説明

乗客運搬装置用手すりの接合技術

乗客用手すり(30)の製造には、手すり素材の両端部(58)を接合することが含まれる。開示された装置(50)は、両端部を接合する以前に、手すり素材の端部(58)を相互に位置決めする取付部材(54),(56)を含む。例示的な取付部材(54),(56)は、手すりの駆動面(34)上の歯(36)と係合する少なくとも1つの歯(82)を有する位置決め部材(80)を含む。開示された実施例は、ねじ付きロッド(66)を有するムーバ(62)を含み、このねじ付きロッド(66)は、取付部材と対応する手すり素材の端部(58)の位置を非常に厳しい公差要求のもとに調節するように、従動部を取付部材(54)と同時に動かす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、乗客運搬装置に関する。特に、本発明は、乗客運搬装置用手すりの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客運搬装置は、例えば、建物内の異なる階の間、あるいは長い通路にわたって人を運搬するのに有効であることが実証されてきた。一般的な装置は、欄干にわたってかかる手すりを含み、例えば、人が信頼性の向上、安定性の向上、またはその両方を実現するために掴む面を提供する。一般的な手すり駆動装置は、乗客を運搬路に沿って運転方向に運ぶ踏段またはベルトに同調するように手すりを動かす。一般的な手すり駆動装置は、手すりを所望の方向へ動かすために十分な摩擦を得るように手すりの両方の対向する面と係合するピンチローラに依存している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の手すり駆動装置には幾つかの問題点がある。ピンチローラは手すりの掴み面側と係合するが、これにより掴み面に擦り傷が生じ磨耗する。別の問題は、適切な手すりの動きを生じさせる摩擦力が必要であるが、手すりと欄干との間の摩擦が低いことが要求される点である。
【0004】
手すりを駆動させるための代替の装置が必要とされている。1つの代替の装置が、米国特許第3,749,224号明細書に記載されており、これには手すりを動かすための歯付きベルトが開示されている。このような装置は、手すりの駆動性が向上しているが、他の複雑さが生じてしまう。
【0005】
例えば、従来の手すりは、一定長さの手すり素材を用い、その両端部を接合させてベルトつまりループを形成することにより製造される。一般的な接合技術は、比較的広い公差を有しており、接合作業中に両端部を相互に正確に位置決めする必要はない。最もよく知られている装置は、手すりの緩みを詰める部品を含む。歯付き駆動ホイールつまり歯付き駆動ベルトおよび対応する歯付き手すりを使用する場合には、製造中に更なる改善を要する。例えば、接合部にわたる箇所でも一定のピッチを保証するように、ベルト素材の一方の端部上の歯とベルト素材の他方の端部上の歯との間の適切な関係を確立する必要がある。接合部でピッチが途切れると、例えば、手すりを最終的に駆動させる駆動機構との適切な協働を損ねてしまう。
【0006】
したがって、本発明は、例えば、既存の駆動装置で駆動できる手すりを製造するための手すり素材の両端部を接合する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
乗客運搬装置用手すりの素材の両端部を接合する例示的な装置は、手すりの駆動面の一部と協働する構成を有する複数の取付部材を含む。少なくとも1つの取付部材は、他方の取付部材に対して移動可能である。取付部材間に所望の距離を確保するように、ムーバが少なくとも1つの取付部材を他方の取付部材に対して選択的に移動させる。ここで、この所望の距離は、両端部を接合する以前における手すりの駆動面の部分間における間隔に対応している。
【0008】
1つの実施例では、各取付部材は、手すり駆動面における少なくとも1つの歯と協働するように適応された少なくとも1つの歯を有する。
【0009】
1つの実施例では、ムーバを手動で調節して所望の間隔を得る。1つの開示された実施例は、ねじ付き部材を含み、これにより、ムーバの可動範囲内であればムーバを無限に調節できる。開示された実施例では、手すり駆動面の部分の相対的な位置を0.01mm刻みで調節できる。
【0010】
本発明の様々な特徴および利点は、最新の好ましい実施例を示す以下の詳細な説明から当業者に明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、乗客運搬装置20を示す。この例では、例えば、建物の異なる階の昇降口24と昇降口26との間で複数の踏段22が乗客を運搬する。図示された運搬装置20はエスカレータであるが、本発明は、特定の形式の乗客運搬装置に限定されない。
【0012】
乗客運搬装置20は、例えば、運搬装置20で運ばれる際に、信頼感、心地良さまたは安定性を向上させるように乗客が掴むことのできる手すり30を含む。図2により最も良く理解できるように、手すり30は、乗客が運搬装置20によって運搬される通路に沿って概ね上側に向く掴み面32を含んでいる。また、手すり30は、掴み面32と概ね反対側に向く駆動面34を含む。この例では、駆動面34は複数の歯36を含む。図1から分かるように、駆動機構40は、手すり30を駆動させて踏段22と同調して動くように、手すり30上の歯36と協働する歯付きベルト42を含む。
【0013】
手すり30の1つの例示的な製造方法は、駆動面34上に歯36を有する細長い手すり素材を型成形するステップが含まれる。次に、素材の両端部を接合し、図1の例示的な運搬装置20で使用できる連続したループを製造する。歯36が存在すると、駆動機構40との適切な協働を保証するために、手すり素材の両端部の接合時に特に配慮が必要となる。例えば、駆動機構40との適切な協働を保証するために、駆動面34全体に亘って歯36のピッチを常に一定に維持することが望ましい。手すり素材の両端部が接合される領域に沿って歯36の間隔が不所望に変化すると、いくつかの例では手すりを適切に操作できない。ある場合では、駆動面34の全長に亘って正確にピッチが調節されないと、駆動機構が駆動面と上手く噛み合わないので手すりを動かすことができなくなる。
【0014】
図3は、1つの例示的な装置50の概略図であり、この装置は手すり素材の両端部を接合するとともに、各端部付近の歯36間の望ましい関係を維持するために有用である。例示的な装置50は、複数の取付部材54および取付部材56を支持する基板52を含む。この実施例では、取付部材54が一方の端部58に対応する手すり素材の一部を固定しており、取付部材56が反対側の端部58に対応する他方の一部を固定する。この実施例では、取付部材54および取付部材56が、両端部58を型60内で相互に所望の配列および位置に維持している。
【0015】
取付部材54または取付部材56の少なくとも一方は、取付部材54と取付部材56との間の間隔を調節でき、これにより、手すり素材の両端部58の間隔も調節できるように基板52に対して移動可能となっている。図示された実施例では、両方の取付部材が、基板52に対して、かつ互いの部材に対して移動可能である。
【0016】
1つのムーバ62が取付部材54に関連する。ムーバ62は、基板52に対する取付部材54の位置を手動で調節できるハンドル64を含む。この実施例では、ムーバ62は、ねじ付きロッド66および対応するねじ付き従動部68を含む。ロッド66が回転すると、従動部68はロッドに沿って長手方向に動く(例えば、図面の左方向または右方向)。従動部68は、取付部材54に適切に取り付けられるので、取付部材54がねじ付きロッド66の回転に応じて移動する。
【0017】
また、開示された実施例は、ハンドル74、ねじ付きロッド76および取付部材56に取り付けられた従動部78を含むムーバ72を有する。
【0018】
ムーバ62およびムーバ72のねじ付きロッドの使用により、ムーバ62およびムーバ72が動かせる範囲であれば、取付部材の位置を相互に無限に調節できる。実施例の装置は、手すり素材の両端部58間の間隔を0.05mmの公差内に調節できる。このような装置であれば、例えば、一方の端部58の他方の端部に対する位置を約0.01mm刻みで調節することができる。このような装置であれば、手すり素材の両端部58を相互に正確に位置決めし、両端部58の接合後に手すりの端部を望ましい状態にできる。
【0019】
例示的な手すり30は歯付き駆動面34を含むので、例えば、手すり30の全長に沿って一定のピッチを得るには、両端部58に関連する歯36間の関係が適切なものでなければならない。図4により最も良く理解できるように、実施例の取付部材54および取付部材56は、手すり30の歯36と噛み合う少なくとも1つの歯82を有する位置決め部材80を含む。手すり素材の両端部58上または両端部58付近の歯の間が対応する所望の間隔となるように、歯82の位置が相互に調節される。
【0020】
1つの実施例では、手すりの接合部に沿って1つまたは複数の歯36を作るために、型60は、歯付き形状を有する少なくとも1つの型半部を含む。他の実施例では、型は接合部に沿って歯36を成形しない。特定の駆動機構40によると、歯36間の全体の関係が駆動機構40と適切に協働するのに十分に正確であれば、型60によって接合部に1つまたは複数の歯を成形する必要はない。
【0021】
図示された実施例では、各位置決め部材80は、歯36のピッチに応じたピッチを有する複数の歯82を含む。
【0022】
上記の記載は例示的なものであり、限定的なものではない。本発明の趣旨を逸脱することなく、開示の実施例に変更および修正が加えられることを当業者であれば認識するであろう。本発明の法的保護の範囲は、添付の特許請求の範囲を熟読することでのみ理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】乗客運搬システムの選択された部分を示す概略図。
【図2】例示的な手すりの選択された特長を示す透視図。
【図3】手すり素材の両端部を接合する装置を示す概略図。
【図4】図3の実施例の選択された部分を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客運搬装置用手すりの両端部を接合する装置であって、
複数の取付部材と、
ムーバと、
を備え、
前記取付部材の各々が、手すりの駆動面の一部と協働するような構成を有し、該取付部材の少なくとも一方は、他方の取付部材に対して移動可能であり、
前記ムーバが、前記駆動面の部分間における所望な間隔に対応する、前記取付部材の間における所望な距離を確保するように、前記取付部材の少なくとも一方を前記他方の取付部材に対して選択的に移動させることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記取付部材が、前記手すりの駆動面上の少なくとも1つの歯と協働するように適合した少なくとも1つの歯を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記取付部材の各々が、前記手すりの駆動面における歯のピッチに対応するピッチを有する複数の歯を含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ムーバが、所望の距離を得るように手動で調節できることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ムーバが、ねじ付き部材と、前記取付部材のねじ山に沿って移動する従動部と、を含み、前記取付部材の少なくとも一方が前記ねじ付き部材の回転に応じて動くことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記従動部が、前記取付部材の少なくとも一方に固定されるねじ付き部材を含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記取付部材の各々が、相互に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記両端部の間に前記手すりの一部を成形するために、前記取付部材間の少なくとも一部に型を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
約0.05mmの公差内で所望の間隔を確保するために、前記取付部材の少なくとも一方を動かすように前記ムーバを操作することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記取付部材の少なくとも一方を約0.01mm刻みで動かすように前記ムーバを操作することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記所望の距離が、前記ムーバの動く範囲内であれば無限に調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
乗客運搬用手すりの両端部を接合する方法であって、
手すり素材の一方の端部付近の少なくとも1つの歯を係合させるステップと、
前記手すり素材の他方の端部付近の少なくとも1つの歯を係合させるステップと、
前記手すり素材の前記両端部を接合する際に、前記歯の間の所望な距離を確保するように、前記係合された歯を互いに選択的に位置決めするステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記手すり素材の他方の端部付近の少なくとも1つの歯を係合させるステップの後に、両端部を接合するステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
約0.05mm以内の公差で前記歯の間の所望な距離を確保するステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記歯の少なくとも1つを他方の歯に対して約0.01mm刻みで動かすステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記手すりの全長に亘って該手すりの駆動面の歯のピッチを一定にするステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502695(P2009−502695A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524946(P2008−524946)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/027399
【国際公開番号】WO2007/018525
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】