説明

乗員拘束装置

【課題】乗員が装着したシートベルトのプリテンショナ動作時に、シートベルトと乗員との間のスラックを効率よく取り除きつつ、シートベルトで乗員を確実に拘束する。
【解決手段】乗員拘束装置220が、第1の端部と第2の端部とを有する、乗員19を拘束するシートベルトウェビング11と、第2の端部を定着するためのアンカー部材240と、第1膨張室225と、第2膨張室227とを有し、インフレータと膨張可能な袋体とを有する、膨張可能なプリテンショナ221とを備え、インフレータは、第1膨張室225と第2膨張室227とを膨張させるように形成され、第1膨張室225は、保持された乗員19を拘束するためのウェビング11にプリテンショニングをもたらすように膨張、展開し、第2膨張室227は、乗員19を拘束するために膨張、展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、広く乗員の拘束または安全装置の分野に係り、特にアクティブ乗員拘束装置のウェビングに対してプリテンションを付与する膨張可能なプリテンショナを有するように構成されたアクティブ乗員拘束装置に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
開示された実施例によれば、乗員拘束装置は、車両の乗員を拘束可能に構成されている。この乗員拘束装置は、第1の端部と、第2の端部とを有する、ウェビングで乗員を拘束するシートベルトウェビングと、ウェビングの第2の端部を定着する部材と、インフレータと、第1膨張室と、第2膨張室とを有する膨張可能な袋体とを有するプリテンショナとを備える。インフレータは、第1膨張室と、第2膨張室とを膨張させるように構成されている。第1膨張室は、保持された乗員を拘束するために、ウェビングにプリテンショニングを導入するための膨張展開するように構成され、第2膨張室は、乗員を拘束するために膨張展開するように構成されている。
【0003】
他の開示された実施例によれば、膨張可能なプリテンショナは、その位置に保持された乗員の拘束を改善するために、乗員拘束装置のシートベルトウェビングにプリテンショニングを導入するように構成されている。この膨張可能なプリテンショナは、少なくとも1個の膨張室と少なくとも1個の非膨張部と、前記袋体の少なくとも1個の膨張室を膨張させるためのインフレータとを有する膨張可能な袋体を備えている。この少なくとも1個の非膨張部は、第1の孔及び第2の孔を有し、この状態で、ウェビングが、袋体をウェビングに対してスライド可能に取り付けるように、第1の孔と第2の孔とを通過するようになっている。これにより、ウェビングの配置は、ウェビングの長さ方向に対して横切るように、少なくとも1個の膨張室に対して保持され、また、少なくとも1個の膨張室が膨張することにより、保持された乗員を拘束するためのプリテンショニングが導入される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、自動車を示した斜視図。
【図2】図2は、従来のプリテンショナを有するアクティブ乗員拘束装置を包含するように構成されたシート装置を示した斜視図。
【図3】図3は、収容され、あるいは畳まれた状態が示された膨張可能なプリテンショナを備え、図1に示したような自動車内に装備されたアクティブ乗員拘束装置を有するシート装置の好適な実施例を示した斜視図。
【図4】図4は、展開あるいは膨張状態を示す、一体的な膨張可能なプリテンショナを有するアクティブ乗員拘束装置の好適な実施例を示した斜視図。
【図5】図5は、展開あるいは膨張状態を示す、一体的な膨張可能なプリテンショナと腿部エアバッグとを有するアクティブ乗員拘束装置の好適な、他の実施例を示した斜視図。
【図6】図6は、一体化したエアバッグ(例えば腿部)と膨張可能なプリテンショナの好適な実施例の側面図。
【図7】図7は、一体化したエアバッグ(例えば腿部)と膨張可能なプリテンショナの他の好適な実施例の側面図。
【図7A】図7の断面線7A-7Aに沿って示した断面図。
【図8】図8は、一体化したエアバッグ(例えば腿部)と膨張可能なプリテンショナの好適な実施例の側面図。
【図8A】図8Aは、図8の断面線8A-8Aに沿って示した断面図。
【図9】図9は、一体化した膨張可能なプリテンショナと腿部組立体において使用する部材の好適な実施例の側面図。
【図9A】図9Aは、図9の断面線9A-9Aに沿って示した断面図。
【図10】図10は、図8に示した、一体化した膨張可能なプリテンショナと腿部組立体の膨張、展開状態を示した側面図。
【図10A】図10Aは、図10の断面線10A-10Aに沿って示した断面図。
【図11】図11は、一体化したエアバッグ(例えば腿部)と膨張可能なプリテンショナの他の好適な実施例の側面図。
【図11A】図11Aは、一体化したエアバッグ(例えば腿部)の第1の膨張部位と、膨張可能なプリテンショナ組立体とが折り畳まれ、収容された状態を示した、図11の断面線11A-11Aに沿って示した断面図。
【図12】図12は、一体化した膨張可能なプリテンショナと腿部組立体に用いられる、アンカー部材と案内部材との好適な実施例の側面図。
【図12A】図12Aは、図12の断面線12A-12Aに沿って示した断面図。
【図13】図13は、図11に示した、一体化した膨張可能なプリテンショナと腿部組立体の膨張、展開状態を示した側面図。
【図13A】図13Aは、図13の断面線13A-13Aに沿って示した断面図。
【図14】図14は、例えば図4に示した膨張可能なプリテンショナに用いられる部材に連結されるロック機構の好適な実施例の上面を示した図。
【図14A】図14Aは、図14の断面線14A-14Aに沿って示したロック機構の断面図。
【図15】図15は、ウェビングのプリテンショニングを許容する非ロック位置に設定されたロック機構に伴って展開した状態を示した膨張可能なプリテンショナの側面図。
【図16】図16は、ウェビングの引き出しを禁止するロック位置に設定されたロック機構に伴って展開した状態を示した膨張可能なプリテンショナの側面図。
【図17】図17は、結合されたウェビングのない状態を示した他の膨張可能なプリテンショナの側面図。
【図18】図18は、部材に連結されるとともに袋体にスライド可能に連結されたウェビングと、図17に示した第1膨張室が収容された状態とを示した側面図。
【図19】第1膨張室が展開あるいは膨張した状態を示した、図18の膨張可能なプリテンショナの側面図。
【図20】図20は、インフレータと、ロック機構と有する状態を示した図17の膨張可能なプリテンショナの部材の側面図。
【図21】図21は、図18の断面線21-21に沿って示した断面図。
【図22A】膨張可能なプリテンショナの好適な他の実施例として示した図19の断面線22-22に沿って示した断面図。
【図22B】膨張可能なプリテンショナの好適な他の実施例として示した図19の断面線22-22に沿って示した他の断面図。
【図22C】膨張可能なプリテンショナの好適な、さらに他の実施例として示した図19の断面線22-22に沿って示した、さらに他の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0005】
アクティブ乗員拘束装置は、一般に車両のシート装置に着座した状態で保持された乗員に拘束をもたらす。図2に示したように、従来のアクティブ乗員拘束装置10は、シートベルトウェビング11、リトラクター機構12、D−リング13、バックル機構14、バックル機構14に係止可能なトング部材15と、従来のプリテンショナ16aを有するアンカー組立体16とから構成されている。シートベルトウェビング11はリトラクタ機構12に結合される第1の端部11aと、アンカーとプリテンショナ組立体16とに結合される、第2の端部11bとを有するように、柔軟性を有するナイロン織布から作られている。第1の端部11aおよび第2の端部11bとの間において、ウェビング11は、車両例えばBピラーに取り付けられたD−リング13を通じてトング13に結合される経路をとることが好ましい。これにより、ウェビング11はトング部材15とD−リング13とにスライド可能に結合される。D−リング13とトング部材15との間のウェビング11部分は胴部(例えば肩部)Sを形成し、その経路は、例えば車両の正面衝突時において乗員の胸部または胴部を拘束することにより、乗員19にアクティブ拘束を提供するために、乗員19の胴部の上側を通ることを意味する。トング部材15とアンカーおよびプリテンショナ組立体16との間のウェビング11部分は腿部Lを形成する。その経路は、車両の動的な事故において、乗員の腿部を拘束することにより、乗員19を拘束することができるように、乗員の腿部の上を通る。典型的には、乗員拘束装置10の通常の動作において、乗員19と腿部Lと肩部Sとの間には、乗員19を拘束するのに快適性をもたらすようなわずかなスラック(弛み)が設けられている。
【0006】
車両の動的な事故において、従来のリトラクター機構12はアクティブ乗員拘束装置10のウェビング11が伸びたり、繰り出されたりするのを制限あるいは禁止することができ、さらに火薬装置等を備えた装置を有する場合には、この装置によってウェビング11の巻き取り、繰り出しとが行われることで、乗員19と肩部Sのウェビング11との間のスラックが取り除かれる。また、車両の動的な事故において、従来のプリテンショナ16を有するアンカー組立体16は、火薬装置等を用いた能動的な装置を有するため、この装置が作動した際に、乗員19とウェビング11の腿部Lとの間のスラックが取り除かれる。従来のアンカー組立体16のプリテンショナはピストン及びピストン室を有しており、火薬の動作が生じた際に、発生ガスはその装置内に充満し、ウェビング11の腿部Lに所定の張力を生じさせる方向にピストンが駆動させるような圧力が発生する。このとき第2の端部11bはピストンに支持されるため、ピストンの動作により乗員19とウェビング11の腿部Lとの間のスラックは取り除かれる。乗員拘束装置10と乗員19との間のスラックを減少させることにより、乗員19の実際の拘束に先だって乗員19の身体のブレ等を拘束を許容することにより、乗員19の安全性を改善することができる。このように乗員を拘束する際に、乗員の動きを減じ、すなわち乗員19に加わる反作用を軽減していた。
【0007】
図3〜図22を全般的に参照することで、ウェビングの腿部に隣接した位置にある膨張可能な袋体を通じて、車両の動的な事故において、シートベルトウェビングのプリテンショニングを提供することにより、乗員の安全性の向上が提供される乗員拘束装置が明らかにされる。この乗員安全装置は、さらに、例えば腿部エアバック袋体のような膨張エアバック袋体を、乗員または乗員の特定の部位を保護するために組み込むことができ、これにより乗員安全装置は、アクティブ乗員拘束装置のシートベルトウェビングのプリテンショニングをもたらし、また膨張可能な袋体により、乗員の受動的拘束も提供できる。
【0008】
図1は、乗員19を着座させるのに好ましいシート装置(座席装置)18を少なくとも1個有する乗員区画を備える、車両9の好適な実施例を示している。この車両9は、さらにアクティブ乗員拘束装置20を有し、この装置はシート装置内(すなわち、乗員拘束装置がシート装置に対して直接に連結)に組み込まれていてもよい。またこの装置は、直接シート装置に独立して作用(すなわち、シート装置よりも乗員区画に直接に連結)してもよい。あるいは、部分的に一体化しまたは部分的にシート装置から独立(すなわち、乗員拘束装置は、シート装置だけでなく、シート装置と乗員区画の両方に直接に連結)していてもよい。この乗員安全装置は少なくとも一人の乗員を含むように構成された、あらゆる車両において使用することができる。ここに開示された車両に限定されるものではない。
【0009】
図3は、シートバックとシート袋体とを有するシート装置に対して、部分的に一体化され、また部分的に独立して設けられた、アクティブ乗員拘束装置の好適な実施例を示している。このアクティブ乗員拘束装置20は、車両に対して結合された従来のリトラクター機構12と、車両に連結されたD−リング13と、シート袋体に連結されたバックル機構14と、バックル機構14に選択的に係止可能なトング部材15と、シート袋体に連結された部材40(例えばアンカー部材)と、シートベルトウェビング11と、膨張可能なプリテンショナ21(図3には展開前の収容状態が示されている)とを有する。
【0010】
ウェビング11の第1の端部11aは、リトラクター機構12に連結されることが好ましく、ウェビング11の第2の端部11b’は、アンカー部材40に連結されることが好ましい。このウェビング11は、肩部Sと腿部Lとを形成するように掛け渡されることが好ましい。肩部Sは、乗員19を拘束するために乗員19の肩の上部に掛け渡されることが好ましい。これによって車両の動的な事故(例えば正面衝突等)が生じた場合に、乗員の胸部を拘束することができる。腿部Lは、乗員19を拘束するために、乗員の腿の上側に掛け渡されることが好ましい。これにより車両の動的な事故が生じた場合に、乗員の腹部を拘束することができる。
【0011】
第2の端部11b’に直近する、ウェビングの腿部Lの部分は、アンカー部材40に連結されており、そしてアンカー部材40は膨張可能なプリテンショナ21が、乗員19の腿部の直近に位置するように、乗員19に対する適正な位置と同様に、シートベルトウェビング11と膨張可能なプリテンショナ21との間に適正に位置するように掛け渡されている。膨張可能なプリテンショナ21はアンカー部材40に対して直接的に連結されることが好ましく、これにより膨張可能なプリテンショナ21の部位が所定の位置に固定されることになる。その代わりとして、たとえばシート袋体等の膨張可能なプリテンショナ21は、シート装置に直接固定されてもよく、あるいはフロアーパネルのような車体設備の一部に取り付けてもよい。これにより、膨張可能なプリテンショナの結合位置を位置決めすることができる。
【0012】
図4および図5は、シート装置に対して、部分的に組み込まれ、あるいは部分的に独立したように示されたアクティブ乗員拘束装置120,220の好適な実施例を示している。このアクティブ乗員拘束装置120,220は、以下に記載された相違を有する以外は、図3に示したように乗員拘束装置20に対して上述したように構成されることが好ましい。図4に示したように、膨張可能なプリテンショナ121は、車両の動的な事故の際に、シートベルトウェビング11に対してプリテンショニングを導入するように構成された膨張可能な袋体123を有することが好ましい。図5に示したように、膨張可能なプリテンショナ221は車両の動的な事故の際に、乗員19の少なくとも一部に対して拘束を加えるのと同様に、シートベルトウェビング11にプリテンショニングを導入させるように形成された、少なくとも一つの膨張可能な袋体223を有することが好ましい。例えば、膨張可能なプリテンショナ221の膨張可能な袋体223は、第1膨張室225(例えば膨張部)を有することが好ましく、これによりシートベルトウェビング11のプリテンショニングを導入させるように膨張することができる。また、たとえば乗員19の腿部等を拘束するため膨張するために、膨張可能な第2膨張室227(例えば膨張部)を有することも好ましい。
【0013】
図6〜図10Aは、例えば腿部用のエアバッグと、プリテンションナー組立体221,321との好適な実施例を示している。これらは膨張可能なエアバッグ袋体223,323と、袋体223,323を膨張させるインフレータ222,322とを有している。例えば腿部用のエアバッグとプリテンショナ組立体221とは、図8に示された部材240のような、ウェビング11とアンカー部材エアバッグを組立体との固定のために使用される部材を有することも好ましい。乗員拘束装置20のシートベルトウェビング11は、エアバッグ袋体223,323を通じて掛け渡されることが好ましく、例えばこれにより部材240を、ウェビングの端部に保持させることができる。
【0014】
エアバッグ袋体223,323は、例えばナイロンメッシュのような、柔軟性を有する織物材料から形成された単一または複数のパネルから構成されることが好ましい。この織布パネルは、縫い付け等の従来の方法により、互いに結合されることが好ましく、これにより少なくとも1個の膨張可能な部位または膨張室225,325を形成することができる。図6に示したように、エアバッグ袋体323は、第1膨張室325と第2膨張室327とを有し、第1膨張室325を通じて直接的に流体が連通可能な状態となっており、第2膨張室327に発生ガスを収容することができる。言いかえれば、膨張室325と327とは直列に配置され、この状態でインフレータ322は、エアバッグ袋体323に対して、活性化した発生ガスを直接、第1膨張室325に送り込み、第1膨張室325から排出された発生ガスを、第2膨張室327に送り込むように連結することができる。
【0015】
図7に示したように、エアバッグ袋体223は第1膨張室225と第2膨張室227とを有することが好ましく、この場合、第2膨張室227は第1膨張室225に対して間接的に流体流通が可能であるように設定されている。言いかえれば、これら2個の膨張室225,227は並列に配置されることが好ましく、この状態においてインフレータはエアバッグ袋体223に連結されることが好ましく、これにより、あらかじめ他の膨張室を通過することなく、第1膨張室225及び/または第2膨張室227に直接、発生ガスを供給することができる。このことは、2個の膨張室225と227とがほぼ同時に膨張することができることを許容する。これらエアバッグ223,323の構成は、例えば、乗員拘束装置の、腿用に構成されたエアバッグ及び膨張可能なプリテンショナ組立体221,321の動作手順あるいは作用を適宜調整するができる。例えば、図6に示したように、第1膨張室225の膨張を、第2膨張室227の膨張に先だって実施させることができる。すなわち、第1膨張室225の膨張を通じたプリテンショニングを、乗員の腿部の拘束と保護とのために第2膨張室の膨張と通じての乗員の拘束の展開手順に先だって行うことができる。
【0016】
プリテンショナ組立体221,321からなる、例えば腿部用の複合的なエアバッグ袋体223,323は、1箇所または複数箇所の非膨張部229,329を有することが好ましい。非膨張部229,329は、例えばエアバッグ袋体223,323を、1個または複数個の膨張室に区画するように構成することが好ましい。例えば非膨張部229は、エアバッグ袋体223を第1及び第2膨張室225,227とに分割し、これらは間接的な流動連結状態となる。また、他の実施例によれば、非膨張部329は、エアバッグ袋体323を第1膨張室325と第2膨張室327とに分割することができ、この状態で第2膨張室327は、第1膨張室325と直接的な流体連通の状態にある。
【0017】
これらのエアバッグ袋体は1個またはそれ以上の開孔またはスリットを有し、それらは、非膨張部、膨張部、あるいは結合部に設けられることが好ましい。これらの開孔やスリットは、ウェビングと膨張プリテンショナとにスライド可能に結合された乗員拘束装置のウェビングを受け入れるように構成することが好ましい。図17および図19に示したように、エアバッグ袋体623は1個の開孔631を有し、この開孔を通じて第1膨張室625と第2膨張室627とが区画することでき、この部分においてウェビング11が開孔631を通過するようにさせる(同様に部材640の開孔部を通過させる)ようにして、膨張プリテンショナ621とウェビングとをスライド可能に結合させることもできる。また、図6,図7に示したように、エアバッグ袋体223,323(例えば非膨張部229,329)が複数の開孔231,331(例えばスリット)を有するようにすることも好ましい。この場合、それぞれの開孔231,331はシートベルトウェビングが、スライド可能な結合状態で、袋体とウェビングとを通じて挿通されるようにすることが好ましい。開孔231,331,631の大きさ、形状、位置は通常の膨張可能なプリテンショナを通常可能な位置に保持させることができ、シートベルトの厚さや幅を調整することにより、その大きさを適正な値に設定することができる。図6、図7に示したように、エアバッグ袋体223,323は2個の開孔231,331を有し、これらは非膨張部229,329を形成し、また2個の開孔231,331は第1膨張部225,325のそれぞれ反対側の位置に形成されている。この構成ではエアバッグ袋体223,323はウェビング11に対してスライド可能に連結されるような構成となっている。これにより、ウェビング11の部分が開孔231,331の1個またはその両方を通過することができ、これにより、膨張体221,321によってウェビング11のプリテンショニングが作用している間において、エアバッグ袋体223,323に対してウェビング11の長手方向の横方への移動を防止して所定の位置に保持することができる。これによって袋体223,323のウェビング11及び/または保持された乗員に対して正規の位置に保持することができる。
【0018】
図22Bに示したように、エアバッグ袋体623は第1膨張室625と第2膨張室627とを区画するために、例えば縫製等により、互いに結合されたインナーパネルとアウターパネルとを有することが好ましい。この構成は開孔631がその部分に形成されるような一層からなる袋体を形作る。これにより、ウェビング11はウェビングに対して袋体がスライド可能に取り付けられるために、袋体623の一層の部分に位置する一つの開孔631を通過させることができる。代替例として図22Cに示したように、エアバッグ袋体623は、例えばインナーパネル,アウターパネル及び1枚またはそれ以上の中間パネルという、複数のパネルを有することが好ましい。中間パネルはインナーパネルとアウターパネルに対してその間に位置するように配置され、第1及び第2膨張室625’627’を区画してエアバッグ袋体623を形成し、そして、開孔631’が位置する領域において、少なくとも一つ以上の袋体623を形成することが好ましい。袋体623は、図22Cに示したように、膨張室625’627’の間に位置する二層を有し、それぞれの層において開孔631’を有している。これにより、ウェビング11はウェビングに対して袋体がスライド可能に固定されるように、袋体内の両方の開孔631’を通過することが好ましい。以上の構成は、膨張プリテンショナとウェビング11との間の相対的な位置を保持するのを向上させる付加的な支持を提供し、及び/または、例えば第1膨張室625’が展開する間に、ウェビングの付加的なプリテンショニングを提供することができる。
【0019】
エアバッグ袋体又は複数の膨張室、例えば袋体223の第1膨張室225は図8Aに示したように、1列のロール状及び/あるいは折り畳み形状をなして収容されるように包みこまれることが好ましい。エアバッグ袋体323は、例えば仮縫い縫製のように、1個または複数の固定手段を有することで、組み立て時あるいは展開に先だって、エアバッグ袋体223の膨張室225の構成の収容状態(折り畳みあるいは丸めによる)が保持できるようにすることが好ましい。この固定手段は比較的小さな張力が作用したような状態において、簡単に破損したり裂けたりする構成とすることが好ましい。したがって、この固定手段は、エアバッグ袋体223の収容状態を保持することができるが、エアバッグ袋体223の展開が遅れたり、異なった展開をしないように、比較的低い小さい張力が作用した展開状態で裂けることが好ましい。
【0020】
さらに図8および図8Aに示したように、シートベルトウェビング11は、部材240に形成されている例えば開孔241及び袋体223に形成されている第1開孔231とを通じて、第1膨張室225が収容されている側と反対側のエアバッグ袋体223の側から、収容された状態の第1膨張室225を有するエアバッグ袋体223の側にかけて掛け渡されることが好ましく、このときウェビング11は収容されている第1膨張室225の上側を通るようにすることが好ましく、そしてウェビングは袋体223に形成されている第2開孔231と、部材240に設けられた第2開孔242とを通り、さらに収容された第1膨張室225の反対側に位置する袋体223の側にある部材240に隣接して掛け渡される。ウェビング11の端部11b’は固定されることが好ましい。例えば、ウェビング11の端部11b’は、部材に形成された第3及び第4の開孔243,244を通じることにより、部材の周りにループを形成することが好ましい。この場合、ウェビング11の端部11b’はウェビングの所定位置に縫いとり等により固定されることが好ましく、この位置で部材240に対してウェビング11が固定される。ウェビング11は、例えばリベットやネジやボルトなどのような固定具を有することにより、ループを形成することなく、部材240に直接固定することもできる。エアバッグ袋体223は部材240及び/またはウェビング11に対して、(袋体と部材とにある開孔を通すことで)直接的に連結されることが好ましく、これにより部材240,ウェビング11及び/または保持された乗員に対して袋体223が近接した状態及び位置を保持することを補助できる。
【0021】
部材240は鋼材、あるいは車両の動的な事故において生じる力、すなわち乗員を拘束するために乗員からシートベルトに加わる程度の力に抵抗できる充分な材料強度を有するような部材で作られることが好ましい。図9および図9Aに示したように、部材240はほぼ平らな部材であるか、あるいは部材の構造的な剛性を改善する形状とすることが好ましい。部材240は、シートベルトウェビング11が通過できるような、複数のスロット状の開孔あるいは開孔(たとえば開孔241,242,243,244)を有することが好ましい。部材240は、さらにシートクッションのフレームやフロアーパネルのような車両構造に対して、部材240を連結または保持させるためのアンカー部材250が通過可能な、丸開孔245を有することが好ましい。このアンカー部材250はいずれかの適切な固定具(例えばボルト、ネジ、リベット等)が使用できる。さらに、部材240はフランジ及び/または開孔を有し、これらの部分によりインフレータ222を取付けることができる。代替案として、インフレータ222、他の車両構造体、例えばシートクッションフレームや床パネルに直接的に固定することもできる。
【0022】
図14,15に示したように、部材540は例えばフラット部材のような、複数の開孔が設けられたベース540aを有することが好ましく、これらの開孔は、ウェビング11、部材540を他の部材あるいは構造体に連結する固定具、あるいはその他の好ましい要素(例えば、インフレータや袋体等)を収容するように構成することが好ましい。部材540は、また一対のフランジ563を有し、このフランジ563はベース540aからほぼ直角に伸び、さらにロック機構560の一部を収容できるような構成にすることが好ましい。たとえば、各フランジ563にはスロット状の開孔564を設け、これにロック機構560の一部を収容することが好ましい。
【0023】
図20〜図22Aに示したように、部材640はベース640aと、このベース640aから伸びたU字形状部670等を有することが好ましい。この部材640のU字形状部670は、凹所671の上部位置に開口672を有し、凹所671を区画することが好ましい。この部材640で形成された凹所671は、第1膨張室等のような収容すべきエアバッグ袋体623の全体またはその一部を収容するような構成とすることが好ましい。この凹所はまたインフレータ622を収容したり、部材640に対してインフレータ622の取り付けを可能にするような特徴(たとえば開孔)を有することが好ましい。エアバッグ袋体623(あるいはその一部)は、また例えば、開口672に隣接するように通過するウェビング11に所定のプリテンションを付与するように、開口672を通じて膨張展開することができる。これらの部材は、その適切な形状または寸法を有することができ、この実施例に開示されている内容になんら限定されることがないように考慮されるべきである。
【0024】
図11〜13Aは、例えば腿部に適用される統合されたエアバッグと、膨張可能なプリテンショナ組立体421とを示した他の実施例である。これらはエアバッグ袋体423、この袋体を膨張させるためのインフレータ422、ウェビングの経路付けと所定の構造的持体をもたらすためのガイド部材445と、膨張可能なプリテンショナ組立体421を固定するため、あるいはウェビング11に取り付けるためのアンカー部材440を有している。エアバッグ袋体423は、図示されたように、シートベルトウェビング11に対してプリテンションを付与する第1膨張室425を有するように構成することが好ましい。エアバッグ袋体は、さらに、たとえば乗員を直接拘束あるいは乗員の腿部等の部位を保護するために機能する第2膨張室427を有することが好ましい。
【0025】
ガイド部材445は、ほぼフラットな形状をなし、第1スロット形状開口447(たとえば開孔)と、第2スロット形状開口448(たとえば開孔)とを有し、これらにシートベルトウェビング11が挿通されるようにすることが好ましい。ガイド部材445と開孔447,448の寸法や形状は、適切な寸法や形状の範囲で設定することが好ましい。ガイド部材445は、他の部材を取り付けるためにふさわしい機能を有するように強度を改善したり、フランジ形状あるいは他の適切な形状とすることが好ましい。第1および第2開孔447,448は、エアバッグ袋体423において、第1膨張室425が収容された状態において所定の操作がなされた後に、それぞれ、第1および第2開孔431,432に相対的に平行であり、ウェビング11が袋体423とガイド部材445との間の適正な位置関係が保持され、通過することができることが好ましい。ウェビング11は、第1膨張室425が収容され、例えば折りたたまれたり丸められたりしている状態の反対側のエアバッグ袋体423の側から袋体423内において、第1開孔431とガイド部材における第1開孔447とを通り、第1膨張室425を有するエアバッグ袋体423の側に掛け渡されることが好ましい。この場合、ウェビング11は収容された第1膨張室425に接した部位を通過し、さらに袋体423内の第2開孔432を通って、さらにガイド部材445の第2開孔448を通り、さらに第1膨張室425の反対側の袋体の側のガイド部材445に隣接するように経路付けられる。
【0026】
図12,図12Aに示したように、アンカー部材440はほぼ平らな板材からなり、第1のスロット状開孔441を有し、この開孔にはシートベルトウェビング11の端部が挿通されるようになっている。また、第2の円形開孔442には、アンカー固定部材450が挿通できるようになっている。アンカー部材440は、また他の部材を連結するため等、好ましい機能を有したり所定の強度を確保できるように、フランジ状や他の特徴を有するような形状とすることが好ましい。円形開孔442はアンカー部材440を、例えばシートクッションフレームや床パネルのような車両組立体に固定保持するために、固定部材450を収容することができる。アンカー部材450には、好ましい部材(例えばボルト、ねじ、リベット)を採用することができる。ウェビング11の端部11b’はアンカー部材440に固定することができる。ウェビング11はアンカー部材440内のスロット形状開孔441を通すことによってループを形成することができ、この部分によってウェビング11の端部11b’はウェビング11の一部に縫製等により固定することができる。ウェビング11はループを形成したウェビング11を用いることなく、例えば部材440に対してウェビング11を直接連結できる固定具を用いることにより、アンカー部材440に直接連結することもできる。
【0027】
車両の動的な事故を通じて、シートベルトウェビング11のプリテンショニングがトリガーされると、例えばインフレータ222が動作し、これにより発生ガスがエアバッグ袋体、例えばエアバッグ袋体223を膨張させはじめる。好ましい実施例によれば、発生ガスは、まず第1膨張室225に充満し、その第1膨張室の内圧を十分に高めた状態で折り畳まれた状態にある第1膨張室を膨らまし展開させることになる。例えば第1膨張室225の上部にウェビングが挿通されているため、第1膨張室225の膨張断面が増加するような膨張(すなわち、図10A,図13Aおよび図22に示したような、例えば周囲のような断面外形の増加)が、膨張する第1膨張室225の周囲に外接するウェビングの長さを、それに応じて増加させる。ウェビング11の固定端部11b’はウェビング11の実質的な長さ(ただし、クリアランス及びスラックの取り除かれることによる、ほんのわずかなウェビングの長さは変わるが)を変更させることがなく、したがって第1膨張室225の膨張に伴って外接するように伸びることはできず、この結果ウェビングのプリテンショニング部分、すなわち第1膨張室からウェビング11のラップ部分Lを形成する部分への伸びは、第1膨張室に向けての変位させる力となる。これにより、エアバッグ袋体を膨張させた際に、その周りに外接する所定のウェビング11の長さが確保される。ウェビング11の腿部Lの、第1膨張部225に向けての変位はウェビングの固定端11b’に向けてのウェビングの巻き取りとして動作し、これによりウェビングのクリアランスとスラックとが除去され、例えばウェビング11と拘束された乗員との間のスラックが除去される。この結果、ウェビング11に生じる張力よりも大きな内圧を有することにより、第1膨張室225の膨張はウェビング11に、第1膨張室225の拡大した断面に外接するようにウェビング11に力が作用することにより、ウェビング11に、所定のプリテンショニングが作用する。そのときウェビングと乗員との間のクリアランスを除去する方向にウェビング11が移動する。
【0028】
プリテンショニングを通じて引き出される(すなわち、移動する、巻き解かれる)ウェビング11の長さは、例えば、エアバッグ袋体223の例えば第1膨張室225の外形寸法(例えば周長)によって制御することができる。すなわち、ウェビング11のプリテンショニングの際に引き出されるウェビング11の長さは、例えば第1膨張室225の外形寸法を変更することによって調整することができる。外形寸法は最大膨張した際の第1膨張室225の断面を変化させることによって変更可能であり、あるいは第1膨張室の膨張のために用いられる発生ガス量を変更することによっても調整することができる。すなわち、少ない発生ガスによってインフレータ膨張室を膨張させることでは、その周長、すなわち断面寸法を小さくすることができる。
【0029】
膨張可能なプリテンショナのエアバッグ袋体は第1膨張室及び第2膨張室をともに満たすような発生ガスが供給されるようにすることが好ましい。このとき、連続してあるいはその他の好ましい手順によってガスが、両方の膨張室を、ほぼ同時に満たすようにすることが好ましい。また、エアバッグ袋体は複数の膨張室を有し、それらが膨張あるいは展開する好ましい経過となるようにすることが好ましい。
【0030】
図14及び図15に示したように、乗員拘束(保護)システム20及び/または膨張可能なプリテンショナ521とは、車両の動的な事故の際に、ウェビング11の引き出し(ウェビング11と乗員との間にあるスラックまたはクリアランスが増加するような方向、すなわちプリテンショニングの方向と反対の方向への動き)を、禁止するようなロック部材あるいはロック機構560を有することが好ましい。好ましい実施例によれば、このロック機構560は、車両の動的な衝突やロールオーバー等の事故が生じるような場合でない、通常の車両の利用状況においては、引き出し及び巻き取りに関してウェビング11が自由に動作するように機能する。そして乗員19に対してウェビング装着時の快適性が確保されるようになっている。しかしながら、車両の動的な事故においては、ウェビング11のプリテンショニングのための巻き取りのみを許容し、ウェビング11が引き出されることは禁止される。この結果、車両の動的な衝突事故において、スラック(すなわち乗員とウェビングとの間のクリアランス)は、エアバッグ袋体523の第1膨張室525によるプリテンショニングによって取り除かれるが、ロック機構が引き出しを禁止しているため、ウェビング11の引き出しがなされずに、プリテンショニングによってスラックが取り除かれる。このロック機構560は、例えば車両に対する突然の動的な変化のような場合以外の車両の通常の利用の際においては、ウェビングの引き出しと、拘束された乗員に対しての所定の快適性の調整(コンフォート調整)ができるようになっている。
【0031】
図14〜図16に示したように、ロック機構560は、膨張可能なプリテンショナ521の部材540とともに組み立てられることができる。この場合、部材540は膨張可能なプリテンショナ521を図示したように定着するように構成することができる。ロック機構560はスライドバー561と、スプリングのような偏向部材562とを有することが好ましい。また、ロック機構560はスライドバー561の一部を収容するために構成されるスロット564を有し、フランジ563が対向するような2枚のフランジ563を有することも好ましい。スロット564は、ロック解除方向、すなわち開方向において、スロット564の長さ方向に沿ってスライドバー561が移動することを許容するように構成することが好ましい。この状態は図15の矢印D1で示されている。また、ロック方向、すなわち閉方向D2は、図16に示したようにD1方向と反対方向である。このロック機構560は、第1ロック位置、すなわち閉位置と、第2非ロック位置、すなわち開位置との2つの位置とで構成されている。ロック機構560が第1ロック位置に位置した際、乗員拘束装置20のウェビング11は、図16に示したように、D4の方向に滑ることが禁止される。このとき、D3方向へのスライドは許容されている。このように、ウェビング11には、膨張する袋体523によって、D3方向に移動するようなプリテンションを導入することが好ましい。これにより、ウェビング11と、ウェビング11によって拘束された状態が保持された乗員との間のスラックが取り除かれる。しかしながら、ウェビング11は、ウェビング11と保持された乗員との間のプリテンションを解除し、あるいはスラックを増加させるような方向であるD4方向にスライドすることは禁止される。ロック機構560が第2非ロック位置にある場合には、乗員拘束装置20のウェビング11はD3あるいはD4方向のいずれの方向にも自由にスライドできる。
【0032】
図14および図14Aに示したようにスライドバー561は部材540に、2枚が対向して形成されたフランジ563間に形成された本体565と、本体565の両端から伸びた突出部566とを有することが好ましい。突出部566は部材540のフランジ563に設けられたスロット654に係止するように構成され、これにより本体565は、スロット564の長さ方向に沿ってD1方向あるいはD2方向に移動できる。すなわち、スライドバー561は2個の突出部566が2個のスロット564内において、その長さ方向に2方向に移動できる。また、スライドバー561は、ウェビング11を所定の位置でロックさせるために、ウェビング11に噛合可能に構成された噛合部567を有することが好ましい。たとえば、この噛合部567はウェビング11に食い込むような複数の歯を有することが好ましい。これにより、ウェビング11の噛合した部位は、スライドバー561に対してスライド(たとえば引き出し、巻き取り)が禁止される。言いかえれば、噛合部567は、ロック機構560に対してウェビング11の動作を禁止するように、スライドバー561と部材540との間でウェビング11を挟み込むことができる。
【0033】
図20〜図22に示したように、ロック機構660はウェビング11の一部をロック(例えばクランプ)するためのピポッド軸周りに、選択的に回転可能な回転バー661を有することが好ましい。この回転バー661は、本体665と、本体665の直径よりも小さな直径の端部666とから構成され、この場合端部666は部材640に形成された開孔に係止され、これにより例えば部材640のフランジに設けられた開孔等に固定され、回転バー661のピポッド軸が規定される。回転バー661は、またウェビング11の一部に噛み合う噛合部667を有し、その部位での噛合状態を保持して、ウェビング11のロック機構660に対する移動を拘束することができる。
【0034】
偏向部材562はコイルバネあるいは引張バネ等のバネ材であることが好ましく、この偏向部材によってロック機構560のスライドバー561に所定の偏向力が生じさせることができる。この偏向部材562がスライドバー561をロック位置に移動(すなわち、ウェビング11に接触するように)させる。偏向部材562は、偏向力を生じさせるような、各種の適正なバネや装置で構成することができる。また、偏向部材562はスライドバー561をいかなる好ましい方向(たとえば非ロック方向あるいはロック方向)に偏向させるように構成することもできる。
【0035】
例えば、膨張可能なプリテンショナ521の展開時において、膨張可能なプリテンショナ521は、図15に示したように、エアバッグ袋体の第1膨張室525が部材540から離れる方向に膨張し、ウェビング11に所定の張力が生じることにより、その袋体が膨張する第1膨張室525に隣接する位置のウェビング11部分を引く状態となる。第1膨張室525(例えば膨張袋体523)が膨張した結果、袋体523の外形輪郭あるいはその周囲(例えば直径)は長さ(たとえば周長)が増大し、これにより袋体52(例えば第1膨張室525)に隣接したウェビング11の長さが相応する長さ分だけ増長させるような力が作用する。しかし、ウェビング11はその端部が、例えば部材540に連結されるように固定されているため、直径が膨張した袋体523に少なくとも部分的に外接するためのウェビング11の付加的な長さは、主として腿部部Lからあるいは肩部Sから使われ、この結果、膨張に先だって現状のウェビング11と保持された乗員との間のスラックが取り除かれる。言いかえれば、袋体523の膨張は、保持された乗員の拘束を改善するためと、ウェビング11と乗員との間のスラックを減少させるために、ウェビング11をタイトな状態まで引き込むようにロック機構560に対してD3方向にプリテンショニングさせるように引き込み、あるいは移動させるように作用する。
【0036】
袋体523の膨張による力とウェビング11の巻き取り力とは、偏向部材562からの偏向力を上回るため、スライドバー561をスライド方向D1に、開(すなわち、非ロック)位置まで移動(変位、スライド)させ、この力はウェビング11がエアバッグ袋体523の膨張および展開の際に、ウェビング11が巻き取り続けられる(すなわち、D3方向のプリテンショニング状態で移動する)ことを許容する。ウェビング11の巻き取りは拘束された乗員とアクティブ拘束装置のウェビング11との間のスラックまたはクリアランスを除去することにより、着座した乗員に対して所定のプリテンショニングをもたらす。
【0037】
乗員がウェビング11に接触したのちは、加速度が加わる乗員によって生じる荷重は、ウェビング11に対するプリテンショニングに抵抗する力としてウェビング11に伝達される。そしてウェビング11を引き出す(巻き解く)方向に作用する。この反対方向の力はロック機構560のスライドバー561を、開位置となるように位置決めするように作用し、プリテンショニング力よりも大きくなることが好ましく、これにより偏向力562及び/または乗員からウェビングに作用する荷重とは、スライドバーがD2方向に、ロック位置に移動(たとえば変位、スライド)するように作用する。この結果、ウェビング11の引き出し(例えばD4方向への移動)のロック機構560に対する引き出しは禁止される。
【0038】
ロック機構(ロック部材)560は、例えば車両の衝撃事故の際、車両の慣性(例えば車両の急減速)や他の適正な方法によって、偏向部材562(たとえばバネ)からの力を通じて、シートベルトウェビング11の引き出しを阻止するために、ロック位置に駆動することが好ましい。ロック機構560は、このロック位置に位置している時には、ウェビング11は、さらにプリテンショニング装置による、プリテンショニングあるいは巻き取り(すなわちD3方向のプリテンショニング方向への移動)に移動するようなウェビング11の巻き取りを許容し、またウェビング11の引き出しや巻き取りの緩み(すなわち、D4方向への移動)を阻止することができ、これにより、プリテンショニング装置による乗員とシートベルトウェビング11との間のスラックあるいはクリアランスの除去が、乗員によってウェビング11に作用する力によって、元に戻らないようにすることができる。また、これらの動作状態において、ウェビング11の選択的なクランプ(あるいはロック)のために、各種の他の適正なロック機構を適宜作用することができ、またロック機構は図示したものに限られないことに言及すべきである。
【0039】
ここに示した乗員拘束(保護)装置の膨張可能なプリテンショナは、単一の膨張室でなく複数の膨張室に対して、1個のインフレータ(例えばインフレータ222,322等)を使用することができ、あるいは複数のインフレータで複数の膨張室を膨張させるようにしてもよい。図7に示したように、例えば膨張可能なプリテンショナ221は、膨張してシートベルトウェビング11にプリテンションを付与する第1膨張室225と、乗員あるいは乗員の腿部等を、さらに拘束、保持する第2膨張室227とで構成された、1個のインフレータ222を有してもよい。すなわち、車両の動的な事故を通じてのインフレータのトリガー動作は、膨張ガスを発生させ、1個あるいは複数のエアバッグ袋体の膨張室を膨張させることができる。図6に示したように、エアバッグ袋体323は発生ガスが第1膨張室325を通じて第2膨張室327にガスが送られるようにするように構成してもよい。また、それに加えて図7,8,10,11及び13に示したように、膨張可能なプリテンショナのエアバッグ袋体は、1個あるいは複数の膨張室にほぼ同時に膨張ガスを送るようにすることもできる。図示したように、膨張可能なプリテンショナは複数の膨張室を有してもよく、また同一の、あるいは別個のインフレータによって、エアバッグ袋体のにおいて直列または並列に配置された、それぞれの膨張室を膨張させることができる。
【0040】
図17に示したように、膨張可能なプリテンショナ621はウェビング11の方向を横切るような位置にインフレータ622を有することが好ましく、あるいは図6に示したように、ウェビング11と平行な方向に位置するようにインフレータ322を有することも好ましい。このようにインフレータの方向は適切な方向であれば、いかなる方向に配置することもでき、膨張可能なプリテンショナのいかなる場所に位置させることができる。すなわち図示した実施例に図示した場合に限られないことは言うまでもない。
【0041】
アクティブ乗員拘束装置は、図示したように、複合的なエアバッグ袋体と膨張可能なプリテンショナ等を有するように構成してもよく、図5に示したように、また図4に示したように膨張可能なプリテンショナを単独で有するように構成してもよい。図4に示した後者の実施例の場合においては、図6および図7に示した第1膨張部位と同じように構成された膨張部位を有するエアバッグを有することが好ましく、この場合、付加的な膨張室を有することはない。この実施例におけるインフレータは小さなサイズとすることができ、また図6および図7に示した実施例において使用されたインフレータに比べて少ないガス発生量で構成され、容量とコストを低減することができる。膨張可能なプリテンショナのみを有する乗員安全装置のエアバッグ袋体は、またウェビングが通過するようなスリットまたは開孔を有することが好ましく、またエアバッグ組立体に対して十分な構造強度を有するような定着可能な部材を有することが好ましい。
【0042】
ここに用いられた用語としての「約」、「およそ」、「実質的」及び他の類似する用語とは、その意味を広く解釈するように意図され、またここに開示された主題に属する技術分野における当業者に広く用いられ得るものである。これらの用語は、記述された特定の特徴の一記載として許容されるように意図され、また規定された正確な数値範囲によって、これらの特徴の範囲が制限されることなく権利が主張されることが、ここに開示された内容を検討した当業者によって理解されるべきである。したがって、これらの用語は、記載された主題の、本質的でなく、重大でない修正や改変を述べたものであるとして解釈されるべきであり、付属して列挙された発明の技術的範囲において考慮されるべきものである。
【0043】
各種の実施例において用いられた「好適な」との用語は、これらの実施例が、実施可能な例示、表現、図面であることを意味であることを示した(すなわち、これらの用語は、必要的に特異でかつ他に例をみない実施例を意味するものでない)ことを意図しているにすぎないことに言及されるべきである。
【0044】
ここで用いられた、「結合され」、「連結され」等の類する意味で使用された用語は、二つのメンバーが互いに直接あるいは間接的につながっていることを意味する。これらの結合は静的(たとえば永久的)、あるいは動的(例えば取外し可能あるいは分解可能)なものでもよい。このような結合は、2個の部材によって実現されてもよいし、また中間的な付加された部材によって二つの部材との間で実現してもよく、この場合中間的な部材は一つの立体的な、一つ、あるいは二つ、あるいは二つの部材と他の付加的な中間的な部材が互いに結合されたような一体的な部材として形成されてもよい。
【0045】
例えば、位置(たとえば「頂部」、「底部」、「上方」など)上下等の要素を示すような参照用語は、各図においてさまざまな要素の位置を、記載するために単に用いられたにすぎない。各要素の位置関係は、他の具体的な実施例によって異なり得るものであり、そのような変形例は、現に記載されたものに包含されるよう、意図されているものであると解するべきものである。
【0046】
様々な具体的な実施例に示された乗員安全装置の構造や配置は、単に一例であることを言及することは重要である。しかしながら、単なるいくつかの実施例が、詳細にこの記載の中に開示されているにもかかわらず、これらの記載を検討した当業者が、容易に、多くの改変を可能にすることは明らかであり、またその際、実質的にここに開示された主題の新規性を教示し、あるいはその利益から実質的に逸れることなく、その改変を行え得る。具体的には、寸法、構造、形状の変更、および様々な要素の配置、パラメータの変更、材料の仕様、色、配置等である。例えば統合的に形成されたように開示された要素も、複数の部位やあるいは要素で構成でき、また位置を反対にしたり、他に変更したり、あるいは別箇の要素の性質や数およびその位置を変更したり改変したりすることができる。またプロセスや方法の工程におけるその順番や手順を変更したり、他の実施例によって組みかえたりすることができる。その他、本発明の技術的な範囲から逸れることなく、各種の好適な実施例の意匠、作業状態および配置におけるその他の置換、改変、変更および省略をすることができる。
【0047】
なお、本発明は2010年8月16日に出願された米国仮特許出願61/374,128の優先権と利益とを主張するものである。上述の仮出願はその全体は参照により、組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内で保持された乗員に対して拘束をもたらすような構成からなる乗員拘束装置であって、該乗員拘束装置は、
第1の端部と第2の端部とを有する、乗員を拘束するシートベルトウェビングと、
前記第2の端部を定着するための部材と、
第1膨張室と、第2膨張室とを包含する、インフレータと膨張可能な袋体とを有する、膨張可能なプリテンショナとを備え、
前記インフレータは、前記第1膨張室と第2膨張室とを膨張させるように形成され、
前記第1膨張室は、前記保持された乗員を拘束するための前記ウェビングにプリテンショニングをもたらすように膨張、展開するように形成され、
前記第2膨張室は、前記乗員を拘束するために膨張、展開するように形成されたことを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
前記ウェビングは、前記第1の端部に選択的なロック状態がもたらされるように、前記第1の端部に、装置が連結された請求項1記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記装置は、リトラクタ機構内に位置する請求項2に記載の乗員拘束装置。
【請求項4】
前記袋体の第1膨張室が、前記ウェビングの第1の端部と第2の端部との間において張力が生じた部位の移動により、該ウェビングにプリテンションを付与する請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項5】
前記ウェビングの部位は、前記ウェビングの腿部に沿って形成された請求項4に記載の乗員拘束装置。
【請求項6】
前記ウェビングの部位は、少なくともその一部が前記膨張室の少なくともその一部に外接し、これにより前記膨張室が膨張した際、該膨張室が前記ウェビングの張力を増加させるように前記ウェビングの部位の長さを伸長させる請求項4に記載の乗員拘束装置。
【請求項7】
前記袋体は、前記膨張室の部位に隣接するように、前記ウェビングの一部を保持するために構成された複数の開孔を有する請求項6に記載の乗員拘束装置。
【請求項8】
前記第2膨張室は、前記乗員の腿部を拘束するために展開するように形成された請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項9】
前記第2膨張室は、前記第1膨張室に直接、流体連通されている請求項8に記載の乗員拘束装置。
【請求項10】
前記膨張可能なプリテンショナは、前記部材に連結された請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項11】
前記膨張可能なプリテンショナは、ロック機構を有し、該ロック機構が前記ウェビングを選択的にクランプして、該ロック機構に対する前記ウェビングの移動を阻止可能な請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項12】
前記袋体は、前記ウェビングに対してスライド可能に連結されたウェビングを収容可能な、少なくとも1個の開孔を有する請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項13】
保持された乗員の拘束を改善するための、乗員拘束装置のシートベルトウェビングにプリテンションを付与する、膨張可能なプリテンショナであって、該膨張可能なプリテンショナは、
少なくとも1個の膨張室と、少なくとも1個の非膨張部位とを有する膨張可能な袋体と、
前記袋体の少なくとも1個の膨張室を膨張させるインフレータとを備え、
前記少なくとも1個の非膨張部位が第1の開孔と、第2の開孔とを有し、
前記ウェビングが、前記袋体にスライド可能に結合されるように、前記第1の開孔と、第2の開孔とを通じて挿通され、前記ウェビングの長さ方向に対して横切る方向へのウェビングの位置が、少なくとも1個の膨張室に対して保持され、
少なくとも1個の膨張室が前記保持された乗員を拘束する前記ウェビングにプリテンショニングをもたらすようにしたことを特徴とする膨張可能なプリテンショナ。
【請求項14】
前記袋体の膨張室が、前記ウェビングの端部間において張力が生じた部位の移動により、該ウェビングにプリテンションを付与する請求項13に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項15】
前記ウェビングの部位は、前記保持された乗員の腿部を拘束するように形成されたウェビングの腿部に沿って配置された請求項14に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項16】
前記ウェビングの部位は、少なくともその一部が前記膨張室の少なくともその一部に外接し、これにより前記膨張室が膨張した際、該膨張室が前記ウェビングの張力を増加させるように前記ウェビングの部位の長さを伸長させるようにした請求項14に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項17】
前記ウェビングの部位は、少なくとも部分的に外接する前記膨張室の一部に接触する請求項16に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項18】
前記膨張可能な袋体は、前記ウェビングにプリテンションを付与するように展開する第1膨張室と、前記乗員を拘束するために展開する第2膨張室とを有する請求項13に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項19】
前記第2膨張室は、前記乗員の腿部に拘束をもたらすように展開するように形成された請求項18に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項20】
前記膨張可能な袋体は、前記第1膨張室を膨張させた後に、前記第2膨張室を膨張させるように、前記第1膨張室から第2膨張室に膨張ガスが送られるように形成された請求項19に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項21】
膨張可能なプリテンショナの近くに前記ウェビングの端部が定着される部材を、さらに有する請求項13に記載の膨張可能なプリテンショナ。
【請求項22】
前記膨張可能なプリテンショナは、ロック機構を有し、該ロック機構が前記ウェビングを選択的にクランプして、該ロック機構に対する前記ウェビングの移動を阻止可能な請求項13に記載の膨張可能なプリテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図11A】
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【図12】
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【図12A】
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【図13】
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【図13A】
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【図14】
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【図14A】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【公開番号】特開2012−41042(P2012−41042A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−177788(P2011−177788)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(501199379)ティ.ケイ.ホールディングス、インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】