説明

乗客コンベヤの配線固定装置

【課題】本発明は、配線収納部材の据付作業を容易に行うことができる乗客コンベヤの配線固定装置を得ることを目的とするものである。
【解決手段】縦部材4は、縦柱19と、縦柱19に固定されている鋼板20とを有している。縦柱19は、上枠2及び下枠3間に固定されている。鋼板20は、オイルパン17の上方に配置されている。鋼板20には、貫通孔20aが設けられている。貫通孔20aは、断面四角状に形成されている。貫通孔20aには、管状の配線収納部材6が通されている。この例では、貫通孔20aに隙間なく嵌る断面四角状の角パイプが貫通孔20aに通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベヤ内に配線を固定する乗客コンベヤの配線固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベヤでは、配線用ケーブルを収納する電線管が係止具と押え金具とに支持されている。電線管は、縦枠に固定された係止具と電線管を押える押え金具とで挟むことにより、主枠内に保持されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−22668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように構成された従来の乗客コンベヤでは、主枠内に電線管が縦枠に固定された係止具と電線管を押える押え金具とで挟むことにより保持されているので、主枠内に電線管を保持する際には、電線管を係止具と押え金具とで挟む作業が必要となり、電線管の据付作業に手間が掛かってしまう。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、配線収納部材の据付作業を容易に行うことができる乗客コンベヤの配線固定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベヤの配線固定装置は、乗客コンベヤの主枠に設けられ、かつ貫通孔を有している縦部材、及び貫通孔に通され、乗客コンベヤの配線を収納する配線収納部材を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明の乗客コンベヤの配線固定装置では、主枠に貫通孔を有している縦部材が設けられており、貫通孔には、乗客コンベヤの配線を収納する配線収納部材が通されているので、配線収納部材を縦枠に固定された係止具と配線収納部材を押える押え金具とで挟む作業が不要となり、配線収納部材の据付作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す側面図である。
【図2】図1のエスカレータの配線固定装置を示す断面図である。
【図3】図2のエスカレータの配線固定装置を拡大して示す断面図である。
【図4】図3のエスカレータの配線固定装置を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるエスカレータの配線固定装置を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態3によるエスカレータの配線固定装置の要部を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態4によるエスカレータの配線固定装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエスカレータを示す側面図である。図1において、主枠1は、上枠2と、上枠2の下方に配置され、かつ上枠2に対向している下枠3とを有している。上枠2及び下枠3それぞれの幅方向両端部間には、複数の縦部材4が固定されている。各縦部材4は、主枠1の長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置されている。上枠2及び下枠3それぞれの幅方向両端部間には、複数の斜め部材5が固定されている。各斜め部材5は、各縦部材4の間に配置されている。各縦部材4には、電気配線を収納する配線収納部材6が設けられている。
【0010】
なお、電気配線を主枠1内に固定するためのエスカレータの配線固定装置は、縦部材4と、配線収納部材6とを有している。
【0011】
主枠1の長手方向上端部には、上部機械室7が設けられている。主枠1の長手方向下端部には、下部機械室8が設けられている。
【0012】
上部機械室7内には、一体に回転可能なメインスプロケット9及び一対の駆動スプロケット10と、メインスプロケット9及び各駆動スプロケット10を回転させる駆動力を発生する駆動機11とが設けられている。メインスプロケット9及び各駆動スプロケット10は、同軸上に設けられている。各駆動スプロケット10は、主枠1の幅方向について対向している。
【0013】
駆動機11には、駆動機11の駆動力によって回転可能な駆動チェーン用スプロケット12が設けられている。メインスプロケット9と駆動チェーン用スプロケット12との間には、駆動機11からの駆動力をメインスプロケット9に伝える無端状の駆動チェーン13が巻き掛けられている。駆動機11の駆動力は、駆動チェーン用スプロケット12及び駆動チェーン13の順に伝わることにより、駆動スプロケット10に達する。メインスプロケット9及び駆動スプロケット10は、メインスプロケット9が駆動機11からの駆動力を受けることにより一体に回転される。
【0014】
下部機械室8には、主枠1の幅方向について対向している一対の従動スプロケット14が設けられている。各駆動スプロケット10と各従動スプロケット14との間には、左右一対の踏段チェーン15が巻き掛けられている。
【0015】
主枠1には、循環移動される複数の踏段16が支持されている。各踏段16は、各踏段チェーン15により無端状に連結されている。また、各踏段16は、駆動機11の駆動力
でメインスプロケット9が回転されることにより循環移動する。下枠3には、機械油を受けるためのオイルパン17が固定されている。オイルパン17は、主枠1の長手方向に沿って配置されている。
【0016】
図2は図1のエスカレータの配線固定装置を示す断面図、図3は図2のエスカレータの配線固定装置を拡大して示す断面図、図4は図3のエスカレータの配線固定装置を示す斜視図である。図2に示すように、オイルパン17は、複数のオイルパン固定装置18により下枠3に固定されている。
【0017】
縦部材4は、縦柱19と、縦柱19に固定されている鋼板20とを有している。縦柱19は、上枠2及び下枠3間に固定されている。鋼板20は、オイルパン17の上方に配置されている。
【0018】
鋼板20には、貫通孔20aが設けられている。貫通孔20aは、断面四角状に形成されている。貫通孔20aには、管状の配線収納部材6が通されている。この例では、貫通孔20aに隙間なく嵌る断面四角状の角パイプが貫通孔20aに通されている。
【0019】
配線収納部材6内には、複数の電気配線21が収納されている。電気配線21は、上部機械室7内に設けられている制御装置(図示せず)に接続されている。電気配線21としては、例えば信号配線や電力配線などが挙げられる。
【0020】
次に、電気配線21の設置作業について説明する。電気配線21の設置作業を行う場合、まず、主枠1の傾斜部の一方から他方まで配線収納部材6を貫通孔20aに通す。そして、配線収納部材6の両端部のいずれか一方から電気配線21を挿入する。この後、制御装置等の所定の機器に電気配線21を接続する。
【0021】
このようなエスカレータの配線固定装置では、縦部材4に貫通孔20aが設けられており、この貫通孔20aには、電気配線21を収納する配線収納部材6が通されているので、配線収納部材6を貫通孔20aに通すだけで配線収納部材6を主枠1に支持することができる。これにより、配線収納部材6を縦枠に固定された係止具と配線収納部材6を押える押え金具とで挟む作業が不要となり、配線収納部材6の据付作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、縦部材4に配線収納部材6が支持されているので、オイルパン17の面上に電気配線21を這わせる必要がなくなり、機械油が電気配線21を伝ってオイルパン17の外へ漏れ出すのを防止することができるとともに、オイルパン17の清掃作業を容易に行うことができる。
【0023】
さらに、配線収納部材6内に電気配線21が収納されているので、機械油や塵が電気配線21に直接堆積するのを防止することができる。
【0024】
さらにまた、左右の鋼板20に貫通孔20aがそれぞれ設けられているので、主枠1内の左右どちらにでも配線収納部材6を配置することができる。
【0025】
なお、配線収納部材6及び貫通孔20aは、断面四角状に形成されているが、必ずしも断面四角状でなくてもよい。例えば、配線収納部材6及び貫通孔20aは、断面円形状であってもよい。
【0026】
実施の形態2.
次に、図5はこの発明の実施の形態2によるエスカレータの配線固定装置を示す斜視図である。配線収納部材6の側面には、配線引出孔22が設けられている。配線引出孔22は、配線収納部材6の長さ方向の中間部の所定の位置に設けられている。ここで、配線収納部材6内の電気配線21は、配線引出孔22から配線収納部材6の外部へ引き出されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0027】
このようなエスカレータの配線固定装置では、配線収納部材6の側面に配線引出孔22が設けられているので、配線収納部材6内の電気配線21を配線収納部材6の任意の位置から配線引出孔22から配線収納部材6の外部へ引き出すことができ、電気配線21をエスカレータ内の機器へ容易に接続することができる。
【0028】
なお、上記実施の形態2では、配線収納部材6に1つの配線引出孔22が設けられているが、配線引出孔22は複数であってもよい。
【0029】
また、上記実施の形態2では、配線収納部材6の側面に配線引出孔22が設けられているが、配線収納部材6の外周面であれば、配線引出孔22をどこに設けてもよい。
【0030】
実施の形態3.
次に、図6はこの発明の実施の形態3によるエスカレータの配線固定装置の要部を示す断面図である。配線収納部材23には、複数の電気配線21を収納する溝部23aが設けられている。溝部23aは、配線収納部材23の長さ方向に沿って設けられている。この例では、配線収納部材23が断面コの字形に形成されることにより溝部23aが形成されている。配線収納部材23は、溝部23aの開放部を踏段16側に向けて貫通孔20aに通されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0031】
このようなエスカレータの配線固定装置では、配線収納部材23に電気配線21を収納する溝部23aが設けられており、配線収納部材23は、溝部23aの開放部を踏段16側に向けて貫通孔20aに通されているので、主枠1内から配線収納部材23の側面側より電気配線21を容易に収納することができる。
【0032】
実施の形態4.
次に、図7はこの発明の実施の形態4によるエスカレータの配線固定装置の要部を示す断面図である。配線収納部材23は、溝部23aの開放部を上枠2側に向けて貫通孔20aに通されている。他の構成は、実施の形態3と同様である。
【0033】
このように、配線収納部材23が溝部23aの開放部を上枠2側に向けて貫通孔20aに通されているので、主枠1内から配線収納部材23の上面側より電気配線21を容易に収納することができる。
【0034】
なお、上記実施の形態2では、管状の配線収納部材6の外周面に配線引出孔22が設けられているが、上記実施の形態の3,4の断面コの字形の配線収納部材23の外周面に配線引出孔22を設けてもよい。
【0035】
また、各上記実施の形態では、主枠1の傾斜部に配線収納部材を配置しているが、主枠1の水平部に配線収納部材を配置してもよい。
【0036】
さらに、各上記実施の形態では、エスカレータにこの発明の配線固定装置が適用されているが、動く歩道にこの発明の配線固定装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 主枠、4 縦部材、6,23 配線収納部材、20a 貫通孔、22 配線引出孔、23a 溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベヤの主枠に設けられ、かつ貫通孔を有している縦部材、及び
上記貫通孔に通され、上記乗客コンベヤの配線を収納する配線収納部材
を備えていることを特徴とする乗客コンベヤの配線固定装置。
【請求項2】
上記配線収納部材の外周面には、上記配線を上記配線収納部材内から引き出すための配線引出孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの配線固定装置。
【請求項3】
上記配線収納部材には、上記配線を収納する溝部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤの配線固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−168184(P2010−168184A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13184(P2009−13184)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】