説明

乗物用の燃料タンク

【課題】乗物の加減速時に、燃料吸込口に燃料がより流入し易い、仕切り壁を有する燃料タンクを提供する。
【解決手段】乗物用の燃料タンク11であって、燃料ポンプが、燃料タンク11の内部空間の下部から、燃料タンク11内の燃料を吸い込む、燃料吸込口22と、燃料吸込口22の前後方向の一方及び側方を囲み、前後方向の他方に開口を有する、燃料の前後方向一方への移動を阻止する第1仕切り壁31と、第1仕切り壁31の側方及び前後方向の他方を囲み、前後方向の一方に開口を有する、燃料の前後方向他方への移動を阻止する第2仕切り壁32と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用の燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗物用の燃料タンクにおいて、燃料タンク内の燃料残量が少ない場合に、乗物の加速、減速等により燃料が移動し、燃料タンク内の一部に燃料が偏ると、燃料タンク内の燃料吸込口近傍の燃料が少なくなり、燃料供給不足が生じる可能性がある。このような燃料の移動による燃料供給不足を防ぐため、特許文献1では、燃料吸込口の周囲をリザーバーカップで覆う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−186119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に示すリザーバーカップは、前壁又は後壁と切り欠き部が形成された側壁とを有する、上面視で略コの字形状であり、略同形状である、2つの仕切り壁を、燃料吸込口の前後に、前後方向の向きを逆にして設けることによって構成されている。その結果、本リザーバーカップでは、前後方向における燃料吸込口への燃料流入通路(スリット)がとても狭くなっており、且つ、スリットは、一方が前方に向かって開口し、他方が後方に向かって開口している。そして、側壁の切り欠き部で形成される、リザーバーカップ内からの燃料の流出を許容する、開放部は、車幅方向両側部に設けられるようになっている。したがって、乗物の加減速時において、前記スリットからのリザーバーカップ内への燃料の流入量は、少なくなる傾向にある。
【0005】
そこで本発明の目的は、乗物の加減速時に、燃料吸込口に燃料がより流入し易い、仕切り壁を有する燃料タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗物用の燃料タンクであって、燃料ポンプが、前記燃料タンクの内部空間の下部から、前記燃料タンク内の燃料を吸い込む、燃料吸込口と、前記燃料吸込口の前後方向の一方及び側方を囲み、前後方向の他方に開口を有する、燃料の前後方向一方への移動を阻止する第1仕切り壁と、前記第1仕切り壁の側方及び前後方向の他方を囲み、前後方向の一方に開口を有する、燃料の前後方向他方への移動を阻止する第2仕切り壁と、を有することを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、第2仕切り壁が第1仕切り壁を囲むようになっているので、第1仕切り壁と第2仕切り壁との隙間を通って、燃料吸込口に燃料を流入し易くすることができる。
【0008】
本発明は、更に、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前後方向の前記一方が前方であり、前後方向の前記他方が後方である。
(2)前記第1仕切り壁の側方外方であり、前記第2仕切り壁の側方内方には、前記内部空間の底板部から突出する突出部材が設けられている。
(3)前記構成(2)において、前記第1仕切り壁の側方と前記第2仕切り壁側方との隙間は、前後方向の一方から前後方向の他方に向かって小さくなっている。
(4)前記構成(3)において、前記第1仕切り壁は、車幅方向の全長が、前後方向の一方から前後方向の他方に向かって広くなっており、前記第2仕切り壁は、車幅方向の全長が、前後方向の他方から前後方向の一方に向かって広くなっている。
(5)前記第1仕切り壁は、前後方向及び車幅方向に亘って前記内部空間の底板部からの高さが略一定となるように形成され、前記第2仕切り壁は、前後方向及び車幅方向に亘って前記内部空間の底板部からの高さが略一定となるように形成され、前記第2仕切り壁は天井壁を有しており、前記第1仕切り壁の上端は前記天井壁と当接する又は前記天井壁から上方に突出するようになっている。
(6)前記第2仕切り壁の少なくとも一方の側方には、前後方向の他方からの燃料を前記第2仕切り壁の開口の前後方向の一方の空間に案内する、案内部材が設けられている。
(7)前記構成(6)において、前記案内部材は、前後方向の他方からの燃料を受け入れる他方開口部と、燃料を前記第2仕切り壁の前記一方の空間に排出する側部開口部と、を有しており、前記他方開口部は、前記側部開口部に比べて大きくなっている。
【0009】
前記構成(1)によれば、第1仕切り壁が後方に開口を有し、第2仕切り壁が前方に開口を有するので、燃料をより多く必要とする乗物の加速時において、特に、燃料吸込口に燃料を流入し易くすることができる。
【0010】
前記構成(2)によれば、一旦第2仕切り壁内に入った燃料が、第1仕切り壁と第2仕切り壁との間の隙間を通って、第2仕切り壁内から流出することを抑制できる。
【0011】
前記構成(3)によれば、第1仕切り壁と第2仕切り壁との隙間を通って第2仕切り壁内へ向かう燃料の流れを加速させることができ、その結果、前記燃料が突出部材を乗り越えやすくすることができる。
【0012】
前記構成(4)は、第1仕切り壁の側方と第2仕切り壁側方との隙間を、前後方向の一方から前後方向の他方に向かって小さくする具体的な構成である。本構成によって、前記隙間を、一方から他方に向かって、容易に小さくすることができる。
【0013】
前記構成(5)によれば、第1仕切り壁及び第2仕切り壁には側方に開口を有しないので、両仕切り壁の側方から燃料が流出することを防止でき、燃料吸込口に燃料をより保持できる。また、第1仕切り壁の上端と第2仕切り壁の天井壁との間に隙間が存在しないので、第2仕切り壁内の燃料が第1仕切り壁の上端を超えて前後方向の一方に流出することを防止できる。
【0014】
前記構成(6)によれば、案内部材によって、前後方向の他方からの燃料を効率よく第2仕切り壁の開口近傍に排出するので、第2仕切り壁内へ燃料をより流入し易くすることができる。
【0015】
前記構成(7)によれば、案内部材内を通って第2仕切り壁の開口近傍に向かって流れる燃料の流れを加速させることができ、その結果、燃料を第2仕切り壁の開口近傍から第2仕切り壁内へ流入し易くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
要するに本発明によると、乗物の加減速時に、燃料吸込口に燃料がより流入し易い、仕切り壁を有する燃料タンクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料タンクを備えた自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の自動二輪車の燃料タンク部分の右方前方からの斜視図である。
【図3】図2の左方前方からの斜視図である。
【図4】図2の左方後方からの斜視図である。
【図5】図4において天井壁を削除した図である。
【図6】図2の前方からの斜視図である。
【図7】図4の一部上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料タンクを備えた自動二輪車1の左側面図である。なお、本実施形態で用いる方向の概念は、自動二輪車1の運転者から見た方向の概念と一致するものとして説明する。
【0019】
図1に示すように、自動二輪車1は前輪2と後輪3とを備え、前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク4の下部にて回転自在に支持されている。フロントフォーク4は、ステアリングシャフト5に支持されている。ステアリングシャフト5は、ヘッドパイプ6によって回転自在に支持されている。フロントフォーク4の上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)には、左右に延びるバー型のステアリングハンドル7が取り付けられている。従って、運転者がステアリングハンドル7を左右に揺動させることによって、ステアリングシャフト5を回転軸として、前輪2が操舵される。
【0020】
車体フレーム8は、ヘッドパイプ6から後方に延設されている。車体フレーム8の後下端部には、スイングアーム9の前端部がピボットボルト10で軸支されており、スイングアーム9の後端部には後輪3が回転自在に支持されている。車体フレーム8の上方であって、ステアリングハンドル7の後方には、燃料タンク11が配置され、燃料タンク11の後方には、運転者用のシート12が配置されている。燃料タンク11の下方には、エンジン13が搭載されている。エンジン13の後部には、出力スプロケット(図示せず)が配置されており、出力スプロケットの動力がチェーン(図示せず)を介して後輪3へと伝達される。
【0021】
ステアリングハンドル7の前方には、ヘッドランプ14配置されており、ヘッドランプ14は、フロントカウル15で覆われている。フロントカウル15は、その上部がヘッドランプ14を覆い、その下部がエンジン13等を覆った、フルカウル型である。
【0022】
図2は、図1の自動二輪車1の燃料タンク11部分の右方前方からの斜視図であり、燃料タンク11の天井壁の一部を除いている。図3は、図2の左方前方からの斜視図であり、図4は、図2の左方後方からの斜視図である。
【0023】
図2〜図4に示すように、燃料タンク11は、燃料を貯留する本体部20と、本体部20の底板部21に設けられ、燃料ポンプ(図示せず)によって本体部20内の燃料が吸い込まれる、燃料吸込口22と、を有している。さらに、燃料タンク11は、燃料吸込口22の前方及び側方を囲み、後方に開口を有する、燃料の前方への移動を阻止する第1仕切り壁31と、第1仕切り壁31の側方及び後方を囲み、前方に開口を有する、燃料の後方への移動を阻止する第2仕切り壁32と、を有している。
【0024】
第1仕切り壁31は、上面視で円弧形状を有しており、前後方向及び車幅方向に亘って底板部21からの高さが一定となるように形成されている。第2仕切り壁32は、上面視で円弧形状を有しており、前後方向及び車幅方向に亘って底板部21からの高さが一定となるように形成されている。第2仕切り壁32には、その上部を覆う天井壁33が設けられており、第1仕切り壁31の上端31aは、天井壁33から上方に突出するようになっている。また、第1仕切り壁31は第2仕切り壁32の内側に配置されるようになっている。
【0025】
図5は、図4において天井壁33を削除した図である。図5には、第1仕切り壁31が、燃料吸込口22の前方及び側方を囲んでおり、第2仕切り壁32が、第1仕切り壁31の側方及び後方を囲んでいることがよりはっきりと示されている。図5には図示されていないが、燃料ポンプは、燃料吸込口22の上方に位置しており、燃料タンク11の本体部20内の燃料を燃料吸込口から吸入し、エンジン13の燃料供給部へ供給するようになっている。
【0026】
図6は、図2の前方からの斜視図である。図6に示すように、第1仕切り壁の側方外方であり、第2仕切り壁32の側方内方には、底板部21から上方に突出する突出部材34が設けられている。突出部材34は、前後方向の長さが短い板形状を有しており、その突出高さは、第1仕切り壁31の高さ及び第2仕切り壁32の高さより低くなっている。また、図5に示すように、突出部材34は、第1仕切り壁31の後端部から、第1仕切り壁31で形成される円弧の半径方向外方に向かって延びている。
【0027】
図2〜図6に示すように、第2仕切り壁32の側方(右方)には、後方からの燃料を第2仕切り壁32の前方に案内する、案内部材35が設けられている。案内部材35は、後方からの燃料を受け入れる後部開口部351と、燃料を第2仕切り壁32の前方に排出する側部開口部352と、を有している。そして、後部開口部351は、側部開口部352に比べて大きくなるよう形成されている。また、案内部材35の前端部及び右方側部には開口が形成されていない。案内部材35の天井壁353は、前方に向かって下方に傾斜するように形成されており、天井壁353の底板部21からの高さは、天井壁33よりも低くなっている。
【0028】
図2〜図5に示すように、本体部20の内部空間には、案内部材35の前方で上方に立ち上がる前壁20aが形成されている。
【0029】
図7は、図4の一部上面図である。図7に示すように、第1仕切り壁31は、その左右方向の全長が、前方から後方に向かって広くなるように形成されており、第2仕切り壁32は、その左右方向の全長が、後方から前方に向かって広くなるように形成されている。その結果、第1仕切り壁31の側方と第2仕切り壁32の側方との隙間dは、前方から後方に向かって小さくなっている。
【0030】
燃料吸込口22は、第1仕切り壁31が形成する円弧の略中心O1に位置するようになっており、さらに、第2仕切り壁32が形成する円弧の略中心O2に位置するようになっている。第1仕切り壁31が形成する円弧の左右方向中央部31bは、第1仕切り壁31の前端部に位置し、第2仕切り壁32が形成する円弧の左右方向中央部32bは、第2仕切り壁32の後端部に位置するようになっている。そして、左右方向中央部31bと左右方向中央部32bとは、左右方向において同じ位置となっており、中心O1及び中心O2は、左右方向中央部31bと左右方向中央部32bとを結ぶ平面上に位置するようになっている。
【0031】
以下、図7を用いて、燃料タンク11の本体部20内の燃料の移動を説明する。
【0032】
自動二輪車1が加速すると、本体部20内の燃料は後方へ移動しようとする。ここで、第1仕切り壁31及び第2仕切り壁32の前方に位置する燃料は、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間dを通って、第2仕切り壁32内に流入する(矢印F1参照)。第2仕切り壁32内に流入した燃料は、突出部材34を超えて、第2仕切り壁32内の後部に位置するようになる(矢印F2参照)。そして、第2仕切り壁32内の燃料は、第2仕切り壁32によって後方への移動が阻止される。その結果、本体部20内の燃料残量が少ない場合であっても、燃料吸込口22回りに燃料が貯留され、燃料ポンプが燃料吸込口22からエンジン13に燃料を送ることができるようになっている。
【0033】
一方、自動二輪車1が減速すると、本体部20内の燃料は前方へ移動しようとする。ここで、第2仕切り壁32内の燃料は、第1仕切り壁31によって前方への移動が阻止される(矢印F3参照)。また、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間dを通って前方へ移動しようとする燃料は、突出部材34によって、その前方への移動が抑制されるようになる(矢印F4参照)。その結果、本体部20内の燃料残量が少ない場合であっても、燃料吸込口22回りに燃料が貯留され、燃料ポンプは燃料吸込口22からエンジン13に燃料を送ることができるようになっている。
【0034】
また、自動二輪車1が減速すると、第2仕切り壁32より後方に位置する燃料は、案内部材35の後部開口部351に流入し(矢印F5参照)、案内部材35内を前方に向かって移動し(矢印F6参照)、側部開口部352から第2仕切り壁32の前方に排出される(矢印F7参照)。その結果、自動二輪車1の次の加速時に、第2仕切り壁32内に流入しやすくなっている。
【0035】
また、自動二輪車1が減速すると、第2仕切り壁32より後方に位置する燃料の内、案内部材35の後部開口部351に流入しない燃料は、案内部材35の天井壁353の上方を前方に向かって移動し(矢印F8参照)、前壁20aによって、前壁20aより前方に移動することが抑制される。その結果、前壁20aの後方近傍に位置する燃料は、自動二輪車1の次の加速時に、第2仕切り壁32内に流入しやすくなっている。
【0036】
前記構成の燃料タンク12によれば、次のような効果を発揮できる。
【0037】
(1)第2仕切り壁32が第1仕切り壁31を囲むようになっているので、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間dを通って、燃料吸込口22に燃料を流入し易くすることができる。
【0038】
(2)第1仕切り壁31が後方に開口を有し、第2仕切り壁32が前方に開口を有するので、燃料をより多く必要とする自動二輪車1の加速時において、特に、燃料吸込口22に燃料を流入し易くすることができる。
【0039】
(3)第1仕切り壁31の側方外方であり、第2仕切り壁32の側方内方には、底板部21から突出する突出部材34が設けられているので、一旦第2仕切り壁32内に入った燃料が、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間dを通って、第2仕切り壁32内から流出することを抑制できる。
【0040】
(4)第1仕切り壁31の側方と第2仕切り壁32側方との隙間dは、前方から後方に向かって小さくなっているので、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間dを通って第2仕切り壁内へ向かう燃料の流れを加速させることができ、その結果、燃料が突出部材34を乗り越えやすくすることができる。
【0041】
(5)第1仕切り壁31は、前後方向及び車幅方向に亘って底板部21からの高さが略一定となるように形成され、第2仕切り壁32は、前後方向及び車幅方向に亘って底板部21からの高さが略一定となるように形成されている。したがって、第1仕切り壁31及び第2仕切り壁32には側方に開口を有しないので、両仕切り壁の側方から燃料が流出することを防止でき、燃料吸込口に燃料をより保持できる。
【0042】
(6)第2仕切り壁32は天井壁33を有しており、第1仕切り壁31の上端31aは天井壁33から上方に突出するようになっている。したがって、第1仕切り壁31の上端31aと第2仕切り壁32の天井壁33との間に隙間が存在しないので、第2仕切り壁32内の燃料が第1仕切り壁31の上端を超えて前方に流出することを防止できる。
【0043】
(7)第2仕切り壁32の右方には、後方からの燃料を第2仕切り壁32の開口の前方空間に案内する、案内部材35が設けられている。したがって、後方からの燃料を効率よく第2仕切り壁32の開口近傍に排出でき、第2仕切り壁32内へ燃料をより流入し易くすることができる。
【0044】
(8)案内部材35は、後方からの燃料を受け入れる後方開口部351と、燃料を第2仕切り壁32の前方空間に排出する側部開口部352と、を有しており、後部開口部351は、側部開口部352に比べて大きくなっている。したがって、案内部材35内を通って第2仕切り壁32の開口近傍に向かって流れる燃料の流れを加速させることができ、その結果、燃料を第2仕切り壁32の開口近傍から第2仕切り壁32内へ流入し易くすることができる。
【0045】
(9)第1仕切り壁31が円弧形状を有するので、前方から第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間を通って第2仕切り壁32内へ向かう燃料の案内を円滑に行うことができる。また、第2仕切り壁32が円弧形状を有するので、後方から第2仕切り壁32の外方を通って前方に向かう燃料の案内を円滑に行うことができる。
【0046】
(10)第1仕切り壁31は第2仕切り壁32の内側に配置されるようになっているので、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間を通って第2仕切り壁32内へ向かう燃料の案内を、第1仕切り壁31の全体で行うことができ、燃料案内効果を向上させることができる。
【0047】
(11)突出部材34は、第1仕切り壁31の後端部から、第1仕切り壁31で形成される円弧の半径方向外方に向かって延びているので、突出部材34が第1仕切り壁31の後端部から左右に延びている場合に比べて、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間を通って第2仕切り壁内へ向かう燃料が突出部材34を乗り越え易くなっている。
【0048】
(12)本体部20の内部空間には、案内部材35の前方で上方に立ち上がる前壁20aが形成されているので、第2仕切り壁32後方から前方に向かって流れる燃料は、前壁20aによって、前壁20aより前方への移動が抑制され、前壁20aより後方へ燃料が貯留され易くなっている。その結果、自動二輪車1の加速時に、第2仕切り壁32内に流入し易くなっている。
【0049】
(13)第1仕切り壁31の左右方向中央部31bと第2仕切り壁32の左右方向中央部32bとは、左右方向において、同じ位置となっているので、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との間で前後に移動する燃料が、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との隙間を通って前方に流出することを抑制できる。
【0050】
本実施形態では、自動二輪車1のサイドスタンドによる駐車状態を考慮して(サイドスタンドは、一般的に、自動二輪車1のメインフレーム10の下部左側に設けられる)、燃料吸込口22は、本体部20の左部分に設けられている。これは、燃料タンク11内の燃料残量が少ない場合、自動二輪車1の駐車状態においても、燃料吸込口22周りに燃料が貯留されるよう考慮したものである。しかし、燃料吸込口22は、本体部20の左部分に限定されることなく、本体部20の中央部に設けられても良い。そして、燃料吸込口22が本体部20の中央部に設けられる場合、第2仕切り壁32の両方の側方に案内部材が設けられる。
【0051】
本実施形態では、第1仕切り壁31が後方に開口を有し、第2仕切り壁32が前方に開口を有しているが、第1仕切り壁31が前方に開口を有し、第2仕切り壁32が後方に開口を有しても良い。
【0052】
また、第1仕切り壁31及び第2仕切り壁32は、前後方向及び車幅方向に亘って前記内部空間の底板部からの高さが略一定となるように形成されているが、前後方向の高さを変化させても良い。前後方向の高さを変化させる場合、第1仕切り壁31が後方に開口を有し、第2仕切り壁32が前方に開口を有しているときには、第1仕切り壁31は、前端部が後端部より高く形成され、第2仕切り壁32は、後端部が前端部より高く形成されることが好ましい。これは、第1仕切り壁31が、乗物の減速時において燃料の前方への移動を阻止し、第2仕切り壁32が、乗物の加速時において燃料の後方への移動を阻止するためである。同様に、第1仕切り壁31が前方に開口を有し、第2仕切り壁32が後方に開口を有しているときには、第1仕切り壁31は、後端部が前端部より高く形成され、第2仕切り壁32は、前端部が後端部より高く形成されることが好ましい。
【0053】
本実施形態では、第1仕切り壁31及び第2仕切り壁32は、上面視で円弧形状を有しているが、第1仕切り壁31が後方に開口を有し、第2仕切り壁32が前方に開口を有する形状であれば良く、例えば上面視でコの字形状であったり、開口を有する楕円形状であったり、開口を有する三角形状であっても良い。このような場合であっても、第1仕切り壁31は、左右方向の全長が、前方から後方に向かって広くなっており、第2仕切り壁32は、左右方向の全長が、後方から前方に向かって広くなっている、ことが好ましい。
【0054】
本実施形態では、第1仕切り壁31の上端が第2仕切り壁32の天井壁33から上方に突出しているが、第1仕切り壁31の上端が第2仕切り壁32の天井壁33に当接するように設けられても良い。すなわち、第2仕切り壁32は天井壁33を有し、第1仕切り壁31の高さは、天井壁33の高さ以上であることが好ましい。
【0055】
本実施形態では、第1仕切り壁31は第2仕切り壁32の内側に配置されるようになっているが、第1仕切り壁31の燃料案内効果を得るためには、少なくとも第1仕切り壁31の一部が第2仕切り壁32の内側に配置されれば良い。ただし、第1仕切り壁31の全体が第2仕切り壁32の内側に配置されることが、燃料案内の観点では、好ましい。
【0056】
本実施形態では、突出部材34は、前後方向の長さ(厚さ)が短い板形状を有している。しかし、突出部材34は、前後方向にも適当な長さ(厚さ)を有する四角形状を有しても良い。そして、この場合には、突出部材34は、後方に向かって高くなるよう形成されていることが好ましい。突出部材34がこのような形状を有することによって、燃料が、第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との間を通って前方に流出することを抑制しながら、前方から第1仕切り壁31と第2仕切り壁32との間を通って第2仕切り壁32内に向かうことを容易とすることができる。
【0057】
本実施形態では、燃料吸込口22は、燃料タンク11の本体部20の底板部21に設けられているが、燃料タンク11の本体部20の下部の側面等に設けられても良い。
【0058】
本実施形態では、自動二輪車を例として説明したが、本発明は、自動二輪車の燃料タンクに限定されるものではなく、乗物の燃料タンクに適用できる。特に、加減速が頻繁に行われる乗物や燃料タンクの収容スペースが小さい乗物、例えば、鞍乗り型の乗物に、好適に用いられる。また、旋回時に車体を傾斜させる乗物にも、好適に用いられる。
【0059】
本発明は、上記実施形態で説明した構成には限定されず、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱することなく、当業者が考え得る各種変形例を含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明では、乗物の加速時に、燃料吸込口に燃料がより流入し易い、仕切り壁を有する燃料タンクを提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0061】
1 自動二輪車
2 前輪 3 後輪 4 フロントフォーク 5 ステアリングシャフト
6 ヘッドパイプ 7 ステアリングハンドル 8 車体フレーム
9 スイングアーム 10 ピボットボルト
11 燃料タンク
12 シート 13 エンジン 14 ヘッドランプ 15 フロントカウル
20 本体部 21 底板部 22 燃料吸込口
31 第1仕切り壁 32 第2仕切り壁 33 天井壁
34 突出部材
35 案内部材 351 後部開口部 352 側部開口部 353 天井壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用の燃料タンクであって、
燃料ポンプが、前記燃料タンクの内部空間の下部から、前記燃料タンク内の燃料を吸い込む、燃料吸込口と、
前記燃料吸込口の前後方向の一方及び側方を囲み、前後方向の他方に開口を有する、燃料の前後方向一方への移動を阻止する第1仕切り壁と、
前記第1仕切り壁の側方及び前後方向の他方を囲み、前後方向の一方に開口を有する、燃料の前後方向他方への移動を阻止する第2仕切り壁と、を有することを特徴とする、燃料タンク。
【請求項2】
前後方向の前記一方が前方であり、前後方向の前記他方が後方である、請求項1記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記第1仕切り壁の側方外方であり、前記第2仕切り壁の側方内方には、前記内部空間の底板部から突出する突出部材が設けられている、請求項1又は2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記第1仕切り壁の側方と前記第2仕切り壁側方との隙間は、前後方向の一方から前後方向の他方に向かって小さくなっている、請求項3記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記第1仕切り壁は、車幅方向の全長が、前後方向の一方から前後方向の他方に向かって広くなっており、
前記第2仕切り壁は、車幅方向の全長が、前後方向の他方から前後方向の一方に向かって広くなっている、請求項4記載の燃料タンク。
【請求項6】
前記第1仕切り壁は、前後方向及び車幅方向に亘って前記内部空間の底板部からの高さが略一定となるように形成され、
前記第2仕切り壁は、前後方向及び車幅方向に亘って前記内部空間の底板部からの高さが略一定となるように形成され、
前記第2仕切り壁は天井壁を有しており、前記第1仕切り壁の上端は前記天井壁と当接する又は前記天井壁から上方に突出するようになっている、請求項1〜5のいずれか1つに記載の燃料タンク。
【請求項7】
前記第2仕切り壁の少なくとも一方の側方には、前後方向の他方からの燃料を前記第2仕切り壁の開口の前後方向の一方の空間に案内する、案内部材が設けられている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の燃料タンク。
【請求項8】
前記案内部材は、前後方向の他方からの燃料を受け入れる他方開口部と、燃料を前記第2仕切り壁の前記一方の空間に排出する側部開口部と、を有しており、
前記他方開口部は、前記側部開口部に比べて大きくなっている、請求項7記載の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92080(P2013−92080A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233778(P2011−233778)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】