説明

乗物シート用シートクッション

【課題】荷重を効果的に吸収し得るワイヤを有するシートクッションを提供する。
【解決手段】乗物シート用シートクッション1であって、フレーム2と、フレーム2に両端部が支持されるワイヤ3と、ワイヤ3の上に設置されるパッド6を有する。ワイヤ3には、両端部の間においてワイヤ3の延出方向に対して直交する水平方向の一方向成分、かつ上下方向成分とを有する屈曲部3cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物に装着される乗物シートのシートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物シートのシートクッションは、従来矩形状のフレームと、フレームに両端部が支持される複数のワイヤと、ワイヤの上に設置されるパッドを有する(特許文献1)。ワイヤは、部分的に下方へ屈曲してワイヤの変形を許容する屈曲部を有する。そのためパッドからワイヤに荷重が加わると、屈曲部の変形によって荷重がワイヤによって吸収され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし荷重をさらに効果的に吸収し得るワイヤを有するシートクッションが従来求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える乗物シート用シートクッションであることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、フレームと、フレームに両端部が支持されるワイヤと、ワイヤの上に設置されるパッドを有する。ワイヤには、両端部の間においてワイヤの延出方向に対して直交する水平方向の一方向成分、かつ上下方向成分とを有する屈曲部が設けられる。
【0006】
したがってパッドからワイヤに荷重が加わると、ワイヤは、屈曲部によって延出方向に対して直交する水平方向と下方向とに変形し、かつワイヤは、ワイヤ延出方向に伸びる軸を中心として捩られ得る。これによりワイヤに加わった荷重は、ワイヤの複数方向の変形のみならず捩りによっても吸収され得る。そのためワイヤによって荷重が効果的に吸収され、例えばワイヤとフレームの取付箇所において荷重が集中すること等を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】乗物シートの斜視図である。
【図2】シートクッションの一部断面とワイヤの左側面図である。
【図3】シートクッションの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一つの実施の形態を図1〜3にしたがって説明する。図1に示すように乗物シート10は、自動車等の乗物の床面に装着されるシートであって、シートクッション1とシートバック11を有する。シートバック11は、シートクッション1の後部に角度調整可能に取付けられる。
【0009】
シートクッション1は、図1に示すようにフレーム2と複数のワイヤ3〜5とパッド6を有する。フレーム2は、シートクッション1の左右縁に沿って前後方向に延出する一対のサイドフレーム2aと、サイドフレーム2aの下側にて前後方向に延出する一対のベースフレーム2gを有する。一対のサイドフレーム2aの前部には、これらを連結する板状の前フレーム2bが取付けられる。
【0010】
一対のサイドフレーム2aの後部には、図1に示すようにこれらを連結するパイプ状の後フレーム2cが取付けられる。各サイドフレーム2aの前後端部と各ベースフレーム2gの前後端部は、レッグ2d〜2fによって連結される。ベースフレーム2gの下側には、スライド装置8が設けられる。スライド装置8は、床面に取付けられるアンダレール8aと、アンダレール8aにスライド可能に取付けられるアッパレール8bを有する。アッパレール8bの上にベースフレーム2gが取付けられる。
【0011】
ワイヤ3〜5は、図2,3に示すように金属製の長尺状部材であって、例えば丸棒である。ワイヤ3は、前後方向に延出して、前端部3aと後端部3bを有する。前端部3aは、前後方向に略水平に延出して、前フレーム2bの上面に溶接される。後端部3bは、前端部3aよりも下方向でかつ左右方向にずれた位置において前後方向に略水平に延出して、支持ワイヤ5に溶接される。
【0012】
ワイヤ3は、図2,3に示すように前端部3aと後端部3bの間に屈曲部3cと傾斜部3dと水平部3eを有する。屈曲部3cは、ワイヤ3を変形許容するためにワイヤ3を部分的に屈曲させた形状を有する。屈曲部3cは、前フレーム2bの近傍に位置し、第一部3c1と折返し部3c3と第二部3c2を有する。
【0013】
第一部3c1は、図2,3に示すように前端部3aから左右方向の一方向(例えば左方向)と下方向と後方向とに略直線的に延出する。折返し部3c3は、第一部3c1の端部から上方へ折返す。第二部3c2は、折返し部3c3から第一部3c1と同じ左右方向の一方向と上方向と後方向とに略直線的に延出する。したがって屈曲部3cは、左右方向の一方向に延出するとともに、ワイヤ3を部分的に下方向に窪ませる。
【0014】
傾斜部3dは、図2,3に示すように屈曲部3cの後端部から下方向にかつ後方向に略直線的に延出する。水平部3eは、傾斜部3dの後端部から後方向へ略水平に直線的に延出する。一対のワイヤ3は、左右方向に所定距離の間隔にて平行に設置される。一対のワイヤ3は同じ形状であって、一対の屈曲部3cが同じ方向に延出する。
【0015】
一対のワイヤ3の間には、図2,3に示すように連結ワイヤ4と支持ワイヤ5が取付けられる。連結ワイヤ4は、左右方向に略水平に延出して、各ワイヤ3の傾斜部3dの上面に溶接される。これにより連結ワイヤ4は、一対のワイヤ3の中間部を連結する。
【0016】
支持ワイヤ5は、図1,3に示すように左右方向に延出し、フレーム2に溶接される一対の取付端部5aを有する。取付端部5aは、サイドフレーム2aに沿って前後方向に延出し、サイドフレーム2aの上面に溶接される。支持ワイヤ5は、一対の取付端部5aの間に一対の左右水平部5bと一対の上下延出部5cと中央水平部5dを有する。左右水平部5bは、取付端部5aの後部から左右方向にかつ略水平方向に直線的に延出する。上下延出部5cは、左右水平部5bの端部から下方向に直線的に延出する。中央水平部5dは、一対の上下延出部5cの下部間を左右方向に略水平に直線的に延出する。中央水平部5dの上面にワイヤ3の後端部3bが溶接される。
【0017】
図1,2に示すようにパッド6は、ワイヤ3〜5と前フレーム2bの上に設置され、ワイヤ3〜5によって支持される。パッド6は、弾性変形しやすい材料、例えばウレタンなどの発砲樹脂材料から形成される。パッド6の表面には表皮7が装着される。
【0018】
以上のようにシートクッション1は、図3に示すようにフレーム2と、フレーム2に両端部が支持されるワイヤ3と、ワイヤ3の上に設置されるパッド6を有する。ワイヤ3には、両端部の間においてワイヤ3の延出方向に対して直交する水平方向の一方向成分、かつ上下方向成分とを有する屈曲部3cが設けられる。
【0019】
したがってパッド6からワイヤ3に荷重が加わると、ワイヤ3は、屈曲部3cによって延出方向に対して直交する水平方向と下方向とに変形し、かつワイヤ3は、ワイヤ延出方向に伸びる軸を中心として捩られ得る。これによりワイヤ3に加わった荷重は、ワイヤ3の複数方向の変形のみならず捩りによっても吸収され得る。そのためワイヤ3によって荷重が効果的に吸収され、例えばワイヤ3とフレーム2の取付箇所において荷重が集中すること等を避けることができる。
【0020】
図3に示すようにシートクッション1は、ワイヤ3を複数有する。複数のワイヤ3は、平行に延出し、かつ各ワイヤ3に形成された屈曲部3cが同方向に屈曲する。複数のワイヤ3の各中間部が連結ワイヤ4によって連結される。したがって荷重がパッド6からワイヤ3に加わると、連結ワイヤ4によって複数のワイヤ3に荷重が分散され得る。例えば使用者がシートクッション1の中心に座っていない場合等であっても、複数のワイヤ3に荷重が分散され得る。また複数のワイヤ3は、同方向に屈曲する屈曲部3cを有する。そのため複数のワイヤ3は、同方向に変形しかつ捩られ得る。これにより荷重が複数のワイヤ3によって協働して吸収され得る。
【0021】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、図1,3に示すシートクッション1は、前後方向に延出する二本のワイヤ3を有する。しかしシートクッションが前後方向に延出する三本以上のワイヤを有していても良い。図1,3に示すシートクッション1は、前後方向に延出する複数のワイヤ3を連結する連結ワイヤ4を有する。しかし連結ワイヤ4を有していなくても良い。
【0022】
図3に示す二本のワイヤ3は、同じ形状である。しかし同じ形状でなくても良く、例えば複数のワイヤが異なる位置に屈曲部を有していても良い。あるいは各ワイヤが異なる方向(左右方向が逆方向、水平方向が逆方向)に延出する屈曲部を有していても良い。異なる方向に延出する屈曲部を有する場合は、二つのワイヤが逆方向に変形しやすいように二つのワイヤに連結ワイヤが設けられないことが好ましい。
【0023】
図1に示すワイヤ3は、シートクッション1の前後方向に延出している。しかしワイヤがシートクッションの幅方向(左右方向)に延出し、両端部がシートクッションに支持されても良い。図3に示すワイヤ3の一端部は、支持ワイヤ5を介してフレーム2に取付けられる。しかしワイヤの一端部(後端部)が支持ワイヤを介すことなく、フレームに直接取付けられても良い。乗物は、自動車、バスなどの車両でも良いが、船舶や航空機などであっても良い。
【符号の説明】
【0024】
1…シートクッション
2…フレーム
3…ワイヤ
3a…前端部
3b…後端部
3c…屈曲部
4…連結ワイヤ
5…支持ワイヤ
6…パッド
10…乗物シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物シート用シートクッションであって、
フレームと、前記フレームに両端部が支持されるワイヤと、前記ワイヤの上に設置されるパッドを有し、
前記ワイヤには、前記両端部の間において前記ワイヤの延出方向に対して直交する水平方向の一方向成分、かつ上下方向成分とを有する屈曲部が設けられる乗物シート用シートクッション。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物シート用シートクッションであって、
前記ワイヤを複数有し、
前記複数のワイヤは、平行に延出し、かつ前記各ワイヤに形成された前記屈曲部が同方向に屈曲し、前記複数のワイヤの各中間部が連結ワイヤによって連結される乗物シート用シートクッション。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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