説明

乗客コンベアの異常検出装置

【課題】1個の車輪のみが損傷した場合にあっても、それを速やかに検出できる乗客コンベアの踏段の異常検出装置。
【解決手段】乗客を搬送しない区間を移動する踏段2の左側後輪、左側前輪、右側後輪8AR及び右側前輪を案内する非搬送ガイドレールのうち、左側後輪及び左側前輪のいずれか一方の車輪を案内する左側非搬送ガイドレールと、右側後輪8AR及び右側前輪のいずれか一方の車輪を案内する右側非搬送ガイドレールに、下方に陥没する凹部と凹部に落ち込んだ車輪を検出する検出部26とをそれぞれ設ける。凹部は、左側後輪及び左側前輪のいずれか一方の車輪が落ち込む踏段2の位置と、右側後輪及8AR及び右側前輪のいずれか一方の車輪が落ち込む踏段2の位置とが異なるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、乗客コンベアの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアは、無端状の踏段チェーンに取り付けられて循環移動する複数の踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた車輪と、乗客を搬送する区間を移動する前記踏段に設けられた前記車輪を案内する搬送ガイドレールと、乗客を搬送しない区間を移動する前記踏段に設けられた前記車輪を案内する非搬送ガイドレールとを備える。前記踏段に設けられた車輪には、前記踏段の左右両側に設けられた前記踏段チェーンに軸支された左右の前輪と、前記踏段の蹴上げ面の下方の左右両側に軸支された後輪がある。
【0003】
これらの前輪及び後輪は、一般に、中心部のボールベアリングと、その周囲を囲む合成樹脂などからなるタイヤ部とからなっている。
【0004】
例えば、乗客コンベアを長期間使用すると、寿命や外的な要因などの何らかの理由により、前記前輪や前記後輪を構成する前記ベアリングやタイヤ部が損傷することがある。
【0005】
踏段に設けられた前輪や後輪が損傷すると、乗客が乗り込んだときに損傷した車輪が落ち込み踏み面に傾斜が生じ、これにより、踏段間の隙間が広がったり踏段とコムとの隙間が広がりして乗客の履物の先が挟まれるなどの危険が増すおそれがある。また、踏み面の傾斜に伴って踏段の側面とスカートガードパネルとが擦れて異音が生じることも懸念される。
【0006】
そこで、踏段の移動中に踏段の落ち込みを検出することにより、踏段に設けられた車輪の損傷を検出するものとして、エスカレータのガイドレールに踏み板や蹴上げ面や踏段車輪軸の下方への落ち込みを検出する装置が従来より知られている(例えば特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−176184
【特許文献2】実開昭62−71177
【特許文献3】特開2003−63765
【特許文献4】特開2007−76823
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、踏段には通常4個の車輪が取り付けられているので、そのうちの1個だけが損傷した場合であっても、残りの3個の車輪がガイドレールに正常に支えられていれば、踏段は3箇所において支持され移動中の踏段の姿勢が維持される。したがって、上記した従来の検出装置では、車輪が損傷している踏段に乗客が乗った場合や2個以上の車輪が損傷した場合など、著しく踏段が落ち込むまで車輪の損傷を検出することができないことがある。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題を考慮してなされたものであり、1個の車輪のみが損傷した場合にあっても、それを速やかに検出でき、安全確保のための適切な措置を取ることができる乗客コンベアの踏段の異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の乗客コンベアの異常検出装置は、無端状の踏段チェーンに取り付けられて循環移動する複数の踏段と、前記踏段の左側に設けられた左側後輪及び左側前輪と、前記踏段の右側に設けられた右側後輪及び右側前輪と、乗客を搬送する区間を移動する前記踏段の前記左側後輪、前記左側前輪、前記右側後輪及び前記右側前輪を案内する搬送ガイドレールと、乗客を搬送しない区間を移動する前記踏段の前記左側後輪、前記左側前輪、前記右側後輪及び前記右側前輪を案内する非搬送ガイドレールとを有し、前記非搬送ガイドレールは、前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪を案内する左側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する左側凹部と、前記左側凹部に落ち込んだ前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪を検出する左側検出部と、前記右側後輪及び前記右側前輪のいずれか一方の車輪を案内する右側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する右側凹部と、前記右側凹部に落ち込んだ前記右側後輪及び前記右側前輪のいずれか一方の車輪を検出する右側検出部とを備え、前記左側凹部に前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪が落ち込む前記踏段の位置と、前記右側凹部に前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪が落ち込む前記踏段の位置とが異なるように、前記左側凹部と前記右側凹部とが設けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る乗客コンベアの異常検出装置を有する乗客コンベアの全体構造の概略を示す側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】凹部に車輪が落ち込む踏段の位置を示す乗客コンベアの異常検出装置の要部拡大側面図である。
【図6】正常な踏段が移動している状態を示す乗客コンベアの異常検出装置の要部拡大側面図である。
【図7】右側後輪が右後側凹部に落ち込んだ状態を示す乗客コンベアの異常検出装置の要部拡大側面図である。
【図8】右側後輪が右後側凹部に落ち込んだ状態を示す乗客コンベアの異常検出装置の要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る乗客コンベアの異常検出装置の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本明細書では左右の側は下階側から見た側をいう。
【0013】
本実施形態に係る乗客コンベアの異常検出装置は、例えば、建物の上下階に跨って傾斜して設置された乗客コンベア(エスカレータ)1に設けられている。
【0014】
この乗客コンベア1は、図1に示すように、多数の踏段2を上階側の乗降口と下階側の乗降口との間で循環移動させることで、上階側及び下階側のそれぞれの乗降口の端部に設けられたコム3,4の間において踏段2に搭乗した乗客を搬送する。
【0015】
踏段2は、その両側に配置された無端状の踏段チェーン5によって連結されており(図3及び図4参照)、建物の床下に設置されたトラス6内に配置されている。
【0016】
踏段2の左側には、踏段2の蹴上げ面2aの下方にベアリング10ALを介して軸支された左側後輪8ALと、踏段チェーン5にベアリング10BLを介して軸支された左側前輪8BLとが設けられ、踏段2の右側には、踏段2の蹴上げ面2aの下方にベアリング10ARを介して軸支された右側後輪8ARと、踏段チェーン5にベアリング10BRを介して軸支された右側前輪8BRとが設けられており、左側後輪8AL及び右側後輪8ARが踏段2の幅方向に対向し、左側前輪8BL及び右側前輪8BRが踏段2の幅方向に対向するように、1つの踏段2に4個の車輪8が設けられている。なお、必要に応じて、左側後輪8AL及び右側後輪8ARを総称して後輪8Aといい、左側前輪8BL及び右側前輪8BRを総称して前輪8Bという。
【0017】
踏段2の両側には、搬送ガイドレール12及び非搬送ガイドレール14とが踏段2の進行方向に沿って配設されておりボルト等によってトラス6に固定されている。搬送ガイドレール12及び非搬送ガイドレール14は、踏段2に設けられた4個の車輪8が転動する転動面を備え車輪8を搬送ガイドレール12及び非搬送ガイドレール14に沿って案内する。
【0018】
図1に示すように、搬送ガイドレール12は、乗客を搬送する区間R、言い換えれば、上階の乗降口に設けたコム3と下階の乗降口に設けたコム4との間において踏段2の踏み面2bが外部へ露出する区間Rを移動する踏段2に設けられた4個の車輪を案内するもので、具体的には、左側後輪8ALを案内する左後側搬送ガイドレール12ALと、右側後輪8ARを案内する右後側搬送ガイドレール12ARと、左側前輪8BLを案内する左前側搬送ガイドレール12BLと、右側前輪8BRを案内する右前側搬送ガイドレール12BRとから構成されている。
【0019】
非搬送ガイドレール14は、乗客を搬送する区間R以外の乗客を搬送しない区間S、言い換えれば、一方の乗降口に設けられたコム(例えば、コム3)から乗降口下方のトラス6の内部に進入し、乗客を搬送する区間Rを移動する踏段2の下方を通って、他方の乗降口に設けられたコム(例えば、コム4)からトラス6の外部へ進出するまでの区間Sを移動する踏段2に設けられた4個の車輪を案内するもので、具体的には、左側後輪8ALを案内する左後側非搬送ガイドレール14ALと、右側後輪8ARを案内する右後側非搬送ガイドレール14ARと、左側前輪8BLを案内する左前側非搬送ガイドレール14BLと、右側前輪8BRを案内する右前側非搬送ガイドレール14BRとから構成されている。
【0020】
なお、本実施形態では、乗客を搬送しない区間Sは、上階側の乗降口に設けられたコム3から上階側の乗降口下方のトラス6の内部に進入してから踏段2の姿勢が反転し始めるまでの踏段2が水平方向に移動する区間S1と、踏み面2bが上方から下方に向くように踏段2の姿勢を反転させる区間S2と、反転した踏段2が水平方向に移動する区間S3と、乗客コンベア1の傾斜の傾斜部1aに沿って踏段2が斜めに移動する区間S4と、下階側のトラス6の内部において踏段2が水平方向に移動する区間S5と、踏み面2bが下方から上方に向くように踏段2の姿勢を反転させる区間S6と、踏段2の姿勢が反転し終えてから下階側の乗降口に設けられたコム4からトラス6の外部へ進出するまでの踏段2が水平方向に移動する区間S7とからなる。
【0021】
トラス6の内部の上階側には、駆動スプロケット16と、駆動チェーン18を介して駆動スプロケット16に回転力を伝達する駆動装置20とが配置されている。トラス6の内部の下階側には、従動スプロケット22が配置されている。
【0022】
駆動スプロケット16と従動スプロケット22との間には踏段チェーン5が架け渡されており、駆動装置20から回転力を受けた駆動スプロケット16の回転によって、踏段チェーン5が駆動スプロケット16と従動スプロケット22の間を循環移動する。踏段チェーン5の循環移動に伴って、踏段2に設けられた左側後輪8AL、右側後輪8AR、左側前輪8BL、及び右側前輪8BRが、搬送ガイドレール12及び非搬送ガイドレール14を摺動することで、踏段2は乗客を搬送する区間Rと乗客を搬送しない区間Sとを交互に通って上階側の乗降口と下階側の乗降口との間を循環移動する。
【0023】
このような乗客コンベア1において、非搬送ガイドレール14には、本実施形態に係る乗客コンベアの異常検出装置が備える凹部と検出部とが設けられている。
【0024】
詳細には、図2〜図4に示すように、右後側非搬送ガイドレール14ARには、右後側凹部24ARが形成されている。この右後側凹部24ARは、右後側非搬送ガイドレール14ARにおいて右側後輪8ARが転動する転動面14AR−1より下方に陥没しており、図4において符号Dで示す深さが例えば2〜7mm程度に設けられている。この右後側凹部24ARは、例えば、右後側非搬送ガイドレール14ARに対して曲げ加工を施すことで形成されている。
【0025】
右後側凹部24ARの底部24AR−1は、傾斜面24AR−2によって右後側非搬送ガイドレール14ARの転動面14AR−1と緩やかに接続されている。
【0026】
右後側凹部24ARの底部24AR−1には、右後側凹部24ARに落ち込んだ右側後輪8ARを検出する右後側検出部26ARが設けられている。
【0027】
右後側検出部26ARは、例えば、アクチュエータ26AR−1の作動を検出するリミットスイッチであり、アクチュエータ26AR−1が、右後側凹部24ARの底部24AR−1に設けられた切欠部24AR−3を通して底部24AR−1より上方に突出するとともに、転動面14AR−1を右後側凹部24AR上に延長した平面Tから突出しないように設けられている。つまり、アクチュエータ26AR−1は、右後側凹部24ARの内部に収まるように設けられている。
【0028】
このような右後側検出部26ARは、図8に示すように、右後側非搬送ガイドレール14ARに案内される右側後輪8ARが右後側凹部24ARに落ち込むと、底部24AR−1より突出するアクチュエータ26AR−1が右側後輪8ARによって下方へ押圧されることで、右後側凹部24ARに落ち込んだ右側後輪8ARを検出する。
【0029】
なお、本実施形態では、右後側検出部26ARをリミットスイッチで構成したが、例えば、踏段後輪8ARの軸端部やその他の箇所の変位を検出する近接センサなど右後側凹部24ARに落ち込んだ右側後輪8ARを検出することができるものであればよい。
【0030】
また、本実施形態では、右後側非搬送ガイドレール14ARだけでなく、左後側非搬送ガイドレール14ALには、下方に陥没する左後側凹部24ALと、左後側凹部24ALに落ち込んだ左側後輪8ALを検出する左後側検出部26ALとが設けられ、右前側非搬送ガイドレール14BRには、下方に陥没する右前側凹部24BRと、右前側凹部24BRに落ち込んだ右側前輪8BRを検出する右前側検出部26BRとが設けられ、左前側非搬送ガイドレール14BLには、下方に陥没する左前側凹部24BLと、左前側凹部24BLに落ち込んだ左側前輪8BLを検出する左前側検出部26BLとが設けられている。
【0031】
なお、左後側凹部24AL、右前側凹部24BR、及び左前側凹部24BLの形状は、上記した右後側凹部24ARの形状と同一であり、左後側検出部26AL、右前側検出部26BR、及び左前側検出部26BLの構造は、上記した右後側検出部26ARの構造と同一であるため、左後側凹部24AL、右前側凹部24BR、及び左前側凹部24BLの形状と左後側検出部26AL、右前側検出部26BR、及び左前側検出部26BLの構造に関する詳細な説明を省略する。
【0032】
そして、図5に示すように、右後側凹部24AR、左後側凹部24AL、右前側凹部24BR、及び左前側凹部24BL(以下、これらを総称して凹部24という)は、右後側凹部24ARに右側後輪8ARが落ち込む踏段2の位置P1と、左後側凹部24ALに左側後輪8ALが落ち込む踏段の位置P2と、右前側凹部24BRに右側前輪8BRが落ち込む踏段2の位置P3と、左前側凹部24BLに左側前輪8BLが落ち込む踏段2の位置P4とが異なるように設けられており、踏段2に設けられた4個の車輪8のうち2個以上の車輪8が同時に凹部24の上方を移動することがない。
【0033】
以上のように構成された本実施形態の作用について説明する。図6は、踏段2が上昇方向あるいは下降方向のいずれかの方向に移動して、踏段2の右側後輪8ARが右後側非搬送ガイドレール14ARに設けられた右後側凹部24ARの上方を通過している状態を示している。
【0034】
図6に示すように、踏段2の右側後輪8ARが右後側凹部24ARの上方に位置した状態では、右側後輪8ARが右後側非搬送ガイドレール14ARに支持されなくなり、右側後輪8ARを除く他の3個の車輪、つまり、左側後輪8AL、右側前輪8BR、及び左側前輪8BLによって踏段2が支持される。
【0035】
その際に、左側後輪8AL、右側前輪8BR、及び左側前輪8BLが損傷しておらずこれらの3個の車輪が全て正常であれば、踏段2は4個の車輪によって支持された状態と同じ姿勢を維持することができるため、右側後輪8ARが右後側凹部24ARの底部24AR−1に落ち込むことがなく、右後側検出部26ARが作動することがない。
【0036】
一方、左側後輪8AL、右側前輪8BR、及び左側前輪8BLのいずれか1個の車輪が損傷している場合、例えば、左側後輪8ALが損傷している場合、図2に示すように踏段2の右側後輪8ARが右後側凹部24ARの上方に位置していなければ、左側後輪8AL以外の3個の車輪、つまり、右側後輪8AR、右側前輪8BR、及び左側前輪8BLによって踏段2が支持されているため、乗客が搭乗するなど当該踏段2に大きな荷重が作用しない限り、踏段2は4個の車輪8によって支持された状態と同じ姿勢を維持する。
【0037】
しかしながら、図7及び図8に示すように、踏段2の右側後輪8ARが右後側凹部24ARの上方に位置した状態では、右側後輪8ARが右後側非搬送ガイドレール14ARに支持されなくなる。そうすると、左右の2個の前輪8Bだけで踏段2を支持することができず、踏段2が前輪8Bの回転軸の回りに矢符Mで示す方向へ移動して、右側後輪8ARが右後側凹部24ARの底部24AR−1に落ち込み右後側検出部26ARを作動させ、これにより、車輪の損傷を検出することができる。
【0038】
また、右側前輪8BR及び左側前輪8BLのいずれか一方の前輪8Bが損傷し踏段2を支持していない場合も、上記した左側後輪8ALが損傷した場合と同様、踏段2の右側後輪8ARが右後側凹部24ARの上方に位置した状態では、右側後輪8ARも右後側非搬送ガイドレール14ARに支持されなくなるため、右側後輪8ARが右後側凹部24ARの底部24AR−1に落ち込み右後側検出部26ARを作動させ、車輪の損傷を検出することができる。
【0039】
また、特に図示しないが、踏段2の左側後輪8ALが左後側凹部24ALの上方に位置した状態では、左側後輪8ALが左後側非搬送ガイドレール14ALに支持されなくなるため、左側後輪8ALを除く他の3個の車輪のいずれか1個が損傷していると、左側後輪8ALが左後側凹部24ALの底部24AL−1に落ち込み左後側検出部26ALを作動させる。
【0040】
踏段2の右側前輪8BRが右前側凹部24BRの上方に位置した状態では、右側前輪8BRが右前側非搬送ガイドレール14BRに支持されなくなるため、右側前輪8BRを除く他の3個の車輪のいずれか1個が損傷していると、右側前輪8BRが右前側凹部24BRの底部24BR−1に落ち込み右前側検出部26BRを作動させる。
【0041】
踏段2の左側前輪8BLが左前側凹部24BLの上方に位置した状態では、左側前輪8BLが左前側非搬送ガイドレール14BLに支持されなくなるため、左側前輪8BLを除く他の3個の車輪のいずれか1個が損傷していると、左側前輪8BLが左前側凹部24BLの底部24BL−1に落ち込み左前側検出部26BLを作動させる。
【0042】
したがって、右後側凹部24ARに設けられた右後側検出部26ARによって、左側後輪8AL、右側前輪8BR、及び左側前輪8BLの損傷を検出することができ、左後側凹部24ALに設けられた左後側検出部26ALによって、右側後輪8AR、右側前輪8BR、及び左側前輪8BLの損傷を検出することができ、右前側凹部24BRに設けられた右前側検出部26BRによって、右側後輪8AR、左側後輪8AL、及び左側前輪8BLの損傷を検出することができ、左前側凹部24BLに設けられた左前側検出部26BLによって、右側後輪8AR、左側後輪8AL、及び右側前輪8BRの損傷を検出することができる。
【0043】
そして、右後側検出部26AR、左後側検出部26AL、右前側検出部26BR、及び左前側検出部26BL(以下、これらを総称して検出部26という)のいずれか1つの検出部26が作動すると、踏段2に設けられた車輪8が損傷しているとして、エスカレータを緩やかに停止させたり、異常を報知して速やかに損傷した車輪の修理や交換を行ったりすることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、踏段2に設けられた4個の車輪8のうち2個以上の車輪8が同時に凹部24の上方を移動することがないように非搬送ガイドレール14に凹部24を設け、該凹部24に落ち込んだ車輪8を検出するため、1個の車輪8のみが損傷した場合にあっても、それを速やかに検出でき、安全確保のための適切な措置を取ることができる。
【0045】
また、凹部24内での小さい落ち込み量で各検出部26を構成するリミットスイッチが作動するようにリミットスイッチの作動範囲を調整しておけば、落ち込み量が通常の運転には支障がない程度の小さい段階で車輪8の異常を検出することができる。
【0046】
また、踏段2はその構造から車輪8が損傷した場合に踏段2の幅方向を回転軸として傾きやすく、損傷した車輪8に対して踏段2の幅方向に対向する車輪(つまり、右側後輪8ARが損傷した場合であると左側後輪8AL、左側後輪8ALが損傷した場合であると右側後輪8AR、右側前輪8BRが損傷した場合であると左側前輪8BL、左側前輪8BLが損傷した場合であると右側前輪8BR)が凹部24に落ち込みやすくなる。本実施形態では、右後側非搬送ガイドレール14ARに右後側凹部24AR及び右後側検出部26ARを設け、左後側非搬送ガイドレール14ALに左後側凹部24AL及び左後側検出部26ALを設け、右前側非搬送ガイドレール14BRに右前側凹部24BR及び右前側検出部26BRを設け、左前側非搬送ガイドレール14BLに左前側凹部24BL及び左前側検出部26BLを設けて、4個の車輪8の凹部24への落ち込みを検出することができるため、いずれの車輪8についても精度良く損傷を検出することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、上記のように4個の車輪8の凹部24への落ち込みを検出するように構成したが、例えば、左右の後輪8Aについて凹部24への落ち込みを検出したり、左右の前輪8Bについて凹部24への落ち込みを検出したり、後輪8Aの一方と前輪8Bの一方について凹部24への落ち込みを検出するなど、踏段2に設けられた4個の車輪8のいずれか2個以上の車輪について凹部24への落ち込みを検出するように構成してもよい。
【0048】
また、個々の踏段2を識別する手段を乗客コンベア1に設けて、車輪の破損が検出された踏段を特定し記録しても良い。
【0049】
また、上記した本実施形態では、乗客を搬送しない区間Sのうち区間S4を移動する踏段2に設けられた車輪8を案内する非搬送ガイドレール14に凹部24及び検出部26を設けたが、踏段2の姿勢を反転させる区間S2及び区間S6以外の区間S1、区間S3〜S5、及び区間S7を移動する踏段2に設けられた車輪を案内する非搬送ガイドレール14に凹部24及び検出部26を設けてもよい。
【0050】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0051】
上記した第1の実施形態では、非搬送ガイドレール14に対して曲げ加工を施すことで凹部24を形成したが、本実施形態では、図9に示すように、非搬送ガイドレール14の転動面14−1の一部を切断して開口部30を形成し、開口部30を下方から底板部材32によって覆うことで凹部24を形成する。
【0052】
底板部材32には切欠部24−3が穿設されており、この切欠部24−3を通して検出部26のアクチュエータ26−1が凹部24の内部に収まるように設けられている。
【0053】
開口部30の縁部には、凹部24の底部24−1を構成する底板部材32の上面と非搬送ガイドレール14の転動面14−1とを緩やかに接続する傾斜面24−2が設けられてもよい。
【0054】
本実施形態では、非搬送ガイドレール14がトラス6に既に取り付けられた状態にある既設の乗客コンベアであって簡単に凹部24を設けることができ、稼働時間が長く車輪8の損傷が懸念される既設の乗客コンベアに対して車輪8の損傷を検出する異常検出装置を簡単に設置することができる。
【0055】
また、本実施形態の変更例として、非搬送ガイドレール14の転動面14−1の一部を切断することなく、非搬送ガイドレール14を厚さ方向に削って凹部24部分の肉厚を薄くすることで下方に陥没する凹部24を形成してもよい。
【0056】
なお、上記した構成及び作用効果以外は第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1…乗客コンベア 2…踏段 3…コム 4…コム 5…踏段チェーン
8…車輪 8A…後輪 8AL…左側後輪 8AR…右側後輪
8B…前輪 8BL…左側前輪 8BR…右側前輪 12…搬送ガイドレール
12BL…左前側搬送ガイドレール 12BR…右前側搬送ガイドレール
12AL…左後側搬送ガイドレール 12AR…右後側搬送ガイドレール
14…非搬送ガイドレール 14AL…左後側非搬送ガイドレール
14AR…右後側非搬送ガイドレール 14BL…左前側非搬送ガイドレール
14BR…右前側非搬送ガイドレール 24…凹部 24AL…左後側凹部
24AR…右後側凹部 24BL…左前側凹部 24BR…右前側凹部
26…検出部 26AL…左後側検出部 26AR…右後側検出部
26BL…左前側検出部 26BR…右前側検出部 30…開口部
32…底板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の踏段チェーンに取り付けられて循環移動する複数の踏段と、前記踏段の左側に設けられた左側後輪及び左側前輪と、前記踏段の右側に設けられた右側後輪及び右側前輪と、乗客を搬送する区間を移動する前記踏段の左側後輪、左側前輪、右側後輪及び右側前輪を案内する搬送ガイドレールと、乗客を搬送しない区間を移動する前記踏段の左側後輪、左側前輪、右側後輪及び右側前輪を案内する非搬送ガイドレールとを有する乗客コンベアの異常検出装置において、
前記非搬送ガイドレールは、前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪を案内する左側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する左側凹部と、前記左側凹部に落ち込んだ前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪を検出する左側検出部と、前記右側後輪及び前記右側前輪のいずれか一方の車輪を案内する右側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する右側凹部と、前記右側凹部に落ち込んだ前記右側後輪及び前記右側前輪のいずれか一方の車輪を検出する右側検出部とを備え、
前記左側凹部に前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪が落ち込む前記踏段の位置と、前記右側凹部に前記左側後輪及び前記左側前輪のいずれか一方の車輪が落ち込む前記踏段の位置とが異なるように、前記左側凹部と前記右側凹部とが設けられていることを特徴とする乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項2】
前記左側凹部が前記左側後輪を案内する前記左側非搬送ガイドレールに形成され、
前記右側凹部が前記右側後輪を案内する前記右側非搬送ガイドレールに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項3】
前記左側凹部が前記左側前輪を案内する前記左側非搬送ガイドレールに形成され、
前記右側凹部が前記右側前輪を案内する前記右側非搬送ガイドレールに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項4】
前記非搬送ガイドレールは、前記左側後輪を案内する左後側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する左後側凹部と、前記左後側凹部に落ち込んだ前記左側後輪を検出する左後側検出部と、前記右側後輪を案内する右後側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する右後側凹部と、前記右後側凹部に落ち込んだ前記右側後輪を検出する右後側検出部と、前記左側前輪を案内する左前側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する左前側凹部と、前記左前側凹部に落ち込んだ前記左側前輪を検出する左前側検出部と、前記右側前輪を案内する右前側非搬送ガイドレールに形成された下方に陥没する右前側凹部と、前記右前側凹部に落ち込んだ前記右側前輪を検出する右前側検出部とを備え、
前記左後側凹部に前記左側後輪が落ち込む前記踏段の位置と、前記右後側凹部に前記右側後輪が落ち込む前記踏段の位置と、前記左前側凹部に前記左側前輪が落ち込む前記踏段の位置と、前記右前側凹部に前記右側前輪が落ち込む前記踏段の位置とが異なるように、前記左後側凹部と、前記右後側凹部と、前記左前側凹部と、前記右前側凹部とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項5】
前記左側凹部及び前記右側凹部の少なくとも一方は、前記非搬送ガイドレールの一部を切断して形成された開口部と、前記開口部を下方から覆う底板部材とを備えることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項6】
前記左側凹部及び前記右側凹部の少なくとも一方は、前記非搬送ガイドレールを厚さ方向に削って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの異常検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−6684(P2013−6684A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142059(P2011−142059)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】