説明

乗客コンベア

【課題】乗客の不快感を取り除くことができ、心地よく利用してもらえる乗客コンベヤを提供する。
【解決手段】各ステップ8における複数の溝の間隔、及び複数の欄干照明装置21の照度が、規則性と不規則性の調和した1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるようにそれぞれ不均一になっており、乗降板16における多数の凸部及び/又は多数の凹部に、1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一な着色が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ、動く歩道等の乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、機械品は生産性及び効率性の観点から幾何学的なものが多く、エスカレータ,動く歩道等の乗客コンベアも例外ではなく、幾何学的なものによって構成されている。即ち、図5に示すように、ステップ101の踏面に進行方向に延びるように形成された複数の溝102の間隔が均一になっていたり、図6に示すように、乗降板103の踏面に形成された凹凸パターン104における多数の凹部104a及び多数の凸部104bに均一な着色が施されたりしている。
【0003】
なお、本発明に関連する先行技術として、特許文献1及び特許文献2に示すものがある。
【特許文献1】特開平09−202582号公報
【特許文献2】特開平04−16492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、幾何学的なものに囲まれた空間では、人は時として不快感を覚えたり、ストレスを感じたりすることがある。乗客コンベアにおいても、乗客は、ステップ101の踏面、乗降板103の踏面等から視覚的に不快感を感じることがあり、特に、長い下りのエスカレータや長い動く歩道では、長時間ステップ101の踏面を見ることになるため、そのような心境になりがちである。
【0005】
そこで、本発明は、乗客の不快感を取り除くことができる、新規な構成の乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の乗客コンベヤは、
両端部にそれぞれ乗降口が設けられたトラスと、
前記乗降口間を循環走行し、踏面に走行方向に延びる複数の溝が形成されると共に環状に連結された複数のステップと、
前記複数のステップの両側に立設された一対の欄干と、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、を具備し、
前記各ステップにおける前記複数の溝の間隔が、それぞれ不均一になっていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る第2の乗客コンベヤは、
両端部にそれぞれ乗降口が設けられたトラスと、
前記乗降口間を循環走行し、環状に連結された複数のステップと、
前記複数のステップの両側に立設された一対の欄干と、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、
前記各乗降口にそれぞれ設けられ、踏面に多数の凹部及び多数の凸部からなる凹凸パターンがそれぞれ形成された乗降板と、を具備し、
前記乗降板における前記多数の凸部及び/又は前記多数の凹部に、不均一な着色が施されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る第3の乗客コンベヤは、
両端部にそれぞれ乗降口が設けられたトラスと、
前記乗降口間を循環走行し、環状に連結された複数のステップと、
前記複数のステップの両側に立設された一対の欄干と、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、
前記各欄干の長手方向に沿って設けられた複数の照明装置と、を具備し、
前記複数の照明装置の照度が不均一になっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乗客に心地よく乗客コンベアを利用してもらうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のエスカレータの側面図、図2は、本実施形態のステップの平面図、図3は、本実施形態の乗降板本体の平面図、図4は、本実施形態の乗降板の平面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のエスカレータ1は、乗客を下階方向へ運搬するものであり、具体的な構成は、次の通りである。
【0013】
即ち、建物2には、運搬方向へ延びると共に両端部に乗降口が設けられたトラス3が設置されている。トラス3における上階部付近には、左右に離隔した一対の駆動スプロケット4(図中には1つのみ図示)が回転可能に設けられてあって、トラス3における下階部付近には、左右に離隔した一対の従動スプロケット5(図中には1つのみ図示)が回転可能に設けられている。
【0014】
また、左側の駆動スプロケット4と左側の従動スプロケット5の間、及び右側の駆動スプロケット4と右側の従動スプロケット5の間には、環状の走行チェーン6(図中には1つのみ図示)がそれぞれ掛け回すように設けられている。そして、トラス3における駆動スプロケット4の近傍には、走行モータ7が設けられており、一対の駆動スプロケット4は、走行モータ7の出力軸に適宜の連結機構を介して連動連結してある。
【0015】
一対の走行チェーン6の間には、上階部2aの乗降口と下階部2bの乗降口との間を循環走行し、走行チェーン6によって環状に連結された複数のステップ8(一部図示省略)が設けられている。各ステップ8は、図2に示すように、矩形状のクリート9と、前端縁に沿って設けられたデマケーションコム10と、両側縁に沿って設けられた一対のデマケーションクリート11と備えてあって、踏面には、走行方向に延びる複数の溝12が形成されている。
【0016】
図1に示すように、トラス3における複数のステップ8の左右両側には、運搬方向へ延びる一対の欄干13(図中には一つのみ図示)が立設されている。各欄干13には、環状の手摺ベルト14がそれぞれ設けられてあって、この手摺ベルト14は、複数のステップ8と略同じ速度で循環走行する。
【0017】
そして、手摺ベルト14を複数のステップ8と略同じ速度で循環走行させるため、トラス3における駆動スプロケット4の近傍には、走行モータ7の出力軸に連動連結した一対の駆動シーブ15(図中には1つのみ図示)が回転可能に設けられており、各駆動シーブ15の外周面には、対応する手摺ベルト14がそれぞれ掛け回されている。
【0018】
トラス3における上階側端部及び下階側端部には、乗降口を形成する乗降板16がそれぞれ設けられている。各乗降板16は、図4に示すように、乗降板本体17と、コムプレート18と、コム19とを備えている。また、各乗降板16における乗降板本体17及びコムプレート18の踏面には、多数の凹部20a及び多数の凸部20bからなる凹凸パターン20がそれぞれ形成されており、この凸パターン20における多数の凹部20aと多数の凸部20bは、図の上下方向及び左右方向に略均等に間隔をおいて配置してある。なお、乗降板本体17には、階床表示や社標が付されている。
【0019】
図1に示すように、各欄干13の上部には、複数の欄干照明装置21が欄干13の長手方向に沿って設けられており、各欄干照明装置21は、ランプ又はLED(図示省略)をそれぞれ備えている。
【0020】
次に、本発明の実施形態の要部について説明する。
【0021】
図2において、各ステップ8における複数の溝12の間隔は、規則性と不規則性の調和した1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるようにそれぞれ不均一になっている。
【0022】
ここで、1/fゆらぎとは、自然界に多く存在し、小川のせせらぎ、そよ風、小鳥のさえずり等の心地よいリズムに相当し、心地よい音楽を聴いたときや安静にしているときの脳波、人の心拍の間隔にも存在して、生体と深い関わりがあって、人に心地よさや安らぎを与えるものである。
【0023】
1/fゆらぎの数値列は、例えば、乱数列x、x、x、・・・に、n個の係数a、a、a、・・・、aを演算して得られるy、y、y、・・・より求める。なお、yは下記数1の式で表される。このy、y、y、・・・なる数値列は1/fスペクトルを有する(コロナ社出版、生体信号、第10章「生体リズムとゆらぎ」参照)。
【0024】
(数1)
=x+(1/2)xj+1+(1・3/2・2!)xj+2
+(1・3・5/2・3!)xj+3+・・・
+(1・3・5・・・(2n−1)/2n−1・(n−1)!)xj+n−1
乱数列xはコンピュータで生成し、これにメモリに記憶させてあるn個の係数を演算して線形変換処理を行い、数値列yを得る。この数値列yに基づいてステップ8における複数の溝12の間隔を決定することで、1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えることができる。
【0025】
また、乗降板本体17及びコムプレート18における多数の凸部20bには、規則性と不規則性の調和した1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一な着色が施されている。
【0026】
具体的には、例えば、図3中の白抜きの凸部20bは、銀色の着色が施されてあって、斜線の凸部20bは、黒色の着色が施されている。この銀色あるいは黒色の凸部2bの位置を表す座標を前記数値列yに基づいて決定することで、1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えることができる。
【0027】
なお、乗降板本体17及びコムプレート18における多数の凸部20bの代わりに、或いは乗降板本体17及びコムプレート18における多数の凸部20bと併せて、乗降板本体17及びコムプレート18における多数の凹部20aに1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一な着色が施されても差し支えない。
【0028】
また、複数の欄干照明装置21の照度についても、規則性と不規則性の調和した1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一になっている。すなわち、各欄干照明装置21に与えられる電気信号の大きさを前記数値列yに基づいて決定することで、1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えることができる。
【0029】
以上のように、各ステップ8における複数の溝12の間隔及び複数の欄干照明装置21の照度が1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるようにそれぞれ不均一になっており、乗降板本体17及びコムプレート18における多数の凸部20bに1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一な着色が施されているため、乗客の視覚的な不快感を取り除くことができる。よって、乗客に心地よくエスカレータ1を利用してもらうことができる。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態の他にも種々の態様で実施可能である。即ち、各ステップ8における複数の溝12の間隔及び複数の欄干照明装置21の照度が1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるようにそれぞれ不均一になっていなくても、単に不均一になっていれば構わない。
【0031】
また、乗降板本体17及びコムプレート18における多数の凹部20a及び/又は凸部20bに1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一な着色が施されていなくても、単に不均一な着色が施されていれば構わない。
【0032】
また、本発明はエスカレータ以外の乗客コンベアにも適用可能である。
【0033】
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態のエスカレータの側面図。
【図2】実施形態のステップの平面図。
【図3】実施形態の乗降板本体の平面図。
【図4】実施形態の乗降板の平面図。
【図5】従来のエスカレータのステップの平面図。
【図6】従来のエスカレータの乗降板本体の平面図。
【符号の説明】
【0035】
1 エスカレータ
8 ステップ
12 溝
13 欄干
14 手摺ベルト
16 乗降板
20 凹凸パターン
20a 凹部
20b 凸部
21 欄干照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部にそれぞれ乗降口が設けられたトラスと、
前記乗降口間を循環走行し、踏面に走行方向に延びる複数の溝が形成されると共に環状に連結された複数のステップと、
前記複数のステップの両側に立設された一対の欄干と、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、を具備し、
前記各ステップにおける前記複数の溝の間隔が、それぞれ不均一になっていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記各ステップにおける前記複数の溝の間隔が、規則性と不規則性の調和した1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるようにそれぞれ不均一になっていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
両端部にそれぞれ乗降口が設けられたトラスと、
前記乗降口間を循環走行し、環状に連結された複数のステップと、
前記複数のステップの両側に立設された一対の欄干と、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、
前記各乗降口にそれぞれ設けられ、踏面に多数の凹部及び多数の凸部からなる凹凸パターンがそれぞれ形成された乗降板と、を具備し、
前記乗降板における前記多数の凸部及び/又は前記多数の凹部に、不均一な着色が施されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
前記乗降板における前記多数の凸部及び/又は前記多数の凹部に、規則性と不規則性の調和した1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一な着色が施されていることを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
両端部にそれぞれ乗降口が設けられたトラスと、
前記乗降口間を循環走行し、環状に連結された複数のステップと、
前記複数のステップの両側に立設された一対の欄干と、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、
前記各欄干にそれぞれ設けられ、前記複数のステップと略同じ速度で循環走行する環状の手摺ベルトと、
前記各欄干の長手方向に沿って設けられた複数の照明装置と、を具備し、
前記複数の照明装置の照度が不均一になっていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
前記複数の照明装置の照度が、規則性と不規則性の調和した1/fゆらぎを乗客に対して視覚的に与えるように不均一になっていることを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
下記の式で得られる数値列yに基づいて1/fゆらぎを乗客に対して与えるようにしたことを特徴とする請求項2又は請求項4又は請求項6のいずれか一項記載の乗客コンベア。
=x+(1/2)xj+1+(1・3/2・2!)xj+2
+(1・3・5/2・3!)xj+3+・・・
+(1・3・5・・・(2n−1)/2n−1・(n−1)!)xj+n−1
但し、
x:乱数列
n:係数の個数













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−197132(P2007−197132A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16352(P2006−16352)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】