレストベースフレーム64Aに移動可能に取り付くヘッドレストサブフレーム64Bと、を備えている。
【0139】
前記ヘッドレストベースフレーム64Aは略矩形状に形成され、その上下辺が前記湾曲軌跡T2に沿ったアッパー湾曲レール64Aaおよびロア湾曲レール64Abとなる一方、前記ヘッドレストサブフレーム64Bは前記ヘッドレストベースフレーム64Aと略同形状となる矩形状に形成され、その上下辺が前記湾曲レール64Aa,64Abに沿って湾曲したアッパーフレーム64Baおよびロアフレーム64Bbとなる。
【0140】
そして、前記アッパーフレーム64Baを前記アッパー湾曲レール64Aaに摺動自在に係合するとともに、前記ロアフレーム64Bbを前記ロア湾曲レール64Abに摺動自在に係合し、それらアッパーフレーム64Baおよびロアフレーム64Bbにそれぞれ前記第2駆動モータ65を設けてあり、図39に示すようにそれら第2駆動モータ65の回転軸に設けたピニオン65aを、前記湾曲レール64Aa,64Abに設けたラックギア65bに噛合させてある。
【0141】
従って、図39に示すように前記第2駆動モータ65が駆動されることによりピニオン65aがラックギア65b上を転動し、前記ヘッドレストサブフレーム64Bが前記ヘッドレストベースフレーム64Aに対して車幅方向に移動し、このとき、ヘッドレストサブフレーム64Bは前記湾曲レール64Aa,64Abの湾曲軌跡T2に沿って移動する。
【0142】
そして、本実施形態の乗員保護装置にあっても第1実施形態と同様に、側面衝突を検知する衝突検知手段31(図1参照)によって検知された信号を信号制御手段32に入力し、その信号制御手段32で側面衝突を判断して前記第1・第2駆動モータ63,65に駆動信号を出力するようになっている。
【0143】
尚、本実施形態では前記信号制御手段32をシートクッション3の下部に内蔵してあり、これは後述する第10,第11実施形態も同様となる。
【0144】
ところで、前記シートバックベースフレーム61、アッパーサブシートバックフレーム62、ヘッドレストベースフレーム64Aおよびヘッドレストサブフレーム64Bは、図35中破線に示すようにクッション材で覆われる。
【0145】
また、図中破線で示すHはハーネスを示し、以下の第10,第11実施形態においても同様である。
【0146】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、図40に示すように通常の走行状態で側面衝突(この場合、左側面衝突として説明する)されると、この側面衝突を衝突検知手段31で検出して信号制御手段32から第1・第2駆動モータ63,65に駆動信号を出力する。
【0147】
第1駆動モータ63が駆動されると、図41(a)に示すようにアッパーサブシートバックフレーム62が湾曲レール61a,61bの湾曲軌跡T1(図35参照)に沿って衝突側、つまり車幅方向左方に移動するとともに、図41(b)に示すように第2駆動モータ65が駆動されると、ヘッドレストサブフレーム64Bがヘッドレストベースフレーム64Aに対して湾曲軌跡T2に沿って衝突側に移動する。
【0148】
従って、前記アッパーサブシートバックフレーム62が湾曲軌跡T1に沿って乗員Mの衝突側の側方に回り込むため、シートバック60のアッパーサブシートバックフレーム62に対応する上段部分60U(図35参照)の乗員支持面が非衝突側に向けられるようになり、第1実施形態で説明したのと同様の機能をもって衝突時に側方から作用する荷重Fの一部を乗員Mの面積が大きい背面で受けて、負荷面での応力を緩和することができる。
【0149】
また、シートバック60の前記上段部分60Uが乗員Mの背面Mbに干渉して発生する垂直応力Pfに比例して摩擦力fが増加するため、乗員Mの側方方向の拘束力Rfにより拘束能力を向上させて、乗員Mをシート1と一体に移動させて二次衝突を防止し、乗員保護を効果的に行うことができる。
【0150】
一方、前記ヘッドレストサブフレーム64Bが湾曲軌跡T2に沿って衝突側に移動することにより、ヘッドレスト64のヘッドレストサブフレーム64Bに対応する頭部支持面(前面)は、乗員Mの頭部Mhの衝突側の側方に回り込むため、シートバック60の上段部分60Uが乗員Mを拘束する前記機能と同様に、ヘッドレスト64によって頭部Mhを確実に拘束することができる。
【0151】
特に、本実施形態ではヘッドレスト64を前記アッパーサブシートバックフレーム62に取り付けたので、ヘッドレストサブフレーム64Bの湾曲移動にアッパーサブシートバックフレーム62の湾曲移動分が加算されるため、ヘッドレスト64の頭部支持面が乗員頭部Mhの側方に回り込む量を大きく稼ぐことができる。
【0152】
ところで、本実施形態にあっても前記衝突検知手段31を、側面衝突を事前に検知する衝突事前検知手段31A(図1参照)として構成することにより、実際の側面衝突に先駆けてシートバック60の上段部分60Uおよびヘッドレスト64の頭部支持面を移動させることができ、実際の衝突時への対応を早めて乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
【0153】
また、本実施形態にあってもシートベルト装置30(図1参照)はプリテンショナー30aに加えてプリクラッシュシートベルトとすることにより、衝突に先駆けて乗員Mをシート1に拘束できるようになり、面直荷重や摩擦力をより向上させて衝突直後の慣性力の側方拘束力への変換効率を向上させることができる。
【0154】
図42〜図45は本発明の第10実施形態を示し、前記第9実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図42は車両用シートの分解斜視図であり、図43は図42中J部に対応する正面図である。
【0155】
また、図44は通常走行状態にある車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図、図45は側面衝突時の車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【0156】
この第10実施形態の乗員保護装置は、基本的に第9実施形態と同様の構成となり、図42に示すようにシートバック分割体を上下方向に3段に分割したアッパーサブシートバックフレーム66とミドルサブシートバックフレーム67とロアサブシートバックフレーム68とで構成し、それらサブシートバックフレーム66,67,68は車両後方に凸となる水平な湾曲軌跡T3に沿って車幅方向に移動可能となっており、その車幅方向の移動量は上段に行くに従って大きく、つまり、ロアサブシートバックフレーム68よりもミドルサブシートバックフレーム67が大きく、かつ、そのミドルサブシートバックフレーム67よりもアッパーサブシートバックフレーム66が大きくなっている。
【0157】
そして、前記各サブシートバックフレーム66,67,68をそれぞれ衝突側に移動させるシートバック駆動手段としての第3,第4,第5駆動モータ70,71,72を設けてある。
【0158】
また、シートバック60Aのシートバックベースフレーム61は、サイドフレーム61L,61Rの上端部から下部に向かって上下3段のアッパー湾曲レール61c、ミドル湾曲レール61dおよびロア湾曲レール61eを連結し、それら湾曲レール61c,61d,61eは前記湾曲軌跡T3に沿った湾曲形状を成して前記各サブシートバックフレーム66,67,68のクロスフレーム66a,67a,68aがそれぞれ移動可能に取り付けられる。
【0159】
そして、前記各クロスフレーム66a,67a,68aは、それぞれ対応する前記各湾曲レール61c,61d,61eに沿った湾曲形状として形成され、アッパーサブシートバックフレーム66のクロスフレーム66aをアッパー湾曲レール61cに摺動自在に係合し、ミドルサブシートバックフレーム67のクロスフレーム67aをミドル湾曲レール61dに摺動自在に係合し、かつ、ロアサブシートバックフレーム68のクロスフレーム68aをロア湾曲レール61eに摺動自在に係合してある。
【0160】
また、図43に示すように前記各サブシートバックフレーム66,67,68の第3〜第5駆動モータ70,71,72の回転軸に設けたピニオン70a,71a,72aを前記各湾曲レール61c,61d,61eに設けたラックギア70b,71b,72bに噛合させてある。
【0161】
従って、前記第3〜第5駆動モータ70,71,72が駆動されることによりピニオン70a,71a,72aがラックギア70b,71b,72bを転動し、各サブシートバックフレーム66,67,68は各湾曲レール61c,61d,61eの湾曲軌跡T3に沿って移動する。
【0162】
また、本実施形態にあっても、アッパーサブシートバックフレーム66に取り付けるヘッドレスト73をも強制転回手段としてあり、そのヘッドレスト73のヘッドレストステー73Sを、アッパーサブシートバックフレーム66に形成した取付穴66hに上下位置調整可能に挿入して取り付けてある。
【0163】
前記ヘッドレスト73は、ヘッドレストステー73Sを設けたヘッドレストベース部73Bと、そのヘッドレストベース部73Bに対して車幅方向に移動可能で乗員頭部Mhの支持面となるヘッドレスト可動部73Mと、によって構成される。
【0164】
ヘッドレストベース部73Bには、ヘッドレストステー73Sに結合されるヘッドレスト駆動手段としての駆動装置74が設けられるとともに、ヘッドレスト可動部73Mにはヘッドレスト湾曲レール73Rが一体に結合され、そのヘッドレスト湾曲レール73Rは、車両後方に凸となる水平な湾曲軌跡T4に沿って形成される。
【0165】
そして、側面衝突を検知した時に、駆動装置74が作動してヘッドレスト湾曲レール73Rとともにヘッドレスト可動部73Mを衝突側に移動させるようになっている。
【0166】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、図44に示すように通常の走行状態で側面衝突(この場合、左側面衝突として説明する)されると、第9実施形態と同様にその側面衝突を衝突検知手段31で検出して信号制御手段32から第3〜第4駆動モータ70,71,72および駆動装置74に駆動信号を出力する。
【0167】
第3〜第5駆動モータ70,71,72が駆動されると、図45に示すようにアッパーサブシートバックフレーム66、ミドルサブシートバックフレーム67およびロアサブシートバックフレーム68が、それぞれ対応するアッパー湾曲レール61c、ミドル湾曲レール61dおよびロア湾曲レール61eの湾曲軌跡T3に沿って衝突側、つまり車幅方向左方に移動するとともに、ヘッドレスト73の駆動装置74が駆動されると、ヘッドレスト可動部73Mがヘッドレストベース部73Bに対して湾曲軌跡T4に沿って衝突側に移動する。
【0168】
このとき、前記各サブシートバックフレーム66,67,68は、車幅方向の移動量が上段に行くに従って大きくなっているので、図45(a),(b)に示すようにアッパーサブシートバックフレーム66が衝突側に最も大きく移動し、次いでミドルサブシートバックフレーム67となり、ロアサブシートバックフレーム68の移動量が最も小さくなっている。
【0169】
従って、前記各サブシートバックフレーム66,67,68が湾曲軌跡T3に沿って上段に行く程大きく乗員Mの衝突側の側方に回り込むため、第9実施形態と同様に衝突時に側方から作用する荷重Fの一部を乗員Mの面積が大きい背面で受けて、負荷面での応力を緩和することができるとともに、垂直応力Pfに比例して摩擦力fを増加してシートバック60Aによる乗員Mの拘束能力を向上させて、乗員Mをシート1と一体に移動させて二次衝突を防止できる。
【0170】
一方、ヘッドレスト可動部73Mが湾曲軌跡T4に沿って衝突側に移動することにより、図45(b)に示すようにヘッドレスト可動部73Mが乗員Mの頭部Mhの衝突側の側方に回り込むため、シートバック60Aの上段部分が乗員Mを拘束する前記機能と同様に、ヘッドレスト64が頭部Mhを確実に拘束することができる。
【0171】
また、本実施形態にあっても第9実施形態と同様にヘッドレスト73を前記アッパーサブシートバックフレーム66に取り付けたので、ヘッドレスト可動部73Mの湾曲移動にアッパーサブシートバックフレーム66の湾曲移動分が加算されるため、ヘッドレスト可動部73Mの頭部支持面が乗員頭部Mhの側方に回り込む量を大きく稼ぐことができる。
【0172】
更に、本実施形態にあっても衝突検知手段31を、側面衝突を事前に検知する衝突事前検知手段31A(図1参照)として構成することにより、実際の側面衝突に先駆けて各サブシートバックフレーム66,67,68およびヘッドレスト可動部73Mを移動させることができ、実際の衝突時への対応を早めて乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
【0173】
更にまた、シートベルト装置30(図1参照)はプリテンショナー30aに加えてプリクラッシュシートベルトとすることにより、衝突に先駆けて乗員Mをシート1に拘束できるようになり、面直荷重や摩擦力をより向上させて衝突直後の慣性力の側方拘束力への変換効率を向上させることができる。
【0174】
図46〜図51は本発明の第11実施形態を示し、前記第10実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図46は車両用シートのシートバック内部を透視した斜視図、図47はシートバック上・下部の固定装置の作動を(a),(b)に順を追って示す図46中K−K線に沿った拡大断面図であり、図48はヘッドレストの内部を透視した斜視図、図49はヘッドレストの作動状態を示す内部を透視した斜視図である。
【0175】
また、図50は通常走行状態にある車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図、図51は側面衝突時の車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【0176】
本実施形態の乗員保護装置は、強制転回手段を、図46に示すように上下方向に2段に分割されて上段側が下段側に対してシートバックセンターCを中心として回転可能な複数のシートバック分割体としてのシートバックアッパーフレーム75およびシートバックロアフレーム76を備えたシートバック60Bとし、側面衝突を検知した時にシートバックアッパーフレーム75およびシートバックロアフレーム76の衝突側を前方に回転させるシートバック駆動手段としての第1・第2回転運動制御機構77,78を設け、上段のシートバックアッパーフレーム75を下段のシートバックロアフレーム76よりも大きく回転させるようにしてある。
【0177】
前記シートバックアッパーフレーム75および前記シートバックロアフレーム76は、図46に示すようにそれぞれ略矩形状に形成され、下段のシートバックロアフレーム76のロアクロスフレーム76Lとシートクッションサイドフレーム7L,7Rの後端部間のシートクッションクロスフレーム8との間に前記第2回転運動制御機構78を配置するとともに、上段のシートバックアッパーフレーム75のロアクロスフレーム75Lと前記シートバックロアフレーム76のアッパークロスフレーム76Uとの間に前記第1回転運動制御機構77を配置してある。
【0178】
また、シートバックアッパーフレーム75とシートバックロアフレーム76の左右両側間に、それら両者間の固定を解除する第1解除手段79を設けるとともに、シートバックロアフレーム76の左右両側とリクライニング装置14L,14Rとの間に、それら両者間の固定を解除する第2解除手段80を設けてある。
【0179】
前記第1・第2解除手段79,80は、例えば第1解除手段79に例をとって図47に示すと、シートバックアッパーフレーム75とシートバックロアフレーム76の両側部に跨って配置され、下端部がシートバックロアフレーム76に取付けボルト79bを中心に回転自在に枢支された固定プレート79aと、その固定プレート79aの上端部を係脱可能にシートバックアッパーフレーム75に係止する係脱ピン79cを備えたアクチュエータ部79dと、によって構成される。
【0180】
更に、本実施形態にあってもシートバックアッパーフレーム75に取り付けるヘッドレスト81を強制転回手段としてあり、そのヘッドレスト81は、図48に示すように車幅方向に延在する直状軌跡T5に沿って移動可能となっており、側面衝突を検知した時に、ヘッドレスト81を衝突側に移動させるヘッドレスト駆動手段としての駆動装置82を設けてある。
【0181】
即ち、前記ヘッドレスト81は、ヘッドレストステー81Sを設けたヘッドレストベース部81Bと、そのヘッドレストベース部81Bに対して車幅方向に移動可能で乗員頭部Mhの支持面となるヘッドレスト可動部81Mと、によって構成される。
【0182】
ヘッドレストベース部81Bには、ヘッドレストステー81Sに結合されるヘッドレスト駆動手段としての駆動装置82が設けられるとともに、ヘッドレスト可動部81Mにはヘッドレスト湾曲レール81Rが一体に結合され、そのヘッドレスト湾曲レール81Rは、車両後方に凸となる水平な湾曲軌跡T5に沿って形成される。
【0183】
そして、側面衝突を検知した時に、駆動装置82が作動してヘッドレスト湾曲レール81Rとともにヘッドレスト可動部81Mを衝突側に移動させるようになっている。
【0184】
従って、本実施形態の乗員保護装置によれば、図50に示すように通常の走行状態で側面衝突(この場合、左側面衝突として説明する)されると、第9実施形態と同様にその側面衝突を衝突検知手段31で検出して信号制御手段32から第1・第2回転運動制御機構77,78と第1・第2解除手段79,80および駆動装置82に駆動信号を出力する。
【0185】
第1・第2解除手段79,80に駆動信号が入力すると、アクチュエータ部79dによって係脱ピン79cがシートバックアッパーフレーム75から離脱されて、シートバックアッパーフレーム75とシートバックロアフレーム76との間、およびシートバックロアフレーム76とリクライニング装置14L,14Rとの間が相対回転自在となる。
【0186】
この状態で第1・第2回転運動制御機構77,78が駆動されると、図51に示すようにシートバックアッパーフレーム75およびシートバックロアフレーム76がシートバックセンターCを中心として乗員支持面(前面)が非衝突側に向くように回転する。
【0187】
このとき、シートバックアッパーフレーム75の回転量がシートバックロアフレーム76よりも大きくなって乗員Mの衝突側の側方に回り込むため、第9実施形態と同様に衝突時に側方から作用する荷重Fの一部を乗員Mの面積が大きい背面で受けて、負荷面での応力を緩和することができるとともに、垂直応力Pfに比例して摩擦力fを増加してシートバック60Bによる乗員Mの拘束能力を向上させて、乗員Mをシート1と一体に移動させて二次衝突を防止できる。
【0188】
一方、駆動装置82に駆動信号が入力されると、図49に示すようにヘッドレスト可動部81Mが直状軌跡T5に沿って衝突側に移動するが、ヘッドレスト81は回転する前記シートバックアッパーフレーム75の上端部に取り付けられているため、結果的に図51(b)に示すようにヘッドレスト可動部81Mは乗員Mの頭部Mhの衝突側の側方に回り込み、ヘッドレスト81によって乗員頭部Mhを確実に拘束することができる。
【0189】
また、本実施形態にあっても衝突検知手段31を、側面衝突を事前に検知する衝突事前検知手段31A(図1参照)として構成することにより、実際の側面衝突に先駆けてシートバックアッパーフレーム75とシートバックロアフレーム76およびヘッドレスト可動部81Mを移動させることができ、実際の衝突時への対応を早めて乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
【0190】
更にまた、シートベルト装置30(図1参照)はプリテンショナー30aに加えてプリクラッシュシートベルトとすることにより、衝突に先駆けて乗員Mをシート1に拘束できるようになり、面直荷重や摩擦力をより向上させて衝突直後の慣性力の側方拘束力への変換効率を向上させることができる。
【0191】
ところで、前記各実施形態では左側面衝突の場合を例にとって作用説明したが、勿論、右側面衝突にあっても衝突側と非衝突側が左右逆になるのみで同様の効果を奏することができる。
【0192】
また、本発明の乗員保護装置は前記第1〜第11実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明の第1実施形態における乗員着座状態にある車両用シートの正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における車両用シートの骨格構造を示す斜視図である。
【図3】図2中A−A線に沿った拡大断面図である。
【図4】図2中B部の拡大断面図である。
【図5】図2中C−C線に沿った拡大断面図である。
【図6】図2中D部の拡大断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態における側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態における乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態における乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態における側面衝突を検知した時における車体の移動速度に対する乗員の移動速度の時間履歴を従来の乗員の移動速度と比較して示す特性図である。
【図11】本発明の第2実施形態におけるシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図である。
【図12】本発明の第2実施形態における側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態における乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図14】本発明の第2実施形態における乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図15】本発明の第3実施形態におけるシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図である。
【図16】本発明の第3実施形態におけるシートバック回転手段を(a)の作動開始前と(b)の作動終了後とで示す図15中E部の拡大断面図である。
【図17】本発明の第4実施形態におけるシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図である。
【図18】本発明の第4実施形態におけるシートバック回転手段を(a)の作動開始前と(b)の作動終了後とで示す図17中F部の拡大断面図である。
【図19】図17中G−G線に沿った拡大断面図である。
【図20】図17中H−H線に沿った拡大断面図である。
【図21】本発明の第5実施形態における車両用シートの斜視図である。
【図22】本発明の第5実施形態におけるシートバック回転手段の背面方向から見た構成図である。
【図23】本発明の第5実施形態におけるシートバック回転手段の作動状態を示す背面方向から見た説明図である。
【図24】本発明の第6実施形態における車両用シートの斜視図である。
【図25】本発明の第6実施形態におけるシートバック回転手段の背面方向から見た構成図である。
【図26】本発明の第6実施形態におけるシートバック回転手段の作動状態を示す背面方向から見た説明図である。
【図27】本発明の第7実施形態におけるシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図である。
【図28】本発明の第7実施形態における側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図29】本発明の第7実施形態における乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図30】本発明の第7実施形態における乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図31】本発明の第8実施形態におけるシートバックの骨格を透視して示す車両用シートの斜視図である。
【図32】本発明の第8実施形態における側面衝突検出時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図33】本発明の第8実施形態における乗員保護装置の作動開始時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図34】本発明の第8実施形態における乗員保護装置の作動終了時における車両用シートの状態を(a)に骨格と(b)に乗員着座状態で示す平面図である。
【図35】本発明の第9実施形態における車両用シートのシートバック内部を透視した分解斜視図である。
【図36】本発明の第9実施形態におけるアッパーサブシートバックフレームの組み付け状態を示す図35中I部に対応する正面図である。
【図37】本発明の第9実施形態におけるアッパーサブシートバックフレームの組み付け状態を示す平面図である。
【図38】本発明の第9実施形態におけるアッパーサブシートバックフレームの作動状態を示す斜視図である。
【図39】本発明の第9実施形態におけるヘッドレストの作動状態を示す平面図である。
【図40】本発明の第9実施形態における通常走行状態にある車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【図41】本発明の第9実施形態における側面衝突時の車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【図42】本発明の第10実施形態における車両用シートの分解斜視図である。
【図43】図42中J部に対応する正面図である。
【図44】本発明の第10実施形態における通常走行状態にある車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【図45】本発明の第10実施形態における側面衝突時の車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【図46】本発明の第11実施形態における車両用シートのシートバック内部を透視した斜視図である。
【図47】本発明の第11実施形態におけるシートバック上・下部の固定装置の作動を(a),(b)に順を追って示す図46中K−K線に沿った拡大断面図である。
【図48】本発明の第11実施形態におけるヘッドレストの内部を透視した斜視図である。
【図49】本発明の第11実施形態におけるヘッドレストの作動状態を示す内部を透視した斜視図である。
【図50】本発明の第11実施形態における通常走行状態にある車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【図51】本発明の第11実施形態における側面衝突時の車両用シートを(a)にヘッドレストを外したシートのみと(b)に乗員がシートに着座した状態でそれぞれ示す平面図である。
【符号の説明】
【0194】
1 車両用シート
2 車体フロア
3 シートクッション
4 シートバック
4a シートバックの前面(乗員支持面)
61L,61R シートクッションサイドフレーム
8F,8R シートクッションクロスフレーム
10L,10R シートレール
12L,12R シートバックサイドフレーム
13 シートバッククロスフレーム
14L,14R リクライニング装置
20 シートレール駆動手段
30 シートベルト装置
30a プリテンショナー
31 衝突検知手段
31A 衝突事前検知手段
33 乗員着座検知手段
34 リクライニング調整機構
35 シートバック形状変化手段
35L,35R 押し出し手段
40 シートバック形状変化手段
41 サブシートバックフレーム
46 シートバック反力変化手段
46L,46R エアクッション(気体封入反力部材)
50 シートバック反力変化手段
50A〜50D エアクッション(気体封入反力部材)
54 解除手段
55 回転運動制御機構
56L,56R リクライニング装置
60,60A,60B シートバック
61 シートバックベースフレーム(シートバック分割体)
61a アッパー湾曲レール(湾曲軌跡)
61b ロア湾曲レール(湾曲軌跡)
61c アッパー湾曲レール(湾曲軌跡)
61d ミドル湾曲レール(湾曲軌跡)
61e ロア湾曲レール(湾曲軌跡)
62 アッパーサブシートバックフレーム(シートバック分割体)
63 第1駆動モータ(シートバック駆動手段)
64 ヘッドレスト
64Aa アッパー湾曲レール(湾曲軌跡)
64Ab ロア湾曲レール(湾曲軌跡)
65 第2駆動モータ(ヘッドレスト駆動手段)
66 アッパーサブシートバックフレーム(シートバック分割体)
67 ミドルサブシートバックフレーム(シートバック分割体)
68 ロアサブシートバックフレーム(シートバック分割体)
70 第3駆動モータ(シートバック駆動手段)
71 第4駆動モータ(シートバック駆動手段)
72 第5駆動モータ(シートバック駆動手段)
73 ヘッドレスト
73R ヘッドレスト湾曲レール(湾曲軌跡)
74 駆動装置(ヘッドレスト駆動手段)
75 シートバックアッパーフレーム(シートバック分割体)
76 シートバックロアフレーム(シートバック分割体)
77 第1回転運動制御機構(シートバック駆動手段)
78 第2回転運動制御機構(シートバック駆動手段)
81 ヘッドレスト
82 駆動装置(ヘッドレスト駆動手段)
M 乗員
R シートバック回転手段
C シートバックセンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面衝突を検知した時に車両用シートに着座した乗員の上体を、そのシートの乗員支持面によって非衝突側に強制的に向けさせる強制転回手段を設けたことを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
強制転回手段は、シートクッションの後端部から立設して乗員の背面を支持するシートバックであり、側面衝突を検知した時に、シートバックの乗員支持面をこれの面直方向が非衝突側に向くように回転させるシートバック回転手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
シートバック回転手段は、シートクッションの車幅方向両側部を車体フロアに前後移動可能に支持する左右一対のシートレールのうち、衝突側のシートレールに対して非衝突側のシートレールを相対的に車両後方に移動させる前後位置調整機構であることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
シートバック回転手段は、シートバック下部の車幅方向両側部にそれぞれ設けられてリクライニング角度を調整する左右一対のリクライニング装置のうち、衝突側のリクライニング装置に対して非衝突側のリクライニング装置のリクライニング量を相対的に大きくするリクライニング調整機構であることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
シートバック回転手段は、シートバック前面の非衝突側の突出量よりも衝突側の突出量を相対的に大きくするシートバック形状変化手段であることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
シートバック回転手段は、シートバック前面の反力を非衝突側よりも衝突側を相対的に大きくするシートバック反力変化手段であることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
シートバック回転手段は、シートバックとシートクッションとの固定を解除する解除手段と、シートバックの下部中央部をシートクッションに支持しつつ、その支持部を中心としてシートバックを水平面に沿って回転させる回転運動制御機構と、からなることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項8】
シートバック回転手段は、シートバック下部の車幅方向両側部に設けられ、固定解除機能を備えて側面衝突を検知した時に非衝突側が固定解除される左右一対のリクライニング装置であることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項9】
シートクッションの骨格を成すシートクッションフレームを、車幅方向両側部に位置して車両前後方向に延在する左右一対のシートクッションサイドフレームと、これら一対のシートクッションサイドフレームに跨って配置され、両端部がそれらサイドフレームに回動自在に連結されるとともに、長さ方向に伸縮可能なシートクッションクロスフレームと、で形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の乗員保護装置。
【請求項10】
シートバックの骨格を成すシートバックフレームを、車幅方向両側部に位置して略車両上下方向に延在する左右一対のシートバックサイドフレームと、これら一対のシートバックサイドフレームに跨って配置され、両端部がそれらサイドフレームに3方向の回転自由度をもって連結されるとともに長さ方向に伸縮可能なシートバッククロスフレームと、で形成したことを特徴とする請求項2,3または9のいずれか1つに記載の乗員保護装置。
【請求項11】
シートバック形状変化手段は、シートバック内部の車幅方向両側部に車両前方への押し出しを可能に設けられ、側面衝突を検知した時に衝突側の押し出し量が非衝突側の押し出し量よりも相対的に大きくなる左右一対の押し出し手段であることを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項12】
シートバック形状変化手段は、シートバック内部に車幅方向の伸縮を自在にして配置され、かつ、その車幅方向両端部がシートバックの車幅方向両側部に車両前方への押し出しを可能に取り付けられ、側面衝突を検知した時に衝突側の押し出し量が非衝突側の押し出し量よりも相対的に大きくなるサブシートバックフレームであることを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項13】
シートバック反力変化手段は、シートバックの車幅方向両側部に左右一対配置されて、衝突側の内圧が非衝突側よりも相対的に高く設定される気体封入反力部材であることを特徴とする請求項6に記載の乗員保護装置。
【請求項14】
シートバック反力変化手段は、シートバックの車幅方向全幅に亘って複数配置されて、衝突側から非衝突側に向かって内圧が段階的に低く設定される気体封入反力部材であることを特徴とする請求項6に記載の乗員保護装置。
【請求項15】
強制転回手段は、上下方向に複数段に分割されて上段側が下段側に対して車両後方に凸となる水平な湾曲軌跡に沿って車幅方向に移動可能な複数のシートバック分割体を備えたシートバックであり、側面衝突を検知した時に、上段のシートバック分割体を下段のシートバック分割体に対して相対的に衝突側に移動させるシートバック駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項16】
強制転回手段は、上下方向に複数段に分割して上段側が下段側に対してシートバックセンターを中心として回転可能な複数のシートバック分割体を備えたシートバックであり、側面衝突を検知した時に、上段のシートバック分割体を下段のシートバック分割体に対して相対的に衝突側を前方に回転させるシートバック駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項17】
強制転回手段は、車両後方に凸となる水平な湾曲軌跡に沿って車幅方向に移動可能なヘッドレストであり、側面衝突を検知した時に、ヘッドレストを衝突側に移動させるヘッドレスト駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項18】
強制転回手段は、車幅方向に延在する直状軌跡に沿って移動可能なヘッドレストであり、側面衝突を検知した時に、ヘッドレストを衝突側に移動させるヘッドレスト駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項19】
シートに乗員が着座しているかどうかを検知する乗員着座検知手段を設け、この乗員着座検知手段による検出信号によって乗員がそのシートに着座している場合にのみ強制転回手段を作動することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1つに記載の乗員保護装置。
【請求項20】
乗員をシートバックに拘束するプリテンショナー付きのシートベルト装置を備え、そのプリテンショナーを強制転回手段の作動に連動させて作動させることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1つに記載の乗員保護装置。
【請求項21】
シートベルト装置は、緊急ブレーキ時にシートベルトを巻き取るプリクラッシュシートベルトであることを特徴とする請求項20に記載の乗員保護装置。
【請求項22】
側面衝突を事前に検知する衝突事前検知手段を設け、前記強制転回手段を実際の衝突に先がけて作動させることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1つに記載の乗員保護装置。
【請求項23】
側面衝突を検出若しくは予測して側面衝突を検知し、その側面衝突を検知した時に、車両用シートに着座した乗員の上体を非衝突側に強制的に向けた状態でシートに支持させることを特徴とする乗員保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【公開番号】特開2006−143173(P2006−143173A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210165(P2005−210165)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】