説明

乗客コンベアのオイルパン清掃装置

【課題】人手を介在させること無く安価に、且つ乗客コンベアの稼動中に清掃作業を行うことが可能な乗客コンベアのオイルパン清掃装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、往路側走行時に清掃体3aを収納する収納部材3cと、この収納部材3cの反踏板方向に形成される底面に設けられ前記清掃体3aとの接触を検知しなくなった際に検出信号を出力する検出手段3bと、前記踏板1に設けられた清掃体3aの突出口を閉塞する位置と開放する位置とのいずれか一方に配置可能な閉塞部材4aと、この閉塞部材4aの位置を何れか一方へ変位させる駆動手段4bと、前記検知手段3bの検知信号を受信したことに応じて前記駆動手段4bを駆動させて前記閉塞部材4aを開放位置に変位させるよう制御する制御手段8によって、課題を達成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復路側走行時の踏段と対向して配設されるオイルパンに摺接し該オイルパンを清掃する清掃体を有する乗客コンベアのオイルパン清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における乗客コンベアのオイルパン清掃装置の一例としては、無端状に連結され上下部乗降口間で環状走行する踏段に設けられ、その環状走行のうち乗客を載置可能な往路側走行時には前記踏段の踏面となる踏板下方に収納されるとともに、復路側走行時にはその自重により前記踏板から突出して前記踏板と対向して配設されるオイルパンに摺接し該オイルパンを清掃する清掃体を有する乗客コンベアのオイルパン清掃装置が知られていた
(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平08−113461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の従来技術は、前記清掃体が突出する突出口を閉塞する閉塞部材を締結固定していたため、この閉塞部材を取外してオイルパンの清掃作業を行うには、人手を介して行う必要、及び乗客コンベアを停止させる必要があった。
【0004】
従って、清掃作業をコスト的に割高とすることや、乗客コンベアを停止できない場合には清掃作業を行うことが出来ないといった不都合があった。
【0005】
本発明は、上記不都合を解消する為になされたものであり、その目的は、人手を介在させること無く安価に、且つ乗客コンベアの稼動中に清掃作業を行うことが可能な乗客コンベアのオイルパン清掃装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成する為に、無端状に連結され上下部乗降口間で環状走行する踏段に設けられ、その環状走行のうち乗客を載置可能な往路側走行時には前記踏段の踏面となる踏板下方に収納されるとともに復路側走行時には前記踏板から突出して前記踏板と対向して配設されるオイルパンに摺接し該オイルパンを清掃する清掃体を有する乗客コンベアのオイルパン清掃装置において、前記往路側走行時に前記清掃体を収納する収納部材と、この収納部材の半踏板方向に形成される底面に設けられ前記清掃体との接触を検知しなくなった際に検出信号を出力する検出手段と、前記踏板に設けられた清掃体の突出口を閉塞する位置と開放する位置とのいずれか一方に配置可能な閉塞部材と、この閉塞部材の位置を何れか一方へ変位させる駆動手段と、前記検知手段の検知信号を受信したことに応じて前記駆動手段を駆動させて前記閉塞部材を開放位置に変位させるよう制御する制御手段とを含んで成ることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、復路側走行時に前記清掃体がその自重により前記収納体底面より前記踏板の突出口方向に向けて変位するとその変位を検出手段により検出でき、この検出に応じて前記閉塞部材を駆動手段により開放位置に変位させ、前記清掃体によりオイルパンを清掃するように構成したため、人手を介在させること無く安価に、オイルパンの清掃作業を行うことが可能である。
【0008】
さらに、上述したように復路側走行時に、前記清掃体が突出するよう前記閉塞部材は前記突出口を閉塞しており、乗客コンベアの稼働中に清掃作業を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乗客コンベアのオイルパン清掃装置によれば、人出を介在させること無く安価に、且つ乗客コンベアの稼動中にオイルパンの清掃作業を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の動作説明図、図2は本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の平面図、図3は本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の制御フローチャート図、図4は本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の制御ブロック図、図5は本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の全体構成図である。
【0012】
一般的に乗客コンベアは、図5に示すように、踏段1は無端状に連結され、乗客を目的階まで運搬する為に上下部乗降口間10、11で環状走行しており、図中上側で乗客が乗る側の踏段1が往路側であり、オイルパン5側の踏段1が復路側である。
【0013】
本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置は、図1、2及び図4に示す通り、前記往路走行時に乗客の踏み面となる踏段1の踏板2の下方(往路走行時)に設けられる筒状体からなる収納部材3cと、この収納部材3cに変位自在に収納される清掃体3aと、この収納部材3cの半踏板1aの方向端部に形成される底面31cに設けられ清掃体3aとの接触を検知しなくなった際に検出信号を出力する検出手段であるマイクロスイッチ3bと、前記踏板2に穿設された清掃体3aの突出口2aを閉塞する位置と開放する位置とのいずれか一方に回動変位可能な閉塞部材4と、この閉塞部材4の回動軸4aを回動させる駆動手段であるステッピングモータ4bと、前記マイクロスイッチ3bの検知信号を受信したことに応じて前記ステッピングモータ4bを駆動させて前記閉塞部材4を開放位置に変位させるよう制御する制御手段8とを備えて構成されている。
【0014】
また、閉塞部材4の清掃体3aとの対向面には、その回動方向と同方向に傾斜するテーパ部4cが設けられているとともに、清掃体3aの先端部にも前記テーパ部4cと逆方向に傾斜する傾斜部311aを設けて構成している。
【0015】
このテーパ部4cと傾斜部311aとを設けたことにより、踏段1の復路側において、清掃体3aが自重で閉塞体4に当接している状態においても、閉塞体4は清掃体3aを逃げながら円滑に回動することができる。
【0016】
さらに清掃体3aは、錘部32aと、ブラシ部31aとを備えて構成されており、前記錘部32aは、踏段1の往路側走行時に清掃体3a全体が変位しないように収納部材底面
31cへ当接させる重量を備えて構成されている。
【0017】
ところで、駆動手段4bはステッピングモータを用いて、閉塞部材4がどれだけ変位したか分かるものとしておくこととしたが、ステッピングモータに限ることはなく、変位が分かる機構のものであれば他のものでもよい。また収納部材3cは、筒状体のものとしておくこととしたが、筒状体のものに限ることはなく、清掃体3aを踏板2の下方に移動収納できるガイド機構のものでもよい。
【0018】
そして、タイマー7は、踏段1の累積走行時間を積算し、所定時間以上、例えば3,000時間以上を積算した際に動作信号を出力する構成であり、カウンター9は、オイルパン清掃装置が所定回数、例えば10回環状走行を行ったことをカウントして動作信号を出力する構成となっている。
【0019】
次に、本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置にてオイルパン5の清掃を行う際の動作説明を、主に、図3のフローチャート図を用いて説明する。ここでの説明は、踏段1がその往路側にて、下から上へ運転されているものを例に取り説明する。
【0020】
ここで図1は、上部乗降口10側で踏段1が往路側から復路側に方向転換するR部の状態を示している。
【0021】
まず、前記タイマー7から、踏段1の累積走行時間が3,000時間以上であることを検出した動作信号を受信し(S1)、さらに前記マイクロスイッチ3bの検出信号を受信したなら(S2(図1における中段に示した踏段1の状態))、制御手段8は、ステッピングモータ4bに駆動指令を出し、前記閉塞部材4が前記突出口2aを開放する位置まで閉塞部材4を駆動させる(S3)。
【0022】
これに応じて、踏板2の突出口2aから清掃体3aが突出し、そのブラシ部3aをオイルパン5に当接させ、これにより清掃体3aがオイルパン5上を摺接することになり、オイルパン清掃を行うことが出来る(S4(図1における下段に示した踏段1の状態))。
【0023】
本発明によればこのように、復路側走行時に清掃体3aがその自重により収納体底面31cより踏段2の突出口2a方向に向けて変位すると、その変位をマイクロスイッチ3bにより検出でき、この検出に応じて閉塞部材4をステッピングモータ4bにより開放位置に変位させ、清掃体3aによりオイルパン5を清掃するよう構成したため、人手を介在させること無く自動的に、且つ、その清掃が必要となる適切な時期(3,000時間稼動時)にオイルパン5の清掃作業を行うことが可能である。
【0024】
次に踏段1が復路側を下部乗降口11側のR部まで走行すると、清掃体3aはまたその自重により収納部材3cの底面31cに当接するよう収納されるため、前記マイクロスイッチ3bの検出信号を発信されなくなる(S5)ことから、制御手段8は、ステッピングモータ4bに先程とは逆回転駆動指令を出し、前記閉塞部材4が前記突出口2aを閉塞する位置まで閉塞部材4を駆動させる(S6)。
【0025】
これにより、乗客を乗せる踏段1の往路走行時には、前記閉塞部材4が前記突出口2aを閉塞した状態とすることができ、乗客コンベアの通常稼動中においても、突出口2aにより乗客が危険にさらされることなく円滑にオイルパン清掃作業を行うことが可能である。
【0026】
そして次に、ステップS2からステップS6までの手順を、1回とカウントするカウンター9が、規定回数カウントする(ここでは10回とする)まで、上記ステップS2からステップS6までを繰り返し行い(ステップS7)、カウンター9がカウントアップして動作した動作信号を受信したことに応じて、制御手段8は清掃終了を認識し、次回の所定稼動時間経過後(3,000時間経過後)までは、マイクロスイッチ3bの検出信号を受付けなくなり、この時点のオイルパン清掃は完了となる。
【0027】
ここで、踏段1の10回の環状走行させ、自動的に清掃させることが出来る為、塵埃6を十分に除去することが可能である。
【0028】
また、本発明によれば、通常稼動中の運転時(乗客が使用中の時)にオイルパン清掃作業を行うこととしたが、休止状態・夜間など乗客が使用していないことを検出し自動運転できる乗客コンベアの場合は、その際にオイルパン清掃を同様に行うようにしても良い。
【0029】
また、以上の事により保守作業時間を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の動作説明図。
【図2】本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の平面図。
【図3】本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の制御フローチャート図
【図4】本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の制御ブロック図。
【図5】本発明である乗客コンベアのオイルパン清掃装置の全体構成図。
【符号の説明】
【0031】
1 踏段
2 踏板
2a 突出口
3a 清掃体
3b 検出手段(マイクロスイッチ)
3c 収納部品
31a傾斜部
4 閉塞部材
4a 回動軸
4b 駆動手段(ステッピングモータ)
4c テーパ部
5 オイルパン
6 塵埃
7 タイマー
8 制御手段
9 カウンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され上下部乗降口間で環状走行する踏段に設けられ、その環状走行のうち乗客を載置可能な往路側走行時には前記踏段の踏面となる踏板下方に収納されるとともに復路側走行時には前記踏板から突出して前記踏板と対向して配設されるオイルパンに摺接し該オイルパンを清掃する清掃体を有する乗客コンベアのオイルパン清掃装置において、
前記往路側走行時に前記清掃体を収納する収納部材と、この収納部材の半踏板方向に形成される底面に設けられ前記清掃体との接触を検知しなくなった際に検出信号を出力する検出手段と、前記踏板に設けられた清掃体の突出口を閉塞する位置と開放する位置とのいずれか一方に配置可能な閉塞部材と、この閉塞部材の位置を何れか一方へ変位させる駆動手段と、前記検知手段の検知信号を受信したことに応じて前記駆動手段を駆動させて前記閉塞部材を開放位置に変位させるよう制御する制御手段とを含んで成ることを特徴とする乗客コンベアのオイルパン清掃装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御手段は、前記検知手段の検知信号を受信後、該検知信号が受信されなくなったことに応じて、前記駆動手段を逆駆動させて前記閉塞部材を閉塞位置まで変位させるよう制御することを特徴とする乗客コンベアのオイルパン清掃装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2のいずれかにおいて、前記閉塞部材は、前記清掃体の突出口を閉塞する位置と開放する位置とのいずれか一方に回動可能に配置されるよう構成されるとともに、前記駆動手段は前記清掃体の回動軸を駆動するよう構成したことを特徴とする乗客コンベアのオイルパン清掃装置。
【請求項4】
請求項3において、前記閉塞部材の前記清掃体との対向面には、前記回動方向と同方向に傾斜を形成するテーパ部を設けるとともに、前期清掃体もこのテーパ部と逆方向に傾斜を形成する傾斜部を設けて構成したことを特徴とする乗客コンベアのオイルパン清掃装置。
【請求項5】
請求項1において、前記踏段の走行時間を積算し所定走行時間後に動作信号を出力するタイマーを設け、前記制御手段は、前記検知信号の受信に加え、前記タイマー出力信号を受信したことに応じて、前記駆動手段を駆動させて前記閉塞部材を開放位置に変位させるよう制御することを特徴とする乗客コンベアのオイルパン清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−302414(P2007−302414A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132740(P2006−132740)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】