説明

乗客コンベアの乗降口装置

【課題】本発明は、簡単な構成により、乗降口における踏段の移動をより詳細に乗客に伝えることができる乗客コンベアの乗降口装置を得ることを目的とするものである。
【解決手段】乗降口の下部には、複数の照明装置11が配置されている。照明装置11は、踏段2の移動方向の所定の範囲に渡って往路側の踏段2に光を照射する。床板16及び櫛板17は、照明装置11からの光を透過する材料により構成されている。これにより、床板16及び櫛板17は、踏段2間の隙間を通った照明装置11からの光を上方へ透過させ踏段2の移動を乗客に知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベアの乗降口に設けられている床板や櫛板等の床部材を含む乗客コンベアの乗降口装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアでは、乗降口の乗降板に、踏段の進行方向に沿って複数の発光装置が設けられている。これらの発光装置は、踏段の移動と関連付けられたタイミングで踏段の進行方向手前側から順次点灯される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−306288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の乗客コンベアでは、発光装置の点灯タイミングを踏段の移動に同期させるため、踏段の移動を検出するセンサや、発光装置の点滅を制御する制御装置が必要となり、コストが高くなってしまう。また、踏段の移動を細かく表示しようとすると、多数の発光装置が必要となり、コストがさらに高くなってしまう。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成により、乗降口における踏段の移動をより詳細に乗客に伝えることができる乗客コンベアの乗降口装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベアの乗降口装置は、乗降口の下部に配置され、踏段移動方向の所定の範囲に渡って往路側の踏段に光を照射する照明装置、及び踏段間の隙間を通った照明装置からの光を上方へ透過させ踏段の移動を乗客に知らせる光透過部を有し、乗降口の床部に設けられている床部材を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明の乗客コンベアの乗降口装置は、踏段移動方向の所定の範囲に渡って往路側の踏段に光を照射する照明装置を乗降口の下部に配置し、乗降口の床部材に、踏段間の隙間を通った照明装置からの光を上方へ透過させる光透過部を設けたので、簡単な構成により、乗降口における踏段の移動をより詳細に乗客に伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエスカレータの乗降口装置を示す側面図、図2は図1の乗降口装置を示す平面図、図3は図1のIII−III線に沿う断面図、図4は図1の要部を示す斜視図である。
【0009】
図において、主枠1内には、無端状に連結された複数の踏段2が設けられている。主枠1の長手方向の一端部には、機械室(マンホール)3が設けられている。機械室3内には、踏段2を駆動する駆動機4、及び駆動機4を制御する制御装置5が設置されている。駆動機4の駆動力は、駆動機4のスプロケット6から駆動チェーン7を介して駆動スプロケット8に伝達される。
【0010】
駆動スプロケット8には、踏段スプロケット(図示せず)が直結されている。踏段スプロケットが回転されることにより、踏段2が循環移動される。また、踏段2は、主枠1の長手方向の両端部近傍で反転される。踏段2の左右両側の主枠1上には、欄干9が立設されている。各欄干9の下部には、スカートガード10が設けられている。スカートガード10の下部は、踏段2の側部に隙間をおいて対向している。
【0011】
主枠1の幅方向両端部には、主枠1の長手方向に互いに間隔をおいて複数の縦部材1a(図3)が設けられている。左右に並んだ縦部材1a間には、主枠1の長手方向に互いに間隔をおいて複数の繋ぎ部材1bが取り付けられている。各繋ぎ部材1bは、往路側の踏段2と帰路側の踏段2との間に水平に配置されている。
【0012】
乗降口の下部には、複数の照明装置11が配置されている。照明装置11は、踏段2の移動方向の所定の範囲に渡って往路側の踏段2に光を照射する。具体的には、照明装置11は、乗降口の床部の下に位置する複数個(ここでは2〜3個)の往路側の踏段2と床部から露出した1〜2個の踏段2とに光を照射する。
【0013】
さらに、照明装置11は、踏段反転部に隣接する往路側の踏段2と帰路側の踏段2との間で、繋ぎ部材1b上に水平に取り付けられている。さらにまた、各照明装置11は、その長手方向が踏段2の移動方向と平行になるように配置されている。
【0014】
各照明装置11は、蛍光ランプ12、反射板13及び照明カバー14を有している(図3)。照明カバー14は、蛍光ランプ12の破損を防止するとともに照明装置11内に埃が入るのを防止するために、照明装置11の上面に設けられている。
【0015】
乗降口の床部には、マンホールカバー15、床板16及び櫛板17が設けられている。実施の形態1における床部材は、床板16及び櫛板17を含んでいる。マンホールカバー15は、機械室3の上部開口を塞いでいる。櫛板17には、踏段2のクリートと噛み合う複数の櫛18が取り付けられている。各櫛18は、図4に示すように、複数の皿ねじ19により櫛板17の端部に固定されている。床板16は、マンホールカバー15と櫛板17との間に配置され、踏段反転部の上方を覆っている。
【0016】
床板16及び櫛板17は、照明装置11からの光を透過する材料、例えば半透明のFRP(繊維強化プラスチック)により構成されている。これにより、床板16及び櫛板17は、踏段2間の隙間を通った照明装置11からの光を上方へ透過させ踏段2の移動を乗客に知らせる。即ち、実施の形態1では、床板16及び櫛板17の全体が光透過部として機能する。
【0017】
ここで、床板16及び櫛板17は、それらの上を乗客が歩行するため、十分な剛性と耐久性とを必要とする。従って、照明装置11からの光を透過しつつ、剛性及び耐久性を持たせるために、金属材料を併用してもよい。例えば、床板16及び櫛板17の周囲を金属枠で構成するとともに、金属枠内に複数の補強リブを設け、十分な強度を有するFRP製の板材を組み合わせてもよい。
【0018】
このようなエスカレータの乗降口装置では、例えば図5に示すように、隣接する踏段2間の隙間から踏段2の幅方向に帯状に放射される光20a〜20dが踏段2とともに移動する。これにより、乗降口から踏段2に乗り込む乗客が、移動する踏段2の位置及び移動速度を認識して、櫛板17から出てくる踏段2にタイミング良く乗り込むことができる。従って、乗降口での乗客の乗り込みがスムーズに行われ、乗降口での混雑が解消されて、輸送効率を向上させることができる。
【0019】
また、踏段2の移動を検出するセンサや、照明装置11の点滅のタイミングを細かく制御する制御装置が不要であり、簡単な構成により、乗降口における踏段の移動をより詳細に乗客に伝えることができる。
【0020】
実施の形態2.
次に、図6はこの発明の実施の形態2によるエスカレータの乗降口装置を示す平面図である。図において、床板16は、幅方向中央に位置する床板光透過部16aと、床板光透過部16aの両側に隣接する床板不透明部16b,16cとを有している。櫛板17は、幅方向中央に位置する櫛板光透過部17aと、櫛板光透過部17aの両側に隣接する櫛板不透明部17b,17cとを有している。
【0021】
床板光透過部16a及び櫛板光透過部17aは、所定の幅寸法Cで踏段2の移動方向に沿って連続して設けられている。床板不透明部16b,16c及び櫛板不透明部17b,17cは、半透明な材料の表面を不透明な材料で覆うことによって形成しても、全体を不透明な金属板で構成してもよい。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0022】
このようなエスカレータの乗降口装置では、光20a〜20dが床板光透過部16a及び櫛板光透過部17aを透過するため、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、リブ等による補強を省略したシンプルな構造で剛性を高くすることができ、コストを低減させることができる。さらに、踏段2の両側等が透けて見えるのを防止することができ、意匠性を向上させることができる。
【0023】
なお、マンホールカバー15の下方には照明装置11も踏段2も存在しないので、マンホールカバー15には通常の金属製の板を用いればよい。
また、床板16及び櫛板17だけでなく、櫛18にも光透過部を設けてもよい。逆に、踏段2の移動を乗客に知らせることができれば、床板16及び櫛板17のいずれか一方のみに光透過部を設けてもよい。
さらに、実施の形態2では、踏段2の移動方向に平行な1本の帯状の光透過部16a,17aを設けたが、踏段2の移動方向に平行な複数本の帯状の光透過部を踏段2の幅方向に互いに間隔をおいて設けてもよい。
さらにまた、実施の形態2では、光透過部16a,17aが踏段2の移動方向に連続して設けられているが、光20a〜20dの移動をある程度連続的に確認できれば、踏段2の移動方向に複数に分割されていてもよい。
即ち、光透過部は、踏段2間の隙間を通った照明装置11からの光を上方へ透過させ踏段2の移動を乗客に知らせることができればよく、光透過部の数や形状は特に限定されない。
【0024】
また、上記の例では、照明装置11の光源として、踏段2の移動方向に平行に配置された蛍光ランプ12を用いたが、踏段2の移動方向に互いに間隔をおいて並べられた複数個の電球を用いてもよい。
さらに、上記の例では、踏段2の幅方向のほぼ全体に光を照射するように照明装置11を設けたが、隙間を透過した光から踏段2の移動を知らせることができれば、幅方向の一部のみに照射してもよい。
【0025】
さらにまた、この発明は、エスカレータの乗降口装置だけではなく、動く歩道の乗降口装置にも適用できる。
また、乗客コンベアの運転方向が固定されている場合には、乗り口側のみにこの発明を適用してもよい。
さらに、運転方向が切り替えられる乗客コンベアでは、運転方向の切り替えに連動して、乗り口側の照明装置11を点灯させ、降り口側の照明装置11を消灯させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1によるエスカレータの乗降口装置を示す側面図である。
【図2】図1の乗降口装置を示す平面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1の要部を示す斜視図である。
【図5】図1の乗降口装置の動作を示す平面図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるエスカレータの乗降口装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0027】
2 踏段、11 照明装置、16 床板(床部材)、16a 床板光透過部、17 櫛板、17a 櫛板光透過部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口の下部に配置され、踏段移動方向の所定の範囲に渡って往路側の踏段に光を照射する照明装置、及び
上記踏段間の隙間を通った上記照明装置からの光を上方へ透過させ上記踏段の移動を乗客に知らせる光透過部を有し、上記乗降口の床部に設けられている床部材
を備えていることを特徴とする乗客コンベアの乗降口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−62101(P2009−62101A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228844(P2007−228844)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】